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中西委員配布資料

重度重複障害者の地域支援の事例
はじめに

 八王子市で活動している「スペースらせり」と「グループハウスろばの家」は、主に重度重複障害者を対象に障害者自立生活プログラムを実践している。そこでの実践事例を通じて地域支援のあり方を考えていきたい。重度重複障害者の障害は、身体障害と知的障害の重複と視覚障害と知的障害の重複の人たちのことを言います。

スペースらせりの事例
 1990年地域の中で一人暮らしを目指す重度障害者の宿泊体験の場の提供と親のレスパイトを主な事業として始まりました。その後、一人暮らしを目指す人の体験室は他の団体へ移行していきました。1993年から重度重複障害者達のグループ宿泊が始まりました。今までのレスパイトや個人宿泊体験から将来の生活の場づくりと仲間作りに向けて、障害者3人と介助者2人の小グループでの4泊5日の宿泊をしていきました。メンバーは10数名いて、いろいろな組み合わせと本人の希望をとって毎週実施しました。介助者は主に学生を中心に40名くらい確保していました。1997年にスペースらせりの利用者が多くなり、利用のニーズも多様になったため、グループ宿泊をしていたメンバーを中心に、新たに「グループハウスろばの家」を作りました。現在のスペースらせりは、2001年から学齢期の障害児対象の放課後活動を始めましたので、年齢や障害の内容も多様になりました。市内の10箇所以上の作業所や実習所や学校から来ています。利用のニーズは、宿泊体験の場の提供のほかに、日中の利用、週末のレクリエーションの利用、緊急一時利用などです。

2002年度の重度重複障害者の利用実績

利用会員:51人(内訳:肢体5人、知的21人、重複25人)
利用件数:679件 内、重複532件

プログラム別

介助者:38人(内訳:学生26人、有識者:12人)
年間活動日数:1032日、年間活動時間:約8000時間

個別宿泊体験プログラム(日中利用含む):464回/年
レクリエーションプログラム:4回/年
緊急一時利用:85回/年
財政:コーディネーター人件費(常勤1人、非常勤6人) 564万円
担い手報酬費404万円

   (決算書参照)

2002年度の利用の特徴
(1)個人宿泊の中で定期的な利用が多くなった。週1から2回や月1から2回の宿泊を利用者のペースで泊まる。定期的に泊まるので、介助者も利用者に慣れていきました。
(2)学齢期前の重複障害の利用がありました。地域サービスが少なく、また核家族のために見てくれる人がいないのでニーズとしてはこれから増えると思う。
(3)親のレスパイトが地域支援にないので、ニーズとしては今年度も多かった。

グループハウス ろばの家
 1997年、スペースらせりのグループ宿泊のメンバーを中心に新たな場所を借りて始めました。また、1998年4月からメンバーの親が亡くなり、介護者がいなくなり、本人の意思で施設には入りたくないということから、ろばの家の一部屋を提供して生活が始まりました。その方の支援について本にまとめました。ろばの家は、グループ宿泊をベースに、個別に1ヶ月単位の宿泊体験や勉強会などを行いました。2002年には、重度身体障害者のグループホームを作り4名の人が入居しました。2003年4月からろばの家の一部屋で生活していた人が一人暮らしに移行することができました。

2002年度の利用実績
利用会員:20人 (内訳:重複11人、知的1人、肢体8人)
利用件数:720件 内、重複680件

プログラム別
個別宿泊体験プログラム(日中利用含む):357回/年
グループ宿泊体験:83回/年

介助者:28人(内訳:学生21人、有識者6人、主婦1人)
年間活動日数:1246日、年間活動時間:約10000時間

財政:コーディネーター人件費(常勤1人、非常勤5人)616万円
担い手報酬費400万円

   (決算書参照)

2002年度の利用の特徴
(1)本人のエンパワメントをつけてきた。1ヶ月以上の宿泊体験の利用が4人いた。
(2)重度身体障害者のグループホームづくりに向けての取り組みで4人がグループホームへ入居することができた。
(3)一人暮らしへ移行することができた。家探しを始め一人暮らしに向けての支援(金銭管理や家族支援や介助者との話し合い等)をしてきた、
(4)重度重複障害者の地域支援のスタイルが実際にグループホームや一人暮らしという形で実践することができた。


重症心身障害児(者)施策に関する意見


1.重症心身障害児を取り巻く現状
 ・重症心身障害児は、何歳になろうと、法律上「児童」扱い
 ・「重症心身障害児(者)」の定義自体が不明確
 手帳の判定度数と障害の実態があっていない問題に関して放置されている
 ・医療技術の進歩による重症心身障害児(者)の増加
 重症心身障害児(者)数  推計(1999.3.)全国 37,500人
 在宅の重症心身障害児(者)の人口比は約1万人に1人
 ・現在国には在宅の重症心身障害児(者)の施策がない
 ノーマライゼーションの理念 ⇔ 現在の入所施設しか法的に整備されていない現状
 医療的ケアの問題により、家庭以外の場所へ出て行くことが難しい重症心身障害児(者)
 (*付属品のような併設型の重症心身障害児(者)通園事業[A型、B型施設]は認められてはいるが、重症心身障害児者のための通所施設という独立したものは整備されていない)


2.課題
 ・重症心身障害児(者)の定義作成、及び重症心身障害児(者)施策の制度化
 ・20歳をすぎたら、重症心身障害者として(成人として)扱われること


3.名古屋市の単独事業の紹介
 「重症心身障害児小規模通所援護事業」
   事業開始年度平成6年度
   根拠法令・要綱等重症心身障害児小規模通所援護事業補助金交付要綱
   事業の目的在宅の重症心身障害児(者)等に対して、療育やレクリエーションなどの活動を行うことにより発達を促すとともに、生きがいを高める
   事業の趣旨日中活動をする場を設け、重症心身障害児(者)等の特性に応じた日常生活動作、運動機能にかかる訓練、レクリエーションなどを実施する事業に対し、運営費を補助する
   助成額1ヶ所あたり 年額 9,735,150円(6名利用の場合)
   利用人数5人以上
   開所日週5日
   専任指導員2人以上の配置
   事業実績箇所数21ヶ所 通所者105名(H14年度)

 現状
 
・実際には、2名の職員での運営は難しく、非常勤職員等を配置している・建物等の基準が緩やか(借家でもOK等)で、それぞれの障害者の方にあわせることができて、利用しやすい・医療的ケアの必要な通所者も利用しており、課題となっている
   → 制度として不十分な点はいくつかあるものの、現在100名を越す在宅の重心の方が通所し、必要な療育等を受けていることは評価できる。また、現在に至って、各団体が創意工夫をし、ショートステイ事業、ヘルパー派遣事業等を進め、地域生活を展開しているところもあり、重心の地域生活拠点としての役割を担っている点も、高く評価できる


4.重症心身障害児(者)の地域生活のモデル

図

 ●成年後見制度
 意思決定の苦手な、重症心身障害児(者)の地域生活に、「成年後見制度」は必要不可欠である。介護保険制度に見られる介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護という視点から高齢者の生活を見ていく。障害者にとって必要なのは、介護度によってその人の生活を決めるのではなく、地域における「生活の質」を保障するという視点である。よって、ケアマネージャーではなく、後見人こそ、重症心身障害児(者)の地域生活を支える人となるであろう。

上記の図より、以下の施設の制度化を要望する

(1)日中活動の場
重症心身障害者小規模通所更生施設(仮称)
  根拠法令・要綱等重症心身障害者福祉法(新設)
  事業の目的在宅の重症心身障害者等に対して、療育やレクリエーションなどの活動を行うことにより発達を促すとともに、社会参加及び自己実現を目指す
  利用人数5名
  開所日週5日
  職員配置指導員 − 常勤 2人、非常勤1人
看護師 − 非常勤1人
  設備小規模通所授産と同じくする
  補助金額重症心身障害児(者)通園事業B型施設に準じて
1ヶ所あたり 年額 1,500万円 *B型施設のように既存の施設に併設している必要はない

(2)日常生活の場
重症心身障害者福祉ホーム(仮称)
  根拠法令・要綱等重症心身障害者福祉法(新設)
  事業の目的重症心身障害者の生活の場の保障
軽度な医療的ケアにも対応可能な生活の場
  利用人数4名
  職員配置世話人  − 常勤  2人
看護師  − 非常勤 1名
調理員  − 非常勤 1名
  設備重症心身障害者の特性に合致するよう十分に配慮された基準
  補助金額身体障害者福祉ホーム 職員1人の想定で、年額3,244,000円より
1ヶ所あたり 年額 1,200万円

●比較〈およそ5人の重症心身障害児(者)に関して〉
A.入所施設の場合
  1人当たり 月額 100万円

B.上記のモデルの場合
  1人当たり 月額  75万円

    1,500万+1,200万
    ――――――――――
5人
÷12ヶ月 = 45万

    ヘルパー利用 1日あたり 約 1万円(移動介護0.5h×2回+身体介護1h×1回)
 1月あたり 約30万円


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