03/05/07 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・残留農薬部会合同部会議事録        平成15年度第1回毒性部会・残留農薬部会合同部会議事録 ・日時:平成15年5月7日(水) 14:00 〜16:01 ・場所:経済産業省別館10階1020会議室 ・出席委員(五十音順)  井上達  岡田齋夫  加藤保博  刈屋明  鈴木勝士  寺本昭二 豊田正武  長尾美奈子 成田弘子 林 眞  廣瀬雅雄 福島昭冶  米谷民雄  山添康 ・欠席委員(五十音順)  香山不二雄  菅野純  津金昌一郎  中澤裕之  三森国敏 ・行政機関側出席者  遠藤明(医薬局食品保健部長)  小出顕生(医薬局食品保健部企画官)  中垣俊郎(医薬局食品保健部基準課長)  植村展生(医薬局食品保健部基準課 課長補佐)  宮川昭二(医薬局食品保健部基準課 課長補佐) ・備考  本会議は公開で開催された。 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会・残留農薬部会合同部会議事次第 1.開会 2.食品保健部長挨拶 3.審議   (1)残留農薬基準の設定について 4.その他 5.閉会 ○宮川補佐  それでは、定刻になりましたので、ただいまから「薬事・食品衛生審議会 食品衛生 分科会 毒性部会・残留農薬部会合同部会」を開催させていただきます。  本日はお忙しい中、お集まりをいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろ しくお願いいたします。  開会に当たりまして、遠藤食品保健部長の方からごあいさつを申し上げます。 ○遠藤食品保健部長  食品保健部長の遠藤でございます。本日は委員の先生方は御多忙のところ御参集をい ただきまして、誠にありがとうございます。当統合同部会におきまして、これから御審 議をいただくわけでございますけれども、本審議のみならず、それぞれの御専門の分野 におきまして、私どもの食品衛生行政の推進に御尽力を賜っておりますことに、この席 をお借りいたしまして、厚く御礼を申し上げます。  残留農薬につきましては、現在国会で審議をさせております食品衛生法改正案、概要 を本日の参考資料の一番最後にお付けしておりますけれども、残留基準が設定されてい ない農薬を含む食品の流通等を原則禁止する、いわゆるポジティブ・リスト制を導入す ることとしております。これまで残留農薬基準は229 の農薬につきまして、9,000 以上 の基準値が告示をされているところでございますけれども、このポジティブ・リスト制 の導入に当たりましては、これまでに基準の設定されておりません農薬につきまして、 迅速に基準を設定していくということが不可欠でございまして、本日、御審議いただき ます基準につきましても、その一環となるわけでございます。  本日は平成13年10月10日までに御諮問を申し上げております農薬のうち、11農薬につ きまして、新規基準設定のための御審議、4農薬につきまして、基準値の見直しのため の御審議をお願いをいたしたいと考えております。国民の健康の保護という食品衛生行 政の目的を達成するため、先生方におかれましては、十分な御審議を賜りますようにお 願い申し上げて、簡単でございますが、御挨拶に代えさせていただきます。 ○宮川補佐  本日は毒性部会の委員12名中9名が出席をしていただいております。残留農薬部会の 委員11名中9名の御出席ということで、過半数に達しておりますので、本日の合同部会 が成立しておりますことを始めに御報告を申し上げたいと思います。  菅野先生は急用で御欠席だという御連絡をいただいておりまして、鈴木先生は若干遅 れていらっしゃるようです。後ほど来られると思います。  それから、今年の1月に審議会委員の改選がございまして、残留農薬部会の部会長に 新しく豊田委員が、国立医薬品・食品衛生研究所の食品部長の米谷委員が残留農薬部会 に加えられておりますので、御紹介を申し上げます。  それでは、本日の座長を毒性部会長の福島先生にお願いしたいと思います。今後の御 審議、よろしくお願いいたします。 ○福島座長  福島でございます。それでは、これから議事に入りたいと思います。  初めに、事務局から本日の議題と配布資料の確認をお願いいたします。 ○宮川補佐  お手元にお配りしてございます資料を御確認をいただければと思います。議事でござ いますが、御審議をいただきますのは、残留農薬基準の設定でございます。お配りして ございます資料は分厚いクリップ止めのものが資料1といたしまして、残留農薬調査会 及び残留農薬暴露評価調査会の報告でございます。  それから、参考資料といたしまして、1が委員名簿。2が残留農薬基準設定における 暴露評価の精密化に関する意見具申。参考資料3といたしまして、食品衛生法等の一部 を改正する法律案、健康増進法の一部を改正する法律案の概要でございます。  以上でございます。 ○福島座長  ありがとうございました。資料の不足等がありましたら、事務局の方に申し出してい ただきたいんですが、よろしいでしょうか。  それでは、これから審議に入りたいと思います。  本日は先ほど食品保健部長が言われましたように、11農薬について残留基準の新規設 定、更に既に残留基準が告示されております4農薬について、その残留基準の改正を御 審議いただきたいと思います。  両方とも既に調査会において御検討いただいておりますので、本日はその結果に基づ きまして、合同で審議を進めてまいりたいと思います。  まず、概要につきまして、事務局の方から説明をお願いいたします。 ○事務局  では、事務局の方から説明させていただきます。済みませんが、座って説明したいと 思います。  今回御審議いただく農薬につきましては、安全性評価及び摂取量評価につきまして、 調査会の方で御審議いただいた話でございまして、これは資料No. 1の分厚い資料があ りますが、そちらの方が報告書になっております。  これまでの審議経過といたしましては、1枚めくっていただきますと、参考として付 けておりますが、残留農薬の安全性評価につきまして、残留農薬部会の下に設置してお ります残留農薬調査会で最近では10回ほど審議をさせていただきました。  その次のページを開いていただきますと、今度は残留農薬の摂取量評価関係につきま して、これは残留農薬部会の下の残留農薬暴露評価調査会で4回ほど御審議いただいた ものでございます。これらの調査会で御審議いただいて了解いただいたものにつきまし て、今回、部会の方に報告させていただきます。  次のページに目次がございまして、これらの方で先ほどの11品目の新規品目、そし て、基準を見直す4品目について資料をつくっております。  まず初めに、新規に基準を設定する農薬の順番にエチクロゼート、オキサジクロメホ ン、ジクロシメット、テプラロキシジムの4物質について御説明したいと思います。  まず、次のページからページ番号を打っておりますので、それに従って御説明したい と思います。  1ページ目、エチクロゼートでございます。これの用途といたしましては、植物成長 調整剤ということでございます。  構造式の方はこちらの図に書いてあるとおりでございます。  順番に毒性評価の方からいきますと、まず代謝の関係ですが、4.の(1)から、動 物における代謝試験につきましては、経口投与を実施して、血中濃度の半減期の方は 0.5 時間以内、排泄については、主に尿中での排泄。主要な代謝反応はエステルの加水 分解ということでございます。  次の「(2)植物」の代謝試験につきましては、みかんなどを用いて実施しておりま す。 2ページ「5.安全性」の「(2)反復投与/発がん性試験」でございますが、 これにつきましては、マウス、ラット、犬を用いて実施しております。これらの試験に つきましては、発がん性は認められておりません。濃度によって各所見が認められてお りますが、それらから各試験における無毒性量を求めているところでございます。  「(3)繁殖試験」でございますけれども、これにつきましては、ラットを用いて実 施しております。結果につきまして、本薬による影響は見られなかったということてご ざいます。  「(4)催奇形性試験」でございますが、これはラットとウサギを用いて実施してお ります。これにつきましては、催奇形性は見られなかったということでございます。  「(5)遺伝毒性試験」でございますが、これにつきましては、試験を行った結果、 生体にとって特段問題となるような遺伝毒性はないということで判断しております。  これらの各種試験から、本薬の無毒性量につきましては、犬を用いた1年間の強制経 口による反復投与試験における無毒性量であります、17mg/kg/dayといたしました。  これを安全係数100 で割りまして、ADIといたしましては、0.17mg/kg/day という ことで評価いたしました。  次に、それに基づいた暴露評価ですけれども、これは9ページと10ページに具体的に 各農産物につきましての基準案ということで示させていただいております。まず、この エチクレゼートにつきましては、農薬の登録といたしましては、国内登録のみでござい まして、国際基準値でありますコーデックス基準などはございません。国内で登録され ているのはメロンやみかんなどの柑橘類、かきにつきまして登録されているところでご ざいますので、基準値案といたしましては、これらの登録保留基準に基づき設定いたし ました。  この9ページ、10ページ目の資料につきまして、農産物の名前の次の欄に書いており ます「基準値案」というところが、今回、残留基準値案として報告申し上げるところで ございます。  それより右側につきましては、登録の有無というのは、国内登録の有無を記載したも のでございます。  あと参考の基準値といたしまして、登録保留基準値があるものはその値を、国際基 準、コーデックス基準があるものはその値を、外国の参考とする基準値がある場合はそ の基準値をということで記載しているところでございます。  この基準値案に基づいて暴露評価を実施いたしましたけれども、この評価方法につき ましては、参考資料2の方に、今回お配りしておりますけれども、「残留農薬基準設定 における暴露評価の精密化に関する意見具申」に基づきまして、実施しているところで ございます。  この意見具申、参考資料の中では報告の8ページの方に新しい暴露評価の方法という ことで記載しておりますけれども、その方法に従いまして、実施しているところでござ います。  こちらのエチクロゼートの基準値案につきましては、第1段階といたしまして、本農 薬が基準値案の上限まで残留した農作物をすべて摂取すると仮定した場合、これと国民 栄養調査結果に基づいて、摂取される農薬の量を試算したところ、理論的な一日最大摂 取量、これはTMDIと呼ばれておりますが、このTMDIとADIを比較いたしまし て、ADI比が80%以下であれはその基準案を採用することにしていますけれども、今 回これで試算したところ、TMDIのADIに対する比というのは9.6 %以下というこ とでございます。この数値につきましては、資料1の4ページの方に文章としても記載 しております。こちらの方で評価いたしましたところ、ADIに対する比は9.6 %以下 ということで、この基準値案で適正なものということで判断しております。  2つ目の物質、オキサジクロメホンについて説明したいと思います。  この農薬につきまして、除草剤ということで使用されているものです。  構造式につきましては、11ページの図に載っているとおりでございます。  4.の「(1)動物」における代謝試験を経口投与により実施しております。このと きに血中濃度の半減期は10時間から14時間、排泄は主に糞中の排泄、主要な代謝経路は 6- 位メチル基やフェニル基4- 位の水酸化などがございます。  植物の代謝試験につきましては、稲などで実施しているところでございます。  12ページですが、「5.」の「(2)反復投与/発がん性試験」ですけれども、これ につきましては、マウスやラットなどを用いて実施しているところでございます。  12ページの真ん中辺りにも書いてあるんですけれども、これらの試験につきまして、 肝細胞腺腫や肝細胞がんが認めらられているという所見が見られておりますので、これ につきまして、発生機序を各種試験で確認したところ、この発がん性のメカニズムにつ きましては、非遺伝毒性メカニズムであるということで判断しております。  続きまして、「(3)繁殖試験」でございますけれども、これはラットを用いて実施 をしております。結果は繁殖に対する影響は認められなかったということでございま す。  13ページ「(4)催奇形性試験」でございますが、これはラットとウサギを用いて実 施しております。この結果につきましては、催奇形性は認められなかったということで ございます。  「(5)遺伝毒性試験」につきましては、これは各種試験を実施いたしましたが、い ずれも陰性であったということでございます。  以上の試験から、本薬の無毒性量につきましては、ラットを用いた24か月間の混餌投 与による反復投与、発がん性試験における0.906mg/kg/dayを無毒性量として、この値を 安全係数100 で割って0.0090mg/kg/day ということでADIを設定いたしました。  続きまして、このADIに基づいて暴露評価を行っておりますけれども、文章として は14ページ、基準値案につきましては、19ページでございます。  オキサジクロメホンにつきましては、国内登録のみ、これは米のみでございます。国 際基準値はございません。  これらから基準値案につきましては、登録保留基準に基づいて設定することといたし ました。この基準値案に基づいて暴露評価を実施したところ、先ほどと同じように、T MDIの評価を行ったところ、TMDIのADIに対する比というのは7.0 %以下でご ざいました。したがって、この基準値案として採用することといたしました。  続きまして21ページのジクロシメットでございますけれども、このジクロシメットに つきましては、用途は殺菌剤として用いられております。  次に動物における代謝試験につきましては、経口投与を実施して、血中濃度の半減期 は18時間から32時間、排泄は主に糞中での排泄。それで性差があるようで、雄の方が糞 中排泄の割合が多いということでございます。主要な対策経路はフェニル基の3位の水 酸化などでございます。  植物の代謝試験につきましては、稲などで実施しているところでございます。  22ページ「(2)反復投与/発がん性試験」でございますけれども、これはマウスや ラットなどを用いて実施しております。ここでマウスを用いた試験では、肝細胞腺腫が 認められているところでございまして、こちらの発生機序につきまして、同じような各 種試験で確認したところ、この結果、非遺伝毒性メカニズムということで考察している ところでございます。  「(3)繁殖試験」でございますが、これはラットを用いて実施しております。この 結果、繁殖に対する影響は認められなかったということでございます。  「(4)催奇形性試験」でございますが、これはラットとウサギを用いて実施してお ります。この結果、催奇形性は認められなかったということでございます。  23ページ「遺伝毒性試験」ですが、これは各種試験を実施したところ、その結果、い ずれも陰性を示したというところでございます。  これらの試験から、本薬の無毒性量を求めたところ、ラットを用いた104 週間の混餌 投与による反復投与/発がん性試験の結果である0.5mg/kg/dayを無毒性量といたしまし て、これを安全係数100 で割りまして、0.005mg/kg/dayをADIとして評価いたしまし た。  続きまして、このADIの評価に基づいて暴露評価を行ったところ、文章としては、 23ページの下、基準値案につきましては29ページでございます。  このジクロシメットにつきましては、農薬の登録は国内登録のみ、これは米のみでご ざいます。参考とする国際基準値などはございません。これらから基準値案につきまし ては、国内の登録保留基準に基づいて設定することといたしました。この基準値案に基 づいて暴露評価を実施したところ、TMDI値のADIに対する比は62.7%以下という ことで、80%以下でございますので、この基準値を基準値案として採用いたしました。  4物質目のテプラロキシジムでございますが、これは31ページでございます。この農 薬は除草剤として使用されております。  毒性評価では、まず動物における代謝試験を経口投与で実施したところ、血中濃度の 半減期は4時間程度、排泄は主に尿中での排泄、主要な代謝経路はピラン環の酸化や エーテル側鎖の切断などでございます。  植物の代謝試験につきましては、大豆やなたね、てんさいなどで実施しております。  32ページ「(2)反復試験/発がん性試験」でございますけれども、これらについて はマウス、ラットなどを用いて実施しております。ここでラットを用いた試験では、肝 細胞がんが認められておりますので、このがんにつきまして、発生機序を各種試験で確 認したところ、このメスニズムは非遺伝毒性メカニズムということで考察しておりま す。  続きまして、33ページ「(3)繁殖試験」でございますが、これはラットを用いて実 施しております。その結果、繁殖に対する影響は認められなかったところでございま す。  「(4)催奇形性試験」につきましては、ラットとウサギを用いて実施しておりまし て、その結果、催奇形性は認められなかったということでございます。  「(5)遺伝毒性試験」でございますが、各種試験を実施しておりましたが、Rec- assay の試験につきましては陽性でありましたけれども、ほかの各種試験につきまして は、陰性を示したところでございますので、総合的な判断といたしましては、遺伝毒性 としては特段問題となるようなものはないということで判断しているところでございま す。  34ページ、これらの試験から本薬の無毒性量を求めたところ、ラットを用いた24か月 間の混餌投与による反復投与/発がん性試験における無毒性量である5mg/kg/day とい たしまして、この値を安全係数100 で割りまして、0.05mg/kg/day をADIとして評価 いたしました。  こちらのADIに基づいて暴露評価を行っておりますが、基準値案につきましては、 49ページでございます。  このテプラロキシジムにつきましては、国内登録と外国基準値として米国の基準値が 存在しております。国際基準の方はございません。基準値の設定につきましては、この 国内登録基準と米国の基準を基にして基準値案を設定しているところでございます。  この基準値案に基づいて暴露評価を実施いたしましたところ、TMDIのADIに対 する比につきましては、26.3%以下でございました。したがいまして、この案を基準値 案として採用することといたしました。  とりあえず4物質につきまして、以上の評価が調査会において了承されたところでご ざいます。  以上で御説明を終わります。 ○福島座長  ありがとうございました。それでは、これから質疑に入りますが、その前に残留農薬 調査会の井上座長と、残留農薬暴露評価調査会米谷座長から、補足がありましたら説明 していただきたいと思います。  まず、最初に井上先生お願いできますか。 ○井上委員  4農薬まとめて御紹介いただきましたが、最初の2つにつきましては、余りコメント はありませんが、エチクロゼートは赤血球や血球系を含む細胞毒性が認められるという ことで、発がん性等のないものであります。無毒性量がこの場合にはイヌで取っており ますが、17mg/kg と用量だけでごらんいただいてもおわかりのとおり、比較的毒性の低 いものであります。  2番目に御紹介いただきましたオキサジクロメホン、これは主に肝毒性が認められま す。これには、びまん性の肝細胞の脂肪化、肝腫大、更には肝細胞腺腫といった、肝細 胞がんの発生が認められておりますので、これに対する検討が行われております。  本日も幾つかの剤が出てまいりますが、こういった腫瘍発生が示唆される場合の安全 性の対応は幾つかの方法がございますが、このものにつきましては、遺伝毒性試験がい ずれも陰性でありますので、あとは発がんメカニズムを大雑把に分けたときの考え方で すが、いろいろ相互に織り合っておりますけれども、大雑把に分けたときに、遺伝子毒 性がある場合とない場合に分けて考える。この場合には遺伝子毒性がないカテゴリーの 方に入るであろうということで、そういう場合には一概には申しませんけれども、しば しば閾値が求められて、かつそのメカニズムがわかった方が対応がよろしいわけですの で、そういったことが調べられております。  ここでは肝細胞の増殖活性について見たほか、細胞と細胞をつなぎ合わせるギャップ 結合というものがプロモーターと言われる非遺伝子毒性物質で壊されるという現象がわ かっておりますので、それでどのくらいの用量でそういったことが認められるかといっ たようなことが検討されておりまして、それらの用量関係などを併せて、非遺伝毒性メ カニズムであると考えられているわけであります。これについても、1mgに近い用量の 無毒性量を示しており、比較的毒性の弱いものと判断されます。  3番目のジクロシメットも、生体影響としては肝毒性物質に該当するものであります が、このものにつきましても、肝細胞の腫大が観察されておりますので、そのメカニズ ムが検討されております。  薬物代謝酵素の誘導を検討して、フェノバール様の酵素誘導が示唆されたということ で、こうしたタイプのものは、ほかのタイプの薬物代謝酵素が誘導されていなければ基 本的にはプロモーション活性、いわゆる非遺伝毒性メカニズムということが考えられて おりますので、このものについてはそういうふうな判断で事務局の方でも御説明になり ました。  最後のテプラロキシジムですが、これも肝腫瘍の発生が認められておりますので、そ の発がんメカニズムについての検討が行われております。このものについての対応は先 ほど来2つほどのタイプが出ましたが、このものにつきましては、御説明をお聞きいた だいて、御承知のとおり、遺伝毒性試験で総合的には陰性であろうという判断ではござ いましたが、Rec-assay というシステムで陽性であったことなどがありましたので、イ ニシエーション試験とイニシエーション/プロモーション試験という両方が行われてお ります。  イニシエーション試験と申しますのは、発がん毒性を起こす陽性物質とともに、これ が同様の役割を果たすかどうかを後でプロモーション活性のあるものを投与して比較す るわけでございますが、このものにそうした遺伝子毒性の発がんメカニズムは認められ ないということがわかりましたので、これに伴って、これまでと同様に、プロモーショ ンに対する検討が行われております。  このプロモーションに関する検討は、あらかじめイニシエーターを投与しておきまし て、軽い遺伝毒性、それ単独では腫瘍性が認められない程度の遺伝毒性物質を投与して おきまして、この場合には確かにDENという物質だったかと思いますが、その後にこ のものと、それから陽性対象の別のもの、この場合にはフェノバールだったと思います が、それを投与しておきます。そうしますと、確かにある程度のプロモーション活性が 認められて、そのメカニズムがある程度わかったということでございまして、これに基 づいてこの物質はプロモーション作用を有する非遺伝子障害性のメカニズムによるもの であるので、しかもその閾値があるので、発がん性の問題には特段の問題はなかろうと いうふうな判断がされたというところが補足でございます。  主として毒性の安全性部分について御説明いたしましたが、以上でございます。 ○福島座長  ありがとうございました。  それでは、米谷先生、補足説明がありましたらお願いできますか。 ○米谷委員  今回から残留農薬部会に入りました米谷でございます。よろしくお願いします。  残留農薬の暴露評価調査会ではこの資料の3枚目にございますように、そこには委員 の方々の名簿がございますけれども、その委員の方々の御協力を得まして、検討させて いただきました。その上の方に第1回から第4回と書いてございますけれども、実は私 が調査会長を承ったのは第4回だけでございまして、今年の3月20日から努めさせてい ただいております。それ以前の3回は現在の部会長の豊田先生が座長をされておりまし たので、後で補足説明をしていただければありがたいと思います。  私の担当しましたのは第4回ですので、エチクロゼートとクロルピリホスだったと思 いますけれども、エチクロゼートは第1回に一応の案が決まったわけですけれども、こ の第4回になりまして、柑橘の適用追加があったということで、その柑橘が加わってお ります。第2番目のオキサジクロメホンと3番目のジクロシメットにつきましては、適 用はお米だけですので、特に問題にはならなかったように記憶しております。  4番目のテプラロキシジムにつきましては、国内の基準と米国のものを適用して、決 まっております。  以上でございますけれども、何か部会長からありましたらどうぞお願いいたします。 ○福島座長  豊田先生、ございますか。 ○豊田部会長  いえ。 ○福島座長  どうもありがとうございました。  今、4品目まとめて説明していただきました。これから質疑に入りたいと思います が、進行上、1つずつ進めたいと思います。まず初めにエチクロゼートにつきまして、 御質問ございますか。 井上先生のお話ですと、造血毒性がある。ただし、発がん性は 認められないということです。無毒性量はイヌの試験結果をとっております。よろしい でしょうか。  では、次にオキサジクロメホンに入ります。これについてはどうでしょうか。肝毒性 があるということで、それに付随する問題といたしまして、肝臓に発がん性がある。し かし、そのメカニズムは非遺伝毒性メカニズムであるということですが。どなたかござ いますか。よろしいでしょうか。  それでは、次に3番目に入ります。ジクロシメットでございますが、この剤につきま してはどうでしょうか。これも先ほどと同様、肝毒性があるということであります。そ れから、肝細胞腺腫の発生が認められますが、フェノバルビタール様の酵素誘導が示唆 されているということで、非遺伝毒性発がんメカニズムであるということです。よろし いですか。  ありがとうございました。  では4つ目にいきます。テプラロキシジム、これも同様に肝毒性があり、肝細胞がん の肝発がん性があるということで、この問題に関しては、遺伝毒性試験のところで、 Rec-assay で陽性であったけれども、全体的には特段問題となるような遺伝毒性はな い。いろいろなメスニズムの試験が行われておりまして、その結果、非遺伝毒性メカニ ズムであるという結論がされております。よろしいでしょうか。  どうもありがとうございました。  以上4つ終わりまして、次に入りたいと思います。事務局の方から説明をお願いでき ますか。 ○事務局  続きまして、新規に基準を設定する農薬、資料1の51ページ以降、トリネキサパック エチル、ファモキサドン、フェノキサニル、及びフェノキサプロップエチルの4剤につ いて、簡単に概要を御説明をさせていただきます。  51ページ、トリネキサパックエチルについてですが、用途は植物成長調整剤でありま す。 構造式は51ページに記載のとおりであります。  動物代謝についてですが、ラットを用いた試験が実施をされております。主要な代謝 経路はエステル結合の加水分解と考えられます。  また、植物の代謝試験も実施されておりまして、水稲を用いた試験が実施をされてお ります。  続きまして52ページですが「反復投与/発がん性試験」についてです。  こちらはマウス、ラット、ビーグル犬を用いた試験が実施をされております。発がん 性は認められないといった結果でございます。  「(3)繁殖試験」でございますが、こちらはラットを用いた混餌の2世代繁殖試験 が実施をされております。体重増加抑制等見られておりますが、無毒性量については 10ppm と考えられます。  続きまして、催奇形性試験ですが、ラットを用いた試験を実施をされております。本 薬投与による影響は認められない。催奇形性は認められないと考えられます。  また、ウサギを用いた試験も実施をされておりますが、こちらも催奇形性は認められ ないという結論でございます。  遺伝毒性試験の結果ですが、各種試験実施をされております。ただ、結果の方はいず れも陰性ということで、遺伝毒性はないものと考えられます。  ADIの設定でありますが、ラットを用いた2世代繁殖試験の無毒性量0.59mg/Kg/day を基に、安全係数を100 といたしまして、ADIを0.0059mg/Kg/day ということで評価 をいただいております。  続きまして、基準値案の方であります。資料1の61ページ、62ページをごらんくださ い。トリネキサパックエチルにつきましては、国内登録がお米にあるのみでありまし て、参考とする国際基準や外国基準はないことから、基準値案といたしましては、農薬 の登録保留基準に基づき、0.5ppmを設定をしております。  TMDI方式で計算をいたしましたところ、ADI比は53.1%以下であります。  続きまして、63ページのファモキサドンであります。用途は殺菌剤であります。  構造式は記載のとおりです。  代謝でありますが、動物ではラットを用いた試験、またビーグル犬を用いた試験が実 施をされております。  植物の方でありますが、ばれいしょ、ぶどう、トマトを用いた試験が実施をされてお ります。  反復投与、発がん性試験についてですが、まず、ビーグル犬を用いた13週間亜急性毒 性試験におきましては、若干、低用量群でも白内障という所見が認められております。  そのほかラット、マウス、ビーグル犬等で試験を実施されておりますが、発がん性な どは認められておりません。  65ページの繁殖試験ですが、これはラットを用いた混餌の試験でありますが、最高用 量群等でトリグリセリドの減少などの所見が見られております。無毒性量は200ppmであ ります。  催奇形性試験ですが、ラットを用いた試験が実施をされておりまして、催奇形性は認 められておりません。  66ページの遺伝毒性試験でありますが、ヒトリンパ球を用いました染色体異常試験に おいて、若干陽性の結果が得られておりますが、そのほかの試験では陰性であったこと から、生体にとって特段問題になるような遺伝毒性はないものと考えられます。  以上、試験の結果からでありますが、ADIの設定は、イヌを用いた52週間反復投与 /毒性試験の無毒性量1.2mg/kg/dayと、安全係数を100 といたしまして、ADIを 0.012mg/kg/dayと評価をいただいております。  続きまして、基準値案についてですが、資料の74ページと75ページをごらんくださ い。ファモキサドンについてですが、国内登録は、大豆、ばれいしょ、白菜等にござい ます。そのほか参考とする国際基準、外国基準等はないことから、登録保留基準値に基 づきまして、大豆0.2ppm等基準値案を作成させていただいております。  TMDI方式で計算したところ、ADI比46.1%以下であります。  続きまして、資料76ページフェノキサニルであります。  用途は殺菌剤であります。  構造式は記載のとおりです。  代謝の関係ですが、ラットを用いた試験、植物では水稲を使った試験が実施をされて おります。  77ページ「反復投与/発がん性試験」でありますが、こちらはマウスを用いた18か月 間の発がん性試験におきまして、肝臓の関係で細胞増殖、肝細胞腺腫などが認められて おりますが、こちらについては、非遺伝毒性メカニズムと考えられます。  そのほかラットを用いた試験におきましては、24か月の試験ですが、発がん性は認め られておりません。  続きまして78ページ「(3)繁殖試験」でございます。こちらはラットを用いた試 験、2世代の繁殖試験が実施をされておりまして、繁殖に対する影響は認められており ません。催奇形性試験ですが、ラットを用いた試験では催奇形性は認められない。  ウサギを用いた試験におきましても、認められないという結果でございます。  遺伝毒性の試験でありますが、Rec-assay 試験ですとか、復帰突然変異試験等におき まして、陽性が認められておりますが、そのほかの試験については、すべて陰性であり ます。ただ、in vivo 小核試験においては陰性であるということから、生体にとって特 段問題となるような遺伝毒性はないものと考えられます。  以上の試験結果から、79ページでありますが、ADIの設定といたしまして、24か月 間、ラットを用いた反復投与/発がん性併合試験の無毒性量0.698mg/kg/day と、安全 係数100 からADIを0.0069mg/kg/day という評価をいただいております。  基準値案についてですが、資料87ページをごらんください。  フェノキサニルにつきましては、国内登録は米の登録ということで、参考とするその 他基準はないことから、登録保留基準に基づいて1ppm 基準値案を作成しております。 これはEDI方式で計算したところ、ADI比は31.2%以下であります。  続きまして、89ページ、フェノキサプロップエチルであります。  フェノキサプロックエチルは、用途は除草剤であります。89ページ、3.に記載さし ていただいておりますが、こちらの剤については、R体及びS体のラセミ体でございま す。フェノキサプロップ−P−エチルにつきましては、R体を多く含む物質ということ で、名称の方を使い分けさせていただいております。  まず動物代謝についてですが、これはフェノキサプロップエチルとP−エチルの両方 を用いた試験、ラットを用いた試験が実施をされております。  また、植物代謝の方も同様に大豆を用いた試験といたしまして、2つの物質について 試験が実施をされております。  91ページでございますが、反復投与/発がん性試験であります。まずフェノキサプ ロップエチルを用いた試験におきまして、マウス、ラット、イヌを用いた試験が実施を されておりますが、発がん性につきましては認められないという結果が得られておりま す。フェノキサプロップ−P−エチルを用いた試験についても、マウス、ラット、ビー グル犬を用いた試験が実施をされております。  92ページですが、繁殖試験、こちらはフェノキサプロップエチルを用いた試験で、 ラットを用いた試験で、繁殖に対する影響は認められないという結果が得られておりま す。  催奇形性試験でありますが、こちらもフェノキサプロップエチルとフェノキサプロッ プ−P−エチルそれぞれについて試験が実施をされております。マウス、ラット、ウサ ギについて試験が実施をされておりますが、ラットの試験において催奇形性は認められ ないという結果が得られております。フェノキサプロップ−P−エチルを用いた試験に おきましても、ラットを用いた試験で催奇形性は認められない。また、ウサギを用いた 試験でも、胎児動物では影響は認められないといった結果が得られております。  遺伝毒性試験でありますが、こちらも2物質それぞれで実施をされておりますが、い ずれも陰性という結果でございます。  以上の試験結果を踏まえまして、ADIの設定でありますが、フェノキサプロップエ チルを用いたラットの2世代繁殖試験の無毒性量0.28mg/kg/day と安全係数の100 を用 いまして、ADIを0.0028mg/kg/day という評価をいただいております。  *が付いた部分でございますが、フェノキサプロップエチル、及びP−エチルを用い た実験を比較いたしますと、両者の毒性プロフィール等は類似をしておりますので、共 通の生体影響が予想されるということで、基準値につきましては、両者合わせて設定す るというのが適当であるという結論をいただいております。  続きまして、基準値案でありますが、資料104 ページと105 ページをごらんくださ い。フェノキサプロップエチルにつきましては、国内登録、例えば大豆ですとかキャベ ツなどのほかに、米国、カナダ、オーストラリアにおいて残留基準が設定をされており ます。このうち例といたしまして登録がございます大豆やかんしょ、てんさい、キャベ ツといったものにつきましては、登録保留基準に基づき設定をいたしております。その ほか、小麦がカリフラワー、アスパラガスといったものについては、海外の基準を参考 に基準案を作成をしております。ここで105 ページの表の下*1にありますように、 オーストラリアで検出限界として設定されている基準値を参考にしている場合におきま しては、我が国の分析法に基づく検出限界を基準値案として設定をさせていただいてお ります。  以上の基準値案につきまして、TMDI方式で計算したところ、ADI比は60.7%で あります。  以上です。 ○福島座長  ありがとうございました。それでは、以上の4品目につきまして、井上先生、補足説 明をお願いできますか。 ○井上委員  ただいま御説明がありましたのは、トリネキサパックエチルからですが、これにつき ましては、遺伝毒性はございませんで、発がん性は認められませんでした。事務局の御 説明にありましたように、このもののがん原性を疑うようなものはございませんで、毒 性の指標は細胞毒性でございます。血球にも出ておりますし、肝臓の細胞にも胆管上皮 などにも若干の毒性が認められるということでございますが、特段な深刻な毒性、ま た、低用量に至る毒性はないということでございます。  その次はファモキサドンでございますが、このものについては、事務局の御説明にあ りましたように、比較的低用量に至る白内障がたまたま観察されておりました。これに ついては、ビーグル犬等にお詳しい先生でいらっしゃる鈴木先生にでも後で補足してい ただくとわかりやすいかと思いますが、私どもはこれを偶発的なものととらえました。 それ以外にはこの剤についても、発がん性は全くございません。事務局の御説明にあり ましたように、遺伝毒性試験でも、ネガティブで陰性でありました。1つだけ代謝活性 化を導入したヒトリンパ球で陽性でありましたけれども、これについては、ヒトリンパ 球を用いた染色体試験等を行って出ないので、基本的によろしいのではないかと結論さ れておりますけれども、これについてはやはり遺伝毒性の先生方の方からもし、必要で したらコメントをいただければと思います。  それ以外につきましては、このものも細胞毒性、肝細胞を標的としたような、それ以 外にも多少あるかもしれませんが、そういった毒性でございます。小葉中心性の肝細胞 肥大とか、そういったものが発がん性が認められない範囲で観察されております。  このように遺伝子毒性のないものでも、農薬は2年間の発がん性、慢性毒性試験が行 われているわけでございまして、このものについて、そういった毒性はないということ でございます。  その次にフェノキサニルでございますが、これにつきましては、標的臓器は大別しま すと肝臓でございます。このものの発がんメカニズムの検討は、肝臓の薬物代謝酵素誘 導試験という方法で、前回の剤の中でも御説明いたしましたが、そういったことが行わ れております。その結果は詳細は省きますが、フェノバルビタール様の酵素誘導を示し たということが、事務局が御説明したとおりでございます。  このものについては、遺伝毒性がネガティブでありますので、今の非遺伝毒性メカニ ズムに沿って安全限界が定められるであろうという考え方の下に判断をいたしました。  フェノキサプロップエチルでございますが、これにつきましては、やはり発がん性が 遺伝毒性を含めて認められないということでございまして、軽い肝臓を標的とした毒 性、あるいは腎臓にも若干の毒性が認められておりますが、肝重量はラットの方では減 少ということでございまして、発がん性と関係する所見は全く危惧はないと考えられま す。若干、血球系の細胞毒性も観察されますが、特段の深刻な毒性はないであろうと考 えられます。  以上です。 ○福島座長  それでは、米谷先生、補足をお願いできますか。 ○米谷委員  5番目のトリネキサパックエチル、6番目のファモキサドン、7番目のフェノキサニ ルにつきましては、外国の参考基準値はございませんで、国内の登録保留基準のものを そのまま持ってきて、了承されております。  8番目のフェノキサプロップエチル、あるいはフェノキサプロップ−P−エチルです が、これはもともともラセミ体でして、R体の方のパーセントが非常に高いのがP−エ チルですけれども、世界的にはPの方がメインに使われているということだったかと思 います。これには米国、カナダほかオーストラリアに基準値がございますが、それを参 考にして今回の基準値案が出てきております。  調査会のときのお話では、ラセミ体が使われている国は余りなくて、日本が先進国と 言いますか、OECDの加盟国の中では例外的な国だという意見が出ていたかと思いま す。  ただ、先ほど事務局の方からの御説明、94ページのところで御説明がありましたよう に、今回の基準値案につきましては、両方とも毒性が類似しているということで、両者 合わせて設定するのが適当であるということです。  以上でございます。 ○福島座長  ありがとうございました。それでは、1品目ずついきたいと思いますが、まず最初に トリネキサパックエチルにつきまして、どうぞ御審議をお願いいたします。  先ほどの井上先生の御説明ですと、細胞毒性というのがあって、肝臓、それから血液 系に毒性が出ている。ただし、発がん性は認められない、遺伝毒性もなしということ で、ADIが53ページのように設定されているということです。よろしいですか。  ありがとうございました。  それでは、次にファモキサドンについて審議をお願いいたします。先ほど井上先生の 話ですと、白内障が認められたということで、その点につきまして、鈴木先生、何かコ メントございますが、 ○鈴木委員  御指名でございますので、若干補足いたしますが、イヌの中で比較的純系のイヌで遺 伝的な根拠のために白内障が生ずるということが、最近になってかなりはっきりしてき た部分がございます。ビークル犬も比較的そうした遺伝的な根拠のために白内障が生ず るということがよく起こる系統だと認識されております。勿論、白内障というのは耐性 期の感染症から始まって薬物によっても生じますし、その後、糖尿病性の白内障等々、 もしくは老化に伴ってということがあるんですけれども、今回の事例で見ますと、2回 ほどやられています。反復毒性の話についてと亜急性のところと2回ほどやられている んですが、1年の間に同一のラボで行われておりまして、恐らくは同じ繁殖場から購入 したもので、一部に用量も重なる部分があるんですが、亜急性毒性では白内障が出たの に慢性毒性では出ないとか、すべての動物に出るわけではないとか、比較的早期に発現 しているということを考慮いたしますと、これは薬物によって誘発されたものとは考え にくくて、遺伝的な根拠のあるものではないかと考えております。  理論の中ではこの辺のところがなかなか確言できないということで、亜急性のところ で、無毒性では設定できないということになっていたので、*のあるようなところで一 応と書きが書いてございますが、ここに書いてあるとおりで、亜急性毒性の問題はある 意味で無視してもよいであろうと考えております。  以上です。 ○福島座長  ありがとうございます。今の白内障の件はよろしいでしょうか。確認ですが、鈴木先 生、井上先生、これはこの剤の毒性によるものでなはい。偶発的なものであると解釈し てよろしいわけですか。 ○鈴木委員  私はそういうふうに考えました。もう一つの根拠というのは、薬物の吸収・分布のと ころで、ビーグル犬でわざわざ眼房水、眼球、眼残渣等々の濃度というのを測ってくれ ておりまして、この濃度を見ますと、非常に低くて、他の高濃度で残留するというか、 比較的高濃度で推移する臓器と比べますと、目にはほとんど薬が行っておりませんか ら、その点からしても、薬物が関与したという可能性はかなり低いと考えてよいと思っ ております。 ○福島座長  井上先生、どうぞ。 ○井上委員  ただいまの鈴木先生のコメントは大変重要でありまして、私の補足でも申しましたよ うに、この剤は細胞毒性がありますので、その局所に確かにそれなりの濃度で達すれば 毒性がいっている可能性もありますので、そのものに対しても、そういう判断を前提に して検討しなければならないわけですけれども、私どももそういう目で見ましたけれど も、今のような鈴木先生の、実際に薬剤の濃度がそこまで到達している量が低いという ようなことなどを併せますと、そういうふうに考えてよろしいのではないかと思った次 第です。  以上です。 ○福島座長  ありがとうございました。そのほかにございますか。66ページにはADIが設定され たように書かれています。よろしいですか。  ありがとうございました。  続きまして、フェノキサニルに入ります。これについてはどうでしょうか。先ほどの 説明ですと、肝毒性が見られたということでありますが、発がんの機序として非遺伝毒 性メカニズムであるということです。ADIは79ページのごとくになっております。  ありがとうございました。  次、8つ目ですが、フェノキサプロップエチルとフェノキサプロップ−P−エチル、 この2つ毒性試験が行われております。いずれも肝毒性と弱い腎毒性があるということ であります。ADIは94ページのようになっております。よろしいですか。 ○加藤委員  単なるミスタイプではないかと思うところがございますので、御指摘させていただき ます。90ページの中央の段、植物のフェノキサプロップ−P−エチルの一番最後の行で す、「次いでエーテル結合への開裂」と書いてあるんですが、これは前後の文章、それ から構造から考えて、エーテル結合の開裂というミスではないかと思いますので、御確 認いただいた上で「への」を取っていただくのが妥当ではないかと思います。 ○福島座長  事務局の方で確認して修正しておいていただけますか。ありがとうございました。よ ろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは次に入りたいと思いま す。  次に、事務局の方から御説明お願いできますか。 ○事務局  それでは、新規に基準を策定する残りの3物質、フェントラザミド、フルアジナム、 フルミオキサジンの物質について説明いたしたいと思います。資料は106 ページでござ います。  フェントラザミドでございますけれども、これは除草剤として使用されております。  107 ページに「反復投与/発がん性試験」がございますけれども、これはマウス、 ラット、イヌを用いて実施しております。ラットを用いた試験では、膀胱の移行性上皮 がんなどのがんが認められていることから、発生機序を各種試験で確認しております。 その結果、話は前後いたしますけれども、109 ページの(5)の遺伝毒性試験につきま しても、各種試験いずれも陰性であることから、この発生のメカニズムとしては、非遺 伝毒性メカニズムということで考えられております。  先ほどの反復投与試験に戻りますが、こちらのラットを用いた同じ試験で坐骨神経の 変性が認められておりますけれども、これにつきましては、ほかの急性遅発性神経毒性 試験などによって、同じ神経毒性の有無を確認したところ、歩行異常とか、病理組織学 的異常は認められないこと、また、ほかのげっ歯類やイヌを用いた短期毒性において も、このような病変は認められなかったことから、人に影響を及ぼすような神経毒性は ないということで判断しております。  108 ページでございますけれども、「(3)繁殖試験」でございますが、これはラッ トを用いて実施しております。こちらの方は新生児に対して生後4日生存率の低下や保 育率の低下などが認められるところでございますけれども、所見の方と濃度から勘案し て、本試験における無毒性量を求めているところでございます。  「(4)催奇形性試験」につきましては、ラットとウサギを用いて実施しておりま す。ウサギを用いた試験では、動物の方の流産とか血中のγ−GTPの増加などが認め られているところですが、これらの所見を踏まえまして、濃度から勘案して、本試験に おける無毒性量を求めているところでございます。遺伝毒性試験は先ほど触れたように すべて結果は陰性ということでございます。  109 ページ、ADIの設定ですが、これからの試験から本薬の無毒性量につきまし て、イヌを用いた1年間の混餌投与による反復投与試験における0.52mg/kg/day という こととし、この値を安全係数100 で割りまして、0.0052mg/kg/day といたしました。  それを踏まえまして、暴露評価ですが、これは121 ページでございますが、フェント ラザミドにつきましては、農薬の登録といたしましては、国内登録のみ、米のみでござ います。国際基準値はございません。これらから基準値案は登録保留基準に基づいて設 定いたしました。その基準案に基づいて暴露評価を実施したところ、TMDIのADI に対する比は12.1%以下でございました。したがいまして、この基準値案を採用いたし ました。  続きまして、123 ページのフルアジナムでございますけれども、これは殺菌剤として 使用されております。毒性評価ですが、124 ページ「(2)反復投与/発がん性試験」 でございますけれども、これにつきましては、マウス、ラットなどを用いて実施してお ります。マウスを用いた試験では、肝細胞腫瘍が認められておりますので、これで発生 機序を各種試験で確認しております。また、126 ページ目の遺伝毒性試験、これらの結 果からメカニズムとしても非遺伝毒性メカニズムということで考察されております。  125 ページの「(3)繁殖試験」でございますけれども、これはラットを用いて実施 しております。結果として、母体での着床数の低下や、総産児数の低下などが認められ ておりますが、この各所見とか濃度を勘案いたしまして、無毒性量を求めているところ でございます。  続きまして、「(4)催奇形性試験」でございますが、これはラットとウサギを用い て実施しております。ラットを用いた試験では、高用量で催奇形性が認められておりま すけれども、それ以下では、あとは各所見と濃度から勘案いたしまして、無毒性量を設 定していところでございます。  126 ページ、「(5)遺伝毒性試験」は結果はすべて陰性ということです。  以上の試験から、本薬の無毒性量は、イヌを用いた52週間の混餌投与による反復投与 試験における無毒性量である1mg/kg/dayとし、それを安全係数100 で割って 0.01mg/kg/day をADIといたしました。  これを踏まえまして、暴露評価を行いまして、基準値案は132 ページでございます。 このフルアジナムにつきましては、国内登録と外国の登録といたしましては、オースト ラリアの基準値が存在いたします。国際基準はございません。したがいまして、基準値 案の設定につきましては、登録保留基準とオーストラリアの基準値を基にいたしまし た。これで暴露評価を実施したところ、TMDIのADIに対する比は55.4%以下でご ざいましたので、この基準値案を採用いたしました。  最後に134 ページ、フルミオキサジンでございますけれども、こちらは135 ページの 反復投与発がん性試験でございますが、これはマウス、ラットなどを用いて実施してお ります。これらの試験では発がん性は認められておりませんので、各所見から各試験に おける無毒性量を求めているところでございます。  なお、ラットを用いた試験の中では、鉄芽球数の増加や、血液関係などの作用などが 確認されているところでございます。  「(3)繁殖試験」ですが、これはラットを用いて実施しております。こちらは高用 量、300ppmとか200ppmでは生存率の低下などが認められておりますが、あとは各所見と 濃度とを勘案いたしまして、無毒性量を求められているところでございます。  続きまして、136 ページ「催奇形性試験」でございますが、これはラットとウサギを 用いて実施しております。ラットを用いた試験では高用量で心臓脈管系異常、波状肋骨 などが認められておりますけれども、あとは所見の発生と濃度から勘案いたしまして、 無毒性量を求めているところでございます。  「(5)遺伝毒性試験」ですが、これはチャイニーズハムスター培養細胞を用いた染 色体異常試験で代謝活性存在下で陽性を示しましたが、ほかの遺伝毒性試験におきまし て、結果が陰性であることや、これとは別の高用量まで検討した小核試験におきまし て、結果が陰性であることから、総合的に遺伝毒性はないということで判断していると ころでございます。  以上の試験から、本薬の無毒性量はラットを用いた24か月間の混餌投与による反復投 与/発がん性併合試験における1.8mg/kg/dayを無毒性量といたしまして、これを安全係 数100 で割りまして、0.018mg/kg/dayをADIといたしました。  これに基づいて基準値案でございますが、これは146 ページでございます。  フルミオキサジンにつきまして、国内登録と、外国の基準値として米国の基準値が存 在いたします。国際基準はございません。したがいまして、基準値案の設定につきまし ては、登録保留基準値と米国の基準値を参考としております。この基準値案に基づいて 暴露評価を実施したところ、TMDIのADIに対する比は3.5 %以下でございました ので、この基準値案を採用いたしたところでございます。  以上で説明を終わりたいと思います。 ○福島座長  ありがとうございました。それでは、井上先生、補足をお願いできますか。 ○井上委員  3剤で、フェントラザミドでございますが、これはターゲットオルガンが尿路系、特 に膀胱を腫瘍を発生させるという性質を持っております。遺伝毒性は事務局の御説明に もありましたように、このものの結果は陰性でございます。したがいまして、そのこと を受けて、ここでできている腫瘍のプロモーション効果を調べております。後で座長の 福島先生もそうでございますが、広瀬先生等、この領域の御専門でございますので、必 要がありましたら補足していただきたいと思いますが、この尿路系をターゲットにした イニシエーターをあらかじめ投与しておきまして、そして、このものがプロモーション 作用があるかどうかを見るというタイプの試験をやっております。  そのイニシエーターとしましては、ハイドロブチルニトロサミン、BBNという物質 を投与して、これを弱いイニシエーターとして低用量投与しておきまして、これにこの 物質、あるいはポジティブ・コントロールを投与しているわけであります。ポジティブ ・コントロールはアスコルビン酸の50,000ppmを投与しております。  その結果、このものはプロモーション作用を有する。その用量にも32週間の混餌投与 をやって、200ppmのところまでしか腫瘍が観察されないので、50ppm 以下については、 無毒性量と考えてよかろうということで、閾値も観察されるということで、膀胱の腫瘍 が観察されましたが、安全な使い方が行われれば大丈夫であろうという考え方をいたし たわけであります。  2番目のフルアジナムにつきましては、これは肝臓が標的臓器であります。これにつ きましては、本日何回か出てまいりました薬物代謝酵素の誘導試験を行っておりまし て、フェノバルビタール用の酵素誘導パターンが認められるということと、PCNA免 疫染色試験と申しまして、増殖活性の強い細胞にそまる抗体がありますので、これでそ めて実際にどの程度の誘導活性があるかの限界を見ております。これにある限界が認め られましたので、プロモーター非遺伝毒性メカニズムによるプロモーター型の発がんメ カニズムであろうと考えて、また、遺伝毒性試験も陰性でありますので、そのような判 断をしたということで事務局の御説明のとおりであります。  3番目のフルミオキサジンはやや変わった農薬でございまして、植物の代謝を同時に 阻害するような機構で、哺乳動物のヘモグロビンの整合性、ポルフィリン合成が阻害さ れる機構がありまして、その結果、当然のような形で鉄代謝が阻害されます。これに よってポルフィリン症という病気が誘発できるんでありますけれども、これにつきまし ては、いろいろ機構もわかっておりますし、また、それに基づく障害の限界値、そうい ったものもわかっておりまして、むしろこのタイプの農薬につきましては、その機構か ら外れた奇妙なメカニズムでもない限り、障害の非常に少ない、人類の英知と言うと言 い過ぎになるかもしれませんが、そういう範疇のものとして理解されておりまして、こ れはその範囲にあるものであろうと考えられております。  したがいまして、先ほど申しました増血に関する非常に強い障害性も1,000pp m群に とどまるものでありまして、500ppm以下には余り大きな変化は認められないということ でございますので、全体としては問題なかろうということであります。 以上でござい ます。 ○福島座長  ありがとうございました。米谷先生、ございますか。 ○米谷委員  9番目のフェントラザミドと10番目のフルアジナムは今回新規基準設定農薬の中で、 当調査会では一番古く検討したものでして、実は私が調査会の委員になる前のものでコ メントすることもございません。事務局からの報告のとおりだと思います。  11番目のフルミオキサジンにつきましては、これは登録保留基準と、米国の方で豆に 使っておりますので、その基準を当てはめて案をつくったというものでございます。  以上でございます。 ○福島座長  ありがとうございました。  それでは、まずフェントラザミドから質疑に入りたいと思いますが、どなたかござい ますか。先ほど井上先生に説明していただきましたが、廣瀬先生、何か追加することご ざいますか。 ○廣瀬委員  それでは追加させていただきますけれども、膀胱に腫瘍ができるという話がございま すけれども、一般に膀胱に腫瘍ができる場合は、1つには、膀胱に石ができる場合、そ れから尿中のpH、特にナトリウムイオン、クリスタルの増加ということ。更にもう一 つの要因としては、細胞障害というものがあるんですが、この場合は特に石もできてい ない。それから、pHの変化もない、クリスタルの増加もないということで、現象とし ましては、実際にPCNA染色で移行上皮の細胞増殖率が上がっているということがあ りますので、恐らく何らかの弱い膀胱上皮に対する障害性によって二次的に細胞増殖が 起こったのであろうかと考えております。 ○福島座長  ありがとうございました。今、膀胱に関しまして、先ほど井上先生、廣瀬先生と説明 がありましたが、この点に関してよろしいですか。 ○山添委員  106 ページのフェントラザミドの4の代謝の経路で、今ごろになって申し訳ないんで すが、間違いを見つけました。下から2行目の「主要な代謝経路は3,4,5,6- tetrahydrophthalimide側への水酸化及び亜硫酸の付加」と書いてありますが、今、元 の方の提出書類等を確認いたしましたところ、植物の項と同じように「テトラゾリノン 環の開裂、及びシクロヘキサン環の水酸化」というふうに御訂正願えれば思います。も う一度再確認をと思いますが、多分これで正しいと思います。 ○福島座長  ありがとうございました。一応念のために事務局で最終的にオリジナルの方を確認し ていただけますでしょうか。  そのほかございますか。  これは私も絡んでいて申し訳ないんですが、小さなミスで、これは単なる呼び方だけ の問題で、一応107 ページの「(2)反復投与/発がん性試験」のセカンド・パラグラ フのところで「膀胱の移行性上皮細胞がん」を「膀胱の移行上皮がん」というふうに変 えてください。  それから、その2、3行下に「尿道の移行上皮細胞がん」とありますが、細胞を取っ て「移行上皮がん」というふうに、一般に呼んでおりますので、お願いいたします。  フェントラザミドの件、ほかにございますか。よろしいですか。ありがとうございま した。  それでは、続きまして、フルアジナムに入ります。肝毒性が見られるということ。肝 細胞腫瘍の発生があるが、非遺伝毒性発がんメカニズムであるということです。  126 ページにADIの設定根拠が書かれてございます。どなたかございますか。  これも124 ページの(2)、これは私も責任があるんですが、セカンド・パラグラフ のところで、「結果及び変異原性試験等から」、これは「遺伝毒性試験」、林先生、そ の方がよろしいですね。「結果及び遺伝毒性試験成績等から」と直してください。よろ しいでしょうか。どうもありがとうございました。  それでは、最後のフルミオキサジンです。これについて御審議をお願いいたします。 先ほどの御説明だと血液毒性がある。高用量の1,000ppmのみに認められるということで あります。遺伝毒性試験は陰性で発がん性も認められないということでありますが、ど なたかございますか。いいですか。どうもありがとうございました。  そうすると、以上で11品目終わりました。それでは次に入っていただけますか。 ○事務局  それでは、続きまして、基準を見直す農薬といたしまして、資料148 ページ移行であ りますが、EPN、クロロピリフォス、フェンピロキシメート及びマレイン酸ヒドラジ ドの4剤についてまとめて御説明をさせていただきます。  まず、資料148 ページであります。EPNでありますが、用途は殺虫剤でありまし て、構造式は記載のとおりでございます。  動物代謝でありますが、ラットを用いた試験の方が実施をされております。植物代謝 の方につきましては、大豆、水稲、葉ねぎを用いた代謝試験が実施をされております。  49ページですが「反復投与/発がん性試験」ですが、こちらもマウス、ラット、ビー グル犬を用いた試験が実施をされておりますが、発がん性については認められないとい う結果が得られております。  また、149 ページの下でありますが、ニワトリを用いた強制経口投与の急性遅発性神 経毒性試験が実施をされておりますが、こちらについては運動失調等の所見が認められ ております。  続きまして、150 ページ「繁殖試験」でございます。ラットを用いた試験が実施をさ れておりまして、体重増加抑制等の所見が認められておりますが、無毒性量は3ppm と 考えられるとされております。  また、発達神経毒性試験、これはラットを用いた試験ですが、こちらについても、結 果といたしまして、発達神経毒性を示す所見は認められないと考えられるということで あります。  催奇形性試験でありますが、ラットを用いた試験、ウサギを用いた試験ともに催奇形 性は認められないということであります。  遺伝毒性試験の結果でありますが、細菌を用いた突然変異試験、染色体異常試験、ま た、小核試験の結果はいずれも陰性と考えられます。  そのほか、マウスリンパ種由来の細胞を用いた突然変異試験等で若干弱い陽性が認め られておりますが、総合的な判断といたしまして、生体において遺伝毒性が発がんする 可能性は低いと考えられるということであります。  以上の試験結果を踏まえまして、ADIの評価でありますが、ラットを用いた104 週 間の反復投与/発がん性併合試験の結果から、無毒性量を0.14mg/kg/day 、安全係数を 100 としてADIを0.0014mg/kg/day ということで評価をいただいております。  こちらの剤でありますが、主要な分解物としてO-エチルフェニルホスホン酸などが 認められますが、構造的に見ましても、現在の毒性作用が既に失われているものと考え られます。  また、毒性試験におきましては、分解物も併せて評価していると考えられることか ら、基準については原体で設定するに支障がないものと考えられるということでありま す。  基準値案でありますが、資料160 ページ、161 ページをごらんください。EPNにつ きまして、今回見直しということで、国内登録でありますが、お米、小麦、キャベツ、 カリフラワー等に登録がございます。そのほか参考とする国際基準や外国基準はないこ とから、国内登録があるものにつきましては、現行基準を維持する。また、作物残留の データがあれば、それに基づいた基準値案の作成をしております。  また、現行の基準値があるところにつきまして、本薬の使用が現段階では確認されな いという部分につきまして、*1を備考欄として付けさせていただいておりますが、こ ちらについては現行基準を削除という形で基準値案を作成させていただいております。  EDI方式によります計算の結果、ADI比は31.3%ということであります。  続きまして、次の剤クロルピリホスでございます。資料162 ページ以降です。  本剤につきましては、用途は殺虫剤であります。構造式は162 ページ記載のとおりで す。こちらにつきましては、現時点ではADIの見直しを行う必要がないと評価されて おりまして、ADIは0.01mg/kg/day であります。  基準値案でありますが、163 ページと164 ページでございます。クロルピリホスにつ きましては、大豆等、国内の農薬取締法に基づく登録があるほか、コーデックス基準、 米国、EU、オーストラリアにおいて基準値が設定をされております。  今回の見直しの部分ですが、コーデックス基準が設定されている場合には、国際基準 を参考に、基準値を設定をしております。  また、米国等外国基準がある場合には、当該基準値を参考に、基準値を設定をしてお ります。  また、先ほども出てまいりましたが、参考にする外国基準値のうちEUであります が、*1を付けさせていただいておりますが、検出限界として設定されている基準値を 参考とする場合については、我が国の分析法に基づく検出限界である0.01ppm 、例えば そばですとか、さといも類などでありますが、0.01ppm を設定をさせていただいており ます。  163 ページでだいこん類の基準、こちらは米国において2ppm の基準が設定されてお りますが、こちらにつきましては、164 ページの表の下の*2に注意書きで記載させて いただいておりますが、米国等から輸入が確認されない。また、だいこんの摂取量から の暴露への寄与を考慮いたしまして、こちらにつきましては、国内登録、作物残留デー タに基づいて0.5ppmを設定をしております。  以上の基準値案を基にいたしまして、EDI方式で計算した結果、ADI比は72.8% 以下であります。  続きまして、見直しの3剤目、フェンピロキシメートであります。資料165 ページ以 降です。  こちらも用途は殺虫剤ということでありまして、構造式は記載のとおりです、こちら の剤につきましても、ADIの見直しを行う必要はないと考えられるということで、A DIは0.0097mg/kg/day ということであります。  基準値案でありますが、資料166 ページ、167 ページであります。  フェンピロキシメートにつきましては、大豆、豆類等の国内登録のほか、オーストラ リアで基準が設定をされております。今回の見直しにおきましては、国内登録があるも のについては現行基準、大豆等の例がございますが、現行基準を維持、もしくは作物残 留のデータがあるものについては、データに基づいて基準値案の方を作成をしておりま す。  それ以外、現行基準値がありまして、該当する作物に使用されることが現段階で確認 されていないものにつきましては、削除をさせていただいております。  以上の基準値案を基にEDI方式で計算いたしますと、ADI比は76.7%でありま す。  続きまして、168 ページ、見直しの剤でありますが、マレイン酸ヒドラジドでありま す。こちらの用途は植物成長調整剤ということでありまして、構造式、及び物性のとこ ろに記載がございますが、カリウム塩等、複数の塩が農薬として各国で登録されている という情報がございます。したがいまして、これ以降の試験でありますが、コリン塩で すとか、遊離のヒドラジド、カリウム塩などを用いた試験、それぞれ実施をされており ます。  まず動物代謝でありますが、こちらは個々の塩についてラットを用いた試験などが実 施をされております。  植物につきましては、コリン塩、またマレイン酸ヒドラジドを用いた試験が実施をさ れておりまして、ばれいしゃですとかたまねぎの代謝試験の結果がございます。  安全性についてですが、170 ページ「反復投与/発がん性試験」では、まず、マレイ ン酸ヒドラジドのコリン塩を用いた試験で、マウスを用いた18か月の発がん性試験にお いては、発がん性は認められないとされております。ラット、イヌを用いた試験も実施 をされております。マレイン酸ヒドラジドのカリウム塩を用いた試験でありますが、マ ウスを用いた23か月の発がん性試験においては、発がん性が認められないとされており ます。  また、ラットを用いた104 週間の試験では、肝臓、副腎、甲状腺等で所見が若干認め られておりますが、毒性量は25mg/kg/day と考えられるということであります。  続きまして、遊離のマレイン酸ヒドラジドを用いた試験ですが、こちらはラットを用 いた試験、28か月間の試験におきまして、発がん性は認められないと考えられるとされ ております。  繁殖試験でありますが、こちらもコリン塩、またマレイン酸ヒドラジドを用いた試験 が実施をされております。こちらの試験の結果、各世代とも繁殖異常は認められないと いった結果が得られております。  172 ページですが、催奇形性試験、コリン塩、またカリウム塩を用いた試験でござい ますが、ラット、ウサギを用いた試験、それぞれで催奇形性は認められないとされてお ります。  遺伝毒性試験ですが、マレイン酸ヒドラジド、コリン塩を用いた試験においては、い ずれも陰性ということであります。マレシン酸ヒドラジドを用いた試験におきまして は、S9mix存在下でRec-assay 等で陽性ということでありますが、細菌を用いた復 帰突然変異試験、またマウスを用いた小核試験では陰性ということで、本薬は哺乳類の 生体にとって特段の問題となるような遺伝毒性はないものと考えられるということであ ります。  以上の試験結果を踏まえまして、ADIの設定であります。ラットを用いた2年間の 反復投与/発がん性複合試験の無毒性量25mg/kg/day と安全係数の100を用いて、AD Iとして0.25mg/kg/day という評価をいただいております。  基準値案でありますが、資料180 ページ、181 ページであります。  マレイン酸ヒドラジドにつきましては、国内登録、ばれいしょですとかてんさい等の ほか、コーデックス基準、EU、米国、カナダで基準が設定をされております。基準値 の見直しでありますが、ばれいしょでありますが、コーデックスの基準があるものにつ いては、国際基準を参考に基準値案を作成をしております。  外国基準がある場合は、当該基準値を参考に、基準を設定しておりますが、先ほども ございましたEUで検出限界が設定されているという場合については、我が国の検出限 界値を設定しております。  以上の基準値案を踏まえまして、EDI方式で計算をいたしますと、ADI比は68.5 %以下ということであります。  見直しの4剤については以上です。 ○福島座長  ありがとうございました。それでは、井上先生、補足説明お願いできますか。 ○井上委員  具体的に補足させていただきますのは、最初のEPNと一番最後の剤だけになります が、EPNにつきましては、事務局の御説明をお聞きいただいても御理解いただけます ように、非常に強い神経毒性があります。発がん性とか、そういったものは全くないん でありますが、この神経毒性が大変強うございまして、最終的にはADIが 0.0014mg/kg/day 、1.4 μg/kg/day という、大変鋭敏な毒性が神経に限って出てまい ります。これは脳とか赤血球にも系統が違うんですけれども、全く同じコリンエテステ ラーゼという酵素が使われているところでの障害が出てまいります。それで神経毒性は とかくこうした低用量で影響が出てまいりますので、そこのところを中心に毒性試験が 行われておりまして、それから神経毒性は、ここではニトワリが使われておりますが、 日本産のウズラであるとか、鳥類がセンシティブであります。脊髄の軸策変化等を中心 に全体的な毒性が認められているわけであります。  しかしながら、これも細かく観察がされておりまして、閾値が認められるということ で、その認められる閾値につきましても、げっ歯類、ビーグル犬、そして、今申しまし た鳥類ということで系統的に観察されるもので、この使い方を間違えなければ極めて安 全であるということになるわけでありまして、そのような判断に立ってADIが定めら れております。 事務局も御説明しましたように、この分解物については、基本的に原 体の毒性作用が失われているというふうに考えられるので、原体で判断した毒性で必要 十分であろうという考え方であります。  それから、最後の剤のマレイン酸ヒドラジドでありますけれども、これについては余 り毒性が認められないものであります。毒性試験の立場から改めて申し上げることはご ざいませんが、ただ、事務局も御説明しましたように、いろいろな塩について行われて おります。基本的にはそれらが作用するときには塩がとけたような形になって作用しま すので、当然のことながら、類似の生体影響が観察されるはずでありますが、それほど 強い生体影響がありませんので、ぽつりぽつり、この塩では肝臓に対する変化とかが出 ているような状態で、基本的には問題のない剤であるということでございます。  以上でございます。 ○福島座長  ありがとうございました。米谷先生、ございますか。 ○米谷委員  この4つの農薬につきまして、どこが変わったかというのは、事務局の方からその考 え方とともに、詳しく御説明がありましたので、特に加えるものはございません。 ○福島座長  ありがとうございました。  それでは、EPNから御審議をお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。コリン エステラーゼの阻害作用があって、強い神経毒性が出ているということであります。よ ろしいでしょうか。 ○加藤委員  また事務的な問題だけ御指摘させていただくことなんですが、148 ページ、植物の一 番最後の方の行、「水稲を用いた代謝試験」、それから「葉ねぎの代謝試験」というの が本文に記載されているんですが、別添の1の資料、抄録に相当するところの作物代謝 の方、159 ページのところには入っておりませんので、事務的に単純に抜けたんであれ ば追加していただかないとまずいんじゃないかと思うことが1つ。  それから、もう一点、151 ページ、一番最後の行の「本薬の植物における主要な分解 物は、O-エチルフェニルホスホン酸」、これは英文で化学名を書くときに、行を変え るときに付けたりする記号がそのまま残っているんで、外しいいただいた方がいいと思 います。 ○福島座長  よろしいですか。2点、指摘ありがとうございました。訂正をお願いいたします。そ のほかどうぞ。 ○基準課長  1点追加して御説明したいと思います。160 ページの基準値案をごらんいただきたい と存じます。この160 ページ、161 ページをごらんいただきますと、基準値案と現行の 基準が載っております。先ほど事務局からも説明させていただきましたとおり、現行基 準があるもの、例えば、ばれいしょには、0.1ppmという基準があるわけでございます が、これについて国内の登録がございませんし、国際基準、あるいは欧米における基準 もないという状況でございます。この基準値をどうするのかというのも、制度問題とし て、からぶりでも置いておいた方が安全ではないかという意見もあるわけでございます が、先ほど部長からのあいさつにございましたとおり、農薬につきましては、現在、国 会で御審議中の食品衛生法改正案の中で、公布後3年以内にポジティブ・リスト制を導 入するということにしております。  すなわち、基準値がないものにつきましては、ゼロとは言いませんけれども、非常に 低いレベルの上限値を定めて、その条件を超えるものについては、流通を禁止する制度 にさせていただこうというふうに考えております。  そういう観点から、今回の基準値の変更の中では、ここで申し上げますと、例えば、 ばれいしょで国内登録がない、欧米にも登録がないようなものについては、基準値を廃 止して、3年後、ポジティブ・リスト施行の際に、また、審議会で御検討していただく ことになると思いますけれども、例えばドイツであれば0.01ppm というような一律の値 を定めておりますし、例えばカナダでございますと、0.1ppmという一律の値を定めてお りますので、そういう値を定めた上で、その値でもって規制をするという形にさせてい ただこうと考えておりますので、御検討いただければ幸いでございます。 ○福島座長  ありがとうございました。今、中垣課長の方から基準値の設定について説明がありま したが、よろしいですか。そのほかございますか。  次はクロルピリホスです。基準値案をこの別添の資料のように提示していただいてお りますが、よろしいですか。ありがとうございました。  次、フェンピロキシメートです。これも基準値案が別添の資料のように設定されてお ります。よろしいですか。  それでは、最後ですが、マレイン酸ヒドラジドについて御審議をお願いしたいと思い ます。カリウム塩とかコリン塩とか、種々の塩での毒性試験が行われて、いずれも毒性 としては弱いという説明でありましたが、この品目についてどうでしょうか。173 ペー ジにADI、180 ページに基準値案が設定されております。よろしいでしょうか。あり がとうございました。  それでは、これまで全部で15品目の審議をしていただきましたが、この質疑を終わら せていただきます。事務局の方へお返しいたします。 ○宮川補佐  それでは、座長、申し訳ありませんが、これに関してとりまとめをお願いできればと 思います。 ○福島座長  わかりました。すべて今の品目に関しまして、御意見がないようでしたら、本報告書 をもちまして、合同部会の報告という形にさせていただきたいと思いますが、よろしい でしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○福島座長  どうもありがとうございました。それでは、今後の手続について報告を事務局の方か らお願いできますか。 ○宮川補佐  ありがとうございます。いろいろ御審議の中で御指摘をいただきました点、幾つかご ざいましたので、それらにつきまして、字句の修正等をいたしまして、座長にも御確認 をいただいて、部会の報告とさせていただきたいと思います。  したがいまして、資料1の方でいただいております報告をもって、この合同部会の報 告とさせていただきます。  今後の予定でございますが、WTO通報、パブリックコメント等の所要の手続をいた しまして、その後に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会の方に御報告をいたしまし て、御審議をいただくという形をさせていただきたいと思います。今後の予定は以上で ございます。 ○福島座長  ありがとうございました。以上のような予定ということですが、よろしいですか。そ れでは、今日の審議事項の残留農薬基準の設定についてはこれで終了いたします。続き まして、報告事項として、事務局から食品衛生法の一部改正について報告をしていただ きます。 ○宮川補佐  資料は参考資料の3でございます。先ほど来、部長のあいさつ、課長からの説明等で 出ておりますが、残留農薬基準に関連いたしまして、今、国会で御審議をいただいてお ります食品衛生法等の一部を改正する法律案等について、概要を御説明したいと思いま す。  お手元にお配りしているこの参考資料3は、これまで対外的な説明等で使ってきた資 料の抜粋でございます。厚生労働省のホームページなどにも掲載されているものでござ います。  今回の食品衛生法の改正は、目的等ございますように、BSE問題でありますとか、 偽装表示の問題を契機に、いろんな食品の安全に係る施策の充実を目指して行ってきた ところでございまして、中を見ていただくと非常に多岐にわたってございまして、法律 の目的でございますとか、国の責務、こういうものも改正をいたしますし、規格・基準 に係る規定の見直し、それから監視・検査体制、それから食中毒対策の強化、罰則の強 化等々を行います。併せて、その横書きの紙の裏でございますけれども、と畜場法です とか、健康食品などに対応いたしますために、2枚目の一番下にございますけれども、 健康増進法の一部の改正によって、虚偽誇大の広告の禁止など、非常に多岐にわたる改 正を行うことであります。  その中で農薬等の残留規制に関しましては、これを強化をしていこうという考え方に 基づいて現在、国会に法案を提出させていただいて御審議をいただいております。  資料で申しますと、参考資料の一番最後に横長でポンチ絵を出しておりますけれど も、現在、農薬、飼料添加物、動物用医薬品につきましては、左側でございますが、例 えば農薬につきましては、229 の農薬、今日は15ほど御審議をいただいておりますが、 それから、動物用医薬品については、26の農薬について残留基準値を設定をしておりま す。これを超えるものについては、流通の禁止等ができるわけですけれども、それ以外 のものについては、基本的には流通の規制ができないという現行の制度であります。  これについて、世界に流通している農薬については、700 程度あるということでござ いますので、それらについても一定の網をかけていこうということで、いわゆるポジ ティブ・リスト制への移行というものを公布後、3年以内に移行していこうということ を提案させていただいております。  具体的にどこが違うかと言いますと、全体的にまず網がかかる。右側の真ん中辺りに 書いていますけれども、先ほど来、ちょこちょこと出ておりますが、一定量を超える農 薬が残留した食品の流通が禁止できるように、厚生労働大臣が人の健康を損う恐れがな い量として、一定の量を告示をしまして、それを超えるものについては流通が禁止でき るということが1つ大きな改正になっております。  それから、今までの229 という、実際に今も使われておる基準がありますが、ポジ ティブ・リスト制移行までの間に、左側でございますけれども、農薬取締法に基づく基 準でありますとか、国際基準などを踏まえて、暫定的な基準を設定いたします。それか ら、登録と同時に基準を設定していくということを進めてまいって、できるだけ多くの ものについて残留基準を定め、それらによってすべての物質については、何らかの網を かけていこうとするものであります。  右側に白く抜けているものについては、例えば特定農薬のようなもの、牛乳とかがあ りましたけれども、そういうもののような、明らかに人の健康を損なう恐れがないとい うものについてはポジティブリスト制の対象外として指定していこうということでござ います。  このような作業を行っていくわけですけれども、いずれにいたしましても、こちらの 合同部会の方に、先ほどの厚生労働大臣が告示をいたします人の健康を損なう恐れがな い量とするような告示の内容でありますとか、暫定基準の内容につきましては、今後、 御審議をいただこうと考えております。  以上でございます。 ○福島座長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。何かただいまの説明で御質問ござい ますか。私もしっかり勉強しないと、質問が出てきませんけれども、先生方も見ていた だいて、追ってでも結構ですので、御意見をいただければと思います。  そのほかで何か御質問ございますか。よろしいでしょうか。そのほか事務局の方から 何かありますか。 ○宮川補佐  特段ございません。 ○福島座長  それでは、以上をもちまして、本日の合同部会を終了させていただきます。どうもあ りがとうございました。                                       了                  照会先:医薬食品局食品安全部基準審査課 井上                      電話(代表)03−5253−1111                                (内線)2487