資料4 |
1 | 薬剤による疾病
薬剤取り扱いが原因と考えられる職業関連性疾患では、喘息または皮膚症状が大半を占めている。薬剤が生体に及ぼす影響としては、1) その物質がもつ特異的な毒性・薬理作用によるもの、2)非特異的な刺激症状、3)アレルゲンとしての作用、の3つが考えられる。 参照文献
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2 | タリウム又はその化合物による疾病
人に対する健康影響(除症例報告)について、Brockhausら(1981)は、ドイツのセメント工場付近に居住し、その地域で収穫した果物・野菜を摂取している住民について調査した結果、睡眠障害、疲労感、不安状態、頭痛その他の精神症状、神経・筋症状と生物学的モニタリング値に正の相関があったが、脱毛に関しては負の相関であった。 Ludolphら(1986)は、セメント工場にて平均22.9年間のタリウムばく露を受けた作業者36名の健康影響を調査した。著者らは中枢神経系および末梢神経系の症状が多くみられたと述べているが、この調査では対照群が設定されていない。 参照文献
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3 | オスミウム又はその化合物による疾病
オスミウムの毒性情報、職業性の疾病に関連した論文は、論文のデータベース上では検索出来なかった。生産量も少なく、産業的使用頻度やばく露影響についてあまり研究されていないのが現状である。 参照文献
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4 | 銅又はその化合物による疾病
人に対する影響(症例報告を除く)について、Gorellら(1999)は144名のパーキンソン病患者と464名の健常者を対照とした症例対照研究で、20年以上のばく露では、銅単独ばく露のオッヅ比が2.49、マンガンばく露10.6、鉛・銅の複合ばく露5.2、鉛・鉄の複合ばく露2.8、銅・鉄ばく露の複合ばく露3.7であった。ばく露量の情報はない。[参照文献番号11] 参照文献
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5 | スズ又はその化合物による疾病(金属熱を除く)
スズおよびその化合物に起因する金属熱以外の職業性疾病として,無機スズ肺があるが、これは組織反応を生じない良性のじん肺である。 参照文献
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6 | 亜鉛又はその化合物による疾病(金属熱を除く)
亜鉛およびその化合物に起因する金属熱以外の職業性疾病として,亜鉛ヒューム吸入による気管支喘息(金属熱症状との併発)があげられる。また,その他の呼吸器に対する影響として,再発性の過敏性肺臓炎や軽度の可逆性肺機能障害も報告されている。障害の程度は,塩化亜鉛の方が,酸化亜鉛よりも一般に重い。 参照文献
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7 | オゾンによる疾病
人ボランティアに対する健康影響について、様々な時間、様々な濃度で実施された健常ボランティアに対する単回ばく露実験における呼吸機能影響の最小濃度は、安静時には0.5 ppm2時間、運動負荷時には0.1 ppm2時間が報告されている最小濃度であった[Folinsbeeら 1978、Horvathら 1979、Goldsmithら 1969、Kagawa 1984、Avolら 1984、Niedingら 1979]。 参照文献
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8 | ベンゾキノンによる疾病
人に対する影響について、反復または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を起こすことがある。 皮膚、眼に影響を与え、変色、炎症、角膜上皮損傷を生じることがある。0.1 ppmレベルのばく露では全身影響は観察されず、眼に対する軽度で一過性の刺激が0.1 ppm以上では観察されることから、ACGIH(American Conference of Government Industrial Hygienists,Inc.)は職業ばく露限界値(TLV-TWA)として0.1 ppmを勧告している。 参照文献
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9 | シデローシス(鉄沈着症)
世界の金属生産のうちの90%以上が鉄鋼か鉄化合物である。ゆえに鉄化合物の職業性ばく露は広範囲にわたっている。鉄鉱山や鉄鋼関連作業では、鉄の粉砕作業や、溶接作業、鉄含有物の切断・変形作業などで鉄粉じんのばく露を受ける。しかし、これら鉄ばく露作業の大部分では、同時に他の多くの物質にもばく露されており、鉄吸入だけの健康影響に着目した研究はそう多くない。 参照文献
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10 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)とは、慢性気管支炎、肺気腫または両者の併発により惹起される閉塞性換気障害を特徴とする疾患である。通常、COPDによる閉塞性換気障害はゆっくりと進行し、治療に反応せず、不可逆的であることが特徴である。
別添 表(P.47)に5年毎の論文の傾向として示す。病理学的に肺気腫を主体とするCOPDの概念が定着したのは1960年代である。「職業性」と「COPD」の検索に該当する論文も1965~1970年、1971~1975年は「じん肺」、「炭坑夫肺」、「金鉱夫肺」に関する研究・報告が主体となる。 今回の文献レビューで注目された、COPDの原因となりうる職業やばく露物質は、古典的に知られているカドミウム、塩化ビニールや穀物粉じん以外では、ポップコーン袋詰め作業、ファーストフード店のコック、教師のチョーク粉、ドライクリーニング、受動喫煙、シリコンカーバイド等であった。しかしながら、いずれも未だ因果関係について確立されたものとはいえない。特に、ポップコーン、コック、チョークについては、該当作業者の数に比して報告例が少なく、因果関係については疑問が残る。 参照文献
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11 | 木材の塵埃によるがん
IARCモノグラフシリーズ62「Wood Dust and Formaldehyde」(1995年刊行)によれば、鼻腔および副鼻腔の腺癌は、木材粉じん、特に堅木粉じんばく露と因果関係があること、鼻腔および副鼻腔の扁平上皮癌は、腺癌に比べるとばく露によるリスク上昇は少なく、因果関係は支持されないこと、鼻咽頭と木材粉じんへの職業ばく露との関連性が示唆されたことが記載されている。なお、咽頭口部、咽頭喉頭部、肺、リンパおよび造血系、胃、大腸または直腸のがんについては、木材粉じんの職業ばく露との因果関係は証明されなかったとされている。 参照文献
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【文献レビュー担当者】
産業医科大学 学長 大久保利晃先生
(1) | 薬剤による疾病 |
(2) | スズ又はその化合物による疾病(金属熱を除く) |
(3) | 亜鉛又はその化合物による疾病(金属熱を除く) |
(4) | シデローシス(鉄沈着症) |
(5) | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) |
(6) | 木材の塵埃によるがん |
慶應義塾大学医学部衛生学教室 教授 大前 和幸先生
(1) | タリウム又はその化合物による疾病 |
(2) | オスミウム又はその化合物による疾病 |
(3) | 銅又はその化合物による疾病 |
(4) | オゾンによる疾病 |
(5) | ベンゾキノンによる疾病 |
照会先 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課 職業病認定対策室職業病認定業務第二係 (宇野・井野場)
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