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財形制度改善策に関連する規定について

  根拠法令
財形法 財形令 財形則 租特法 租特令 租特則 備考
(1) 一人一人の勤労者が多様な選択を行うことを可能とするための改善策    
  a.預替えの拡充等    
  イ.一般財形貯蓄の預替期間の短縮 利用者の利便性、ペイオフ解禁に対応したリスク分散の観点から、一般財形貯蓄の任意預替えについて、これが認められるための期間(預替期間)を短縮、あるいは期間制限を撤廃する(現行3年)。 第6条第8項            
ロ.財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄への任意預替えの導入 リスクの分散及びライフステージや経済情勢等に対応した柔軟な資産運用の観点から、現在、預替えが転職(転職継続制度)や金融機関の破綻等の場合に限定されている財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄について、事由を問わず任意に預替えることを認める。 第6条第8項           ※税制改正要望
※租特令の改正
ハ.貯蓄残高の分割預替えの導入 リスクの分散及びライフステージや経済情勢等に対応した柔軟な資産運用の観点から、貯蓄残高を分割して預け替えることを認める。これにより、例えば、ある程度貯蓄残高が蓄積された段階で、残高の一部を積極運用から安定運用へ切り替える等の柔軟な資産運用を可能となる。なお、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄については、前述の年金・住宅貯蓄への任意預替えや、後述の複数契約の措置が導入されることが前提となる。 第6条第6項、第7項 第14条の26         ※税制改正要望
ニ.財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の複数契約 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄について、リスクの分散及びライフステージや経済情勢等の変化等に対応した柔軟な資産運用の観点から、非課税管理の方法を確保することを前提に、現在はそれぞれ1人1契約に限定されているものを、複数の金融機関と任意に契約できることとする。 第6条第3項、第5項     第4条の2、第4条の3     ※税制改正要望
ホ.複数契約機関の指定の義務づけ 財形貯蓄に関する取扱機関については、企業がその数や具体的な取扱機関を決定する実態にあることを考慮し、預替えの可能性の確保のために、複数の金融機関の指定を義務付ける。             ※税制改正要望
※財形法の改正
b.投資商品の拡充等    
  イ.対象となる投資信託の要件緩和 財形貯蓄の対象に、現在は組入れ割合が70%に制限されている株式を100%組み入れた証券投資信託を加える。     第1条       ※税制改正要望
ロ.対象となる有価証券の拡大 財形貯蓄の対象となる有価証券に、自社株を含め個別の株式を加える。このことについては、税制面での優遇の方式、財形融資・貸付枠の算定方式など実務内の検討課題が残る。更に本年1月に新たに発行されている個人向け国債を加える。この場合、販売方式等について検討が必要である。   第2条第3項         ※税制改正要望
※租特令の改正
ハ.投資信託の銀行等への拡大 平成10年より銀行等の証券会社以外の金融機関においても投資信託の販売が可能となったことを受け、証券投資信託を金銭の預託により購入することができるようにする。 第6条第1項           ※税制改正要望
(2) より多くの勤労者が財形制度のメリットを享受できるようにするための改善策    
  a.事務代行制度の拡充等    
  イ.事務代行制度の普及 事務代行制度の普及を図るため、中小企業財形共同化支援事業の改善を行うとともに、効率的な制度の普及啓発を行う。             ※リーフレット等を利用した普及啓発等
ロ.事務代行団体の要件緩和 事務代行団体の指定要件の1つである「構成員である事業主の総数が相当程度以上であり、かつ、そのうちに中小企業の事業主の占める割合が3分の2以上であること」の要件を緩和し、代行団体となり得る事業主団体の範囲を拡大する。また、労働組合等も事務代行団体としての指定を受けることができるよう改める。ただし、中小企業への普及のためという現在の事務代行制度の目的との関係や(3)b(事業主の負担の軽減)との関係を含め、十分な検討が必要である。さらに、事務代行を委託できる事業主を中小企業以外にも拡充する。 第14条の2   第25条の3       ※税制改正要望
ハ.事務代行団体の届出制 事務代行団体は、現在厚生労働大臣の指定となっているが、一定基準に達した場合は届け出のみで事務代行団体となれるように改める。 第14条の2   第25条の3       ※税制改正要望
ニ.事務代行団体の広域化等による活用促進 事務代行団体の設置地域に係る制約(現在は都道府県単位まで)を緩和することにより事務代行団体の設立を推進し、事務代行団体の利用促進を図る。代行団体の広域化は一団体当たりの委託事業所数を増加させ、財形制度に関して、団体と取り引きをする金融機関にとっては、営業効率の向上というメリットをもたらす可能性もあるため、金融機関の協力がより得やすくなるという効果も期待できる。             ※指定要綱の改正が必要。
ホ.事務代行の範囲の拡大 事務代行団体に限定せず、金融機関や福利厚生代行会社等による事務代行を認める。ただし、この場合、事務代行を可能とするための要件、事業主の責任の範囲、福利厚生代行会社等と事務代行団体との役割・機能の差異等についても整理した上で、(3)b(事業主の負担の軽減)との関係を含め、その必要性を判断する必要がある。 第14条の2 第42条の3         ※税制改正要望
※租特令の改正
b.非正社員の増加への対応    
  イ.非正社員の財形制度の普及啓発 非正社員への財形制度の普及啓発を行う。             ※リーフレット等を利用した普及啓発等
ロ.有期契約労働者や派遣労働者の財形制度の利用可能性の拡大 財形貯蓄制度は、勤労者の計画的な財産形成を促進するという観点から、一般財形貯蓄では3年、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄では5年の預入期間が定められているが、このことが有期契約労働者や派遣労働者の財産形成の利用を妨げていると考えられることから、これらの労働者ができるだけ制度を利用することができるよう、預入期間の短縮又は預入期間の特例を認める。 第6条第1項、第2項、第4項           ※税制改正要望
ハ.事務代行団体を通じた直接加入 転職を繰り返すことが多い非正社員に対しても、計画的な財産形成を促進する観点から、事務代行団体を通じた直接加入を認める。このことについては、(3)aニや(3)bと同様十分議論をつくす必要がある。 第6条第1項、第2項、第4項     第4条の2、第4条の3     ※税制改正要望
(3) 企業の関与を基本としつつ、企業形態の変化や労働慣行の変化を受けての制度の構築    
  a.雇用の流動化への対応    
  イ.転職継続制度の普及啓発・情報提供 金融機関・事業主等への転職継続制度の効率的な普及啓発・情報提供方法を行う             ※リーフレット等を利用した普及啓発等。
ロ.転職承継可能期間の延長 長期間の失業の後再就職するケースへの対応として、例えば、転職に際して、財形貯蓄契約の承継が認められる期間を、現在の1年から2〜3年に延長、ないし期間制限自体を撤廃する。この場合、非課税管理上の問題や金融機関の事務コスト等にも配慮する必要がある。 第6条第6項 第14条の25     第2条の12、第2条の20、第2条の31   ※税制改正要望
ハ.適格払出要件の拡充 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄については、それぞれの本来の目的外の税制適格払出要件が死亡、重度障害等に限定されているが、それを勤労者の生活の安定等に資する一定の事由(失業期間中の生活費、転職準備のための自己啓発、起業のための費用、災害被災時の費用、医療費等)に拡大する。 第6条第2項、第4項     第4条の2、第4条の3 第2条の28、第2条の33   ※税制改正要望
ニ.特例自己積立制度及び事務代行制度の拡充 転職先に財形制度がない場合の措置である特例自己積立制度を拡充して、現在一年に限っている預入期間の制限等を撤廃することにより、転職先に財形制度がない場合のポータビリティーを担保する。さらに、事務代行制度を拡充し、勤労者がこれを通じて直接財形制度を利用出来ることとするなど、企業の関与そのものを見直すことで、労働移動に対し中立的な制度とする。これについては下記のbと同様、十分な議論を尽くす必要がある。 第6条第9項、第14条の2 第14条の36         ※税制改正要望
※租特法令の改正
ホ.財形年金貯蓄の据置期間の延長 現行5年以内となっている財形年金貯蓄の据置期間を延長する。なお、この場合には、非課税管理上の問題を解決する必要がある。 第6条第2項           ※税制改正要望
ヘ.財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の年齢制限の延長等 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄については、加入要件が55歳未満に限られているが、この年齢要件を延長又は廃止する。なお、この場合には、非課税管理上の問題を解決する必要がある。 第6条第2項、第4項           ※税制改正要望
ト.財形教育融資の拡充 勤労者の自己啓発の拡充という観点から、現在、認められている学校教育法で定める教育機関以外の教育機関の行う教育も財形教育融資の対象とする。             ※業務要領の改正が必要。
b.事業主の負担の軽減(関与のあり方)    
  イ.事業主による給与天引きの見直し 事業主による給与天引きを前提としていることを一部改め、特例自己積立制度の範囲を拡大する等の方策をとる。その際には、前述のように財形制度を利用している理由が圧倒的に事業主を通じた給与天引きにあること等を考慮した上で、財形制度の意義を損なわない方策がありうるのか検討が必要である。 第6条第1項、第2項、第4項           ※税制改正要望
※租特法令の改正
ロ.財形住宅融資における事業主の負担軽減措置等の要件の撤廃 財形住宅融資における事業主の負担軽減等の措置等の要件について、財形制度の意義を損なわない条件の下で撤廃も含めた見直しを行う。 第9条第2項、第10条第2項 第35条 第15条、第20条、第22条 第29条第3項     ※税制改正要望
ハ.事業主の非課税管理の負担軽減                
・ 預入限度方式への変更 現行制度においては、積立てた貯蓄額より発生した利子等をその都度元本に加算し、その元利合計が非課税限度額を超過した場合には、貯蓄額全体が課税対象となる。非課税管理をより簡便なものとするため、利子等を含めず預入した元本のみで非課税限度額を管理することとする(現行の財形年金貯蓄の保険型商品の方式に統一)。       第4条の2、第4条の3 第2条の8、第2条の11、第2条の31   ※税制改正要望
・ 財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の統合 事業主の非課税管理の負担軽減を図る観点から、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の統合を行う。その際には、預入限度方式に統一する方向で見直す。 第6条第2項、第4項     第4条の2、第4条の3     ※税制改正要望
ニ.財形給付金・基金制度の見直し 金融機関、事業主等への財形給付金・基金制度の効率的な普及啓発・情報提供を行うとともに、制度の簡素化等の見直しを行う。             ※リーフレット等を利用した普及啓発等
ホ.福利厚生会社への出資要件の見直し 現在、財形法上の福利厚生会社の利用にあたっては、原則として福利厚生会社への出資を要件としているが、この要件を見直し福利厚生会社を活用しやすくする。 第9条、第10条の3            
ヘ.企業等のIT化への更なる対応 事業主及び金融機関の事務負担の軽減等の観点から、財形制度についてのITの一層の活用を可能とする。なお、非課税管理関連の書類のIT化については、税制申告書類全体のIT化が前提になるとも考えられる。             ※内容によっては、税制改正要望
(4) 新たな領域での勤労者施策の拡充    
       
  イ.従業員持ち株制度やストック・オプション等の業績・株価連動型の利益分配制度について、財形給付金・基金制度への導入等の可能性を検討する。   第6条の2、第6条の3           ※税制改正要望
※所得税法、法人税法の改正
ロ.在宅就業者等の多様な働き方が増加していることを踏まえ、一定の雇用契約に基づかない勤労者であっても財形制度の対象とすることを検討する。               ※内容によっては、法改正を伴う。
ハ.財産形成の範囲を貯蓄・持家取得以外の分野に拡大することにより、勤労者の生活の安定という財形制度の制度目的に合致する範囲内での能力開発・教育や病気、失業等への対応を強化することを検討する。   第2条           ※内容によっては、税制改正要望
(5) 現行制度に関するその他の改善策    
       
  イ.非課税限度額の拡大 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄は合わせて元本550万円(ただし、生命保険等は払込保険料等の総額が385万円)から生ずる利子等が非課税とされているが、この限度額を拡大する。       第4条の2、第4条の3     ※税制改正要望
ロ.非課税限度額超過分の取扱い 現行制度においては、非課税限度額を超えると全て課税対象となるが、超過分のみを課税の対象とする。       第4条の2、第4条の3 第2条の8、第2条の31   ※税制改正要望
b.また、制度簡素化の観点から以下のことも忘れてはならない。    
  イ.財形融資制度の見直し 勤労者のニーズ等を勘案し、分譲住宅融資や共同社宅融資制度は廃止・縮小を含めた見直しを行う。 第9条、第10条の3            
ロ.財形活用助成金の見直し 現行制度については、利用実績等を踏まえて、事務負担等の利用の阻害要因を分析した上で、その改廃を含めて見直しを行う。 第8条の2 第29条の3 第14条の4        

(注)本表は、財形制度改善策を実施する際、改正を必要と考えられる法令等の代表例を示すものである。


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