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生物由来製品のリスク評価・管理手法の開発に関する研究
人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される生物由来製品は、その高い有用性に期待が寄せられており、今後、科学技術の進展に応じた新しい製品の開発が更に促進される一方、ヒト乾燥硬膜やHIV感染の発生に見られるように、生物由来製品には、原材料に由来する感染リスク等について、特段の注意を払う必要がある場合がある。
これまでの研究成果として、細胞組織製品等先端的なバイオテクノロジー応用製品の品質・安全性の確保等のリスク管理に関する研究がなされ、薬事法の製造管理・品質管理規則の改正を始め、改正薬事法の科学的な基礎となる研究成果を提供してきたところである。
今後は、より定量的にそのリスクを評価できる手法、及び、品質・安全性に加え、リスク・ベネフィットの評価を適正に行うため、有用性評価の手法等を確立するための研究を行う。これらの研究は、患者の安全確保、生物由来製品に対する信頼性の向上、そして、我が国のバイオ産業の発展にも大きく貢献すると予想され、緊急を要する課題である。
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A) |
安全な血液製剤の安定供給の確保、人工血液の開発等に関する研究
血液製剤は、人の血液を原料として製造されることから、ウイルス等病原体の感染リスクを完全には否定できない可能性があるという特徴を有している。実際に、我が国は血液凝固因子製剤によるHIV感染問題という深甚な苦難を経験していることから、より安全な血液製剤を供給するための不断の努力が必要である。
これまでの研究成果として、HIV、HBV及びHCVの核酸増幅検査(NAT)の標準品や検査法のガイドラインを作成してきている。また、病原体の感染リスクのない血液製剤の開発を目指し、人工血液の開発研究を実施してきており、人工赤血球は有効な最終製剤が出来上がるところまで研究が進んできている。
昨年7月には、血液製剤の安全性確保の重要性に加え、安定供給確保の観点から、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律が公布され、本年7月から施行される予定である。法律の趣旨を踏まえ、今後は血液製剤の安全性確保に関する研究、安定供給の確保に関する研究、人工血液に関する研究を行う。
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新たに問題となる病原体の不活化・除去に関する研究 |
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検査法の確立やガイドラインの作成等に関する研究 |
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人工赤血球や人工人免疫グロブリン等の開発に関する研究 |
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血液製剤の適正使用推進に関する研究 |
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献血者の健康被害発生防止に関する研究 等
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B) |
ワクチン、抗毒素等に関する研究について
ワクチン、抗毒素等(以下「ワクチン等」という)は、本年7月に施行される改正薬事法において、動物由来の原料から製造するということから、生物由来製品という新たな規制を受けることになっている。また、他の医薬品と異なり、製造期間が非常に長いという特徴を持っている。
これまでの研究成果として、新型インフルエンザ対策で想定しうる新型ワクチン株を開発し、緊急時に対応できるか検討しているところである。また、インフルエンザの流行は年により大きく変動し、ワクチン需要の変動が大きいという特徴を持つことから、ワクチンの欠品を避けるための需要予測を行っており、十分な供給量を確保してきている。
今後も新型インフルエンザや新型感染症の対策に関する研究、ワクチン等の安全性確保策に関する研究及び安定供給確保に関する研究を行う必要がある。また、テロ対策として必要なワクチン等の研究推進も実施する。
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C) |
高齢者・小児等における医薬品のリスク評価・管理手法の確立
高齢者、小児等の特殊な患者群については、新医薬品の開発の中で行われる治験において、その対象からはずされることが多く、医薬品の有効性、安全性に関する情報が不足している。このような状況の下、平成5年12月には、「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」を、平成12年12月には、「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」をそれぞれ国際的な整合性をもって作成し、新医薬品の開発の中で必要な、臨床試験等の範囲について示したところである。
今後は、市販後を含めた、これら特殊患者群に対する医薬品の有効性、安全性情報の収集と、それらの情報に基づくリスク評価・管理手法の研究を行う。そのため、これら特殊患者群を対象とした、市販後も含めた総合的な有効性、安全性データの収集の手法を検討し、更に、それらの情報に基づくリスク評価と必要な情報の提供手法等の医薬品の管理手法を研究する。
これらの研究により、小児、高齢者等の特殊患者群を対象とした医薬品の適正使用情報の提供のより一層の充実が図られるものと考えられる。
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E) |
医薬品の品質マネジメントに関する研究
近年、製造技術の進歩、設計の複雑化・多様化などを背景に、従来の品質管理手法に比べ、より有効で効率的な手法として、リスク要因別に従来以上に工程特性に着目した管理手法等の妥当性・有効性などが議論され始めている。特に、医薬品の製剤工程、医療機器の品目カテゴリー別の品質マネジメント手法については近く国際基準の議論が開始されることから、この分野について重点的に研究を行う。 |
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市販後安全対策の高度化に関する研究
医薬品・医療機器等が承認後市販されると、限られた背景を持つ限られた患者を対象に実施する治験とは異なり、多様な背景因子を有する患者に対して広く使用されるため、治験時には明らかではない副作用等が発現することがあり、市販後における安全対策は重要である。
これまで、医薬品・医療機器等に関する臨床使用上の注意事項の整備や、適正使用情報を正確かつ安定的に提供するため添付文書の記載に係る標準的なガイドラインの整備等を行い、関係者に周知してきている。
今後は、国民の医薬品等による健康被害を最大限防ぐ観点から、副作用の発生を未然に防ぎ、拡大を防止する体制の構築を目指す。
具体的には、医薬品・医療機器等による副作用情報等の適正かつ効果的な収集・解析方法の開発や、医薬品等の安全性に関する情報の一元的管理・提供方法の確立、そして、市販後安全対策の諸制度の検証及び見直し等に関する研究を行う。
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A) |
市販後における継続的な医薬品の有効性の評価に関する研究
医薬品は市販後に多数の患者に使用されるため、市販後における医薬品の使用実績、適正使用情報等は極めて重要な情報であるが、医療現場に迅速に情報提供されていないのが現状である。
そこで、承認前の治験等では得られなかった臨床現場における適正使用情報等を速やかに収集・解析し、医療現場あるいは行政上活用するための研究を行う。
このような研究は、個々の患者の体質(年齢、遺伝的背景等)を考慮した使用方法(テーラーメード医療)の開発等にもつながると考えられる。
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B) |
リスクコミュニケーションに関する研究
医薬品等による副作用等を防止するひとつの有効な手段として、医師、薬剤師等の医療関係者及び実際に医薬品等を使用する患者等が医薬品等による副作用等の発現について十分理解することがあげられる。
そのため、医療関係者に対する周知を図ることを目的とし、医薬品等に関する安全性情報の標準的な提供方法や、添付文書の記載の科学的根拠となる文献等の情報にまでさかのぼることが可能なシステムの確立に関する調査研究等を実施するとともに、患者・国民への理解を深めるため、患者・国民にとって理解しやすいような用語の整備に関する調査研究等を実施してきたところである。
国民の医薬品等の安全性に対する関心が高まる中、今後より一層、副作用等情報に関する情報開示への要請が高まることが予想される。このような状況の下、医療関係者及び患者・国民の医薬品等の安全性に対する十分かつ正しい理解を促すためには、開示した情報について十分かつ適切な説明を行う必要がある。また、医薬品等の有効性についても、医療関係者及び患者・国民が過度の期待を抱かぬよう、正確な情報提供と説明が必要である。今後は、情報提供先とのコミュニケーションの手法やその効果的な実施のための環境整備に関する調査研究を行う。
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C) |
薬物乱用対策に関する研究
薬物依存形成メカニズムの解明、薬物の分析法開発、薬物中毒・依存の治療、薬物乱用実態調査等、多岐にわたる調査研究を実施し、その成果は政府の薬物乱用防止5か年戦略の策定等、我が国の薬物対策の立案・実施のための基礎資料として活用されてきた。
現在、我が国においては、覚せい剤が最大の乱用薬物であり、さらに大麻やMDMAのような錠剤型麻薬等、乱用薬物の多様化の兆しがみられる。さらに、未成年者の薬物汚染も依然として憂慮すべき状況にある。
薬物問題は人類共通の課題であり、我が国においても、薬物対策を一層強力に推進していくため、新たな状況に対応した調査研究を実施する必要がある。
具体的には、押収覚せい剤の化学分析から密造地、密造ルートを解明するシグニチュア・アナリシス技術の確立、薬物乱用実態のより正確かつ迅速な把握、薬物中毒・依存者の治療・リハビリに関する実証的研究、麻薬原料植物の代替開発協力のための研究等を行う。
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3)医薬品規制の国際調和の推進に関する研究 |
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新医薬品の承認審査資料の国際調和については、日米EU医薬品規制調和国際会議において検討され、ここ数年間に外国臨床データの受入、承認申請データの様式の統一が図られてきた。
これまでの研究成果として、医薬品開発に伴う有効性・安全性の評価方法等について米、EU等と共同研究を行い、その成果を国際学会、ICH、WHO、APECなどの国際会議において発表し、国際的なガイドラインの設定やその運用のためのQ&Aを作成するなど優れた業績を挙げている。
規制当局としても、これらガイドライン等を国内の医薬品規制に遅滞なく取り込むことにより、新医薬品の承認審査データの国際的な相互受入れを実現し承認審査を迅速化するとともに、新医薬品の研究開発を促進するために役立ててきている。
国際的な医薬品の開発、同時申請が現実のものとなりつつあるが、日米EU3極においてさらに普遍的な有効性、安全性の評価を実現するため、引き続き研究を行うことが必要である。
また、生物由来製品についても、ウイルス等によるリスクのバリデーション、製造方法の変更・変化に起因する製品の品質保証の観点からの議論が国際的に進行している状況がある。また、生物由来製品の品質管理については、改正薬事法の生物由来製品に対する規制の施行とも関連することから、国際的に通用する科学的な評価手法の研究が必要である。
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医薬品の有効性・安全性保証に関する予測的な前臨床及び臨床的試験法の開発 |
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臨床試験の方法、臨床試験の国際間の相互受入れ、統計解析法など |
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市販後の安全性データの収集方法、統計解析法 |
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化学医薬品の品質評価手法 |
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生物由来医薬品の品質・安全性評価手法 |
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遺伝子治療用医薬品の品質・安全性評価手法 |
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