03/05/30 第19回社会保障審議会年金部会議事録              第19回社会保障審議会年金部会                               議事録                                  平成15年5月30日                        第19回 社会保障審議会 年金部会 議事録          日時  :平成15年5月30日(金)  10:00〜12:25 場所  :富国生命ビル28階会議室 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員、      翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、堀委員、山口委員、山崎委員、      渡辺委員 ○高橋総務課長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第19回社会保障審議会年金部会を開 会いたします。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第 のほか、次のとおりでございます。資料1「委員要求資料」でございます。これは前回 までの宿題に対するお答えの資料でございます。資料2「スライド制の在り方について 」、資料3−1「給付と負担の関係が分かりやすい年金制度について(ポイント制及び 年金個人情報の通知について)」、資料3−2は、その参考資料でございます。それか ら、資料4−1「次世代育成支援策について(給付と負担関係)」、資料4−2は、そ の関係の参考資料でございます。それから資料5−1「給付と負担の在り方に関する意 見の整理(案)」、資料5−2は、その参考資料でございます。それから資料6「年金 改革に関する有識者調査(結果の概要)」ですが、3月8日の話で、有識者調査の結果 を、現在取りまとめ集計してございますが、その概要を取り急ぎまとめまして本日提出 いたしております。それから資料7は、前回概要を提出した、内閣府の広報室が行った 「公的年金制度に関する世論調査」の全体版を提出いたしております。  それから参考資料にまいりまして、参考資料1「第16回社会保障審議会年金部会議事 録」でございます。それから参考資料2−1、2−2、2−3が一昨日の経済財政諮問 会議の関係の資料でございます。参考資料2−1は民間議員提出資料はでございます。 参考資料2−2は、坂口大臣から提出いたしております「社会保障制度改革の在り方を めぐる問題点について」ですが、「社会保障制度改革のあり方」という民間議員提出資 料に対する反論を載せています。それから参考資料2−3がその参考資料であります。  この参考資料2の関係につきましては、今日の議題でお願いする予定はございません けれども、簡単に御紹介を申し上げます。一昨日の夕刻、経済財政諮問会議がございま した。テーマは多岐にわたりまして、規制緩和や国と地方の関係などいろいろございま したが、年金、社会保障につきましても議題となっております。ただ、時間切れで議論 がなく、資料の提出だけで最後に坂口大臣の方からコメントを申し上げておりますけれ ども、先方と私どもとの間で、将来の潜在的国民負担率の問題につきまして、かなり大 きい議論になっています。  それから年金の関係につきましては、内容を細かくコメントいたしませんけれども、 民間議員の方から今の段階でかなり確定的な数値目標などが提案されておりますが、経 済財政諮問会議だけで先行して、この時期に決定的な方向を出すには議論が足りないで はないかということを私どもから申し上げているところでございます。なお、6月の下 旬には、経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針、いわゆる「骨太方針 」の第3弾が取りまとめられる見込みでございます。  それから、現在委員の出欠の状況でございますが、本日は岡本委員、矢野委員、若杉 委員が御欠席とのことでございます。御出席いただいております委員の皆様方の数が総 委員数の3分の1を超えておりますので、会議は成立をいたしております。それから年 金局長は、現在、国会の方で参考人として答弁のため呼ばれておりまして、遅れてこち らに参るかと思いますのでご了承願いたいと思います。  では、以後の進行については、部会長よろしくお願い申し上げます。 ○宮島部会長  本日も御出席いただきましてありがとうございました。前回と前々回は、短時間労働 者と第3号被保険者に関する構造的な問題について2度ほど議論をいたしましたけれど も、本日はまた改めて給付と負担の問題に立ち返りまして、議論を継続したいと考えて おります。  本日の大体の審議のスケジュールでございますが、まず前回、何人かの委員から改め て資料の提出依頼がございましたので、それについて事務局の方で用意されたものにつ いて説明を受けた後、給付と負担の問題でまだ残されているマクロ経済スライドに関す る議論と、わかりやすい年金制度、これはポイント制でございますが、これについての 議論、それから比較的大きなテーマとしては、次世代の育成支援策をどう考えるかとい う議論につきまして一括して、まず事務局から説明を受けて、意見交換をした後、概ね1 1時半ぐらいをめどに一旦休憩をとりたいと考えております。その後、前回までの議論を 踏まえまして、今後、更に議論を総括的に進めていく上で、給付と負担の在り方に関す る総括的な議論を中間的に整理したいと思っています。  その中で、先ほど総務課長の方から説明のありました、有識者調査や、世論調査等の 結果もその中に取り込み、中間的な整理を一回行いたいと考えております。大体そのよ うなスケジュールで本日は議事を進行いたしますので、よろしく御協力のほどお願い申 し上げます。  それでは、まず前半の部分で、給付と負担の在り方に関して委員から要望のありまし た資料と、先ほど申しましたスライド制、ポイント制、次世代育成支援の3点につきま して、一括して事務局から説明いただきます。やや話が複雑な面がございますが、余り 説明が長くなっても困りますので、事務局も大変かもしれませんが、簡潔にして要点を 得た説明をしていただきたいというように考えています。では、よろしくお願いいたし ます。 ○木倉年金課長  資料を一括して御説明申し上げます。始めに資料1でございます。各委員からお話が ありました4点について資料を出させていただいております。  1ページからでございます。これは短時間労働者に適用を拡大した場合の対象者数の 推計、特にその前提となっております非適用事業種、あるいは個人経営の従業員5人未 満のような非適用事業所の前提をどのように置いているかがわかる資料、又、新たに適 用される方のうち、もともと3号被保険者だった方、あるいは1号被保険者だった方の 数をどの程度と見ておるのかについての資料でございます。これは「雇用と年金研究会 」の報告書の中にも、推計方法の概要は載せておりましたが、バックデータも含めても う一度見ていただいているものでございます。  1ページに書いておりますように、ここでは、3年ごとに実施しております公的年金 加入状況等調査の、平成10年のものを使用しております。13年調査は最終的なものをま とめている途中でございますので、13年に向けては雇用者の指数の伸びで推計して現状 を見ていただいております。  それから、前回見ていただいたような、適用拡大の基準としての週の労働時間が20時 間以上、あるいは年収65万円以上という前提につきましては、13年のパートタイム労働 者総合実態調査を使って出しております。  一番下に書いておりますように、前提となる数字については、約10万の世帯につい て、雇用者とパートと分けて調査をしている公的年金加入状況等調査を全体の雇用者四 千何百万人という数字に拡大して推計を行っているものでございます。雇用者は、正社 員等で一般に厚生年金が適用されている方、パートは、週の労働時間が通常の労働者の 4分の3未満の方、厚生年金については適用がない方ということで、調査をさせていた だいております。  そうしますと、こちらにありますような、個人経営で従業員が5人未満の数の状況、 5人以上の状況、それから法人の状況についての数値が出て参ります。法人においては 雇用者は82%、パートでは61.8%程度いらっしゃるという状況にあるわけでございます 。  その次のページで、今度は非適用・任意適用となっております事業種に属されている 方はどの程度いらっしゃるかということでございますけれども、「農林水産業」、「飲 食店」、「旅館・理美容・娯楽等」、「その他サービス業」というような分野が適用事 業種の分類に入ろうかと思いますけれども、この中には雇用者が17.4%、パートが39.9 %いらっしゃると見ております。ただし、この注にありますように、法人でありますと 、全部適用をしております。個人の場合、これらの業種は任意の適用になっています。 それを前提として見ていただければと思います。  それから、その次の数字は、週の労働時間が20時間以上、あるいは年収が65万以上あ る方を見るための数字でございます。労働時間数で見ますと、現在厚生年金が適用され ていない週の労働時間が30時間未満の方のうち、20時間以上の方に適用拡大した場合 には、全体の62・3%程度が適用の対象になろうかと思います。  それから、左側、前年年収で見ますと、労働時間は20時間達していないけれども、年 収65万円以上の方は18.9%になります。  その次のページでございます。これは今の雇用者の中での1号、3号の割合、パート の中での1号、3号の割合ですが、これは1号、あるいは3号でパートに出ていらっし ゃる方のうち、どの程度適用拡大を見込めるかということの前提になる数字でございま す。  続いて推計の方法でございます。これは「雇用と年金研究会」の報告書に載っていた ものでございますけれども、今は労働時間が4分の3未満なので原則適用はないという 方について、どの程度適用拡大されるかということを計算しています。パートの全体100 %から、先ほどありました従業員5人未満の個人事業所で働いている17.2%、それから 更に、5人以上の個人事業所で働いているけれども、非適用の業種に入るという39.9% を引いて、全体の74.4%が適用拡大の可能性があると見ております。その上で、パート 全体の588 万人という推計にその74.4%を掛けて、その数字を13年指数で伸ばすと、484 万人が拡大可能性があるということになります。  次の4ページですが、484万人という前提の数字に対しまして、20時間以上の62.9 %を掛けると305 万人という数字が出てきます。それから、20時間を満たしていないけ れども、65万円以上の年収があるという方は、同様に18.8%を掛けますと91万人という ことで、合わせて400 万人程度が見込まれるのではなかろうか、粗い概数でありますが 、このような見込みをしております。  その次に下の表は、その305万人、91万人についての1号、3号からの2号への移動の 内訳でございます。まず20時間以上働いていて適用拡大される方は、1号を、3号の割 合を305 万人に掛けて算出します。それから、20時間に達していないけれども、年収65 万円以上あるという方についても91万人に同じ率を掛けて算出しています。  なお、先ほどありますように、非加入者につきましては、20〜59歳のパートの方で現 在手続中の方、手続漏れの方は、原則は、3号か1号として手続をされるべき方ですの で、そちらに分類をさせていただいております。  それから、20歳未満の方、あるいは60歳以上の方につきましては、1号、3号は適用 されないわけでございますけれども、これから適用拡大された場合には、その方々も厚 生年金に加入してきますので、その方々は1号、3号の方に案分して計算に入れていま す。  以上が最初の分野の数字でございます。  2番目でございますが、5ページは適用拡大を行った場合に、年金だけではなくて医 療保険も同様の考え方で適用拡大をした場合にどうなるかという数字でございます。前 回の委員提出資料の中にも前提になる数字は載せられていたかと思いますが、改めて見 ていただいているものでございます。5ページにありますように、前回見ていただきま したA案、B案、C案、それぞれにつきまして、左半分に本人分の年金の保険料を挙げ ております。A案は7万円の月収を、標準報酬月額の下限の9万8,000円とみなして適用 した場合、B案は月収7万円なら7万円のままで適用した場合、C案は割り切って7万 円、あるいは5万円という標準報酬で適用した場合でございます。それに対する年金の 給付の割合等につきましては、右半分に、同様に医療保険について適用した場合の、本 人分の政管健保の料率を見ていただいております。更に40歳以上でありますと、介護保 険の2号被保険者となり、介護保険の保険料が上乗せされます。これも毎年変わってお りますので、数字は15年度の政管健保の上乗せの料率から計算しております。  そういうことで、基本的には、年金については13.58%の半分程度である6.8 %の保険 料を御負担になる。一般の被保険者の方々、最下限の方々、あるいは平均的な方々も比 べて載せておりますが、同程度の御負担をお願いすることになりますが、標準報酬月額 を5万円等でみなした場合には、若干低目の率になるということです。それから、医療 保険の方も、その本人負担の率である11.3%前後になるのではないかということを見て いただいております。  6ページからでございますけれども、これは女性と年金研究会、あるいは2月、3月 の給付と負担の議論のときにも御指摘をいただきましたモデル年金、標準的な年金をど のような世帯、個人で見ていくのかという議論についての参考資料でございます。  「方向性と論点」の中では、現在の片働き世帯の標準的な年金につきまして、給付と 負担の変化の試算を見ていただいたわけでございますけれども、この資料では、2つ目 の「○」で書いておりますように、その給付と負担の御議論をいただきます際の補足資 料として、女性と年金検討会の報告書の中でも見ていただいておりました片働き以外の 世帯類型、つまり共働き、単身等についての類型に沿いまして、その試算を載せていま す。給付水準を維持した場合、保険料固定方式の場合、このような変化をするんじゃな いかというようなことです。それから、女性の就労につきましても、パートタイムへの 厚生年金の適用拡大をした場合、あるいは労働力率が推計のように安定的に伸び、11% 程度加入期間が伸びた場合というように、前提を少し置きかえての変化を見ていただい ています。  3番目の「○」にありますように、現在の年金の体系は、定額給付である基礎年金を 1階に置き、その上に所得比例の報酬比例年金を乗せておりますものですから、片働き かあるいは共働きかに関わらず、その世帯全体の総報酬が高くなりますと、世帯として の年金額が増加をします。一方で、その年金額の、手取り賃金に対する割合を計算しま すと、総報酬の増加により、その数字は低下しています。  なお、御指摘は、どういうものを標準モデルとして今後見ていくべきなのかもっと検 討していくべきだということでございますが、夫婦ともに40年間雇用ということを想定 できるか、あるいは女性の方々の今後の加入期間の伸び、あるいは賃金の変化等をどの ように考えるかという論点を今後もご指摘をいただければと思っております。  中身につきましては、7ページに書いてあります。1から7までのパターンは検討会 等から挙げていただいているパターンでございますが、特に(3)から(5)のような女性が 離職するパターンでは、女性の労働力率が11%程度上がり、加入期間が11%伸びるとい うことも前提に置いております。それから(4)では、一旦離職した後、再就職してパート タイムで働く場合、パートタイムが厚生年金が適用になった場合とならない場合で前提 を変えて見ていただいています。  そうしますと、8ページですが、片働き世帯については、現在の23.6万円で、代替率5 9%が、給付水準維持ですと同じ59%のままですけれども、保険料固定方式ですと、基準 ケースの場合には約12%程度の調整が行われますので、52%になります。なお、この金 額につきましては、方向性と論点で論じている賃金の上昇率が、2050年までの間は物価 に上乗せして1%程度あるという前提を、そのまま使っております。物価は、99年の水 準に割り戻したものを見ていただいています。  9ページは、夫婦共、今の平均賃金程度で40年間働いた共働き世帯を見ていただい ております。保険料固定方式ですと、46%の水準は12%程度調整をされ41%になるとい うことでございます。  それから10ページは、一旦離職はされましたけれども、その後また復職し、結果的に 今の女性の老齢年金の平均加入期間であります25年程度は働けた場合を想定しておりま す。  なお、一番右には、労働力率が11%程度伸びたという前提で、25年の加入期間を2年 9か月延ばしての計算を見ていただいています。  それから(4)は、一旦離職され、復職後パートタイムで働いた場合です。厚生年金適用 がないままの場合及び適用が拡大され、同じく老齢年金の平均加入期間である25年程 度働けたという場合にどうなるかということの両方を見ていただいております。この場 合でも、女性の労働力率が11%伸びた期間を一番右の方で見ていただいています。  それから、離職して専業主婦になるタイプ5の場合でございます。これは女性の就労 期間が女性の通老相当の平均期間である6年7か月程度にとどまった場合にどうなるか ということを示しています。これも一番右の欄では、女性の労働力率が11%程度伸びた 場合はどうなるかということを見ていただいております。  最後に男子の単身パターン、女子の単身パターンです。なかなか前提がおけませんが 、これは平均賃金で40年間働いた場合にはどうなるかということでございます。いずれ のケースでも、そのときの報酬に対する年金の額そのものは、今の額が給付水準維持で あれば変わらないし、保険料固定方式であれば12%程度の調整になっているということ でございます。  それから、4点目の最後の2ページでございますけれども、これは3号の議論の際使 用した給付を調整する場合の参考資料を出させていただきました。女性と年金検討会か らの資料の抜粋でございます。現在、日本で基礎年金が第3号被保険者と同額であるこ とを公平でないと考え、その給付を少し減らすということもあり得るのかという議論の ときに、アメリカ、イギリスの例が引用されますが、その見方についてのものでござい ます。アメリカは被保険者本人の50%の配偶者給付がある、あるいはイギリスは60%あ りますが、それは被保険者本人が受け取る年金額に比べて見るとまた違うのではないか ということでございますが、日本で見ますと、夫婦の基礎年金は同額でございます。そ の表の一番下の欄にありますように、被保険者本人の2階の報酬比例分も含めた額を分 母、配偶者に支給される基礎年金部分を分子にとって計算しますと39.4%になります。 アメリカの場合には50%、イギリスの場合には、基礎年金だけを比べますと60%ですが 、被保険者本人の付加年金を合わせたものと比べますと31.8%ということでございまし て、被保険者本人が受給する年金額との比較結果を見ていただいています。  以上が前回の御指摘に対する資料についてでございます。  次にスライド制について、資料2の論点をなぞらせていただきます。  1ページでは現在のスライドの考え方を確認しております。今は厚生年金は5年に一 度賃金再評価、賃金スライドを行っており、過去の賃金を現在価値に直して平均賃金を 出しています。それから、基礎年金は5年に一度の改正のときに、生活水準等もろもろ を勘案しての政策改定をやらせていただいております。  それから裁定されました後、65歳以上の年金につきましては、毎年の物価変動を反映 する物価スライドを原則としております。その上で2ページでございますが、この物価 スライドにつきましては、12年度、13年度、14年度は、特例法によりまして、物価は下 落しておりましたけれども、年金額を据え置く措置を講じました。15年度、今年の春か らにつきましては、直近1年分の0.9 %だけの物価下落を反映した措置をとらせていた だきました。  3ページは再評価の考え方の図でございます。 それから、4ページの方は最近の賃金、物価の動向でございます。賃金、つまり決まっ て支給すべき給与も下がっておりますけれども、一時金、ボーナス等を入れた現金支給 総額はより大きく下がっている状況にあります。物価も対前年比でマイナスが続いてお ります。  5ページは、これまでのスライドのルールの変遷でございます。昭和48年に賃金スラ イド、賃金再評価の仕組み、あるいは裁定後の物価スライドの仕組みが導入されました が、このときには物価スライドにつきまして、5%を超えて変動した場合のみ、その変 動率全体を改定に反映させるというゾーン制でありました。それが平成元年に改正され まして、小さい幅であっても自動スライドにする完全自動物価スライドが導入されたわ けでございます。なお、元年以前につきましても、5%以内であっても、特例で改定さ れたものがほとんどであったということでございます。  それから、平成6年改正のときに、この賃金再評価というものを、現役の負担も増え ているということで、可処分所得に応じた改定にさせていただきました。  それから、その次、前回の平成12年の改正のときに、既裁定年金に対して物価スライ ドのみを適用させていただきました。5年に1度の賃金スライドは行っておりません。 その後は、年金額を据え置く特例措置を講じております。  なお、欄外に※印で書いておりますのは、このゾーン制に関係するものでございます けれども、年金を改定した場合の改定のお知らせ等のコストがかかっているのではない かという御指摘に対しましては、13年度以降は物価スライドに伴う年金額の改定通知と 、毎年の何月に幾ら払われますという支払い通知を一つのお知らせにいたしまして送ら せていただいておりますので、特段の事務コストが生じるものではないということを書 き出させていただいております。  それから、6ページは外国の仕組みでございます。新規裁定は賃金スライドという仕 組みが多い。スウェーデンは概念上の拠出建てを採っていますが、この内容としまして は、賃金を反映させているということでございます。  なお、一番下のフランスは、80年代の後半ぐらいから、物価だけの再評価として実施 してきているということです。裁定後につきましては、物価スライドの例が多い。スウ ェーデンの新しい仕組みも、賃金の実質上昇率が1.6 %以上になったときに、物価上昇 率以上の裁定がされるということでございます。  7ページから数ページは、これまでも見ていただきましたマクロ経済スライドを簡単 にもう一度振り返ってみているところでございます。年金制度を支える社会全体の力、 所得や賃金の総体の変動率を反映させる期間をとりまして、新規裁定年金については賃 金スライド、既裁定年金については物価スライドに、この社会全体の所得や賃金の変動 率を反映させていくことが可能かどうかということでございます。  その考え方は9ページにありますような式であらわしております。一人当たり賃金と 総賃金の変化率の差だけ、これまで反映していた一人当たり賃金、あるいは物価の上昇 率から、差し引かせていただいて調整をする特例期間をとっていったらどうかというこ とを見ていただいております。  10ページに前にもつけさせていただいた概念図をつけております。  それから11ページでは、最近の物価賃金の動向を踏まえた論点を追加提案させていた だいております。少し分かりにくい図で申し訳ありませんが、一番上に座標軸をとって おりますけれども、縦軸に一人当たりの賃金の上昇率、横軸に物価の上昇率をとってお ります。財政再計算等で用いて通常想定しておりましたのは(1)のゾーン、すなわち、物 価も賃金も上がっている場合です。物価以上に名目賃金が上昇する場合ですが、実質賃 金の上昇があるということを前提に、いろいろ試算をさせていただいているわけでござ います。しかし足下では、これと違う状況も生じているということでございます。そこ で、そのような論点もあるのではないかということで、下にケース1、2、3を挙げさ せていただいております。  ケースIと申しますのは、その座標軸の中の(2)、(3)、(4)のゾーンでございまして、 一人当たりの賃金の変化率が物価の変化率を下回っており、実質賃金の変化率がマイナ スの場合でございます。その場合に既裁定の方々の年金に物価スライドをそのまま適用 したときに、現役の方々の賃金はそれよりも下回って変化をしておるということになる と、アンバランスが生じてしまうのではないか、そこのところをどう考えるのかという 点があろうかと思います。  それからケースIIでございますが、一人当たりの賃金がマイナスの変化をしているゾ ーンでございます。このときには、新規裁定の方々についてでございますが、賃金の再 評価をする場合に、再評価率は、原則であればマイナスにならざるを得ないということ でありましょうが、それに加えて、スライド調整を更に上乗せして行えるのかどうかと いう論点がございます。マイナスの場合にマイナスの評価をやるのか、なかなか難しい 問題があろうと思います。  それから、ケースIII、物価がマイナスのゾーンです。(4)、(5)、(6)のゾーンでござ いますけれども、これにつきましては、受給者の方々、既裁定の年金につきまして、物 価が下落しているときに、原則どおりであればマイナスの物価スライドをさせていただ くということでございましょうが、そのとき、更にプラスアルファのスライド調整が可 能なのかどうか、なかなかこれも厳しい問題があるのではないかということで挙げさせ ていただいておるわけでございます。  今、申し上げましたようなことを12ページ、13ページでもう一度確認的に論点として 挙げさせていただいています。  スライド制については以上でございます。  次に、ポイント制につきまして、2点資料を用意させていただいております。3−1 と3−2でございます。3−1の方はポイント制、あるいは、そのポイントの個人への お知らせ、情報提供の例についてでございます。3−2の方は、そのポイント制や通知 について、ドイツの具体的な例、スウェーデンのオレンジレターの例について、見てい ただいているところでございます。  3−1の1ページにありますように、これまでも見ていただきましたが、年金制度に 対する理解を深め、信頼を高めていくために、自らの年金の情報をなるべく分かりやす くお知らせをしていくための方法として、1つには、社会保険事務所等で受給時期が近 づいた方々に対して、受給見込額等をお知らせする時期をなるべく早めようとしていま す。50代のなるべく早い段階でお知らせする努力をしており、2ページにありますよう に、今、58歳以上でお知らせしてる具体的な年金の見込み額を55歳以上、更には50歳以 上でお知らせできるよう検討しております。  それから、受給時期が近づいた方について、その方の被保険者の記録を早めにお知ら せする、あるいは希望があれば、見込み額を通知するということもやっていくようにし ております。それからインターネット等を通じた御照会や電話相談に対しても、具体的 にお答えできるようにということで、検討を進めてきております。  更に1ページにありますように、ポイント制を導入していって、その方々の納付の記 録が御本人に分かりやすいようにし、着実に自分の納付済期間、つまり将来年金をもら える権利というものが増加していることが分かり、拠出の実績を実感していただけるよ うな仕組みを取り入れていきたいということでございます。  具体的な仕組みは、これまでも御紹介してきましたように、3ページ、4ページにつ けておりますようなことで考えております。基礎年金につきましては、毎年、免除、未 納等なしにきちんと払われれば1ポイントずつたまっていくということでございます。  それから報酬比例の部分につきましては、毎年の平均賃金に対するその方の賃金の比 率、平均値であれば1.0 、平均値より2割多ければ1.2 という形でポイントをお知らせ をしていく。そのポイントに対しまして、直近の基礎年金、厚生年金の単価を掛けてい ただければ、大体今の時点で年金の水準はこのぐらいが見込めるということが分かると いうことです。その単価につきましては、今までのものを賃金に応じたスライド、ある いは物価に応じたスライドをやっていく必要があるだろうと思っております。  5ページ以降に、ポイント制の意義をもう一度確認的に見ていただいておりますけれ ども、ポイントが増加していくことで、自らの業績を実感していただけるということ、 それから先ほどのような平均値と比べることによりまして、自分の年金の額、水準がど の程度であるかということが分かりやすくなるのではないか。老後の設計もしやすい、 加入状況も分かりやすい、算定式も分かりすいのではないかと考えております。  更に、6ページからは、具体的に行います場合の考え方でございます。先ほどのよう に加入期間に比例して伸びる年金、あるいは報酬に比例して伸びる年金の部分について ポイント化をしていきたいと考えておりますけれども、障害基礎年金等々定額の年金は もう額が決まっていますから、ポイント化をする必要はないのではないかと思っており ます。  それから適用対象者につきまして、これは受給前の方ということは当然でございます けれども、例えば、戦後生まれの方々は、同じ給付乗率を持っていらっしゃいますから 、現在50代後半にはなっていらっしゃいますけれども、なるべく広い階層、若い方のデ ータをとって通知をしてまいりたいと考えています。  それから、受給資格につきましては、ポイントが多いから受給資格があるということ ではなくて、加入期間の要件というのは、引き続き存続することになるのではないかと いうことを見ていただいております。  それから、7ページですが、導入に当たりましては、システム開発等も必要になりま すが、十分準備をとって進めていきたいと思っております。お知らせの方は、ドイツは 今パイロット期間中のようでございまして、試行しながら広げているということでござ います。  それから、ポイントの算定に関しまして、基礎年金のポイントは、社会保険庁の方で 加入の状況が分かります。それから、報酬比例年金の方は、各制度で加入の記録管理を しておりますので、各制度の方で行うということになると思いますが、その場合であり ましても、平均賃金等は今でも賃金再評価のために被保険者全体を通じた平均賃金での 再評価率を出しておりますので、今後もその平均値の出し方というのは、どの制度であ っても共通のものが使えるであろうと思っております。  それから、8ページは、個人情報をお知らせする場合の考え方でございます。外国の 例を見ましても、定期的に一定年齢以上の方に対して、なるべく広くお知らせしていく ことになろうかと思います。お知らせする中身としては、現在のポイント、あるいは現 在の加入期間、それを前提にして、一定の過程を置いて、このまま伸びていったら、こ のぐらいになりますよという年金見込額のようなものになろうかと思います。あるいは 、年金の考え方等についても分かりやすくお知らせして、御理解を深めていただきたい と考えております。  外国の例を拾ってみましても、9ページにありますように、ドイツが出ておりますが 、見込額、更には保険料の納付記録、あるいはその他の情報を出していっているという ことでございます。  参考資料にありますように、ドイツの年金情報の例、それから、後半にはスウェーデ ンのオレンジレターの例がありますが、相当詳細な情報を入れているというふうに聞い ております。  次に4点目でございますが、次世代育成に関する資料をごらんいただきたいと思いま す。4−1と4−2ということで用意をさせていただいております。これも去年の9月 、10月ごろに、次世代育成支援策を取り上げた際に挙げたものをもう一度なぞらせてい ただいております。4−1の方が給付と負担、育児の期間をどのように考えていくのか ということについて、もう一度整理をさせていただいた資料でございます。4−2の方 は、そのバックデータ的なものですが、これまでいろいろ見ていただいたものですので 、資料は触れずに済まさせていただきたいと思います。  4−1の1ページに現状を載せております。これは当然の前提でございますけれども 、少子・高齢化が一層進展しております中で、いろいろなアンケートでも見られるよう に、「子供ができても、ずっと仕事を続ける方がよい」、あるいは「子供が大きくなっ たら再び職業をもつ方がよい」という女性が非常に増えてきています。この中で、出産 と離職の関係につきましては、出産で仕事をやめたという方が多く、また、就業状態を 見ますと、0歳から3歳の特に小さい子供さんがいらっしゃる家庭におきましては、就 業状態が余り伸びていません。また、就業した場合でもパート、アルバイトというよう なことが多く、子供さんの年齢が上がるに従って、就業の割合は高まっていくというよ うなデータになっておるります。  その中で、2ページでございますけれども、年金・医療保険等の現在の社会保険制度 において、どのような次世代育成の配慮策を講じているかを書いております。これは育 児休業制度ができましたのと並行的に、育児休業が取れる1歳までの期間につきまして 、保険料の本人負担、事業主負担を免除をし、育児休業を取得する前の標準報酬に基づ いた保険料納付があったとみなし、将来の給付に反映するという仕組みになっておりま す。  その育児休業取得の状況でございますが、よく紹介されているものでございますけれ ども、実際に就労を続けられた方の中では、女性56・7%が、利用されています。男 性はまだまだ低いようですが、そのような状況です。しかしながら、離職される方も多 く、全体の中ではまだまだ非常に低い。百何十万人か生まれる子供さんの中では、4・ 5%台というようなことであろうかと思います。その状況を取りまとめているものでご ざいます。  それから、その育児休業制度そのものの状況でございますけれども、次の「○」に書 いておりますように、制度が拡充されてきておりまして、1歳までの育児休業に加えま して、3歳になるまでの間、育児休業に準ずる休業の措置、あるいは勤務時間の短縮、 フレックスタイムの導入、早出・遅出の始業・終業時間の繰上げ・繰下げ、所定外労働 の免除等々の措置を講じることが義務化されてきておるという流れにございます。  3ページ目でございます。国全体での次世代育成支援策の議論の状況を挙げておりま すけれども、一番上にありますように、一つには、現在、国会で審議中のものといたし まして、議員提案であります「少子化社会対策基本法案」があります。これは、少子化 に対処するために講ずべきものの施策の基本事項を定め、取り組んでいこうという基本 法案でございます。  それから、政府の側といたしましては、少子化対策の推進関係閣僚会議がございます が、その中で今年3月、当面の取組方針を決定いたしております。その中では、次世代 育成支援策を4つの柱の一つということで挙げております。年金につきましての内容で ございますけれども、一つには、育児期間において収入が下がり、あるいはなくなって いく場合に、将来の年金の計算等において配慮を行うことについて検討をしていくとい うこと、あるいは、教育に伴う経済的負担の問題につきまして、育英奨学金の充実等と 併せて、世代間扶養の考え方に立っている年金制度におきましても、次世代を支援する 立場から、新たな貸し付け制度も含めてどのように取り組んでいくか、次の改正の際に 検討するということを挙げております。  更に、政府の一番下でございますが、新しい法案、「次世代育成支援対策推進法案」 を提出し、国会で御審議をお願いしているところであります。これは次世代育成に対し 、地方自治体、企業等も伴って、ともに取り組んでいこうという法案でございます。  4ページの世論調査等の状況でございます。この対策が出生率向上等に、そのまま反 映できているというような調査はなかなかなくて難しいところでございますけれども、 関係するものとして幾つか挙げております「平成13年度国民生活選考度調査」等でも、 出生率低下の原因として経済的負担が多く挙げられています。これはよく言われている 点ではございます。  今日提出しております内閣府の世論調査の中で言われております項目といたしまして は、その2番目の「○」にありますように、子供を育てている者の保険料の軽減を拡充 するなど、年金制度においても支援策を講じるべきであるという方は54.1%ということ でございまして、二、三十代の方に多く見られております。少子化対策を年金制度で行 うことは適当でないとされる方は29.7%という状況でございます。  それから、有識者調査の方でございますけれども、育児期間への配慮措置として、今 とられている保険料免除等のような措置を拡充すべきであるかということにつきまして は、52.9%の方がそうすべきであるというお答えがありまた。次世代育成の支援は保育 サービスの充実など年金制度以外で行うべきという方が41.8%という状況でございます 。また、「年金資金を活用した教育資金の貸付制度を創設すること」につきましては、 「積極的に取り組むべき」が50%、「取組は必要ない」が42.9%というような状況でご ざいました。  その次のページで諸外国の例でございますけれども、資料4−2の最後の方にもつけ ておりますが、ヨーロッパ諸国等の出生率の関係と、育児支援の状況を見ていただいて おります。その中で、去年9月、10月にも見ていただきましたが、年金制度における育 児期間等に係る配慮措置をドイツ、スウェーデン、フランス等を挙げております。  資料にもありますように、ドイツ等では育児期間中は、働いているか働いていないに かかわらず、3年間、被保険者の平均賃金を得ていたものとみなして年金制度上取り扱 い、あるいは10歳までの期間についても平均賃金の範囲内で、年金計算上、賃金を上乗 せをするというような改正も行われてきています。  スウェーデンにおきましても、育児期間の4歳までの期間について、所得減少等があ った場合、働いていない場合も含めて、その子供さんが生まれる前の所得を得ているも のとみなす、あるいは加入期間の平均所得の75%を得ているものとみなすというような 措置をとり、年金制度上不利にならないような措置がとられているという例でございま す。  フランスにおいては、更に年金額の計算における加算措置もとられております。  また、資料の最後にもつけましたように、ドイツにおきましては基本法の前提が少し 違いますけれども、子供を養育している者が、その間就労できず、収入が減少し、年金 額が少なくなるという状況に置かれているということに対しまして、年金法の規定にお いて調整されていくべきであるというようなことが、1992年に連邦の憲法裁判所の決定 が出ております。それと同時並行で、この年金における育児期間の配慮を3年に延長す る、あるいは所得を得ているとみなす率を75%から100 %にしていくという改善もされ てきているという状況でございます。  その上で資料4−1の6ページからでございますけれども、次世代育成政策について 、年金制度でどのように考えていくかということでございます。年金制度におきまして も、そこに数字を挙げておりますように、次の世代が生まれないということは大変大き な影響を受けます。給付水準を維持するにしましても、低位推計にいってしまった場合 には、厚生年金の保険料率は、26.6%、国民年金の保険料については22,500円のような 、非常に重い負担になってしまうのではないか。あるいは保険料固定方式をとる場合で 、所得代替率で45%程度まで給付水準が下がるというのは非常に厳しいものにならざる を得ず、影響が大きくなります。7ページでございますが、これは去年の9月にも挙げ させていただいたように、少子化対策を年金制度で考えるべきという意見、あるいは年 金制度とは違う問題ではないかというような意見、両論あろうかと思いますが、その中 でも先ほど見ていただいたように、政府の閣僚会議決定の中では、年金制度も含めて検 討をしていくべきということが指摘をされており、御検討いただきたいということでご ざいます。  8ページには、検討いただく場合の考え方を載せています。これまで見ていただきま したように、育児期間についての年金制度上の負担や給付における配慮を考えていくの か、または教育資金のような年金資金を活用した次世代育成支援策を考えていくのかと いうことでございますが、ここでは給付と負担の関係の論点を挙げておりますので、育 児期間についてもう一回触れさせていただいております。  9ページにその考えられる論点を、(1)から(5)まで幅広に拾わせていただいておりま す。例えば、今の育児休業期間中の措置の延長線上で考えますと、現在は1歳まで育児 休業期間中について免除措置を、例えば、3歳までは育児休業に準じた措置が義務化さ れておりますので、3歳までの期間に延長するという考え方がございます。  あるいは(2)のように、休業をとっていないけれども、就業調整、短時間就労等を組み 合わせながら、何とか就業を続けていらっしゃる方についても、所得が低下しているこ とについて、年金制度の中で不利にならないようなことを考えるやり方、例えば1歳ま で、あるいは3歳まで、ドイツ、スウェーデンでとっているような平均的な標準報酬、 あるいは平均賃金に基づき保険料を納めたとみなすことが可能かどうかということを挙 げてさせていただいております。  あるいは、(3)でございますが、就労を続けられる方よりも、今は実際には離職される 方が多いわけでございまして、厚生年金に入っていた方が離職されたような場合におい ても、1年とか、3年とか、同じような配慮が考えられるのかどうかということ、ある いは離職されてしまったままでは、同じ考え方がとれない場合にあっても、再就職され た場合に、厚生年金の方で同じような配慮措置が考えられるのかどうかということを見 ていただいております。  それから、(4)でございますが、1号である方についても、今の免除制度、あるいは学 生の納付猶予の特例のようなことを考えるのかどうかということを見ていただいており ます。あるいは3号についてでございますけれども、3号制度の見直しの4案の中で、 3号の方が被扶養配偶者であっても給付を調整すべきである、あるいは負担を求めるべ きであるという案でありましても、1年、3年等の育児期間、につきましては、その給 付を調整しない、あるいは負担を求めないというようなこともあり得るのか、その点を 見ていただいております。  それを10ページから少し具体的に書き出して見ていただいております。(3)につきま して、ドイツ、スウェーデン等で行っているように休業中だけでなくて、就業を継続さ れている方につきましても、その間、収入の低下等につきまして、不利にならないよう 、従前所得なり平均賃金のみなしを行うことが可能かどうかということを見ていただい ております。  それから、11ページは、離職をしてしまった方についても一定期間同様の考え方をと ることは可能であるかどうかということです。離職したままでは難しいということであ れば、復職をした、再就職をした場合について、それを前提に、期間なり給付の保険料 計算で不利を補てんすることは考えられるのかどうかということを見ていただいており ます。  更に、12ページは、1号の方の場合でございますけれども、厚生年金における配慮と いうことではなくて、(1)、(2)、(3)にありますように、免除という考え方が当然とれる のかどうか、あるいは学生の納付特例のような措置をとって、追納があった場合に、満 額給付とするという考え方がとれるのか、あるいは、もともと満額給付がとれるのかと いうことを見ていただいております。また、保険料免除については収入を問うておりま すので、世帯の収入等の所得を要件とする必要があるのかどうかということを見ていた だいております。  最後のページでございますけれども、3号の方についてでございます。3号について は、その3号の仕組み自身が支援措置であるという考え方もあるわけでございますけれ ども、今回見直しの中で3号にも負担を求めるという場合に、育児期間中については負 担を求めないというような配慮が可能なのかどうか、あるいは給付を調整する場合に、 育児期間については、そういう調整を行わないということを考えるのかどうかというこ とです。  更に、(3)で分割案を行います場合にも、例えば、納付保険料負担を分割して行ってい ることを前提とするのであれば、その負担分について免除をするという考え方をとれる のかどうかということについて見ていただいております。育児休業については、給付と 負担関係で、以上のことを追加で出させていただきました。  少し急ぎましたが、以上です。よろしくお願いいたします。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、今一括して資料の方の説明をいただきましたが 、今日は論点が同じようなものとは限らないものですから、分けて御意見をいただきた いと思っています。1つは、委員から要求のありました資料について、先ほど触れられ ましたように、これまでの片働きの世帯の場合には、モデルというのは比較的単純であ ったわけでありますけれども、今後そういったモデルが変わるということになってまい りますと、特に共働き世帯についてのモデルというのはどんなものを考えたらいいのか ということで、一応、今日は幾つかのライフスタイルを念頭に置きながら考えたわけで す。これについて、少し御意見を伺いたいと思いますが、今後いろいろな形で資料を示 す際に、どういうモデル世帯、あるいはライフスタイルを考えながら示すことが適当な のかということについて、時間は余りございませんが、何か御意見がありましたら伺い たいと思います。いかがでございましょうか。どうぞ井手委員。 ○井手委員  この委員要求資料の3点目は、私の方でお願いしたことでございまして、シミュレー ションしていただきまして大変ありがとうございました。この資料1の7ページにライ フスタイルに応じた世帯別の老齢年金額ということで、(1)から(7)まですべてのパター ンが出ておりますので、これを見ながら意見を申し上げたいと思います。シミュレーシ ョンいただいた中で、現在モデルとされている(1)が、片働きということですが、現在1 から7までがどのような構成比かというのを知りたいわけです。多分、分からないとい うことだと思うのですが、2050年を展望したときに、恐らく(1)と(5)が減っていって、( 2)、(3)、(4)が増えて、(6)、(7)も増えるということではないかと思います。将来のモ デルを考えるときに、そういう流れも、やはり分からないながら当然、組み込まなくて はいけないのではないかと思います。少なくとも、1番がマジョリティであるというこ とはあり得ないでしょうから、この構成比がどう変化していくかということも、分から ないながら考える必要があるのではないかと思う点が1点です。  それから労働力の見通しということで、11%女性の労働力が増えるという想定になっ ているんですけれども、フルタイムもパートタイムも、どちらも同じように増えるとい うことで想定されているようですが、そもそも、同じように伸びるのかどうかというこ とも考えてみなければいけないのではないかと思います。  それから3点目として、40年間共働きタイプについて、女性の賃金は相変わらず、夫 に対して6割ぐらいという想定になったままで計算されているのではないかと思うので すが、これから40年共働きして、この6割の賃金のままでは、均等法をつくったかいが ないという感じがいたしますから、恐らくそういうことではないであろうと思います。 もし完全に均等であれば、(6)番の男子単身タイプが2人合わさったような家庭1+1が 2になるような、そういった家庭も、2050年には出てきてほしいというふうに思います し、そういうことを前提の中に入れるべきではないかと思いました。  もう一つ、現在でも、この(6)番の男子単身タイプの所得代替率が保険料固定方式をと った場合、37%で一番低く、片働きの(1)番が52%で最も高くなっています。6ページの 前提のところで、そもそも現在の年金体系が定額の基礎年金と報酬比例年金を組み合わ せたものであるので、こうなるのは当然なんだということが3点目のところで書いてあ るわけなんですけれども、この所得代替率の差は37%と52%だと、15%あるわけですけ れども、それが(6)番を合わせたような家庭が今後増えてきた場合に、果たして、この所 得代替率の差はしょうがないと言うべきなのかどうなのか、その世帯間の所得代替率の 差はどこまで縮めるべきなのかということも考えるべきではないかと思いました。  以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。ほかに何か御意見ございますでしょうか。問題は少し多岐 にわたりますが、これは今、井手委員からありましたように、これからかなり長期を見 た場合どうなるかということがなかなか予想しづらいという面もございますし、確かに 共働きになりますと、今言いましたように、ライフスタイルの変化ということと、賃金 水準をどう考えるのかというようなことは、これは様々なケースがあり得るので、なか なかモデルとしてうまく示すのが難しいというような面がございます。当面は幾つかの タイプを考えながら示すという努力をしたいと思いますが、余り足下の現実を離れても しょうがないし、かといって、現状をそのまま追認するというのも、またこれは長い期 間をとってみると必ずしも現実的ではないという面がありまして、やや悩ましい問題で はございます。  ほかに何かございますでしょうか。それでは、今日は幾つか論点がございますので、 次にマクロスライドの話でございます。マクロスライドは一度概括的な議論をいたしま したが、今回は先ほどの(1)から(6)までの座標軸を使った説明がありましたように、い ろいろなケースで考えますと、幾つか問題が出てくるという指摘がございました。その 辺を中心に少し御議論をいただけないかと思っております。資料で申しますと11ページ 3、賃金と物価の動向とスライドの関係というところがございまして、ここで実質賃金 がプラスになる場合とマイナスになる場合というようなケースが幾つかございます。特 に(2)、(3)、(4)のケース、それから(3)、(4)、(5)のケース、それから(4)、(5)、(6)の ケースについて、実際のスライド、あるいはスライド調整という考え方を検討する場合 に、議論としては詰めておく必要があるだろうと考えておりますので、これについて何 か御意見があれば伺っておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。どうぞ翁 委員。 ○翁委員  90年代の日本では、長い不況でかなり労働分配率が上昇していて、その結果として企 業収益が大幅に低下しましたが、現状を見てみますと、少し賃金の下落傾向が出てきて いて、その結果として将来も労働分配率が少し低下していくのではないかというシナリ オが予想されています。実際、今説明にもありましたけれども、2001年以降というのは 、少し賃金の下方硬直性というのが弱まってきていて、物価の下落率以上に下落すると いう局面が続くかもしれないという感じがします。  同時に、今行っている分析などを見てみますと、賞与の削減や、労働者に占めるパー トの比率の上昇等、こうした傾向が出てきているというような状況だと思います。もち ろん、今後どうなるかについては、例えば、予期せざるデフレの加速等があれば、賃金 の調整の方が遅れてしまって、再び労働分配率が上昇するということも、もちろん十分 考えられると思うのですが、今の企業の状況などを見てみますと、年金の保険料が総報 酬ベースに変わったというようなことや、今後パートを取り込んでいくというようなこ とが考えられ、年金制度は今の賃金の動向に、より強く影響される可能性があるのでは ないかと思います。  そうした局面が続いて、物価の下落を上回って賃金が低下する局面というのが続くよ うになると、将来期間に対応する純債務の部分がどんどん持続的に発生し続けることに なって、年金財政にとっては非常に大きな危機になるのではないかと思います。  その意味で私自身は、そういった局面を考えるとより低い方にスライドをさせるとい うことも考える必要があるのではないかと考えています。これは今の状況だけでなくて 、逆に賃金と物価が上昇局面になる状況も十分起り得るというように思いますので、こ ういったことを考えておく必要があるというふうに思います。 ○宮島部会長  大変厳しい、場合によってはスライド調整もしっかり行うというお考えだと思います が、ほかにはいかがでしょうか。どうぞ小島委員。 ○小島委員  翁委員とは逆の考え方なんですけれども、マクロ経済スライドを入れるべきではない ということで、これまで発言しております。11ページに示されていることを見ますと、 今、翁委員が指摘されましたように、これからの賃金がどうなるかというのは、パート あるいは単時間労働者がこれからも増えていく、あるいはワークシェアリングの推進と いうことを考えますと、1人当たりの平均賃金が伸びるかどうか、なかなか見通しが難 しいというようなことが想定されます。そうしますと、本人の賃金も余り伸びない、あ るいはマイナスが今後とも想定される中で、このマクロ経済スライドを適用すると、ま さに賃金がマイナスである上に、さらにマイナスのスライドを適用するということでは 、年金の水準は限りなく低下していくことになりかねないということがあります。そう すると、年金に対する信頼感が失われるのではないかということが懸念されますので、 このことも十分配慮すべきではないかと思っております。  そういう意味では、私としては現在の可処分所得スライドで対応すべきであると思っ ております。確かに少子化等で人口が減少していくということになれば、保険料が上昇 していくということによって、現役の方の負担が重くなり、現役の手取り賃金が調整さ れる、あるいは減っていくということになる。それが年金の水準に反映されるというこ とでありますので、この可処分所得スライドは自動調整機能を持っているんだというこ とをもう一度評価すべきじゃないかと思っております。 ○山崎委員  最近、物価よりも賃金の方が相当下落しているようでございまして、裁定時の再評価 につきまして、恐らく、このままですと再評価率が相当下がっていくだろうと思います 。また、急激に下がることについていろいろ激変緩和の要望なども当然出てくると思う のですが、そういったことを考えますと、この論点例に出ていますように、毎年、再評 価率を見直すことが現実的ではないかと思います。つまり、5年まとめてということで はなくて、毎年、見直すことが現実的な対応かと思います。  それから、賃金と物価の乖離で賃金の変動率の方が大きい場合には、やはり、それを 踏まえた調整率とするのが現実的ではないかと思います。これは翁委員と同じでござい ます。ただ、その場合の基礎年金については、やはり一定の配慮が必要なのかなという 感じが私はしております。  以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。もう一つはお気づきか と思いますが、マクロ経済スライドの中でも、特に労働力の変動のところは、労働力人 口というのと、被保険者数という形でなっておりますので、この辺のことも含めて、ま た、これを適用する場合に実績準拠法と将来見通し平均化法という、2つの考え方があ りますが、そういう点も含めて、何かほかに御意見があれば伺っておきたいと思います が、大山委員。 ○大山委員  基本的に今出ている問題に関連しては、賃金と物価の関係については、賃金の方を重 視すべきであると考えています。これは賃金と物価がどういう関係なのかという問題も あると思いますが、物価上昇、いわゆるインフレになれば、当然それは賃金水準に反映 されると考えていますし、またそういう要求を働く者が出すわけでありますから、基本 的に賃金を中心として考えるべきだと思います。現役の勤労所得のある者も、年金の受 給者も、それぞれ負担をする社会保険料や税金を含めた、社会的な責任を果たした上で 、実際に受け取る収入によって生活を考えているわけであります。その世代の間で助け 合いをするということが年金の基本的な考え方だと思いますので、一人一人の勤労者と 、年金を受給している高齢者の助け合いが実感として分かるような制度をきちっと堅持 すべきです。その場合にはやはり、生活するための基本的な収入がどの程度のものなの か、お互いの合意をつくり上げていくべきでありまして、そこにマクロスライドを導入 して、トータルの所得賃金が幾らというようなものをもってくるということになれば、 基本的に年金受給者と現役で働いている者が一体どこを基本にしてお互いに助け合って いくのかわからなくなります。マクロスライドは社会全体の賃金が少なくなるというこ とを前提にしていますが、これが増えた場合、あるいは大幅に減った場合にはどうなる のかというような問題があります。基本的には年金受給者も、あるいは現役労働者も、 手取りの賃金収入によって生活しているわけですから、可処分所得でスライドを行うこ とで、お互いが助け合うという制度の基本を堅持していくべきであるというふうに思い ます。このマクロ経済スライドによる自動調整というものについては反対いたします。 ○堀委員  先ほど賃金上昇率と物価上昇率の低い方をとったらどうかという意見がありましたが 、そうすると、年金受給者の年金水準は永久に若い世代の生活水準に追いつかないとい うことになります。例えば、物価上昇率が高くて賃金上昇率が低いという場合は賃金上 昇率でスライド調整し、逆に、賃金上昇率が上がった場合には物価上昇率で調整すると いうことで、若い世代の所得はどんどん上がっていく可能性がある一方、年金世代は若 い世代と比べてどんどん下がっていきます。総人口が減って総賃金が減る分、給付水準 を下げるというのは分かるのですが、基本的には給付水準を下げたとしても、ある程度 、若い世代とバランスがとれるような仕組みにすべきだと考えています。それがどうい う仕組みになるのか分かりませんが、今の年金水準は高いから、それをある程度下げて いくというのは分かるんですが、若い世代と年金受給者の生活水準が乖離していくよう な仕組みは私は望ましくないのではないかと思います。 ○宮島部会長  ほかにいかがでございましょうか。このスライド制の議論というのは、要するに、年 金制度が今の世代間扶養という基本的な仕組みを維持するのであれば、マクロの人口変 動や、経済変動によって影響を受けるということを、どういう仕組みで年金制度の中に 吸収するかというところから発想が出てきたわけです。その点の基本的な考え方は、今 、若干意見の対立があったことも承知をしておりますが、押さえておいていただきたい と思っております。どうぞ近藤委員。 ○近藤委員  マクロスライドを導入するのは、私自身は賛成です。ただ、具体的に言うと、余りに も微妙なところで毎年調整していくというのではなく、昔ありましたゾーン制のような 形で、一定の幅の中では積立金を利用し、変化させない、それを越えたものについて、 調整する仕組みがとれればいいのかなと思います。やはり、マクロスライドの考え方は 基本的には実施した方が良いと考えます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは次に、分かりやすい年金制度、ポイント制の話で ございますが、これについて御意見ございますか。杉山委員どうぞ。 ○杉山委員  こうした分かりやすい制度に対する取組を進めていきましょうということはとてもい いことだと思っております。特に資料3−2で参考資料としてドイツとスウェーデンの 例が出ていますが、これなども読む気にさせるというか、あなたは今こういう状況で、 過去にこういうことをしてきたから、予測額はこうですよといった形で読ませる工夫や 配慮がされているなと思いました。どうしても仕組みから説明して全体が長いのが、私 が感じる行政の通知へのイメージですが、今後取組を進める場合には、それよりはやは り分かりやすさや、年金を身近に感じられる工夫というところにまずは焦点を絞って、 通知の仕方を御検討いただければなと思っております。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。ほかに、山口委員どうぞ。 ○山口委員  私もこのポイント制については賛成でございます。やはり、年金制度に対する理解と 信頼を高めるということでは、情報の開示が非常に重要だと思うんですが、特に納付実 績の短い若い人たちが、本当に送られて来る資料を見て信頼を高めるかということが心 配です。通知を見ることによって、納付実績の短い若い層が能動的に自分の老後の生活 設計にアクションを起こせるかという視点を、ぜひ、このポイント制をスタートすると きに入れなくてはいけないのではないかと思います。  それから、それと併せて先ほども議論がありましたモデルの部分でございますが、井 手委員がおっしゃったように、今後どういう方向にライフスタイルが収斂されるかとい うことよりも、自分がパターンをセレクトできるような多様なライフスタイルのモデル 世帯、モデル年金も併せて見せていかなくてはいけないのではないかと思っております 。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。反対の人はいらっしゃらないと思いますが、ポイント制の 導入を進めていったときに、やはり具体的には実務面などで幾つかの問題が起ってくる かなという気は若干しております。どうぞ渡辺委員。 ○渡辺委員  主にポイント制の質問ですけれども、これからは総報酬で見るわけですね。そうしま すと、私などは三十数年間の厚生年金の加入期間があるわけですけれども、過去の標準 報酬月額で納付してきた部分はポイントに反映しないということになると思うんですが 、そうなると、このポイント制を導入しても、これが実際問題として分かりやすい年金 になるためには、全く新しい人、新社会人等が、ずっと納付したら40ポイントだなとい うことは分かるにしても、今、就職後数年以上の人というのは、ほとんど使えないこと になりやしないかと思います。つまり、過去の標準報酬ベースの分についても何かポイ ント制に変えることはできないのかなという気はするんですが、その点について伺えま すか。 ○宮島部会長  事務局の方から何かそれについてございましたら、どうぞ。 ○木倉年金課長  実務はこれから詰めますけれども、考え方としては、過去の月収ベースで平均賃金を 出したものにつきましても、可能であれば、そのポイント化をして、御本人に過去の累 積分は、これだけのポイントをお持ちです、これからの期間については、今後、逐次お 知らせしますということはでき得るものであろうと思っております。そういうことで、 なるべく広くポイントを持っていただくようなことを実際にできればと思います。 ○渡辺委員  大変結構なことなんですが、そうなりますと、先ほどの事前通知を58歳から55歳、更 には50歳に行うという話も、今、木倉課長がおっしゃったようなことが可能であるなら ば、プログラムを変換しなくても、もっと若い世代から教えることが可能になるわけで す。だから、別に大変な作業をやって55歳、数年間かけて50歳までする必要もないとい うことも言えると思いますが、そこを教えてください。 ○木倉年金課長  現在の実務は、58歳ぐらいにならないと、まだ見込み額もお知らせできないというと ころです。現実問題として退職が近づいてくる50代には自分の年金がどのぐらいかとい うことが御心配になりますので、なるべく早く通知するということで進めていこうと思 っております。それと同時に、今、委員御指摘のように、できますれば、若い世代にも 、20代、30代も5年、10年という早い段階で、実績としてポイントをどの程度積み立て てきているかということを分かっていただいて納付意欲も増していただきたいと思って おります。諸外国におきましても、相当早い時期からお知らせをしておるようでござい ますので、お知らせする作業と、ポイント制への切りかえも全世代一遍にできればいい んですけれども、それができずに順次やっていくのであれば、50代について実際にお知 らせするものと、若い世代からもポイントを切りかえさせていただくという考え方もと り得ようかと思っております。 ○山崎委員  私が、非常に気になっておりますのは、今、社会保険庁は住民登録の住所記録ではな くて、独自にお知らせできる住所記録をお持ちのはずでございますが、問題は二十歳代 で本当にお知らせしなければいけない人たちの住所が相当不明で返ってくるのではない かということです。これは学生をつかむのが非常に難しいということで、大学に住所が 変わったというのを届け出ない学生が多いものですから非常に困ります。恐らく庁もお 困りじゃないかなと思うんですけれども、この辺はいかがでしょうか。 ○宮島部会長  社会保険庁の方から何かございますか。 ○十菱企画課長(社会保険庁)  お答えになるかどうか分かりませんけれども、社会保険庁は、二十歳になった方には 強制適用しております。そして、適用された方には納付書を送り、未納の方には、納付 勧奨をするということで常時連絡をしておりますので、実際に転居をなさったときに追 いかけきれないものが返ってくるというものはございますが、それが圧倒的に多くて処 理できないということではないという認識です。 ○宮島部会長  この問題はさっきも言いましたように、どなたも反対はないと思いますが、具体的な ことになると、事務的にクリアしなければいけない問題が出てきますので、それは今後 詰めていただくということにいたします。  それでは次に次世代支援でございまして、ここは考え方によってはいろいろ御意見が あり得ると思いますので、できましたら具体的な御意見をいただきたいと思います。大 きな意見の分かれ目というのは、次世代支援というものが世代間扶養型の年金保険制度 を存続する上で非常に重要な意味を持つという観点からの議論と、もう一つは、育児に 伴って短時間労働者変わる、あるいは休職、離職することで、所得の減少なり喪失とい うリスクが生ずるという観点からの議論があります。それからもう一つは、支援方法と しての、負担や給付の点でどう考えるかという話と、積立金の使い方のような資金面で どうするかという論点があると思いますけれども、これについて、御意見を伺っておき たいと思いますので、どなたでも結構でございますが、どうぞ小島委員。 ○小島委員  次世代支援の基本は、やはり年金以外の社会全体の在り方としてどうするかというと ころが問われていると思います。そういう中で、年金制度でも可能な範囲においては次 世代支援について、やはり考えていくべきだと思っております。これまでも年金の水準 については維持するべきという言い方をしておりますので、そういう観点からしても、 この年金制度の中で、次世代支援を可能なものはやるべきだと思っております。  具体的にどういうことをできるかについては、9ページに幾つか考えられる案が示さ れております。育児休業は今民間企業の場合は1年間とれることになっておりますが、 その期間は保険料の免除制度として、次世代育成支援の一環で実施されています。これ を拡充する際には、育児休業をとらずに働いている人、子供を育てながら短時間労働者 に変わった人について、やはり支援すべきではないかと思います。子供が3歳になるぐ らいまでは、短時間労働者に移って、賃金が低くなった人については、短時間労働にな る前のフルタイムで働いていた時の賃金をベースにして保険料を払っているとみなし、 年金にカウントするというような配慮が一つ考えられるのではないかと思います。以上 は第2号の方についてです。  第1号の方についても、やはりそこは一定の配慮をする、あるいは支援をするという ようなことも考えてもいいのではないかと思います。そういう意味では、子供を育てな がら自営業等で働いている方には、子どもが3歳になるぐらいまで、配慮措置を講じる べきだと思います。保険料を免除するというのはなかなか難しいと思いますので、学生 納付特例と同じような制度をとり、その期間は保険料の納付の延納を認め、子どもが3 歳以降で働くようになったら、そこで追納するというような制度を考えてもいいのでは ないかと思っています。 ○宮島部会長  ほかにいかがですか。杉山委員。 ○杉山委員  小島委員の考え方に基本的に賛成ですけれども、育休を取得されていらっしゃる方は 、この資料で見ても分かるように増えているということと、子育てに専念している家庭 よりも、働きながら子育てをしている家庭の方が出生率が高いというような結果も出て いることを考えますと、こちらの資料にありました保険料免除や、雇用保険の育児休業 給付など、そうした育休中の次世代支援が相当有効だと考えられるわけです。そうであ れば、この拡充策として考えられる案として、(1)、(2)のような育休中の更なる拡大を まず進めていくことが順当であろうと思われます。特に、お子さんが1歳になって、職 場に戻りましょうといっても、保育園の空きがなくて、待機児にならざるを得ないとい うような状況の中では、育休を短縮する方法をとらざるを得ないわけですが、それより は、もう少し育休を延長して、4月を待って入所できるように、その時間の猶予を厚生 年金の方でも配慮する必要があると思います。  もう一点、質問なんですけれども、資料4−1の12ページにあります第1号被保険者 に関するところなんですが、一番下の「○」のところで、「保険料免除については、負 担能力を問わずに、育児期間中であることのみをもって全国民共通の基礎年金に係る保 険料負担を要しないこととすることが適当か」と書いてあるわけなんですが、私にはよ く分からなかったので御説明いただけますでしょうか。 ○木倉年金課長  現在の国民年金には、全額免除、半額免除という仕組みを入れておりますけれども、 これは負担能力である収入の状況を見させていただいて免除の基準に当たるかどうかと いう判断をさせていただいております。1号の中には自営業等をなさっている方、もと もと働いていらっしゃらなかった方等、様々いらっしゃいますので、育児休業期間であ るからということだけで、負担能力なしということを当然に前提として置いていいのか どうかという点がございます。一般的な免除の場合と同じように、その方の住民税情報 、所得税情報のようなものを基準にして、収入の状況を見させていただいて免除をする というような考え方になるのかどうか、その辺を御議論いただきたいという意味で出さ せていただいております。 ○吉武年金局長  通常、世帯の所得で見ますから、例えば、御夫婦で自営業をしておられて、奥様が出 産されて育児をされても、御主人の仕事の全体が減らなければ所得は下がらないケース が多いわけです。そうしますと、半額免除にはならないわけです。出産、育児の際に自 営業の収入が減ることにそれによって間接的に半額免除となる可能性はありますが、こ のように所得に対応して免除の裁定をしていますので、所得に関係ない理由で免除する というのが果たして適当かどうか、そういうことでございます。 ○宮島部会長  自営業の税制で言いますと、青色専従者給与制度が適用されているかいないかで判定 できると思いますが、年金制度の場合は判定が難しくなるのかなという気がいたします 。ほかに。堀さんどうぞ。 ○堀委員  私も小島さんが前段で述べた少子化対策、次世代育成支援について、年金制度として できることをやるという点は賛成です。育児休業中の育児休業給付という支援を充実す るという手も一つなんですが、先ほど少し説明がありましたように、毎年120 万人子供 が生まれる中、育児休業をとる人が7万人で、その他の人は離職しています。そのほか 自営業者も育児休業の対象となりますが、育児休業中の配慮を拡充しても、その程度の 育休取得者数なら余り効果はないということになります。なぜやめるかというと、やは り子育てと仕事が両立できないという社会経済、あるいは雇用の問題があるからです。 私はそこを解決するのが中心だろうと思います。  年金制度で育児支援をやるとすれば、そういう理由で仕事をやめた人について、年金 制度で不利にならないように援助するというのが筋ではないかと思います。今は3号制 度という形でやっている面があるのですが、2号でやめた場合にどうするか、それから 1号をどうするかといった点が問題になります。具体的な案というのはまだ持っている わけではないんですが、論点は育児休業をとらずにやめた人に対して、どう手当するか ということではないかと思います。 ○宮島部会長  ほかにいかがでしょうか。井手委員。 ○井手委員  これまでの次世代育成支援の議論のときに、申し上げた意見と変わっていないのです が、やはり、年金制度の中で少子化対策を行うということに効果が本当にあるのかとい うのが疑問です。これまでの育児休業中の保険料免除ですとか、あるいは育児休業給付 金ですとか、かなり手厚くされてきたにもかかわらず少子化が進行しているということ は、何か別の原因があるのではないかと私自身は思っております。そういう意味では次 世代、将来の支え手を増やすために、これが効果的であるかについては疑問であるとい うことと、やはり非常に変化の激しい企業の実態から見まして、きちんと育休をとって 復帰するという形の働き方も当然あるわけですけれども、晩婚化・晩産化の中、子育て の年齢が上がり、責任の重い仕事についている人が、休んで子育てをできることを大変 ありがたいと思うとも限らないと思います。そういう意味では、どんな形でも就業を継 続することに、むしろ社会的なサポートをすることが次世代育成の支援になるというふ うに考えられます。また、免除ということは、働き続けている誰かがその分負担してい るということになりますので、この優遇策というものをこの年金制度の中でどこまでや るかというのは、バランスの面からも見なくてはいけないのではないかと思います。 ○宮島部会長  ありがとうございます。ほかに何かございますか。 ○神代部会長代理  質問ですが、資料4−2の、31ページあたりにドイツ、フランスの例が出ております 。私は非常にフランスの制度はいいなと思っているんですけれども、「子1人につき2 年の期間加算」と出ておるんですが、保険料はどうなっているのでしょうか。フランス はたしか二分二乗、N分N乗で保険料をとっていると思いますが、育児期間も奥さんは 保険料は払い続けるんでしょうか。もし分かったら教えてください。 ○木倉年金課長  その点は確認して、また御報告をさせていただきます。 ○宮島部会長  もうお一人、山口委員どうぞ。 ○山口委員  12ページの(5)の「○」のところに「育児を公的年金制度への貢献と積極的に評価し て」フレーズがありますが、こういう視点で次世代支援を考えるべきではないと申し上 げておきたいと思います。公的年金にとってだけではなくて、たくさんの子供が育って いくということは重要ですけど、この視点は偏っているのではないかと思っております 。  ただ、井手委員もおっしゃっていましたけれど、次世代育成支援のためのインフラ整 備、企業の中での企業のサポート、あるいは地域の環境整備等が必要になってくると思 います。やはり、ここでぜひ実行しなくてはいけないと思っているのは、先ほどから出 ていますように、育児をするということが不利にならないという視点での対応です。具 体的には、短時間労働者にならざるを得なかったような状態、あるいはやめざるを得な かったというような状況への配慮です。どこまで広げるかということもございますけれ ども、特に、勤労者の立場から言いますと、短時間労働者になるということは、育児休 業をとれず、経済的な理由で働き続けなくてはいけないという理由もかなりあるわけで すので、ぜひ、そこに例として出ているような対応をしていただくと同時に、それに相 当するような配慮を働き続けられないでやめてしまった人にも行う方向で検討をしてい ただければと思います。以上です。 ○宮部部会長  ありがとうございました。それでは、後ほど申し上げますが、まだこの論点について は、ご意見をいただく機会がございますので、とりあえず、今日の議論はここまでにし ておきたいと思います。それでは5分ほど小休止をいたします。45分にはきちんと再開 いたしますので、よろしくお願いいたします。                   (休憩)                  ○宮島部会長  今年に入りましてから、給付と負担の在り方について、何回か議論を続けてまいりま した。まだ中間的な総括ができるという状況では必ずしもございませんけれども、今回 の議論で最も重要な部分でございますし、先ほどのお話のように、ほかの政府関係のい ろいろな会議や審議会でも議論が並行して行われ、また内閣府の世論調査、有識者調査 等の結果も出ましたので、この段階で一旦中間的な整理をしておきたいと思います。こ れはあくまで整理でございまして、決して何らかの方向性を打ち出すということではご ざいません。  昨年の10月に行いましたように、委員名の入った形で、こういったさまざまな議論が 委員から述べられ、あるいは意見書の形で出されておりますという整理でございます。 これに、世論調査などの結果なども付け加えながら、事務局の方からまず説明していた だきまして、その後、整理の仕方について御議論いただきたいと思っております。  それでは、事務局よろしくお願いいたします。 ○高橋総務課長  それでは、資料5−1と、資料6「年金改革に関する有識者調査」、資料7「公的年 金制度に関する世論調査」、これを併せてごらんいただきたいと思います。あちこち行 き来しますが御了承願いたいと思います。  まず、資料5−1「給付と負担の在り方に関する意見の整理」でございます。これは 給付と負担の関係について、左側に論点を立てまして整理をいたしております。昨年の 秋の時点で一回大枠の整理をやっておりますが、今年に入りましてから、マクロ経済ス ライドについて更に御議論いただいておりますので、併せて全体の整理を行ったという ことでございます。  まず、論点の(1)番目は、少子化の進行等の社会経済情勢の変化を踏まえて給付と負担 を見直す方法について、どのように考えるかということでございます。これにつきまし て、当然、意見の対立があるわけでございますが、給付水準を維持するべきであるとす る意見の中には、現行の給付水準維持の制度に加え、制度体系そのものを変更して税方 式を導入し、給付水準を維持するべきという御意見もあります。  それから、もう一方の軸は、保険料を固定することに賛成する意見ですが、更に、保 険料固定方式を採用した上で、現行の体系の中でももう少しやることがあるのではない かという御意見も幾つかあるわけであります。  有識者調査14ページ、世論調査では35ページを御覧いただきたいのですが、有識者調 査では、問2では、人口や経済の変動に応じて給付と負担を見直す方法についてどうい う方法がいいと思いますかという問いを立てまして、給付水準維持方式、これは従来方 式である給付負担双方の見直し方式、それから最終的な保険負担を固定して給付は自動 調整という選択肢を示し、保険料固定、給付自動調整について過半数には達していませ んが、一番賛成が多くなっています。  それから、世論調査の35ページであります。そのやり方について、有識者調査ほどの 具体性のある質問ではございませんけれども、この一番上の文章を記載したカードを調 査対象者に見せまして、はっきり読んでいただいて答えをいただいたというものでござ います。これは33ページの「今後の公的年金の給付と負担のあり方について」という問 いに続けて行ったものですので、その前の問いを御覧いただきますと、一番多い回答は 、保険料負担は重くなるのはしょうがないけれども、ある程度給付の引下げもやってほ しいというものです。これに続けて、給付水準の自動調整についてどう思うかというこ とについて聞いたものが、こちらの35ページということになりますが、この意見に対し て「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えた方が全体では合わせて45%ぐ らいの数字となっています。  それから、5−1に戻りますけれども、論点の2枚目でございますが、将来の最終的 な保険料水準についてどう考えるべきかということでございます。これにつきましては 、この部会の中では20%程度、あるいは20%を下回る水準、また税方式導入を絡めての 意見として、税方式導入のあかつきには、20%を下回る保険料水準でも給付水準は維持 可能というご意見があります。  有識者調査の15ページをごらんいただきますと、最終的な負担の限界につきまして、 具体的なパーセンテージを挙げて聞いております。年収の20%程度まで負担することで いいのではないかという意見が59%で非常に高い数字になっております。18%支持の御 意見は17%ですが、2割程度というのは、こちらもかなり賛成者が多いという結果にな っております。  それから、世論調査は30ページから34ページになりますけれども、こちらでは数字に ついては必ずしも聞いておりません。31ページの図13でごらんいただきますと、一番左 側のところに書いてございます。「現在の年金の給付水準を今後も維持すべきであり、 そのためには、今後の保険料負担が相当重くなってもやむを得ない(保険料率は年収の 約23%)」というものは現行制度における給付水準維持方式を聞いたものでございます けれども、これに対する賛成の方が18%いらっしゃいます。それに対しまして、給付や 負担の調整の方法について直接は聞いておりませんけれども、一般論として保険料負担 は重くなってもやむを得ないが、その上昇をなるべく抑えるために、給付水準もある程 度引下げるべきだという答えに賛成した方が46.7%です。これに対しまして、保険料水 準を上げない結果給付水準が大幅に下がってもやむを得ない(給付水準は3〜4割カッ ト)という答えについて賛成下秘とは12%ということです。年代別に見ても、さすがに こういった意見に賛成する方は、若い方にもそれほどいないということでございます。  2番目の選択肢に対しては、高齢者は少しその分減っていますが、どの年代をとって も大体半分以上が賛成です。  5ー1に戻りますが保険料の引上げ方についてどう考えるかということについては、 不可欠あるいは前倒しをするべきという御意見があります。3ページにまいりますけれ ども、長期にわたって段階的に保険料を引上げるというのは、負担を現役世代に先送り することになるのでよくないという御意見も出ております。これにつきましては、世論 調査、有識者調査とも特に調査項目はございません。  それから、資料5−1の3ページの(4)でございますが、4番目にマクロ経済スライド についての論点でございますけれども、マクロ経済スライドを行うときのスライド調整 率についてどう考えるかということでございます。これについては、まずマクロ経済ス ライドの適用には賛成する場合に、実績準拠法によるべきであるという意見と、将来見 通し平均化法によるべきという意見の2つか出ております。  それから更に、長寿化、少子・高齢化、運用利回りの低下などへの対応もスライドに 含めるべきではないかという御意見が出てございます。  有識者調査の16ページをごらんいただきますと、調整速度と、調整を行う具体的な方 法について聞いております。調整のスピードにつきましては、まず一般論として、賃金 上昇に伴う伸びを抑制し、緩やかに調整すべきという御意見が大多数となっています。  その次の17ページの問5に移っていただきます。この緩やかに調整していくべきだと いう方が全体の4分の3ぐらいであったわけですが、そういうお答えをいただいた方に 対して、更にどのように調整をしたらいいと思いますかということで、実績準拠法と将 来の分も前倒しして調整する将来見通し平均化法について聞いております。結果はほぼ 同数で、実績準拠47.1%、それから前倒しについては51%ということでございまして、 ほぼ半々だと受けとめてございます。  それから、資料5−1に戻りますが、4ページにまいりまして、給付水準の下限につ いて、調整をしていった場合に何らかの下限が必要ないかどうか。このという問題につ きましては、当部会では給付水準が大幅に下がった場合は保険料も見直すべきである、 または、何らかの基準で給付水準の下限を検討すべきであるという御意見がかなり当部 会では多くなっています。  これにつきましては、有識者調査の18ページの問6をごらんいただきますと、下限 を設けた方がいいという方が81%で圧倒的に多く、要らないという方が1割という結果 になっております。  資料5−1に戻りますが、今度は改定率の下限についてでございます。マクロ経済ス ライドを採用してスライドに対する調整を加えますと、例えば物価がマイナスのときに 更に踏み込んでマイナス改定するのか、あるいは物価上昇がプラスであっても、スライ ド調整をするとマイナスになってしまう場合にはマイナスにせずに、名目年金額を下限 として0%改定にとどめるべきではないのかといった議論があります。名目年金額下限 型支持の意見、物価下限型支持の意見、あるいはいずれも問題だということで、より踏 み込んでマイナス改定すべきであるという御意見も出ています。  これにつきまして有識者調査の問9、10でございますが、ここでは特に既裁定年金 との関係を聞いております。まず問9からいきますと、現在受給している年金の取扱い について、これまでどおりの水準を維持すべきという意見が13%、それに対しまして世 代間の公平を考えて調整するべきだという意見が77.7%という結果になっております。 問9で調整することについて賛成だといった77.7%の方々に、更に問10を聞いておりま す。実際に調整する場合の方法につきまして、名目額は減らさずに徐々に水準を調整、 これは実質的には名目額下限型を示唆しているわけですが、これに賛成の方が54%、そ れから更に踏み込み、名目額も徐々に、もしくは一気に減らして調整を行うやり方につ いて賛成していらっしゃる方が34%という状況になっています。  それから、ちょっと前後いたしますけれども、資料5−1の5ページになりますが、 既裁定者について一定の給付水準の調整を求めるということについて、どう考えるかと いうことです。これについて当部会につきましては、既裁定年金についても調整するべ きであるという御意見が大変多かったという印象を私ども持っております。  それから、有識者調査における結果は先ほど御説明したとおりであります。21ページ の問9ですけれども、既裁定についても踏み込むべきという賛成が77.7%ということで す。  それから資料5−1では、更に既裁定の既に年金をもらっていらっしゃる方について の給付水準調整に関連いたしまして、公的年金等控除の見直しについてもやるべきであ るという、これについても賛成意見が当部会でかなり出ております。  公的年金等控除については、有識者調査の23ページ、問の11でございまして、「見直 すことに賛成」あるいは「どちらかといえば賛成」という方が合わせて72%ということ でございます。「見直すことに反対」という方が、14%で、年代別に見ましても、70歳 以上の方であっても反対と言っている方は22%にとどまっていまして、既に受給されて いる方であっても、「どちらかといえば賛成」、「見直すことに賛成」の方は6割の数 字でございます。  5−1に戻りますが、マクロ経済スライドの指標としては、何が適当と考えるかとい うことについては、当部会ではまだ具体的な意見が各委員から出ていないという状況で ございます。  6ページへまいりますが、基礎年金と報酬比例年金について、別個に給付水準の調整 を行うことについてどう考えるか、つまり調整の仕方を一階部分と二階部分で変えるこ とについてどう考えるかということでございます。これは当部会におきましては、基礎 年金については、給付水準の調整はするべきではないという御意見、あるいは調整する べきだという御意見、それから調整する場合に2階部分とは別個調整すべきだという意 見が出ており、ばらばらに分かれている状況でございます。  最後に、国庫負担の問題でありますが、6ページの最後でございますけれども、基礎 年金国庫負担割合の2分の1への引上げについて、どのように考えるかという点でござ います。2分の1に引上げるべきであるという御意見が多数でありまして、基本的には 引上げ反対という御意見はないというふうに私どもは理解をいたしております。  それから、財源につきまして6ページ下の方でございます。消費税や年金税制の見直 しで生じた分を充てるべきとする意見、あるいは間接税を用いるべきではないという御 意見、それから国庫負担の引上げにつきまして、単純な2分の1ではなくて、低所得者 や、過去期間分の債務の償却等に注目したらどうかという御意見、あるいは国庫負担の 意義や財源の議論をした上での検討が必要といった御意見が出ているわけであります。  有識者調査におきましては、20ページの問8御覧いただきますと、基礎年金の国庫負 担割合の引上げにつきましては、3分の1を維持することに賛成という方が12%、2分 の1 への引上げに賛成の方が77.3%という結果になっております。以上であります。 ○宮島部会長  ありがとうございました。先ほど申しましたように、まだ給付と負担の各論の議論が 全部終わっているというわけではございませんが、これまでの議論と意見書での御意見 を中心に、今まで出た御意見を整理したものでございます。本日の資料には名前が入っ ていますが、今後、各論の議論が一渡り終わった段階では名前をとって、最終的に意見 を集約していくことにいたします。今日のものはそういった性格の資料だと御理解いた だければと思います。  いかがでございましょうか。これに対しては、書き方の要望はもちろんあるかとは思 います。総務課長、今後のこの資料の取扱いについて、どんな考え方でいるのかご説明 をお願いします。 ○高橋総務課長  別の場にこれをそのまま持ち出して使うということはありません。まだ詳細は分かり ませんが、来月の中旬ぐらいに親審議会の方で社会保障全体の給付と負担の在り方につ いての中間的な意見のとりまとめを行っていただきます。そのときに部会の方の状況を 聞かれた場合に、こちらとしてもきちっとしたものをある程度整理しておかなければい けないと考えています。また、他にもいろいろなところで議論されていますので、年金 部会としての意見を、ある程度お答えしていかなければいけないものですから、そのた めに整理をしておこうと考えたものです。 ○宮島部会長  それは、少なくとも、まだこういった論点の整理でいいということですね。どうぞ小 島委員。 ○小島委員  2つほどございます。1ページの一番上に「給付水準維持」のところに私の意見があ りますけれども、「また」以下のところで、「高齢者の医療費負担も増えていく」とあ りますが、これまで言っているのは、医療費にかかわらず、介護の費用、あるいは税負 担なども増えていくということを想定して、給付水準は下げられないという趣旨であり ますので、その辺は医療費だけということではなく、その他のことも付加していただけ ればと思います。  それからもう一つ、これは5ページの真ん中ですが、(7)の既裁定年金の水準調整の問 題で、既裁定年金について調整すべきという意見の中に、下から2つ目の「・」で私の 意見も入っています。この整理の中に私の意見を入れるのはどうかと思います。ここで 言っている意見の趣旨は、既裁定年金について、額を減らすとか、あるいは乗率を変え て一気に水準を引下げるべきというような趣旨ではなくて、既に年金を受給されている 方の水準を、見直しによって引下げることはできないだろうということです。基礎年金 を導入したときの改正以来、1、2階とも給付水準を引下げていますが、20年ぐらいか けて行っています。あるいは当時、大正15年以前に生まれたの人については、給付水準 については手をつけなかったということもありますので、既裁定年金の水準をもう一度 カットするということは、まさに年金権の侵害になりますし、そんなことはできないだ ろうというふうに思いますので、スライドで調整するというのが一つの方法ではないか というふうに思っています。そういう意味では、私は年金受給者についての物価スライ ドを、可処分所得スライドに戻すということを前提にして考えるべきだと思います。現 役の方の賃金がマイナスになれば、それが年金受給者の年金スライドに反映するという 趣旨で述べたはずでありますので、少し整理をしていただければというふうに思います 。 ○宮島部会長  基本的な議論をしながら、基本論ではこれでよいが、具体論としてみると趣旨がずれ るかという事だと思います。そういう論点はほかにも幾つかあると思いますので、その 点を気をつけたいと思います。ほかに。渡辺委員どうぞ。 ○渡辺委員  この整理の内容ではなく、資料5−1の6ページから7ページで国庫負担割合の2分 の1への引上げの問題の御説明があったんですけれども、御報告も兼ねて申し上げてお きたいことがあります。先週、社会保障審議会のメンバーの一部と政府の税制調査会の メンバーの一部との懇談会が初めてございまして、私もその一人として出させていただ きました。そのときに税制調査会の石会長の方から、社会保障審議会では国庫負担2分 の1についてどのような議論、あるいは前提となっているのかという御質問がありまし た。このメンバーでは翁委員と私が出ていましたが、私から、年金部会としては、2分 の1を前提として議論が進んでいると私は認識していると発言いたしました。先ほども 総務課長から御説明があったように、少なくとも2分の1への引上げに反対するといっ た意見がないという認識がございましたので、そのように発言いたしました。  更に石税調会長の方からは、改めてこういった合同会議をやっていこうという御提案 があって、社会保障審議会の貝塚会長の方からも同意される発言がありましたので、も ちろん私が出るかどうかは別としましても、そういった意味からも、また2分の1の議 論は出てくると思います。そこで発言してしまったものをいいですかというのもおかし いですが、御報告しておきます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。経済財政諮問会議の民間議員のペーパーの中には、この話 は出て来ませんが、我々としては、ある程度はまとまった意見を用意しておかなければ いけないと思います。最終的には、あるいは理念的には、別の姿が理想だけれども当面 はこうであるべきだという意見もありますが、今のところ、少なくとも2分の1へ引上 げることに対して、年金部会の中では反対論はないというふうに私も認識しております 。それを実際どういう形で行うかという議論は、これは確かに税制論議の場での議論で あるかもしれませんけれども、我々としても、それなりに意見をきちんと言っておく必 要があると思います。  引上げ問題以外についても同様ですので、意見書は既にある程度事前に見ていただい ていると思いますが、気になる点がございましたら、事務局の方にご連絡ください。要 するに、これを今すぐ何かに使うということではなくて、今後これを基に各論の論点の 整理を図っていくわけでございますが、その論点整理というのは、部会としての意見を まとめるための、いわば出発点になってきますので、この点はこういう形で修正してほ しいという具体的御意見をいただければ大変ありがたいと考えております。  それから、今後でございますが、まだここで議論すべき点が幾つか残っておりまして 、例えば企業年金のことについて、これまでほとんどここでは議論しておりません。企 業年金というか、私的年金と言うべきでしょうか、これについては、次回にまとめて議 論したいと思っています。そのほか、まだ年金制度の議論の中で残されている問題も若 干あると思いますので、あと二回ぐらいかけて残った各論の議論を一とおり行い、その 段階で、また改めて皆様方から意見書の提出をいただき、そこで次のステップである秋 に向けての総括的な議論に入りたいと思います。  特に第3号被保険者や、短時間労働者のところは、基本的な評価も含めて意見が食い 違っている点が多くて、事務局としても恐らく整理するのに大変苦慮すると思います。 今日の次世代支援の話なども若干それに絡んでまいりますし、そういう点も含め、その 際に総括的な意見書をいただきたいと思っております。具体的な日程の件につきまして はまだはっきりしておりませんので、それはこれから追って調整させていただきます。 次回以降のことに関して、何かありましたら。はい、どうぞ小島委員。 ○小島委員  検討課題ということですが、遺族年金の在り方、それと障害年金については、ほとん ど議論されていないと思います。これらについても、ぜひ落さずに議論すべきです。 ○宮島部会長  分かりました。ほかに、総括的な議論をする前に、再度議論をさせてほしいという要 望は何かございますでしょうか、大澤委員。 ○大澤委員  ただいまの資料の5−1は今までどういう議論をしてきたかというまとめですから、 入っていないのはある意味で当然なんですけれども、2ページ目の(2)将来の最終的な保 険料水準についてどう考えるかということで、20%程度にすべきなのか、もっと低くす べきなのか、下回っても給付水準の維持は可能なのか、このようになっております。こ のときに、負担水準が重いか軽いかというようなことで議論がされているわけなんです けれども、暗黙のうちに、どのくらいの給付水準なのかということと絡めて議論はされ ていたと思います。その際は、例の片稼ぎ世帯の給付水準、代替率というのが念頭に置 かれていて、経済財政諮問会議や、あるいは研究者の中で18%程度でよい、あるいは15 %程度ぐらいで抑えるべきという意見もあるというのは、これも暗黙のうちに、それで も52%程度、あるいは45%が所得代替率を保障できるのならいいではないかという前提 があると思います。山崎委員も私も、異なる世帯類型での所得代替率を示してくれと何 度もお願いしてきまして、井手委員からの要望があって、この度初めて出していただい たわけです。つまり、ほかの世帯類型だったら、この程度の所得代替率になってしまう 、それでも18%や15%と言い張れるのですかというような反論といいますか、事実を示 していくということが必要なのではないかなと思いますので、そのあたりをひとつよろ しくお願いします。 ○宮島部会長  分かりました。先ほど言いましたように、国庫負担の問題については経済財政諮問会 議のメッセージがはっきりしないところがあり、それが決まらない中で保険料の水準に ついて議論を行うというのは少し難しいものがあります。ただ、今のお話のように、負 担の上限についての議論は、給付と連動している話でありまして、それが先ほどのよう な世帯類型によって、幾つかのタイプに分かれるものですから、今日の追加資料で示し てもらったものについても、今後議論を更に詰めるべき点が出てくると思います。その ほか、短時間労働者に対する話はまだ残っている点もございますので、企業年金の話で 一回、もう一回は、これまでやってきた議論で残ってしまったものについて、きちんと 各論として議論をしておきたいと思います。日程は今後考えていきたいと思います。  ほかに何か御意見ございますでしょうか。それでは総務課長から。 ○高橋総務課長  ただいま部会長からお話がありましたように、次回は企業年金などにつきまして御議 論をいただきたいと考えております。開催日時については日程調整の上、改めて御連絡 申し上げます。  それから、その後のお話も出ましたけれども、私どもの心づもりを申し上げれば、6 月の下旬から7月の上旬で、2回ぐらいかけて給付の各論、先ほど小島委員からお話の あった遺族・障害年金等についての問題も含めて、御議論いただきたいと考えておりま す。 ○宮島部会長  それではどうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3316)