研究事業(研究事業中の分野名):感覚器障害研究事業 | ||||||||||||||||||
所管課:社会・援護局障害保健福祉部企画課 | ||||||||||||||||||
予算額の推移: ※1:研究費 ※2:推進事業費
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平成12年度厚生科学研究費補助金採択課題一覧
事業名 | 開始 | 終了 | 主任研究者 | 所属施設 | 職名 | 研究課題名 | 交付決定額 | |
1 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 下方 浩史 | 国立長寿医療研究センター疫学研究部 | 部長 | 中高年における視聴平衡覚障害とその危険要因に関する縦断的疫学研究 | 15,000 |
2 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 山下 英俊 | 山形大学医学部眼科学講座 | 教授 | 眼科領域におけるプロテオーム解析法による診断法の確立と疾患治療法への展開 | 15,000 |
3 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 玉井 信 | 東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座 | 教授 | 網膜色素変性の遺伝子解析と保護因子の遺伝子導入による治療法の開発 | 14,000 |
4 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 阿部 春樹 | 新潟大学医学部眼科学教室 | 教授 | 神経科学的アプローチによる緑内障の病態解明と治療法の開発に関する研究 | 33,000 |
5 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 12 | 西脇 弘一 | 京都大学大学院医学研究科視覚病態学 | 助手 | 温度感受性リポソームを用いた加齢黄斑変性症への光化学療法 | 4,000 |
6 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 東 範行 | 国立小児病院眼科 | 眼科医長 | 小児・若年者の難治性網膜疾患の原因と治療に関する研究 | 15,000 |
7 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 野田 徹 | 国立病院東京医療センター | 眼科医長 | 視聴平衡覚を代償する機器の開発、改良に関する研究:屈折矯正手術および眼内レンズ挿入術とその視覚の質に関する研究 | 15,000 |
8 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 石川 准 | 静岡県立大学国際関係学部 | 教授 | 盲ろう者の携帯電話用点字モジュールの開発に関する研究 | 5,000 |
9 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 13 | 池田 勝久 | 東北大学大学院医学系研究科 | 助教授 | ノックアウトマウスを用いた遺伝性難聴の発現機構の解析と治療の新戦略 | 17,000 |
10 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 山岨 達也 | 東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室 | 助教授 | 内耳遺伝子治療の導入に関する研究 | 8,000 |
11 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 佐藤 徳太郎 | 国立身体障害者リハビリテーションセンタ− | 所長 | 聴覚障害者の社会参加促進に向けた「自己発生音」の評価と対応策の確立 | 10,000 |
12 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 石橋 敏夫 | 社会保険中央総合病院耳鼻咽喉科 | 部長 | 急性中耳炎による聴覚障害発生機構の解明とその予防に関する疫学的実験的研究 | 15,000 |
13 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 稲垣 真澄 | 国立精神・神経センタ−精神保健研究所 | 診断研究室長 | 特異的遺伝性難聴の病態解明と直接治療法開発に関する研究 | 10,000 |
14 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 14 | 上村 隆一郎 | 東京医療センター耳鼻咽喉科 | 医員 | 平衡機能障害者における歩行運動3次元解析 | 4,000 |
15 | 感覚器障害研究分野 | 12 | 12 | 山内 繁 | 国立身体障害者リハビリテーションセンタ− | 所長 | 感覚器障害研究事業の企画と評価に関する研究 | 5,100 |
16 | 感覚器障害研究分野 | 11 | 13 | 樋田 哲夫 | 杏林大学眼科 | 教授 | 中途視覚障害者のQuality of Life(QOL)を早期に改善する情報システムの研究 | 12,000 |
17 | 感覚器障害研究分野 | 11 | 13 | 小田 恂 | 東邦大学医学部耳鼻咽喉科 | 教授 | 耳鳴症の有病率に関する研究 | 7,000 |
18 | 感覚器障害研究分野 | 11 | 13 | 福田 友美子 | 国立身体障害者リハビリテ-ションセンタ−研究所 | 聴覚言語障害研究室長 | 日本手話学習のための基本語彙を中心にした日本手話−日本語辞書の作成− | 10,000 |
19 | 感覚器障害研究分野 | 11 | 13 | 岡本 牧人 | 北里大学医学部 | 教授 | 難聴によるコミュニケ−ション障害と補聴器による改善効果の評価法に関する研究 | 15,000 |
20 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 木下 茂 | 京都府立医科大学医学部眼科 | 教授 | オキュラーサーフェイスの臨床的評価法と外科的リハビリテーション法の開発に関する研究 | 30,000 |
21 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 湯沢 美都子 | 日本大学医学部駿河台病院 | 眼科部長(助教授) | 加齢黄斑変性症に対するロービジョンエイド | 26,000 |
22 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 田中 靖彦 | 国立病院東京医療センター | 副院長 | 視覚感覚器の早期発見及び評価方法に関する研究 | 30,000 |
23 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 堀 貞夫 | 東京女子医科大学眼科 | 教授 | 糖尿病網膜症重症化の原因の究明とその対策 | 27,400 |
24 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 喜多村 健 | 東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究所 | 教授 | 分子モーター、耳の発生からみた難聴発症機構に関する研究 | 33,000 |
25 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 森 浩一 | 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 | 視覚機能障害研究室長 | 無侵襲脳局所酸素モニタによる聴覚障害の機能診断と治療への応用に関する研究 | 23,000 |
26 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 児嶋 久剛 | 京都大学大学院医学研究科 | 助教授 | 言語の認知・表出障害に対するリハビリテーションの体系化に関する研究 | 28,000 |
27 | 感覚器障害研究分野 | 10 | 12 | 数藤 康雄 | 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 | 福祉機器開発部長 | 盲聾者を主対象にした任意の触読パターンが作成可能な三次元レーザ・プリンタに関する研究 | 36,000 |
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629,000 |
平成14年度厚生労働科学研究費補助金採択課題一覧
(単位:千円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(感覚器障害研究事業)
3.研究成果及びその他の効果
○ | 感覚器障害の病態解明から障害の除去・軽減のための治療及びリハビリテーション、支援機器開発まで、総合的な研究事業として実施している。 具体的な成果の例は、以下のとおり。 |
・ | モデル動物の作成 − ヒト遺伝性難聴類似マウス : GJB2欠失マウス |
・ | 疾患関連遺伝子の発見 − 網膜・視神経形成異常 : PAX6他 − 耳病変マウス(Bronx waltzer (bv)マウス): D5Mit209 |
・ | 盲ろう者が、携帯電話で文字コミュニケーション(iモード等の利用)を独力で可能にする点字モジュールの開発 |
・ | 頭部搭載可能な視覚補助装置(網膜に視覚情報を直接投影する)の開発 |
・ | 補聴器使用のガイドラインの作成 |
・ | 平衡機能障害(不安定歩行)の3次元解析法の開発及び歩行運動の解析 |
・ | 温度感受性リポソームを用いた経瞳孔温熱療法による黄斑変性症治療法 |
・ | 視覚の質を他覚的に評価可能なPSFセンターの臨床応用 |
○ | これらの成果が、テレビ等のマスコミに取り上げられた例もあり、一般国民や感覚器疾患、障害を有する者、企業等から注目を集めている成果もある。 |
7.研究事業の総合評価
○ | 平成10年度より、「感覚器」に特化した唯一の研究事業として実施しており、特に、感覚器障害の予防から支援にわたる基礎的な知見の向上に関する研究支援に大きく貢献している。 |
○ | 研究成果の具体的な施策への反映については、疾病への対応と実際に障害を有する者への対応を所管する部局が分かれており、それぞれの部局において研究のマネージメントを効果的に行う体制の充実が求められている。 |
感覚器障害研究事業・研究成果(平成14年度終了課題分)
研究課題 | 実施 期間 |
合計 金額 (千円) |
主任研究者 所属施設 |
氏名 |
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義 |
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| 発表状況 | 特許 | 施策 | (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど | |||||
原著 論文 (件) |
その 他 論文 (件) |
口頭 発表 等 (件) |
特許の出願及び取得状況 | 反映件数 | ||||||||||||
中高年者における視聴平衡覚障害とその危険要因に関する縦断的疫学研究 | 平成12-14年度 | 40,800 | 国立療養所中部病院長寿医療研究センター疫学研究部 | 下方浩史 | 本研究の目的は中高年者における視聴平衡覚機能の経年変化を縦断的調査により検討し、視聴平衡覚機能低下の危険因子の解明と予防・早期発見に資することである。約2300名の地域住民を対象とした感覚器機能縦断調査の第1次及び第2次調査結果を整理し年齢別標準値を老化の基礎データとしてインターネット上に公開したことで当初の目標を達成した。また視聴平衡覚機能低下の危険因子の解明と予防に関しての検討を重ね、多くの学術論文や学会で発表して注目を浴びた。 | 人口が高齢化し高齢者の数が増えていく中で高齢者の難聴や白内障など感覚器に関する医療費が高騰し、国民全体への負担が今後ますます増大していく。高齢者医療費の抑制や高齢者の社会参加のためには感覚器障害の予防が重要となる。当研究班における危険因子研究などの成果は予防のための行政の貴重な基礎資料となると期待される。 | 多数の一般住民を対象にした感覚器機能変化の包括的検討は検査に困難を伴うことなどから、国内だけでなく海外でも今までほとんど行われていない。当研究で得られた数多くの視聴覚機能に関するデータをまとめてモノグラフとして印刷し、また英文でインターネット上も公開した。内外の研究者にとって貴重な資料として基礎及び臨床研究に、さらに診療にも役立つものと考えられる。 | 8 | 15 | 20 | 0 | 0 | http://www.nils.go.jp/organ/ep/index.html | |||
盲ろう者の携帯電話用点字モジュールの開発に関わる研究 | 平成12-14年度 | 13,600 | 静岡県立大学 国際関係学部 | 石川准 | 本研究では、盲ろう者が携帯電話での文字コミュニケーションを独力でできるようにするために、携帯電話に接続できる点字モジュールの開発を行った。盲ろう者によるユーザビリティテストの結果、開発した点字モジュールと携帯電話を使って、盲ろう者が他者と、通訳の介在なしに自由にメール交換できることが検証された。また盲ろう者のQOLにとってコミュニケーションがいかに重要であるかを、この研究を通して確認した。 | 厚生労働省は、重度盲ろう者に対し、日常生活用具として、コンピュータ用の点字ディスプレイの給付等事業を行っている。本研究はその妥当性を検証したうえで、ネットワーク機能を内蔵するか、あるいは携帯電話等携帯性に優れた、既存の通信機器との接続機能を有する点字PDAの量産と事業化の助成という行政目標の重要性を示唆している。 | 本研究は、現状の携帯電話を所与としたときに、どこまでの外部制御が可能かを明らかにし、同時に支援技術のみによるアプローチの限界も明らかにした。携帯電話会社が展開する閉鎖系のビジネスモデルが情報障壁となりうることを、携帯電話会社や情報のユニバーサルデザインに携わる専門家に伝えることができた意義は大きい。なお、本研究の成果の一端である携帯電話制御ソフトウェアはすでに市販点字ディスプレイに実装されている。 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | なし | |||
特異的遺伝性難聴の病態解明と直接治療法開発に関する研究 | 平成12-14年度 | 27,200 | 国立精神・神経センター精神保健研究所 | 稲垣真澄 | 耳病変が局在するBronx waltzer (bv)マウスの遺伝子座近傍のマーカー遺伝子(D5Mit209)の異常を明らかにできた。脳室内への神経幹細胞移植法をスタートし、投与を受けた多くは難聴悪化がみられず、大半が不変であり一部改善例もみられた。伝音性難聴をきたす先天代謝異常マウス(MPSVII型)に対して、経鼓膜的な局所的遺伝子治療法が有用であることを見出した。 | 聴力評価に関して聴性脳幹反応(ABR)とともに耳音響放射(OAE)の有用性が示された。OAE検査データが健常パターン(2f1−f2>2f2−f1)となるか否かが現在スタートしている自動ABR検査法(ALGO)の二次スクリーニングにおいても有用な情報となる。神経幹細胞を用いた直接治療法を確立していくことは聴覚障害例に対して高度先駆的医療を行う上での基礎的な資料となる。 | 経鼓膜的な直接治療法と脳室内への神経幹細胞移植を行い、前者は中耳病変に有用であり、後者はラセン神経節神経細胞変性をきたす病態、たとえば老人性進行性難聴に有用であることが示された。 | 7 | 1 | 12 | 0 | 1 | http://www.ncnp-k.go.jp/division/ddd/staffu/Inagaki/inagaki_kenkyuunaiyou/inagakikennkyuunaiyou.htm | |||
ノックアウトマウスを用いた遺伝性難聴の発現機構の解析と治療の新戦略 | 平成12-14年度 | 49,300 | 東北大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学分野 | 池田勝久 | ア.Cre-LoxP系を用いたconditional knockoutによるGjb2欠失マウスを作成することができ、Cx26の発現を蝸牛においてほとんど認めなかった。Cx30で代表される他のギャップ結合蛋白は蝸牛で正常に発現しており、Cx26の発現が選択的に欠損していることが証明された。ヒト遺伝性難聴に極めて類似した動物モデルをstraightforwardな方法で達成できた。イ.GJB2遺伝子の高頻度変異を効率よく検出する手法が実現できた。この応用により、遺伝子解析による新生児難聴スクリーニングを実用化しうるものである。今回の研究では、成長因子の一つであるIGF-1をモルモット蝸牛内に投与することにより耳毒性薬物負荷による難聴の軽減効果、そして組織学的に蝸牛感覚細胞の保護効果を確認することができた。この手法を遺伝子改変動物モデルに実施することが今回は実現できず、今後の課題である。 フランスの研究グループは我々と異なる方法によりGjb2欠失マウスを作成したが、内耳のすべての組織にプロモータ遺伝子が発現しておらず、不完全なモデルである。一方、我々の遺伝子変異体ではその欠点を解決しており、極めて理想的な動物モデルであり、高い学術的意義を有する。 | 今回作成したGJB2遺伝子診断システムの利点は、(1)従来より稼動している先天代謝マススクリーニングのシステムを利用して、同様の手技で検体を集められる。EDTA血と異なり、乾燥させれば長期保存可能、遠隔地からは郵送可能である。(2)検体の電気泳動や精製が不要で、直接シークエンス法に比べて極めて短時間で診断可能、大量検体にも対応できるといった利点を有し、遺伝子解析による新生児難聴スクリーニングを実用化しうるものである。聴覚生理学的検査による新生児スクリーニング法との組み合わせにより、特異性と感度が向上すると考えられる。 | 耳毒性薬物投与に先立ち蝸牛外リンパ腔にIGF-1を少量持続投与することにより明らかな毒性を発現することなく有毛細胞を保護することができた。近年、耳科学分野でも再生医療が研究されているが、現段階では実現には程遠いと言わざるを得ない。今回行った方法は感音難聴治療により現実的な手法であり、近い将来の臨床応用を視野に入れ、今後も研究を進めていく必要がある。 | 14 | 0 | 5 | 0 | 3 | なし | |||
内耳遺伝子治療の導入に関する研究 | 平成12-14年度 | 23,200 | 東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室 | 山岨達也 | 投与法の工夫、内耳whole mount培養法の確立によりin vivo、in vitroともに従来遺伝子発現の得られなかった内耳内の細胞(有毛細胞・支持細胞)に遺伝子発現が得られた。ゲンタマイシンによる内耳障害耳を用い、遺伝子治療による治療効果を示した。アデノウィルスベクター反復投与による内耳毒性に対し、副腎皮質ホルモンが副作用予防に有効であることを示した(内耳への反復投与を可能にした)。Math1遺伝子組み込みベクターにより蝸牛支持細胞が有毛細胞に変化(再生)する所見が得られた。この報告は大きなbreak throughであり、今年のARO学会で最も注目を浴びた。この報告により、今後内耳有毛細胞再生の研究は一気に進むと思われが、我々はこの分野において世界をリードしている。 | 本研究はまだ基礎研究の粋を出ておらず、臨床応用には解決すべき課題も残されている。しかし我々の研究において、内耳への遺伝子導入により有毛細胞再生が現実的になったことにより、今後この分野の研究が急速に発展し、人においても感音難聴からの聴力回復がもうすぐ現実のものになると思われる。感音難聴に悩む患者は多く、急性期の限られた状態を除き、感音難聴に対する治療法が無い現状を考えると、この分野の研究に大きな予算を組み、日本が世界をリードすることが望まれる。 | 世界には中等度以上の難聴者は人口の0.8%いるとされ、難聴は米国では最も多い障害である。本邦での感音難聴の頻度は明らかではないが、1例として、難聴をもつ新生児は正常新生児で1,000人に1〜2人、ハイリスク新生児で100人に3〜5人存在する。また65-75歳の約4分の1、75歳以上の4分の3以上に明らかな聴力障害がみられる。感音難聴は急性期を除き治療法が無いのが現状である。我々の遺伝子治療の研究では内耳有毛細胞を再生することができ、聴力回復が動物実験レベルではもうすぐ可能になると思われる。この研究を発展することで感音難聴を治療できるようになれば、極めて頻度の高い感音難聴患者に大きな福音となる。 | 12 英10 邦2 |
0 | 15 外8 内7 |
0 | 0 | なし | |||
急性中耳炎による聴覚障害発生機構の解明とその予防に関する疫学的実験的研究 | 平成12-14年度 | 43,500 | 社会保険中央総合病院 耳鼻咽喉科 | 石橋敏夫 | PCRを用いて臨床検体から同時に数種類のウイルスゲノムを同時に、迅速かつ簡便に同定するシステムを一般病院検査部の中に確立した.このシステムを用いて、小児急性中耳炎の中耳貯留液検体における、細菌およびウイルスの感染状況と予後の調査をおこなった。呼吸器ウイルスおよび細菌が大部分の急性中耳炎の病原微生物となっており、呼吸器ウイルスの単独感染(ウイルス性中耳炎)は21%であった。ヘルペスウイルスは22%に検出され、陽性例においては滲出性中耳炎への移行が高率に認められた。 | 抗生物質の濫用による耐性菌が急増している現状において、ウイルス性中耳炎を治療早期に判別できれば、不要な抗生物質の使用を避けることが期待できる。RSウイルスに対するワクチン投与により、急性中耳炎の罹患率を抑制すことが期待できることを示した。 | われわれの確立した病原微生物を同時に、迅速かつ簡便に同定するシステムは、マイコプラズマ、クラミジア、結核菌、ヘルペスウイルスなどの検出に期間のかかる病原微生物の早期の同定に有用であり、適切な抗生物質や抗ウイルス剤の使用を治療の初期から可能なものにする。 | 5(うち2は投稿中) | 1 | 20 | 0 | 0 | なし | |||
小児・若年者の難治性網膜疾患の原因と治療に関する研究 | 平成12-14年度 | 46,200 | 国立成育医療センター | 東 範行 | ア 小児・若年者の難知性網膜疾患の原因解明、新たな検査、治療法を開発した。レンズ系の改善による網膜硝子体の観察機器を開発し、効率良い視機能検査法を明らかにした。基礎研究では網膜・視神経形成異常においてPAX6を初めとする多くの疾患原因遺伝子を初めて明らかにした。遺伝子治療に向け、眼組織特異的遺伝子発現システムを開発した。イ 網膜・視神経形成異常における疾患原因遺伝子の解明はNature Geneticsを始めとして多くの雑誌に掲載され、国際的に高く評価されて数多く引用されている。また、開発した遺伝子治療システムも掲載論文が注目されており、臨床応用への具体化が検討されている。 | 開発した小児の網膜硝子体の観察機器、視機能検査法は、検査が難しい一方難治症例が多い小児において、治療成績向上に大きく寄与すると思われる。疾患の原因遺伝子解明は、遺伝相談のみならず、形態形成の機能解明、再生医療へ応用が期待できる。遺伝子治療法は、早期に臨床応用が可能と思われ、手術を行わずに内科的治療できることに意義がある。 | 疾患の原因遺伝子解明のみならず、眼の形成機構が明らかになったことは、テレビや新聞で紹介された。再生医療へ応用、遺伝子治療法の臨床応用が実現すれば、社会的インパクトはきわめて高い。 | 47 | 51 | 168 | 0 | 0 | http://www.ncchd.go.jp http://pax6.hgu.mrc.ac.uk/Tables/tables.htm |
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網膜投影ディスプレイ装置による視覚障害者の社会復帰 | 平成 13-14 年度 | 22,990 | 大阪市立大学大学院 医学研究科 視覚病態学 | 白木邦彦 | 低視力者に対して、全く新しい光学系を用いて視覚情報を直接眼に投影する視覚補助装置を開発し、頭部搭載可能な程度に小型化した。また、同じ方法で、投影すべき網膜の領域を検出する網膜投影型検査装置も同時に開発した。2年目には単なる小型化のみでなく、低視力者にも使いやすいものに改良することができた。低視力者用にこれまでの装置の壁を打破すべく、開発を目指しているのは国際的にも本装置が唯一のものである。 | 厚生労働省・文部科学省後援の第12回国際網膜世界会議での研究発表にみられるように低視力者の生活の質向上と社会進出の促進に貢献が期待される。また、新産業創出のための近畿通商産業局の即効型地域新生コンソーシアム研究開発事業としての採択にみられるように、経済産業的にも貢献しつつある。現在商品化を目指して、科学技術振興事業財団のプログラムC(プリベンチャー)課題に応募している。 | 頭部搭載型の本網膜投影装置の視覚障害者自身による使用体験がNHKテレビ(おはよう日本)により放映され、全国の低視力者から問い合わせが殺到した。また、産学連携プロジェクトとして業界紙のみでなく一般新聞紙にも記事が掲載された。 | 3 | 2 | 5 | 0 | 0 | http://www.med.osaka-cu.ac.jp準備中 | |||
平衡機能障害者における歩行運動3次元解析 | 平成12-14年度 | 7,530 | 国立病院東京医療センター耳鼻咽喉科 | 松永達雄 | 3次元動作解析システムを用いて、開眼及び遮眼歩行時の頭部一体幹協調運動の3次元解析を行った。若年者では、開眼時遮眼時ともに頭部一体幹協調運動が保たれており、歩行運動は安定していたが、高齢者では、特に遮眼時に頭部一体幹協調運動が破綻し歩行が不安定になっている所見カミ多くみられた。また、脊髄小脳変性症患者の歩行運動3次元解析を行った明らかな失調性歩行にも拘らず、若年患者では頭部一体幹協調運動は保たれていた。高齢患者では協調運動は破綻していた。これらの成果は、国内及び国際学会にて発表され、Equilibrium Research誌に論文として2件掲載された。 | 様々なストレスを抱える現代社会においては、めまい平衡障害を訴える患者はまず豪す増加してい乱また現代の高齢化社会においては、歩行中の転倒事故防止が重要な課題のひとつになっている。本研究の成果により歩行の安定性を客観的かつ正確に評価できるようになったことは、将来の厚生労働行政にとって極めて有用であると考えている。 | 3次元動作解析システムを人間の歩行運動解析に利用するという事自体、萌芽的な研究である。国内では我々の研究が最先端であり、当該分野をリードする形で発展している。 | 2 | 0 | 6 | 0 | 0 | なし | |||
レーザー細隙灯とリポソームによる加齢黄斑変性症への光化学療法 | 平成14年度(単年度) | 14,400 | 京都大学大学院医学研究科視覚病態学 | 西脇弘一 | 3種類のレーザーを組み込んだ細隙灯を開発してサル、ラットの脈絡膜循環を観察し、新生血管への治療の開発を行った。また温度感受性リポソームを用いた経瞳孔温熱療法での網脈絡膜温度計測により、治療法の基礎的裏付けがされた。Current Eye, IOVS等の眼科一流誌に掲載され、新しい器械及びリポソームを用いた方法は国内外で反響があり問い合わせがあった。 | 加齢黄斑変性症への光化学療法の新しいドラッグデリバリーの方法として、また脈絡膜新生血管および脈絡膜循環の研究により、難治性疾患である加齢黄斑変性症への診断・治療への貢献が期待される。また経瞳孔温熱療法におけるリポソームによる網脈絡膜温度の測定は今後の治療法の評価に大きな貢献が期待される。 | 難治性疾患である加齢性黄斑変性の患者への基礎研究および新しい治療法として、そのQuality of Lifeを改善させる点で社会的貢献が期待される。 | 4 | 0 | 5 | 0 | 0 | なし | |||
聴覚障害者の社会参加促進に向けた「自己発生音」の評価と対応策の確立 | 平成12-14年度 | 26,300 | 国立身体障害者リハビリテーションセンター | 佐藤徳太郎 | ア 聴覚障害者への情報保障の重要性は論を待たないが、聴覚障害者の職業訓練の現場において、日常生活活動に伴って発生する「自己発生音」の検討も必要と考えて本研究を開始し、「自己発生音」に関する取組の必要性と具体的内容とを提言できた。 イ 「自己発生音」の評価法と訓練法、さらに「自己発生音」モニターシステムを開発するとともに、「自己発生音」は外国においても未開拓の分野であることを確認した。 |
更生援護施設における生活訓練・職業前訓練項目に「自己発生音」の評価・訓練を組み入れることによる「自己発生音」お適正化は、職場環境を改善させることにより、聴覚障害者の社会参加を促進できる。また、コミュニケーションに口話を用いる聴覚障害者において、発話音圧の適正化による口話の伝達性向上も聴覚障害者の社会参加促進に有効である。本研究において、そのための具体的指導・訓練を提示できた。 | これまで検討されたことのない「自己発生音」について、特に聴覚障害者に広く認識され、受け入れられることが必要であるが、聴覚障害者団体や教育現場において今後積極的に取り組まれるための基盤が出来た。本研究において開発した「自己発生音」モニターシステムについて今後も継続的に検討し、広く活用できる方法をさらに確認し、「自己発生音」の普及に役立てるとともに特許申請を行う予定である。 | 8 | 3 | 5 | 1 | 2 | なし | |||
神経科学的アプローチによる緑内障の病態解明と治療法の開発に関する研究 | 平成12-14年度 | 99,500 | 新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻感覚統合医学講座視覚病態学分野 | 阿部春樹 | NMDA受容体が網膜神経節細胞死に関与すること、実験緑内障眼で神経栄養因子が変動すること、カルシウムチャネルブロッカーが神経保護作用をもつことが判明した。眼球発育期に網膜特異的に発現する遺伝子、再生肢に発現する遺伝子を発見した。神経保護に着目した新規薬剤の開発及び神経再生に着目した治療の開発に有用である。成果はBrain Research等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 | 緑内障は本邦における2大失明原因の一つである。病態・発症メカニズムの解明により、発症予防、神経保護に着目した新規薬剤の開発、神経再生に着目した治療の開発を行うことによって、視覚障害対策を推進することが可能である。 | 本研究は現在までに国内外で他に報告はなく、得られた成果は今後の緑内障の病態解明、治療法の開発において非常に有用な知見である。 | 11 | 4 | 40 | 0 | 0 | なし | |||
眼科領域におけるプロテオーム解析法による診断法の確立と疾患治療法への展開に関する研究 | 平成12年度―14年度 | 43,500 | 山形大学医学部視覚病態学(眼科学) | 山下英俊 | 眼内液における蛋白質の発現パターンを体系化し、網羅的に検討する検査法を確立するため、そして複雑な病態を検討するため、プロテオミクス解析法で眼内液分析をおこなった。黄斑円孔眼、糖尿病網膜症眼の硝子体サンプル、及び対応する血清サンプルの解析を行い、正常硝子体蛋白質のプロファイルの作成と、糖尿病網膜症において眼局所で病態に関与している因子の検索を行った。黄斑円孔の硝子体サンプルにおいて約250のスポットを検出し、その内53スポット、18個の蛋白質を同定した2)糖尿病網膜症の硝子体サンプルにおいて約650のスポットを検出し、38個の蛋白質を同定した。その解析から血清成分とは異なり、眼内に多く発現している蛋白質の同定が可能であった。微量の眼内液の精度の高い解析は眼科学会、プロテオミクス関連学会で評価を受けた。 | プロテオミクス解析の臨床応用は個々の患者の病態識別により、より高度なで精度の高い医療が可能とするテイラ?メイド医療技術開発の中核をなす技術である。即ち、患者1人の1眼からえられる眼由来液の蛋白質発現の分析が可能になれば、個々の患者の病像を個別に把握し、個々の患者にあった治療法を選択して無駄な治療を行わないことが可能になる。これにより、医療過誤の減少に資すること、医療費抑制に資することといった効果が期待できる。また、病態を総合的に把握でき、体系的、網羅的病態研究を押し進めて新しい治療法開発に結び付く。現時点では、患者眼病態による蛋白質発現パターンの解析、および一部の蛋白質の同定ができている。直ちにすぐの臨床応用は困難であるが、臨床応用への道筋を明らかにすることができたと考えている。 | 2002年度のノーベル化学賞田中耕一氏の受賞研究はまさにプロテオミクス解析技術に対する貢献であり、プロテオミクス技術への大きな関心があつまった。同技術を臨床応用する研究は眼科学会で大きな関心事である。本研究が直ちに臨床応用はできないが、微量な眼内液を用いた研究の方法を含め、今後社会的にアピールできると考えている。 | 2 | 17 | 5 | 0 | 0 | なし | |||
視聴平衡覚を代償する機器の開発、改良に関する研究:屈折矯正手術および眼内レンズ挿入術とその視覚の質に関する研究 | 平成12-14年度 | 43,500 | 国立病院東京医療センター 臨床研究部 | 野田徹 | 眼内レンズ、屈折矯正手術眼の視覚の質に関して、色収差を含めた詳細な評価が可能となった。視覚の質を他覚的に評価するPSFセンサーの臨床応用を世界に先駆けて行い、眼光学分野の進歩(SPIE proceedings of biomedical optics )として掲載された。感覚器政策医療ネットワーク研究班(The Policy-based Medical Services Network Study Group for Intraocular Lens and Refractive Surgery)による研究成果は、Arch Ophthalmology、Jpn J Ophthalmol、臨床眼科の国内外の雑誌に掲載され、感覚器政策医療研究部門の実績が広く示された. | 感覚器政策医療ネットワークを活用した多施設共同研究斑が組織され、政策医療の推進に貢献した。眼内レンズ手術における視覚の質、手術診療体制、安全性の向上に有用な成果を得、また本研究を通じて、クリティカルパス導入が推進された。本研究による視覚の質の客観的評価法は、今後、治験分野の評価指標へも応用が強く期待される。エキシマレーザー屈折矯正手術に関して、今後の医療行政の指針設定に有用な情報を得た。長期手術予後が未知であり、公的な研究を通じて確実に継続される経過分析は、重要な意義を有する。 | エキシマレーザー屈折矯正手術の手術成績を含めた研究成果に関する最新情報は、東京医療センターにおいて一般市民への説明会として定期的に情報公開を行っており、国民の正しい手術の理解に役立てている。 | 25 | 29 | 86 | 0 | 0 | なし |