03/07/14 第3回神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会議事録      第3回神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会                    議事録                       日時 平成15年7月14日(月)                          15:00〜16:55                       場所 厚生労働省専用第18会議室                                  (17階)  宮本補佐  皆様お揃いになりましたので、ただいまより第3回神経芽細胞腫マススクリーニング 検査のあり方に関する検討会を開催させていただきます。  本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。  本日の出欠でございますが、橋都委員から欠席というご連絡をいただいております。  それでは、座長に進行をお願いいたします。  久道座長  それでは、今日は第3回目ですので、よろしくお願いいたします。  まず事務局から配布資料の確認をお願いいたします。  宮本補佐  本日は資料の1から5までを配布させていただいております。  久道座長  いま配布しているのは?  宮本補佐  参考のために、1回目と2回目の資料を配布させていただいております。  久道座長  よろしいでしょうか。それでは今日の説明ですが、最初に前回皆さんにご議論いただ きました内容について事務局から説明をしていただきます。その次に、これまての論点 をまとめていただいておりますので、それについて皆さんにご検討をお願いしたいと思 います。  最初に、事務局から前回の検討会に関連した部分について説明をお願いいたします。  宮本補佐  前回ですが、ヒアリングを中心に行ったということで、日本マススクリーニング学会 から松田一郎様、日本小児がん学会神経芽腫委員会委員長であります山本圭子様、それ から、現在行われております前向きのコホート研究を担当されておられる群馬大学医学 部教授の林邦彦様の3名よりご発言をいただきました。  それぞれ資料を提出いただいておりましたので、それ以外の発言について、まとめた ものが資料3です。  まず最初に、松田一郎様については、・現状をみて、ここで線を引いて検討を始める ということについては基本的に同意をする。・現時点で直ちにマススクリーニングの事 業を中止するということには慎重にならざるを得ない。少なくとも、前向きなコホート 研究の結果が出る前に早急に結論を急ぐことは避けるできである。その際、出された結 論によって、さまざまな選択肢があり、実施時期を変更する、費用を自己負担にする、 一時中止して最初から研究を組み立て直す、ということが考えられる、ということでし た  続いて、山本圭子さまからですが、海外から否定的な報告が出ていることもあり、事 業のあり方について検討を行うということについては意義深いこととして同意する。た だし、前向きのコホート研究が進行中であって、その研究結果を判断の際、考慮してほ しい。併せて、わが国の状況を十分に把握して正しい結論を導いてほしい。  また、今後の研究の課題ということでのご提案として、中止する場合には、登録シス テムの整備、治療法や自然史の研究、時期を変更したスクリーニングの可能性の検討が 必要である。有効性の評価については、過剰診断は大きいが、一方である意味の死亡率 の低下があるということは否定できないかもしれない。統計的に低下しているかどうか は別として、死亡を逃がれた患者さんがいらっしゃるということは学会のコンセンサス である。過剰診断の不利益と死亡率低下の利益の比較で考えるべきである。  個人的には、スクリーニング事業をすることについて問題があると思う、というご発 言でした。  3番目の林邦彦様からは、現在進められている前向きの調査研究についてご発言いた だいたほか、ご発言としては、事業の継続もしくは中止という決定にこの研究がどれぐ らい役に立つかということについては、この研究によって死亡数をどれだけ減少するこ とができるかということが正確に推定できるという点で貢献できると考えている、とい うことでした。  これらを受けて、皆様方のご議論のまとめでが、資料4をご覧いただきたいと思いま す。いくつかの論点がございました。  それでは、ここで一度切ったほうがよろしいですか。  久道座長  それでは、前回の参考人の発言の概要をまとめたものをご説明いただきました。これ について皆さんからご意見ないでしょうか。  事務局でまとめたのは、印象とちょっと違うよ、ということとか、あるいは漏れてい るようなところ、ございませんでしょうか。  これはこれでいいですね。では、資料4、3人の参考意見のあとに出された主な議論 について、説明をお願いします。  宮本補佐  それでは資料4で説明させていただきます。主な議論でありますが、  一つ目の(我が国における調査研究の評価について)ということで、特に現在行われ ている前向きのコホート研究についてのご発言がございました。  坪野委員からは、全国行われている全国を対象として前向きのコホート研究は、これ までに有効性が示された後ろ向きのコホート研究と本質的には変わらないものであっ て、有効性を確立することができるかどうかという論争に決着をつけるような証拠とし ての強さがあるかどうかについては疑問があるのではないか、というご発言でした。  久道座長からは、現在行なわれているコホート研究は、これまでに日本で行われた研 究よりも精度が高く実施しているので参考になるのではないか、というご発言でした。  柳田委員からは、その研究の結果を待って結論を出すべきではないか。このようなご 発言でした。  2つ目の(神経芽細胞腫マススクリーニングによる不利益について)は、前野委員か ら過去の新聞記事に神経芽細胞腫マススクリーニングで発見された例のうち、6人の方 が手術の合併症によって亡くなっているということが発表されていて、そういったこと から見ると、神経芽細胞腫マススクリーニングによる不利益があるのではないか、とい うことでした。  それに対して、橋都委員からは、神経芽細胞腫マススクリーニングで発見された例に 対する死亡は、時間の経過を見ると減少しているはず。ただし、小児がん学会から発表 されたデータがあって、それによると手術を受けたことによるなんらかの合併症が1割 程度はある、ということでした。  (その他)の論点として、橋都委員から、そもそもスクリーニング例における組織マ ーカー、組織の分類によるものはほとんどが良性の経過をたどるものであることを示し ていて、時間経過の中でその性質が変わることが証明されてない以上、スクリーニング が有効であるという印象は持てない、といったご発言がありました。  久道座長  資料4だけでいいますと、皆さんがいろいろ発言された討論を簡単に1行から3行ほ どでまとめられたものですが、これについて、皆さんから追加、あるいは、いや、こん な趣旨の発言をしたんだとか、ございませんでしょうか。  坪野委員はこの表現でいいんですか。  坪野委員  この書き方だと、私と久道座長はお互い違うことを言ってるような感じですが、決し てそういうことではないと思います。久道先生のご指摘も真実でありますし、つまり、 いままで以上に大規模でやっているという点が違うという点はそのとおりだと思います が、研究デザインそのものが観察研究であるという一種の制約を持っているが故に、既 に結果の出ている介入研究による結果を決定的に覆し得るかどうかということに関して は疑問だということもそのとおりです。  ちなみに、第1回の検討会に提出した資料の中では、この前向き研究の中間報告が報 告書の形で出ておりましたので、それも文献として採用して、それも織り込んだ形でま とめを行っているということを追加させていただきたいと思います。第1回の資料7、 最初に本文がずっと続きまして、次の表1、神経芽細胞腫スクリーニングと関連のまと めの真ん中よりちょっと上のところに、久繁後ろ向きというのと、久繁前向きと書いて ありますけども、この後ろ向きというのがいわゆる後ろ向き研究のことで、その次にあ る前向きというのが、先日問題になった研究の中間報告です。全都道府県を対象にし て、定量法で検証をやって、6ヵ月から3歳までの10万人年単位の死亡率を見たとこ ろ、比較群では9例、10万対で0.727であったものが、検診群では15例、 0.181で、この死亡率の比をとると0.249で、検診を受けている群の死亡率が 1/4、つまり75%近く低下する、ということでありました。これは途中経過のもの が既に研究班の報告書として出ていましたので、これも織り込んだ形でのまとめを既に 行っていたということであります。以上です。  久道座長  ほかに何かご意見ございませんか。いまのことに関してでも結構です。  いまのは久繁前向きと書いてあるけれども、それを継続して林先生がやっていると。 中間発表ということで、この数値についてはあまり表に出なかったということもあるん ですか。ということではなくて。  坪野委員  複数あるエビデンスの一つとして考慮に入れたということです。  久道座長  ほかにご意見ないでしょうか。柳田委員はこれでよろしいですか。  柳田委員  今度の前向きの研究の結果を待ってということで、結果をお聞きしてみないと私ども は納得することは難しいということでして、いきなりそれで結論にもっていくというこ とには賛成しかねます。  久道座長  中身は全然聞いてないということが一つありますね。  柳田委員  はい、そうです。  久道座長  前回、吉村委員は欠席だったんですが、先生、何かご意見ございますか。  吉村委員  基本的には、死亡の減少というのは非常に重要なことではありますけれども、死亡の 減少そのものはスクリーニングだけの効果ではなくて、ほかの影響ももちろんございま すので、死亡率の減少があればスクリーニングがよいという、そういう説明はできない と思います。スクリーニング以外の影響も考慮しなければいけないと思っております。  それから2つ目は、先ほどからの、前向きのコホート研究に関しましては、確かに大 規模で、今後見守っていくべきものとは思いますけれども、坪野委員が述べておられま すように、研究そのものの性質は前の資料に述べられているように、いろんな課題も抱 えておりますので、そういう意味で、この結果が出ても、それなりの留保をして考えな ければいけないことではないか。そういうふうな観点からしますと、待つことが得策か どうかというところになるのではないか、と思います。  久道座長  待つのは、というのは、結果が出るまで待って判断をするのがいいかどうかというこ とですか。  吉村委員  それは次の、不利益の部分についてともちょっと絡むんですが。  久道座長  前野委員は質問のときに次回の宿題みたいなことをおっしゃいましたよね。  前野委員  治療したことによる合併症の数とその具体的な中身を、示してもらえないかと要望し ました。  久道座長  資料を出されますか。橋都先生がそのあとすぐ補足はしてくれたんですが。  宮本補佐  順序が逆になってしまうんですが、資料の中に組み入れております。  久道座長  資料5の2ページのところね。じゃあ、お願いします。  宮本補佐  小児がん学会から発表されたもので、小児がんのスクリーニング症例に関する登録で 行っているわけですが、それについての治療の状況を併せて集計しておりますので、そ の中に合併症のデータが含まれているということです。  2つ目の(治療による合併症)、1999年に小児がん学会の発表によりますと、 1976年から1996年までに神経芽細胞腫マススクリーニングによって発見され て、調査の際に回答のあった1453例のうち1226例に手術が行われ、このうち 132例に治療による合併症がなんらか認められており、そのうち8例の死亡があった ということです。また、化学療法が1025例に対して行われ、このうち49例になん らかの合併症が見られたということが報告されています。そのうち10例の死亡があっ たということがその中で報告されています。  久道座長  ということで、どうですか。  前野委員  合併症の具体的な詳細は報告されているのでしょうか。  宮本補佐  論文の中に記載されています。  久道座長  参考資料がありますか、配布資料の中に。  宮本補佐  配布資料の中にはありません。  久道座長  手術で死亡した8例、化学療法の10例は、1976年から96年の約20年間の間 のどの時点というのもわかりますかね。どんどん減ってきてるのいう話ですけど。  宮本補佐  いろいらなものがございました。治療別の関連副作用の詳細ということで、手術と化 学療法についての具体的な副作用もリストアップされています。  手術について上から見て参りますと、イレウス再開腹が136例のうち37例で一番 多くて、続いて腎萎縮24例、ホルネル症候群15例、腸重積7例、腎梗塞7例、腎消 失6例、乳糜腹水3例、胸水3例、無気肺3例、といったような形でずっと並んでおり ます。 そして、化学療法の副作用については、聴力障害が13例、感染症が13例、 二次癌6例、心不全7例、このような形で続いています。  それから、年代別の治療関連副作用ということで、年次毎の追跡もされていますが、 この中では、96年までの経過の中で特に減少する傾向は明らかではないというまとめ 方がされています。  久道座長  年次推移で最近はかなり減少しているという傾向はないんですか、それで見ると。  宮本補佐  96年までの追跡では明らかでないということです。  久道座長  橋都委員が言った最近というのは、この最近なんですね、この5、6年ということで しょうかね。イレウスが多いですね。どうしてなのかな。  梅田委員  術後合併症、お腹を開けるから。開腹手術ですよね、お腹を開けると大体、多いん じゃないですか。  久道座長  でも多いね、子どもだからですかね。  梅田委員  どうですか、秦先生。  秦委員  お腹を開けると必ずしもイレウスになるとは限りません。通常はあまり起きないと思 います。  久道座長  そんなに起きないよね。  前野委員  イレウスなど一過性のものが多いんでしょうけれども、腎萎縮や、ホルネル症候群な どは後々まで障害を残すものですか。  吉村委員  あくまでも死亡なんでしょ、いまおっしゃったのは。  宮本補佐  合併症ですので、死亡の方はその中で一部いらっしゃるということです。  久道座長  そうか、いまイレウスが37といったのは136例中の37例がイレウスの合併症と いう意味ですね。死亡はわからない。  宮本補佐  死亡もその表の中に示されています。いまコピーをしますので。  吉村委員  関連して、ここにもちょっと書いてあることとダブルのかもしれませんけれども、以 前、32例の死亡の死因を調べたのがございまして、これは沢田先生の報告に書いてあ ったんですが、その中で9例は腫瘍死で、15例が手術関連死・化学療法関連死という 表現で出してありましたので、かなり、腫瘍そのものというよりほかのもので亡くなっ ているのが多いのかなという印象をそのときに持ったのを覚えておりますけど、そうい うことも非常に大きなことかと思います。  久道座長  いまの吉村先生の話はその資料には入ってない?  吉村委員  沢田先生の意見書の中に。  秦委員  よろしいですか。ここに小児がん学会が作成した1984年から2000年までのマ ススクリーニングの発見例を全部で2257例を集積しているデータがあります。その 中で、予後として生存が1948例、98%、死亡が33例あって、腫瘍死が9例、治 療関連死が16例、MDS、これは前白血病と考えていいと思いますが、それが2例、 二次がんが1例。他の原因による死亡が3例、不明が2例、死亡しているかどうか不明 が23例、と出ています。  吉村委員  おそらくいまのだろうと思います、私が見たのは。  久道座長  16例というのは腫瘍死以外の死亡ですか。  秦委員  16例は治療関連死です。この腫瘍死、治療関連死に関しては恐らくかなり早期の頃 のもので、その後、マススクリーニングで見つかった症例に関しては、いろいろな生物 学的検討が行われ、予後がいいという種類の腫瘍であるということがわかりはじめたの で、治療に関しても通常の治療よりももう軽い治療をはじめるようになった経緯があり ます。従ってここに出ている治療関連死は、マススクリーニングが始まった頃の状態が 多いんじゃないかと私は思っています。  久道座長  前回はその印象を橋都先生は、かなり少なくなっているんじゃないかと。  秦委員  前回、橋都さんが言われたのはそういう意味だと思います。  久道座長  前野委員、何かございますか。  前野委員  結構です。  久道座長  それでは、資料4、主な論点、先生方の発言内容をまとめたものに戻りますけれど も、梅田委員は。  梅田委員  前回は欠席しました。  久道座長  いかがですか、何がご意見ございますか。  梅田委員  今日、橋都委員ご欠席ですが、この橋都委員の最後の「そもそもスクリーニングでの 組織マーカーはほとんどが良性の経過をたどるものであることを示している。時間経過 の中で性質が変わることが証明されない限り、スクリーニングが有効であるとは思えな い」というのは、意味がちょっとわかりにくいんですが、このスクリーニングでひっか けてるのは、良性のものをひっかけてるという意味なんでしょうか。良性と悪性と別の マーカーがあって、良性のマーカーをひっかけてる。この文章だとそういうふうに受け 取れるので、このとき橋都先生がおっしゃった意味が、もし良性のものをひっかけるス クリーニングなら、それはほんとに考え直さないといけない、悪性のものを見つけてな いのなら、ですね。だけど、悪性のものもちゃんと見つけてるはずなので、この文章が どういうことなのかお教えいただきたい。  久道座長  秦委員、お願いします。  秦委員  私は橋都先生じゃないので正しいことを言ってるかわかりませんが、要するに、マス スクリーニングで見つけた腫瘍のいろいろな性格を調べるとそれはほとんど予後のよい 腫瘍であると、そういう意味だと思います。したがって、マススクリーニングで見つか った予後のよいものが時間の経過とともに悪性になれば、それは問題だけれども、たぶ んそういうことにはならないだろうと、こういうような趣旨のことを言われたと思いま す。  梅田委員  お教えいただきたいんですが、じゃあ、その時間の経過の中で良性か悪性かというの をチェックできるようなマーカーというか、何かそういうものはあるんですか。  秦委員  それははっきりしたものはないと思います。そういう意味で、小児がん学会のあるグ ループが、マススクリーニングに見つかった症例に関して、無治療・経過観察というポ リシーをつくって、そして観察したのが前回出た89例。その中には時間の経過ととも に悪性になったという症例はなかったと、そんなふうな解釈だったのではないかと思い ます。  梅田委員  いま秦先生がおっしゃったことは、89例見つけたけれども、その中で悪性になった のは1つもないということですか。  秦委員  それはたしか、前回の山本先生の資料にありますので。  久道座長  前回質問が出たんですよ。第2回資料で……。  吉村委員  今日の資料5の2の第2段落「82例が登録され、無治療が59で、残りの23例は 方針を変更して手術を受けており」というこのことですね。  久道座長  23例は方針を変更して手術を受けており、……、手術を受けた例の病理組織を検討 すると良性腫瘍への変化傾向を示すものが多かった。  秦委員  もう1回整理しますと、2002年に82例が登録されて、無治療が59例で、一定 の経過観察の条件、腫瘍の大きさがあまり変わらないとか、大きくなったとか、あるい は腫瘍マーカーが若干上がってきたとか、そういう理由で23例の腫瘍をとったわけで す。その23例の組織を我々病理の医者が5人ほどで一緒に見たんですが、その23例 はすべて悪性を示す所見はなかったということをつけ加えたのが、この前、最後に私が 発言したと思いますけれども、そういうふうなことでございます。それは既に病理を調 べた5人のうちの浜崎先生が小児がん学会に報告しています。  久道座長  すると、資料5の2ページで表現している「良性腫瘍への変化傾向を示すものが多か った」という表現は正確でないんじゃないでしょうか。  秦委員  良性腫瘍へ変化傾向を示すというのは、極めて変な表現で、神経芽腫そのものは悪性 腫瘍です。しかし、それが時間の経過とともに良性腫瘍に変化する、そういうのがこの 神経芽腫の特異的な性格というふうにお考えいただければいいと思います。そして、前 回も申し上げたように、年齢と組織像を加味すると、その腫瘍が予後良好の経過をとる か、あるいは予後不良の経過をとるかということがかなりわかるようになって、それは 既に国際的にも認められています。そういう意味で、この23例に関しては、予後不良 を示すものはない、というふうに解釈していただければいいんじゃないかと思います。 良性ということと、予後がいいということとは若干ニュアンスが違いますので、あえ て、予後良好ということで、完全に良性腫瘍になったという意味ではありません。  久道座長  それは梅田先生、そういうふうに理解したんじゃないですか、秦先生の最初に説明 は。  梅田委員  はい、わかりました、橋都先生のご意見がどういう意味か。ちょっと、いまの秦先生 のご説明に質問なんですが、予後がいいのか、悪いのか。先生はいま国際分類の中で きっちりこういうふうにすれば予後不良なのか、予後良好なのか、わかるとおっしゃい ました。それは具体的にはどのような形でしょうか。  秦委員  予後がいい、悪いというのは、いろんな因子があって、年齢と組織像を加味した予後 因子とか、あるいはN-mycをはじめとする遺伝子異常などが加味されて予後因子と いうのがあるわけですが、その中で重み付けがありまして、その重み付けの中で、年齢 と組織像の変化というのはかなり重み付けの高いほうであると考えています。神経芽腫 というのは、もともと副腎とか、交感神経節になる胎児期の細胞ががん化していると考 えられているわけですが、がん化してもなお成熟する能力を持っているわけです。そう いう成熟する方向というのは、年齢を加味すると、どの年齢でどの程度まで細胞が変化 していれば、これはそのまま、良性というと若干語弊がありますけれども、予後良好の ほうへ行くということがわかっていますので、そういう細胞の形態と、細胞が伴う間質 (シュワン細胞)といっていますが、そういうものとのつりあいによって判断するとい うか、そういうのが指標になっていると思います。  久道座長  よろしいですか、先生。ほかに何かご意見。  前野委員  59例のうち23例が手術を受けたと。  久道座長  いや、82例は無治療で経過観察に登録されて。  前野委員  ああ、そうですね。59例はその後、自然退縮したり、自然治癒したケースと考えて よろしいんですか。  秦委員  それは私にはわかりません。  谷口課長  1998年に82例のグループが登録をされて3年間経過観察をされたわけですよ ね。82例のうち59例は3年間の間は少なくとも全然なんともなくて、ということ で、その後の話は学会から報告されていませんけれども、おそらく何もないのではない かという推測が働くのではないかということだったような気がいたします。  前野委員  ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、手術した中にも予後が良い症例であった可 能性はかなりあるというふうに考えてよろしいものでしょうか。これは推測に過ぎない でしょうが。  秦委員  それはその後の、先ほど申し上げました神経芽腫の予後因子を照らし合わせると、ほ とんどは予後良好の腫瘍だろうというふうに考えられます。  吉村委員  全体的には予後は良好というのは沢田先生の論文にも書いてあるように、これは学会 で報告されてるわけですね。98%予後良好と。だから、その中の一部に亡くなる人は もちろんいるわけですが、そういう亡くなった人たちはどういうことで亡くなったかと いうのは、先ほども報告されております。発見患者のほとんどは治療されてると思うん ですけど、私の理解がもし間違っていたら教えてください。全体的には治療されてる人 が多いわけですよね。そして、予後という観点からすればほとんどが良好であると。し かし、一部亡くなった方がおられる。この亡くなった方がどういう形で亡くなったかと いうのは、腫瘍死だけではなくて、合併症で亡くなった方もあります、というふうな理 解ではないかなと思います。いまの状況は全体としては予後は良好と、そういうことで はないかと私は理解していますが、それでよろしいですか。  久道座長  ほかにございませんでしょうか。なければ、次の資料5になりますか。これに既に 入っているところがあるんですが、あらためて整理して、事務局で説明してください。  宮本補佐  第1回目で提出いただきました疫学的なまとめのほか、1回目と2回目にいただきま した皆様のご議論、それから、その際に言及されましたものについて、データの補足な ど行いまして、これまでの議論のまとめということでつくったものです。  ほぼ、読み上げるような形でご紹介させていただきます。  久道座長  ええ、最初は、死亡率減少効果についてというところで一旦区切りますか。  宮本補佐  まず、マススクリーニング事業の評価において、ということですが、いくつか観点が あるわけですが、最も大きなものとして2つあるということで、1つ目が、死亡率の減 少効果があるかどうか。2つ目としては、検診による不利益がないかどうか、が最も重 要であるということです。  1つ目の、死亡率減少効果についてのこれまでの研究結果のまとめとして、(海外で 実施された比較対照研究の結果)ということで、2002年発表のドイツとカナダにお いて実施された2つの比較対照研究において、死亡率減少効果について否定的な結果が 発表されている。ということです。  (わが国における観察研究の結果)として、わが国においては、神経芽細胞腫検査事 業の実施前と実施後の死亡率の比較を行った観察研究が7件あって、その中では結果は 必ずしも一致していない。ただし、そのうち2件については統計的に有意な死亡率の低 下が見られている。ということでした。  この実施前と実施後の比較については、化学療法の改善など、治療の向上による死亡 率の減少もその中に含まれることが考えられるために、結果の解釈には慎重な対応が必 要である。ということでした。  また、わが国において、神経芽細胞腫マススクリーニングの受診者と未受診者の比較 を行った観察研究は5件あって、そのうち、統計的に有意な死亡率の低下を示している のは25都道府県を対象に行われた後ろ向きコホート研究と、全国を対象とした前向き コホート研究の中間報告の2件があり、この2件については、厚生労働科学研究事業と して行われています。  マススクリーニングの受診者、未受診者の比較を行う観察研究の結果については、診 療行動などが受診者と未受診者で異なる可能性があるなど、さまざまな要因の影響を受 ける可能性があることから、一般に研究デザインとしては、観察研究は比較対照研究に は及ばないものとされており、既に比較対照研究の結果が示されている現在、その結果 を死亡率減少効果の確定的な証拠とすることはできない、ということでした。  (現在行われている全国を対象とする前向きコホート研究の重要性)ということで は、繰り返す部分が多いんですが、  現在全国を対象とする前向きコホート研究が実施されており、平成13年度報告にお いて統計的に有意な神経芽細胞腫の死亡率の低下を示しています。しかし、これまでに わが国で行われた観察研究と同様、その結果の解釈には慎重な態度が必要である。今 後、最終結果として死亡率の低下を示す結果が得られた場合であっても、死亡率減少効 果を示す確定的な証拠とすることはできない。  ここまでが死亡率の減少効果についてのまとめです。  久道座長  この比較対照研究という表現はおかしいんじゃない。  宮本補佐  観察研究と比較対照研究としていますが、どういうふうに表現したら一番皆さんにわ かりいいか。  久道座長  ここで表現している比較対照研究というのはコホート研究のことでしょう。対照地区 を設定した前向き研究、前向きじゃないの? これは。比較対照研究というと、印象よ くないね、どうですか、坪野先生。  坪野委員  後段のわが国における研究との対比という意味でいえば、介入研究というのが一番わ かりやすいかと思います。  久道座長  比較対照研究というけれど、いわゆる普通いわれているケースコントロールスタディ とは違うと思うね。  吉村委員  観察研究との対比の意味であれば、もうちょっと強い言葉のほうがいいんですかね。 比較対照研究といえば、単純に普通の観察研究の一つみたいな感じがちょっとします。  久道座長  そうだね。さっきなんと言ったっけ。  坪野委員  介入研究、対照群をおいた介入研究という趣旨だろうなと思います。  久道座長  対照群をおいた、あるいは設定した介入研究、この表現のほうがいいんじゃないで しょうかね。正確に言うとすれば。あとは観察研究という言い方をしてるからね。  一番の論点はここなんですが、ここについてどうでしょうか。だいぶ意見は出たとこ ろはあるんですが。  梅田委員  最後のパラグラフが、表題は前向きコホート研究の重要性、重要であると言いなが ら、文章の中で死亡率低下を示す結果を得られた場合であっても、死亡率減少効果を示 す確定的な証拠とすることはできない、ということで、表題とこの文章がなんか合わな いように思います。  吉村委員  意義とかなんとかに直されたらどうですか。  梅田委員  この文章だと、素直にいえば、研究自体を最初から組み直さないといけないんじゃな いかということになるんじゃないかと思うんですが。  吉村委員  いまのところはそういうふうな形しかできないわけで、できるだけ現在持っているリ ソースでこれに迫ろうと、迫った結果の研究デザインだと私は理解しているんですけ ど。  久道座長  ベストの方法ではないけれど、セカンドベストの方法として現状の日本ではこれしか ないだろうという中で、このセカンドベストのデータが場合によったら参考になるかも しれない。ところが、世界中で子宮頸がんの研究をみますと、いわゆる介入研究とか、 ランドマズトトライアルというような形では研究されてないわけです。それなのに、研 究そのものの妥当性としてはそんなに高いといわれていないケースコントロールスタ ディを各国でいろんな先生方が別の対象でやって、ほとんどが有効という数値を出して いるんですね。ですから、研究そのものとしては、セカンドベストなんだけれども、い ろんな人が同じような結果を出すということから、日本でもそうですが、アメリカでも がん検診の有効性の評価のときには最高点をつけているんです。これは方法論としては 低いけれども、いろんな人がやって出てきたセカンドベストでやった数が増えてきた、 そういうことでやってるんです。ですから、日本の肺がん検診も本当の意味で介入研究 をやったわけじゃないけれども、セカンドベストのケースコントロールスタディを宮城 とか山形とかほかの県、5ヵ所ぐらいですか、合わせたデータがほとんど有効性を示す 結果になって、しかもその方法論から分析の方法から、外国の英文雑誌にも採用される くらいになったというところで、これならいいだろうという評価をしたんです。そうい う意味からすると、たしかに、この1つだけでは覆すことはできない。しかし、セカン ドベストであるけれども、違った人たちが繰り返しやった結果が同じように出れば、そ れなりに意味があるのではないか。そういう発想だと思うんです。おそらく、デザイン を考えると、こういう証拠とすることはできないというのであれば、最初からやらない ほうがいいんじゃないかと。それは科学的に、原理的にいえばそうなんですけども、日 本の現状はみなそうですよね。既に全国に普及してしまっている状況で、くじ引きでや ることはできないということがあって、たぶん、そういった研究をもう少し積み重ねれ ばどうかなという期待感もあって、これまでのセカンドベストよりももっと少しいいセ カンドベストの方法を林先生が継続してやっているということだろうと思うんですけど ね。どっちも正しいんですね。  梅田委員  委員長のおっしゃる趣旨ならば、もうできないでここでとめてしまうと全くわからな いので、そのあとに委員長のご趣旨のようなものをつけ加えたらと思うんです。  谷口課長  梅田委員のご指摘のように、タイトルと中身で整合性がとれてない雰囲気は私もちょ っと感じますので、中身の議論はまさに座長にご説明いただいたとおりだと思いますけ れども、タイトルそのものについては、ちょっと違和感があるなと読んでいて思います ので、少し検討してみたいなと思います。  久道座長  そうですね、これ考えてください。ほかの点でいかがでしょうか。  柳田委員  スクリーニングした段階で、もう末期で救命し得ないような神経芽細胞腫があったと いうのはどれぐらいあるのか。それから、6ヵ月時点でそういうものがある率はどれぐ らいなんでしょうか。  久道座長  これはどこかにありますかね。検診で発見された時点で手遅れの末期のがんはどうか という。  秦委員  これは一つの資料になると思いますけども、毎年、マススクリーニングの事業に関し て小児がん学会がまとめている資料によると、先ほど申し上げましたように、平成14 年11月現在、2257例の集計では、生存が1948例で、死亡が33例、そのうち 腫瘍死が9例ございます。  久道座長  この腫瘍死はかなり手遅れな状態?  秦委員  手遅れかどうかわかりません。いわゆる腫瘍死ですから、明らかに腫瘍で死んだと考 えられます。  吉村委員  いまのご質問はスクリーニングしたときの話ですね。スクリーニングしたときに手遅 れのケースがどれくらいあったのかというご質問ですから、要するに、スクリーニング に見つかった神経芽細胞腫(ニューログラストーマ)がどういうステージかというのが 一つの回答であると。  発見時ステージ分類というのを見たように思いますが。それはトータルというのもあ るんですけど、たしか、毎年毎年出されていると思います。  秦委員  病期のIが40%、IIが30%、IVSという、諸処に転移しているけれども自然退縮 のするものが6%、III期が18%、IV期が合わせて5%。  吉村委員  こういう理解でよろしいでしょうか。IV期というのは、IVA、IVB、それは非常に予 後が悪い。しかしながらそれはみつかったうち5%ぐらいしかない。  秦委員  そうです。ステージIVはすべて予後が悪いかというのは、ほかのいろんな生物学的な 因子がありますので、それを加味しないと、すべて予後は悪いかどうかはわかりません が、しかし、少なくともI、IIに比べれば病気が進んでいることは事実です。  吉村委員  しかしそれは、スクリーニングみつかる全体の中では5%ぐらい。  秦委員  この統計では5%です。  柳田委員  そうなりますと、年齢との関係が、いまのところ6ヵ月となっていますので、その時 点で5%ということで。  久道座長  6ヵ月で5%と。ほかに何かございませんか。よろしいでしょうか。では、何か気が ついたら戻りますので、次の不利益について、これは先ほどかなり議論はしたんです が、あらためて議論のまとめということでもう一度お願いします。  宮本補佐  それでは2ページ目に移りまして、不利益についてのまとめをご説明します。  まず(神経芽細胞腫検査事業による患者数の増加)ということで、  一般のがんのスクリーニングでは、開始すると罹患率が上昇するが、その後継続する と以前の水準に戻り、長期的にみて罹患率は一定する。これに対して神経芽細胞腫検査 事業については、その検査開始後に累積罹患率が2倍程度に増加することが示されてい る。  神経芽細胞腫マススクリーニングで発見された例では、積極的な治療を行わなくて も、自然に腫瘍が退縮する場合があることが観察されており、2002年に小児がん学 会が発表されたデータによると、1998年に無治療で経過が観察されている82例が 登録され、そのうち2001年まで無治療のままの例は59例あった。残りの23例に ついては、方針を変更して手術を受けており、その理由は家族の希望や、腫瘍の増大、 縮小しないことなどであった。手術を受けた例の病理組織を検討すると、予後の良好な ものであるというものが多かった。  続いて(治療による合併症)ですが、これも先ほど紹介しましたとおり、1999年 に日本小児がん学会が発表したデータによると、1976年から1996年までに神経 芽細胞腫マススクリーニングによって発見された1453例のうち、1226例に手術 が行われ、このうち132例に治療による合併症が認められたほか、1025例に化学 療法を行われ、このうち49例で治療による合併症があったことが報告されている。治 療による合併症による死亡は、手術については8例、化学療法については10例があ る、というふうに報告されています。  (その他の不利益)としては、  治療そのものが、子どもに対して負担である、というほか、家族についても子どもが 病気を抱えることの心理的な負担、付き添いなど心理的負担もあるということが考えら れる。ということです。  久道座長  いかがでしょうか。ここのところは。  前野委員  先ほどいただいた資料、治療別の関連副作用の詳細、というところで、思った以上に いろいろ、イレウスの再開腹、腎萎縮、ホルネル症候群、等がありまして、この中で一 過性のものなのか、後に引きずるものをあるのか。後ろのほうの放射線関連では成長障 害が4という数字がありますし、そういうような副作用の重みといいますか、そういう 分け方はされてないんでしょうか。  久道座長  これは秦先生、わかりますか。  秦委員  何でしょうか、聞き落としましたごめんなさい。  前野委員  合併症の後遺症といいますか、後々に残すようなものというのは、このうちどういう ものがあるのか、ちょっと私、わからないもので、副作用の重さを。  秦委員  表2に書いてある、治療別の関連副作用の詳細の中でどれが後まで残るかということ ですか。  前野委員  これだけではちょっと難しいんでしょうけども。例えば、腎萎縮とか。  秦委員  腎萎縮は残ると思います。これはたぶん回復しないと思います。  前野委員  この中でずいぶんそういうものがありますか。  秦委員  胸水とかは消える可能性はもちろんあるでしょうし、側湾症なんていうのはもちろん そのまま残ります。肝不全、腎不全はもしこれが続けば亡くなるわけですから、たぶん 残るだろうと思います。少なくとも腎臓の萎縮は、後遺症として残ると思います。た だ、腎梗塞だと、梗塞が治ってしまうとまた再生が起きますので、もしかしたら残らな い。腸重積も重症になってしまうとそこを取らなければいけないかもしれませんが、修 復できることもあります。  久道座長  いかがですか、いまの説明で。  前野委員  合併症でも、誕生したばかりの子に障害を残すものがあるということはひとつおさえ ておいたほうがいいと思いました。  久道座長  死亡以外に重篤な後遺症として残るような治療関連の合併症がどのくらいあるかとい うことですね。これはどうやったら押えられるでしょう。この表から大体判断できます かね、正確にはないと思いますけど。この表の括弧が死亡ですから、死亡しない残りは 回復するか、あるいは残っているかというぐらいですよね。  秦委員  小児がん学会では神経芽腫委員会を組織していまして、これ以降もデータはとってい ると思います。治療に関する副作用の、新しいのがあると思います。  久道座長  それは手に入りますかね。  秦委員  「小児がん」という雑誌に掲載されていたり、まとめているところがございますの で。  久道座長  じゃあ、事務局でそれをとってください。ほかにございませんか。  梅田委員  確認ですが、これも秦先生に確認したいんですが、治療による合併症の括弧の中は、 あとでお配りいただいたところをそのまま書いてあるんですが、伺いたいのは、 1453例のうち1226例手術が行われ、1025例が化学療法が行われているわけ ですから、当然、手術も化学療法も行われている患者さんがかなりたくさんいらっしゃ るということになりますよね。そうした場合に、合併症があった患者さんの数は、 132プラス49ではないですよね。死亡数はおそらく、8+10の18人の方だろう と思うんですけれども、合併症があった患者さんの数というのは、132+49の 181なのか、それはわからないのか。というのは、同じ患者さんで手術による合併症 もあったし、化学療法による合併症もあったと。二重にカウントされている場合もあり 得るのか、それはない数字なのか。  秦委員  それはちょっとわかりませんね、1例1例見ないと。  久道座長  両方やることが多いんでしょう。  梅田委員  この数をみると、明らかに両方やっていますね、1453例で、1226、1025 ですから。  谷口課長  いまのお話は、後でお配りをいたしました資料の113ページというところの右下に 表が出ておりまして、いまのご質問ですと、手術関連の副作用は132ですが、その分 母が1226という形で、率にすれば10.8%、同じく化学療法関連の副作用が49 /1025で4.8%というふうに書いておりますので、それぞれ別々に出したんだと 私自身はとっておりますが。  梅田委員  そうですね。だけど、同じ患者さんが化学療法関連の副作用もあった、手術の副作用 もあったということもあり得る。  谷口課長  あり得ると理解すればよろしいと思います。  久道座長  いまの表をみると、化学療法関連の死亡例のパーセントが多いのは、49を分母にし たからですね。  梅田委員  そうですね、これはちょっと変なパーセントですね。  久道座長  なんかねえ。そうすると、死亡例もダブッてる可能性がある?  梅田委員  普通、死亡はこういう場合にはダブらせないでしょうけどね。  吉村委員  先ほど表2の括弧を数えたら18でしたから、実数じゃないでしょうかね。  梅田委員  表1は132が表2では136になっていたりとか、ちょっと。これは再掲もあって なんですかね。化学療法も49が53になっていたりして。  久道座長  ああ、死亡数は合ってるけどね。ダブッてるのもあるのか。図5のグラフを見ると、 年次推移で少なくとも1996年までは特別下がったという印象はないね。  不利益をどう考えるか、評価するかということですよね、重要なのは。死亡率減少効 果によって救命される数と、不利益で亡くなる方もいるし、亡くならないけれども慢性 的な合併症を重複するような患者が発生したり、その他もろもろの不利益があるとすれ ば、そえをどう評価するかということなんですが、このへんはどうなのかなあ。前野委 員、どうですか。こういう不利益の評価のしかたですけど。  前野委員  特に臨床現場で重篤な患者さんを診ている専門医が1人でも多く命を助けたいという 気持ちはよくわかりますし、ひた向きな姿勢は敬服いたします。片方で、マススクリー ニングというのはマスで考えなくちゃいけないので、そのときには検診としての利益と 不利益、コストパフォーマンス、それも考えた上でやる必要があるのではないかと思い ます。確かにマススクリーニングによって見つかって助かった例はもちろんあるでしょ うけれども、ただそれだけを強調するのではなくて、マススクリーニングによって見つ けなくてもよかった例、見つけたことによって、死亡も含めて不利益があったというこ とも論議として検討しなければいけないでしょう。  梅田委員  不利益の評価の中で、さっきから先生方おっしゃっているように、結局、良性だった というときの患者さんの副作用の評価と、実は悪性でどうしてもやらなければならなか ったときの副作用の評価とは違うと思うんですね。それの比較というのはできるんで しょうか。  久道座長  わかるんですかね。  梅田委員  もし、悪性だった場合には、胃がんの患者さんでも、大腸がんの患者さんでも、かな り手術の副作用とかはあった上で、それはやらなければならない。だけど、これはこの 副作用が起きているのがかなり良性の方だということになると、そのバランスは全変わ ってくるはずなので、そういうことがわかるのかどうか、ちょっとお教え願いたいんで すが。  久道座長  まず、わかるかわからないか。秦先生、どうですか。そういうのはわかるんですかね え。  秦委員  平成14年11月までのマススクリーニングの発見例が出ていますが、そのうちのい わゆる進行例、IV期の症例が114例見つかっているわけです。それと、1998年に 集計した、手術関連副作用136例というのを比べてみても、手術関連副作用のほう が、はるかに多いわけですね。そして、事実、マススクリーニングで腫瘍を見つけた初 期には、私が知っている限りは、マススクリーニングで見つかった腫瘍に対しても、通 常で見つかった腫瘍と同じような治療をしていた時期は確かにあるんですね、放射線も かけるし、治療も行っていました。ステージが進んでいれば、抗がん剤によると。  それらの治療が施設によってかなりまちまちであったということも事実なわけです。 しかしながら、生物学的な腫瘍の特性がわかってきて以来、マスで見つかった症例につ いては治療を、軽減する必要があるんだろうということで、乳児神経芽腫のプロトコル に定められて、なるべくそれに沿った治療が行われるようになった。そういうような経 過だろうと思います。いつ頃からマススクリーニングの症例に対して治療を軽減し始め たというか、治療を見直したかというのは、資料が手許にないのでわかりませんが、い ずれにせよ初期には、施設のポリシーに治療が任されていたということはあると思いま す。  ですから、問題意識のあったところは比較的早期からマススクリーニングの症例に対 しては比較的軽い治療をしていたということはあったでしょうけれども、それはすべて ではなかったと思います。  久道座長  梅田先生の質問に対して、例えば、先ほど、秦先生が23例は病理組織を見て予後不 良を示すものはほとんどなかったというような判断があったと思うんですが、手術関連 の副作用を起こした139例、これは昔からのやつも入っていますので、最近の何年間 かの標本はあるわけでしょう。  秦委員  標本はありますし、それから、最近の治療関連の集計、1996年以降のも必ずある はずなので、それを見れば、あるいはプロトコルがどういうふうに変わった、そのプロ トコルにどういう施設が参加したかというようなデータはあるはずなので、それを調べ れば。  久道座長  そうすると、もともと悪性、悪くなるという性質の悪いやつで、それがあって副作用 もあったのか、そもそも組織学的には予後不良の所見を示さないのに合併症があったと かというのはわかるようにはなりますよね。作業は大変だけど。  秦委員  腫瘍を摘出した症例に関してはわかりますが、それを全部集めて調べるというのはな かなか、ちょっと困難だと思います。  久道座長  そういうのを各施設、大きな施設でデータとして出しているのはないんですかね。い まのような全体を集めるのは大変なんだけど、この治療をかなりやってるようなある一 定の施設で、そういうデータを出しているとか。  秦委員  それはあると思います。全国のこども病院を中心とした病院ではたぶんやっていらっ しゃると思います、どんな治療をしたか、歴史的にとっていると思います。  久道座長  それと組織像。  秦委員  組織も見てらっしゃると思います。  吉村委員  一番難しい点は、最初にスクリーニングをした時点である組織像でおそらく病理学的 には悪性と考えられたものが、あとで時間とともに変化して、病理学的にみてという か、予後の立場からみても、いい方向に変わっていくというふうなところが、従来、私 どもがスクリーニングに考えるように、早く見つければ助かるよ、ということにならな い、大きな難しい点だと思うんですね。変化しなければ、通常の私どものような常識的 な考え方でいけると思うんですけど、この場合は途中で私たちは通常そんなことは考え ないで、悪性だったら悪性のまま行くんじゃないかというふうに思ってるんですけど、 そうじゃなくて、それがいいほうに変わる。ということが非常に問題なわけですね。そ ういうことにいままでのマススクリーニングの中で気づかれて、治療もそれじゃあ見て いこうか、というふうな形になって、こういう経過観察例というふうなのが出てきて、 それをずっと見ていくと、何年間どうもなかったようなケースもいっぱいありますし、 実際の病理組織、中を開けないとわかりませんので、病理組織等を見ても、あまり悪性 化しているような所見はなかなか出て来ないというふうなことが一番難しい点なんで しょうね。  だから、そういうことをちょっと考えないと、この評価も難しいような気がするんで すね。  久道座長  普通のがん検診とは異質だもんね、これは。  吉村委員  違いますよね。  柳田委員  6か月をどのぐらい経れば、病理組織学的に良性になるか、悪性になるかの別れ道に なるというようなことがわかっていない、年齢をもうちょっと上げてという研究はどう なのでしょうか?  久道座長  提案としては、1年半だとか、ありますけど、実際に自然史の研究でそういうことが わかってるんですかね。この病気のナチュラルヒストリーそのものが、6か月でわかる よりも、もう少し遅らせてチェックしたほうが、というデータは。これからですかね。  秦委員  大体1歳ないし1歳6か月ぐらいが転機といいますか、そういう時期だと思いますけ ども、しかし、ここからは私の意見ですが、いまの状態でそのまま移すかどうかという のは、また別の問題で、たぶん1歳から1歳6か月ぐらいはターニングポイントだろう というふうに、我々から見ると思いますけども、それを同時にその時期にマススクリー ニングとしてやるかどうかというのは全然違う判断かなと思います。  久道座長  これは難しいのは、きちんとしたデータはないんでしょう。  吉村委員  前回の資料で、金子先生の治療成績についての資料で、新しいプロトコルは1985 年につくられているということが書いてあるんですけど、全体的にはこの治療は 1985年、すなわち、マススクリーニングがスタートした頃、全国的に統一的にやら れている。そのあと、前回の資料、宮本さんあてのファックスで、1991年ぐらいに プロトコルが改定になって、少しマイルドな形でするようになっていると私、読ませて いただいたんですけど。そうすると、治療というものに対して考え方が変わってきたと いうのは、そういう時期なんでしょうか。  秦委員  その時期とおっしゃるのは。  吉村委員  1985年とか1991年とか、全体的に標準のプロトコルをつくった、そして、改 定したということで。  秦委員  集学的治療の進歩によってその都度改定は行われていて、98年に一番新しく改定さ れたと思いますが、それからもマイナーチェンジはやられていると思います。直近の改 定がいつ行われたかというのは覚えておりませんが、たしか98年に変えたのではない かと思います。  久道座長  ほかに何か。  前野委員  先ほど秦先生は、治療方法が施設のポリシーに任されている面がある、とおっしゃい ましたが、現在、治療実施施設は全国で何か所ぐらいあるんですか。  秦委員  よくわかりませんが、ほとんどの大学病院の小児科でやってるでしょうし、国立病院 でも小児科と小児外科が揃っているようなところはやっていると思います。それから、 小児病院ですね。  前野委員  そうすると、200〜300になりますか。年間の発見数が大体200ということで したので、それを均すと、1施設年間1例、その程度の数になっているわけですか。  秦委員  ちょっとよくわかりません、そのへんは。均すとどのぐらいになるのか。そして、ど れぐらいの施設がどうしてるのかは、よくわかりません。  前野委員  素朴な疑問ですが、患者の数に比べて実施施設が多すぎるのではないでしょうか。そ ういう意味では、たしかに各施設のポリシーといっていいのどうかわかりませんけど、 厳格にプロトコルが守られてるということでもないのかなと感じます。  秦委員  金子先生が書かれた1991年に改定された、そのあたりからはたぶん、そのプロト コルで、症例も登録して一斉にやろうという気運が起きてたんですが、それ以前はそん なに、多施設共同でやるということはあまり行われなかったのではないかという気がし ますが。  前野委員  現在は少し多すぎると先生はお思いではないですか。  秦委員  現在は小児がんも、例えば、悪性リンパ腫とか、神経芽腫もそうですが、横紋筋肉腫 とか、ウィルムス腫瘍とかという腫瘍がありますが、それに関してはきちんと症例も登 録して、統一したプロトコルでその腫瘍の治療をする、という気運は出ています。それ に対して厚労省から研究費を出しているという状況があります。  ただしそれは、何回も言いますが、この10年足らずというか、そんなところではな いかと思います。  久道座長  全国で150もないんじゃないですか、どうですか、小児がんをやってる施設は。  秦委員  150もないでしょうね。  前野委員  ただ、発見数が200ぐらいですから、150でもちょっと多いんじゃないかという 感じがしますけど。  秦委員  特に進行性神経芽腫になると治療が非常に複雑で高度になってきますので、そういろ んなところでできない。ただ取ってしまえばいいというものではありませんので。その あたりが日本の小児がんの治療で一番弱いところで、要するに、多施設できちっとプロ トコルを決めてやっていくということが過去にはあまりなかったということだったかも しれません。  久道座長  今日は議論だけをやって、結論までは出ないと思いますが、前回までのまとめとし て、死亡率減少効果についての科学的な根拠をどう評価するかという点である程度まと めていただきました。それから、不利益については、もう少し検討しなければ、という ところはあるんですが、特に不利益の評価をどうするか。最終的にはコスト・パフォー マンスでやるというのが普通のやり方ですが、この小児がんが果たしてそういう評価の 対象としてなじむかどうかという問題も一つあるんじゃないかと思いますが、ともか く、死亡率減少効果と不利益、それからもう一つは、従来のがん検診のような形での考 え方はどうも該当しない。例えば、良性に変化するとか、そういう問題があるというこ との難しさはありますが、ただ、この検討会が設置された理由が、そもそもよかれと 思ってきた、マススクリーニングが外国の研究データを契機にして、どうも問題がある のではないか、ということが出てきたことが一つの経緯だと思うんですね。それで、か なり政策的な判断を必要とする可能性はあるんですが、おそらく今回は結論はでません けれども、このあり方に関する検討会の意見として、最終的には、次回あたりですか、 同じ結論をいただいたりするわけにいきませんので、与えられた現在の時点でのデータ に基づいて、なんらかのまとめをする必要があるだろうというふうに思います。  今日はちょっと不消化のような部分もありますけども、もう一度整理していただい て、次回あたりにはなんらかの結論が得られるような形にはしたいと思います。  今日の論点整理のところで2つの点をやりましたけれども、事務局としては、3番目 にまとめ、と書いてあります。ここをあと10分ぐらいやりたいと思いますが、次に来 るのは、それならばどういう結論になるのか、あるいはその結論によっては、今後どう いう対応をしなければならないのかというようなことは次回の委員会でまとめていきた いと思います。事務局、もう一度、まとめのところを説明してください。繰り返しにな ると思いますが。  宮本補佐  3番のまとめです。1つ目の(死亡率減少効果について)は、  現行の神経芽細胞腫検査事業による死亡率減少効果の有無は、現在、明確ではない、 ということです。  (死亡率の減少効果の有無が今後明確になる可能性について)は、  現在、わが国で行われている全国を対象とした前向きコホート研究は、すでに平成 13年度報告を出しており、死亡率の減少効果を示しているが、この解釈には慎重な態 度が必要である。今後、最終報告において、死亡率の減少を示す結果が得られたとして も確定的な証拠とすることはできない。そのため、今後、わが国で神経芽細胞腫マスス クリーニングによる死亡率減少効果の有無が明確になる見通しはない。  (不利益について)は、  神経芽細胞腫マススクリーニングによって発見される例の中には相当程度、積極的治 療を必要としない例が含まれていると考えられる。また、治療によって合併症を生じる 場合があるなど、神経芽細胞腫マススクリーニングによって不利益を受ける場合がある ことは否定できない。  以上です。  久道座長  ということなんですが、いろいろ表現のしかたに問題がなしとはしないと思うところ があるんですが、いかがでしょうか、皆さんの考え方として。  吉村委員  減少効果の有無について、ということ、そして次の、減少効果の有無が今後明確にな る可能性について、というこの2つは非常に重要なところだと思うんですが、具体的 に、どれくらいインパクトになる、イエス・ノーではなくて、全体で死亡がいま年間 60ぐらいでしょうか。それがどれぐらい下がるか、下がるとすれば、ですが。そうい うふうなことも片方では考えていかないといけない。有意に下がる、下がらないという こともあれですけども、具体的にどれぐらい。年間200ぐらい見つかるんでしたっ け。死亡は60〜70だと思うんですけど。  久道座長  死亡は最近は40〜50ぐらいだね。  吉村委員  そうすると、見つかった数と死亡の数の比からしますと、そう多くはない形になりま すよね。そうすると、そのへんが予後の問題ともちょっと絡んでくるんじゃないかと思 いますので、そういう実数的なものも考慮に入れたほうがいいのかなと思います。  久道座長  死亡率だけじゃなくて、数でね。罹患も増えてるということもあるしね。これはどう いうふうに解釈するのかな。  吉村委員  罹患も増えているというのは、結局、スクリーニングで増えてる可能性があるわけで すよね。  久道座長  だから、率だけでいくとかなりどんどんよくなってるようだけど、先生いまおっしゃ るように、数でいくとそう急な減少ではないという印象も合ってるんですよね。数値と しては実数も出したほうがいいかもしれないですね。どうですか、坪野委員はこの点 は、明解にパンと。  坪野委員  実際のエビデンスがまず第一で、推計というのはその次になると思うんですけれど も、前回も申し上げましたが、いま日本人の子どもが、検診をやる前の時期の累積罹患 率は、学童期に入るまでで大体10万対10ぐらいなんですね。ですから毎年100万 人ぐらい出生しているとすると、検診をやらなければ、その人たちの中から100人ぐ らい症例が出てくるだろうと。検診をやった場合に、その100人全員が検診の利益を 受けるわけではなくて、検診を受けても手遅れの人と、検診を受けなくても助かる人が いますので、おそらくそのうちの幾許かということになると、仮に致命率が7割とする と、小学校に入る前に100人ががんと診断されて、そのうちの70人が検診をしなけ れば死亡すると。けれども、検診の死亡率減少効果が、後ろ向きコホート研究だと大体 0.55ということですから、かなり大きくとって、半分死亡を減らすことができると すると、70の半分ですから35人を助けるということになります、仮に死亡率減少効 果があったとしての話ですけど。おそらくそれぐらいのレンジの数字だろうと。  一方で、スクリーニングをやることによって、累積罹患率が増えるというのは、第1 回のまとめにもありましたが、これはすべての研究で共通して示されていますので、間 違いのない事実だろう。それもその程度は大体2倍ぐらいに増えるということですか ら、検診をやらなければ100人が小学校に上がるまでに神経芽細胞腫と診断されてい たものが、検診をやることによって、それが200人になる。これは70人かもしれま せんし、130人かもしれませんが、100人前後新たに診断される人が出る。  ですから、大雑把な計算でいえば、100人新しく、あなたは神経芽細胞腫ですよ、 と言われる人が増えることと、もし死亡率が減少する効果があった場合に、30人程度 救うことができるということを天秤にかけるということになるんじゃないかと思いま す。これはあくまで推計ですけど。  久道座長  でもデータに基づいた数値は出せるでしょう。推計で7割とか半分ぐらいとかいった ものはある程度の幅をもって出せますよね。  坪野委員  まあ、こういったあたりだろうということは可能だと思います。たぶんいま言ったこ とに尽きてると思いますけども。  久道座長  いかがでしょうか。死亡率減少効果の有無が今後明確になる可能性について、これは すでに何度も議論されたんですが、明確になる見通しはない、という表現はちょっと、 言い切るのは、なんで明確にしないんですか、という話が出るんじゃないでしょうか ね。  梅田委員  これだと研究を続けている意義が……。  久道座長  例えば、現状のままでは、とか、現状のままでやっていたのでは、明確にならないか ら、というふうなことがないと、今後の対応には反映されないですよね、見通しはな い、と言い切っちゃうと。ここは少し考えてもらうことにして、ほかにご意見ありませ んか。  予後因子に関係する年齢の問題とか、組織像の問題、いろいろある中で、年齢の問題 はさっき柳田委員からも出ましたので、それをきちっと解明する必要があると思うんで すよね。それが有効性の有無の評価に重要な要素になるかもしれませんので、これは必 要かもしれない。  次の不利益について、これはいま坪野委員からも出た話に尽きてるかもしれません。 一方では年間何名の子どもをがんから救うことが可能だというメリットがあって、それ に対応するデメリットとして、罹患率が増えたためにその治療を受けることによって合 併症を起こす、合併症は起こらなくても、そのことで治療を受けることが不利益になる ということになりますので、それをどういうふうにバランスにかけて評価するかという ことだと思うんですね。それを次回までに出すんですか。出せるの? バランスにかけ てやるということであるなら、そういう数値を出さなくちゃならないね、ある程度推計 でも。坪野委員、出せるんですか。  坪野委員  いま言った数字の中でデータによる確認が必要なのは、検診を受けないで見つかっ た、検診をやる前、外国の例も必要かもしれません、検診を受けないで見つかった神経 芽細胞腫の例がどのくらいかというところだけが数字としてないというか。  久道座長  もう一度。  坪野委員  要するに、死亡率の減少効果の有無とか不利益の程度というのは、あくまでも検診を やった場合とやらない場合の比較においてしか言及できないと思うんですが、先ほど3 0人ぐらいを助ける可能性があって、100人ぐらい余計に見つけてるという推計の中 で、これまでの検討会でデータとして出て来なかったのは、検診を受けないで自然に見 つかった神経芽細胞腫の中での生存率だけなんですね。つまり、日本人が100万人い るところで、学童期までに100人見つかるだろうというのが、いままでのがん登録の データからわかりますし、その100人が全員助かるわけではない、検診の利益を得る わけではなくて、亡くなる人がどのくらいいるのかという数値、それがもし6割であれ ば、検診の効果は6割の半分ですから30人助けることになりますし、それが8割であ れば、8割の半分で40人ということになると思います。  吉村委員  この前の資料の最後のところに、84年以前のものをコントロールに使ってという か、1にして、その後どうだという議論をしていた、あの数字を私は十分チェックはし てないんですけど、おそらく考えておられるベースはあそこをスタンダードにして年代 をかえていったらとどういうふうに改善したのかを見ようとされたんだと思います。あ の数字が使えるのか、使えないのか。それがいまの坪野先生の言われた数字になるか、 私も十分チェックしておりませんので、回答はちょっとできないんですけど。  久道座長  検診外発見患者の生存率ですか。  坪野委員  検診外というのは、つまり偽陰性になりますので、偽陰性の生存率は悪いということ はわかっていますけど、そうじゃなくて、検診をもしやらない場合に、臨床的に見つか ってする神経芽細胞腫の生存率ということです。ですから、日本のそのデータをとろう とすれば、検診を始める前の時期の症例の生存率を使わざるを得ません。治療が進歩し ているので、どこまでそれが当てはまるか。ある程度の幅をもって、その場合には生存 率は悪いですので、その数字を使えば、検診にとっては課題評価をすることになります から、そういう含みでそういう数字をちょっと当てはめてみるということだと思いま す。  久道座長  実際難しいんじゃない、その数値を推計するのは。  坪野委員  推計ですから、いま言ったようなことをはじめとして、仮に死亡率減少効果があった 場合にそれをどのぐらいに見積るだとか、いろんな前提が入ってくるので、その推計だ けがひとり歩きするような形はちょっとまずい。ただ、大体の幅として、100人ぐら い余計に見つけて、もし死亡率を下げているとすれば最大30人程度救命しているとい うことは、たぶんどういう数字を使っても変わらないんじゃないかと思います。  久道座長  今日の議論する時間はそろそろ参りましたが、今日は特にとりまとめはしません。前 回の議論の論点を整理していただいて、いろんな追加をしていただいたり、まとめ方に ついてのお考えを聞いたということになります。次回もあるようですので、事務局から 連絡を。  宮本補佐  次回の日程ですが、7月30日(月)午後3時からとさせていただきます。場所です が、経済産業省別館の11階1111会議室です。  久道座長  次回の会議ですが、事務局としては、次回が最後と考えていいんですね。  谷口課長  我々、来年の話も考えなければいけませんので、これまでご検討いただいた内容を踏 まえまして、できれば次回あたりで結論を出していただければという気持ちでございま す。そのときの材料として今日ご検討いただいた資料5ですが、いろいろ議論が出てお りまして、私どももなかなか難しいと了解しておりますが、少なくとも、根本的な考え 方を事務局が間違ってないか、というか、誤解してないか、資料5は我々の責任でまと めさせていただいておりますけれども、根本的に間違ってないかというご確認だけ今 日、最後にしておいていただければと思います。文言の不備等は先ほど座長からご指摘 いただきましたけど。  久道座長  文言はいろいろ厳しい表現とか、ニュアンスの違うのがあったと思うんですが、いか がでしょうか、いま課長からそういう話が出ましたので、資料5について、これまでの 議論のまとめということで、私がいま記憶してる範囲では、例えば、1番目の(死亡率 減少効果について)のところでは、比較対象研究という表現を、対照群をおいた介入研 究とするとか、3番目の括弧の、研究の重要性というタイトルと中身の文章が合わない という、これは直していただきます。このところはよろしいですか。今日出された資料 の中身について、我々委員が見て、是非直す必要があるとか、これは問題だというとこ ろはないですね。このまとめで。いかがですか、1番目について。なければ、2番目の 不利益について。ここの表現は先ほど秦先生からいろんな詳しい説明がありましたの で、例えば、1番目の段落の最後のところ、手術を受けた例の病理組織を検討すると、 という次の表現が、予後不良を示すものは全く、という表現でいいんですか、秦先生。  秦委員  調べた限りは。  久道座長  少なくとも、23例について全部調べて全くなかった、というふうな表現のほうが誤 解を生まないだろうということのようです。  3番目のまとめでは、僕のほうからちょっと言った、見通しはない、というのが、強 すぎるのであれば、ちょっとしたニュアンスの違いだろうと思いますが、事実はこのと おりなんですが、ちょっと表現をかえてもらってもいいのではないかという感じはしま す。  先生方から何かございませんか、不利益についての部分。議論の中で、不利益の評価 のしかたについては、これに追加するようなものが出ましたよね。前野委員と坪野委員 から解説的な話が出ましたので、あのあたりをもう少し加えたらどうかなという感じが しますね。いかがでしょうか。よろしいですか。  事務局から確認をしてもらいたいという、今日のまとめのところ、よろしいでしょう か。  それではこの形で少し手直しをした上で、少しやりとりをすることがあるかもしれま せんけども、次回までにまた皆さんに検討していただくということにしていただきま す。 よろしいでしょうか、これで締めて。それではどうもありがとうございました。 今日はこれで終了いたします。                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                         03−5253−1111(代)                             宮本(内線:7933)                             柏木(内線:7939)