事務事業名 | こころの健康科学研究経費 |
担当部局・課主管課 | 障害保健福祉部企画課 |
関係課 | 大臣官房厚生科学課、健康局疾病対策課、障害保健福祉部精神保健福祉課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 研究を支援する体制を整備すること |
I | 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な実施を確保すること |
近年、注目されている「自殺」「キレる子」「ひきこもり」等の心の健康問題、「統合失調症(精神分裂病)」、「感情障害(そううつ病)」等の精神疾患、「アルツハイマー病」「パーキンソン病」等の神経疾患に対し、最新の知見に基づいた予防法、治療法等の開発およびこれらを活用した適切な対応を進めるため、心の健康問題や精神疾患、神経疾患に関して、分子生物学的手法および画像診断技術等の最先端バイオ・メディカル技術の活用、疫学調査等による病因・病態の解明、画期的な予防・診断・治療法等の研究開発等、最新の医学的知見を適切に施策に反映し、国民のニーズを踏まえた行 政課題の解決に資する研究を推進する。 これらの実施にあたっては、行政上重要な課題を公募し、行政面の評価に、専門家による学術的観点からの評価を加えた、事前評価の結果に基づき採択を行う。研究進捗状況についても適宜評価を加えるととともに、研究の成果は随時適切に行政施策に反映させる。 |
H12 | H13 | H14 | H15 | H16 |
― | ― | 2,142 | 1,898 | (未確定) |
注: | 平成14年度から「脳科学研究事業」「障害保健福祉総合研究(一部)」を再編・統合して発足した。 予算額には推進事業費を含む。 |
(1)現状 「自殺」「キレる子」「ひきこもり」等の社会的問題と関連の深い心の健康問題、「統合失調症(精神分裂病)」、「感情障害(そううつ病)」等の精神疾患、「アルツハイマー病」「パーキンソン病」等の神経疾患は、国民の大きな健康問題となっている。しかし、これらの疾患は、一般の身体的な疾患に比べ、分子生物学的手法および画像診断技術等の最先端バイオ・メディカル技術の活用等、最新の医学医療の活用が進んでいない面もあり、画期的な予防・診断・治療法等の研究開発等が求められている。 (2)問題点 心の健康問題、精神疾患、神経疾患は、国民の大きな健康問題であり、社会の関心も高いにもかかわらず、その本態の解明や、有効な診断・治療方法の開発は未だ十分でなく、積極的な取り組みが求められている。 (3)事業の必要性 心の健康問題、精神疾患、神経疾患に対して、神経科学、分子生物学的手法および画像診断技術等の最先端バイオ・メディカル技術の活用、疫学調査等による病因・病態の解明等を通じて、画期的な予防・診断・治療法等の開発するため、研究を推進することが必要である。 研究事業の実施にあたっては、行政的ニーズおよび学術的・専門的観点からの検討に基づき課題を提示して公募を行い、得られた研究成果については、適切に行政施策に反映させる。 |
平成15年度においては、 ・ 精神疾患治療ガイドラインの策定 ・ 自殺予防のための介入手法 ・ 精神疾患の画像診断手法の開発 ・ 精神疾患の分子生物学的機序 ・ こころの健康に関する疫学調査 ・ 不随意運動症の中枢メカニズムの解明と治療法の開発 ・ 免疫性末梢神経障害の病態解明と治療法の開発 ・ 糖鎖修飾異常による筋疾患の病態解明と治療法の開発 等を進める予定である。 |
わが国の精神疾患による受療者は200万人を超え、また年間の自殺死亡者は3万人を超えている。また、思春期のひきこもり、問題行動など、心の問題と関連する社会問題もクローズアップされている。このように、「こころの健康問題」は、従来からのテーマである精神分裂病(統合失調症)等の狭義の精神病はもちろんのこと、軽症のうつ、神経症、摂食障害、ストレス性障害、睡眠障害、幼少期からの発達障害等、非常に広範かつ深刻な問題にまで及んできている。また高齢化の中で、アルツハイマー病等の神経疾患も重要になってきている。 また、これらの問題の特性として、遺伝子解析・分子機構解明・画像解析等による脳内機構解明から、表現される行動面の評価、福祉を含む社会システムとの関連、倫理や人権上の問題までをも含む多角的、重層的な視野での取り組みが不可欠となってきている。 これらのことから、「こころの健康問題」に対する予防、診断、治療法の開発や疫学調査については、行政的において主体的に進めることが適当である。このため、行政上必要な課題を公募し、採択課題に対して補助金を交付し、その研究結果を施策に反映させることが必要である。 |
こころの健康科学研究事業では行政的なニーズの把握に加え、学術的な観点からの意見を踏まえて公募課題を決定することとしている。 また採択課題の決定にあたっては、行政的観点からの評価に加え、各分野の専門家による最新の研究動向を踏まえた評価結果(書面審査およびヒアリング)に基づき研究費を配分している。さらに、中間・事後評価(書面審査およびヒアリング)の実施等により、効率的・効果的な事業実施が行われている。 |
こころの健康科学研究事業では、精神疾患、神経疾患の病因・病態の解明、遺伝子情報に基づく機能予測、疫学調査等を行うことにより、画期的な予防、診断、治療法等の研究開発を推進するとの目的に添った研究事業を実施しており、平成14年度においては、こころの健康科学分野では
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推進事業においては、外国人招聘、外国への日本人研究者派遣、リサーチレジデント事業が実施され、国際交流や若手研究者の育成に効果を上げている。 |
・平成14年12月の社会保障審議会障害者部会精神障害分会においても、本研究事業の活用による研究開発の推進を明記している。
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精神疾患、神経疾患は、患者数が多く、また心身の深刻な障害の原因となりうることから、国民の健康問題として非常に重要なものとなっている。本研究事業は、これらの疾患について、神経科学、分子生物学的手法および画像診断技術等の最先端バイオ・メディカル技術、疫学調査を活用すること等により、画期的な予防・診断・治療法等の調査、研究、開発を行うものとして、平成14年度から既存研究事業の発展的な再編のうえ発足したものである。 これらの疾患の病態解明や診断治療法の開発は、一般の身体疾患に比べて最新の医学医療技術の活用が必ずしも十分進んでいない。また、こころの健康科学の研究においては、これら最新の医学医療技術の活用のみならず、福祉を含む社会システムや倫理的課題までを視野に入れた学際的な取り組みも必要となるが、本研究事業の実施によりこれらの連携が進み、研究基盤が確立するとともに新たな研究分野の形成や発展も期待されるところである。このため、今後とも行政的に重要な課題を中心に、研究の一層の拡充が求められる。 これまでの研究成果は、学術的な成果として発表され、本分野の研究の進展に寄与しているのはもちろんのこと、随時、行政施策に反映され、こころの健康問題や精神疾患、神経疾患対策の充実に貢献してきている。 こころの健康科学研究は広い範囲を対象とするものであるから、優先度の高い課題を適切に選定して効率的に推進することが重要である。現在でも、行政的なニーズに学術的な観点を加えて、公募課題を決定し、応募された課題の事前評価と採択、中間・事後評価等を実施しているが、これらの評価システムをより有効に運営することが求められている。 |