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「健康食品に関わる制度のあり方に関する検討会ヒアリング申請書」

1.団体の名称  「健康と食品懇話会」

2.代表者氏名  山本 弘文(サントリー株式会社)

3.団体の概要

(1)目的
 本会は、「健康食品と機能性食品等の品質の向上、安全性の確保および健康食品、機能性食品並びに「健康と食」に関する適正な情報の交換および会員相互の親睦を通じ、健康食品と機能性食品等の普及の促進を図ることにより、国民の健康の保持、増進に寄与するとともに業界の健全な発展に資すること」を目的として、昭和60年に発足致しました。

(2)組織構成
 2003年5月現在、大手企業を中心とした食品メーカー35社が参加しております。会議体としては、全会員企業参加による「総会」、および「理事会」、「ワーキンググループ」を中心に活動しております。

(3)活動の内容
1) 理事会
理事会社(2003年度14社)により、原則として月に1回、定例で開催し、行政、業界の動き、外部からの要請への対応等情報共有、ワーキンググループ・セミナー開催・機関誌編集内容等会の活動報告及び意思決定を行っております。
2) 関係行政当局との情報交換
厚生労働省、農林水産省の関係部門を定期的に訪問し、情報や意見の交換を行っております。
3) 健康食品業界との連携
健康食品関係の業界団体の情報交換会に参加し、連携を図っております。また、日本健康栄養食品協会の専門部会に、「健康と食品懇話会」から委員として参加しております。
4) ワーキンググループ活動
時々のテーマに合わせたWGを設置し、調査活動や行政への意見書提出等を行っております。昨年は「表示WG」と「特保WG」の2グループで活動を行いました。
5) セミナーの開催
健康や栄養関係のタイムリーなテーマを選定し、外部講師によるセミナーを企画、公開セミナーも実施しております。
6) 機関誌の発行
会発足以来、機関紙「けんしょくこん」を1回/年で発行しております。

4.健康食品に係わる制度のあり方に関する意見内容

(1) 国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割をどう位置づけるか。「医薬品−現行制度に基づく保健機能食品−いわゆる健康食品−一般食品」体系のあり方

 国民の健康を守るのは、一義的には適正な食生活が基本だと思います。ただし、高齢化の加速度的な進行・食生活の乱れ等を考慮すると通常の食生活における栄養摂取から期待することが困難な一部栄養素や有効成分の機能を活用することにより国民の健康の維持・増進を図ることは有益なことと考えます。その意味で保健機能食品を中心とした「健康食品」は日頃の食生活で不足する成分を補うことにより、国民の「健康の維持・増進」を支援する役割を担っており、「健康食品」=「信頼できる食品」との立場を確固たるものにすべきです。
 従って「医薬品−現行制度に基づく保健機能食品−いわゆる健康食品−一般食品」の体系については、明確な根拠に基づきヘルスクレームを行う「現行の保健機能食品制度」を支持し、保健機能食品に含まれない「いわゆる健康食品」は一般食品の範疇に枠を設け落とし込むことが妥当だと考えます。また同時に、保健機能食品制度をより食品に適した制度にすることにより、多くの国民が健康に過ごせるよう、正しい情報提供を図るべきだと考えます。
 それらを推し進める上で、何点かの問題点があると考えます。
 すなわち、特定保健用食品の申請においては、明確な基準が示されないまま、より医薬品的な審査が行われる傾向がみられ、特保を申請する企業には多大なる負担が生じています。また、このような状況においては、大手企業も含めて特定保健用食品の開発を断念する企業が増えており、中小企業に至ってはほとんど手が出せない領域となりつつあります。より多くの企業が「機能を明確に表現している『保健機能食品』」を申請できるような制度にしていくことが必要だと考えます。
 安全性が基本となることは大前提となりますが、食品の効果は非常に緩慢な効果であるため、有意差を求められるのは厳しい状況にあり、また、臨床試験には5千万、1億円以上の負担がかかるので、「対象者の変更」、「飲用期間の延長」、「試験方法」等の度々の変更が無いよう基準を明確にして頂く必要があります。
 また、かつては健常者では変化させないのが良いとされていたのが、現在、対象者を健常者とし、そこでの有意差が求められますが、医薬品でも困難な健常者での有意差を必要とされるのは、安全性の意味からも理解ができません。特定保健用食品を摂取するのは「健常者」という区分ではなく、「境界域を含めた人」が摂取すべきものであり、完全な病者以外をターゲットにすべきである(一部には病者であっても良くなる分には構わないという意見もあります)と考えます。このように国民の健康については、医薬品、食品に限らず、体に良いものを利用することが大事であると考えます。

(2) 「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているか。「健康食品」の安全性・有用性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。

 保健機能食品を中心とした「健康食品」はすでに1兆円を越える市場もあり、国民の健康づくりに有効に機能していると考えます。そして、更に有効に機能させるには、選択肢となるべき食品の種類が多いこと、国民に制度が良く知られ利用されていることが前提となります。最近の調査によれば、保健機能食品の制度はまだ認知が十分ではない模様です。今後、長期的視点で多くの機会を通じて消費者の認知を上げていく必要があります。
 また、保健機能食品のヘルスクレームは必ずしもわかりやすい表現とは言い難く、実際の購入者である一般の消費者の方々にとって、よりわかりやすい表現が必要であると考えております。そのためには、CODEXでも検討されている疾病のリスクリダクション表示を含めた臓器名、疾病名を明示しているヘルスクレームを認めて頂きたいと考えます。同時に、特定保健用食品等の現在使用している名称の変更については、消費者の更なる混乱をきたすとともに、新たな名称の浸透に時間と費用がかかるので、できるだけ変更しないようお願いします。
 一方、「痩身効果」がある等表示上で明らかに薬事法に違反し、なおかつ、食品に「医薬品成分」を含有させる等の悪質な「健康食品」の業者については、行政と業界団体が協力して業者名を積極的に公開する等、厳しく取り締まることが考えられます。ただし、安全性確保は広く一般食品にも必須の事項であり、特定の素材等に安全性に問題があった場合以外は、健康食品についてのみ特別な枠を設ける必要はなく、また設けた場合には不整合が生じる可能性があると考えます。

(3) (1)及び(2)を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度はどうあるべきか。
○行政の役割
 表示制度の面では「現行制度の枠組みの中で食品の制度として適切な方向へ改正」することにより、消費者に理解し易い「ヘルスクレームの明確な商品開発を促進すること」「世界的な視野にたち世界水準であるCODEXに則した制度とすること」を望みます。また「消費者にとってわかりやすい制度であること」も必要であり、さらに「消費者に対して幅広い施策により制度の啓発を行うこと」も併せて国民の健康づくりに寄与する制度にしていくことが可能となります。
 また、消費者を悪質な「健康食品」から守るためにも、正しい情報提供、積極的な啓蒙や教育を行うことが必要です。そして、消費者の理解の充実を図るため、保健機能食品制度に規定される特定保健用食品、栄養機能食品の表示については、CODEXでも検討されている疾病のリスクリダクション表示を含めた臓器名、疾病名を明示しているヘルスクレームを認め、一方、医薬品については、しかるべき場所で区別して販売する等、消費者の商品カテゴリー認識の混乱が起こらない対策を望みます。世界的にも評価されている医療費削減の切り札として生まれた保健機能食品制度(特定保健用食品)の更なる充実を考えて頂きたいと思います。

○関係業界の役割
 消費者の多様な要求に応えるための選択肢として「確かな根拠に基づき、明確に健康増進の機能をうたうことが可能な製品開発を行っていくこと」とともに、「安全性や有効性の確保についての自主管理を強化すること」が必要だと考えます。
 また、「いわゆる健康食品」については、保健機能食品制度に規定される特定保健用食品、栄養機能食品、もしくは、完全な一般食品等に振り分けを行い、厳しい管理責任を企業もしくは業界全体としても果たしていき、「いわゆる健康食品」が作り出した消費者の不信感情に対し、信頼回復をはかるよう努力するべきと考えます。

○消費者の役割
 健康日本21にあるように、「日常の食生活において、規則正しくまたバランスの良い食事を適正な摂取量で摂ることによって必要な栄養成分を補給すること」を第一に考えなければなりません。しかしながら、全ての人が理想的な、自分に適した食事を摂れる環境にあるとは限りません。その場合には、自分や家族に適した補助的な食品を選ぶことのできる目を養うことが必要となります。
 また、疾病に罹患している場合は、安易に健康食品に頼らず、適切な医療を受ける習慣を身に付けることが、自らの健康を守る基本であることを十分認識する必要があります。
以上


健康食品のカテゴリー(従来の制度と健食懇が考える制度の比較)

健康を維持増進するには適正な食生活が基本ですが、高齢化の加速度的な進行や食生活の乱れ等を考慮すると、消費者に対して健康情報を適切に伝達するとともに、保健機能食品を柱とした健康食品を有効に活用することが必要だと考えます。保健機能食品を柱とした健康食品の信頼性を高め、国民の健康増進に資すべく、現行保健機能制度を活かす形での修正を提案致します。

図

○表示制度面から
特定保健用食品:医薬品に近い規制と考えられる部分をより食品向けに必要十分な基準を設け、かつその基準を明確化する。また、生活習慣病の増加に対応すべく消費者が理解しやすいようにCODEXで検討されている疾病のリスクリダクション表示の導入を検討すること。
栄養機能食品:「栄養素機能表示」が可能な成分を拡大すること(ビタミン・ミネラル類以外に、信頼性のある証拠により有効性が確認された成分)
※根拠となるエビデンスの必要レベル (国内外で十分に検討されており、教科書的なレベル等)については、検討中。
健康成分表示(栄養成分、原材料:広い意味)および製造基準による配合量等自主管理(ヘルスクレームなし:一般食品カテゴリー)。

○消費者の理解を深めるため
(1) 消費者の混乱を防ぐため、保健機能食品を中心とした健康食品のカテゴリーを明確にし、カテゴリーはできるだけ増やさない。
(2) 医薬品についてはしかるべき場所で区別して販売させるなどし、保健機能食品の表示を疾病名、臓器名を伴う分かり易い表記を認める等、消費者に役立つ情報提供を進めることで誤認を減らし、消費者が自ら選択できる環境を整備する。
(3) 企業、専門家(医師、薬剤師、管理栄養士等)、消費者団体等に対する本制度の啓発を行う。 ※具体策については検討中。
(4) (2)の施策とともに、消費者の健康に関与する教育の充実を図り、消費者が自分自身で健康に良いものを選択できる能力を養う。


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