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(別添資料)
事業内容の詳細
1.安全管理体制の高度化研究
 今国会で成立した食品安全基本法を踏まえ、今後厚生労働省ではこれまでよりさらに充実したリスク管理が求められることとなるため、安全管理システムの高度化、危機管理体制の強化、わかりやすいリスクコミュニケーションの構築、安全管理体制に関する研究者、技術者の育成に関する研究開発を重点的かつ集中的に進める必要がある。
 (1)安全管理体制の高度化
 これまで食品の安全性確保に係る研究としてこれまで推進してきた研究のうち、まず国内外で必要とされる研究関連情報の双方向的ネットワークの必要性が強く求められておらず、密に構築されていなかった。具体的には国内では、国立医薬品衛生研究所や地方衛生研究所、検疫所、保健所との間、さらに国際的な研究機関との間で食品衛生関連情報を双方向的にデータの交換を行うネットワークを構築することである。また、そうした中で得られた情報をデータベース化し、データベース化された食品安全情報を基に、現在不足しており、強化が必要と考えられる研究や将来的に必要と予測される研究の分析・収集が必要である。また、その情報を厚生労働省食品保健部に提供するとともに、国内の食品衛生関連研究機関へ振り替える体制を整備することも併せて必要である。
 (2)危機管理体制の強化
 今後の食品衛生に関連する危機管理体制を発展・強化するためには、国内の厚生労働省食品保健部をはじめ、国立医薬品衛生研究所や地方衛生研究所、検疫所、保健所とさらに国際的な研究機関との間で最新の食品衛生関連情報を迅速かつ双方向的な情報交換を行うことが重要で、そうしたネットワークシステムを構築する必要がる。
 (3)わかりやすいリスクコミュニケーションの構築
 有効かつ効果的なリスクコミュニケーションのあり方を発展させていくことは、今後の食品衛生行政を行う際に重要である。具体的にどのような規模・どのようなやり方で行うのかに主眼を置き、実際に行う際の問題点、そしてその対処法までを視野に入れた調査研究を行い、それが地方自治体で施行できるマニュアル等の作成を行う必要がある。
 (4)安全管理体制に関する研究者・技術者の育成
 食品衛生の分野は多岐にわたっており、その検査技術に関しては高度な専門的知識を必要とするものがある。
 特に近年、IT、バイオ、ナノテクノロジー等の先端科学の進歩は目覚ましく、そうした先端科学を従来の検査技術に融合・応用した新しい検査技術そのものの開発や、検査の改良・開発に関わる研究者や技術者の育成を視野に入れた教育プログラムを開発する必要がある。
2.安全性に係る調査研究や検出技術等の開発
 (1)食品安全推進総合研究分野
 食品衛生における微生物学的リスク評価に関する調査研究、食品由来の健康被害対策の高度化に応じた対策のあり方に関する研究、特定保健保健用食品素材の安全性評価など新開発食品の安全性確保及び有用性の評価、残留農薬などの食品中化学物質等の安全性評価に関する研究など食品の安全性を確保するための調査研究を総合的に推進する。
・リスクアセスメントに関する基盤的研究
 食品に起因する健康危害を防止するため、危害確認、危害特性の同定、暴露評価、リスクレベル推定からなる安全性評価を行う。
・リスクマネジメントに関する研究
 リスクアセスメントの結果から、健康に危害を及ぼす各種因子(製造工程、食品用器具・容器等)によるリスク低減化を図るために採るべき管理手法の決定・実行を支援する。
・リスクコミュニケーションに関する研究
 危害の種類に応じた食品の安全性に関する情報及び意見を消費者、関係業界の間で相互に交換する手法の開発。
 (2)健康食品等の安全性・有効性評価研究分野
 いわゆる健康食品については、その流通が増大しており、安全性・有効性についての科学的な評価の推進が強く求められている。このような社会的背景を踏まえ、バイオテクノロジー戦略大綱において、成分分析や実験・疫学データなどからその有効性の評価を推進することとしており、安全性・有効性の評価に資する研究開発を強化する必要がある。
 健康食品は、濃縮され、錠剤やカプセル等の形態をとることにより、通常の食品の摂取量を超えて、継続的に長期間摂取されうることから、安全性に関する知見に乏しい健康食品そのものの問題が生じたり、それを摂取している生体側の要因との関与を考える必要がある。無理なダイエットや極端な食事摂取などの栄養条件、加齢、医薬品の併用などが健康食品による健康被害の発生に大きく関与している可能性が否定できないことから、こうした健康食品と健康食品の利用対象者を考慮した調査研究が必要である。
 評価法の開発などの基礎的研究を研究費で行い、事業費では、情報提供に必要なデータベースの整備などを行う。(評価に必要な有効性のデータなどは申請者が収集する。)
 (3)牛海綿状脳症(BSE)に関する研究分野
 BSEリスクの解明に関する研究において、サル(カニクイザル)等を用いた感染実験によって、異常プリオンの動物体内における挙動を解明し、感染実験の充実を図り様々なモデル実験のデータを蓄積することが必要であり、取り組みを強化する。
 研究費については、リスク評価に必要なデータの収集、メカニズムの解明等を目的としており、事業費では、リスク評価結果に基づくリスク管理(検査の実施など)などを行う。
 (4)遺伝子組換え食品の検知及び安全性評価に関する分野
 FAO/WHO専門家会議やコーデックス委員会等での議論を踏まえ、ヒト血清スクリーニング試験系やモデル動物を用いた試験実験系などの遺伝子組換え食品のアレルギー性評価手法や試験法等を確立するとともにし、抗生物質耐性マーカー遺伝子の移行性に関する評価を行う。
 また、後代での遺伝子の変化が遺伝子組換えに起因する変化であるか否かは明らかではないため、挿入遺伝子に係る後代種での変化が食品の安全性に影響を及ぼさないか等の調査・分析を行うことやその追跡調査(ポストマーケットモニタリング)に必要な手法・検査方法を検討・開発する。
 更に遺伝子組換え微生物や遺伝子組換え魚等の新たな食品の開発とその実用化が進んでいることから、これらの安全性評価手法の検討を行うとともに、適切かつ有用な検知法の開発を進めていく。
 消費者の漠然とした遺伝子組換え食品への不安に対しては、安全性等に関する情報をいかに正確に伝え、理解を得るかが大きな問題となりつつある。このため、国民に遺伝子組換え食品の安全性に関する理解を深め、これら食品等への安心感を持ってもらうためのリスクコミュニケーションに関する調査及び分析を行う。
 (5)食品中の微生物のリスク分析手法の導入に必要な研究分野
 リスク管理とは、リスク評価の結果、リスクを科学的に洗い出し、そのリスクを軽減、回避、未然に防止するための施策決定をとることである。具体的には、どのようなリスクをどのように管理するかをデータに基づき、選択する必要があるが、この分野の研究の目的は、リスク評価の結果からとるべき管理手法を選択し、さらに実行された施策の評価に必要な研究である。
 健康被害の状況についてより正確に把握するためには、ハイリスクグループ(性別、年齢等)の有無、致死率、散発事例、地域差、通常の食中毒症状を呈さない食品由来疾病の調査等、従来の食中毒統計では把握することが困難な健康被害の状況について、正確に推測することが必要であり、そのための調査手法を開発する。
 危害の特徴付けとは、摂取した菌数によりどのくらいの確率で発症するかを解析することである。病原体をヒトに投与することができないことから、食中毒事例の検食等を用いて摂食菌量及びその発症率等を推定することは有用な手法である。
リスク管理手法の選択に際し考慮すべき要因、すなわち、どこまでのリスク軽減を求めるべきか、各リスク軽減措置に要する費用、軽減措置の導入に伴い予想される新たなリスク、軽減措置による恩恵とそのもののリスク等、政策を決定するために必要な要因について量的に評価できるデータの収集及びその効率的手法の開発を行う。
 実行されたリスク管理手法が、遵守されているかを確認(モニタリング)し、再評価するリスク管理における施策評価も行う。
 (6)添加物及び汚染物質に関する研究分野
 近年、重金属などの汚染物質が食品中に含まれていることが報告されており、その安全確保対策が強く求められている。食品への汚染が十分解明されていない汚染物質やその健康影響が不明なものについて、科学的データを得るための調査研究を早急に実施することが必要であり、取り組みを強化する。
 健康影響メカニズムの解明など衛生対策の必要性の検討などに必要な基礎的知見の収集などを研究により行い、基準の策定に必要な汚染実態の調査などは、事業費により行う。
 (7)食品中の化学物質対策研究分野
 食品中に含まれる内分泌かく乱化学物質の試験法、毒性発現メカニズム、試料分析・モニタリング等に関する研究を行い、食品中に含まれる内分泌かく乱化学物質の健康影響の解明を強力に推進する。さらに、内分泌かく乱化学物質のリスク管理に関する研究を行い、もって内分泌かく乱化学物質が及ぼす毒性等が明らかになった場合の適切なリスク管理及び規制等の対策の実施に資する。
 食品に含まれるダイオキシンに分類される各種類縁化合物の正確な毒性把握をはじめ、食品の汚染実態調査、人体の汚染状況の把握、母乳による乳幼児への影響に関する研究、職域における健康影響把握等を一層推進することにより、ダイオキシン類の健康影響を体系的に解明する。
 ・ダイオキシン類や内分泌かく乱化学物質の消化管からの吸収調査
 ・人体からの排泄促進及び排泄機序
 ・食品や煙草煙、日用品の汚染実態
 ・容器包装からの溶出実験 等



医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究(事業内容)

1.医薬品に関する研究
1)医薬品のリスク評価・管理手法等に関する基準の策定等に関する研究
 @) 生物由来製品のリスク評価・管理手法の開発に関する研究
 人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される生物由来製品は、その高い有用性に期待が寄せられており、今後、科学技術の進展に応じた新しい製品の開発が更に促進される一方、ヒト乾燥硬膜やHIV感染の発生に見られるように、生物由来製品には、原材料に由来する感染リスク等について、特段の注意を払う必要がある場合がある。
 これまでの研究成果として、細胞組織製品等先端的なバイオテクノロジー応用製品の品質・安全性の確保等のリスク管理に関する研究がなされ、薬事法の製造管理・品質管理規則の改正を始め、改正薬事法の科学的な基礎となる研究成果を提供してきたところである。
 今後は、より定量的にそのリスクを評価できる手法、及び、品質・安全性に加え、リスク・ベネフィットの評価を適正に行うため、有用性評価の手法等を確立するための研究を行う。これらの研究は、患者の安全確保、生物由来製品に対する信頼性の向上、そして、我が国のバイオ産業の発展にも大きく貢献すると予想され、緊急を要する課題である。

 A) 安全な血液製剤の安定供給の確保、人工血液の開発等に関する研究
 血液製剤は、人の血液を原料として製造されることから、ウイルス等病原体の感染リスクを完全には否定できない可能性があるという特徴を有している。実際に、我が国は血液凝固因子製剤によるHIV感染問題という深甚な苦難を経験していることから、より安全な血液製剤を供給するための不断の努力が必要である。
 これまでの研究成果として、HIV、HBV及びHCVの核酸増幅検査(NAT)の標準品や検査法のガイドラインを作成してきている。また、病原体の感染リスクのない血液製剤の開発を目指し、人工血液の開発研究を実施してきており、人工赤血球は有効な最終製剤が出来上がるところまで研究が進んできている。
 昨年7月には、血液製剤の安全性確保の重要性に加え、安定供給確保の観点から、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律が公布され、本年7月から施行される予定である。法律の趣旨を踏まえ、今後は血液製剤の安全性確保に関する研究、安定供給の確保に関する研究、人工血液に関する研究を行う。
 ・ 新たに問題となる病原体の不活化・除去に関する研究
 ・ 検査法の確立やガイドラインの作成等に関する研究
 ・ 人工赤血球や人工人免疫グロブリン等の開発に関する研究
 ・ 血液製剤の適正使用推進に関する研究
 ・ 献血者の健康被害発生防止に関する研究 等

 B) ワクチン、抗毒素等に関する研究について
 ワクチン、抗毒素等(以下「ワクチン等」という)は、本年7月に施行される改正薬事法において、動物由来の原料から製造するということから、生物由来製品という新たな規制を受けることになっている。また、他の医薬品と異なり、製造期間が非常に長いという特徴を持っている。
 これまでの研究成果として、新型インフルエンザ対策で想定しうる新型ワクチン株を開発し、緊急時に対応できるか検討しているところである。また、インフルエンザの流行は年により大きく変動し、ワクチン需要の変動が大きいという特徴を持つことから、ワクチンの欠品を避けるための需要予測を行っており、十分な供給量を確保してきている。
 今後も新型インフルエンザや新型感染症の対策に関する研究、ワクチン等の安全性確保策に関する研究及び安定供給確保に関する研究を行う必要がある。また、テロ対策として必要なワクチン等の研究推進も実施する。

 C) 高齢者・小児等における医薬品のリスク評価・管理手法の確立
 高齢者、小児等の特殊な患者群については、新医薬品の開発の中で行われる治験において、その対象からはずされることが多く、医薬品の有効性、安全性に関する情報が不足している。このような状況の下、平成5年12月には、「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」を、平成12年12月には、「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」をそれぞれ国際的な整合性をもって作成し、新医薬品の開発の中で必要な、臨床試験等の範囲について示したところである。
 今後は、市販後を含めた、これら特殊患者群に対する医薬品の有効性、安全性情報の収集と、それらの情報に基づくリスク評価・管理手法の研究を行う。そのため、これら特殊患者群を対象とした、市販後も含めた総合的な有効性、安全性データの収集の手法を検討し、更に、それらの情報に基づくリスク評価と必要な情報の提供手法等の医薬品の管理手法を研究する。
 これらの研究により、小児、高齢者等の特殊患者群を対象とした医薬品の適正使用情報の提供のより一層の充実が図られるものと考えられる。

 E) 医薬品の品質マネジメントに関する研究
 近年、製造技術の進歩、設計の複雑化・多様化などを背景に、従来の品質管理手法に比べ、より有効で効率的な手法として、リスク要因別に従来以上に工程特性に着目した管理手法等の妥当性・有効性などが議論され始めている。特に、医薬品の製剤工程、医療機器の品目カテゴリー別の品質マネジメント手法については近く国際基準の議論が開始されることから、この分野について重点的に研究を行う。

2)市販後安全対策等に関する研究
 @) 市販後安全対策の高度化に関する研究
 医薬品・医療機器等が承認後市販されると、限られた背景を持つ限られた患者を対象に実施する治験とは異なり、多様な背景因子を有する患者に対して広く使用されるため、治験時には明らかではない副作用等が発現することがあり、市販後における安全対策は重要である。
 これまで、医薬品・医療機器等に関する臨床使用上の注意事項の整備や、適正使用情報を正確かつ安定的に提供するため添付文書の記載に係る標準的なガイドラインの整備等を行い、関係者に周知してきている。
 今後は、国民の医薬品等による健康被害を最大限防ぐ観点から、副作用の発生を未然に防ぎ、拡大を防止する体制の構築を目指す。
 具体的には、医薬品・医療機器等による副作用情報等の適正かつ効果的な収集・解析方法の開発や、医薬品等の安全性に関する情報の一元的管理・提供方法の確立、そして、市販後安全対策の諸制度の検証及び見直し等に関する研究を行う。

 A) 市販後における継続的な医薬品の有効性の評価に関する研究
 医薬品は市販後に多数の患者に使用されるため、市販後における医薬品の使用実績、適正使用情報等は極めて重要な情報であるが、医療現場に迅速に情報提供されていないのが現状である。
 そこで、承認前の治験等では得られなかった臨床現場における適正使用情報等を速やかに収集・解析し、医療現場あるいは行政上活用するための研究を行う。
 このような研究は、個々の患者の体質(年齢、遺伝的背景等)を考慮した使用方法(テーラーメード医療)の開発等にもつながると考えられる。

 B) リスクコミュニケーションに関する研究
 医薬品等による副作用等を防止するひとつの有効な手段として、医師、薬剤師等の医療関係者及び実際に医薬品等を使用する患者等が医薬品等による副作用等の発現について十分理解することがあげられる。
 そのため、医療関係者に対する周知を図ることを目的とし、医薬品等に関する安全性情報の標準的な提供方法や、添付文書の記載の科学的根拠となる文献等の情報にまでさかのぼることが可能なシステムの確立に関する調査研究等を実施するとともに、患者・国民への理解を深めるため、患者・国民にとって理解しやすいような用語の整備に関する調査研究等を実施してきたところである。
 国民の医薬品等の安全性に対する関心が高まる中、今後より一層、副作用等情報に関する情報開示への要請が高まることが予想される。このような状況の下、医療関係者及び患者・国民の医薬品等の安全性に対する十分かつ正しい理解を促すためには、開示した情報について十分かつ適切な説明を行う必要がある。また、医薬品等の有効性についても、医療関係者及び患者・国民が過度の期待を抱かぬよう、正確な情報提供と説明が必要である。今後は、情報提供先とのコミュニケーションの手法やその効果的な実施のための環境整備に関する調査研究を行う。

 C) 薬物乱用対策に関する研究
 薬物依存形成メカニズムの解明、薬物の分析法開発、薬物中毒・依存の治療、薬物乱用実態調査等、多岐にわたる調査研究を実施し、その成果は政府の薬物乱用防止5か年戦略の策定等、我が国の薬物対策の立案・実施のための基礎資料として活用されてきた。
 現在、我が国においては、覚せい剤が最大の乱用薬物であり、さらに大麻やMDMAのような錠剤型麻薬等、乱用薬物の多様化の兆しがみられる。さらに、未成年者の薬物汚染も依然として憂慮すべき状況にある。
 薬物問題は人類共通の課題であり、我が国においても、薬物対策を一層強力に推進していくため、新たな状況に対応した調査研究を実施する必要がある。
 具体的には、押収覚せい剤の化学分析から密造地、密造ルートを解明するシグニチュア・アナリシス技術の確立、薬物乱用実態のより正確かつ迅速な把握、薬物中毒・依存者の治療・リハビリに関する実証的研究、麻薬原料植物の代替開発協力のための研究等を行う。

3)医薬品規制の国際調和の推進に関する研究
   新医薬品の承認審査資料の国際調和については、日米EU医薬品規制調和国際会議において検討され、ここ数年間に外国臨床データの受入、承認申請データの様式の統一が図られてきた。
 これまでの研究成果として、医薬品開発に伴う有効性・安全性の評価方法等について米、EU等と共同研究を行い、その成果を国際学会、ICH、WHO、APECなどの国際会議において発表し、国際的なガイドラインの設定やその運用のためのQ&Aを作成するなど優れた業績を挙げている。
 規制当局としても、これらガイドライン等を国内の医薬品規制に遅滞なく取り込むことにより、新医薬品の承認審査データの国際的な相互受入れを実現し承認審査を迅速化するとともに、新医薬品の研究開発を促進するために役立ててきている。
 国際的な医薬品の開発、同時申請が現実のものとなりつつあるが、日米EU3極においてさらに普遍的な有効性、安全性の評価を実現するため、引き続き研究を行うことが必要である。
 また、生物由来製品についても、ウイルス等によるリスクのバリデーション、製造方法の変更・変化に起因する製品の品質保証の観点からの議論が国際的に進行している状況がある。また、生物由来製品の品質管理については、改正薬事法の生物由来製品に対する規制の施行とも関連することから、国際的に通用する科学的な評価手法の研究が必要である。
 ・ 医薬品の有効性・安全性保証に関する予測的な前臨床及び臨床的試験法の開発
 ・ 臨床試験の方法、臨床試験の国際間の相互受入れ、統計解析法など
 ・ 市販後の安全性データの収集方法、統計解析法
 ・ 化学医薬品の品質評価手法
 ・ 生物由来医薬品の品質・安全性評価手法
 ・ 遺伝子治療用医薬品の品質・安全性評価手法


2.医療機器の有効性・安全性・品質の確保に関する研究
 医療機器の分野については、これまで本研究事業の成果として、GCP、GLPの作成、生物安全試験ガイドラインの改正などが行われており、現在、これら基準が、薬事法規制の中にとりいれられつつあるところである。
 また、市販後安全対策の充実のために、添付文書記載要領の作成、添付文書データベースの構築、不具合報告用語の統一といったガイドライン等を作成し又は検討しているところである。
 今後は、医療機器産業ビジョンにもあるとおり、医薬品に比べ遅れている医療機器の分野におけるレギュラトリーサイエンスの充実を図り、科学的根拠を持った承認審査、市販後安全対策の質の確保・向上を進めていく必要がある。
 医療機器の分野においては、それら科学的根拠の収集、整理、分析を進め基準、ガイドラインにまとめあげることを目標とし、科学的根拠に基づく承認審査から品質システム監査、市販後安全対策体制の構築を図る。
 特に、医療機器の場合には製品改良することにより、市販後の不具合発生が大きくに改善するケースが多く、不具合情報等を製品改良、承認審査にスムーズに結びつけるしくみの構築が重要である。
 不具合情報については市販後の安全対策に直接的に活用するだけでなく、科学的知見をデータベースに集積すること等により、安全な医療機器の開発支援、医療現場での教育、適正使用の推進に貢献することができる。
 なお、医療機器は40%以上が輸入であり、基準、ガイドラインの作成に当たっては、各国規制当局の動向を十分調査し国際整合を常に視野にいれて研究することが必要であり、国際基準にまだなっていない分野については、日本発の国際基準作成を目指す。
 来年度からの3年間では、これまで整備されてきた製品横断的基準・ガイドラインの作成から、個別分野の製品基準・ガイドラインの作成を目指し、行政への具体的な応用のための研究を行う。
 ・ ISO14971(医療機器のリスクマネジメント手法)を基礎とした個別医療機器分野の具体的なリスク評価・マネジメントガイドラインの作成
 ・ ISO14969(医療機器品質システムの包括的ガイダンス)を基礎とした個別医療機器分野の具体的な品質システムガイダンスの作成
 ・ 国際的に通用している基準がない製品群における製品基準・ガイドラインの作成
 ・ 発生傾向別不具合報告制度の創設に必要な研究(発生傾向をどの期間(1週間、1月、1年)で、どの幅(発生率)で管理するかについて科学的な検証を行う。)

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