2 | 製品の製造過程の処理、使用方法によるリスク
原材料を使用して、医薬品等の原料を製造する工程、製品化をする工程での処理についても、BSEのリスク評価の点から定量的に検討がなされる必要があり、これまでの不活化処理におけるプリオンの感染単位の減少試験の成績等から評価を行うものである。
表3 製品の製造過程での処理によるリスク(製品1gあたり)
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リスクのクリアランス値について(単位Log) |
(1) 製品の製造工程中での希釈等の効果(希釈係数) |
(1)細胞培養工程(血清) |
(2)原料プールからの製剤化 |
(3)アフィニティークロマトでの使用 |
(4)工程の最終プロセスでの安定剤 |
(5)細菌等の培養工程等での使用(血清) |
(6)マスターセルバンクでの使用 |
(7)マスターシードでの使用 |
+2 |
+1 |
−2 |
−3 |
−3 |
−4 |
−6 |
(2) 不活化除去処理によるリスク減少 |
処理の度合によるID50の低下 |
0 |
−1 |
−2 |
−3 |
−4 |
−5 |
−6 |
表4 製品の使用方法等によるリスク(製品1gあたり)
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リスクのリダクショクについて(単位Log) |
(3) 投与経路によるリスク |
注射血管内 |
注射 |
経口 |
外皮 |
−1 |
−2 |
−5 |
−6 |
(4) 使用期間及び使用量 |
長期使用(1ロットを3ヶ月以上) |
短期使用(1ロットを1週間程度) |
適時使用(数日程度) |
+2 |
+1 |
0 |
(1) | 製造プロセスでの原料の希釈係数(タイター数換算)についての概算値
(1) | 遺伝子組換え細胞培養工程から、例えば、5000単位(本)製造するために、本培養において最大5,000,000gの血清が使用され、これらが製造工程中で消滅しないと仮定して、希釈割合(濃縮)は、102(Log 2)となる(仮想な遺伝子組換え工程であり、実際には理論的に濃縮されるものは少ない。)。通常は細胞培養の工程において異常プリオンタンパクは増殖しないと考えられている。 |
(2) | 製剤100,000単位を製造するために、動物臓器抽出物等原料1,000,000gが使用されるとして、希釈係数は、最大10倍程度の濃縮となる(101)。 |
(3) | 遺伝子組換え成分の精製等にイムノアフィニティーカラムを使用する場合、モノクローナル抗体を製造する際に100,000g相当の血清が使用され、これらが抗体作成工程で消滅しないと仮定して、それがすべて最終製品に含有されると仮定した場合の希釈(濃縮)割合は、101程度となる。途中にイオンクロマトによる精製を標準的に仮定すると、10-3程度のクリアランスとして、希釈係数は10-2と仮定。 |
(4) | 注射剤等の安定剤で使用する場合の標準的な安定剤の量は、mg単位であることから、希釈係数は概ね10-3。 |
(5) | 細菌培養における希釈例(希釈係数10-3程度と試算。)
1) | 肉エキスの場合は、ワクチン1,000,000単位製造するために、1000g使用されるとして、希釈係数は10-3(単位数、使用血清量・肉エキス量は等のデータはFDA公表資料より) |
2) | 抗生物質の製造においては、1,000,000単位製造するために、ペプトン培地等を約20g使用されるとして、希釈係数は10-5。 |
3) | ウイルス性のワクチンの細胞培養で使用される血清は、100,000単位製造するために、最大100,000g使用されるとして、希釈係数は10-2〜100となるが、そこから、最終製品での血清濃度として0.0001%(生物学的製剤基準)まで希釈されるため、希釈係数は10-6程度。 |
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(6) | 培養細胞のマスターセルバンクにおける血清の使用量は、おおよそ100mLとして、それが200本程度に分注されワーキングセルバンクを形成し、そこから製造される製品が5,000〜500,000単位程度とすると、製剤までに至る希釈係数は、10-4程度となる。 |
(7) | ワクチンのマスターシードに血清を用いる場合は、標準的なワクチン製造プロセスにおいて、500,000単位製造するために、4g使用されるとして、希釈係数は、10-6。(データはFDA公表資料より) |
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(2) | 熱処理・アルカリ処理により、減ずるID50のタイター値を原料・製品毎のケースに応じて数値化する。 |
(3) | ドイツ医薬品庁のリスク推定係数を利用 |
(4) | 使用期間が3ヶ月以上となる場合に、90日間の繰り返し使用を行うことにより、約2Log分の量的な蓄積となること、一週間程度であれば、約1Log分。 |
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