事務事業名 | 循環器疾患等総合研究経費(仮称) |
担当部局・課主管課 | 厚生労働省健康局生活習慣病対策室 |
関係課 | 厚生労働省医政局指導課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 研究を支援する体制を整備すること |
1 | 厚生科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること |
活力ある長寿社会の構築は我が国の経済の発展の観点からも重要な課題となっており、特に働き盛りの国民にとって脅威となっている心筋梗塞等の「心臓病」や寝たきりの主な原因となる「脳卒中」に対し有効な対策を立てることは極めて重要である。 これらの疾患に対する治療法には薬物療法、手術療法等があり、さらにその中でも昨今の様々な工夫により多くの薬剤、術式等が存在し、医療現場では、これらの治療法が医師の裁量により組み合わされ、多種多様な治療法が適用されている。しかし、それらの治療法についての効果や効率性等について、科学的な視点からの比較が必ずしも十分には行われておらず、最適な治療法というものが明らかになっていないことが多い。また進歩の著しい画像診断法等についても標準化や精度評価が十分なされないまま臨床応用されていることが多い。そこで、心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の分野について、効果的な医療技術を確立するために必要な臨床研究を公募型の競争的資金により推進するとともに、これらの臨床研究の実施に関して、多くの研究者・研究施設の参加のもと科学的な視点から厳密に有効性等の評価を行う、質の高い大規模な臨床研究を実施する体制の重点的整備を推進する。 本研究の成果により、効果的かつ効率的で質の高い治療法等の医療情報が集積され、最善かつ標準的な医療技術が確立されることとなる。 |
H12 | H13 | H14 | H15 | H16 |
1,031 | 1,820 | 2,372 | 2,023 | (未確定) |
心疾患、脳血管疾患等の循環器系疾患は我が国の3大死因のうち2位と3位を占め、総死亡の3割を占める重要な疾患である。近年の診断・治療法の著しい進歩により循環器系疾患等の急性期死亡率は減少してきたが、たとえ救命されても再発と後遺症のために生活の質(QOL)が低下することが多いのが現状である。 循環器系疾患の場合には超急性期の診断・治療が特に重要であり、これにより患者のQOLが大きく左右される。この点に関し診断・治療法の開発、専門医の育成など一層の充実が必要である。さらに発症予防やリハビリテーション技術の開発も十分とはいえない。 さらに糖尿病等の生活習慣病はひとたび発症し治療することなく放置すると、合併症を引き起こし循環器系疾患等の発症進展を促進することもよく知られている。近年生活習慣病は増加傾向にあり、これらの合併症は患者のQOLを著しく低下させるのみでなく医療経済的にも大きな負担を社会に強いており、合併症を効果的に予防することが重要な課題となっている。 |
循環器系疾患等の治療法につき科学的根拠に基づく医療を推進するため全国規模で臨床研究体制を整備し日本人に最適な治療法等の確立を目指す。
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日本人と欧米人は体格や遺伝的背景をはじめいろいろな点で異なるため、我が国の循環器系疾患等の治療において本当の意味で科学的根拠に基づく医療(EBM)を推進するためには、我が国におけるエビデンスをぜひ確立する必要がある。しかし従来我が国では複数の研究者小グループが独自に研究を行っているのが実状であり、臨床的研究において集まるサンプル数等に限界があり、十分な結論が得られないため研究結果の信頼性(バイアス、精度、再現性)が低いことが指摘されていた。 この要請に応えるため、本研究事業では循環器系疾患等について全国規模で質の高い臨床試験が行える体制を整えることを目標のひとつとしており、大きな研究目的毎に実際に全国規模の臨床研究体制が整いつつある。 この臨床研究体制を基盤として循環器系疾患等について質の高いエビデンスが得られ始めているが、今後さらに数多くのエビデンスが蓄積されることにより、日本人のエビデンスに基づいた日本人に最適な治療法等が確立されることが重要である。 また循環器系疾患等における診断・治療技術は日進月歩であるが、専門家によりエビデンスの詳細な検討を行い標準的な診断・治療法を体系化にすることは医療の質の向上や医療経済的な観点からも重要である。 |
循環器疾患等総合研究事業においては、課題毎に以下の方針で事業を行っている。
また研究の実施体制についても、広く全国から公募し全国的な臨床研究実施体制の確立に資するように配慮している。 |
本研究事業の推進を契機として、循環器系疾患等で効果的な医療技術の確立を推進するための国内外のエビデンスの整理等が行われ詳細なガイドラインが多数公表されるに至った。また各疾患の医療手順は具体的にクリニカルパスの形でまとめられ順次公表が始まっている。これにより病院在院日数の短縮や医療事故の減少にも貢献することが期待されている。 また従来我が国において循環器系疾患の診断・治療等に関する臨床研究が実施されてきたが、科学的根拠を確立するために必要な医師主導の質の高い比較試験が十分実施されてきたとは言い難い。しかし本研究事業を契機として、EBMの推進に対する研究者の意識が高まると共に臨床研究支援のための人材も育ちつつあり、我が国でも質の高いエビデンスが得られる大規模完全無作為割付試験を行える体制が整いつつある。 また昨今の医療技術の進歩に伴い循環器系疾患の治療法等いろいろと工夫されてきており、どの治療法が効果・効率性の面で優れているか等総合的に比較検討する必要があるが、本研究事業では具体的に以下の様な研究課題のもと科学的検証が進められ多くの成果を上げてきている。 ○研究課題の主な例
また「厚生労働省多目的コホート班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究」、「糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究」では、糖尿病と生活習慣の関係や長期大規模介入臨床研究の知見が集まってきており、これらの中で日本人の患者の特性が明らかになってきた。これらの成果を糖尿病合併症の発生予防に役立てられるものと期待される。 |
研究の倫理性の確保 臨床研究を行う上で倫理に配慮することは重要である。本事業では「疫学研究における倫理指針」(文部科学省、厚生労働省)、「遺伝子解析研究に関する倫理指針」(経済産業省、文部科学省、厚生労働省)、「臨床研究に関する倫理指針」(厚生労働省)等の遵守についても厳正な審査を行い、研究の倫理性の確保に努めている。 |
(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項 (2)各種政府決定との関係及び遵守状況 (3)総務省による行政評価・監視等の状況 (4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等) (5)会計検査院による指摘 |
心疾患、脳血管疾患は我が国の3大死因のうち2位と3位を占め、総死亡の3割を占める重要な疾患である。近年の診断・治療法の著しい進歩により循環器系疾患等の急性期死亡率は減少してきたが、たとえ救命されても再発と後遺症のために生活の質(QOL)が低下することが多いのが現状である。 循環器系疾患の場合には超急性期の診断・治療が特に重要であり、これにより患者のQOLが大きく左右される。この点に関し診断・治療法の開発、専門医の育成など一層の充実が必要である。さらに発症予防やリハビリテーション技術の開発も十分とはいえない。 このような社会的要請に応えるため本研究事業では、全国規模で質の高い臨床試験が行える体制を整え、この臨床研究体制を基盤として日本人のエビデンスが集積され、日本人に最適な効果的かつ効率的で質の高い治療法等の医療技術が確立されることを目指している。実際、本研究事業のもとで例えば、冠動脈インターベンションの現状が明らかになってきており、新しい狭心症治療ガイドラインの作成を目指し現在、臨床試験が進行中である。インターベンションの治療費は高額であるため、得られる結果を活用することにより今後医療費節減につながるものと期待される。また糖尿病と生活習慣の関係や糖尿病の血管合併症予防に関する長期大規模介入臨床研究の知見が集まってきており、これらの中で日本人の患者の特性が明らかにされ、糖尿病合併症の発生予防に役立つものと期待される。新規透析導入患者の原因の第1位が糖尿病であることを考えると、医療経済に与える影響が大きいと思われる。 さらに研究の実施体制においても、広く全国から公募し全国的な臨床研究実施体制の確立に資するように配慮しており、厚生労働省の政策医療を推進する上でも貴重な資料を提供するものである。 以上、本研究事業を一層推進し、これまでに得られた成果の普及・啓発をはかることにより、合理的で患者の満足度が高くしかも医療費の抑制につながる医療が進むものと期待される。 |