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社会保障審議会年金資金運用分科会
(第18回)
議事録(案)




厚生労働省年金局運用指導課


社会保障審議会年金資金運用分科会(第18回)議事録(案)


日時: 平成15年3月13日(木) 10:00〜10:45

場所: 都市センターホテル会議室「オリオン」
(日本都市センター会館5階)

出席委員: 若杉分科会長、内海委員、小島委員、関山委員、高梨委員、吉原委員、米澤委員

1.開会

2.  議事

(1)年金積立金の運用利回りの検討
(2)その他

3.閉会


○運用指導課長
 それでは、ただいまより第18回社会保障審議会年金資金運用分科会を開会いたします。
 まず、資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。資料1「株式を含む分散投資の是非に関する意見(案)」でございます。よろしゅうございましょうか。
 なお、議事録につきましては、作業がまだ完了いたしておりませんので、作成でき次第、分科会にお諮りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、前回までの配付資料をファイルにまとめて机の上に置かせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 委員の出欠でございますが、本日は大和委員、竹内委員、福井委員、吉冨委員につきましては、御都合により御欠席という御連絡をいただいております。御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますこと御報告申し上げます。
 では、以後の進行につきましては、若杉分科会長にお願いいたします。

○若杉分科会長
 皆さん、おはようございます。本日も御多忙の中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、7日に開催しました分科会における議論に引き続き、「株式を含む分散投資の是非に関する意見(案)」について議論を尽くし、当分科会としての意見書の取りまとめを行いたいと思います。
 7日の分科会におきましては、株式を含む分散投資という基本的な方針が確認された一方で、運用環境が非常に厳しいことを踏まえ、国民の不安感にも配慮する必要があるのではないかなど多岐にわたる御意見をいただきました。それらの意見を踏まえ、前回提出いただいた案を修正したものを資料として提出してございます。本日は、この修正案について十分御審議をお願いしたいと思います。
 では、最初に、事務局から修正箇所についての御説明をお願いしたいと思います。では、運用指導課長、お願いします。

○運用指導課長
 それでは、お手元の資料1、「株式を含む分散投資の是非に関する意見(案)」をごらんいただければと思います。前回7日に御審議いただきました案から修正を加えた部分を中心に御説明させていただきます。
 1ページ目でございますが、1「はじめに」というところは特に修正はございません。
 2のタイトルでございますが、前回は「年金積立金の運用のあり方と株式投資」となっておりましたが「・債券投資」というものを加えてございます。3のタイトルも「株式投資・債券投資」となっておりますので、整合性を図る意味でこのように変更を加えてございます。
 1ページ目は以上でございます。
 2ページ目をごらんいただきますと、真ん中ほどですが「運用の目標」と題がついておりますパラグラフがございます。2行目でございますが「長期的に見て」という後に「名目賃金の上昇を上回る実質的な運用収益を」というふうに、ここは前回は「名目賃金上昇率を上回る実質運用利回りを」という表現でございましたが、少し表現がわかりにくいということで訂正をいたしております。
 その次のなお書きのところでございますが「名目予定利回りの」の後に「絶対水準の」という言葉を追加しております。これは委員からもそういう御指摘がございまして、よりわかりやすい表現にということで加えてございます。
 2ページ目は以上でございます。
 3ページ目は、特に修正が入った部分はございません。
 4ページ目でございますが、一番上のパラグラフの4行目の「これを一定期間維持する方が、上記の目的の達成には効果的である」。前回までは「長期間」となっておりましたが「一定期間」というふうに表現をより適正にということで修正しております。
 その次のパラグラフ「株式市場では」で始まるところですが、前回はこの頭に「合理的な株式市場では」という表現がございました。「合理的な」という表現はいかがだろうかという御意見もございましたので、「合理的な」という言葉をここでは削除いたしております。
 それから、3行目に「こうした運用は」とございますが、この「こうした」というのがどこを指すのかわかりにくいという御指摘がございました。前回の文章では、その前の2行目が「結局は短期的な市況予測に基づく投資となり、効率の悪い運用とならざるを得ない」という表現になっておりましたが、「効率の悪い」という部分は、その次の行に「効率的な運用」とまた出てまいりますので、やや表現がわかりにくいということで、その部分をカットして今のような表現にいたしました。このことによりまして「こうした運用」の「こうした」というのは、その前段でございます「短期的な市況予測に基づく運用」というのを指して「こうした」と言っているということがよりわかりやすい文章になったかと思います。
 その次のパラグラフ「現在の状況における株式投資」という部分でございます。この部分については、前回の表現からかなり改訂をいたしました。
 前回はデフレ下であっても株式投資を中断すべきであると断定することはできないと、また、いろいろな御意見があったということを書いていたわけでございますが、複数の委員の方から国民の皆さんが心配しているという中で、それにこたえる表現としてはいかがかと。もう少しニュアンスを出せないだろうかという御指摘がございました。そこで、今ごらんいただいております案では、最初の3行ほどでございますが「デフレが続く厳しい経済環境の下では、企業業績は概ね低迷し、株価の上昇も期待できないのではないかという考え方がある。現在、企業が厳しい経営環境にあることは事実である」という表現をまず述べまして、現状認識といいますか、そういうものをまず書き込んでございます。その後「しかし」というところからは前回も書いていた表現でございまして「物価の動きと株価の動きとは、必ずしも連動するものではなく、デフレ期であるから直ちに株式投資を中断すべきであると断定することはできない」、これは前回から入っていた表現でございます。
 また、前回はこの後に、株式の時価総額が低下し、企業が保有する資産の価値に近づいており、株価の調整は十分に進んだとの指摘があるということですとか、配当利回りが長期金利を上回る水準となっているということ、あるいは株主利益重視の経営に転換する企業が現れているという御意見もあったということで記入しておりましたが、先ほど申し上げましたような全体のニュアンスとしていかがかということもありまして、そういった辺りは削除をいたしております。
 また、なお書きの3行の部分ですが、ここの部分も「合理的な株式市場」と書いてございましたが、「合理的な」という言葉は1つ前のパラグラフと同様にカットしてございます。
 その次の「現在の状況における債券投資」という部分でございます。この部分につきましては、2行目の「検討した。」の後に「名目賃金上昇率がマイナスで推移している間は、債券投資のみでも実質運用利回りが確保できる可能性もあるが」という文章を追加いたしております。これも委員から賃金上昇率を上回る運用益をとればいいということであれば、今のように名目賃金上昇率がマイナスの場合には債券投資だけでもいいではないかという見方もあるので、そういうこともどこかに入れておいた方がいいのではないかという御指摘がありました。ここのパラグラフは、そうはいっても債券に全部変えてしまった場合には、その次のところですが、近い将来、賃金や物価の上昇が起こった場合には、運用利回りが年金給付の増大に追いつかないのではないかということを述べております。この部分に、このように挿入をいたしたものでございます。
 4ページの訂正部分は以上でございます。
 次に、5ページでございますが「移行ポートフォリオによる調整」という部分でございます。この部分については、なだらかに移行することが適当と考えられるという結論などは変更ございませんが、理由として1つは、基本ポートフォリオを速やかに達成すべきであるとともに、前回の案では、売却コストが発生するということも理由として掲げてございました。しかし、実際に売却コストが発生するかどうかというところはよく吟味する必要がございますので、この理由はやや適切ではないかもしれないということでカットいたしました。したがいまして、3行目からですが「これについては、基本ポートフォリオは、予定利回りを達成する上で最も相応しい資産構成割合を定めたものであるから、できるだけ速やかに達成すべきものであり、達成時期を先送りする理由が見出せないことから、適当でないと考えられる」という表現に改めてございます。
 5ページで変更がありましたのは、この部分だけでございます。
 次に、6ページでございます。5「今後の課題等」の1つ目のパラグラフ「以上の検討から」というところですが、なお書きの部分でございます。「安全性を最優先する立場から」という表現を加えてございます。委員から御指摘があって、このように加えました。
 それから「意見もあった」となっておりましたが、「意見があった」というふうにここの部分を直しております。
 それから、「最優先する立場から市場リスクの高い株式投資は」という表現で、「市場リスクの高い」という表現は前回入っておりませんでしたが、これも加えてございます。
 その次の「一方」で始まるパラグラフですが、4行目の部分でございます。「前述したような厳しい経済状況を踏まえ」の後に「より慎重な前提を置いた上で見直しを行う」という表現にしておりましたが、「厳しい経済状況を踏まえ」というのと「より慎重な前提を置いた上で」というのは、やや表現が重なっているのではないかという御指摘もありましたので、「より慎重な」という部分は削除いたして、こういう表現といたしております。
 それから、最後の7ページでございますが、「その際には」という最初の「○」でございます。「国債満期保有運用のあり方についても、検討すべきである」というのは、前回はその1つ上の「○」の末尾の部分に書いてございました。これも委員の方から、これは1つ「○」を別立てにして趣旨も述べた方がよいのではないかという御指摘がございましたので、1つ「○」を立てまして「債券投資をより適切なものにする観点から」という文言を加えて、このような表現といたしております。
 それから、その2つ下のコーポレート・ガバナンスの部分でございます。この部分についてもいろいろ御議論ございましたが、1つは、議決権行使に限らずもっと広いガバナンスもあるのではないかという御指摘もございました。それから「民間企業の経営に影響を与えないよう」というところはいかがなのだろうかという御指摘もございました。しかしながら、この部分はガバナンス全般が経営に影響を与えないということよりも、「国が」という部分に重点がございまして、国が民間企業の経営に影響を与えるということはいかがであろうかという観点から、この「留意しつつ」という文言が入っているということで、その部分については前回の表現をそのまま残す形で、このように整理して記述いたしております。
 それ以外の残りの部分は特に変更はございません。
 以上、前回7日に御議論いただいたときから変更を加えた部分を中心に御説明をさせていただきました。

○若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま説明していただきました株式を含む分散投資の是非に関する意見案に関しまして、皆さんの御意見、御質問等をいただきたいと思います。どうぞ十分に御審議をいただければと思います。十分に審議をして、今日ここでまとめたいと思っておりますので、御協力よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。御質問等ございませんか。

○内海委員
 私は、前回日本にいなくて出られなかったんですが、そのときメモで御意見を申し上げたように、基本的にはこういうことでおまとめいただくことについて、私は賛成です。過去15年ぐらいの間に起こったことを考えると、市場経済が全世界を制覇しているわけですけれども、市場経済には1つの癖があって、どこの国の経済も強いところと弱いところとあるのですが、その国に光が当たっているときには、その強いところしかマーケットは着目しない。ひところのアメリカがそうですし、1980年代後半の日本がそうでした。1980年代後半のアメリカ経済は二流になったと市場はみんな見ていました。ですから、今ある経済の状況で長期的な判断というのは下すべきではないという考え方を基本的に持っています。その意味で、1980年代の後半に不動産や株に投資しないのはばかではないかという論調が支配的であったわけですけれども、今は逆の状況になっているわけです。長期的な観点からこの案に盛られているような分散投資というものを基本として、公的年金を預かる立場からやっていくということは賛成です。
 基本的に、ポートフォリオを決めて、それでやっていくというのは逆張りの発想が基本にあるわけですね。ところが、日本人の投資家には一番逆張りの発想というのが欠けているわけで、短期的な状況だけで左右されてしまうということは適当ではない。基本的な分散投資の考え方を崩してしまうというのは私は誤りではないかと思います。
 それから、もう一つ、なぜ財政投融資を廃止してこういう形にしたのかということは、公的年金のお金を国がそのゆくえを決めるのではなくて、市場に出していこうという基本的な考え方があるわけですから、みんな国債に持っていったのではまた逆戻りをしてしまうわけで、その点も十分に考える必要がある。このペーパーは、いろいろ前回の御意見もまとめられた上で修正が加えられているわけで、基本的には私はこの案をサポートできると思っています。

○若杉分科会長
 どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。

○米澤委員
 私も、言い方がちょっと適切ではないかもしれませんが、結局これしかないのではないかということで賛成したいと思います。というのは、今、内海委員もちょっとおっしゃったように、我々が教科書で習った狭い意味での合理的とか効率的な株式市場とか債券市場という側面から見ると、どうも今は理解できない点がたくさんありますし、それは世界的に見てもそうではないかと思いますので、そこの点はちょっと習ったことと違う状況が起きているというふうに私は理解しています。
 それは、マーケットがおかしいんだと言っても仕方がないわけなんですが、ただいろいろそういうことがあり得るという状況で、では、最後にどういう投資が残るのかというと、教科書とは違った面ですが、やはり分散投資で長期的に持つ。幸いこの資金は長期的に持てる性格の資金ですので、それが結局、一番功を奏するのではないかと。どこかおかしいところは常におかしいということではないし、そこは修正されると思いますし、やはりどこかに集中しておかしいところが発生するわけでもないし、そういうことを考えてみると、やはり教科書とは違った意味で分散投資ということでしか、今、我々は知恵を持っていないのではないかと思っています。
 もう少し具体的に言いますと、今ちまたでは株式が危ないから全部債券で運用しましょうと、そう言うのは非常に簡単で楽かもしれませんが、債券に「バブル」という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、債券市場はそういうような状況を呈しており、これがかなり長期的に続くとは思えないし、寄り戻しもあると思われますので、国内に限ったとしても、こういうこともある。では、これに対処するのは何かといったときに、寄り戻しのときでもそう大きな被害を受けないように一定程度株式を持っておくということしかないのではないかということです。前回の「合理的」というところをとっていただいたのは私も賛成なんですが、結果としてはこれしかない、逆に、これ以上何かいい知恵があったらばお教えいただきたい。しかし、そのときのいい知恵というのは決して債券100%では私はないと思っています。
 以上です。

○若杉分科会長
 ありがとうございます。
 それでは、一通り皆さんから御意見を伺いたいと思います。では、小島委員、お願いします。

○小島委員
 最後に1つ質問と報告書に対する意見についてお話しします。
 まず、今回の報告書の中で6ページに私の意見が一部盛り込まれています。この結論として大方の委員の皆さんはこれしかない、基本ポートフォリオで間違いないんだという結論ですけれども、それについて私は異論があるということで、6ページの方に私の意見が反映されているように思います。これについては、何度も同じことの繰り返しになりますけれども、やはり今の状況の中で、本当に株式投資がいいのかどうかということは、どうもこれだけでは納得できないということがあります。では、今140兆円ないし150兆円ある積立金をどうするのかということがあります。基本的に私としては、公的年金制度は賦課方式に持っていくべきだと思いますので、今の150兆円自体をずっと持ち続けることにまず問題があると思っております。積立金自体はそんなに持たなくてもいいということになれば、株式での市場運用ということを考える必要もなくなると思います。そういう観点で考えて、今のまま株式運用を増やしていくということについては反対であるという立場で意見を述べてきたところです。その積立金の在り方、それから、それは公的年金の1階、2階の姿をどうするかということにも関わりますので、それは、当分科会というよりは、もう一つの年金部会の方でも議論をしたいと思います。今回の分科会報告についてはそういう意見を持っております。
 それと、この報告書にあります今後の平成16年の年金の財政再計算に伴って前提条件が見直しされるということで、それに伴って基本ポートフォリオの見直しもするということになっています。その基本ポートフォリオは長期分散投資ということになっておりますけれども、5年ごとの財政再計算に合わせて、基本ポートフォリオを見直しするということになりますと、10年、20年という長期運用と5年ごとに前提条件を見直しをするということの関係をどういうふうに理解すべきか。その関係を御説明いただければと思います。

○若杉分科会長
 それは、局長からお願いします。

○年金局長
 今のお話は、1つは、年金部会を中心に議論していただいております平成16年度の年金制度改正の方向がどうなるかということと非常にかかわってくる問題だと思います。例えば、年金の体系論とともに給付と負担の関係につきまして、12月に私どもがお示ししましたが、例えば、給付水準はこのまま維持して、保険料負担を相当高いところまで考えていくという案も1つ示しておりますが、同時に、保険料を固定して、固定した保険料の中で将来給付をなだらかに調整していく案も示しております。そのどちらを基本とするかによって変わってくると思いますが、仮に保険料固定方式と考えましたときには、どちらかといいますと、将来固定した保険料の総量で給付をなだらかに調整するということになりますので、基本的なやり方としては5年に1回の財政再計算を行いまして、そのたびに法律改正を行うという必要性が非常に少なくなってくるだろうと。そうしますと、ここで言います私どもの基準ケースというところで、例えば物価1%、実質賃金2%、それから、名目の運用収益率が3.25%ということでお示ししておりますが、その基準ケースみたいなものを考えながらどう考えていくかということになってくると思います。そうしますと、今、小島委員がおっしゃった、例えば5年ごとに試算する形でやっていますと、基本的にはそのときの財政計画が違ってまいりますので、そのことによって目標率も変わってくるという問題が生じると思いますが、今回はその制度体系の取り方によっては、むしろ基準ケースで想定している運用収益目標というものを設定していただき、それで5年ごとの財政再計算というのは、むしろそれをウォッチングしていただいて、経済指標が相当大きく変わるかどうかということを検証していただくということになってくるだろうと思います。そういうケースの場合には、勿論10年後、15年後の経済というものを完全に読み切ることはできないわけですけれども、そういうウォッチングをしながら運用目標とポートフォリオの関係を検討していくという形になってくるのだろうと思います。そこは、制度体系なり平成16年度の制度改正をどうとるかによって位置付けというのは変わってくるだろうと思います。

○若杉分科会長
 今、年金改革が進められようとしているわけで、それから先のことは今、局長が言われたとおりだと思いますが、最初に全額自主運用に当たって運用基本方針を決めたときには、5年ごとに見直すということは決めましたけれども、それは基本ポートフォリオを変えることを前提にということではなくて、むしろ変えなくてはいけないような大きな変化が起こっているかどうかを見るという意味だといます。基本ポートフォリオは、なるべく変えるべきではないというのが基本方針です。ですから、5年ごとの見直しというのは、5年ごとに変えるということではないということです。よろしいでしょうか。

○小島委員
 積立金自体をどのくらい持つかによって、それは当然変わってきますね。

○若杉分科会長
 そうですね。

○年金局長
 積立金の維持というのは、小島先生と私どもは大分考えが違うのであれですが、一言申し上げれば、賦課方式における積立金というのはいろいろな御議論がありますが、例えば、スウェーデンは実は支出の1年分しか積立金を持っておりません。スウェーデンで年金改革をいたしましたときに、何を目指しているかといいますと、日本と同様程度の支出の4年分ぐらいまでの年金積立金を持ちたいということです。それは多分、年金制度は長期的な財政制度でありますので、スウェーデンの場合にも積立金を将来の経済変動に対する予防策として持とうということが一つあると思います。
 それから、スウェーデンの場合には御案内のとおり保険料率を18.5%という上限で固定しておりますので、その中で積立金の運用収益をある程度見込むことによって、将来世代の保険料負担を下げようと。日本の場合にも積立金の原資というのは、まさにこれまで保険料を払っていただいた方々の集積でありますけれども、これは結局それまで保険料を払っていただいた方が使うというよりも、将来世代の負担がよく高くなりますので、将来世代にできるだけ残していただいて、そのことによって将来世代の負担の上昇をできるだけ低くするという機能は大事だろうと。そういう意味では、今の状況は収益が非常に厳しい状況にあるわけですけれども、ここを何とか中・長期的に見て安定した収益をとることによって、より将来世代の負担を軽減していくという役割を持っているのだと思います。
 外国の年金制度をウォッチングしている方からのお話で申し上げますと、例えば、欧米諸国は実は負担との関係でやむを得なく積立金を形成することができなくなって準備金という状態になっている。例えば、ドイツの状況で申し上げましても、保険料率20%という壁で非常に政治的な大問題になって、ほぼ準備金のような状態になっている。ドイツで何が起きるかといいますと、負担と給付の関係で1か月の準備金しか持っていませんので、年金給付という巨大なものに対して、保険料収入が少し少なくなりますと給付の欠損が生じる。しかし、ドイツはそれを社会的にどうやって解決しているかといいますと、例えば環境税を導入しまして、環境税を不足した年金財源に充てる、あるいは日本とはちょっと別な形でありますが、結局は国庫負担で充てていくという経済運営をやっています。それはそれで政治的な意思決定の下にされるわけですから、私達の目から見ますと、少し不安定な財政の要素が入っているのではないかということです。これは、小島委員と私どもの考え方は非常に違うということを前提にして、私どもの考え方を申し上げた方がいいだろうと思いまして説明させていただきました。

○若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、関山委員、何かありましたらお願いします。

○関山委員
 私は、最後の方で参加させていただいたので、前の方の議論はわからないんですけれども、先ほどから何人かの委員がおっしゃったように、やはり投資の世界でなかなか絶対というのはないわけで、その中で長期分散投資ということが、ある意味ではやはり確実な方法なのだろうと思うんです。ただし、今のこの時期というのは長期にものを考えるというのが大変難しい時期でございます。今、多分、年金資金運用基金の運用に係る累積損失というのは5兆円程度になっていると思うんですけれども、これは仮に、株式運用が日経平均と連動すると前提した場合、この5兆円が消えるというのは国内株式が1万6,000円ぐらいの水準、我々の計算だとそんな数字になるんですけれども、そうすると、今年、来年ぐらいで1万6,000円にいくかと言われると、こういう状況の中ではなかなか難しいなと言う人の方が多分多いのだろうと思うんですが、しかし、5年とか10年といったときに、5年、10年ならばそれはクリアするよと言う人は多分多数派になってくると思います。ですから、そういう意味で言うと、5兆円という数字は大変大きい数字なんですけれども、年金というものが考えているタームの中で言えば、そう深刻に考えることではないのかもしれないというような議論もできるんだと思うんです。そういう意味で、こういう状況の中で長期に考えろというのは大変難しいんですが、永遠に今のような状況が続くとは私は思っていませんし、日本経済がどこか立ち直ってくるのでしょうから、それは我々が考えている年金の運用タームの中で十分起こり得る話だと考えていますので、私は今回のようなまとめ方で、勿論きちんと国民に説明していくということは必要ですけれども、いいのではないかと思っております。
 以上です。

○若杉分科会長
 ありがとうございました。
 高梨委員、お願いします。

○高梨委員
 前から年金の積立金の運用については、分散投資が必要と主張してまいりました。今回のペーパーはそうなっており、また、基本ポートフォリオについて今は変える必要がないという主張をさせていただいておりますが、基本的にそうなっております。勿論、平成16年の財政再計算に伴って見直し作業をするという、そのこと自体は必要なことと思っております。
 それから、いずれまた、これが決まった後議論されるのでしょうが、移行ポートフォリオの問題は「なだらかに」ということで記述されております。私としては、言わば従来からやってきた直線的な形でやっていくのがいいと思っておりますが、この移行ポートフォリオを今変えるというような発信はしていないということは、私は適切だと思っております。
 それから、もう一つ、前回も発言をした部分の一番最後のページですが、コーポレート・ガバナンスの問題について記述されておりまして、国が民間企業の経営に影響を与えないよう留意しつつということは、我々産業界としては非常に大事なことだと思っております。ここで先ほど事務局も説明しておりましたが、「国が」ということが大切なのです。国という行政機関あるいは国に準ずるところになるのだと思いますが、現状について申し上げれば、年金資金運用基金が民間企業の経営に影響を与えるということは、ここで言う民間企業というのは、マクロのことではなくて、個別の民間企業の経営に影響を与えるということですが、それは産業界としては到底受け入れられないことであります。しかし、ここではそうはなっていないわけで、そういうことが起こらないように留意しながら検討しましょうとなっておりますので、こういう表現であれば私としてはいいのかなと思っています。
 この議決権行使の問題、ここでは直接「議決権行使」という言い方はしておりませんけれども、この分科会に先立ついろいろな検討会等がございました。年金自主運用検討会、年金積立金の運用の基本方針に関する研究会あるいは年金積立金の運用の基本方針に関する検討会の報告書の中でも示されている考え方でありますので、そういう方向で留意しながら検討することが大事だと思っております。
 以上でございます。

○若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、吉原委員、お願いします。

○吉原委員
 私は前回いろいろ申し上げましたので、その点はかなりの点で修正されておりますので理解できるかなと思っています。
 全体としていろいろお話が出ましたけれども、資金の規模とかあるいは資金の性格からして、私はこういった状況の中で右往左往してはいけないと。やはり長期的な分散投資という運用の王道といいますか、正道という道を外してはいけないと思うんです。ですから、そういうスタンスというものをこういった状況の中でもしっかり持っていく必要があると思うんですが、一方で、前回もちょっと申しましたけれども、予想以上の大きなマイナス運用利回り、それから、損失という言葉がいいかどうかわかりませんが、一般には大きな損失、穴を開けたということが言われているわけですし、それが年金財政にいろいろな意味で影響を与えると。それから同時に、さっき小島委員から出ましたように、積立金を持つ必要がないとか、あるいはもうあんなに損をあけるぐらいならほかのことに使ってしまった方がいいではないかとか、場合によっては年金以外のことに使ったらどうだという意見すら一部に出ているわけですから、小島委員には失礼かもしれませんけれども、そういった意見を勢いづかせるようなことになってはいけないと思うんです。ですから、やはりこれからも今までどおりの運用でいいんだというそれだけの意識ではなしに、前回も結果責任はないんだというお話がございましたけれども、やはり結果がよくないことは事実なので、その結果について国民がいろいろな面で不安を持っているし、いろいろな議論を呼び起こしているわけですから、結果については法律的な責任はないかもしれませんが、やはりそういった責任感というものを運用に当たる人には持ってもらいたい。同時に、それは基金だけではなしに、運用を委託している受託機関にもそういう意識を是非持ってもらう、余り持っていないようなところには運用させないというぐらいの気持ちで、関係者全体がそういう意識を持ってこれから運用に当たってもらいたいということを希望的な、感想的な意見で申し訳ありません。

○若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 追加して内海委員、米澤委員、何か御意見ありますか。

○米澤委員
 それでは簡単に。今、小島委員の方から積立金の在り方に関して、やはり幅広いところから再検討する必要があると言ったのは、私は多少違った点で、積立金の長期的なあるべき姿というのは、年金部会も何かバックデータとしてやはり示していく必要があるのではないだろうか、積立金をこのように使っていって、人口のアンバランスが調整されたときには、後は賦課方式の方にシフトしてこうなりますよと。人口がどこで止まるかわからないということで、なかなか描きにくいのでしょうけれども、私自身はそこでの過渡期の調整の意義として理解しているわけですので、仮にどこか調整の終わったところでどういうふうになるのか、そうであるとすれば、そこのところで限りなくゼロに持っていく、ないしは先ほどちょっとお話ししたときに、それでもやはり勿論リスクがあるんだから、一定のリザーブは持っておく必要があるということはよくわかります。要は言いたいのは、積み増すことが目的ではなくて、本当の目的のために積立金というのは使われていくべきであるので、そこのところは少しわかりやすい形で我々に見せていただければと思っています。勿論、どんな状況であれ預かったお金はやはり高収益で運用しなければいけない、これはどんな目的であれそれは必要なわけですが、その使われ方みたいなものもやはり重要な点ではないかと思っています。
 それから、もう一点は、本来の目的からそれるかもしれませんが、もし仮に今この時点で公的年金は株式運用を一切やらないとした場合には、いろいろな面で日本経済からの年金受給者の非常にマイナスのショックは大きいと思いますので、気がついてみたらそんなにフリーハンド、自由ではないという面が大きくなっていますので、そういうもろもろのマクロ的な効果も考えながら運用していくということが必要ではないかと思いますし、そういう下でこの報告書が書かれたというのは、それなりの意義があると思っています。
 以上です。

○若杉分科会長
 ありがとうございます。
 それでは、皆さんから御賛同の意見をいただきましたので、この株式を含む分散投資の是非に関する意見については、この「案」をとりまして最終的に当分科会の意見書として確定したいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○若杉分科会長
 どうもありがとうございます。
 今日はそういうことで意見がまとまりましたけれども、私の感想とお願いを述べさせていただきます。2001年4月から自主運用が始まったわけですが、それに先立って運用の基本方針を決めたわけですが、それを決めるに当たってはかなり長い期間、3年ぐらいでしょうか、高梨委員が言われましたように幾つかの研究会や検討会が組織され、そこで慎重に議論がなされました。そのエッセンスは、長期的観点から基本ポートフォリオを決めて、それを実現し維持していくということです。もちろん、あくまでも受給者の観点からの運用ということが基本スタンスです。これらの基本方針に基づいて実際に基金に運用していただいてきたわけです。全額自主運用が始まってからまだ2年足らずですけれども、この間に、株式市場対策として、基本ポートフォリオを離れて年金はもっと株を買うべきであるとかETFを買うべきというような要請がありました。逆に、最近は、株式市場のパフォーマンスが期待できないときには株式を買うべきではないということで国会でも議論がなされました。さらに日経平均が8,000円割れになると今度は逆に年金で株を買えという意見も出たりしました。年金局にはそういう外からの声を断固とはねつけていただいて、運用の基本方針に沿って運用していただくということで頑張っていただいてきました。そこで局長以下年金局の皆さんが頑張ってくださることができたのは、我々がきちんとした基本方針を決めて、あくまでも受給者の立場から基本ポートフォリオの堅持という方針を明確に定めたからだろうと信じております。今回あらためて、年金積立金のあり方について根本から検討し直しまして、現在の基本方針と同一の結果になりました。結局、全額自主運用が始まる前に決めた分散投資の原則と、それに基づいた基本ポートフォリオを堅持するべきだという結論になりました。個人的にはまったく妥当な結論であると思っております。これからも年金局には、局長以下、基本ポートフォリオを忠実に実現するということで、周りのいろいろな雑音に惑わされずに頑張っていただきたいというのが分科会長としての私のお願いでございます。
 それでは、今この意見書をまとめていただきましたので、この意見書は本日付で社会保障審議会年金資金運用分科会から厚生労働大臣に提出したいと思います。どうもありがとうございました。
 予定しておりました時間よりも大分早いですけれども、無事審議が済みましたので、今日はこれまでにしたいと思いますが、局長何かございますか。

○年金局長
 では、私の方から一言御礼を申し上げたいと思います。
 昨年の秋から、特に今回の意見書の取りまとめにつきまして、委員の皆様方には非常にお忙しい中を分科会に御出席いただき、しかも、率直な御議論をしていただきました。それから、今日はここにお見えになっておられませんけれども、外部からもいろいろな分野の方から御意見を開陳していただきまして、こういう形で取りまとめていただきましたことを御礼申し上げたいと思います。
 それから、一番最後に今後の課題という形でございますが、先ほどから、小島委員の御質問にもございましたように、平成16年の財政再計算に向けまして、公的年金制度の本体の検討と併せて運用の問題というのは非常に大きな問題でございますので、引き続き御審議を賜ることになると思います。この点につきましては、また分科会長あるいは米澤先生とよく御相談させていただきながら、スケジュールを設定してお願い申し上げたいと思います。できますれば、去年の秋のように非常にお忙しい中、余り無理をお願いしないで、適切な頻度で御議論をいただいて、秋に向けて御検討をお願いしたいと思っております。
 それから、先ほど若杉先生からの、端的に言いますといわゆる世の中で言われていますPKOの話がございますが、私どもは常にどこの場でも申し上げておりますが、かつてPKOをしたことはございませんし、今後もPKOをする気持ちは一切ございません。このことは、年金の資金運用の一番基本に大変なダメージを与えますし、まさに被保険者あるいは事業主の方々の信頼を失うということになりますので、このことだけは私どものこれまでの方針も勿論そうでございますし、今後の方針も全く変わりはないということを最後に申し上げまして、御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

○若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 実は、年度内に、来年度の運用基本方針について検討しなければいけないわけですが、運用のあり方についての議論が長引きましたので、まだ諮問を受けておりません。この件に関して、事務局から御説明いただけますか。

○運用指導課長
 今、分科会長からございましたように、年度内にもう一度分科会の開催をお願いしたいと思っておりますが、日程についてはまた調整した上で御連絡させていただきます。

○若杉分科会長
 それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


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