03/06/19 第20回労働政策審議会雇用均等分科会議事録          第20回労働政策審議会雇用均等分科会 1 日時:平成15年6月19日(木)9:30〜 2 場所:厚生労働省 省議室 3 出席者   労側委員:秋元委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員   使側委員:渡邊委員、山崎委員、前田委員、吉川委員、川本委員   公益委員:若菜会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、樋口委員、横溝委員 ○分科会長  ただいまから「第20回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催します。まだお二方、 お見えになっていない方がいらっしゃいますが、時間ですので始めます。本日は労側の 片岡委員、岡本委員がご欠席、ほかの方は出席の予定です。  最初の議題ですが、前回申し上げたように、現在の厳しい経済状況の中で積極的な取 組みを行っておられる企業・労働組合のヒアリングを行う予定です。まず株式会社加登 屋の常務取締役の方から最初にお話をいただきます。そのあと、日本電子連合労働組合 の副書記長の方から育児・介護休業制度の現状等についてご説明をお願いしたいと思い ます。最初に、株式会社加登屋の方からご説明をお願いします。 ○ヒアリング対象者(株式会社加登屋)  最初に、私どもの会社の概要を簡単にお話させていただきたいと思います。  お手元に資料をお渡ししていると思います。私どもは大田区の蒲田にございます。設 立が昭和22年です。資本金が8,112万5,000円です。代表者は渡辺輝也です。私ども、昭 和22年に、先代の社長の渡辺ショウシロウが、やはり蒲田で文具を商いとして始めたの が創業です。  現在の社員数ですが、正社員が66名、パートが68名です。正社員のうち、女性が22名 います。パートのほうは逆に女性が45名と、全体としてならすとちょうど同じぐらいで すが、正社員に関しては1対2の割合で男性が多くなっています。  女性のうち約半分の10名には、私どもは小売業なのですが、店長、つまり管理職とし て働いていただいています。主要取扱い品目としては、文具・事務用品・OA機器・オ フィス家具、それから私どもは駅ビルにかなり出店しています。そちらでは、和雑貨、 あるいは玩具といった商品も扱っています。  営業拠点は蒲田の本社営業部、それから千葉県の成田営業所です。ご存じのように、 大田区というのは羽田空港がすぐ近くにございます。私どもが成田に営業所を作ったの も、国際空港が成田に新設されるということで、お客様が多く成田に移ったということ もあり、成田に営業所が1つあります。それから、駅ビルを中心に蒲田・大井町・横須 賀、静岡と仙台は離れていますが、首都圏を中心に16店舗で営業しています。平均する と、大体1つのお店が20坪、大きいお店では60坪ぐらいです。働いている人間が正社員 で2人から3人、パートが3人前後という形で、1つずつのお店を運営しています。  営業関係の主要取引先としては、こちらに書いてあるように大田区役所、私どもは城 南地区が中心なので空港関係、東芝、京浜工業地帯ということで昔から製造業がかなり 多くありました。そういった、いわゆるコード化されているお客様は営業で1,800社、 お店に来られる方が大体年間で96万人いらっしゃいます。  いま、私ども文具業界はこういったご時世ですのでかなり厳しい中で営業していま す。私どもがいま、いちばん謳い文句にしているのはISO14001、環境認証取得です。 一昨年全社で取りました。この点、文具業界の中ではいちばん最初に取得したというこ とでした。官庁ももちろんそうですし、リコーやソニーなど、環境に対する取組みがき ちんとされている、かなり多くの企業から「取引きをしたい」というお話をいただきま す。私どもも、そういった部分では非常に好評価をいただいているのが現状です。その ような形でいま、私どもは会社をやっています。  次の頁をご覧ください。育児関係・介護、本来のテーマを簡単にご説明いたします。 会社としての制度と、まだ当社は人数としては少ないのですが、取得した女性に話を聞 いたことをお話したいと思います。  いちばん最初、育児休業、介護休業の期間及び取得回数というのはいまのところ法定 どおりという形で、就業規則で盛り込んでいます。もう皆さんご存じだと思いますが、 育児休業の場合は1年、介護休業の場合は3カ月という形の中で規定として設けていま す。  休業中の所得保障については、いまのところ経済的な援助は制度としてはありませ ん。ただ、賞与については対象者ということになります。賞与については当然、そのと きの業績がからんできますが、その業績の中でお支払いをしているという形になってい ます。  利用状況ですが、いまのところ、私どもでは女性3名が育児休業を取得されていま す。正社員の方が対象ですので、先ほど申し上げたように、女性は現在22名います。こ の比率というのはここ数年間、それほど変わっていませんので、3名というのはまあま あの数字かなと思います。年齢構成もいちばん若い人で22歳ぐらいでしょうか、上は50 歳前後の方がいらっしゃいます。その22名には幅広い年齢の方が含まれていますので、 3人いるというのはそれなりに利用はされているかなと思っています。  勤務時間短縮等の措置について申し上げます。まず時間短縮、この措置については所 定労働時間を2時間短縮するという形でやっています。なお、時間外労働については、 延長できる時間を1日3時間とし、三六協定の中で盛り込んで、届出を出しています。 それから1日2回、育児時間ということで、休憩を別途30分ずつ、これは就業規則に盛 り込んでいます。ただ、いまのところ、これについては利用者はいないというのが実態 です。  対象となる労働者については、実際に子供を出産された方、あるいは介護を必要とす る正社員の方ということです。いまのところ、期間契約の方、パートの方については対 象になっていないのが実態です。  その他の措置としては男性の出産休暇、これは少ないですけれども1日の付与があり ます。所定労働時間は、1年間については残業は免除しますという形でやっています。 また、私どもには大体16店舗ほどお店があります。ほとんどがお店です。その意味で は、女性がいるのはお店が多い。大体、お店というのは営業時間が10時から8時と長い のですが、多くのお店が早番、遅番という形でシフトを組んでやっています。その意味 では出産をされた方、あるいは出産予定の方についてはシフトを調整する中で、働きや すい時間を選択して働いてもらうという取組みはしています。  お店ですとやはり立ち仕事が多いのです。そういったこともありますので、出産予定 日の大体3カ月ほど前からは、本社で座って事務をやっていただくような仕事などへの 配転はさせていただいています。  復職後という話になると、お店をやられた方というのは商品を陳列したり、お客さん とお話しながら自分で何かを売るということが楽しくて仕事をやっている方が結構多い のです。その意味では、事務に単純に戻るということだけだと、本人が働いていく上で 面白味に欠けるかなと思うのです。その辺、当社としても実際に1年たって、小さい子 を抱えた中でまたお店に戻って働いていただく、その辺は当社としても課題になるのか なと思います。  職場の意識という部分で言うと、今回こういったお話がなければ、逆に自分も勉強し ないままだったのですが、介護休業などといったものは、日常性という面での観点が希 薄なのかなという気がしています。これは私どももそうですし、取られる女性の方、あ るいは男性の方も、そのようなものが身近に迫ったときに初めて、こういう制度があっ たのだなという部分で、制度自体を勉強してやるような形なのかなと思いました。  当社では、入社のときに就業規則をお渡しして説明をします。しかし、実際には入社 されるときというのは、大体20歳から24歳ぐらいの方が多いのです。そうすると、実際 には出産の時期までかなり時間があるわけです。そういった部分では就業規則を書面で 渡すだけではなくて、日常的にもある程度、社員の方などにお知らせをしていく場を 作っていかなければいけないのかなと思います。企業だけではなくて、いろいろな部分 で介護休業、育児休業という部分についてはもう少し案内をしていったほうがいいのか なと思っています。  経営環境も皆さん、十分に感じられている方が多いと思います。やはり厳しい中にあ りますので、制度としてはあるのだけれども、それを実際に取って、復職したときにま たきちんと仕事ができるのかどうか。あるいは、そのような制度を利用することがいい のかどうかという部分で、特に男性で不安に感じている方が多いのではないかと思いま す。その辺については社会的にも認知を高めて、取りやすい形にしていかないと難しい のかなと思います。  実際に取った女性に聞いたものがいくつかあります。当社も初めての経験、本人も初 めてということで、その制度自体に対していろいろ具体的な質問、相談といったことが なかなかできなかったというのが1つあります。  この制度とは直接には関係ないのでしょうが、育児休業給付金や保険料の免除といっ たものは非常に助かっているということです。それから、やはり、子供と一緒にいられ る時間が多かったのは単純に良かったということを話していました。  0歳児については、保育園に空きがないことが多く、結局無認可保育園を利用せざる を得ず、金銭面で結構かかってしまったということでした。復帰後の仕事と育児の両立 が大変というのは、保育園など、時間的な制約がある。それから、子育てをしている中 ではどうしても、例えば自分は残業をしたくてもできないとか、一定の勤務時間、所定 時間自体も満たせないということもあります。そういった部分で収入が減ったり、ある いは子どもが風邪を引いたり、突発的なことが子供を育てていく上ではいろいろあると 思います。そういったものがあったときに、周りのメンバーに対して気を使ったり、と いう部分での配慮があったということです。  また、復帰後のことをいちばん言っていました。私どもはいま、1年という区切りの 中でやっているのですが、実際には1年たったから急に子供が大きくなって、自分で何 かできるということではないわけです。その点、1歳という区切りではやはり大変なの かなと思います。  私も子供を持っていますが、自分のことを思い浮かべると、3歳ぐらいまではやはり かなり手がかかると思います。その年齢ぐらいまでは、会社としても援助をどうしてい くかなど考えています。いまは、単純に制度自体のきめ細かさというか、改善のような ものもしたほうがいいのではないかと思います。その中で、こういった時代なので、企 業として考えた場合、今度は休暇を取っていただくコストがかかってきます。それに対 する配慮についても、これからこういった制度については是非加えていっていただいた ほうがよろしいのかなと思いました。  非常に簡単ですが、当社の現状をお話いたしました。以上です。 ○分科会長  ありがとうございました。ただいまのご説明について、ご質問がありましたらどうぞ お願いします。 ○公益委員  どうもありがとうございました。いままで、育児休業を取得した方は3名ということ なのですが、事務部門に移したあとは育児休業期間中と産前の3カ月ぐらい、基本的に 店舗にいた方がいなくなるわけです。店舗は、正社員が2〜3人で、パートの方が2〜 3人ということでした。そうすると、そのあとパートの人を増やすなどのやりくりな ど、育児休業期間中の対応はどうされているのかをお聞かせください。 ○ヒアリング対象者  いままで3名おりましたうち、1名が事務職、残りの2名がお店でした。その2名の お店についてはパートです。やはり、正社員を増やすというのは固定化につながってし まいますので、お店に戻すことがスムーズにできるような形ということでパートの方を 増やしています。事務職の方は単純に、周りでカバーという形です。  困るのは、いま私どもISOを取っているのですが、今回取っている人はそのISO の推進責任者でした。そうすると、単純に、そういう知識のない人が来ても賄い切れな いという面があります。私どもはそれほど人数が多い会社ではないものですから、それ なりの知識を持っている人というのは社内にもそれほどいないのです。その辺、ある一 定の知識や技能を持っている人が休暇を取られるときというのは、結構大変かなと思い ます。単純に人を足せばいいという問題とはちょっと違うので、その辺は大変でした。 ○労側委員  ありがとうございました。いくつかご質問させていただきたいと思います。1つは、 育児休業を取得された3名の方の休業期間について教えてほしいのです。子供が1歳に なるまで取られたのか、それとも6カ月や7カ月などの短い期間であったのか、その辺 はいかがでしょうか。 ○ヒアリング対象者  全員1年です。1人はいま休業中ですが、多分1年だと思います。 ○労側委員  代わりの方のご質問もあったのですが、代わりの方を雇ったときにいま、国から助成 金が出ることになっています。そのことについて利用されているかどうか。 ○ヒアリング対象者  私たちは何もしていません。 ○労側委員  それはご存じだったけれども利用できないというか、しにくい事情があったのか、そ れとも何かあったのでしょうか。 ○ヒアリング対象者  正直に申し上げて、最初のときには知らなかったという部分があります。いまは知っ ていますが、手続などもあるものですから、そのまま休んでいただいています。実際、 事務職の人については補充していませんので、それについては申請していません。 ○労側委員  子供が小さいときに熱を出したりなど、子育てをしている間の看護のための休暇の要 望が多いわけです。看護休暇に対してはどういう制度を取られているのでしょうか。 ○ヒアリング対象者  制度としてはないのですが、もともとのオーナーが社会保険労務士の資格を取ってい ます。いま現在88歳ですから、かなり早い段階で社労士を取られています。  私どもの会社の系列企業、「渡辺労務事務所」という形で社労士の事務所を持ってい ます。そういったことで、社会的な配慮といった感覚をオーナー自体が比較的持ってい たわけです。そこで、制度としてはないのですが、いまのところは社風としての中で、 弾力的に対応しています。特にトラブルということは起きていませんので、柔軟に対応 しているつもりではいます。 ○労側委員  先ほどのお話の中で、コストへの配慮を加えてほしいというご要望がありました。具 体的にはどういうことを要望されているのか、もしあればお願いします。 ○ヒアリング対象者  いちばん大きいのは補償金ではないでしょうか。いまは1年という形でやっているか らいいのですが、やはり3年とか、本当に子供をきちんと育てるとなると、3歳ぐらい までというのは親が子供に対してきちんと、それなりのケアをしてあげるというのがい ちばん大事だと思います。  その意味では、3歳ぐらいまでということになるでしょうか。多分、本人も3年まる まる休むというのは、今度は自分が仕事を続けていく上で大変だと思います。そこで突 発的なことに対しては、もう少し会社としても、あるいは国としても考えてあげてもい いのではないかと思います。休みの問題、補助金の問題、いくつかあるとは思います。 ○労側委員  ありがとうございました。女性の方の年齢の幅をお聞きしたのですが、男性の方で子 育てにかかわる年代の方がどのぐらいいらっしゃるか。それから、まだ男性で育児休業 を取得される方はいらっしゃらないわけですか。 ○ヒアリング対象者  はい。 ○労側委員  そのことについて、何かご意見等あればお願いします。 ○ヒアリング対象者  まず世代、年齢的には、正社員44名の中で言えば約半分ぐらいです。男性で25名ぐら いまでの方については、子供にそういったことがあってもおかしくない世代という形で す。  実際、いま育児休業を取っている方は、社内結婚なので旦那さんも当社で働いていま す。ただ、その人だけではなくて男性はまだまだ実際には取りづらいのではないでしょ うか。多分、「取れ、取れ」と言われてもなかなか取りづらいのではないか、というの がまだ日本の世界の根幹にあるのではないかと思います。 ○労側委員  いちばん取りづらいもとというのは、ヒアリング対象者はどのようにお考えですか。 ○ヒアリング対象者  私は若干古い人間なので、1つにはやはり男は稼いでくるというのがあります。あ と、母親がケアをするというのは、子供にとっていちばんいいのかなと思います。 ○労側委員  男性の取得も増えるように願っています、ありがとうございました。 ○公益委員  3人お取りになったようですが、時期的には3人で重なっているときというのはあっ たのでしょうか。 ○ヒアリング対象者  ありません。 ○公益委員  1人ずつずれてということですね。代わりにパートの方に勤めていただいたとおっ しゃっていましたが、その人が事務職からまた現場店舗に戻ったときに、そのパートの 方には辞めていただいたのですか。 ○ヒアリング対象者  その場合は多分、そのお店の方が抜けられて、そこのお店のシフトを埋めるために必 要として入れるわけです。私どもとしては、1年間の中で大体5人ぐらいは自然に退職 されたり、当然定年の方がいらしたりということで抜けますので、その中で人が動きま す。長い目で見たときは、当初は育児休業の補充として入っていただいたのですが、そ のまま別のところで継続していただくなどということで対応しています。いままで、そ れによって戻ったから辞めていただいたというものはありません。 ○公益委員  先ほど、正社員の女性は22歳から50歳ぐらいまでというお話でした。パートの人とい うのはどれぐらいの年齢層なのですか。 ○ヒアリング対象者  パートの方は2つに分かれています。1つは学生、もう1つは35歳から45歳ぐらいが 多いです。 ○公益委員  法的な要求は別として、パートの方で「私たちも育児休業を取りたい」という声をお 聞きになったことはないですか。 ○ヒアリング対象者  働く方も、パートの方の場合、ある程度自分が勤められる時間という部分で当初から 勤められるので、その部分の声はありません。むしろ、逆に有給休暇、社会保険の問題 といったものがパートの方の制度としてあるかどうか、ということは聞かれたことはあ ります。 ○公益委員  ありがとうございました。 ○使側委員  お仲間の業界、社長と親しくしているような企業もあると思います。そのような企業 の具体的な育児休業、介護休業の取組みなどというのは、ヒアリング対象者が知ってい る範囲で、どの程度の取組みをされているかわかりますか。ヒアリング対象者のところ は中小企業の中では、高いレベルの取組みをされていると思います。 ○ヒアリング対象者  やはり2つあるかと思います。縦割りでお話すると、小売では文具の場合、小さいお 店が多いのです。それこそ、家族でやっているということもあるようなお店が多い。そ ういったお店についてはいまのところ、こういった制度という問題とはちょっと違うと 思います。  チェーンでやられているお店は、1つひとつにするとそれほど大きいお店はないもの ですから、結構苦労されていると思います。ですから、小売という部分で言うとなかな か少ないのではないかと思います。 ○使側委員  もう1点お聞きします。先ほどのご発言の中に、「さまざまな方面から制度の案内が 必要だと思います」とありました。これは具体的にこのような手法を用いて、国なり行 政がやるということを言っているのではないかと思うのですが、どのような方法があっ たらいいなとお感じになることはありますか。 ○ヒアリング対象者  少子化のような部分で全体をとらえると、根本的に教育の問題が大きいかと思いま す。要するに、社会科的なものがあるかどうか。私たちが学校に行っていたころは「現 代社会」というものがあったのですが、そういった社会科教育の中であるか。女性の社 会進出、それに伴って少子化が進んでいるという、そういったものを、学校教育からも 一例としては子供たちに教えてあげるということがあるといい。社会に出てからの問題 だけではなくて、小さいときからそういうことをどこかで積み重ねながら入っていった ほうがいいかと思います。 ○労側委員  先ほど、育児休業取得者にかかわるような国からの助成金について、最近知ったとい うお話がありました。育児休業法も2年前に改正されたわけです。行政はいろいろな周 知、ということをこの審議会でも盛んに言うのですが、法改正、あるいはガイドライン のようなものを作られるとき、皆さんへの周知というのはどうなのでしょうか。育児休 業法は改正から2年たっていますが、そのようなチャンスはありましたか。例えば行政 から、「こういうものがあります、参加しませんか」というのはありましたか。 ○ヒアリング対象者  行政的な面から言うと、ハローワークがこういうものを調整されたかどうかはわから ないのですが、そこからその時々の法改正のような案内がよく来ます。逆に、どういっ たところから告知しているか知りたいということもあります。 ○労側委員  折角作った制度が全然知られていない、というのがポイントでしょうか。今度もパー トの指針が改正されるのですが、その場合、どのようにやられているのか全然わからな いものですからお聞きしました。 ○ヒアリング対象者  私どもの4階に、先ほど申し上げた社会保険の事務所があるのですが、そこが年に1 回総会をやります。そのときに例えば補助金制度が変わりましたなど、簡単な講演を1 時間ぐらいしてくれます。ただ、それは一定のテーマに沿ってずっとやっているわけで はありません。日常的ではないので、聞いてもまた忘れたりということがあると思いま す。もしかしたら来ているのかもしれませんが、常にこういったことが起きているわけ ではないので、忘れてしまっている部分もあるかと思います。 ○労側委員  育児の担当者を置いていただきましょう、というのが法律にあるのですが、そういう ものはありますか。 ○ヒアリング対象者  そういうものは、知りませんでした。 ○公益委員  第1号者はいつごろ出たのですか、制度導入と同時にですか。 ○ヒアリング対象者  はい、2年半ほど前です。 ○公益委員  どういうきっかけだったのですか。 ○ヒアリング対象者  制度導入のきっかけですか。 ○公益委員  導入以前はもう少し、出産・育児で辞められる方が多かったわけですか。 ○ヒアリング対象者  やはりまだ入れる前というのは、あまりそういった通念がなかったというのが正直な 話です。通念がなかったというのは、こういう制度がどうこうということではなくて、 結婚したら会社を自分で辞めるなどということがありました。 ○公益委員  そうでなければ、出産しても働き続けるということですか。 ○ヒアリング対象者  単純に本人の希望でやっていたというだけです。 ○公益委員  第1号はどういう経緯で出現したのですか。よくあるように、第1号が出るのがとて も重要なのですが、それはいかがでしょうか。 ○ヒアリング対象者  この制度だけではなくて、3年ほど前、就業規則自体を少し改定しています。そのと きに、こういったこともちょうど世の中で出てきていたものですから、育児休業規定や 介護休業規定、あるいは就業規則自体の中に、先ほど申し上げた1日2回、「育児時間 」という形で休みを入れるといったことを入れました。それを3年ほど前にやって、そ こからすぐになります。 ○公益委員  すぐにとられたのですか。 ○ヒアリング対象者  はい。それまでは、もしかしたら取りづらかったのかもしれません。もう辞められる などしたので、実際にはわかりません。就業規則を作って、周知した段階ですぐ出たと いうことは、むしろそれがきっかけになったのかなと思います。 ○分科会長  ほかにまだご質問があるかもしれませんが、予定時刻となりました。株式会社加登屋 からのヒアリングを以上で終わりたいと思います。今日はお忙しい中をおいでいただい て貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました。 ○ヒアリング対象者  ありがとうございました。               (ヒアリング対象者退席) ○分科会長  それでは、育児・介護休業制度の現状と労働組合の取組みについてご説明いただきま す。日本電子連合労働組合の方にこれからお話いただきます。どうぞ、よろしくお願い します。 ○ヒアリング対象者(日本電子連合労働組合副書記長)  おはようございます。JAM、日本電子連合労働組合で副書記長を務めています。本 日、このような席で報告をさせてもらうことを大変光栄に思っています。ただ、この報 告の依頼を正式に受けたのが今週の月曜日で、急遽発表することになりましたので、資 料の作成時間等でなかなか不備な点もあるかと思います。ご了承ください。  組合側のヒアリングということで、当社の育児・介護休業制度の制度内容、取得状況 等を報告したいと思います。最初に、当社のプロフィールを紹介したいと思います。会 社は日本電子株式会社という、国内では12社、海外法人は9社というグループ企業と なっています。創立が1949年、今年54周年を迎えました。  事業内容としては、電子顕微鏡を始めとする理科学・計測機器メーカーです。なかな かピンと来ないかと思いますが、学生時代、光学の顕微鏡を理科の実験等で見たことが あるかと思います。光学の顕微鏡では100倍ぐらいまでしか見られません。  一方の電子顕微鏡だと100万倍まで見られます。現在、「ナノ・テクノロジー」とい う言葉を耳にされるかと思いますが、「ナノメートル」というのは10億分の1メート ルの世界です。そういったものを観察したり分析するのに、当社の装置を使っていただ いています。  変わったところで言うと、テレビドラマで「警視庁鑑識班」というシリーズが16回ほ ど放映されています。犯人の遺留品を分析して追いつめていくというものです。そこに 出てくるいろいろな分析装置も当社で作っています。現在は日立がずっとロケをされて いますが、初回から6回目ぐらいは日立と日本電子を交互にロケしていました。  また、ソウル・オリンピックでベン・ジョンソンがドーピングに引っかかって金メダ ルを剥奪されましたが、あれも当社の装置で引っかかってしまったものです。敏感に出 てしまったかどうかわかりません。JRA、中央競馬会でも使われていて、馬のドーピ ングも当社の装置で測定されています。  売上げ規模としては前年度、連結売上げで830億弱です。従業員数ですが、本社にお いては1,700人強、グループ企業で約3,000人程度となっています。  所在地で1点、ミスプリントがありました。組合事務所の住所になっていました。会 社の住所は東京都昭島市武蔵野3−1−2ですので、ご訂正をお願いします。こちらで は本社機構、製造の拠点ということでやっています。  次に、私どもの組合は上部団体JAMに所属しています。JAMは中小企業の金属産 業の労働組合で構成され、約45万人の組織人数となっています。現在、当組合は35周年 となります。先ほど言った国内関係会社12社、本社も併せて13社のうち7社の組合員 で、単一の労働組合として連合体を作っています。基本的には、その7社の労働条件は 同一条件となっています。  組合員人数としては1,400人弱です。男性と女性の比率ではほぼ8対2と、男性のほ うが多い構成となっています。  本題の「当社における育児・介護休業制度の内容と取得状況」の報告に移ります。当 社の育児休業制度と介護休業制度は、他社に対し、残念ながら「ここが優れている」と 胸を張って言えるような内容となっていません。法律の最低ラインを労働協約として具 現化していますので、こういう点が優れているという紹介はできないのですが、当社の 内容について説明いたします。  まず育児休業制度については、1992年の法制化に伴い、当社においても休業制度をス タートさせました。基本的には、休業期間は満1歳に達するまでの1年間を限度として います。お子さんに関しては、当該子に1回限りの連続した期間とし、期間内での分割 での使用は認めておりません。休業中の労働条件ですが、休業期間の賃金については支 給していません。  組合で言うと「一時金」なのですが、会社で言うと「賞与」については支給対象者の 扱いにしています。査定期間の間の休業1日について、人事考課、家族手当を含まない 定率部分で賃金控除したのち、下限を50%にとどめています。ですから、まる1年間会 社に復帰しないとしても、一時金の支給額の半分は出るということになっています。唯 一、ここの点ぐらいが法律を上回っているところだと思います。  昇給は行うというように取り扱っています。休業期間は、勤続年数には算入をしてい ません。年次有給休暇の付与については、出勤したと見なし、付与を行っています。復 職時の職場については原則、原職復帰での取扱いを行っています。  取得状況ですが、1992年の制度スタートから今年3月末までの取得者の報告をいたし ます。延べ人数については88名取られています。実質、取得者は58名となっています が、その中には複数回取られている方がいますので、実際は58名が取られています。複 数回の取得者が25名のうち、先ほど言ったとおり、1人の子に対して1回の休業取得と なっていますので、2回、3回、4回ということは2人の子、3人の子、4人の子にそ れぞれ取られたと見てください。  2回取られた方が21名、3回取られた方が3名、4回取られた方が1名となっていま す。当社においては、育児休業制度は完全に定着しているというように判断できます。 「働きたい」と願いながら、育児で会社の対応が図られずに退職に至るということは、 私が相談を受けている範疇ではありません。この取得状況を見ていただければわかると おり、他社に誇れるところは、そういった環境が整備できている点です。  男性の取得も2件、実績として出ましたので、そちらのご報告をいたします。1999年 に1件、2001年4月に1件出ています。こちらは本人の聞き取り調査も行いましたの で、本人がどういった背景で取られたのか、復帰に対してこういうところが不安だった という点も含めて報告いたします。  まず1件目、1999年に発生した件の背景を紹介いたします。男性は当然当社の社員、 研究開発技術者の方です。奥さんが大学の助教授をされています。奥さんが単身赴任を されていて、木曜日、金曜日、土曜日に東京に戻ってきて、日曜日にまた戻るという生 活を毎週繰り返していました。この方は第二子のときの育児休業の取得者です。  2人目ができた際、奥さんの勤務体系からいって育児の問題がありました。産むかど うかという判断の中で、夫が育児休業を取れることが条件で、2人目を産んだという背 景です。この方が当時、職場の上司に、こういった背景で育児休業を取りたいことを率 直に相談したところ、上司のほうも「休業をしなさい、そういうことだったら協力する 」と、職場の後押しもあったことから取得できた、環境が良かったということを言って いました。  実際、男性が育児休業を取っているという点でいくと、やはり子供の面倒を見ること の大変さ、日ごろの奥さんの大変さを痛感したということでした。いまだとバリアフリ ーということで、駅でもエスカレーターやエレベーターが整備されていますが、当時は まだ階段の昇り降りでした。乳母車を引いていたときに、非常に不便さを感じたという ことを言われていました。  仕事のほうは研究開発部門の技術者ということで、その方の技能によっている部分が 非常に大きいので、仕事を人に振り分けて頼むこともなかなかできない。その点、今後 の課題はあるかと思いますが、仕事は復帰後リカバリーをしたということであります。  復帰後に昇給昇格など、「何か不利益を感じたことはありませんか」と聞いたら、 「それは一切なかった」ということでした。ただ、復帰後、育児をしていたところから いきなり仕事に入った点での負担感はあったということでした。その方が育児休業中に 感じたこととしては、お子さんを数時間預けられるようなところ、半日ぐらいの規模で 預けられるような施設が整っていれば、安心して預けられるような体制・法的な整備を していただければと言っていました。  もう1件の事例は、男性も女性も当社の社員であります。男性が設計技術者、女性が システムエンジニア、女性の方も補助業務ではなくてエンジニアの方です。  言い忘れましたが、先ほどの事例の中では、最初に奥さんが3カ月間育児休業を取ら れ、続いて男性が3カ月半取られたということでした。  2件目ですが、前半の7カ月間を女性が取られ、その後男性社員が1カ月半取ったと いう事例です。この方が取得に至った背景については、初めてのお子さんでしたので、 奥さんに対して精神的な安定を図ってあげたい。父親としての責任を果たしたい、とい うことからの育児休業を取りたいという発想です。  この方は設計技術者なので、ある程度自分の仕事をコントロールできるという仕事的 な背景もありました。奥さんも当社の社員なので、当然、多少休みますので経済的な負 担はあるかと思うのですが、1カ月半ということもあり、経済的なところはあまり負担 感を感じなかったということでした。  ただ、1カ月半ということでの仕事の問題がありました。3カ月や4カ月など長期だ と、その仕事を人に振り分けたり、設計技術者なのでなかなか人に振り分けることはで きないのですが、その間は派遣社員を入れてフォローするということはできず、仕事が そのまま残っていたということでした。  この方が言われていたことは、仕事がそのまま残っていたことに対し、ある意味大変 うれしかったと言っていました。というのは、自分が帰ってきたら仕事がなくなって、 「お前の机はもうない」ということを言われずに、逆に残っていたことに対して非常に うれしかった、複雑な心境だったということも言われていました。  この方についても、取ったことに対して不利益は被らなかった。ただ、周りの男性か らの意見として若干聞き漏れてくるのが、「お前はいいよな、取れて」ということも あったということでした。唯一、それぐらいということでした。この方は「男性も取れ る権利はありますよね」ということで入ったそうです。  2頁の下の表にあるとおり、取得期間については最大の10カ月間、長期に取られる方 が非常に多い傾向があります。休業期間の延長は、1998年から2002年までの5年間に取 得者が53件あったのですが、そのうち延長された方が24件、約半分は延長に至っていま す。  主な要因としては、保育園の入園の時期が非常に大きい。入れたくても入れずに待機 中、結果として延長せざるを得ないというのが、私が相談を受けた中では多かったよう に感じます。  続いて、介護休業制度は1999年、育児・介護休業法の施行に合わせ、当社においても 制度をスタートしました。概要については、基本的には法を準拠した労働協約を結んで いますので、労働条件等をご覧になっていただきたいと思います。こちらも一時金につ いては、全日休んだとしても50%の減にとどめています。  取得状況については、いま現在取得されている方はおられません。ただ、こちらは無 給です。有給で取得できる制度が別にありますので、そちらで介護休業、また子供の看 護休業的な目的で取得された方がおられます。  その制度はどういうものか、4頁の中段からご覧ください。保存有給休暇というもの を設けています。当年度の年次有給休暇の残存日数に際しては、20日までを次年度に繰 り越すことができるようになっています。当年度付与の最大日数が20日、そこで単年度 ではマックス40日間あるわけです。例えば10日しか使わなかったとしたら、結果的に30 日残るわけです。また20日付与されると、10日間が40日から溢れてしまうので、その分 を保存有給として溜めるシステムが当社にはあります。「第1保存有給休暇」と言うの ですが、そちらに溢れたものが溜まっていきます。最大60日間あります。  そこから溢れた分については「第2保存有給休暇」、そこでは90日間溜めることがで きます。先ほど言いましたほかの制度があるというのは、第1保存有給休暇の(1)が該 当する部分です。  1週間以上の歴日、休業を必要とする傷病で医師の診断がある場合、医師の判断によ る日数を取れるとしています。本人はもちろんのことながら、家族、親族であっても会 社が認めた場合は使用できるということであります。  その使用実績として、5頁目の3)「取得状況」を見ていただきたいと思います。 「家族看護・介護」だといままで、トータルで6件取得されています。平均では17日 間、約1カ月間休んでいます。平均20日が当社の労働日になっていますので、約1カ月 間休まれています。「子供看護・介護」という観点からいくと、1件8日間、約2週間 ぐらい休まれています。  育児に対する方、介護に対する方のうち、まだ介護についてはおられませんが、組合 としての取組みはどのようなことをやっているかというと、育児休業者へのフォローを 行っています。休業に入る前と休業中の各種の相談またはアドバイス、復帰時における 保育園の入園手続等の相談やフォローを行っています。休業中の社内の動きがわからな い、組合の動きもわからないということですので「組合ニュース」を定期的に自宅に送 付させていただいています。  続いて「現状における問題点と今後の課題」ということで、こちらは私の考えている ことを列挙させてもらいました。当組合が全体的にこのように思っているかどうかとい うのは全体調整をしていませんので、その点、ご了承願いたいと思っています。私が育 児休業者から相談を受けていちばん問題だと思っているのは、復帰における保育園の入 園の問題です。こちらは行政の対応のシステムが起因していまして、現在、保育園の入 園システムは、私が言うまでもなく皆さんご存じかと思いますが、4月の定期募集に なっています。そこで抽選から漏れた場合には待機児童となります。その後に申込みを 受けた場合には、今度はその補充待ちになりますので、4月に入れないとなかなか入り にくいというのが現状にあります。  当企業が事業所を置いている昭島市においては、常にキャンセル待ちの状況というこ とで、私はそれが取得期間の延長につながっていると考えています。働いている方はま だ優先順位が高いのですが、もっと悪いなと考えているのは、いま、専業主婦の方が働 こうと思ったときに保育園が使えない。待機児童が多い中で入れないという問題があり ます。そちらは地域の中でよく耳にするのですが、就業しようという意思を持っていて も、子どもを預けられないために働けない、という問題があります。今回この場所で言 うべきことかどうかわかりませんが、そういったことも整備をしていく必要があるので はないかと思っています。  介護でなかなか取得されないのは、休業すると経済面でも大変負担がかかるというこ とがありますが、介護を行う際の体力や精神面で大変疲れるということもあって、長期 間の休業取得に至っていないのではないかと考えています。介護休業の取得促進にあた っては、経済的な支援と合わせてメンタル面での、何らかのフォローやケアが必要では ないかと考えています。  今後の企業の課題としまして、男性の育児休業の取得においては、配偶者の方の家計 の収入が一定レベルでないと、なかなか踏み込めないと思っています。今回は事例が2 件あったのですが、奥さんにしっかりとした収入があったということもあって、取りや すい環境にあったのかなと思います。また、職場の理解度も必要だということです。今 後の課題としては、仕事のフォロー体制をどうしていくのかというところが、課題にあ るのではないかと考えています。  あと、保存有給休暇で、子ども看護休暇を取れるシステムがあると報告させていただ きましたが、若年層の方は保存有給がたまっていないケースがあります。その若い方の 子どもに何かあったときの、看護休暇みたいなものが取れないことがありますので、有 給休暇で使うということはあるのですが、それについての制度を何か考えなければいけ ないと考えています。  6頁です。私なりに思っている要望点を述べさせていただきました。介護休業につい て、育児休業同様に休業期間中の社会医療保険料の本人負担分を、法律で「免除」して いただけるようにしてほしいと考えています。雇用保険から「休業給付金」が育児休業 は40%、介護においても同じだと思いますが、支給されています。こちらの給付額と給 付期間を引き上げてほしいと考えています。  先ほど言わせていただいた現状の保育園の入園のところで、なかなか保育園に入れな くて会社に復帰できないという状況も十分あり得ます。そういった中で現行制度の法律 に定められた「1歳に満たない子」という縛りを、保育園に入園できるまでの期間、何 らかの形で拡大していただけないかというところの法改正をお願いしたいと思っていま す。併せて、それは企業努力でやりなさいということではなくて、企業の代替要員に対 する助成金の支給の延長や金額の引上げなども行ってほしいと考えています。  子ども看護休暇5日間の付与は、企業の努力義務ということで定められていますが、 経済的にもマンパワー的にもフォローできる大企業は、先行して制度化が図れるかと思 います。中小となってきますと、経済的な側面や仕事をフォローしてあげる、人的な体 制がなかなかとれないところから、社内で制度を発足するのに、二の足を踏んでいるの かなと考えています。こちらのほうは法制化に伴って企業のほうの導入が図られますの で、全体的な動きを行うのであれば法制化をぜひお願いしたいと考えています。  企業の立場から言うと「ノーワーク、ノーペイ」の原則がありますので、休業者に対 してどこまで企業側の努力・負担・援助ができるのかということがあります。中小企業 では、その方に「大変だな」という理解を示すものの、企業努力の中では一定の限界が あると考えています。育児・介護休業制度をさらに促進させるためには、企業がさらに 努力するのは当然のことなのですが、その一方で、休業者に対する政府の経済的な支 援、それを推進していく企業への支援も今以上に図ってほしいと考えています。あと、 保育園の定期入園については先ほど言ったとおりで、4月の定期募集というシステムを 変えない限りは、スムーズな職場復帰にならないと考えています。そのシステムをぜひ 変更して、希望の時期に働けるようなシステムを社会構築していただきたいと考えてい ます。  時間が押していますがもう1点だけ言わせてください。この場で言うべきことかどう かわからないのですが、我が家のことについて申し上げます。少子高齢化がますます進 んでいく中、現役世代が高齢者の方を支えていく比率が高くなっています。それは子ど もの出生率が低くなっていることがあるかと思います。うちは7歳と5歳の子どもがい まして、妻は専業主婦ですが、子どもを5人ぐらい欲しいと言っています。「最低でも 3人は欲しい」と言っています。私は欲しいという思いはあるのですが、3人目は踏み 切れない現状にあります。というのは、教育費の問題が非常に頭をよぎっていまして、 そのことで3人目の子どもをつくろうという情勢になっていません。  これから世代間扶助という社会システムの中で、そういった制度を成り立たせていく のには、子どもの出生率を上げることしかありませんので、極端な話、子どもを3人以 上つくられた方は国の助成金で教育費を全額免除する、もしくは税金を免除してあげる とか、産んでも安心だという抜本的なことがない限りは、ほとんど子どもは増えていか ない。いくら手当てを引き上げると言っても、手当てぐらいではとても産もうという気 になりません。それはぜひ、何らかの機会で言わせていただきたいと思いまして、最後 に言わせていただきました。今日は本当にありがとうございました。 ○分科会長  それでは、いまの和田さんのご説明について、ご質問がありましたらお願いします。 ○公益委員  口火を切らせていただきます。1点は、育児休業制度を利用している人の数の話が あったのですが、その前にこの制度を利用しないで妊娠して辞めてしまう人がかなりい らっしゃると思うのです。あるいは、この制度を利用せずに、継続して働き続けている 方はどのぐらいいらっしゃるのか。そういったものについて把握していれば教えていた だきたい。 ○ヒアリング対象者  出産を機に辞める人は当然います。育児に専念したいという自分の意思、自己判断に よって辞める方はおられます。しかし、会社のフォローがない、働き続ける環境がな い、ということで辞めるに至った人は1992年以降はいないと思っています。  強いて言うならば、地方で人が少ない部門の女性の方で、まだ取得者が出ていませ ん。私はぜひ取得してほしいと思っているのですが、その環境がまだ整っていないの か、出産を機に自己判断で辞めているのか、苦情としては上がっていないのでそこら辺 まではリサーチしていませんが、そういった苦情的なものは一切発生していません。 ○公益委員  この制度を利用しないで出産しながら働き続けている人はいますか。大体の方は出産 をするとこれを利用すると考えていいですか。 ○ヒアリング対象者  うちの規模でいって、人数でいって、ほとんどの方が育児休業制度を使っています。 ○公益委員  わかりました。行政への質問なのですが、保育園における4月の定期入園の実態、あ るいはそれに対する取組みは、どのようなことになっているのか聞きたいと思います。 ○事務局  3月に卒園して4月から入園するということは、非常に大きいと思います。頭で覚え ているところで数字を申し上げますと、例えば去年の4月の時点で入園しているお子さ んの数が大体187万人ぐらいです。それが今年の3月の時点になると、203万人ぐらいい る。そういう形で波を打ってだんだん年度末にかけて増えて、またストンと4月に落ち てという、そういうサイクルの繰り返しの中で、できるだけ随時受け入れればいいのだ ろうと思うのですが、希望者もだんだん多くなってくる。特に、2歳以下の待機児童が 非常に多くなっているのが現状です。 ○公益委員  取組みは何か考えていらっしゃるのですか。企業の方も同じようなことをおっしゃい ますし、女性のほうからも「4月にしか入園できない」と。あるいは、そのときにもで きない人がいらっしゃるわけですが、そのために出産の時期を4月、5月にして、何月 生まれというのが崩れてきていると。私は統計を見ていないからわかりませんが、それ ぐらいまできている。それについての取組みは行政のことだと思うのですが、何か考え ていらっしゃるのですか。 ○事務局  1つは、定員について、基準に適合する限りは弾力的に入園を認めていくようなやり 方をとっています。もちろん、待機児童ゼロ作戦ということで平成14年から平成16年に かけては5万人ずつ受け入れるような形で、認可保育所のみならず、いろいろな幼稚園 の預かり保育や保育ママさんのようなもの、地方公共団体の単独施策、そういうこと で、そもそもの定員を増やしていこうというやり方もとっています。  もう1点は、働き方についても非常に多様化しています。子育ての支援も今までは保 育園と幼稚園ということだったのですが、この前、衆議院を通過したのですが、児童福 祉法の改正案を出しておりまして、そういう中で子育て支援策を位置付けて、一時的に 預かるとか、保健師や保育士が家庭に出向いていって育児の支援をする。働いておられ る方を念頭に入れた保育施策だけに力を入れてきたのですが、そういうことだけではな くて、子育て支援が必要な方について、できるだけ利用しやすい子育て支援のタイプ を、1つの枠組みとして位置付けてやっていくようなやり方、いろいろな子育て支援策 ということで対応もしていこうかなと。そういうことを考えてやっています。 ○使側委員  半分の方が保育園の入園時期の関係で、延長されているということですが、休業期間 は2頁の表でいくと10カ月までしかありません。例えば、3月に生まれたお子さんで、 4月からしか保育園に入れないから期間が1年以上になってしまう例はないのですか。 ○ヒアリング対象者  幸いなるかな、1年以上で復帰できなかった例はないです。当然、入れられない状況 は頻繁にあって、私は専任の方を置きたいぐらいに思っているのですが、スムーズに入 れられたわけではなくて、いろいろな所へのお願いも含めて、入れていただいている状 況です。 ○使側委員  入ったり、もしかするとほかの家族の方が面倒を見るとかして復帰しているのです か。 ○ヒアリング対象者  ただ、一般的に言って1年を超える方が出てくると思っています。ただ、たまたま、 うちの例でいくと、人員的な補充をしないで、職場の皆さんがその仕事をシェアして 待っています。本人もそうですし、待っている職場の皆さんも復帰してほしいと思って いるわけです。ぜひ、延長にならないように、希望した時期に入れるような体制をつ くってほしいと思っています。  そういったところで、今の状況でいくと1年でどうしても入れなかった場合に、復帰 できないとするならば休業期間が終わってしまいますので、その方は欠勤になってしま うということが発生します。その辺のところの法的なフォローができればということ で、要望の所に出させてもらいました。 ○使側委員  もう1つは、男性の取得の状況なのですが、組合さんの中にも技術者とか開発をして いる人でない営業や一般のスタッフの方がいらっしゃると思うのです。そういう方に休 業を取りそうな気配があるとか、そういうことはありませんか。 ○ヒアリング対象者  たまたま今回は技術者になっただけであって、ほかの製造部門で取れないかというこ とではないと思います。そのときの職場の環境や奥さんとの環境です。今回、技術だか ら取れたということではないと思っています。 ○公益委員  先ほどのお話で周りの人が「あなたはいいよね」という反応だったということなの で、ぜひお聞きしたいのです。ご本人の仕事、配偶者の方の収入、いくつかの条件があ ることに対する反応なのでしょうけれども、「いいよね」ということは、ニーズがある ということですか。男性自身の中に「できれば子どもをつくって、育児休業を取りたい な」というニーズがあるということなのですか。 ○ヒアリング対象者  それとは直結しない部分があるのではないかと思うのです。「会社を休めていいよね 」というところではないのかなと思います。「子育てができていいよね」というのはご くまれだと。私も子育てをしたいと思いながらも、なかなかそこに踏み切れないところ なのですが、そういった感情が「休めていいよね」というところにいったのではないか なと思うのです。 ○公益委員  リアクションとしては、あまり良くないわけですね。 ○ヒアリング対象者  そうです。ただ、男性だから取ってはいけないような雰囲気はないと思います。 ちょっとした言葉が耳についたというところだと思うのです。 ○労側委員  先ほどのご報告の5頁に組合の取組みが記載されていて、休業に入る前、休業中、そ の後も含めて、非常に丁寧にフォローされているという報告がありました。多分、そう いうことが影響して定着しているのだと思うのです。前の方のお話の中で、会社に対す る法改正等の周知が十分行き渡っているかということについては、まだまだ十分ではな いということがありましたけれども、会社の担当者がこれらのことについて、どのよう に取り組んでくださっているのか。それから、行政からの例えば周知等についてのお考 えなりご希望なりがあったら教えてください。 ○ヒアリング対象者  当社内の体制でいきますと、こういった経済環境下にありまして、企業としての収益 がなかなか上がっていかない中、人員の配置で間接部門を減らしているというか、退職 した方の不補充やその方を直接部門に持っていったりとか、極力収入になる研究開発や 製造のほうに人員的に割かれているのかなと思っています。本来、人事とか総務とか、 会社の中枢となるものを強化していかなければいけないと会社は思いつつも、そこの人 員をなかなか補強できないということがあります。育児休業者に対するフォローも形式 的な「こういった手続が必要ですよ」というぐらいで止どまっているのが現状です。  また、その相談の窓口になっている方も、そういった内容について知識として十分 あって相談を受けている、というところには至っていないと思っています。企業ででき ないその辺のところを、組合で肩代わりしている。逆に、相談を受けているうちに、女 性の口こみで「組合に相談したほうがいいわよ」という形になって相談が組合に来てい ると思います。いちばんのアドバイスという言い方はおかしいですが、先ほど言った定 期募集の件がありまして、取得者は4月の定期募集に入れないとかなかなか入れないと は、全く思っていません。1年中どういうときにでも復帰できるだろうと思っていま す。  ですから、1年間取得する権利がありますので、丸々1年間の申請で出してしまう。 そういった場合に何が起きるかというと、定期募集に外れてしまった場合に待機児童に なってしまいますので、空きがなければずっと復帰できないことになって、結果的に期 間を丸々使うと延長ができなくなってしまいますので、4月の定期募集に合わせた第1 設定というか、少なくとも3月31日までに終えて4月からは復帰するような形で申請を してください、ということで指導しています。延長をする分には可能ですので、保育園 に入れなかった場合には延長しての対応をいま図っています。 ○使側委員  これはヒアリング対象者よりも役所のほうだと思いますが、当社も期間を延長した女 性がいらっしゃるのです。妊娠して何月に出産というのはわかりますから、保育園に入 れたいということで生まれる前からずっと努力をしていても、結果的に入れていただけ なかったということで、やむを得ず延長になってしまったのです。時期的にどうしても 4月ということで、保育園側の事情も、経営とか、いろいろな面であると思うのです が、わかっている状況に対する補助というか助成というか、そういうものは考えられな いのかなということが1つあります。  それから、前の方の説明のときなのですが、1日2回30分の育児時間が設けられてい ます。それは、多分、ずいぶん前の授乳のためのものなのではないだろうかと。そうし たときに、いま職場とそれが離れていて、これを利用している方がどれだけいらっしゃ るのだろうかと思うのです。むしろ、もう既にそういう環境ではなくなっている現在だ ったら、そういうものは別な方向に振り替えて何か改善していくというか、これを利用 している方がどの程度いるのかということも、数字をつかんでいないのでわかりません が、1回決めたことを使えなくなってもずっと続けるのではなくて、変えていくことを 考えられたらいかがかと思うのです。 ○事務局  前段の保育園の関係については、先ほど事務局から申し上げましたので若干補足的に なりますけれども、小泉内閣として待機児童ゼロ作戦をやっている。そういう立場から 全般的な需給関係の改善をしていかなければいけない、そのための投資をしていく、と いうことをやっているわけです。その分はこのマイナスシーリングの下でも伸ばしてい ただいて、実績5万1千人規模程度のプラスアルファの受入拡大を続けており、来年度 もまたその方針でやっていくということです。でも、それはマクロ的な需給調整ですの で、個別に例えば○○市でどうだろうかとか、痒いところにはなかなか手が届かない面 もあろうかとは思います。個別地域ごとの事情もあると思います。  そこで、先ほど事務局も触れましたけれども、いま参議院に回っている児童福祉法改 正の中ではマクロ的な待機児童ゼロ作戦の予算規模設定だけではなくて、町村はそうい う問題がないのですが、個別的な各市区における「待機児童解消のための保育計画」を 平成17年4月1日から適用させるという義務付け制度をいま提案してご審議いただいて いるわけです。  それは、逆から言うと平成16年度までの待機児童ゼロ作戦で、マクロ的な供給増政策 を図っても、平成17年度以降なお待機児童が特定の地域に残るのだろうということで、 内閣としてもそういうものに対処するためには、単に「マクロ的に予算を取ってきまし た」と言うのではなくて、個別の市区において認可保育所の定員拡大の問題、地方単独 事業の活用の問題を含めて当該地域における出口を青写真として描いて、それに必要な 支援策が、国としてもあればやっていく。そういう体制に移っていこうとしておりま す。  一方、事業者にも事情があるということもお触れになりながらですが、保育事業を やっている人たちから見ると、何でそれだけおいしいお客さんあるいはお客さんの予備 軍がいるのに事業拡大をしないのだろうか、というお気持も先ほどのご質問の中にあっ たかと思うのです。ご承知かどうか、平成6、7年ぐらいまでは少子化の流れの中で保 育所入所児童もずっと下り坂だったのです。ここのところ5年、それがグッと反転して 伸びてきているという状況です。これは、統計的にそういうことの調査はできませんけ れども、日ごろお聞きする中には、民間の保育事業者から見ると、この少子化の流れが 大きく反転しない限りどこかで投資した部分が余剰投資になってしまうのではないかと いう恐れも抱えている。しかし、目の前にあるニーズに対応していかなければいけな い。  一方、そういう過去の流れの中で、それに対して建設費から運営費からを支援してい っている地方自治体は、国基準よりかなり上乗せした補助を続けてきた。それの善し悪 しは別ですが、地方自治体当局にとって、非常に割り高感が残っている。そういうさま ざまな要素が個別の自治体に事情として入り込み、個別の事業者にも事情として入り込 んでいるのだと思います。それを1つひとつ後追いしていってもしょうがないので、マ クロ的には待機児童ゼロ作戦、地域的には待機児童解消のための保育計画の義務付け、 しかも手段としては認可保育所だけではないという形で、事態の改善を図るということ かと思います。アナウンスメント効果と申しますか、やればやるだけまたさらにニーズ が出てくる地域も非常に多ございますので、状況を見ながらさらに必要な対策ができる かという問題ではないかと思っています。 ○事務局  後段の育児時間の件ですが、これは育児休業法ではなくて労働基準法で、女性の労働 者の権利として認められているもので趣旨は少し違います。いずれにしても、いまのお 話にありましたとおり、基本的には女性の労働者の授乳のための権利として認められて いるものだと思います。したがって、現状はいまお話がありましたとおり、職住かなり 離れている状況だとどういう形で使われているのか、というところはあろうかと思いま す。  一方で、仕事と家庭の両立、それによる雇用の継続という観点とはやや別の観点とし て女性に認められている権利ですので、そこは一緒に論じられない部分もあろうかと思 うのですが、そういう状況の変化もありますので、私も現状どうなっているのか把握し ておりませんので、その辺りも見ながら勉強させていただく必要があるかなと思ってい ます。 ○公益委員  経済財政諮問会議で530万人の雇用創出をやったときにも、保育はかなりのジョブ・ クリエーションが期待できる分野だと。その中で、規制の問題が多々あるのではない か、という議論になったわけです。予算をとることも重要だろうと思うのですが、ここ の審議会として、例えば育児休業法の見直しを進める上で、育児休業法の問題だけに絞 らないで保育の問題とリンクすることが、利用者の立場からすれば、国民の立場からす れば重要だろうと思いますので、そこを総合的に議論していってほしいと思います。こ れはお願いです。 ○分科会長  最後に提起された問題は、今後この分科会の中で議論されていくべきことだと思いま す。今日のヒアリングとしてはもう既に時間も超過していますので、これで終わりたい と思います。お忙しいところを私どものためにお出でいただき、ありがとうございまし た。               (ヒアリング対象者退席) ○分科会長  次の議題に入らせていただきます。「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改 善等のための措置に関する指針の一部改正(素案)」についてです。これはまだ労働政 策審議会に諮問されていませんが、本日、この指針の改正(素案)が資料として出され ていますので事前に事務局から説明をお聞きして、質疑を行いたいと思っています。 ○事務局  お手元の資料No.3にある「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のた めの措置に関する指針の一部改正(素案)」についてご説明させていただきます。参考 資料No.1で、この改正(素案)の改正案と現行の改正部分に関して新旧対照表があり ますので参考に見ていただきたいと思います。参考資料No.2が現行の指針です。こち らも言及させていただきますので、ご用意いただきたいと思います。参考資料No.4が 3月18日に出た報告ですが、こちらの3頁と4頁に今回指針にすべき内容が書かれてい ます。こちらも適宜言及したいと思います。  それでは、(素案)ですけれども、ここで「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管 理の改善等のための措置を講ずるに当たっての基本的考え方を追加すること」というこ とがあります。参考資料No.2をご覧いただきたいと思いますが、そこの第2の所に 「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置」があります。ここ の柱書き4行ほどの所で「事業主は、短時間労働者について、労働基準法をはじめとす る労働者保護法令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考 慮して労働条件を定めるべきであるが」と述べられています。この中で特に「その就業 の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して」とありまして、この前の均等分科会での 議論では、この均衡等の考慮について考え方を具体的に示すという議論がされました。 そういったことから、ここの部分を「基本的考え方」として追加するということです。  報告では4頁の上から2行目の所に「以下のイ、ロの考え方を指針に規定し、事業主 が所要の措置を講ずるに当たって考慮しなければならないようにすることが適当である 」とされています。それを受けて、新たに指針の第二として「基本的考え方」で「事業 主は、短時間労働者について、労働基準法等の労働者保護法令を遵守するとともに、次 に掲げる考え方に従って、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇す るべきである」ということです。その「次に掲げる考え方」を報告のイ、ロの部分を受 けて一と二に書いているということです。  一の部分は「職務が通常の労働者と同じ短時間労働者のうち、人事異動の幅及び頻 度、役割の変化、人材育成の在り方その他の労働者の人材活用の仕組み、運用等につい て、通常の労働者と実質的に異ならない状態にあるものについて」の記述です。その場 合は「短時間労働者と通常の労働者との間の処遇の決定の方法を合わせる等の措置を講 じた上で短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、通常 の労働者との均衡の確保を図るように努めるものとする」ということです。ここで報告 の所と文言が若干変わっています。「通常の労働者と実質的に異ならない状態にあ る」、「処遇の決定方法」といった言葉を使っていますが、これは大臣告示にするにあ たって用例上のことで合わせたものです。  二の部分が報告のロです。「人材活用の仕組み、運用等について、通常の労働者と異 なる状態にあるもの」についてですけれども、「その程度を踏まえつつ、短時間労働者 の意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置等を講ずることにより、通常の労 働者との均衡を図るように努めるものとする」ということです。ここは報告になかった 「通常の労働者と異なる状態にあるものについては、その程度を踏まえつつ」が入って います。通常の労働者と異なる状態にあるものについて、一律でなく、その異なる状態 の程度を踏まえつつ通常の労働者との均衡を図るように努めるということで入れたもの です。  こういった形で「基本的考え方」が位置付けられまして、今の指針の第2の「事業主 が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置」の部分は第3にする。そこ の柱書きの部分については「事業主は、第二の基本的考え方に立って、特に、次の点に ついて適切な措置を講ずるべきである」とします。あと、次に掲げる事項を追加という ことです。  最初は、報告の3頁の(3)の部分です。「通常の労働者への転換に関する条件の整 備」ということで、報告では(3)の「したがって」以下の部分になります。ここの部 分を指針に規定することが適当であるということを受けて、現在の「事業主が講ずべき 短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置」という所で見ると、参考資料No.2の 4頁の(6)の後ろに(7)として「通常の労働者への転換に関する条件の整備」とい うのを入れるというものです。  内容は、先ほどの報告を受けて「事業主は、短時間労働者の通常の労働者への転換に ついて、これを希望し、かつ、その能力を有する短時間労働者のニーズが自らのニーズ に合致する場合において、当該事業所の実情に即して、これが可能となる制度の導入、 必要な条件の整備等をするように努めるものとする」ということです。ここの所も報告 と文言が若干変わっていますが、告示としての用語で整理をしたということです。  次が、報告の(2)の所です。「職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じて処 遇するための措置の実施」ということで、報告では「パートタイム労働者について職務 の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することは、指針に規定することが適 当である」ということです。ここの所は、現在の指針で申しますと3に「所定労働時間 が通常の労働者とほとんど同じ労働者の取扱い」がありますが、そこの所に入れるとい うものです。これはすべてのパートタイム労働者に関係することですので、ここに入れ るということで「事業主は、短時間労働者の職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に 応じた処遇に係る措置を講ずるように努めるものとする」ということです。  これによって今の三が四にずれます。その次の所に「五 労使の話合いの促進のため の措置の実施」が入ります。これは報告の(1)の所で「企業の雇用管理において、労 使の自主的取組を促進する次の措置を講ずることを指針に新たに規定することが必要で ある」ということでイ、ロ、ハが掲げられていますが、ここをその(一)〜(三)で書 いています。  この場合、報告では「労使の自主的取組を促進」と書かれていましたけれども、この 指針は、事業主が講ずる措置ですので、事業主の視点から見てということですので、五 のタイトルとしては「労使の話合いの促進のための措置の実施」といたしました。 (一)で「事業主は、短時間労働者を雇い入れた後、当該短時間労働者からその処遇に ついて説明を求められたときは、その求めに応じて説明をするように努めるものとする 」ということです。  ここは、報告にない「短時間労働者を雇い入れた後」が入っていますが、現在の法 律、パートタイム労働法におきましても、労働者の雇い入れのときには、そういった労 働条件については明示をする、説明をするということが、既に規定されていますので、 そこと書き分けるということで挿入しています。  (二)は短時間労働者について、「関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時 間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとす る」と入っています。最後の(三)が、苦情処理の関係です。「短時間労働者から苦情 の申出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的 な解決を図るように努めるものとする」ということです。こういったことで入りますの で、番号がいくつかずれます。文言もそういったことに合わせて修正をする箇所があり ますので「その他」でその他所要の整備を行うということです。それから、この改正案 は公示の日から適用するという考え方です。  報告の4頁ですが、ここで「指針については、イ、ロの考え方を指針に規定する」と 書いてありまして、そのロの下5行ほどの所に「職務が同じかどうか、労働者の人材活 用の仕組みや運用等が同じかどうか等については、職場の実態も考慮して判断するもの であり、その際に混乱をもたらさないよう十分な配慮が必要」という部分と「労働者の 人材活用の仕組みや運用等の中には、育児・介護などの家族的責任を考慮した運用が含 まれることが望まれる」という部分があります。これは指針に規定する内容についての 留意事項と受けとめておりまして、例えば通達とかパンフレットの中で記述して、こう いう観点についても留意していただくように周知していく、そういうように位置付けて 考えているところでございます。 ○分科会長  ただいまの説明について質問等がありましたらお願いします。 ○労側委員  今日は説明と質問ということでいいのですね。意見交換は。 ○分科会長  今日の説明を伺って、その質問ということで結構です。 ○労側委員  ご説明いただいた内容について、わからない点を質問させていただきます。(素案) ということで説明がありましたけれども、この基になっている報告書との関係で質問し たいと思います。報告書のタイトル、ここに流れている考え方は、通常の労働者とパー トタイム労働者との間の公正な処遇を実現するための方策ということで、タイトルもあ り、そのために指針の検討があり、個々の課題についても公正な処遇を実現するためと いうことが随所に現れていたわけです。しかし、そのことについての考えが、指針(素 案)には欠落しているのではないかと思います。そのことについてどう考えたらいいの か教えていただければと思います。  具体的に言うと、例えば報告の3頁の(1)では「公正な処遇を実現するための労使 の取組の推進」ということでイ、ロ、ハがありますが、指針の(素案)の説明では第二 の三に「労使の話合いの促進のための措置の実施」ということで、タイトルの付け方が 非常に幅が狭められた形になっているのではないかと思いますので、そのことについて 質問します。  2点目は、第二の所に「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための 措置を講ずるに当たっての基本的考え方」が出されています。このパートの所全体は短 時間労働者全体に対する法律であるはずだと思いますが、ここに基本的考え方が出てき たのが報告書との関係でわかりにくい。  現行の第2の所では、パートタイマー全体に対して、均衡等を考慮して労働条件を定 めるべきであると規定されていると思います。今回の(素案)の中では第二の所に「基 本的考え方」とされ、一と二の所は「職務が通常の労働者と同じ短時間労働者」という 範囲が規定されている。基本的考え方といいながら、その対象範囲の人を非常に狭めた 形で持ってきていることについて、報告との関係でどう理解していいのかわからない。 その2点について質問させていただきます。 ○事務局  「公正な処遇」という言葉がいろいろと出てきていますけれども、それとの関係のと ころです。報告の所で掲げられている「働きに応じた公正な処遇」というのは、その議 論をしてきた中で、これを実現するためということで、その方策としていろいろと議論 されましたけれども、当面は通常の労働者との均衡等を考慮した処遇の考え方を指針に 示すことが必要とされたわけです。パートタイム労働法で示されている「就業の実態、 通常の労働者との均衡を考慮した処遇を進めていくこと」、それがその実現を目指して いく枠組みになっているのではないかと理解しています。  そういうことから申しますと、今回の指針の改正は、現行法の枠組みを前提としてい まして、現行のパートタイム労働法においては、その働きに応じた公正な処遇という理 念は就業の実態、通常の労働者との均衡を考慮という考え方で表現されているのではな いかと理解して、その中でそういった位置付けの今回の改正の素案にしたということで す。  特に、労使の取組につきまして、そのタイトルとして「労使の話合いの促進のための 措置の実施」ということでは弱いのではないかということですけれども、事業主が講ず る措置ということで申しますと、気持としてはそういうことで取り組んでいただきたい ということはあっても、労側に対してこの指針の体系の中では位置付けることができな いということで、事業主が労使の話合いの促進のための措置を実施することによって労 使ともに取り組んでいただきたいという、そこの後段の部分の書けないところをこうい った形で表現したということです。  基本的考え方の所ですが、ここについては報告の所との関係ということですが、基本 的考え方ということで言うと、現行のパートタイム労働法の中において、もう既に事業 主は短時間労働者について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用 管理の改善を行っていくべきということが規定されています。それを受けてこの現行の 指針があるわけですが、そこの指針の考え方が現行の所においては「各種労働者保護法 令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して労働条件 を定めるべきである」という、そこの所を抜き出して基本的考え方にしたということで す。  今回いろいろと報告をつくるにあたりまして議論されたのは「その就業の実態、通常 の労働者との均衡等を考慮して」というところが、今までは具体的に示されていなかっ た、そこを示すということで、同じ職務の人についてどういう取扱いがあるかというこ とが、報告において考え方として具体的に示された。ですから、そこの考え方に従って というところも入れて「その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇する べきである」と位置付けたと考えております。 ○労側委員  報告に反対した労側として、この指針改正にどう臨むかというのは、今日は少し忸怩 たるものがあるのですが、今後の対応を決めるために質問させてもらいたいのです。私 の理解だと基本的スタンスは報告書に盛られていることを、要するに、横文字を縦文字 にした場合にどうなるかということだと思っているのです。ですから、報告書が基にな るということで、報告書に盛られている文言が、指針改正案になったときにどう変化し たかという変化の背景、理由をきちんと理解しないと審議のためにならないのでお聞き するのですが、「公正な処遇を実現するため」というのはそれぞれの指針改正案をやれ ば結果としてやるわけだから、文言としては要らないという趣旨に聞こえたのです。そ れが少し理解できない。何のためにやるのですかというのは、報告書は「実現するため 」と書いているわけだから、目的をきちんと明記することが本来はあるべきではない か。  2つ目は、報告書の中に指針に規定すべきだというのが(1)から(4)まであっ て、(4)は指針改正案では第二にしたのです。これを並べてみると、通達とかしおり に落とすみたいな話も抜けているのですが、それは別にして、イ、ロが第二に来た場合 に第三はどんな文言になるかというと「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改 善等のための措置」ということで、「事業主は、第二の基本的考え方に立って、特に、 次の点について適切な措置を講ずべきである」ということになるのです。  その第三はどういうものかというと「労働条件の明示」とずっと書いてあって、これ は基準法の話ですよ。仕事が同じで、人事異動とかが同じなら同じ扱いにしなさい、人 事異動が違ったらバランスを考えるというのは、基準法もバランスを考えなさいという ことになるわけですか。基準法に規定された事項は仕事の内容にかかわらず同時にやる べきで、就業条件の明示や(2)の就業規則の整備をやる場合に、第二の基本的考え方 に立ってやりなさいと書いてあるわけだから、それが全部かかるわけですよね。  ところが、報告書にはそのように書いてなくて、先ほど説明があったように「イ、ロ の考え方を指針に規定し」と言っているから第二に来ていいのだというわけです。実際 の姿を見ると、ただ1点、(8)の賃金・賞与及び退職金については、先ほどのイとロ の所が関係すると読み取れますけれども、そのほかの妊娠・出産における措置とか健康 診断とか、バランスと関係ない事項がたくさんあるにもかかわらず、第二の基本的考え 方に立ってやりなさいと。この言い方は報告を逸脱しているのではないかと思うので す。その辺のところで、労側委員がおっしゃった、何でこういうふうに来るのか、とい うことが先ほどの説明では理解できないという感じです。  ただ、職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇にかかるという3ポツと か、これは臨時パートについては、第二の基本的考え方は関係ないですね。そういうわ けで、第二に持ってきたことによって「労働条件の基本的事項についてもバランスを考 えなさい」みたくなってしまうのは理解できない。報告書を逸脱するのではないか。 ○事務局  報告書逸脱という前に、現行のパートタイム労働指針においても、既に「労働者保護 法令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して労働条 件を定めるべきであるが、特に、次の点について適切な措置を講ずべきである」と書か れています。ですから、そういう意味でバランスを考慮してということでどういうよう に労働条件を定めるべきなのかという、そういったことについては、もう現行の指針に おいてそういう位置付けがなされているものです。 ○労側委員  「通常の労働者との均衡等を考慮して労働条件を定めるべき」ということについて は、労働条件全般にわたってそのことを触れているわけですよね。今度のこの案でいく と、第二の一と二に「職務が通常の労働者と同じ短時間労働者」という限定をされた考 え方を前に持ってきて、なおかつ第三の所では「第二の考え方に立って、次の点に適切 な措置を講ずるべき」ということですから、この案は現行の枠組みと変わってしまって いるのではないですか。「現在の第二の中で労働条件を定めるべき」という中でそれ以 降のさまざまな項目が入っていることと、今回の「基本的考え方」の中の一と二が第二 すべてにかかわって、その基本的考え方に立ってその第三以降のことにも、というのは 現状とは枠組みが全く変わってしまっていると理解できるのです。そこはそういうこと ではないのですか。 ○事務局  ここのところは「その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して」という所 を、その考え方のところをもう少し具体的に示したということです。枠組みとしてはそ この所をそのまま受けているというように認識しています。 ○労側委員  第二に付けている一と二と第三との関係はどのように読んだらよろしいのですか。 ○事務局  一と二を含めて、この考え方を受けて第三のほうで関係のある所がそれにかかわって くるということです。例えば、現行の指針で言うと、参考資料No.2の2頁のいちばん 下に(8)があります。「賃金、賞与及び退職金」ということで「事業主は、短時間労 働者の賃金、賞与及び退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を 考慮して定めるように努めるものとする」というのがあります。ここでその就業の実 態、通常の労働者との均衡等を考慮して、今度は第三の中になりますから、こういった ときの均衡考慮のときは第二の基本的考え方が出てくるということです。 ○労側委員  私の提案は、基準法、最賃法、安衛法、労災保険法等々、遵守すべき法律事項と、今 回示したイとロの所を区分けして整理をする。「遵守するとともに次の考え方に従って 」というのを第二に持ってきて第三で全部混在してバッと並んでくるということは、こ れから事業主の方々にこの指針をお願いするわけなのでしょうが、その場合にこういう 入れ方だと、何が第二のイとロのどこにかかるのだ、どの事項なのだ、というのが見え ない感じがするわけです。現在の指針では、そこは基準法等の法律遵守事項を整理して いる事項が中心ですから、分けてやったほうが報告が求めている趣旨なのではないかと 思うのです。第二のものが追加されたことによって、第三が結果としてわかりにくくな る面がある。それが1つ。  それから、使用者の方々が出された意見の「職場の実態も考慮して」とかはイ、ロに あたりますね。それから、なお書きの「家族的責任」。確かにこれは4頁の報告書は 「イ、ロの考え方を指針に規定し」と。このイ、ロというのは、まさにイの5行とロの 3行で「職務が同じかどうかは別だと。しかし、その後出てきた話だから私もセットだ と見ているのです。そのイとロが指針で、職務が同じかどうかの実態の所は通達で、指 針をやる場合の留意事項だから必要だろうというのだけれども、これをセットにしない とこのイ、ロが結果としては生きてこない感じがする。なぜ指針に盛り込まないのかま では、先ほどの説明だけでは理解しにくい。 ○事務局  留意事項の趣旨の所ですけれども、例えば職務が同じかどうかの判断に際して混乱を もたらさないよう十分に配慮というのは、職務が同じかどうかということについて、労 働省編の職業分類の細分類の区分に基づいて一律に決定するものではなくて、各企業の 実態を踏まえて、現場の労使において具体的に検討をされるべきであると。  そういった意味で職務が同じかどうか、人材活用の仕組みや運用等が同じかどうか、 というのは個々の企業によってさまざまですので、労使共通の理解を得ることが不可欠 であって、その理解の手立てとなるような解説等について、周知するような配慮が必要 ではないかという認識でございます。そういったことから言うと、こういう指針に規定 されている職務、人材活用の仕組み、運用等の具体的判断にあたっての考え方を通達に 示していくのが、ここの部分を受けたことではないかと考えています。  また、その下の「家族的責任を考慮した運用」についても、ここで言われている労働 者の人材活用の仕組みや運用等に関して、その人事異動の幅や頻度が例示として挙がっ ている。そういったことから、育児や介護、そういう家族的責任を担うものにとって異 動が大きな負担となることから、労働者の人材活用の仕組みや運用等に当たって、こう いった家族的責任を考慮した運用が含まれるということが、留意点として示されている ということです。これは労働者の人材活用の仕組みや運用等の判断にあたって、その異 動の幅や頻度をどう見るかという解釈とともに示していくのが適当ではないかと考える ところです。 ○労側委員  報告が出されて3カ月ぐらい経っていますので当時話したこともかなり忘れたところ もあるのですが、さらには報告書が変化した部分について先ほど説明があった部分があ るわけですが、改めて何点か質問をしたいと思います。1頁の第一の項で、先ほどの説 明の中で周知することになっているようですけれども、職務が同じであるかということ はかなり混乱するのではないか。その場合の判断基準を1つ示さなければならないと思 うのですが、その辺はどういうような判断でやればいいのか。  さらには、人事異動の幅及び頻度ということがありますけれども、通常労働者とパー ト労働者の人事管理は当然違います。そういう人事管理が違う中で、どのように人事異 動の幅及び頻度を測るのか。実際に行う場合にその辺の判断基準が出てくるのかどうか ということが1つ。同じように、役割の変化も当然同じようなことが要るわけです。そ の場合の役割の変化の判断基準についても明確にする必要があるだろう。  それから、「処遇決定方式」が「処遇決定方法」という文章に変化したわけですけれ ども、方式と方法は同じ種類にとらえていいのかどうか。議論はずっと「処遇決定方式 」できたわけですけれども、方式と方法で内容の変化が伴わないのかどうかについて改 めてお聞きしたいと思います。  それから、「意欲、能力、経験、成果等」とありますけれども、この中で能力や経 験、成果は一定の判断がある程度できます。意欲という部分で、通常労働者とパート労 働者を処遇する場合の判断としてどう判断できるのか、そういう点ではこの辺は最もわ かりづらい部分です。その辺の判断要素について、とりわけ意欲について明らかにする 必要があるだろうと思います。  これも新しく挿入された部分ですけれども、二の「その程度を踏まえつつ」というこ とです。一律ではないということで説明があったわけですけれども、それだけの考え方 でいいのかどうか。それだけの単純な考え方でここに挿入したということで受けとめて いいのかどうか。この辺もはっきりしたいと思います。細かい部分ですけれども、よろ しくお願いします。 ○事務局  最初の職務の判断基準です。これは昨年の秋の均等分科会の議論でも、職務が同じか どうか、そういったことが議論に出ましたけれども、そういうことを踏まえて今考えて いるのは、通常従事する作業が同じかどうかということで判断をする。たまに行うよう な臨時的なものとか付随的な作業ではなく、通常の作業で見るということです。  その中身としては、作業遂行にあたって求められている責任とか付与されている権 限、そういったことも考慮します。職務レベルは、例えば必要とされる最低限の能力 や、作業を実施する上での困難度も考えて職務レベルが同じかどうか。そういったこと も要素に入ってくる。また、作業の幅等についても見ることになるのではないかと思い ます。ただ、そういういくつかの考慮する事項について書いても、実際の判断、職務が 同じであるかどうかについては、各企業の実態を踏まえて、現場の労使において具体的 に検討されることが必要ではないかと思います。  人事異動の幅、頻度、人事管理等の関係ですけれども、ここの考え方は人事異動で例 えば複数の事業所がある場合は、そこの事業所間の転勤も入りますが、1つの事業所の 中で異動がある、部署が変わる、フロアが変わる、職種間の異動がある、そういったこ とも異動に入るのではないかと思います。その範囲も、幅として単に1回ずつ見るより は、どういった幅のある異動が行われているかということも関係するかと思います。頻 度についても単に回数を比べるのではなくて、幅とも関連して見る必要があるのではな いかと思います。  人事管理ですが、単にパートだから別の人事管理というよりは、そこのところは実態 を見るということで、人材活用の仕組みとして制度化、慣行化されているものがどのよ うにできているのかを見ていくのではないかということです。そこら辺も各企業の実態 を踏まえて、現場の労使において具体的に検討されることが適切ではないかと思いま す。  役割の変化についても、パートの方は責任が重くなる、権限も重くなるということが あっても、それがきちんと評価されていない、処遇されていないということもあります ので、時間的経過の中でどういった職務に課された責任や権限の重さが変化しているの か。そういったことを見ることになるのではないかと思います。  今まで「処遇決定方式」と使っていたものが「処遇決定方法」になったということで すが、私どもとしてはこの素案づくりにあたりましては同義語だと思っています。法令 上の用語としていろいろと例を調べたところ「方法」が広く使われているということ で、そちらをとったということです。  「意欲、能力、経験、成果」ですが、これは報告に書かれていまして、それを踏まえ て素案にしたわけですが、こういった「意欲、能力、経験、成果」についてはある意味 で例示でありまして、一般に通常の労働者においても、判断要素として各企業において 判断をされているかと思います。ですから、通常の労働者はどういった形で判断されて いるかというその判断の物差しや、何に重点を置くかというのは通常の労働者における 場合と同様の考え方に立つのではないかと思われます。  特に、意欲ということは、ここでは抽象的に書いてありますけれども、例えば企業の 中では、今のいろいろな評価の仕組みの中で、具体的な例を示されているかと思いま す。職務遂行にあたっての積極性や規律、指示、命令を守るとか、自己啓発意欲やコス ト意識を持って取り組む行動とか、そういったことについて評価のメルクマールなど で、客観的に見えるような形で処遇がされるような方向が出てきているかと思いますの で、そういったことを参考に意欲が判断されていくのではないかと思います。  「その程度を踏まえつつ」という所ですが、報告の所では特にそこの言及がなかった のです。場合によっては、パートの方についてはその人材活用の仕組みや運用が違うか ら、ということで終わってしまっては、ここの「均衡等を考慮」が生きてこないという ことですので「その程度を踏まえつつ」というそこの考え方を入れたということです。 ○公益委員  法律が専門ではないので教えていただきたいのですが、参考資料No.4の4頁に議論 になっているイの項目があります。ここの2行目からなのですが、「その事業所におけ る通常の労働者との差異が明らかではない」という表現で、従来はその差異が明らかで なければ同様だと見なしてきたわけです。ところが、今回の参考資料No.1の第二の一 の項目が「通常の労働者と実質的に異ならない状態に」という言葉に置き換わっている と思うのです。これは同じでしょうか。  例えば、差異が明らかでないというと、2人の人がなぜ違っている処遇決定方式を受 けているかといった場合には、こういう理由によってこの点が違っているから違う決定 方式をとっているのですよ、ということを事業主側が説明しなければならないというこ とがあったと思うのです。ところが、今度のここですとそれが出てこないのではない か。実質的に異ならないと言われたら、少し違っているのかなという印象を持っている のですが、その点はどうなのですか。 ○事務局  こちらの認識としましては、言葉として「差異が明らかでない」、「同様の実態にあ る」という所はある意味で繰り返しのフレーズみたいな形であって、特に指針にする上 で「同様の実態にある」という言葉については既にある指針の中で育児介護の所でも 「期間を定めないで雇用されるものと実質的に異ならない状態となっている」という言 葉が使われていますので、それに準ずるというか、同じ言葉を使ったということです。 ○公益委員  そうだとすれば、今度の参考資料No.1で提示いただいたものを「通常の労働者と差 異が明らかでない状態にあるものについては」と置き換えても同じことなのですか。 ○事務局  これは技術的な話ですけれども、法令上あまり今までに例がないということなので 「実質的に異ならない状態」という文言を使ったのですが、公益委員がおっしゃった、 事業主がそこの違いについて説明しなければいけないのではないか、という部分につい ては、今回、指針の中で最後に盛り込んだ「労使の話合いの促進のための措置の実施」 ということで、短時間労働者から処遇について説明を求められたときにはその求めに応 じて説明をするようにということですけれども、その求めに応じて説明できるようにす るためには、そこのところがきちっとできるようにしていなければいけないということ です。 ○公益委員  例えば2人の処遇決定方式が違えば、事業主はなぜ違うかということを質問される前 から意識をして用意しておかなければいけないということですか。 ○事務局  用意をしておかないとそれに対して答えられない、ということが用意されるのではな いかと思います。 ○労側委員  いまのことに関連するのですが、労使の取組ですか、説明を求められたら事業主が答 えなさいと。求められたら答える。大体、労働条件の明示で基本的事項であり、加えて その中で賃金とここの三にあるようなことをあらかじめやる責務が事業主にあると思う のです。そこで、説明という場合に、データもなくて言葉で何となく説明されても困る だろうし、きちんといろいろなデータを示す。先ほどの意欲も、いま行われている評価 システムを全部示さなければいけないわけです。「こういう評価でやっているのだか ら、あなたはこうだよ」ということも含めて、通常労働者とパートでやるのが説明だと 思うのです。その説明という言葉の持つ意味は、労働者との納得の関係からいくと、本 来どのような内容で書かれるべきなのか。文章そのものはこれでいいと思うけれども、 これに裏付けられる行政指導的なものはどのように考えられているのか。ここはトラブ ルが起きた場合の納得性という問題からすると、かなり重要です。  「根本的には努めなさいだから、そんなことまでやる必要はない」と事業主は言うか もしれないけれども、指針が求めるのはできるだけ積極的に答えてほしいと。むしろ、 事業主が積極的にやるべきなのです。その辺の関係からするとここは大事なので、その 説明という意味がどのようにイメージされているのか。 ○事務局  求めに応じて説明ということですので、聞かれた方に対してどのように説明していく かというのは、事業主の判断かと思います。そのときに、パートタイム労働者の方が納 得できない場合については、ここで書かれていますように(一)では納得できないとい うことで、苦情処理の仕組みを活用する方向に行くということです。  また、それが1人だけの問題ではなくて、ほかのパートタイム労働者の方たちも全体 でそこの違いについてわかるような形もしくは「こうしてほしい」という話が出てくる のであれば、(二)にあるようにパートタイム労働者からの意見を聴く、そういうこと で、(一)に関係することは(二)、(三)とも相俟って進んでいくのかなと考えてい ます。 ○分科会長  時間の関係もありますので。事務局で補足して説明することがあればお願いします。 ○事務局  今日、こういう(素案)という形でお示しさせていただきましたけれども、規制的な 内容の省令や告示についてはパブリック・コメントに付するのが政府の取扱いの方針で す。このパートタイム労働指針が直接の規制的なものかどうかということはありますけ れども、広くこういったことについてもパブリック・コメントに付するのがいいのでは ないかと考えています。それに則りまして、本日これからですけれども、この(素案) について要綱という形で公表して、意見募集、パブリック・コメントをすることとして います。公表方法としては、ホームページへの掲載ということで、意見募集の期間は7 月16日までということで考えておりますことを報告させていただきます。 ○分科会長  次回は、平成14年度の女性雇用管理基本調査の結果がまとまる予定ですので、その調 査結果を説明していただく。その後、今後の仕事と家庭の両立対策について議論をして いく項目について、フリートーキングをしていきたいと考えています。署名委員です が、本日は佐藤(孝)委員と吉川委員にお願いしたいと思います。最後に、事務局から 次回以降の予定について連絡があるということですのでお願いいたします。 ○事務局  次回の予定は、既に委員の皆様のご都合を調整させていただいていますが、7月22日 15時30分からということでお願いしたいと思います。次々回以降については、改めて事 務局から日程調整をさせていただきます。なお、前回、日程調整表をお配りしています が、まだご提出いただいていない方は事務局へご提出をお願いしたいと思います。 ○労側委員  次回は指針改正案の諮問はしないのですね。議題は調査結果と両立支援という。 ○事務局  それははっきりしたものを言ったということでありまして、諮問に向けては準備をし て、それができるときになればまたお知らせさせていただきます。 ○分科会長  本日はこれで終了いたします。どうも長時間ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 職業家庭両立課 法規係(内線:7856)