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平成15年6月25日
「健康食品に係わる制度のあり方に関するヒアリング資料」

団体名:在日米国商工会議所(ACCJ: The American Chamber of Commerce in Japan)
代表者:栄養補助食品小委員会 委員長 大濱 宏文
団体の概要:1948年設立。現在1,400社以上の企業を代表する約3,200人が会員として加盟。日米間交易の発展に寄与し、グローバルに事業を展開する企業の日本における活動の支援を主たる目的とする。

健康食品に係わる制度のあり方に関する意見

 在日米国商工会議所(ACCJ)は平成7年に、いわゆる「健康食品」の取り扱いについて「栄養補助食品の位置づけの明確化と規制緩和」を市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)に問題提起いたしました。この問題提起では、

  1. 通常海外で食品として流通・販売されているものが日本において医薬品として規制されることなく、食品として取り扱いできるようにするため、
  2. 食薬区分の見直しを行うとともに、
  3. 形状(剤型)規制を緩和し、
  4. 消費者が自分に必要なものを的確に選択できるよう、有用性や摂取方法等の表示を可能にする
という規制緩和を求めました。この要請は、市場開放問題の一環として貿易障壁の排除を目的としたばかりでなく、栄養補助食品が消費者に安全かつ適切に利用されることを目指したものでした。この要請は平成8年3月に、OTO対策本部(本部長:内閣総理大臣;構成員:16閣僚)の決定を受けて、国の規制緩和計画に取り込まれました。

 当時の厚生省により4年間にわたる検討会が開かれ、その結果、平成13年3月に保健機能食品制度が制定されました。しかしながらACCJは、すべての健康食品を対象に規制緩和を求めることが重要であると捉えてまいりましたので、この観点に立てば、保健機能食品制度では十分な規制緩和の結果が得られていないと思慮いたします。なぜならば、現今の保健機能食品制度では、大部分の健康食品は「いわゆる」付きで制度の外に曖昧な状態に置かれているからです。

 また、ACCJは、健康食品を一般の食品によっては満たされない、あるいは不足する機能を補う役割を持った食品と判断しています。このような判断は、海外諸国で法制度として定着し、あるいは積極的に検討されています。具体的には、米国(DSHEA: 栄養補助食品健康教育法)、EU(EU指令)、韓国(健康機能食品に関する法律)、中国、インドなどを挙げることができます。これに対し、わが国の保健機能食品制度は一般の食品と健康食品を区別せずに取り扱っています。一般の食品と健康食品を混同することによって生じると考えられる様々な問題を回避し、さらに国際的な整合性の立場からも、健康食品に関わる包括的な法制度を取り入れることが必要と判断し、このような視点から、ACCJは以下のように意見を具申いたします。


1.国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割をどう位置づけるか。
「医薬品―現行制度に基づく保健機能食品―いわゆる健康食品―一般食品」の体系のあり方。

 平成11年度厚生科学研究「いわゆる栄養補助食品等の流通実態と食品衛生に関する研究(田中平三主任研究者)」において報告されていますように、国民の約40%が健康食品を摂取した経験を有しており、疲労回復、健康増進、体質改善、肥満解消などの明確な摂取目的をもって摂取している人が多いことが明らかにされています。しかしながら、健康食品の多くは「いわゆる健康食品」として一般食品に位置づけられ、薬事法、食品衛生法、健康増進法、景品表示法、食品安全基本法など、立場の異なる法制度の下で複雑な規制を受けるという状況を形成しています。

 国民が、このように高い関心を寄せており、しかも1兆円を越えるといわれる市場が、絶えず「いわゆる」付の曖昧な存在として置かれていること自体に不自然さを感じます。しかも、前述の調査結果のごとく、健康食品がかなり明確かつ具体的な目的を前提に摂取されていることからすれば、健康食品はすでに一般食品とは異なるカテゴリーとして国民の意識の中に定着していることを示唆しています。

 したがって、健康食品の置かれている市場の現状を適切に認識して、国民にとって、それらが本質的な役割(健康の維持・増進、疾病に対するリスクリダクションなど)を果たすことを可能にすると同時に、製品の安全性と品質を確保するために、新たに健康食品を包括的に取り扱う「健康食品法(仮称)」を制定して、医薬品、一般食品及び保健機能食品から切り離した健康食品の立場を明確に位置づけ、消費者の選択に資する適切な情報を提示するシステム作りが急務であると判断します。

2.「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているか。「健康食品」の安全性・有用性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。

 日本市場における健康食品の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているとは言い難いと認識します。

 健康食品を包括的に取り扱う法制度が現在存在しない為に、前述のごとく薬事法、食品衛生法、健康増進法などの様々な法制度によって健康食品は複雑な規制を受けています。この状況は海外から見れば、様々な矛盾と理解の困難を伴うものであり、そのため、海外の多くの製品の日本への輸出を困難にしています。

 また、安全性、有効性などに関する情報を消費者に伝えることが殆ど出来ないために、国民は適切な判断手段を欠いたまま、製品を購入することを余儀なくされています。様々なメディアを介する玉石混交の情報に頼らざるを得ないため、時には目的・用途の不明瞭な商品に高額な金銭を支払って購入するという、異常な状況さえ否めない事実となっており、このような事態は製品の利用・流通・製造に対しても混乱を生み出していると考えられます。

 それゆえ、健康食品の有用性・安全性の確保と同時に、流通に際しても、製品に対する情報の透明性、トレーサビリティー、使用者が自らの目的に応じて摂取できるための有用性や適切な摂取方法に関する表示等を考慮した法制度化が必要であると考えます。

3.1及び2を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度はどうあるべきか。

 健康食品に関して行政、関係業界、消費者の果たすべき役割については、健康食品自体が今後の食生活、国民の健康に大きな影響を与える存在であるという認識を明確にし、その枠組みを明確にし、それぞれの果たすべき役割の範疇を明らかにする必要があります。そのためには、健康食品の業界と制度が抱えてきた問題点を明確化し、健康食品が最終的には国民のためのものであるという認識の下に、国民が適切に利用できるための法制度化と不良品(違反品を含む)を排除できるシステムの設置が早急に望まれます。

 特に、科学的な根拠の曖昧なあるいは科学的な根拠のない、国民をミスリードする情報をどう排除するかという基本的な問題の解決が必要です。この責任は、行政、学会、業界それぞれが負わなければならないと思慮します。そのための、健康食品に係わる包括的な制度の基本的なあり方を、次のように考えます。
(1)消費者に対して適切な情報を提供する体制を整備する。
(2)健康食品が適正に利用できるための制度的、及び社会的枠組みを整備する。
(3)具体的な製品の選択と利用は、上記の (1) 及び (2) に基づいて国民が個々の状況に応じて行う。
(4)健康食品の摂取によって、万一健康被害等の不祥事が発生した場合、またはその恐れがある場合に適切な対応がとれる体制を整備する。

上記の (1)〜(3) は平成8年12月18日付の公衆衛生審議会の意見具申を引用したものですが、特に (1) に対しては包括的法制度の下で行政と関係業界が、(2) に関しては行政を中心に、(3) に関しては国民が自らの問題として積極的に知識の修得に努め、自らの努力によって対応すべきと考えます。また、(4) については包括的法制度の下に適切な体制を整備して、行政、関係業界、国民がそれぞれの立場から取り組むべきと思慮します。

 なお、ACCJは本件に関連して、「栄養補助食品の包括的制度化」に対するACCJとしての公式見解 "ヴューポイント(Viewpoit)"(PDF 170KB)を、既に公表致しましたので以下に添付致します。

以上


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