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「健康食品に係る制度のあり方に関する意見」

未来食品技術研究会(昭和63年3月設立、会員数20社)
会長吉田脩平(食の効能普及全国会議事務局長)
事務局森 信也(森永製菓(株)健康事業部開発企画担当マネジャー)
TEL:03-3456-0226、FAX:03-3456-5316
未来食品技術研究会の目的と活動
機能性食品、栄養補助食品に関する情報の収集と発信
IADSA(栄養補助食品業界団体国際連合会)のメンバーとして、海外の機能性食品、栄養補助食品に関する制度、法規則の調査
わが国の機能性食品、栄養補助食品に関する規制緩和と新しい法規則、制度の研究と実現
機能性食品、栄養補助食品の新製品、新素材の情報収集と発信


「健康食品に係る制度のあり方に関する意見」

 平成13年3月27日付で発表された保健機能食品の制度においては、我々業界の意見が容れられず、いわゆる健康食品が一般の通常食品と同じ位置付けに置かれ、以来、健康の維持・増進に資するという健康食品のメーカーや販売者の意図を表現する道が閉ざされてきました。また、栄養機能食品の制度においても必ず大衆薬(OTC薬)より一段不利な立場に位置付けられ、食品による健康の維持・増進という考え方が抑圧されてきた感が否めません。その意味では「健康食品に係る制度のあり方に関する検討会」において、現行の健康食品の制度を見直そうとすること自体は評価するものです。
 しかしながら、最近の情報によりますとコーデックス(Codex Alimentarius Commission)の食品表示作業部会(CCFL)は、偶々同時期(2003年4月28日~5月2日)にオッタワにおいて開催されたその第31回作業部会において、予想よりはるかに早く、栄養素機能強調表示(Nutrient Function Claims)、その他機能強調表示(Other Function Claims)、疾病リスク低減強調表示(Reduction of Disease Risk Claims)からなる健康強調表示(Health Claims)のガイドライン案を承認し、ステップ8に進めました。そして、このガイドライン案は、今年の6月30日から7月7日にローマにおいて開催が予定されている第32回コーデックス委員会において採択されることは確実視される情勢にあります。
 このコーデックスの健康強調表示のガイドライン案においては、栄養素機能強調表示は、身体の成長、発達、および正常な機能における栄養素(栄養所要量が定義されている栄養素)の生理学的役割を示す強調表示と定義され、その他機能強調表示は、身体の正常な機能または生物学的な活動に対して、食事全体との関連における食品またはその成分の摂取よる特定の恩恵的効果に関するもので、健康、または機能の改善または健康の維持・増進に対するプラスの貢献に関する強調表示であると定義され、疾病リスク低減強調表示は、食事全体との関連において、食品またはその構成物の摂取を疾病または健康関連状態のリスクの低減に関連付ける強調表示であると定義されています。これら3種類の強調表示の中でも、特に懸案であった疾病リスク低減強調表示が承認されたことは大いに注目に値します。
 先進国および開発途上国を含め、165カ国が構成するコーデックスが、このような食品の表示のガイドラインを将に承認しようとする時代であることを考え、わが国の保健機能食品の制度を改めて見直しますと、彼我の差の余りにも大きいことに驚かされるといわざるを得ません。このコーデックスの動きは、既に同様の食品の健康強調表示を検討しつつある欧州連合(EU:European Union)のEU委員会やEU議会に強い影響を与え、その議論を加速することは火を見るよりも明らかであります。
 ただ、コーデックスのガイドラインは、EU指令(EU directive)とは異なり、メンバー諸国に対する強制力はありません(EU指令の場合は、EU議会が承認したEU指令に合せて、一定の期限までにEU加盟国の規則や法律を改正することを指令することが出来る)。従ってこのコーデックスの斬新的な表示の制度を国内で活用するためには、わが国の法規則自体がその趣旨に沿った改正を行う以外に道がありません。
 このような背景のもとに、未来食品技術研究会は、最早、健康食品の制度のあり方の見直しに留まるべきではなく、健康食品を含む食品全体の健康効果の表示の制度を中心に、「食と健康」についての枠組全体を見直すべきであると考えます。
 そのためには、米国がもう10年以上前の1990年の食品表示教育法(NLEA)と1994年の栄養補助食品健康教育法(DSHEA)において行ったように、「人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされているものであって、器具機械(歯科材料、医療用品、衛生法品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品は除く。)」、および「人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであって、器具機械でないもの(医薬部外品および化粧品を除く。)」という薬事法の医薬品の定義を変更して、食品であっても科学的な根拠のあるものは、身体の構造または機能に影響を及ぼすこと、および疾病のリスクを低減すること、が表示できるような包括的な「食品と健康に関する制度」を創出するべきであると考えます。そして最低限、先進国の一つとして、コーデックスのガイドラインの内容がわが国でも実施できるように法規則を再構築するべきであると考えます。
 近年、わが国の生活者も非常に健康志向が強くなってきたといわれますが、食品の健康に対する役割や機能が食品のラベルに表示されれば、「自分の健康は自分で守る。」という意識のもとに一層、食品の健康機能に対する知識も増え、中長期的には必ず生活習慣病の低減に結びつくと考えられ、ひいては増加の一途をたどる国民総医療費および老人医療費の低減、健康保険財政の再建および健康保険負担増対策には大いに資するだけでなく、国民一人一人の生涯を通してのQOLの向上に資するものと考えます。 従来、わが国の厚生行政は、医療、医薬品に偏しているように思われます。不幸にして病気になればこれは医療、医薬品の問題ですが、大部分の健康な人の健康の問題は、食事を含む健全なライフスタイルの問題であり、今後は「病気と医療、医薬品の問題」から、「健康食品や栄養補助食品を含む食品と健康の問題」にウエイトを移す必要があると確信します。

以上


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