03/05/30 第8回社会保障審議会児童部会議事録               社会保障審議会児童部会                               第8回議事録                              厚生労働省雇用均等・児童家庭局                        第8回社会保障審議会児童部会議事次第                    日時:平成15年5月30日(金)13:00 〜14:57                    場所:経済産業省別館第825 会議室               1.開会 2.都道府県・市町村の役割、児童相談所の在り方等について 3.閉会 ○岩男部会長  それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから第8回「社会保障審議会児童部会」 を開催させていただきます。  本日は、大変お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございました。  まず、事務局から本日の出席状況について御報告をお願いいたします。 ○総務課長  本日は、阿藤委員、それから遠藤委員が所用により欠席という御連絡をいただいてお ります。そのほかの現在出席されておらない委員の方は、ちょっと遅れてお見えです。 ○岩男部会長  それでは、議事に移りたいと思います。  本日の議題は「都道府県・市町村の役割、児童相談所の在り方に等について」でござ います。  それで、児童虐待の防止等に関する専門委員会におけるこれまでの検討も踏まえなが ら、より幅広い視点から児童相談所等の在り方、それから市町村、都道府県の役割分担 等について御議論をいただきたいと思います。  また、今回から当部会で取り上げる本テーマの内容にかんがみまして、全国知事会、 市長会、町村会の方にオブザーバーとして御参加いただくことといたしました。今後、 このテーマについて御意見なども伺っていきたいと思っております。  それでは、まず「児童虐待の防止等に関する専門委員会」と、前回設置を御了承いた だきました「社会的養護のあり方に関する専門委員会」の検討状況について、事務局か ら御報告をお願いいたします。 ○総務課長  それでは、資料にしたがいまして、児童虐待の防止等に関する専門委員会と社会的養 護の在り方に関する専門委員会の状況について、御報告いたします。  資料の1をご覧ください。前回お話をいたしましたように、今後の児童部会の進め方 といたしまして、これまで12月から児童虐待等に関する専門委員会で検討が進められて きておりますが、この専門委員会と併せまして、社会的養護の在り方に関する専門委員 会を設置した上で、次回の児童福祉法の制度見直し全般について、児童部会として議論 をしていただく、中でも、当面、部会本体といたしましては、都道府県・市町村の役割 、児童相談所の在り方を検討していただくことにしております。  そこで、資料2でございますが、これは児童虐待の防止等に関する専門委員会の資料 でございますが、そこにございますように12月に設置されまして、これまで専門委員会 本体は3回、それから3つの検討チームで、そこにございますように検討をしていただ きました。それらの総まとめの議論として、次回6月2日に4回目の専門委員会が予定 されております。  5月の19日に開かれました第3回の専門委員会におきましては、資料の3にございま すように各検討チーム、3つの検討チームがあるわけですが、それぞれの検討チームで 議論されたことにつきまして御報告がございました。これを6月2日の専門委員会で更 に議論を深めようという状況でございます。この資料3につきましては、後ほど、児童 相談所あるいは都道府県・市町村の役割に関わるものについて若干ふれさせていただく ことにしております。  それから、資料4でございますが、社会的養護の在り方に関する専門委員会の方でご ざいます。  これにつきましては、前回設置を御了解いただきまして、5月23日付で設置をされ、 同日、第1回目が開かれております。  メンバーにつきましては3枚目にございますように、松原委員を座長、庄司委員を委 員長代理ということで発足をさせていただき、それから2枚目にありますような「社会 的養護のあり方について」でありますとか「施設養護のあり方について」「家庭的養護 のあり方について」等々の検討項目で議論をしていこうというように決まってございま す。  以上でございます。  それから併せまして、資料の7をごらんいただきたいと思います。前回、昨年の秋に まとめていただきました、児童部会における今後の主要な論点と、今後の検討課題につ いての関係について少し説明をするような資料を作成するようにという話がございまし たので、十分御要望にお応えしているかどうかわかりませんけれども、論点と対応状況 について整理をさせていただきました。  対応状況といたしましては、既に国会に次世代育成支援対策推進法案でありますとか 、児童福祉法の改正案を出しておりますので、そういう形で対応をさせていただいてい るものであるとか、あるいは別途、次世代育成支援施策の在り方に関する研究会を設け て検討しているような状況もございますので、そういう形で対応しているというように 整理したものもございます。  それから経済的支援の在り方のように、前回も御説明しましたけれども、政府与党の 協議の場で検討をされるというようなものであります。あるいは今ちょうどいろいろ議 論が進んでおりますけど、財源の在り方などにつきましては、経済財政諮問会議で議論 になっています。  当児童部会におきましては、虐待を中心に議論をしていただいておりますので、編み かけで、印を付けさせていただいた部分が論点の中でも特に御議論いただきたい点でご ざいます。  なお、お手元に大きな冊子を配付させていただいております。これは私どもの方で14 年度にUFJ総研の方に委託をしまして、子育て支援策等に関する調査研究ということ で報告書がまとまっておりますので配付をさせていただきました。これにつきましては 岩男先生、あるいは網野先生に大変お力を入れていただいたものでございます。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、次に児童相談所の概要及び現状等について、事 務局から御説明をお願いいたします。  また、本日は津崎委員から、児童相談所の現場の立場から問題意識等について、その 資料が提出されておりますので、後ほど、津崎委員からも諸課題について御説明をいた だきたいと思います。そして、その後で御議論をお願いしたいと思います。  それでは、事務局からお願いいたします。 ○総務課長  それでは、先ほど、ちょっと触れさせていただきましたが、資料3を見ていただけれ ばと思います。  これは、児童虐待の防止等に関する専門委員会で、まだ協議途上のものということで 、今月19日に提出させていただいた資料でございます。この中で、本日以降議論してい ただく事項に関わりの深そうな点について若干触れさせていただいた上で、児童相談所 等の資料について御説明をさせていただきます。  まず、3ページでございますが「取り組みの方向性」というのが一番下の方にござい ます。例えば、「地域の実情に応じた支援体制の強化をはかるためには、関係機関それ ぞれの役割を明確化し、さらなる取り組みを促すと共に、民間の相談機関も含めた機動 力のある連携体制を組むことが必要である。その際、特に住民に最も身近な市町村にお いては、子どもに関する一義的な相談に積極的に関わるなど、虐待の予防についての役 割を強化することが必要である。」でありますとか、あるいは5ページでございますが 、「虐待相談件数や緊急事例の急増等により、児童相談所においては、現行制度上、担 うこととされている幅広い相談業務の全てに必ずしも対応しきれていない状況にあるこ とを踏まえ、例えば、一部の業務を他の機関に委譲し、児童相談所の業務のスリム化を 図るなど児童相談所のあり方等について見直しを検討することが必要」。  更にその下ですが、「児童相談所の機能の強化を図るため、職員の専門性の向上や医 師、保健師・助産師・看護師や弁護士等の幅広い専門職種との連携強化を図るとともに 、一時保護所のあり方についても検討することが必要」という点でありますとか、ある いは7ページでございますが、「児童相談所のあり方と併せ市町村の役割を検討するこ とが必要。その際、市町村が子育て支援に果たす役割、市町村保健センター等における 保健事業の実績等も考えあわせ、より積極的に役割を強化する方向で検討することが必 要。併せて、保健所と市町村保健センター等における役割分担についても検討すること が必要」。  それから、その下ですけれども、「とりわけ市町村レベルのネットワークは、児童虐 待の発生予防から自立に至るまで大きな役割を果たしうることから、引き続きその設置 を促進することが必要」等々、議論が行われておるところでございます。  更に、15ページでございますけれども、「取り組みの方向性」のところでございます が、「虐待の進行防止、家庭復帰後の支援のために民間も含めて市町村の在宅支援機能 を充実するとともに、市町村レベルでの子育て支援のさらなる充実・展開が必要である 」というような点が指摘をされているところでございます。  そこで、資料5の1ページ目から御説明をさせていただこうと思います。  まず、児童相談所についての資料でございます。児童相談所につきましては児童に関 します各般の問題につきまして、幅広く相談に応じまして、個々の児童、家庭の状況に 応じまして、効果的な処遇を行うための行政機関でございます。  2にありますように、設置主体は都道府県・指定都市になっております。  業務の中身といたしましては、相談、判定に基づきまして必要な指導でありますとか 、子どもの安全を確保するために一時保護を行うとか、更には児童福祉施設への入所措 置等を行うというような仕事を行っております。  職員につきましては、児童相談所の規模によっても異なりますけれども、所長さんの ほかに各種相談に対応しまして、ケースワークを行われる児童福祉司や、心理診断やカ ウンセリング等を行う心理判定員という方がおられます。  職員の総数は14年度で6,502 人ということで、児童福祉司さんはそのうち1,627 人、 それから心理判定員の方が872 人ということになっております。  設置か所数につきましては、15年の5月1日現在182か所ということで、そのうち一時 保護所を併設しているものが109 ヶ所ということになってございます。  2枚目は「児童相談所における相談援助活動の流れ」ということでございます。3枚 目には、児童相談所で行っております相談の種類、あるいはその主な内容が出ておりま す。大別しますと、養護相談、この中に児童の虐も入っております。それから、保健相 談、障害相談、非行相談、養育相談というように分かれております。不登校、あるいは しつけの相談は育成相談に含まれております。  4ページを見ていただきますと、児童相談所におけます相談受付件数の推移が出てお ります。昭和40年代から60年代前半ぐらいにかけましては横ばいで推移しておりますけ れども、平成に入ってから増加傾向が続いておりまして、13年度におきましては、そこ にございますように38万件を超えるというような状況になっております。  5ページに相談の種類別の推移が出ておりますけれども、内訳で見ますと障害相談が 多くて約20万件ということで半数以上を占めております。最近は、虐待が含まれており ます養護相談が増加をしておりまして、6万件を超えています。  虐待についての資料が7ページから出でおります。これは平成13年度におけるものが 直近のデータとして出でおりますが、児童の虐待相談は約2万3,000 件となっておりま す。児童虐待につきましては平成2年度からデータを取り始めていますが、この時点で1 ,000 件をちょっと超えるぐらいだったわけですけれども、それから見ますと約21倍の増 加というような状況になっております。  件数では、児童虐待というのは、先ほどの約38万件の中では6%という程度にすぎな いわけですけれども、処理に要します期間が長期に及んだりいたしますし、また非常に 親御さんとの関係で難しい局面に立ち至るというようなこともございまして、児童相談 所といたしましては虐待の対応について追われているというような状況になっておりま す。  特に最近では、親の意に反する施設入所措置を行うために、家庭裁判所に承認申請を するような行政権限を発動するような事例も増加しております。10ページに、その辺り のデータが出てございます。  11ページ以降は、職員の構成、あるいは児童福祉司の配置についての資料でございま す。先ほどもお話しいたしましたように、児童相談所には児童福祉司、あるいは心理判 定員、医師を始め、さまざまな職種の方がいて、それぞれの仕事をされています。  中でも児童福祉司さんについてのデータが12ページ以降に出でおりますけれども、児 童福祉司の配置につきましては、そこの「参考」で児童福祉法施行令の7条が出ており ますが、人口10万から13万人に1人という標準が定められておるわけですが、ここ数年 、虐待問題に対応するというようなこともございまして、真ん中の方にございますよう に地方交付税の措置の充実を図ってきております。  人口170 万人の標準規模団体についてみますと、従来、ずっと16人できていたわけで すが、12年度以降増やしていただいておりまして、15年度では23人になっております。  実際の配置につきましては隣りの13ページに出ておりますけれども、下の辺りにござ いますように児童福祉司の所管人口は、現実には7万8,000 人ぐらいになっております 。ただ、県ごと、あるいは指定都市ごとにかなり相違をしておりまして、一番管轄する 人口が多くなっているのは富山県でございまして、12万人ちょっとと。それから、一番 少ない、積極的に児童福祉司さんを配置をしているということになろうかと思いますが 、青森県は2万5,000人 ということで、かなり地域によって格差がございます。  14ページでございますけれども、児童福祉司さんの話をいたしますと、専門性がよく 議論になりますが、任用資格についての資料を載せてございます。  任用資格といたしましては、そこにございますように心理学、教育学等を修めて大学 を卒業された方、あるいは社会福祉士などが定められておるところでございます。  なお、15ページにございます児童福祉司の任用要件の中で指定校というような言い方 がしてございますが、これは現在3校でございまして、国立の武蔵野学院の養成施設、 あるいは秩父学園の養成施設、さらに上智大学の上智福祉専門学校とになっております 。  それから、指定講習会というものがございますが、これは全社協の方で通信教育をや られています。  以上が児童相談所等についての資料でございます。続きまして福祉事務所についての 資料でございます。  福祉事務所は主といたしまして、都道府県、そして市が設置しております。郡部(都 道府県が設置しているもの)と市部の福祉事務所、併せまして平成13年には1,195 ヶ所 設置されております。  そのうち家庭児童相談室を設置している福祉事務所が958 ヶ所ということになってお ります。家庭児童相談室におきましては、家庭あるいは児童の福祉に関するより身近な 相談機関といたしまして、各種の子どもあるいは家庭に関する相談を取り扱っておりま して、最近では、やはり児童虐待についての相談についても相当程度増えてきています 。下の方に相談受付件数のデータがございますが、総数として82万くらいの相談件数と なっています。  そのうち家族関係のところに内訳として虐待についてデータがございますが、8万件 ぐらいということで9.8 %の割合を占めております。  なお、家庭児童相談室の職員でございますが、家庭相談員ということで13年度で1,622 人ということになっております。  その家庭児童相談室の概要につきましては17ページに資料が出ております。これは昭 和39年に出されました事務次官通知に基づいて福祉事務所内に設置をされておるもので ございます。  次に18ページに「児童委員について」の資料を載せてございます。市町村の区域に置 かれております児童委員は、民生委員を兼ねて児童及び妊産婦の福祉の増進を図るため の活動を行うということになっております。  また、最近の児童問題の重要性の高まりというようなこともございまして、平成13年 には児童福祉法が改正になって、児童福祉に関する事項を主に担当する主任児童委員の 制度も法定化されておるところでございます。  そして、(5)のところにございますように、児童の虐待の防止に関しましても通告の 仲介等の役割を担っておられます。全体として、全国で20万6,000 人の方々が民生児童 委員ということで、うち主任児童委員は2万人ちょっとというような状況になってござ います。  次に先ほどの虐待の専門委員会での議論の中でも市町村ネットワークのことが出てお りましたけれども、19ページには市町村のネットワークの資料を出しております。  市町村におけます児童虐待防止の取り組みといたしまして、平成12年度から虐待防止 市町村ネットワーク事業をはじめまして、市町村レベルで虐待対応のネットワークの設 置を促進しております。  14年の6月現在で設置箇所数が702 ヶ所、それから計画中のものを含めますと1,025 ヶ所になっています。これは21ページ以降の資料に出ています。  そして、市町村のネットワークにどういう方々が参加されておるかというデータが24 ページに出ております。参加されておりますのは児童相談所、福祉事務所、保健所等の 地域保健機関、教育委員会、警察、保育所、幼稚園、小・中学校というような機関と、 民生委員でありますとか、あるいはお医者さんというようなことで御参加をいただいて おります。25ページにグラフが出ております。  26ページには、ネットワークの活動状況のデータが出ております。中身を見ますと代 表者会議等、定期的な開催と、それとはまた別に実務者会議、あるいは事例検討会とい うような形で個別ケースに対応していくというようなやり方と、いろいろなものが混ざ っています。  27ページ以降は、予防の面でこれから非常に重要になってくると思われます、保健分 野の取り組みについての資料でございます。  今世紀に入りまして、母子保健を進めていく基本方針として、健やか親子21というよ うな国民運動計画を私どもでつくっております。その中でも今後の母子保健の取り組み の主要課題の1つといたしまして、27ページにございますように児童虐待対策を位置づ けておるところでございます。  次の28ページにございますように、昨年6月には地域保健におきまして児童虐待防止 対策の取り組みを促すような局長通知を出させていただいております。また、今年の5 月1日には地域保健対策の推進に関する基本的な指針というものが地域保健法を受ける 形で告示として出されておりますけど、その中で児童虐待についての取り組みも明示を されるというような改正が行われております。  また、31ページ以降にございますように、これは大阪府の佐藤先生にやっていただい た厚生労働科学研究ですが、それに、虐待について市町村あるいは都道府県の保健所等 の取り組み状況が出ています。市町村保健センターの約7割、それから市町村につきま しても約6割事例を取り扱っておるというような結果になっております。市町村の虐待 への取り組みが相当程度進んでいることがわかると思います。  最後に、市町村の役割を高めていこうということが1つの方向になっておることが御 理解いただけると思いますけれども、そうした関係の資料といたしまして、33ページに は昨年の10月に地方分権改革推進会議での提言一部を出させていただいております。下 線部が児童に関わる問題でございますけれども、1つは児童虐待等について市町村の役 割の強化ということで、これにつきましては平成17年度までを目途に検討して、結論を 得なさいとなっております。次に、児童相談所、児童福祉司を含めた児童福祉サービス の在り方についての検討ということについては、平成16年度を目途に結論検討というよ うな言い方になっております。  下の方では、障害児の施設入所決定事務を市町村へ委譲ということがありますが、こ れにつきましては平成18年度までを目途に検討、結論というように指摘されております 。  そして、児童に関するもの、あるいはほかの福祉法におきまして、事務の実施主体が どうなっているかを御理解いただくための資料が次に付いております。  児童福祉法が34ページに出ておりますけれども、これを見ていただくとおわかりにな りますように、児童福祉法におきましては保育関係を除きまして、おおむねまだ都道府 県、指定都市、すなわち児童相談所を中心にして、業務が行われています。  それから、次のぺージに身体障害者、知的障害者、あるいは精神保健福祉法が出てお りますが、障害者につきましては、おおむね市町村への事務の委譲が進んでいます。  36ページを見ていただきますと、介護保険法が出ていますが、さらに老人福祉法も出 ておりますが、市町村が中心になって事務を担っていることがわかるかと思います。  また、生活保護法につきましては、福祉事務所で実施しておりますので、町村では実 施されていないというような状況になっています。福祉サービスにつきましては、ここ 十数年、市町村を中心に福祉サービスを提供していこうというような方向で改革が行わ れておりますけれども、ある意味で児童の分野で残っているところをどうしていくかと いうことが課題になっていることが、おわかりいただけるかと思います。  そこで最後に37ページでございますけれども、今回、次世代育成支援対策推進法案、 それから児童福祉法の改正案を国会に提出させていただいております。残念ながら、ま だ審議が始まっておりませんけれども、近いうちに審議が始まるのではないかなと期待 しておりますけれども、その中でも市町村の役割を重視するような方向で、例えば児童 福祉法の改正案の中でも市町村における子育て支援事業の実施について努力義務が課さ れたり、あるいは情報提供の問題等も今回市町村の役割として新たに規定をするという ことにいたしたところでございます。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、津崎委員から御説明をお願いいたします。 ○津崎委員  それでは、資料6をごらんいただきたいと思います。  いわゆる「児童相談所の現状から見た主な課題」ということで、現在の児童相談所の 現場サイドでとらえました課題点をポイントを絞ってそこに掲載させていただいており ます。それに基づいて、現状での概略的な問題点を御説明申し上げたいと思います。  まず、はじめに「1 児童相談所の設置」というところでございます。  現状ですが、都道府県、政令指定都市を含みますけれども、そこに設置義務が課せら れています。  一方、児童相談所の運営指針には人口50万に1ヶ所の必要性が指摘されているところで す。  ただし、現時点での全国の設置数は182 ヶ所ということですから、人口が50万に1ヶ 所よりは少ないということでございます。通常は県に1か所の中央児童相談所があり、 複数のブランチの児童相談所があるということで、ブランチと中央ではかなり規模であ るとか、スタッフの充実度といいますか、それには多少差があるということがあります 。  ただし、機能はそれぞれが区域割をしておりますので、一定の区域の中の独立した実 務を果たしているということでございます。  数的には限られていますので、より身近な児童相談機能へのニーズがあるという部分 がございます。  検討課題のところに書かせていただいております「必置規制撤廃の意見と複合化の流 れ」というところですが、要は都道府県及び政令指定都市に設置義務が課せられている わけですが、その設置義務そのものを撤廃してはどうかという意見があります。  これはどういう流れかといいますと、各自治体ごとに児童相談の体制というものが、 かなり組み替えがされてきております。例えば、ある県では生活相談と児童相談を一体 化したような体制、あるいは女性相談と児童相談を一体化したような動き、あるいは障 害関係、医療も含む相談と児童相談を一体化したような、そういう複合施設化です。そ ういう流れがありまして、この必置規制があることが自由な組み替えということを、か えって難しくしているのではないかという部分もあって、自治体ごとの自由な児童相談 の在り方ということを考えたときに、必置規制を撤廃してはどうかというふうなことが あるわけです。  ただ、これに関しては先般の専門部会での論議にもありましたが、児童相談所が最近 は権限発動の機能をかなり重視するようになってきておりまして、その機能が必置規制 を撤廃して自由な組み替えになってきたときに、その責任といいますか、権限の部分が どのように処理されるのかということが定かではない部分ありますので、必置規制の撤 廃ということについては慎重な検討が必要だろうというふうな方向性が確認されている ところです。  それから、中核市への設置可能化の意見、これはより児童相談所の数を増やすという 意味で、中核市にも相談所を設置できるようにしたらどうかということです。これに関 しましては、数を増やし、住民の身近になるという点ではメリットである。しかし、30 万規模程度の中核市で児童相談所が組織的に専門性の維持も含めた、そういう内容的な ものも保障させた児童相談所の独立した運営が、可能かどうかというふうな点での十分 な検討が要る。  あるいはまた、一時保護所も、現在すべての児童相談所に一時保護所が併設されてい るわけではありませんが、そういう中核市まで広げたときにそれぞれが独立した一時保 護所を運営維持することが可能かどうかという部分でも、かなり困難さがあるだろう。 あるいは、各施設への措置機能も含めた、もっと広域的な措置業務の調整ということが 中核市レベルで、可能かどうかということの検討も要る。  そういう意味では中核市すべてに児童相談所の設置ということについては、かなりま だ無理があるのではないか。ただ、意欲があるところ、体制の整備が可能なところは中 核市に関わっても設置ができるというふうな選択性の余地を残した設置ということの方 が現実性、妥当性があるのではないかという、これも専門委員会の中での論議があった ところです。  「2 児童相談所の体制」という部分ですが、現状のところ見ていただきたいのです が、まずは相談、判定、措置、一時保護所の4部門制がとられており、そこに児童福祉 司、心理判定員、医師、保育士、児童指導員等の専門スタッフが配置されています。最 近では特に、虐待相談等により、複数での対応、一人での対応ではなかなか難しいケー スが多いですから、二人、場合によっては三人、四人という複数のチームで対応しない といけない。  あるいは夜間の対応、あるいは休日の対応、そういう対応ニーズが増大しているとい う状況の中で、現在の職員では対処しきれないという現状が出てきているということで ございます。  心理判定員は、先ほどの説明の中でも判定の業務、特に障害の認定業務、障害相談が 全体の5割強の割合にあるわけですが、それの認定業務に相当の比重がとられていると いうふうな実情がございますので、虐待等の新たなニーズに心理判定員が対応できる余 力がないという実情があるということでございます。  一時保護所は24時間職場ですから、ローテーションによって24時間体制の運営を行っ ていますが、ここは緊急保護的な要素も強いですから、養護相談の子ども、それから被 虐待児、いわゆる非行の子ども、不登校の子ども、軽度の障害の子とかが、混合で処遇 をされています。その中で、場合によっては子ども同士がトラブルに巻き込まれるとい うふうなことがありまして、安全で安心できる保護の場という点を踏まえたときに、い ろいろ課題が多いという実情があるということです。  児童虐待の増加によりまして、かなり大きな児童相談所の場合は中に虐待対策班とか 虐待対策課とか、今は別個の組織を工夫するところが増えてきているわけですが、更に その虐待がいつ発生するかわからないという特質をかんがみたときには、従来の勤務時 間内だけの対応ではだめで、24時間365 日の緊急相談、緊急通報に対応できる体制が必 要である、そういう役割を相談所として何らかの形で整備をすべきであるという声が大 きくなってきているという状況がございます。  次のぺージの検討課題のところに書かせていただいている内容ですが、現場サイドで は児童福祉司、それから心理判定員、医師、一時保護所の児童指導員等、要員の拡充を 望む声が大きいというふうなことでございます。  児童福祉司の数は、先ほどの説明にもありましたように、徐々に増員に関して努力を いただいております。現在、約8万程度に1人くらいの配置までなってきていると思い ますが、現場サイドでは、例えば複数での対応、時間外のニーズの拡大、そういうこと も踏まえると最低5万に1人ぐらいの配置がいるのではないかというふうな声が強いと ころです。  心理判定員につきましては、配置の基準そのものもありませんので、これについても 場合によっては配置の基準等も踏まえた職員の増強体制が要るのではないか。  医師等も最近は複雑なケースが多いですから、当初の関わりの時点でのアセスメント であるとか、後のケアの面での医療的配慮ということを考えたときに、医師の役割も非 常に大きいわけですが、現状では医師の配置が非常に不十分であるというふうなことも ありまして、そういう専門職種の増強ということが、現場の中での大きな課題というこ とになっております。  児童福祉司の必置規制の見直し、これは先ほどの児童相談所の必置規制の見直しと連 動した部分で、児童福祉司についても必ずしも必置規制を置く必要がないのではないか という意見があるんですが、これに関しては地方分権的な流れでは、一定のそういう考 え方も理解できますけれども、先ほどと同じで権限発動の役割は職員の質の確保という ことを考えたときに、必置規制を外すことによって、その質の確保ができるかどうかと いうところが、十分吟味が要るという部分でございます。  職員の専門性が強く期待されており、研修、スーパービジョン、任用、人事異動等に 対する水準の向上と維持が課題になっています。  児童相談所といいますのは、単なる任意の相談の機関ではなくて、他の機関で対応で きないケース、それが最終的には児童相談所に持ち込まれて、そこに来たときに何らか の形で、その問題に対して対処しないといけない、ある意味では最終の専門機関でもあ るわけです。  そういう意味でその課題に対して対処するためには、相当の専門性が確保されていな いとできないという状況があるわけですが、残念ながら一方で、行政機関でもあります ので、任用であるとか異動等に関わっては、かなり課題が多い。  例えば、児童福祉司の勤務のローテーションも多くの場合には3年ぐらいで異動にな っていくという自治体が多いわけです。今の現状からいきますと、先ほどの児童福祉司 に規定された専門性をクリアしているところは約半数ぐらいで、あとの半数ぐらいは一 般行政職の職員が、児童福祉司をしているという実情があるわけです。  そうしますと、一般行政職の人が3年程度で異動をしていくということになったとき 、本当の専門性の維持が可能かどうかということで、この辺は外部の機関、あるいは外 部のいろいろな関係者等からは、もっと児童相談所の専門性の維持を図らないといけな い、そのための専門スタッフの充実、研修、スーパービジョン体制等を抜本的に強化す るための努力が要るというふうに指摘を受けているところでございます。  一時保護所の体制強化と、拡充ということですが、先ほどにも少し触れましたように 、いろいろな子どもが混合処遇をされている。そのことの解消ということも必要だし、 多くの場合は集団処遇で大部屋の処遇になっているわけです。子どもによっては大部屋 の処遇が適切でないような子どももおりますから、もっと個室の確保というふうな設備 面での配慮が要るだろうし、例えば、被虐待児のシェルターとしての機能を果たすとい うことであれば、例えば県に1か所というふうな数では、機能がかなり限られるのでは ないか、もっと数の確保ということも要るのではないか。  あるいは、難しい子どもが最近は保護所の中にたくさん入りますから、そういう子ど もたちの個別ケアも含めた人的配置の拡充。それから、学校にいっている年齢の子ども は一時保護所から地元の学校に通うという体制は今は取られていないわけです。  一時保護されている間は、多くの場合は保護所の職員が学習指導するわけですが、教 育の保障という観点からしたときに、中の職員の指導という形だけでいいのかどうか、 学習保障についても、もう少し拡充が要るのではないかという意見があります。  あるいは、保安体制というふうに書かせていただいておりますのは、最近は職権で保 護するわけです。保護者の了解がないまま、必要性に応じて職権発動して保護します。 そうしますと、保護者が押しかけてきて取り返しに来るわけです。そこで保護者と児童 相談所の職員とのトラブルが、各現場で頻発をしているという状況があります。以前は 一時保護所というのは、開放的な施設でないといけないと言われていたわけですが、余 り開放的だと外部からすぐに進入されてしまうわけです。そうすると連れ戻されてしま うというふうなこともありまして、今はシェルター機能としての役割を担うということ であれば、保安体制の拡充ということも検討が要るということでございます。  それからアセスメント機能の保障、これはどういうことかと言いますと、一時保護を されて、その間に次の処遇に向けた評価をするわけです。そういう総合的な子どもの評 価をするわけですが、評価をするためには子どもが安定した状態にいないといけない。 そういう意味でも今の保護所がアセスメントの機能を保障できるような、そういう場に なっているのかどうかという点でも、課題が多いというふうなことです。  日弁連辺りからは、保護所が外部から見えにくいと言います。そういう意味では保護 所内部の権利擁護といいますか、あるいは福祉の水準の問題という意味での透明性の確 保ということも課題ではないかというふうに指摘されているところです。このように、 かなり保護所に関しては多くの課題が指摘されているという実情がございます。  そこに書いてありますが、「シェルター機能であれば、分散するなど多様な保護の場 が必要」。例えば、児童自立支援施設での保護枠の確保や、里親の活用等も検討課題。 これは専門委員会の中で出てきている意見ですが、保護所そのものを増設して整備する というのは、かなりの作業量、あるいは運営上の問題や予算であるとか、人手が要りま すので、そういう意味では、例えば非行の子との混合処遇ということを解消しようと思 いましたときには、児童自立支援施設での保護枠の確保、一時的な保護ができる枠の確 保、あるいは里親の短期里親ということが一つの拡充の方向で出されていますが、そう いうものも一時的な保護の場としての検討に値するのではないかというふうな意見もあ ります。  「24時間、365 日、緊急通告や緊急相談に対応できる体制」。これは今の相談所とい うことをそのままの状態にして、その相談所が24時間365 日の体制をとるということは 、かなり無理がありますので、この辺の体制整備をどういう形でなら可能なのかという ことを、より検討していく必要があるというふうなことでございます。  続きまして、「児童相談所における相談、対応」ということですが、現状はそこに書 かせていただいておりますように、児童相談所の援助は社会診断、これは主にソーシャ ルワーカーが果たす役割です。それから、心理診断、これは心理判定員が果たす役割で す。それから、医学診断。それで行動診断というのは、一時保護所に入っているときの 行動観察に基づいて行う診断。そういう総合的なチーム処遇と、ソーシャルワーク支援 ということが児童相談所の基本的な援助のスタンスということになっています。  一方、児童相談所は行政機関としての性格とクリニック相談機関としての性格を併せ 持っていますので、その援助が行政措置的な援助とクリニック相談的な援助に分かれる わけです。これが混合一体となっていまして、現場の中ではどちらの援助でもって対応 していくのかということが、ときには混乱するような部分もあるということです。  ただし、近年は更に行政措置の中でも権限発動の部分、立入調査、職権一時保護、家 庭裁判所申立て、そういう、かなり強権で関与していくような部分が虐待問題等との絡 みの中で重視されてきているという実情があります。  児童相談所の主な相談は、先ほどの課長さんの説明ありましたように、大きく分けま すと、養護相談、非行相談、障害相談、育成相談に分類できますが、それの割合はそれ ぞれ養護相談が16.4%、非行相談が4.4 %、障害相談が52.9%、育成相談が17.7%とい う割合になっているということです。  ただし、それぞれの相談の中身によりまして、具体的な援助のときの対応の仕方が変 わってきまして、その業務比重がどのぐらい差異があるのかということを、実はここに おられます柏女委員が中心になられて、平成7年度に調査された結果があります。それ によりますと、障害相談を1.0 の業務量とすると、非行相談が7.0 、養護相談が5.4 、 育成相談が2.5 、育成相談の中の不登校相談が6.5 、それ以外は1.3 というふうな業務 比重の結果が出たというデータがあります。  このときには虐待相談というのがカウントされていないのですが、虐待相談の場合は どの程度になるのかという、同じような調査データはないのですが、非行相談が7.0 と すると、その倍ぐらいの業務量がかかるのではないかということになりますと、14.0か1 5.0くらいになってくるのかなというふうな実感ではございます。  全国の相談総数ですが、平成13年度が38万強です。これは先ほどの説明にもありまし たように、近年増加傾向を示しています。これは1つの流れでは、ある時期に電話相談 を実施するようになってきたということで増えている部分があります。  それと、最近の相談の流れで見ていきますと、やはり社会の長引く不況の影響が大き い、特に養護相談なんかの増加の中で見ていきますと、不況の影響、あるいは児童虐待 の増加の影響、そういうものが総数としての児童相談所の相談件数を上げている、そう いう様子があるのではないかということが、現場実感ではするところです。  そういう相談件数全体が増えておりますので、全国的に特に都市部では一時保護所が 満ぱい、あるいは児童養護施設が満ぱいで入れないという事態が出てきています。そう しますと一時保護所等は緊急的な避難の場という意味合いもありますので、そこがいっ ぱいで入れないということでは、かなり課題の状況があるということです。  相談全般に個別のケース背景が非常に複雑困難になってきておりまして、以前よりも 労力がかかるようになってきています。また、1機関だけの対応では難しくて、地域の 各機関との連携、いわゆるケースマネージメント、たくさんの機関が関わって1つのケ ースを援助していく、そういう必要性も増しています。あるいは、保護者からの不服申 立て、情報開示請求、権利擁護などへの配慮等も必要になってきておりまして、要は一 つひとつのケースにかなり労力が割かれるという事態も増えてきているというようなこ とがあります。  児童相談所が職権発動や介入支援を強化することにより、保護者との摩擦やトラブル が非常に増えてきておりまして、そのことが現場の混乱や職員のストレスの増大を引き 起こしているというふうな実情もあります。  検討課題のところですが、要はこれは前回、たしか網野委員が御指摘いただいたと思 いますが、児童相談所が介入と支援の相矛盾する役割を担っていることからくる問題点 、これを何らかの形で解消していく必要があるのではないかということが現場実態から すると、非常に大きな課題としてあります。「同一機関の同一職員が、相矛盾する役割 を担うことから生じている困難を、介入や支援機能の分散等により軽減する必要がある 」というふうなことでございます。この辺も専門委員会の中でるる論議になっていると ころです。  保護者指導と子どもの個別ケア。ニーズに乏しい、自ら相談しようという意欲に乏し い保護者が多いですから、そういう保護者への司法関与を含めた指導枠組みづくり、あ るいは援助のプログラムの充実普及、また課題を抱えた子どもの個別ケア保障の在り方 が、今、非常に問題になっていると言えます。子ども自身がそれまでの養育プロセスで トラウマを抱えていますが、それを単に施設の中で保護して、解消というわけにはいか ないわけですから、そのトラウマをどういう形で治療、あるいは個別ケアしていくのか ということが大きな課題になってきているということです。  児童相談所の処理は大半が在宅支援であります。そのためには地域ネットワーク体制 の推進と、地域での支援を可能にするためのマンパワー、あるいは複雑な家族に対して 、いろいろなサポートができるサポート資源の創出、そういうことが在宅支援を強化す るという意味合いにおいて非常に重要になってきているということでございます。  一方、不登校児童がずっと増大をし続けております。また、引きこもり現象がどんど んと年長化していっておりまして、今は青年層にまで広がってきているというような状 況があります。そういう現象の広がり、あるいは増大を考えたときには取り組みの体系 化が要るのではないか。特に引きこもりは教育、医療、保健、民間福祉、いろんな分野 にまたがる問題になっていますので、それぞれとの連携や役割分担の整理が重要ではな いかというふうに思うところです。  障害相談ですが、これは児童相談所に障害のいろんな相談が来るわけですが、一番比 重が多いのは知的障害の認定機能、いわゆる療育手帳の認定が児童相談所でしかできな い仕組みです。加えて、原則2年に1回再判定しないといけないという形になっていま す。  例えば、身障手帳なんかであれば、1度診断により手帳が発行されますと、2年に1 回の診断のし直しというのはないわけですが、療育手帳の場合は原則2年に1回、だか ら発行した人が、単純にいいまして2年後にはまたすべてくるという形になるわけです 。この辺の業務で判定の方が相当エネルギーをとられているという部分があります。  また肢体不自由児関係の相談の場合は、残念ながら児童相談所には整形の医師はいな いのです。だから、他の機関の医師の医療所見に基づいて、肢体不自由児関係の施設へ の措置業務を児童相談所が行うという、かなり受け身的な事務手続きの役割という意味 合いも大きい部分ですので、こういう認定業務、あるいは肢体不自由児相談の措置手続 きの機能等については、本当に児童相談所でないといけないのかどうか、そういう整理 も必要だという部分でございます。  年長児童の自立が社会一般として困難になってきています。これは特に施設を出た子 などもそうですが、施設を出て、そのまま独立自活で社会人として生活ができるかとい うと、そういうわけにいかないです。一般の家庭の子どももそうですが、なかなか自立 がすぐにうまくはいかない。  ところが、従来の児童福祉の体系はどちらかというと、義務教育までにウェートが置 かれていて、義務教育終了後の年長の子どもに対する社会としての対応ということを考 えたときに、十分な資源がないのです。この辺に対する、もう少し社会的自立をサポー トするような、そういう資源の整備、あるいは具体的な援助の手法ということを、もっ と今後拡充していく必要があるのではないかということを相談所サイドでは強く感じて います。  それから年少非行児対応。これは特に年少非行少年の場合は児童相談所でしか対応で きにくい部分ですが、これも以前であれば、地域のいろいろな活動、子ども会活動であ るとかクラブ活動とか、そういう地域活動の中にうまくそういう子どもを誘導すること によって、子どもの健全育成ということもしやすかった要素があるのですが、最近はそ ういう地域活動が必ずしも十分でないという実情がありまして、こういう年少非行児の 指導というのを考えたときには、地域資源の創出、あるいは教育、司法との連携による 地域活動の活性化という点でもっといろいろ工夫が要るのではないかという部分です。  相談所が、最近は子ども全般にわたる権利擁護の機関として機能していくべきだとい う論議もあるところです。いわゆる、児童相談所が子どものSOSを受け止めて、その 子どもの置かれた状況に対する調査、あるいは調整機能、必要な環境調整への勧告とか 、そういうことも視野に入れた機能が要るのではないかという意見があるのですが、一 方で児童相談所もサービスの提供機関だという部分もありますので、そうでなくて、も っとより中立的な第三者機関が、そういう権利擁護機能を果たす方がいいのだという考 えもあるところですが、いずれにしましても、子どもの権利擁護の中核となる、そうい う機関の整備ということも今後は必要だということでございます。  最後になりますが、「4 市町村や他機関への委譲と役割分担」ということですが、 要は児童相談所の相談範囲が非常に多岐にわたりますから、育成相談、障害相談という 分野は市町村や、例えば障害者更正相談所等、その他の機関に委譲し、児童相談所は養 護相談や非行相談など、いわゆる要保護児童相談や権限発動の機能に比重が置く方がよ いという意見が強まってきています。何でもかんでも、すべての児童相談所が引っくる めて請け負うというのは状況に合わなくなってきているのではないかという考え方です 。  市町村においては、児童委員、主任児童委員、保護司など地域の関係者を含めた幅広 いネットワーク体制の推進強化と、運営管理責任体制の明確化が必要ということです。  要は、これは先ほどの御説明にもありましたように、身近な地域での援助ということ を考えたときには、やはり市町村の果たす役割は非常に大きいということでございます がネットワークをしっかりと推進、確立をすること、 そして、その市町村のネットワー クがうまく機能しているところを見ましたときには、事務局機能とコーディネート機能 がしっかりと働いているということがありますので、その辺の事務局とコーディネート 機能の責任体制の明確化ということも非常に重要なテーマではないかということでござ います。  非常に雑駁になりましたけれども、大枠的な問題の提起に代えさせていただきます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。大変、多岐にわたる児童相談所が抱える問題を非常に具体 的に御説明いただき、知らないことが大変よくわかりました。ありがどうございました 。  それでは、先ほどの課長の御説明、それからただいまの津崎委員の御説明につきまし て、皆様からいろいろ御質問、あるいは御意見を伺いたいと思います。どうぞ御自由に 御発言をいただきたいと思います。  総務課長、どうぞ。 ○総務課長  ちょっと1つだけ資料の訂正をお願いいたします。私が説明しました資料の5の3ペ ージの中で、障害相談中に「7.精神薄弱相談」という記載があるんですが、これは現 在では知的障害相談ということですので、恐縮ですが訂正をしていただきたいと存じま す。それから、精神薄弱児のところも直しておいていただければと思います。 ○岩男部会長  わかりました。ちょっと基本的なことを伺いたいのですけれども、津崎委員が先ほど 、終わりの方で御説明になるまでは、私は児童というときに15歳までというふうに思っ ていたんです。その後は問題を抱えている子どもたちはどこで対応するのかと思ってお りましたのですけれども、先ほど年長児童というお話がございまして、ですから、そう しますと18歳未満は対応されるというふうに理解すればよろしいわけですね。ありがと うございました。  どうぞ、どなたからでも御意見、あるいは御質問いただきたいと思います。  網野委員、どうぞ。 ○網野委員  先ほどの資料説明の件で1つ質問をさせていただきますが、資料5の10ページになり ますでしょうか、「8 一時保護」のところですが、数が非常に増えてきていて、委託 も要するに一時保護所ではなくて、それぞれの、例えば施設とか、ときには里親も含め て、そのような委託というのが増えている状況がよく見られるのですが、先ほど来の説 明が虐待相談と関連した場合、虐待相談を受けた中で一時保護の割合とか、あるいは特 に委託の例とか、そのようなことがもう少し実態としてわかりましたら教えていただき たいのですけれど。  つまり、先ほど津崎委員がるる現在の一時保護の限界といいますか、いろいろ課題が 出されていましたことと関連しまして、一時保護所自体が役割を本当にどういうふうに 考えていったらいいかと、幾つも検討すべきことがあると思いますが、非常に複雑なケ ースをむしろ委託という形で進める方向は、現状としても少し増えているのかどうかを 教えていただきたいと思います。 ○岩男部会長  課長からお願いいたします。 ○総務課長  10ページに一時保護のデータが出ております。13年度の数字、7,652 ということで、 そのうち一時保護所で6,113 、それから一時保護委託の方で1,539 ということで、内訳 はそこにございますように多いものは児童養護施設846 、あるいは乳児院276 というよ うな、あるいはまた警察署ということで118 というような数字が出ております。 ○雇用均等・児童家庭局長  虐待関係だけですか。 ○総務課長  はい。虐待関係だけでございます。 ○岩男部会長  網野委員、よろしゅうございますか。 ○網野委員  これは全体ではなくて、虐待。 ○総務課長  虐待だけです。 ○網野委員  失礼しました。ありがとうございました。 ○岩男部会長  ほかの方、いかがでございましょうか。  堀委員、どうぞ。 ○堀委員  今日の資料、あるいは説明で、児童相談所の専門性、あるいはいろんな仕事をやって いるということはわかりました。しかし、都道府県と指定都市に設置されているという ことで、大変アクセスが悪いと思います。問題を抱える児童なり家庭なりで、アクセス の関係で児童相談所を利用しなかったとか、あるいは児童相談所自体を知らなかったと か、そういうふうな調査を、あるいは委員の皆さんでも何かお持ちだったら教えていた だきたい。 ○岩男部会長  津崎委員、何か。 ○津崎委員  今の御質問にぴったりするようなこういう調査データがありますということはちょっ とお答えしにくいと思いますが、やはり地方へ行けば行くほど児童相談所の距離が遠く なりまして、例えば通所で子どもさんあるいは親御さんを呼んで定期的に面談をしたい 、カウンセリングをしたいと思いましても、どうもそこまで行けないという実例はたく さんあるように思います。  そういう意味では、より身近に児童相談所がある方が援助は受けやすいということが あるのですが、一方でその相談所の数を、例えば2分割3分割していきまして、それを 地方につくったときにどうなるかとなると、一つひとつの児童相談所の機能が弱くなる という部分があります。十分機能が発揮しにくいという要素があります。  そういう意味で、それらの1つの解決方法として、もっと児童相談所が総合的な専門 機関としての機能を充実させ、市町村等との連携を十分図る、そして場合によっては継 続的な援助機能等はもうちょっと住民に近いところで支援をし、そのバックアップを児 童相談所がするというふうな、新たな市町村と児童相談所等の関係の在り方ということ も1つの課題として示されてきているというところでございます。 ○岩男部会長  無藤委員、お願いします。 ○無藤委員  今の津崎委員のおまとめと私は全く同じように思うんですけれども、私はそんなに詳 しくないのですが、2、3知っているところで言うと、最近、ここ数年、児童相談所の 方々の動きが非常によくなったというのか、現場によく出てきていただいたり、ほかの センターとか何とかとの連携も随分一生懸命やっていただけるようになったという感じ を持っております。また、地域にもよるでしょうけど、保育所、幼稚園、学校との連携 の場にも随分足を運んでいただいている感じがあります。  そういうのでありがたいなと私の方から見ると思うのですが、今度はやはり御指摘あ ったようにスタッフの数とかの問題、それから特に虐待等はいきなり起こる問題が大き いわけですけど、それに対して障害認定というのはかなりルーチンに近い仕事が経常的 に入ってくるわけですが、その折り合いがなかなか難しいように思います。  それから、例えば、それぞれの相談所のスタッフの研修とか要請の問題も御指摘あり ましたけれど、例えば、私のところからなんかも行っていますが、学部卒業して最初に 多少研修はありますけど、本当に数か月で現場に出て行くという感じで、今、現場の問 題、特に児童相談所に回ってくるケースは非常に深刻ですので、専門性という意味でも 、難しい保護者の対応するというような社会性とでも言うんですかね、そういう意味で2 2〜23の人がいきなり行くというのは非常に大変で、バーンアウトを起こすような条件の 感じがあります。  そういう意味でネットワークの中心にすると同時に、かなり質の高いスーパービジョ ンやネットワークの中心になり得るような組織というものに、是非持っていければとい うような期待を持っております。 ○岩男部会長  服部委員、お願いします。 ○服部委員  津崎委員からの御説明で、児童相談所の本当に頑張っておられる姿と大変さを感じま したが、4つほど御質問といいましょうか、意見といいましょうか、申し上げさせてい ただきたいと思います。  まず第1は、検討課題のところでも「介入と支援の役割矛盾の解消」ということで、 分散により軽減する必要があるという点です。また一番下の児相の役割についての最後 のまとめで、障害相談とか、健全育成相談は市町村に、そして児童の権利が侵害されそ うな事例を中心とする権限の発動が必要となるようなものは児相に比重を分けていくと いう方向性が述べられました。これは多分どうしても1つの究極の方向性かと思います が、本来児相というのはケア機能を中心としてきていると思うんですね。もちろんこう いう権限が児相にしかないし、県のレベルで必要とは思うんですが、これからの児相の アイデンティティーとは何なのかをまずおうかがいしたい。今まで蓄えてこられたたく さんのものがあると思うものですから、そういう意味で、どちらかと言いますと、権限 の発動というのが児相の役割の中心となるときに、ケア機能として持ってこられたアイ デンティティーをどのように生かし統合されるのかというのが第1の質問でございます 。大変大きな言い方で恐縮でございますが。  第2は、まさに分断ということ、この介入とケアの機能を分けねばならぬということ 、これは私はやはり何らかのレベルで必要かと思います。つまり、子どもの側に立って 権利が侵害されるという事態が起こった時、虐待に関しましては、親がほとんど虐待者 でありますから、介入して親に対峙せねばならない。その親に対峙した後、親を支援し 、ケア、教育をするという大変大きな役割が必要になりますが、同じ人物が同じ場所で 、それを担うというのは大変難しいだろうというのは常識でわかるのですが、ただ、介 入にも私はケアを持った介入でなくてはならないし、一方、ケアをする際も常に毅然と した態度で子どもの権利を考えながら、親に向き合うことも大切で、ケアの側も介入し ていくような強権という側面も見ねばならぬ。  つまり、両方をきれいに分断することが難しいという意味を持ちながら役割を分断し ていく、または分散し軽減するという、ここに悩みの深さと大変さがあろうと思うので すが、具体的にどのようなことをお考えかということが2番目の質問です。  3番目は地域によって随分現状が違うと思うんです。つまり、虐待の事例が非常に少 ないところと、大都市の非常に多いところと。例えば、少ないところの例として、宮城 県の子ども総合センターがあります。児童精神科医も非常に少ないのですが、この場所 に皆が期待を寄せます。そういう児童精神科医が結集をして、所長がいてクリニック機 能を持つ、そして同じ機関でありながら、別に児相もある、つまり2つの独立した機関 が県の子ども総合センターになっているのです。  つまり、非常に近いところで別々の機関がケア機能と介入機能とを受け持つ。ケア機 能を持つクリニックは外からの外来患者もたくさん見られますし、児相からの依頼も受 ける。児相の側もケア機能の病院と独立して、しかもつながっているという、私はこれ はよき地方型かなと思うんです。  つまり、専門職者が少ないだけに地方のニーズが県に集まりやすいし、また事例も余 り多くなければ、これでいけるかと思います。一方、東京とか大阪のような大都市圏で は事例が余りにも多くて、そういう意味では児相以外の市町村の医療保健機関、またN POも含めた民間の医療機関やその他に、ケア機能については依存しない限り、これは 成り立たないと思います。ただ、私は別組織よりもある意味では児相の中で部署を機能 別に独立させるということもありかなという気もします。  つまり、3番目の質問は地域によって幾つかのタイプがあってもいいのではないかと 。そしてそういう地域の実情ということについての具体的なお考えがどうかということ もお尋ねしたい。  4番目は、児相の職員の専門性とメンタルヘルスの問題です。介入ばかりしていきま すことは、とても心がすさむというか、辛いことなんですね。  それから、介入ばかりですと事例をじっくり眺めるという時間がありません。そうい う意味で職員が介入をずっと続けているうちに、人間関係を理解し、ケアや支援をする 人間力のようなものを培うチャンスがなかなか得られないのではないかと。だから、職 員のメンタルヘルスも、あるいは専門性もよほど細心の注意をお持ちになられて、専門 職の皆さんがより豊かな、より安定したメンタルヘルスを持ちながら、更に専門性を獲 得できるような方策、例えば配置を時折変えるとか、あるいは研修のやり方とかの御工 夫がないと、私は児相に大変深く敬愛心を持っているだけに、バーンアウトしてしまう のではないかという心配があります。以上、私の児相についての感想といいましょうか 、要望といいましょうか、質問というようなことでお聞きいたしました。ありがとうご ざいました。 ○岩男部会長  ただいまの服部委員の御質問にお答えになる前に、ちょっと関連の質問を私もさせて いただいて、一緒にお答えいただければと思うんですが、児相の専門性のあるアイデン ティティーを確立していくと、あるいは維持していくというときに、ほかの機関で類似 の機能を果たしているところがあると思うんですね。  例えば、非行であれば、警察の少年相談センターであるとか、あるいはここにある育 成相談ですと保健所なんかもそれをやっておられるわけで、そういう類似の機能を果た している機関がほかにどの部分についてどんなものがあるのかということを、併せてち ょっと教えていただけると、今後どういうところが委譲できるのか、スリム化できるの かというような議論につながるのではないかと思います。 ○津崎委員  今の御質問にすべて正確にお答えできるかどうかは、よくわからないんですが、服部 委員が最初に御指摘いただいたアイデンティティーとしてケア機能をどのように考える かという部分ですね。権限発動とか、そういう強制介入的な機能は相談所でしかできな いということがあるわけですが、それに特化することによって、場合によればケア機能 が損なわれてしまうという懸念を多分お持ちだと思うんですが、私は日本の今の児童福 祉の体制を考えたときに、相談所がケア機能を全く外してしまうということは、まずで きないだろうと思っています。  御指摘の中にもありましたように、最近は介入も以前よりはするようになってきてい ますが、決して介入だけの特化した関与というのはしていないですね。後のケアとも連 動した形の介入をしていっていますから、そういう意味では新たな介入の役割というの は重視しないといけない部分があるのですが、必ずしもケアとは切り離されていない。  ただ、余りたくさん、そのケア機能、軽いケースも重いケースもすべて相談所がケア も含めてするんだというのは、それは実情にちょっと合っていないのではないか。むし ろ、軽いケアというようなことになってきたときには、最近は市町村でもいろいろと援 助の機能が少しずつですが充実してきているし、ほかのいろんな機関、民間機関も含め た機関の拡充もあるし、だから相談所として対応しないといけないという部分は、介入 もケアも含めて相談所はしますけれども、あえて軽い部分は他の機関との連携、あるい は他の機関への委譲ということを考える方がより合理的ではないかという考え方の方が 、むしろ現状に合っているのかなという気がします。  第2番目の介入とケアの分断、分散ということがすぱっといけるのかどうかというこ とですが、実務からするときには介入をどんどんと、今、積極的にやってこられている 児童相談所ほど、すぱっとはいかないというふうにおっしゃっている方が多いです。 私 たちもそういう意味で、日本の制度の矛盾として、介入とケアを同じ機関がしないとい けないことからくるトラブル、制度的な矛盾が大きいという指摘も多々あるんですが、 私は少なくとも、それを一緒の機関がすることの、逆に言うとメリットもあるのではな いかなと思っています。  従来の対人援助が、非常にソフトなアプローチを重視し過ぎてきた。だから、介入と いう強いアプローチを最初にセットしたときに後のケアなり援助もできなくなるという 不安を相談所は抱えていたんです。  ところが、強い介入で入っても、後の工夫によってうまくケアに結び付くケースもあ るんです。私はそういう援助の理念の整理も必要だということで、父性的ソーシャルワ ークというようなことをある雑誌に書かせていただいているんですが、ソフトで受容的 で相手に対して傾聴して、相手に対する母性的な受け止めの優しさばかりを強調するの がどうも対人援助の基本に思われたのですが、そうではなくてときには強い態度で出て 、そしてときには摩擦を起こしますけども、それを乗り越えた関係の中で相手が改善し ていくような対人援助だってあるのではないかと。相談所の場合は権限とケアというこ とを考えましたときには、そういうスタンスの援助手法ということも十分理念的に成立 し、実際的な工夫も重ねていく必要があるのではないかというふうに考えているところ です。  3つ目の、地域によって状況が違うということは私も非常に同感でありまして、この 辺が先ほどの説明の中で多少ありました、各自治体によって相談所がいろんな組み替え をされている部分との絡みです。それはそこの地域地域の多分、取り組みの経過である とか情勢を踏まえて医療的な機関と児童相談所が一体化されて、総合相談としてやられ ていたり、あるいは障害の相談を更に推進特化されて、そこと児童相談所が一体となっ て、障害あるいは児童相談というような名前になっていたり、生活相談といったり、そ れはそこそこの地域の実情なり、今までの歴史みたいなものの反映としてあると思いま すので、それはそういう組み替えのフレキシビリティーというのはあってもいいのでは ないかなというふうに思っています。  ただ、最終的に児童相談所しか発揮できないような権限の部分とか、問題の核心に対 して責任を持って行政として対処していかないといけないと思うのです。その辺の部分 の押さえをきっちりとする中でのバリエーションということが必要ではないかなという ふうに思っております。  それから、専門性の中で特に介入機能が強まっていく中での、職員のメンタルヘルス であるとかサポートというふうなことも、今は各現場でやはり重要なテーマになってい ます。  実は、大阪市なんかは介入機能を一番たくさんしている児童相談所です。私たちの実 務の中で言いますと、このメンタルヘルスに非常に重要な要素の1つは、自分たち1人 で問題を抱え込むのではなくて、やはり組織としてチームとして問題に当たるんだとい う姿勢です。例えば児童福祉に対してスーパーバイザーがバックアップする、スーパー バイザーだけでは支えきれないときには虐待対策班としてバックアップする。あるいは 相談所の管理職組織体制としてバックアップする。あるいは大阪の場合ですと、外部の 弁護士が相当バックアップしてくれていますが、弁護士集団がそれをバックアップする という何層にもわたったバックアップ体制の中で、個々の職員に負担が過重にいかない ように、そういう配慮をしていまして、事実それが非常に効果を上げていまして、個々 の職員がこういう仕事に対してバーンアウトというようなことは実際上起こってないで す。他の職員の方が研修で来られて、ここの相談所は非常に困難なケースをやっている 割には皆明るいですねというふうに言われたり、印象に残したりされています。そうい う体制づくりということが必要だと思いますし、御指摘いただいたように今度は内部で 役割が変わるような、そういうことも必要ではないかなというふうに思っているところ です。  それから、専門の問題等があるんですが、児童相談所と類似の機能を持った機関とい うことですが、例えば障害相談なんかで言いますと、知的障害者の更正相談所が同じよ うな形で、障害の判定機能を持っています。主にそこは成人の部分を担当していまして 、児童の分は児童相談所という、年齢による機能分担になっていますが、障害に対する 具体的な診断機能という意味では同じです。障害の診断とか認定の機能というようなこ とになってくると、医療機関も似たような機能を持っているということもあります。  例えば、この中でもちょっと触れましたけれども、引きこもり、不登校というふうな 問題になってきたときには、これは主には教育関係もこの問題には対応しているわけで す。教育相談所であるとか、各学校あるいは教育委員会等も学校内部の問題ということ で対応していますので、そういう意味では似たような機能を発揮している要素もあると 思いますし、また、医療機関も引きこもり相談には対応されていたり、あるいは最近で は親の側の組織、不登校に関するNPOができたりとか親の会というようなことがあっ たりとか、そういう民間レベルでの相談機関というのも割とできていますので、そうい うところも場合によっては重なる部分ではあると思います。  中には、保健所、保健センターとか、更に保健所の指導機関であります精神保健セン ター、そういうところも似たような機能を果たしているという部分があると思います。  非行関係なんかでいきますと、学校の中の子どもという意味ではやはり、学校あるい は教育がこの問題に対しても積極的に関わっていますし、あるいは警察の地域活動、あ るいは警察が組織されたボランタリーな、例えば協助員制度とか、そういう警察サイド からのアプローチということもありますし、これも年齢とか程度によって分かれますが 、家庭裁判所の活動とも重複する部分といいますか、そういうところはあると思います 。  福祉相談ということに関して言いますと、先ほど課長が説明されました福祉事務所の 中に設置されています家庭児童相談室、これも問題の軽微さとか程度によって分かれて いる面がありますが、内容的には子ども相談、家庭相談を地域のレベルで受け止めてい ますので、ある意味では似通った機能を果たしている部分もありますし、平成10年に事 業化された子ども家庭支援センター、児童養護施設等に付置される新たな機関ですけど も、そういう児童家庭支援センター等もそういう相談を受け持ったり、あるいは児童相 談所からの指導の委任を受けたりという活動もしていますので、そこも似たような機能 を果たすという部分はあろうかと思います。  今言ったのがすべてではないです。もっとあると思いますが、いろいろ似たような部 分はあると思います。 ○岩男部会長  ほかに御質問は。  渡辺委員、どうぞ。 ○渡辺委員  児童相談所のアイデンティティーとか、いろんな非常に大事な論議なんですけれども 、私は一私立の病院の小児科の臨床現場から、同じ地域の児童相談所に大変お世話にな っているんですけれども、私どもは児童相談所がこれから、特に家族機能不全がますま すひどくなってくる時代において、どんな子どもでも日本に生まれた以上、この地域に 生まれた以上、1人の人間としての最低限の幸せを保障するということを1つの灯台の ように目に見えて言い続け、しかもその機能を発揮する、そういった子どもを守る機関 として機能していただきたいんです。  それぞれの小児科医はそれを個人としてやっておりますけれども、その地域にそうい うことに徹してくださる児童相談所があれば、つまり、ちょうど家族の中に、よし引き 受けたと、どんな子どもが生まれても、障害児であろうと、あるいは非行少年であろう と、よしおれの子としてともかく引き受けたと、みんな安心して自分のできることやれ 、というふうに言い切る一か所がありますと、私どもは実際に児童相談所にお世話にな らなくても、児童相談所のバックを借りながら、各現場で親がどう過ごしたかを言った ときには、お父さんと相談してみましょうみたいな感じで、ちょっとこの件に関しては 児童相談所に全部報告する義務がありますからというふうに言うことができるんです。 そのことは私どものレベルでは介入であり、かつ親育てにつながっていくんです。  ただ、今の現状の児童相談所の非常に残念な点は、やはり一般の行政職の方が3年で ローテーションするとなりますと、これは児童相談所に子どもたちをお願いすること自 体が分断されて先がわからないということになりますから、みんなどうしてもちゅうち ょする。  そういう意味で特に虐待のことに関わる部門に関しては、やはり専門家、それもベテ ランの専門家を入れていただきたい。家族精神医学やそれからいろいろな人格障害やい ろんな問題を取り扱える専門の心理や精神科医や児童精神科医を入れていただきたいん です。  うまく機能している面に関しては、私どもは本当にいつも感謝していますけれども、 あえてここでうまく機能していない点を申し上げますと、だれから見ても小児科医から 見て明らかな虐待でありながら、親がしらを切るということがたくさん起きています。  そして、エビテンスとしてレントゲンなど集めれば、どう考えたってどこの機関が見 てもみんな親がやったとしか考えられないんですね。ですから、エビテンスでそれだけ 複数か所で明らかで親の問題だと言っても、更にしらを切って、それだけではなくてせ っせと一時保護に通いまして、そして職員に泣き付いて自分がぬれぎぬだと言って、本 当に素朴な善意の職員がどうしていいかわからない、そういう自体というのはたくさん 起きているんです。結局そこら辺から、親のそういう引き取りたいと言ったときに返し てしまって、そして子どもが死亡する。更に虐待されているという例がやはり後を絶た ないんです。一例でもこういう例がありますと、私どもは児童相談所を専門機関、ある いは公的に子どもを守る機関として、やはり信頼できなくなってしまう。  私自身は、児童相談所こそ日本の子どもたちを守りよる機関だと思って、できるだけ 私どもがいろんな意味で応援して児童相談所にお願いしようと思っているんですけれど も、ざっくばらんにいろんなところに行っていろんな話をして、ケーススタディーをし たときにどうして児童相談所に持っていかないかというと、そこの地域の児童相談所が 非常にお役所仕事であったり、あるいは一生懸命やっているのはわかるけれども、親た ちが高飛車に言われるのは嫌だと言ったりというふうに、そういったそれぞれがうまく 機能していない根拠として、やはり第三者がそこの機能に関して客観的にフィードバッ クしてあげるということが起きていないことがあると思うんです。  ですから、より複雑なケースをこれから扱うことになる児童相談所は、御自分たち自 身の精神衛生と、それから機能の成長のために、より専門的な監査といいますか、ある いはフィードバックしてもらえる、あるいはスーパーバイザー機能のところを一つお願 いして、しかもそれに対して経済的なバックがあるようなことを要求すべきだというふ うに思います。  介入ということは、本当に救おうと思うから介入するわけです。ですから、私は介入 と支援が矛盾するということはないと、児童相談所が関わらなければいけないケースと いうのは、私どもでは手に負えないから介入するわけですから、そういう意味では介入 というのはおぼれている子どもを飛び込んで救うということと同じ意味で、それ自体が 仮にその子どもがしがみついてきて、一度沈めて岸の上に上げなければいけないとして も、沈めるとこと自体が決して無知ではなくて、介入自体の中にも既にケアがあると、 父性的なケアがあるというふうに私は思っております。  ただし、それが長期的にフォローしていくとか、あるいはそのケースをきちんとみん なで検証して、この介入がベストであったとか、よりベストな方法はこういうのがあっ たとかということを検証して、しかも長期的に見ていくという専門的なネットワークを やはり持っていませんと、それはただ介入して子どもを切り離して、そして子どもは一 時保護所でかえってびっくりして親に捨てられたと思って混乱していくと。あっという 間に子どもは大きくなって、大きくなったときにやがては児童相談所や児童の法律が介 入できない20歳になってしまったときに、そのプロセス、親から切り離されてあちこち を転々としたプロセスにおける二次的な障害のトラウマをどこに持っていっていいかわ からないというふうになると思うんです。  そこで私どもは例えば、親が絶対にやっていないというケースに関して、児童相談所 にお願いして、今、赤ちゃん1歳なんですけれども、その子どもが親を求める期間が必 ず10年以内に起きるだろうから、10年間くださいと。10年間、児童相談所が絶対にとも かくこの親御さんに対して例えば慶応病院の私どものところに通って、そして子どもと の接点をそこでは持っていいというふうにしてほしいとお願いして、児童相談所という 父性の権限のもとにおいて、その地域でその親が一人の人間として子どもといい形で出 会っていきながら、やがては立派な父親の権限をもう一度自主的に獲得できるようにし ているんです。  ここら辺は、宮城県などは私は進んでいると思うんですけれど、宮城のいろんなシス テムを応援したフィンランドのトゥーラ・タミネンという児童精神科医がいまして、私 は友達なんですけれども、そのタミネンに教えてもらったフィンランドのやり方なんで すけれども、フィンランドは透明性を担保するためにすべての児童相談所の虐待ケース の論議を親の前でやるんです。親の前でやりまして、そして親にちゃんと説明するんで す。ということはそれだけ透明性があるということは、その会議中に親を中傷するよう な私語とか中途半端なことを話さないくらい、やはり専門家が自分たちに対して厳しい 、自分たちに対して専門性の誇りを持っていて、すごく上手にやるということだと思う んです。  実際に見せていただきましたけれども、タンペル大学に3週間虐待ケースを委託しま して、この3週間毎日9時から5時までデイケア、親たちが土日以外は毎日通って、そ こで御飯を食べたり、お昼寝をさせたりするわけです。そして、親を介入してかつケア する人間として男女のペアの専門家が担当者として3週間ずっと過ごすわけです。そう しますと、親の生い立ちの話とか、親の悲しさとか寂しさとか、それから親の問題点と かが全部見えてくる。 しかも、そのケアを介入をしながら、最終的にはもしかするとこ の親にはだめだということをオープンな論議の中で結論しないといけない。そのときに 、私は、タミネンたちが言ったのがすごく印象的なので、ちょっと時間がオーバーにな って申し訳ないんですけれど、もう絶対に子どもを渡さないと言っていた母親が、その 3週間のプロセスを経て、非常に人間的な形で厳しさと人間性がある中で、最後の結果 が出たときに何を言ったかというと、この3週間、私なりに考えたと、考えてみたら、 例えばエリザベス女王だって乳母に子どもを育ててもらっているんだから、私は児童相 談所のおっしゃるところに乳母代わりに自分の子どもを育てていただくわというふうに して、その最も荒れている親を人格障害扱いにして切り捨てて、更に荒れさせるのでは なくて、やはり育てていくということをやっているんです。  ですから、私はそういった新しいプロジェクトに向かっていくときに、是非、予算も 人材も、もっともっと児童相談所は要求していただきたいと思います。 ○岩男部会長  大変、示唆に富んだお話ありがとうございました。  まだ、ほかにいろいろ御意見がおありだと思うんですけれども、5分前に今日はやめ てほしいという御要望がございますので、恐縮でございますけど、もし網野委員御質問 ございましたら、次回にお伺いたいと思います。  それで、本日はここで閉会にさせていただきたいと思います。次回は6月24日の火曜 日の10時から12時を予定しておりますが、児童虐待の専門委員会の報告書がそれまでに とりまとめられて、次回の部会で御報告をいただくことが可能だというふうに思ってお ります。そのように次回に御報告をいただくというようなことで、また更に私どもの議 論を進めたいと思っております。  それでは、本日は大変お忙しい中をどうもありがとうございました。閉会させていた だきます。 (照会先) 雇用均等・児童家庭局総務課 03−5253−1111(内線7823) 担当:湯本