03/07/08 不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第21回)議事録



      不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第21回)議事録


1 日時
  平成15年7月8日(火)9:30~11:30

2 場所
  厚生労働省専用第13会議室

3 出席者
 (1) 委員(五十音順、◎は座長)
   (1)伊藤 眞(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
   (2)小幡純子(上智大学法学部教授)
   (3)菊池信男(弁護士)
  ◎(4)諏訪康雄(法政大学社会学部教授)
   (5)村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)
   (6)山川隆一(筑波大学社会科学系教授)
 (2)行政
    青木審議官、熊谷参事官、田中調査官、山嵜中労委第一課長  他

4 議事

○ それでは不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会第21回目の会合を開始す
る。本日は都合により毛塚委員と岩村委員が欠席である。前回まで一通りの論点項目に
関する議論をしていただいたので、今回から報告書取りまとめに向けた議論をお願いす
る。本日と18日、25日の3日間をこれに充ててまとめ上げたいと思うのでよろしくお願
いする。これから内容を詰めていくということを考えて、まずお諮りしたい事項があ
る。議論を今後円滑に進めるためには報告書が取りまとめられるまでの間は非公表とし
たいと思うが、いかがだろうか。

(了承)

 それでは、事務局の方に説明をお願いする。

(事務局説明)

○ これまで議論してきた内容をもとに論点表その他を作ってもらったわけであるが、
この報告書案はそういったものを文章に起こしたものである。今回がこれを検討する最
初であるので、単なる修文だけでなく、かなりの程度中身に関しても指摘していただき
たいと思う。とりわけ、重要であるけれど落ちているもの、どちらかと言うと現段階で
は不要であろうというものに関しては、ぜひ今日の時点で意見をいただきたい。和解の
効力のようなさらに少し詰めた書き方が必要なものについても意見をいただきたい。細
かな言葉遣いの問題は最後に行えば良いので、今回は大きなざっくりとした部分の議論
をしていただきたい。それで、これまでもしてきたように、全体が第1、第2、第3、
第4となっているので、検討もこの順番でしようと思う。では、まず「第1 はじめに
」であるが、ここは特にないだろうか。よろしいだろうか。では、細かな字句の修正は
また後でするとして、「第2 不当労働行為審査制度の現状」というこの部分ではいか
がだろうか。よろしいだろうか。それでは段々にポイントに近づくわけであるが、「第
3 問題点」という部分についてはいかがだろうか。どこでも気づいたことがあれば指
摘していただきたいと思う。

○ 言葉の問題であるが、4ページの(1)から(5)まであり、(2)、(3)は「長くなってい
るものがあること」、「困難である場合があること」となっているが、(1)、(4)は「行
われていること」と一般的な記述になっている。全てそういう場合があるということで
あろう。

○ それはどちらかに統一できるのか、できないのか考えてもらいたい。この期に及ん
で出し遅れの議論と言われそうな気もするが、緊急命令が少しも緊急に出されていない
という状況をどこでも指摘していないということがあることに触れておきたい。という
のは緊急命令が主として問題となるのは取消訴訟のときであり、中労委が関わることが
多い。中労委側の立場として言っておかないといけないと感じた。問題点として、緊急
命令が現状では棄却の判決が出るときに一緒に出るというものが多い。中には後から出
たという例も最近聞くが、何のために後から出すのかと思う。他方、早めに出ているも
のもあるようで、早く出させるようにするにはどうしたら良いかを考えなければいけな
い。裁判所側では事実認定、判断等に懸念があるからそう簡単には緊急命令は出せない
ということであろうが、そもそもの労組法の設計は随分違っていたかと思う。危ないか
ら出せないというなら仮処分もそうである。そこら辺をどこかに触れてなくて良いの
か。

○ 私もそのように考える。取消訴訟との関係の問題であるが、研究会のテーマとの関
係では一応労働組合法上の制度であるので、触れておいた方が良い。今日実はそう言お
うかと思っていた。書くところとしてどこにするかであるが、取消訴訟の一環であると
すると3ページの「取消訴訟の処理状況」のところで書くのか。労働委員会そのものの
審査体制とやや視点が違っているとは思うのだが、そうかと言って新たにアラビア数字
で起こすこともない。とすると、データがあると思うが、第2の(4)のところではな
いか。

○ それから4ページの命令、決定に対する再審査、取消訴訟のところにちょっと1パ
ラグラフくらい書けるかと思う。そして最後に「第4 見直しの方向」のところでしか
るべく少し触れる。都労委の経験からは緊急命令にはどのような印象を持っているだろ
うか。

○ 条文に書いてあることが分かっている程度である。私が入ってからは…。

○ 地労委からは少し距離がある。中労委の場合にはかなりの数が取消訴訟に行くこと
になる。緊急命令を一緒に出すよう申し立てる。しかし、それがなかなか出ない。3年
も、4年も経って取消訴訟そのものに対する判決が出ているのに、緊急命令の役割は何
なのだろうかと思ってしまう。

○ 「第3 問題点」で言っていることとして、表現の仕方であるのかもしれないが、
一審判決が出た段階で緊急命令が併せて出るようであれば、命令の暫定強制というより
は一審判決が確定するまでの暫定強制の色彩が強くなってしまう。やはり、制度の趣旨
からはずれると思う。表現はともかく、そういう指摘はあるだろう。

○ それは大変重要なことである。労働組合法が本来考えていたものと大きく違ってし
まった。

○ 一方で、その背景にあるかもしれない懸念のようなものを書き込むかどうか。なぜ
遅くなるかというと、審査の在り方に大きな懸念があるのだろうと思う。

○ 緊急命令がいつも遅くなってしまっているということは良くないことである。そう
なっている原因がどういうものがあるかがわからないと、どこに手を入れれば良いかが
わからない。遅延している原因は分からないが、論理的に言うと、制度の趣旨に合う運
用が行われるように、手続、判断の要件を工夫して考えるということなのではない。

○ この点、事務局で何か考えがあれば述べてほしい。

○ 私どもの調べている範囲ではやはり比較的遅いものが多いようである。平成4年か
ら13年までに決定がなされた36件を見ると、判決と同日期日で認容されたものが9件、
申立てから認容決定まで相当期間要しているもの、1年以上要しているもの、あるいは
本案の終結に比べて長い事案、これが8件である。比較的早期に認容されたものが10
件。あとは棄却とか却下である。指摘したような問題点を意識して工夫して書いていき
たい。

○ 勘違いかもしれないが、中労委命令だともう少し遅くなる傾向がなかったか。

○ 今手元にある資料では一緒になってしまっているのだが、早期に認容された命令で
多いのは地労委命令である。中労委命令は10件のうち4件しかない。本案判決と同日期
日で認容されているのは9件のうち7件が中労委命令である。

○ それでは、そういう論点を書いておかないといけないと感じるので少し触れること
にしたい。ただ非常に難しい問題があるというのは指摘する通りである。他にあるだろ
うか。では一番厄介な、「第4 見直しの方向」6ページ以下について、少し詰めて議
論をしたいと思う。いかがだろうか。

○ よろしいだろうか。7ページの「3 制度の見直し」のところであるが、まず事件
処理の迅速化審査手続きの改善であるが、イのところでは、必ずしも前の段階のいわゆ
る調査という部分、審問についての一種の計画的な事件処理と言うか審理をするという
考え方がされているが、ここの議論もそうであったし実態もそうであるが、確かに審問
自体はこういうことについても考える必要があるが、前の段階の調査というものも審問
の準備という色彩がかなり強いので、必ずしも狭い意味での審問に限らず、いわゆる調
査も含めて全体として審査手続を計画的に進める仕組みを考えると良いのではないか。
そういう表現にしていった方が良いと思う。関連するのだが8ページの第2段落、同じ
事件処理を計画的に進める枠組みのところで、「また」というところである。これもこ
こで出た議論であるが、いろいろな状況を考えて見ると標準処理期間という抽象的な表
現にとどまらず、例えば6ヶ月ということを原則として考えてみてはどうかとか、そこ
まで踏み込んでみた方が意味があると考える。そこはいろいろ意見はあると思うので私
の意見として申し上げる。

○ 重要なポイントが出た。一つは調査の段階も含めて、計画的な審査の在り方を考え
て、しかるべく書き直した方が良いという意見と、もう一つはもっと重要で、明確な数
値目標を書いた方が良いかという意見である。初めの調査を含めて、ということである
が、これはそういう旨の議論もあったと記憶している。

○ 和解の話が出てきて、和解協議期間を設定するという話が出てくるが、それとの関
連もあるかと思う。それから調査を何回と初めに決めていく。調査を何回、審問を何回
行うというふうにやっていくのか、和解の方のチェックをしっかりやるのか、と言うと
ある程度の切り離しが出てくることになる。ここのところの書き方は難しい。だから調
査までを含めてというのが難しい。審問に入る調査準備は何回という感じは分かるし、
書類が行き来して、証人申請して立証計画を提出してと考えると3回くらいであるとか
予想はつく。しかし、実際には和解をする場合には並行しながら進むことが多いから難
しい。書類を進めながら、現実には和解を探っていくので基本的な事例がなくなってし
まう。あまり切り離してしまうと、和解がうまくいかなかったときに審問、調査の回数
がその分上乗せすることになってしまって良くないのかも知れない。

○ 私も調査を含めてなるべく早くやらないといけないという表現が良いと思う。調査
の段階では証拠を整理して目途を立てて、そのあと本格的な証拠調べをするわけで、そ
れを全体として短くしないといけない。そのときに特に一番大事なのが、争点と証拠を
調べた上で審問を計画的にやるという部分である。和解の方は常に可能性をあらゆる段
階で探りながら、隙あらばやろうということだと思う。和解をやる回数の目途というの
は、ある程度和解に入ってみて、どれぐらい掛かりそうかという見当をつけるための事
情聴取を少ししてみないと目途を立てられない。和解に入る前に目途を立てるのは無理
で、和解については、11ページの(2)で触れておいて、7ページの(1)、(1)。イ
の方は調査、審問、命令書の作成ということで良いのではないか。

○ 審問準備のための調査は3回くらいで決まる。2、3回のやりとりで終わる。実際
に長引いている調査は和解のための探りだろう。すぐ切れる事件もある。地労委の事件
でも、すぐ審問だというものは2、3回やってから切っているし、審問はありえないと
いう事件もある。なかなか…。ただ。ここは審問という感じの審査手続になっている。

○ 調査が入っていないのではと思われるので、調査も最初に言っておいた方が良い。

○ どこからどこまでの期間の計画とするかを原案を書くときに迷ったのだが、調査の
期間を含めると、争点や証拠の整理の目途がつく前に計画を立てることになりはしない
かと思う。そうすると審問の段階では後ろの計画があまりきちんしたものにならない。
どっちを取るかということで、時期的には遅いのであるが審問の段階をきちんとやって
もらうためにある程度争点証拠の整理が済んだところで、という案になっている。

○ そうすると7ページの(1)は「事件処理の迅速化等」となっているので、調査も
審査手続きに入るわけであるから、調査もこの中に入れて良いのではないか。計画的と
いう言葉が良いかどうかはあるが、とにかくだらだらとした調査ではないという意味
で、少し目途を立てながら、通常の審問のための調査であれば3回もあれば大体大丈夫
という意見もあるが、調査も我々は忘れていない。しかしながら統計で見ても審問が現
に29回30回もなされると時間が掛かって当たり前だということになり、その部分に触れ
ているわけであるから、そういうようなところを考えながら触れておくという程度にし
たい。

○ そういう趣旨で良いかと思う。調査自体を短縮するという位置づけも和解との関係
であり得るのだが、審問準備のための調査を充実化させる、そしてそのことによって審
問を迅速化するという位置づけになる。

○ 審問のところで迅速化と充実化が課題だが、この二つのうち、大事なものを一つ挙
げるとすると、迅速化ではなく、むしろ充実化ではないか。充実することによって迅速
化することになる。迅速化だけが目標になっているように見えるが、そうしない方が良
い。

○ そこは意見が違う。迅速化か充実化かというところにいつもなる。今の状態が充実
しているか、だらだらかしているかというと、今は充実していないと思う。ということ
は計画的にしっかりすることが大事である。迅速化と充実化は両立すると思うが、今目
に見える形で期間を短くしないと具合が悪い。それが大事だと思う。恐らく、与えられ
た条件の中でやれとなれば委員の人もその中で精一杯やると思う。調査の回数は1回
で、審問の回数は3回という枠組みになれば、それでおしまいであると言うのであれば
当事者はそこで頑張る。そういう枠を決めてはめてあげないと早くもならないし、充実
もしないと思う。これは6ヶ月なら6ヶ月という踏み込んだものにしたいし、期間とい
うのが難しいのであれば、回数制にして、イメージをガラッと変えてしまって、これで
やると言うふうにしないと、速くもならないし充実もしない。特に公益委員の立場から
すると、これも証人だ証人だと当事者が要求するのであって、制度的にこうすることに
なったとなれば、比較的今よりは容易に争点が切れるのではないか。やはり制度的にタ
イムターゲットなどでも良いし回数制でも良いが、何か制度を入れないとなかなか今の
状況は改善しないと思う。

○ 昔から、訴訟がだらだらとした審理で遅延するのを何とかしよういうのが、裁判官
の目標だった。ところがその努力をやってみると反対する人たちが必ず言うことは「適
正を捨てて、迅速をとるのはどういうことか」、「言い分があるのになぜちゃんと聞か
ないのか」ということだった。迅速化に対して批判的な立場をとる人を説得するには、
迅速ということ自体を言うのではなく、審理の充実が大事ではないか、今は無駄な時間
をかけているが、争点を整理して争点中心の充実した審理をすべきだ、それによって迅
速になるじゃないかということである。だから充実という誰も反対できない理念を掲げ
ることによってようやく説得できるのではないか、そういう感じがどうしてもある。審
理の充実ということを理念にして、はじめて説得して、押し切って行くことができると
いう意味で言っている。

○ 公益委員の立場からすると審問期日は4期日だけであるとルールとして決まってい
ると言えたら楽である。ただ、それが制度として良いかというと疑問がある。この制度
だけはこうしろと枠をはめてしまうと良いかと言うと、必ずしも組合は迅速を求めてい
ないわけで、要するに一番救済されたい人である組合はむしろ迅速よりは長く聞いてく
れる方を望んでいる。そこで制度がずれている。不当労働行為審査制度は簡易、迅速な
制度であると言うが、本当の趣旨がそうであろうけど、現実には、参与委員がいる三者
構成になっていて奇妙な制度になっている。普通の行政不服審査なら簡易、迅速と押し
切って後は裁判でと言えるのであるが、不当労働行為審査制度は労使が入っていて、裁
判とは違うものが設けられていて、そこをどう見るか。簡易、迅速で良いのか。確かに
題目は簡易、迅速となっているが、そもそも制度がミスマッチになっている。もう少し
言うと、少なくとも都労委でやっているのは例外的なものが長く掛かっているだけであ
る。審問はやっても4期日である。統計で1回の審問回数は見てみると地労委の場合は
良い。審問の回数は1期日というのも出てきているのであって動いていると言える。事
件によって非常に違っている。だらだらと審問が続くというものばかりではない。私が
持っているほとんどのものはそうなので状態が違ってきているかもしれない。

○ 問題点となってしまうのかもしれないが、議論するときに、審問の回数の問題なの
か、期日の問題なのか、ということはタイムターゲットを作る場合にも影響を与える。
地労委にも命令で10何回というものもある。そういった認識も書いておいた方が良い。
都労委は迅速化しているのではないか。

○ 本当に事件による。たまにある。ただ、事件の統計で割れば珍しいと思う。
 確かに難事件というもの、複雑なものは差別であるとか積年の怨念が絡んだ紛争のよ
うなもので、それらの数はそれほど多くなく、大部分は単純な事件が多い。ただ中労委
から見ていると、複雑なものが来るせいか審問回数は30回くらいというのもある。

○ 月に2回入れたとしても大変なことである。

○ そういうものもあるが事件による。

○ 審問の回数で見るよりは、どちらかというと標準処理期間という期間で考える方が
良いのではないか。そして難しい事件については、回数が少ないと言うことであれば関
係者で集中的に入れて考える。

○ むしろ、命令書に掛かる時間…

○ それはまた後の話で。

○ 標準処理期間というのは行政手続法で法令上使われているので、これは違うと思
う。あれは許認可に対して行政庁が完全に1人で申請にどれくらい掛ければ良いかとい
うものであるから、逆に不作為の違法確認の一つの指標になってくる。ここで標準処理
期間というのはここは救済処置であるから、許認可に関する処分ではないので、この言
葉はやめた方が良い。それからもう一つは、中労委は標準処理期間も努力目標の定め方
もあるだろうが、自治事務化されてきて、めったに事件が来ないところと山ほど来てい
るところとがある。当然命令までの期間ということであるから結審してからどれくらい
掛かるかということも関わる。それぞれの地労委ごとに状態が違う。どこでどう定める
か。類型もどういう類型にするのか。そうすると結構厳しい。

○ 何らかのターゲットを定めるかどうかがまず問題になる。ターゲットを定めるとし
たらどんなやり方で定めるかというのが2つ目の問題で、この2つをクリアすると、誰
がターゲットを定めるのかということになる。それで当面それに関連しているのは個々
の労働委員会が定めるのか、あるいは統一的に行うために中労委がやるか。あるいは、
労働委員会に任せずにどこかの別の審議会か何かでやって省令か何かの形でやるかとい
うことになる。労働委員会のことであるから労委規則に任せるということになれば、結
局は中労委になるのではないか。自治事務化したこととの関係でどう考えるかというこ
とであるが、しかしこれは前から議論があったように国民の権利義務の問題もあるし、
自治事務と言って地域間で格差が大きすぎても良いのかという元に戻るような議論もあ
る。とするとある程度の統一的な目標は必要かと思う。というのが、「また」のパラグ
ラフの考え方かと思う。それが良いかというのは別の話である。

○ 中労委が事件の類型ごとに標準処理期間を設定すると言っても、それが合理的なも
のでないといけない。中労委で決めると言っても何に基づいて判断するかということで
ある。私は全体の処理期間を半減するとか、そういう大きいスローガンを設定して各労
委の実情に応じて努力するということ位じゃないとおかしいと思う。訴訟も期間を半分
にするのであればこちらも半減させるという方針を打ち出して、そして、地労委は各地
で違うので、それぞれいろいろな工夫をして努力する。それによって、仮に全体として
それはいろんな事情が違うので、いろいろな工夫をしていって全体が収まる。それがも
し、大まかにしろ、類型ごとに大体の線が出てくるのだったら、それをできるだけ多く
のコンセンサスを得て、共通の具体的な努力目標にするのだったらするというやり方で
ないと無理ではないか。守られない処理期間を定めるほど有害なことはないと思う。ま
ず決めるというのは処理期間半減という大きな目標であろう。

○ お任せする。私は6ヶ月と言ったがそれはもちろん原則で、事件の類型や性質によ
って例外が考えられるだろうが、イメージで言うなら調査が1回あって、審問が最大で
も2回、命令書を起案するまでの時間が1ヶ月くらいであり、それを足すと6ヶ月くら
いであろう。それを一応標準的なイメージと考えればどうか。もちろんプラスマイナス
が出てくるであろうが、そう言ってわかりやすい形で示して反応を見る方が良いと思っ
て言ったのである。意見の内容にこだわるわけではない。

○ 命令が1ヶ月というのは、事務局体制などいろいろな条件整備がないと厳しいので
はないか。

○ 内容の簡素化や事務局体制など条件整備は必要となるが、それはそれで改革のため
の提言だから意味があるのではないかと思うが。

○ 7ページから8ページにかけてのところは(1)事件処理の迅速化等で全体の、命
令書も含んでいる。ところが(1)で審査手続、ここは手続であるから命令書の起案が入
っていない。次は不当労働行為の処理期間の話になっていて、処理期間というと全部で
ある。範囲が大きくなったり小さくなったりしている。

○ 私も思っていたのだが、(1)が長く続いて次に和解が来ている。迅速化等である
から、迅速化の他に適正化が入っていると考えられるが、ブレークダウンできるものは
した方が良い気がする。もう一つはやや前になるが、7ページの2のところで、基本的
な考え方ということであれば、通常であれば3で書かれていることにつながるようにな
るのが通常かと思うが、2のところで基本的には迅速化のことしか書いていないという
感じがするので、併せて適正な命令を出すことなどをここに入れておいた方が、3につ
ながる書き方としては良いと思う。タイムターゲットの基本的なことも、2のところで
審理期間の半減ということも出てきているので、ある意味では現在の審理期間が1000日
とかいうことからすれば帰結としては出てくるかと思う。ただ、裁判所と同様の平均審
理期間で見るのか、平均処理期間で見るのかという関係で、命令の作成まで入れれば処
理期間になる。良いことかどうかはともかくとして、ただ迅速化そのものを狙うとすれ
ば平均審理期間よりも平均処理期間かと思う。確かに、体制整備が伴わないと難しい。

○ 当事者にしてみれば、結審しておいて命令がなかなか出ないのが一番嫌だと思う。
例えば審問は2回、4回と制限しておいて、命令が出ないというのが救済を求めてくる
側からすれば一番嫌であろう。審問を減らしても、命令がすぐに出ないと意味がない。
そういう意味では事件の解決までの処理期間だと思う。

○ 今言った内容は中労委に最も当てはまることである。労働弁護団が中労委不要論を
言うのはそこから出てくる。確かに当事者にしたらそうなのであろう。自分が関与した
ところでどんどん延びていた部分に関しては誰にも文句を言えないが、終わったらすぐ
に出してほしいのに出てこないというような、それぞれの言い分はあるにしてもいずれ
にしても命令の起案に1、2年掛かるというのでは、世間の納得は得られない。

○ あと審理のところで。事件処理と言うと全部である。

○ そこはもう一度工夫をして事務局にも検討してもらって次回ということで、まだ2
回あるので議論したいと思う。命令書起案についてはどこにあるのかという問題提起が
あった。

○ 場所はともかく、そこは事件処理で書いているつもりなのであろう。

○ (1)で一つには争点、証拠が整理されること、あと体制の問題があると思うので、
双方解決すべきであると書いている。

○ 9ページに命令作成期間短縮については触れられている。

○ とすると「審査手続における運用の改善」という題の中に入っているのが適切かど
うかということか。

○ いずれにしても小委員会方式全てに絡む。合議であるから合議を頻繁に開くのかと
いうこともあるし。

○ 今指摘があったところは9ページ、審査手続の改善のところであるが、それは7ペ
ージの「制度の見直し」の中に含まれている部分である。3の冒頭の文章は、「法を改
正し」から「抜本的な見直しを行う」となっている。これは全部法改正のことであろう
か。2のところで運用の改善が入っていると、法改正とは別のことであるが、組立ては
これで良いのか。最初の文章をちょっと変えたらどうかと思うが。

○ そこは工夫してみるが、前回の57年報告との関係で、今回は法改正をするというこ
とをはっきりどこかで書いたが方が良いと思う。それから確かに絶対的法律事項になる
ものと、法律に書いても書かなくても良いというものがあって、今の段階でどこまで整
理するかということもある。法律事項、運用事項の全体を書く中で指摘があったような
問題が生じないように考えてみる。

○ 今度は事務局が法改正をも辞さずと言うのは非常に重要である。法改正も辞さずと
言っていたのに運用でしっかりやるとなるというのは嫌だから、司法制度改革との関連
でやらなくては二度とできなくなってしまうかも知れない。そうなるとこの制度も尻す
ぼみになってしまうかもしれない。そういう意味では不鮮明でない形で、論理的にはき
ちんと収まりの良いように工夫をお願いしたい。先程の命令書の作成なども9ページの
ニで入ってきたのは、調査から審問に入ってそして結審になって命令書を書いてという
流れに沿って入っているからである。頭の法改正をするという部分とのずれが出たとい
うところか。事務局に整理をお願いしたい。他にあるだろうか。

○ 前の6ページに戻って、「見直しの方向」の1の中ほどの「しかしながら」の段落
の上であるが、1割程度というのは難しい。1割で良いのか。というのは本当に急に辞
めさせられると駆け込んだものと、あるいはユニオンのようなものに何人か2、3人で
入るというのと同じであるのか。駆け込み訴えというのは実質的な定義と言うと統計で
これくらいというのは難しい。その問題と、実質的個別的労使紛争という定義はないの
で、1割と言うのは厳しいのではないか。多くなってきているというくらいの方が無難
であると思う。例えば東京都の場合は私はもっとあるような感じがしてならない。

○ 合同労組が半分くらいあると考えると、その大部分が駆け込み訴えである。

○ 何を駆け込み訴えとするのか。辞めさせられそうになったら駆け込み訴えというの
か。必ずしもそうでないのではないか。企業内組合として育ってきて、それは区別が難
しくなってくるので、あまり数字を入れない方が良いのではないか。

○ 年報の定義を確認する必要があるが、事件が起こった後で合同労組に入って、その
事件を例えば団交で問題にするパターンである。

○ しかし、その事件の前後は常に問題になるわけで…

○ ここでいう駆け込み訴えと先生が考えているものとずれがある可能性がある。合同
労組の事件はもう少し率が高くなって中労委の場合は3割から5割である。

○ 和解に関してであるが、時間を設定してというときに、多分2ヶ月なら2ヶ月を設
定してその間に和解するということになる。1ヶ月なら1ヶ月和解をすることになる。
それを例えば1年間と言うことは具合が悪い。これに関しても上限であるとか、和解期
日を変えさせるとか、そういうことを決めた方が良いと思う。総じて私が考えるのはと
にかく速く終わる、迅速に終わるという制度にしないと不当労働行為審査制度自体が使
われなくなる。多分、労働裁判も裁判所の審理の方が遙かに迅速になる。そうすると迅
速に審理をしたいという人は皆そちらにいく、ここに来るのは長く話して、つまりカウ
ンセリングを受けたいような組合が来るような機関になってしまう恐れがある。それも
大事だと判断するのであれば良いかもしれないが、それを国としてすべきである、また
は良しとしてサービスをするだけの余裕があるかというと私はないと思う。

○ 正に言う通りである。裁判所は速くて聞いてくれないから、労働委員会に来る。
はっきり言うと今はそういう認識だと思う。簡易、迅速とは逆で、そういう制度になっ
てしまっている。変な、というか敢えて三者構成になっているのはそのためであろう。
裁判所より簡易、迅速にしたら組合から今の制度よりもよっぽど悪くなったと言われる
だろうが、サービスが低下したと言われるであろうが、それでもやらなきゃいけないか
という話である。裁判所が簡易、迅速だから裁判所の方が速いという話を平気でしてい
る。証拠も出てくるし、ここでするより裁判所に行った方が良いのではないかという話
が労働委員会の実態では日常化している。そうじゃないけど来る。簡易、迅速を求めな
い人が多いのではないかと思う。そこは他の委員と印象が違う。

○ 制度の設計は、例えば除斥期間1年というものを設けて、全部疎明で、緊急化、迅
速化ばかり言っているが、労委規則を見ると30日以内であるとか皆書いているけども、
書かない方が良いのではないかというくらい全然守られていない部分もある。その実態
は、当事者が迅速とは別のものを求めている。そして、それに参与委員も含めて対応し
てきた。その対応に合うようにシステムがバランスを取ってきた。ところが外部環境が
大きく変わってしまった。そこに来る組合は昔は錚々たる組合が来ていたが、全然違う
タイプのものになってしまった。来る組合が変わった。係属する事件もすごく違う。国
の余裕、自治体の財政の余裕も変わってしまった。裁判所が違うタイプの行動を取り始
めた。とすると我々はどうしたら良いかという話である。原点に戻れという案もある。
地労委によっては除斥期間1年でやっている以上は事件処理を1年でやっていると言う
ところもある。これはもともとの制度設計に忠実なのかも知れない。ただ、かなりの数
を抱えている東京、大阪、中労委は現状では到底無理であるようである。

○ もともとの制度、法律がこうだからそれに合わせるべきであるというのはもちろん
一つの考え方である。それで、使われなくなるのではないかというのは、もとの制度で
考えられていたものとは違う使われ方をするということであろう。それで良いのか悪い
のか、というそもそも論である。だから今そうなっているものを変える。非常にあっせ
ん的なものができてしまっている。逆に言うと単純だから長引かないものもある。とい
うと誰かが入ってやれば良いという話のものも多い。あともう一つはとても単純な事件
で、小さな会社の社長が全く意識がなくて教育的な不当労働行為として出てきただけ
で、何かしらのかなりの前進があるわけではないというケースがある。これは全て早く
済む。難しい。

○ 労働委員会の事件の現状は、制度の本来の趣旨と違う運用になっていると思う。そ
れが正に問題で、不当労働行為審査制度の在り方としては、現実に近づけて、そういう
制度として機能するように持っていこうという考えが一つと、そういうものをそもそも
考えてはいなかったのであるし、労働委員会の在り方を考えると、本来の役割を果たす
制度が今でも必要で、実際に事件処理を期待に応えられるような方向で充実させていこ
う考えとがある。私は現状は本来制度が狙っているものと段々ずれてしまっているが、
制度改正の方向で目指すべきものは先ほど言ったような方向だと思っている。しかし、
その場合やはり人の要素が決定的で、関係者の意識改革がないのであればどの制度の改
革でも難しいのだろう。

○ この議論をし始めると、また出発点に戻ってしまってそもそも論であるが、これは
最後までどんな組織でも長年の蓄積がある組織は避けられないものであると思う。それ
ではそもそも論は脇へのけさせていただいて、今まで議論してきたそれなりにコンセン
サスが得られた中間整理に基づいた報告書の案に関して更に意見をいただきたい。和解
の点、指摘があったが、他に和解をめぐって指摘していただきたい。

○ 11ページの(2)のなお書きの、「債務名義を付与する」は「債務名義と同一の効
力を付与する」であろう。10ページの下の方のホの「事務職員等の習熟」、と「事務処
理能力の習熟・向上」はおかしい。習熟というのは仕事に習熟するものであって、事務
処理能力に向上というのは良いが、能力の習熟と言うことはない。

○ 今の和解のところでこれも言葉の問題であるが、和解協議期間の設定とある。意味
は分かるのであるが、和解の見込みがあるのかどうかをいつまでもだらだらやっていな
いで、あるところではっきりさせる。しかし、概念として和解協議期間というのはやや
硬直的な気がする。私が思っているものと同じであるならば、和解協議期間という概念
を立てるよりも、そのようなまま書いた方が良いのではないか。

○ これはこういう言い方、あまり熟していない言い方であるが、これを作った意味は
例えば命令までは3年掛かった、しかし実際は1年半も和解をやっていたのだと言うた
めである。協議期間ですることで、ここがはずれると実際の命令はこの期間で出たんだ
と言えるのではないか。こういうような集計の仕方もできるのではないかという案が以
前あった。ここで分けてしまって、そこで1回で済むとは限らないだろうが集中的に和
解を試みてみる。そのような発想があった書き方ではないかと思うのであるが。

○ 協議という語はない方が良いと思う。和解というのは最終的にまとまったものも和
解と言うし、和解をするという言葉があって、試みている間も和解と言う。「和解期間
」で分かるのではないか。

○ それでは少しまた事務局の方で考えてもらうこととする。他にいかがか。

○ もう一点、これは私が出席していなかったのかもしれないが、10ページのところ
で、他の公益委員の任命要件とあるが、そこの下の二番目の段落の検討中と書いてある
部分である。もらったものを見ているのであるが、これは内容として、労働者側、また
使用者側の立場で集団的労使関係を経験した人に専門性の視点から公益委員になっても
らうということか。多分休んでいたときだと思うが、こういう議論はこの場でなされた
のか。

○ そうではなくて、今は1人1人全員同意しなければいけなくて、たった一人でも反
対するとはずれてしまう。そうすると結局は誰かから何らかの形で忌避されそうな人は
はずれていく。これに一番該当しそうなのは労働法をやっている人である。使用者から
忌避されるのであるが、労働法をやっている人やそれに近い人は今の状況では入れない
か、入りづらい状況がある。現に前に調べてもらったが、労働委員会の中で労働法学者
はとても少ない。他の国に関しては労働法学者が多く占めている。諸外国と比べてもお
かしいではないかと思う。どこの国の労働裁判所であるとか審判所の非常勤、常勤もそ
うであるが、労働法をやった人が普通は中核を成しているのに、労働委員会はそうは
なっていない。そこでそれをなくしていくためにはもちろん労働法学者も世間の理解を
得るという点で反省しなければいけないものがあるだろうが、その話は別にすると、今
の任命制度の中に大方から見れば、例えば4分の3の人から見れば良いのではないかと
いう趣向である。

○ それは私の誤解であった。しかし、表現が「労働者側または使用者側の立場で集団
的な労使関係に係る経験をし、」というところから、今座長がいったような意味が読み
取れるか。

○ もちろん専門性の高い弁護士なども入るのであろう。

○ 弁護士の方をイメージして書いているものである。どちらかの仕事をしていると推
薦をしにくいという。

○ 地方の労働委員会は弁護士が中心を占めているが労働法をやったことがない人ばか
りである。そしてしかも事件が何年に1回しか来ないとなればいざ命令書を書けば…と
いう状況である。

○ ここは読みにくい。むしろ労働法に精通した人が任命できない。どちらかに集団的
労使関係に従事しなければいけないみたいな変な雰囲気が読めてしまう。

○ 要件ではないわけで、実態で全員合意しているだけである。

○ それは今の労働組合法で「同意」とは書いてある。全員の同意というふうには書い
ていないが、世の中にはそのように解釈する向きもあるので微妙なところである。

○ 全員とは書いていないが今まではそういうふうに運用してきた。

○ 労働者側、使用者側の立場というふうに書かないで、知識、経験があり、公益委員
として適した人が選ばれない場合があるというくらいに一般的にしておいた方が良い。

○ むしろ弁護士先生、あるいは裁判官OBOGというのが主要な戦力となるし、場合
によっては常勤を設けるときにかえって規制が高いと言うことであるから、書いておい
た方が良いだろう。

○ 趣旨は賛成なので、表現を工夫していただきたい。

○ 和解のところに戻るが、11ページの、先程の根本的な議論とも関わるのであるが、
ここに入れるかどうかは別にしても、和解の成立の見込みを的確につけた上で、とか、
つけるとともに、とか、和解の記述の中に、もしくは迅速化の記述の中かも知れない
が、そのような表現を一筆その種の表現は入れた方が良い。要するに、和解の見込みが
最初からないような場合にまで長々とする必要はないであろう。もう一つは、なお書き
のところで、命令と同一の効力ということであるが、和解のみで過料とかそういうもの
まで科すのはちょっと難しいのではなかろうか。例が分からないが同意審決のようなも
のであれば別かも知れないが、純粋の和解でそういうことができるのか。そこまで考え
ているのか。個別の効力まで考えていないのかも知れないが、気になったので表現は考
えてもらいたい。

○ 重要なポイントであるので考えてみたい。他にいかがだろうか。今回は最初である
ので、その他構造的なもの、骨格的なものを中心に、もちろん言葉の問題も結構である
が、基本コンセプトみたいな問題についてかなり踏み込んで指摘していただければと思
う。

○ ある意味で文章の問題であるが、ある意味で全体の位置づけに関わる問題で、1ペ
ージにおいて、記述は問題ないが、司法制度改革の一環で議論になってきているという
背景が全く書かれていないので、3番目のパラグラフの「直近の改革が」の前あたりに
書いた方が良いのではないか。ごく簡単に言えば、「司法制度改革が進められる中で」
という形で触れてはいかがか。

○ ここで書いていないとなると、我々は重要なことをほっかむりしている気にもな
る。司法制度改革がなければここまで進まなかったことは否定できない。では、しかる
べく工夫をしていただくこととする。他にいかがだろうか。

○ 緊急命令の関わりであるが、問題点を指摘すると見通しでも触れられるかと思う。
今の議論の中でも具体的にこうすべきとは考えを述べているわけではないが、せめて中
労委が命令を出したときに実効性を持たないと、あるいは中労委の命令の中でも中労委
がこれはと決めたものに関しては実効性を持つというふうには何とかできないかという
議論はあった。

○ 今になって、そもそも論ではあるが、法律ができた当時の労組法が予定していた不
当労働行為のイメージが構造的に変わってきている。いったん割り込んだ後、また
ちょっと増えている状態であるが、もしかすると構造的な変化があったのかと思う。そ
のときに和解を位置づけるのはそちらの対応への制度改革の在り方だと思う。一つの制
度改革の在り方であるとは思うが、旧来のイメージをどれくらい合わせていくのか。典
型的なものは少なくなってきているという気がしている。私は労働法学者ではないが、
何となく労働法の典型的な不当労働行為は時代的に減ってきている。

○ 集団的な労使関係の在り方自体が今までと違ってこれからどうなっていくのかが、
読みきれない場合がある。あるいは非常に小規模な数十人くらいの組合が労働運動をす
るかもしれない。恐らく、大手のところで大争議というのはこれからはあまりないだろ
うが…

○ 国際社会と一緒で世界大戦争はないけれども、ミニ紛争は勃発する。その懸念は国
際的にも言われており、クラフトユニオン型の職種型の組合は日本では存立の余地がな
いと言われていたが、SE関係、とりわけ、介護関係など、処遇が非常に良くないわけで
ある。仕事がきつくて、その関係でどんどん生まれて、介護関係のクラフトユニオンは
3万、4万人もの組合参加者がいたりする。ところが各職場でみると1人か2人の合同
労組型であるから、今まで考えるような企業別次元での恒常的労使関係は考えづらい。
しかし、こういう動きが将来発展していくと、これを扱うのはどこが一番適切かという
とやはり労働委員会であるということは間違いないとなると、そういうものを踏まえな
がら制度をここで立て直しておいて、いわば住宅をリフォームしておいて次の世代の人
が入ることができるようにしておくことが必要である。

○ 従来の制度にしがみついている必要はない。時代が変わってきているのだから変化
に応じた制度にしないといけない。それがちょうど司法制度改革と併せて出てきたとい
うことであろう。

○ 今言っているところであるが、具体的なものではなく大きな方向性として、在り方
研究会として入れた方が良いのではないか。

○ 個別紛争ということはちらちらと書いてあるが、書くとしたら「はじめに」、「不
当労働行為審査制度の現状」のあたりであろうか。ただ、今のところ、クラフトユニオ
ンのような事件が次々と労働委員会に来ているわけではない。

○ 6ページのあたりはどうか。駆け込み訴えのところで、新たなタイプの労使関係と
いうところである。ただ、緊急命令に関してはどうするかという議論をしてこなかった
ということもあって、書くのは難しい。

○ かなりは取消訴訟と重なっている問題である。とは言え、この法改正を思うとき
に、制度創設の趣旨がほとんど死んでしまっている現状をなしにしてしまって良いだろ
うか。

○ 一方で、労働委員会命令自体の信頼性を高めるというのが基本であるということは
間違いはないのであるが、27条の中の緊急命令の条文を改めるようなことができるの
か、必要があるのかと言うことについては、あまり良い案を考えつかない。例えば、適
法性審査をやめてしまえというのはちょっと考えがたい。うまく別個の制度として要件
を仕組むようなことができれば、実効性確保のところと関係があるのであるが、これま
で絞って議論してこなかったのでちょっと難しい。

○ 緊急命令を入れるとすると、司法審査そのものではないが裁判所に行って何かする
ことの問題は、最後のところに入っているので、ここに緊急命令の現状の改善というの
も検討課題として挙げておいた方が良いと考える。

○ では、まだ色々あろうかと思うが。

○ あと、一言。提出制限を講ずる方向で検討するというのはどうだろうか。いろんな
ことが絡んでくるが証拠の提出制限というのは現在の訴訟法の基礎からすると異例なこ
とである。全体の中での検討項目として挙げるのは良いのだが、「講ずる方向で」とい
うのは強すぎると考える。

○ 今の先生が言うのは現状の改善との関係とは、今現状を改善しようと言うことで
やっているが、それとのセットということか。それとも現実に改善後の姿として運用さ
れた後の実績を見るという趣旨であるか。

○ 訴訟手続の基本である証拠の提出制限は裁判を受ける権利の中身の話になると思
う。当然、提出をするについての実質的な理由が付いていないといけないが、「講ず
る」と言ってもそこの理由付けができないと集中砲火を受けることになる。

○ 準司法的手続として公正取引委員会、独占禁止法のような規定をイメージするのだ
ろうが、労働委員会をどう持っていくかという、そもそもどういう有り様を目指すかと
いう議論になる。今みたいに審問を一生懸命やっている現状からすると、本当はやって
も良いと思うのだが、本当にそういう方向に今後も進むのかどうか。だから、従来考え
られていた制度においては、これがないために当事者が証拠を出してこないで裁判で
ひっくり返される。労働委員会は何のために審問をしっかりやって、慎重に手続を踏ん
でいるのかということであった。当初の制度設計の不十分なところを補完しようとしよ
うというスタイルであろうが、本当にそういう流れになるのか、というそもそもの方向
性が分からない。

○ 取消判決の理由などとの関係で、出すべき証拠を出さないと言う事例がどれだけ
あって、どれだけ取消しがされているか。現在の運用はどうなっているかということと
の関係でどういう理屈を付けて行くのかということがある。

○ 不当労働行為審査制度の意義が没却されるという意味の問題であろう。つまり準司
法手続の中で、いわゆる審決の取消訴訟の構造をどう考えるか。単に負けたとか、遅く
なる、とするだけでは少し弱いだろう。新証拠の提出を無制限に許すと、命令の基礎が
失われる。うまく表現が思いつかないが、手続の構造に関わることである。新証拠の提
出が信義に反するような場合の制限を想定している。最高裁まで行って信義則違反とし
て提出を認めなかった判決もある。あまり広く証拠制限を認めるといろんな問題が起こ
るだろうが、要件をどのくらい限定していくかとの関わり、もちろん手続との関わり
で、そんな工夫があり得ないかと思う。

○ ではここに関しては、まだ議論を閉じないでおいて、次回以降も議論するというこ
とでお願いしたい。今回は時間であるので、大体このような次第で論点を挙げていただ
き、また詰めが進んだと思う。今日残された課題はいくつもある。とりわけ緊急命令な
どを書き込むとしたらどのような形で対応策を書くかということは、これまで議論をし
てこなかったという意味で重要であると思う。なんと言っても悩ましいのは訴訟と我々
の距離であるとか、相互の連関をどう取るのかという問題である。また、和解に関して
根拠規定を置くとしたらどんな内容で設けたら良いのか。様々な問題が残されている
が、今日のところはこのあたりにして、議論を整理して、事務局には次回のたたき台の
ペーパーを用意してもらうことにしたい。

○ 「講ずる方向で」というところを「講ずることも検討する」という言い方にすれ
ば、講ずる方向という結論を出したということにならないから良いだろう。

○ それでは次回は、7月18日(金)の午後の2時から4時ということで。場所は厚生
労働省の13階の第16会議室である。本日はお忙しいところありがとうございました。

                                     以上

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