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「健康食品に係る制度のあり方に関する検討会ヒアリング申請書」


団体の名称 日本生活協同組合連合会
代表者 専務理事 伊藤 敏雄
団体の概要(目的、組織構成、事業・活動の内容):
・目的: 国民の自発的な生活協同組織の発達を図り、もって国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的とした消費生活協同組合法にもとづく、全国連合会としての事業および活動。
・組織構成: 全国各地の地域生協、職域生協、学校生協、大学生協、医療生協など、生活に密着した諸分野で活動している587生協を会員とする生協の全国連合会。組合員数2,104万人。
・事業・活動の内容:
  CO・OP商品の開発・改善、会員生協への商品供給事業
共済事業、通販事業、福祉事業、旅行事業
食品の安全・環境政策・消費者政策などの立案と推進など
商品検査、品質管理など
会員生協の事業活動や組合員活動等の指導・連絡・調整など
海外生協等との交流と支援活動、国際会議関連など
医療生協事務局


○健康食品に係る制度のあり方に関する意見内容

(1)  国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割 をどう位置付けるか
「医薬品−現行制度に基づく保健機能食品−いわゆる健康食品−一般食品」の体系のあり方

 国民の健康づくりにおいて、「いわゆる健康食品」的なものに一定の役割が期待されていることは否定できないと考えます。高齢化や生活習慣病の問題、ライフスタイルや食生活の変化等に起因する栄養バランスの問題、ストレス、美しさを求める心理等、健康や身体全般に対する不安を抱える消費者は多く、今日の健康食品市場は、そのような消費者とその不安に商品で応えようとする事業者との間で形成されたものであると思われます。また、病気を治すための医薬品とは別の目的で古来より民間に伝承されてきた「いわゆる健康食品」的なものは世界の各地域に存在しており、こういった見地からも、「いわゆる健康食品」の存在自体は、人間の生活の中で一概に否定すべきものではないと考えます。
 しかし、「一定の役割が期待されている」ことと、「これに頼った食生活を是と見なす」こととは異なります。健康食品に係る制度のあり方を検討するにあたり、「規則正しいバランスの取れた食生活こそが健康の基本であって、これなしに真の健康は得られないこと、健康食品類(現行制度下にあるものも含む)はあくまでもこれを補助するものに過ぎないこと」を前提として確認しておかねばなりません。

 平成14年度の「食行動等実態調査」(農林水産省の助成による)によれば、「食生活指針」の認知度は22%に過ぎません。また、回答者に食生活指針の項目を示した上でその実践度を問うた結果では、「自分の食生活を見直してみましょう」という項目に対して、約40%が「実践できていない」と回答しています。さらに、このうちの50%以上が(20〜40代では約60%が)その理由を「どのように見直したら良いかわからないから」と答えています。
 この結果は、ただ単に「規則正しい食生活」を消費者に呼びかけるだけでは、もはや不十分で、正しい「食」に関する教育的な面も含めた情報提供のあり方自体を抜本的に見直す必要性を示唆するものです。このような問題になんら対応しないまま、もしも、「健康食品に係る制度」ばかりが推進されてしまうと、逆に食の混乱がさらに助長されることにもなりかねません。

 「いわゆる健康食品」等の諸問題を解決していくためには、消費者の「健康や食への不安をもとから断つ」ための根本的な対策を進めながら、それと合わせて、現行の体系下での制度を点検しさらに充実させていくことが肝要です。

○体系のあり方について
 人間が摂取するものについて、「一般食品:日常の食生活の場面で個人が自分の意志で選択して摂取するもの」と「医薬品:医療の場面で、医師や薬剤師の判断のもとで使用されるもの」を両極に据えた上で、その中間的なものとして「現行制度に基づく保健機能食品」を位置付ける体系は、理解できます。
 しかし、現状において「いわゆる健康食品」と区分される食品群のものが規制を受けずに(制度下に置かれないまま)存在していることは問題です。健康食品にまつわる諸問題の多くがこの範疇の中で発生していることを考えると、「いわゆる健康食品」のうちで問題のあるものは全て淘汰されるような仕組みが必要です。
 そのための一手段として、これらの食品群の中から、現行の保健機能食品制度の中に組み込める食品群があればそれらを選定し、審査対象とすることは好ましい方向性にあると考えます。

(2)  「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能 しているか。「健康食品」の安全性・有用性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。

 現状の「いわゆる健康食品」に関して、消費者にとって好ましくない(避けたい)事例を簡潔に挙げるならば、
 1) 期待している効果がまったく得られない。
 2) 効果が顕著過ぎる(副作用等。)
 3) 有害なものが含まれている。
といった点が考えられ、消費者団体や自治体の調査からも、実際にこのような事例が示されています。逆に消費者として望みたいのは、
 ・ 上記1)〜3)のような商品を買わずに済み
 ・ 自分の身体に合った健康食品の選択に役立つ適切な情報が得られる
ことであると思われます。

 今後、現行において規制がない「いわゆる健康食品」の中から、しかるべき審査を経て効果や安全性が認められ、公的に認可された機能表示が添付された食品(例えば現行の特定保健用食品)に移行するものが現れた場合、「一定の審査を受けた確かな食品の中から自分に合うものを選択できる」ことを望む消費者にとって、選択の幅が広がることになると考えます。また、「一定の審査を受けた健康食品」の中から選択できる幅が増えるならば、逆に「審査を受けていない健康食品」に対しては慎重な姿勢で臨むことが可能になり、問題のあるものの淘汰につながるであろうと思われます。

○現行の保健機能食品制度における問題点
 現行の保健機能食品制度が制定されて2年以上が経過していますが、弊連合会としては、以下の点について問題意識を持っています。今後、保健機能食品の範囲を拡大していくとした場合に参考とされることを望みます。

・栄養機能食品制度における問題
 「栄養機能食品」の表示があって、その上で、例えばハーブ等、世の中一般に良いと いわれているものの名称や絵が強調されている包材表示を見かけることがあります。何らかの栄養成分に関して栄養機能食品の規格を満たし、かつ制度で定められた表示の規定も満たしているものと思われますが、このような包材表示では「どの栄養成分を含む栄養機能食品なのか」一見してわからず、むしろハーブ等の名称や絵と「機能」が結びついた印象を消費者に与えかねません。今後、消費者の誤認を防止しうる表示の規制が必要であると思われます。

・特定保健用食品制度における問題
 「既存の特定保健用食品を主原料として使用した食品」における表示やその宣伝方法に関して、公正取引委員会において取り上げられた事例がありました。販売者や小売業者としても、「特定保健用食品を主原料としたことは事実であって、しかしその商品自体は特定保健用食品ではない」といった場合の消費者への情報提供の仕方について判断に迷う例もあり得ますので、このような食品に対して一定の規制なり考え方の指針が必要であると思われます。

(3)  (1)及び(2)を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度は どうあるべきか。

○制度について
 現行の保健機能食品の範囲を拡大するとした場合、上に記した現行の問題点以外に、制度上、以下の点についても留意が必要であると考えます。

・規格基準型(栄養機能食品)の範囲拡大は慎重に
 ビタミン、ミネラルのように組成(有効成分)が明確であって、適切な摂取量や配合の上限下限を設定しうるデータが十分に得られている成分に対しては、規格基準型の制度は適切なものであると考えます。しかしながら、例えばある種のハーブ類のように、有効成分の分析が困難で、適切な摂取量や配合の上限下限を設定しうるデータおよび安全性のデータが現時点で不十分なものについては、規格基準型の制度に組み込むことは適切でないと思われます。規格基準型のものの範囲を広げることについては慎重であってほしいと考えます。

・個別申請型のものについて、審査の基準を緩和しない
 今後、この範囲の対象食品が拡大されるとした場合、現行よりも広範囲の食品が申請され、審査対象となる可能性があります。これらのものに対し、現行の特定保健用食品に対する審査基準よりも緩和された基準が適用されることにならぬよう、留意されることを望みます。

・個別申請型のものについては再評価の徹底を
 1991年に特定保健用食品の制度が最初に導入されて以来、保健機能食品制度を経て、現在約340の商品が特定保健用食品として認可されています。現行の制度においては、いったん認可されたものに対しては(「何らかの問題があったもの」は再評価されることになっていますが)、基本的にはその後の再評価、再審査などに関する具体的な規定は設けられていません。
 しかし、いったん審査を通過したものであっても、市場に出た後の追跡調査(消費者が期待通りの効果を得ているか、健康上の問題等が生じていないか等)や、品質の検査(申請内容と同じ仕様で製造されているか等)が定期的に実施されるべきであると考えます。また、具体的な問題(被害)事例がなくても、関連する新しい科学的知見が得られた場合には、再評価や再審議を受ける必要があると思われます。今後、個別申請型のものの範囲が拡大されるとした場合、こういった再評価の重要性はなおさら増すことになると考えますので、この機会にモニタリング制度や再評価の制度を厳密に導入されることを望みます。

○行政、消費者の果たすべき役割
 以上、現行の保健機能食品制度に則った範囲での意見を中心に述べてきました。しかし、問題のある「いわゆる健康食品」が、この制度の充実化だけで今後容易に淘汰されるとは思えず、また、初めにも記した通り、この制度の整備が消費者を正しい食生活に導くものであるとも思えません。
 問題のある「いわゆる健康食品」の淘汰に向けては、現行の制度を充実させることと合わせて、監視の体制を今後とも強めていくことが重要であると考えます。監視すべき対象としては、商品それ自体のみならず宣伝広告等の内容も含まれます。
 一方で消費者としては「健康食品ばかりに頼っていては、健康は得られない」ことを受け止め、本来あるべき規則正しい食生活を送るよう努めなければなりません。弊連合会としても、責任を自覚しておりますが、行政におかれましても、消費者への正しい「食」の啓発に向け、より一層努力されることを望みます。

以上


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