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資料No.2

2003年6月19日
JAM日本電子連合労働組合
副書記長  和田 幸一


労働組合ヒアリング

I. 会社・組合概要(プロフィール)
 
1. 企業:日本電子株式会社(JEOL Ltd.)
 
創立日 1949年(昭和24年)5月30日
事業内容 電子顕微鏡を始めとする理科学・計測機器メーカー(電子光学機器、分析機器、半導体関連機器、産業機器、医用機器)
経営理念 「創造と開発」を基本とし常に世界最高の技術に挑戦し製品を通じて科学の進歩と社会の発展に貢献します
企業集団 国内関係会社12社、海外現地法人9社
売上高 52,607百万円(連結売上高82,833百万円)
資本金 44億2,600万円
株式 東証1部上場銘柄(1966年)
従業員数 1,748名(グループ従業員数:3,114名)
平均勤続年数 20.6年(男性21.8年、女性11.1年)
所在地 東京都昭島市武蔵野3−1−2(本社・昭島製作所)
ISO ISO 9001認証取得、ISO 14001認証取得

2. 企業内組合:JAM日本電子連合労働組合
 
結成日 1968年(昭和43年)2月14日
連合体組織 日本電子グループ7社の組合員で組織する単一組合(基本的には同一労働条件)
組合員数 1,381名(男性1,130名、女性251名)

II. 日本電子における育児・介護休業制度の内容と取得状況
 
1. 育児休業制度
1) 制度概要
 
1992年(平成4年)4月からの育児休業法の法制化にあわせ、育児休業制度をスタート。
休業期間は、満1歳に達する日(誕生日の前日)までを限度。
当該子に対し1回限りの連続した期間とし、期間内の再取得は認めていない。
2) 休業中の労働条件
 
休業期間中の賃金は支給しない。
ただし、一時金(賞与)は、支給対象者で有資格者扱い。休業1日につき、人事考課、家族手当を含まない定率支給額の1/140を控除し、下限は定率支給額の50%に止めている。
昇給は行なう。
休業期間は、勤続年数に算入しない。
年次有給休暇の付与は、当該期間を出勤したものとみなし、付与する。
復職時の職場は、原則として原職復帰。
3) 取得状況
  (1) 取得実績

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
人数 1 3 3 7 9 12 5 17 9 14 8 88

取得延べ人数は88名。実質取得者は58名。
複数回取得者は25名(2回:21名、3回:3名、4回:1名)
内、男子の取得:1999年に1件(3.5ヵ月)、2001年4月に1件(1.5ヵ月)

育児休業制度の取得推移

育児休業制度の取得推移


(2) 取得期間の状況

休業期間(ヵ月) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
人数(人) 2 7 3 3 6 7 9 9 11 31
割合(%) 2.3 8.0 3.4 3.4 6.8 8.0 10.2 10.2 12.5 35.2

休業期間別の人員分布

休業期間別の人員分布


(3) 休業期間延長の状況
 1998年から2002年までの5年間で、育児休業取得者53件中、24件(45.3%)が休業期間の延長を行っている。主な延長の要因には、保育園の入園時期によるものが多い。
4) 育児を行なう労働者の時間外、休日、深夜業
 
3歳未満の子を養育する者が希望する場合、所定労働時間を超えて就業させることはない。但し、フレックスタイム制度の適用者は除く。
小学校就学の始期に達するまでの子の養育を行なう者が会社に申し出た場合、当該者に対する休日勤務を含む時間外勤務時間は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1ヵ月24時間、年間150時間を限度とする。
妊産婦が請求した場合においては、時間外勤務協定に拘らず、休日勤務を含む時間外勤務に就かせることはない。
小学校就学の始期に達するまでの子の養育を行なう者が、深夜業の免除を請求した場合には、原則として深夜業に就かせることはしない。その期間は、1ヵ月以上6ヵ月以内で本人が希望する期間。ただし、当該子を保育することができる当該子の同居の家族等がいる者については、深夜業の免除の適用を除外する。
5) 勤務時間の短縮等の措置
 
3歳未満の子を養育するものが希望する場合、所定労働時間を超えて就業させることはない。
フレックスタイム制度の適用者は、その制度適用をもって措置適用となる。ただし、育児対応ができない場合は、対象期間中はその勤務形態を解除し、通常勤務に戻すことができる。

2. 介護休業制度
1) 制度概要
 
1999年(平成11年)4月からの育児・介護休業法の施行にあわせ、介護休業制度をスタート。
休業期間は、連続した3ヵ月間を限度。
対象家族一人につき1回限りの連続した期間とし、期間内の再取得は認めていない。
2) 休業中の労働条件
 
休業期間中の賃金は支給しない。
ただし、一時金(賞与)は、支給対象者で有資格者扱い。休業1日につき、人事考課、家族手当を含まない定率支給額の1/140を控除し、下限は定率支給額の50%に止めている。
昇給は行なう。
休業期間は、勤続年数に算入しない。
年次有給休暇の付与は、当該期間を出勤したものとみなし、付与する。
復職時の職場は、原則として原職復帰。
3) 取得状況
 2003年6月18日現在、取得者はおりません。但し、他の制度(保存有給休暇制度)で、介護・子供看護の目的で利用取得された方はおります。
4) 休業しないものの措置
 
介護休業の対象者で、かつ休業しない者は、1日の所定労働時間帯の繰上げ、または繰り下げ(時差勤務)を受けることができる。その時間は、1日につき30分単位で2時間まで。期間等は、介護休業の内容と同じ
フレックスタイム制度の適用者は、その制度適用をもって措置適用となる。ただし、育児・介護対応ができない場合は、対象期間中はその勤務形態を解除し、通常勤務に戻すことができる。
5) 介護を行なう労働者の時間外、休日、深夜業
 
要介護状態の対象家族の介護を行う者が会社申し出た場合、当該者に対する休日勤務を含む時間外勤務時間は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1ヵ月24時間、年間150時間を限度とする。
介護休業の対象者で、かつ休業しない者が、深夜業の免除を申請した場合は、原則として深夜業に就かせることはしない。その期間は、1ヵ月以上6ヵ月以内。

3. その他の休暇制度・・・保存有給休暇(消滅する有給休暇)
 「保存有給休暇(消滅する有給休暇)に関する協約」において、「有給休暇」で「介護・看護」目的で休暇を使用できる制度がある。
 年次有給休暇は、当年度の年次有給休暇が残存する場合は、20日を限度として、これを繰り越すことができる(当年度付与日数は、最大20日。前年度からの繰越し20日とあわせ、最大40日間の有給休暇となる)。また、20日を超える残存日数については、自動的に消滅するものとする。この消滅する有給休暇は、つぎの保存有給休暇として、積み立てられる。
1) 第1保存有給休暇(積立日数の限度は60日)
(1) 1週間以上(暦日)の休業を必要とする傷病で医師の診断書がある場合、医師の判断による日数。当事者が本人の家族または親族であっても、会社が認めた場合には、使用できる。
(2) 1週間以上の(暦日)の休業を必要とする災害の場合、会社が認めた必要な日数。当事者が本人の家族または親族であっても、会社が認めた場合には、使用できる。
(3) 勤続10年以上の者で、1ヵ月前に目的・期間を明記して会社に申請し、会社が認めた場合、原則として連続1週間(暦日)以上30日以内。在籍期間中3回を限度。
(4) 満60歳定年退職およびフレックス定年退職の場合、保有する日数。原則、退職前1年間の期間内で連続使用とする。
(5) リフレッシュ休暇。満30歳・35歳・45歳・50歳は5日間。40歳は10日間。誕生日から1年以内に連続使用。
2) 第2保存有給休暇(積立日数の限度は90日)
 満60歳定年退職の場合、第1保存有給休暇の使用後、保有する日数。原則として、退職前1年間の期間内で連続使用
3) 取得状況

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
家族看護・介護 件数     1   2 2         1 6
日数     5   26 55         15 101
子女看護・介護 件数           1           1
日数           8           8

III. 組合の取り組み
    
育児休業者へのフォロー活動を行なっている。休業に入る前、休業中の各種相談・アドバイスや、復帰時における保育園入園の手続きなどの相談・フォロー。
休業中での社内の動き、組合の動きがわかるように、「組合ニュース」などを定期的に自宅へ送付。

IV. 現状における問題点と今後の課題
 
1. 現状の問題点
 
復職における保育園入園の問題がある。希望する時期に子供が入園できない。定期募集ですでに定員オーバーとなり、定員もれによる待機児童となるケースが多い。
各自治体においては、入園できる規模を増やしてはいるが、主なる事業場がある昭島市においても常にキャンセル待ちの状況である。
今、専業主婦の方が、働くに当たって子供を保育園に入園させにくい現状にある。せっかく就業する意志のある方が、子供を預けられないために、働きに行けないという問題がある。
介護は、収入面と、介護を行う体力・精神面から、長期間の休業取得は大変難しい実態にある。

2. 今後の企業の課題
 
男子の育児休業の取得では、配偶者の家計の収入額がポイントになりそうである。配偶者の収入面の安定・一定レベル額がないと、休業へは踏み込めない側面もある。また、職場の取得に対する理解度(取得しやすい雰囲気づくり)、仕事のフォロー体制の整備を進めて行きたい。
保存有給休暇制度により家族看護・介護休暇を有給で取得できるが、若年層の場合、保存有給休暇がないケースが多く、子供看護休暇などの制度化を図って行きたい。
育児や介護に関わる方の、所定労働時間の短縮制度も検討して行きたい。
今後、更なる少子高齢社会への進行に向け、働きながら育児や家族介護を行い、職業生活と家庭生活を調和することができる諸々の条件整備が必要となってくると認識する。当労組としても、今後の育児・介護休業法の動向、上部団体の方針、他労組の制度導入内容なども踏まえ、「育児・介護休業制度」の更なる充実を目指し、取り組んでいく。

V. 政府・行政への要望
    
介護休業も、育児休業同様に、休業期間中での社会保険料の本人負担分を、法律で「免除」できるようにして欲しい。
雇用保険から「休業給付金」が支給されているが、その給付額と給付期間を引き上げて欲しい。
現状の保育園の入園状況では、「1年間の休業期間中に入園できず、待機児童となり、職場復帰できず」と言う状況も十分ある。そうした場合に、現行法の取得期間である「1歳に満たない子」を「保育園に入園できるまで延長」できるように法改正して欲しい。併せて、それに対応する企業に対し、代替要員に対する助成金の支給延長ならびに金額の引き上げを図って欲しい。
「子供看護休暇5日間付与の努力義務」について、努力義務のままでは、企業体力のあるとこは先行して制度化できるが、そうでないところは必要性は感じるものの、なかなか制度化に至らない。制度を促進するには、法制化する必要性を感じる。
企業は、「ノーワーク、ノーペイ」の原則がある。休業者に対し、どこまで企業側の努力・負担・援助ができるのか、いづれにしても中小企業では限界がある。育児・介護休業制度を更に促進させるために、企業努力をする一方で、国の休業者への経済的支援や企業支援を、今以上に図って欲しい。
保育園の定期入園が4月(入園手続きは2月)となっている。その後の入園は、空きがないと入園できない(補充募集)。子供をいつ生むのか選択できない現状の中、定期募集の現在のシステムは、スムーズな職場復帰となっていない要因である。このシステムを変えないと駄目だと強く感じる。

以上



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