03/05/27 第1回社会保障審議会介護保険部会議事録          社会保障審議会 第1回介護保険部会議事録           1 日時及び場所   平成15年5月27日(火) 10時00分から12時07分   虎ノ門パストラル 2 出席委員   貝塚、上田、市川、漆原、大村、小川、喜多、木村、京極、見坊、潮谷、下村、   田近、永島、中村、西島、秦、花井、矢野、山崎、山本の各委員 3 議題  (1)介護保険部会の議事運営について  (2)今後の進め方について  ○ 松田総務課長より資料1に沿って部会長の選任について説明。貝塚委員が部会長   に選任され、部会長により上田委員が部会長代理に指名された。  ○ 松田総務課長より資料1,2,3に沿って議事の取扱・部会の進め方・介護保険   制度等の実施状況について説明。 (下村委員)  局長の挨拶だと介護保険制度はおおむね順調とのことだが、おおむね順調なのかどう かを検証する必要がある。先ほどの話では、おおむね順調だが18年以降は更に保険料を 引き上げることも予想されて3期以降は大変になるとあったが、そこを実際には検証す る必要がある。 検証の仕方については、一般的な事情や実績の報告ではなく、ある程度 委員の問題点を踏まえながら検証をしていくべき。また、資料によると何か特定の権限 に絡むのが分科会とあるが、この部会には権限はないのか。  介護保険料について市にクレームを付けても、市は厚生省に聞いてくれと言う。不服 申立の手続がない。保険料の賦課徴収の権限者が明らかでない。保険料決定については 実質的に厚生大臣が決定しているのに、法律上はその権限について触れられておらず、 賦課徴収が機械的に行われている。  資料の説明では、この部会の審議事項は介護保険制度全般を審議するとのことだが、 ゴールドプランは研究会で議論するのか。 (貝塚部会長)  検証のプロセスについては、問題意識を持ちながら検証していく。 (松田総務課長)  介護給付費分科会と介護保険部会の権限の関係について、介護給付費分科会において は、介護報酬と関連する基準についてお諮りし、諮問答申をいただく形で審議をお願い している。つまり、支払う側とその額をもらう側との関係があり、法令上、分科会で審 議をするという仕組みが規定されている。一方、例えば保険料の問題などはまさに制度 的な問題であるが、この介護保険部会においてはそうした問題について幅広く御審議を いただきたい。  ゴールドプラン21は高齢者介護の基本的な方針であるが、ポストゴールドプランにつ いても、これまでの3年間の検証に基づき、あるべき中長期的な介護の姿を踏まえたも のにすることが必要である。これについては研究会を設けて役所のサイドでの勉強とい うことで現在検討をしている。部会での制度見直しの議論をよく見ながらこのポストゴ ールドプランの内容の検討を行ってまいりたい。ポストゴールドプラン21それ自体とい うことではないが、関係する部分について資料を提出し御意見を伺う。 (貝塚部会長)  分科会では給付費の議論をしていたが、検討していく間に制度の問題ついて指摘があ り、多少はその指摘を受けている部分はある。 (下村委員)  資料の社会保障審議会令で分科会は全て権限があると書いてある。部会は必要なとき につくると書いてあるだけで、何をやるのか法律上決まってない。法律の附則に書いて ある事柄全部をということは、介護保険制度のあり方ということであり非常に広い。先 ほどの説明は曖昧。ゴールドプランについては報告はするけど別にやるということか。 附則に書いてある問題を全部ここでやるならば、この部会の審議事項はかなり広くなる はず。現在順調であって18年以降の問題が主であるならば見直しの仕方は違ってくる。 附則には保険料の問題・患者負担の問題・障害者の問題など現在の制度に基根に関わる 大きな問題が書いてある。介護保険制度をつくるときに、制度自体に対して基本的な疑 問や議論があり、十分決着がつかないままにスタートしたので、5年後に基本的な見直 しをやるという条件が付いた。おおむね順調ならば基本に立ち返ったところまでやる必 要はあるのか。 (松田総務課長)  審議会については、介護報酬のように法律上に権限規定を置いて諮問答申を行う分科 会と、重要事項に関して意見を伺う部会というように、規定上の整理が行われている。 附則にもあったが、関係団体始め、関係者、有識者の方からの御意見を伺いながら、最 終的には制度見直しについて政府案をまとめるにあたって、御意見を伺う。 (中村老健局長)  分科会と部会の関係、あるいは審議会一般についてお答えする。法律上、社会保障審 議会に諮らなければならないという権限規定が置かれている条項については、それぞれ 担当する分科会を設置することとしている。部会は重要事項について審議するときにア ドホック的に設置する。重要事項について審議会での審議をどのように尊重するのかと いうことは、一般に審議会の尊重の度合いについて行政と審議会との間で建設的に諮っ ていくべき。  法律施行後5年を目途に検討が加えられるという条項に基づいて、厚生労働省として 見直しの検討についての公式の議論の場として介護保険部会をお願いしている。資料は 、3月19日の社会保障審議会で部会を置く趣旨と審議事項として了承していただいたも の。資料の法施行後5年を目途に全般に関して検討を行い、その結果に基づき必要な見 直し等を行うことになっているというところは、介護保険法附則の検討規定によってい る。部会の審議範囲は基本的には第2条の枠で囲っているところ。これを越えて議論し たいということがあれば避けないが、基本は第2条。第2条自体は非常に広く、保健医 療サービスや福祉サービスの提供する体制の状況、給付に要する費用の状況、国民負担 の推移、社会経済情勢等に勘案すること、障害者の福祉に関わる施策、医療保険制度等 の整合性、市町村が行う介護保険事業の円滑な実施に配慮することがある。平坦に検証 するのではなく目的意識を持って検証してまいりたい。法律ができる前や成立過程、介 護給付費分科会における論点を念頭に置きながら、被保険者・保険給付を受けられる者 の範囲、給付の内容水準、保険料納付金の負担のあり方を含めて、全般に検討する。  また、おおむね順調に推移というのは我々の総括であり、それ自体が検証の対象であ る。第2条を無視する意味で順調であると言ったわけではない。第2回目から月1回の ペースで9月くらいまで、順調ではないではないかというような点も含めて検証してい ただく。3年間の実績を踏まえると、当初の論点の力点が変わってくることもある。そ の後、論点ごとの議論に入っていただきたい。 (市川委員)  事業者においては特に人員不足が問題である。1・2級ヘルパー、介護福祉士、ケア マネジャー、看護師、それを管理する管理職も少ない。併せて教育も大きな問題である 。特にヘルパーは登録型のヘルパーという特殊な部分になってきており非常に教育の仕 方が難しい。労働環境についても事業者に圧迫が出てきている。特にヘルパーの質の向 上も検討していきたい。 (漆原委員)  高齢者のケアは10年間で非常に大きな進歩をしており、特に介護保険制度がスタート してから、利用者のニーズの変化、ケアに対する権利意識が非常に進んでいる。ケアの 現場も時代の変化をとらえて役割機能を柔軟に見直していく必要がある。介護保険制度 の見直しにおいては、医療と介護を併せて提供する施設としては、在宅生活をバックア ップする施設、介護予防の観点からのリハビリテーションの機能を重視したい。また医 療が併せて必要な要介護4、5の人たちへのケアの役割を担いたい。  関心事項は、介護保険3施設や他の施設類型の中での機能分担・役割分担について、 介護保険制度内での医療の取り扱いについて、施設サービスの中での給付の範囲につい て、在宅重視という観点から、施設ケアを担当している立場として在宅ケア・在宅生活 へのインセンティブが働く仕組みの検討について、介護職員の処遇ややりがいのある職 場づくりについてである。また、高齢者の行動範囲またはサービスの需給範囲の狭さを 念頭に置いた地域ケア・地域づくりについて考えたい。ケアマネジメントやケアマネジ ャーの課題はここに通じる。地域には地元の医師会・社会福祉協議会などを含めた広い ネットワークがない。ネットワーク化の取組を指導する役割を行政に求めたい。利用者 の高齢期におけるライフプランニングを考え、我々施設の側も地域に関わっていきたい 。 (大村委員)  介護保険制度が施行されたときに、同時に成年後見法の改正があった。介護保険と成 年後見というのは、これからの高齢社会を担う2つの輪だと当時言われた。さまざまな 申請等の手続について、それぞれ当事者の権利をいかに確保するのかという問題がある 。さまざまなサービスが提供されるなか、特に近年ではグループホーム・有料老人ホー ム等が急速に伸びているが、提供されるサービスの内容、特に契約内容の適正化を導く ためにいかなる保険制度が望ましいのかについて関心がある。保険制度のあり方によっ て、民間セクターによるサービスの適正化を図ることを考えたい。 (小川委員)  地域に暮らす人たちのありようを行政は邪魔するのではなく、結果責任を負ってほし い。むしろ行政を指導する立場としての市民の力をつくっていきたいと活動している。 協同組合、ワーカーズコレクティブ等のNPOの活動に関わってきた。関心は労働問題 である。福祉のワークはどのようにあるべきか、どのように雇用をつくっていくのかに ついて活動してきた。また、利用者寄りのサービスをいかにつくるかという視点で活動 してきた。オンブズマンを入れ利用者の立場で事業者としての結果を出すことに力を注 いできた。また、障害者の権利擁護にも携わっているが、高齢書においては権利擁護が 遅れている。 (喜多委員)  1・2号保険者のあり方、調整交付金のあり方について関心がある。保険料と公費の 1対1の割合が制度当初から崩れている。17%である1号保険料が、当初から20%でと られている。調整交付金の5%については、1号保険料の枠を超えていても保険料はも らえると国が保障すべき。また、介護保険料を個人単位もしくは所帯単位で捉えるかに ついて、低所得者の基準について関心がある。次回は制度上の問題点と厚生労働省の認 識を資料として提出するべき。 (木村委員)  介護保険は、まだ利用の仕方が国民にはっきり知られていない。要支援、要介護1・ 2が急激に増えてきている。地元青森市で、要介護認定を受けた人でサービスを利用し ていない方が25%であり、認定調査等の費用負担が保険料ではなく税が使われていて無 駄。また要介護認定は、予備的ではなくサービスを利用したいときに受けるべき。介護 保険料の収納率の問題については、保険料の徴収が年金より天引きされて収納率が上が るのはよいが、一方で、国民健康保険の収納率が落ちている。介護の負担が増えていく ことによって、国民健康保険の保険料が納めづらいのではないか。納付金については、 2号被保険者の人頭割りで2年後に精算するという仕組みだが、国で2号被保険者の部 分を決める以上、一律定額にして自治体において3年間徴収してもらい決算年度の2年 後にまとめて精算するなどわかりやすくするべき。また、1号被保険者のサービスが適 正に使用されず、40〜60歳の負担が増えていることに注目したい。最後に、介護支援専 門員の質的向上が重要。個人個人の利用者の事情が全く違うので、百人百色のケアプラ ンをしっかり作って、高齢者が自立した生活が送れるようにするべき。 キーワードは 、介護予防、医療保険、介護保険。これらが連続的に個人に対してサービスが提供でき るような仕組みに変えていくべき。例えば、医療施設から退院する際、要介護認定の結 果がわからないので介護サービスが中断していることがある。また、予防医療など介護 と連続したサービス利用ができる仕組みを議論したい。 (京極委員)  介護保険制度発足当初から予期された問題がある。例えば障害者介護をどうするか。 一方で、制度が発足して改めて気が付いた問題がある。それぞれ中長期的な見直しを要 する課題と、5年後すぐ直ちに改めるものに分けられる。どれがどこに入るかは、これ からの議論で決まる。特に障害者介護については、支援費を現在施行している最中に、 すぐやめるとはいかない問題もある。5年後すぐやるべき問題と、5年後ではできない が近い将来変えていくべき問題がはっきりしていれば国民はわかりやすい。特に、介護 予防については介護保険と密接に絡む。あるいは、介護保険の部会では議論できないが 、在宅医療をどう進めていくかについて、介護保険だけで高齢者の生活がすべて支援さ れるわけではないので、範囲が外れる問題も議論したい。 (見坊委員)  現在、高齢者人口は2,400 万人。そのうちの15%が介護保険サービスを利用している 。85%は制度の担い手である。また、高齢者は低所得者・障害者・被扶養者を含めて全 員が保険料を支払っている。社会保障制度のあり方としては正しい方向であるが、高齢 者の中には戸惑いを感じているものもある。  介護保険サービスの利用者約340 万人のうち、8割の方は満足あるいは不満がないと 答えているが、2割の方は問題があると感じている。1割の自己負担に耐えられない人 もある。現在の高齢者は女性が多く、年金も低額な人が多い。2割の問題ありという意 見に関心をもっている。  制度が施行されて3年。保険料基準の格差が大きく広がった。保険料は全国平均で13 %上昇しており、高齢者は今後どう費用負担が増加するのか不安を持っている。サービ ス提供者間の競争原理により質が上がり、価格は下がると期待していたが実際はそうな っていない。計画性をもってコントロールする必要があるのではないか。 (潮谷委員)  介護保険制度において、地域住民に応える自治体の役割は大きい。国がナショナルミ ニマムとして整えた枠組みのなかで、地方自治体は地方の実態像に焦点を当てながら取 り組んでいくことが必要。熊本県は高齢率が22.4%で、全国平均の7年先。19年には後 期高齢者が前期高齢者を上回る。また、要介護認定者も全国平均より2ポイント高くな っている。介護給付費に占める施設サービスの割合は67%で全国平均を9ポイント上回 る。熊本県では、子育て介護支援推進課をつくって、介護保険のすき間を埋めている。 また、高齢者が住み慣れた家や地域で生活していくという在宅支援サービスについては 、介護保険と連動することが重要。平成15年は施設に入所をしている方々の在宅復帰支 援事業に取り組んでいる。ならし保育があると同じように、逆に施設から在宅というこ とを選択したいと願うお年寄りの方たちに、ならし期間を設けて在宅生活への復帰を支 援している。さらに、特別養護老人ホーム等と連携して、各地域で民家等を利用して小 規模で多機能なサービス拠点を展開していくことを支援している。単独の居宅支援事業 所のあり方も検討することが課題。介護予防の取り組みと介護保険は連動が深い。熊本 県では、個別健康教育の取り組みは、実施率が95%と全国トップレベルである。在宅サ ービス重視の市町村事業と介護保険との連動は非常に重要である。 (田近委員)  高齢者医療、国保と地方財政と2つの問題が出ている。介護はおおむね制度は順調に 推移しているということだったが、第2期の保険料が5,000 円を超えたところは深刻な 問題が起きている。5,000 円を超えたところは財政安定化基金を借り入れており、償還 期間を9年に延ばしている。9年に延ばすというのは永遠のリスケジューリングだ。ま た、介護給付費分科会で行われていた議論を紹介してほしい。検討の範囲については、 部会の守備範囲を議論する必要がある。5年を目途として改革すべきこととは何である か、それを数か月かけて意見集約していくべき。 (永島委員)  介護保険以前に実母の介護経験を12年、その後家族の会で介護活動に23年関わってき た。介護保険が始まって、当時介護していたような孤立無援状態から見ると風穴が開い た。ただ、契約としての介護保険制度は、今の状態では需要と供給のバランスが悪く、 使う側において消費者意識が育たない。この3年、保険外負担が多くなっている。年金 生活者には非常に負担。また、情報を取れる人と取れない人との差が広がっている。グ ループホームの外部評価が始まり実際に取組を見ることが多いが、利用者も提供する側 もばらつきがある。介護や介護保険について社会的な教育が必要。 (中村委員)  一番の問題点は、施設か在宅かという論点。在宅利用者・施設利用者の医療費の関係 、また、在宅・施設における要介護度改善による給付費との関係、自立支援に向けた要 介護度改善がどのようになされているか、データの中で検証してほしい。介護給付費分 科会で議論されなかった基本的な部分が今回、省令・通知でなされたが、重要な部分に ついてはぜひ部会で議論していただきたい。少子高齢社会がゆえに生まれた介護保険制 度が、財源難ゆえに歳出全体のムダが洗われることなく、また、社会保障枠内で一律カ ットされ制度が歪んでしまうのが残念。 (西島委員)  高齢者医療制度の創設がほぼ合意を得てこれから議論されるが、介護保険制度との整 合性をどうとるのか。平成18年度に診療報酬の改正、介護報酬の改定がある。これに向 けて制度の考え方をひとつしていかなければいけない。また、痴呆の高齢者対策を積み 残したまま、介護保険制度はスタートしてしまった。痴呆高齢者に対してのサービスが ない。痴呆は人権との問題も絡んでいる部分であり、高齢者介護研究会の中でも大きく 取り上げられているところだが、今後どのように対応していくのか。現在3施設の体系 があるが、療養型病床群においては痴呆の療養病床がある。しかし、これが療養病床と してひとくくりにされている。地域によっては、痴呆の療養病床に転換しようとしても 参入できないという問題がある。痴呆については、専門的なサービスを提供する在宅・ 施設サービスが必要である。 (秦委員)  新聞記者を辞めて一住民として介護保険を見てきたが、障害を持っているお年寄りに ついては80%は満足していると思う。年々高齢化人口が増えるなか、独自の財源をつく ったことはよかった。また、地域において介護保険で飯を食っている人たちが増えてい る。介護保険が地域づくりの核になっている。このたびの新型特養については個室ユニ ットケアが軸だが、介護保険とは別に入居するときに居住費(ホテルコスト)が取られ る。一方、大抵のお年寄りはみな住宅を自分で持っている。特養に入居するのに居住費 がいるのかという意見があるが、この問題については、リバースモゲージも含めて今あ る家屋とか資産を使って払えるようにならないといけない。低所得者対策では追い付か ない。 (花井委員)  介護保険制度にはさまざまな問題が出ているが、制度ができてよかったと考えている 。介護の社会化が進んだことを強調したい。しかしケアマネジャー・ホームヘルパーな ど介護労働者の仕事が社会的に評価されていない。介護保険制度が社会に定着し介護の 社会化が更に進むためには、介護労働者の労働条件・雇用の安定・質の向上が重要。ま た、家族介護のあり方が、介護保険制度ができる前とできてからでどのように変わって きたかについて関心がある。それについての資料をお願いしたい。資料の要介護認定者 数の推移について地域ごとにどうなっているかの資料もお願いしたい。また、介護サー ビス事業者数の推移の資料があるが、介護サービスに従事している労働者の数、施設で 働いている労働者の数についてもお願いしたい。 (矢野委員)  制度の持続可能性と、社会保障全般の制度横断的な視点が重要である。年金、医療、 介護とあるなか、負担と給付の両面から常に全体を見ながら介護のあり方を考えること が必要。社会保障全体の中での介護の位置づけについて資料をいただきたい。持続可能 性については、これは介護の社会化という新しい大きな流れの中での議論なので、現役 世代が祖父・祖母のために負担するのだという気持ちが長続きないと制度は保てない。 また、高齢者も息子たちが厳しい雇用情勢にあるなら我慢をしようということもあり、 日本的な家族の良さは残っていると思う。社会的介護に移った以上、負担と給付の面で 配慮していかなければならない。制度横断的な観点から言うと、社会的入院の問題を議 論する必要がある。介護保険制度を導入した目的に社会的入院の是正があった。これが どのような状況になっているのか検証する必要がある。地域格差の問題についても、保 険料だけでなく要介護度の認定の問題などについて深く議論する必要がある。介護に関 する様々なサービスが行われてきているが、それに対する第三者評価も必要。 (山崎委員)  介護保険が始まりますときに、積み残された課題があり、その検証が必要。スタート してから発生した新たな課題については、関連する周辺の社会保障の状況が変化してい ることも関係している。高齢者医療制度の問題、国保の再編統合の問題、そして、当時 高齢者は年金が充実をするから介護保険の利用料の1割負担・保険料負担も応じられる とう議論があったが、年金制度も非常に厳しい。障害者の支援費制度も順調にスタート したとは言い難い。取り巻く周辺の情勢が変化しており、その点も含めた検証が必要。 在宅と施設の給付の範囲と水準の問題ついては、支給限度額も含めて検証すべき。医療 と介護の一体的提供については、資料のサービス、事業者の伸び、給付水準の伸びを見 ても、医療系のサービスのパーセンテージは1桁である。サービスの質と利用者の権利 擁護についても課題である。サービスの質については、ケアマネジメントがよく指摘さ れるが、要介護認定のプロセスから検証する必要がある。訪問調査からニーズアセスメ ントにつながっていないことなど一連のプロセスを再検証すべき。医療保険部会等周辺 の部会、審議会、研究会等があるので、関連する議論について資料を情報提供していた だきたい。介護保険の利用者については、障害3法の利用者と絡めて、手帳などをお持 ちの方は40歳以上・65歳以上で介護給付をどのぐらい受けているといった資料をいただ きたい。利用者の権利擁護では、介護保険と足並みをそろえて成年後見人・権利擁護制 度・地域権利擁護事業等が始まっているが、これらも検証してみる必要がある。 (山本委員)  この部会の性格・権限については、次回にもう一度局長より説明していただきたい。 町村会としても、国の負担25%のうちの5%について25%の外に財政調整金を設けるべ きであると要望しているが、権限がないところで大きな予算額を要望するのは無駄であ る。制度によって保険料や介護費用などを決める大きな要件になる。制度改正について 私どもの広域連合で検討したところ23項目あった。また、局長は先日の介護給付費分科 会において、部会を立ち上げて改正をしなければならないなら即刻前倒しをしてでも実 施するようにしましょうと発言された。委員の意見が一致すれば前倒しをしてでも実施 をしていただきたい。制度のあり方が変われば、費用の節約、それから保険料金等に大 きな影響があるので前倒しでも実施をしていただきたい。局長より制度は順調に来てい るとあったが、未完のまま見切り発車をした割には順調に来ているだけと受け止めてい る。 (貝塚部会長)  検討の23項目は、第2回目に配付していただいて、必要があれば御説明いただく。 (上田委員)  ICFというWHOで出した国際生活機能分類の普及・活用に力を入れている。IC Fは、国際障害分類の改訂版であり、障害や病気をマイナス面から見るのではなく、人 間が生きることの全体像を生活機能としてプラスの面から見ていこうというものである 。介護を考える場合に、介護を必要とするというマイナス面だけを見るのではなく、同 時に隠れているプラスを見付けるという見方が必要。またICFは、生活機能、すなわ ち人間が生きるということを3つのレベルで見る。生命、生活、人生という3つのレベ ルがあってそのすべてを同じように重視しなければいけないということが基本であり、 今までの医療に欠けていたところであり、介護についても有効である。また、ICFは 本来専門家と受益者、あるいは利用者との間の共通言語として作られたものである。当 事者の自己決定は介護保険において強調されてきたが、現在ではまだ形骸化した自己決 定しか行われていない。この部分については、ICFは今後ますます大きな影響を持っ てくる。介護は本人ができないことをしてあげるだけであって、利用者の状態をよくす ることには役立たないという考え方があるが、介護においても技術が大事であり、正し い技術を用いれば必ず介護の力でも利用者の生活・人生をよくすることができる。今後 の審議の中でデータを添えて強調していきたい。 (貝塚部会長)  委員の論点を整理して今後議論を進めていくときの貴重な材料としたい。次回は、保 険給付の状況について、円滑に進んでいるという事務局側の発言とそうではないという 委員の御意見をいろいろ出していただいて建設的な方向に持っていきたい。 (下村委員)  前倒しをあきらめたという発言があって反論がなかった。前倒しは完全にギブアップ したのか。 (中村老健局長)  介護給付費分科会で介護報酬の改定の議論だけではなく、制度見直しの議論も総合的 にすべきだというお話があった。できるだけ早く検討の場を設置し改革についても取り 組んでいくべきとあった。5年後の見直しについてどのように数えるか議論はあり17年 とも言えるが、附則の規定では5年を目途とするとある。改まるにはばかることなかれ というご意見もあり、制度見直しについてまとまるものがあれば5年にこだわらず行う と分科会で発言した。その気持ちは今も変わりがない。  したがって、検証作業をして論点を整理し、論点を決めていただいて議論していただ き、年内に一巡の議論と申し上げたが、一巡するまでもなく委員の方々で合意がまとま るのであれば、我々はその意を受けて政府内の調整を行い、法律を変えるのであれば国 会でのご審議があるので国会方面にも働きかけていきたい。まずは御審議を賜りたい。 照会先  老健局総務課企画法令係  TEL03-5253-1111(3909)