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健康食品に係る制度のあり方に関する検討会ヒアリング資料


 団体の名称   社団法人 日本栄養士会

 代表者氏名   鈴木 久乃

 団体の概要
  目的 本会は国民の栄養の確保改善に関し調査研究を行い、栄養に関する国の施策の遂行に協力するとともに栄養士の資質の向上をはかり、もって国民の福祉の増進に寄与することを目的とする。
  組織構成 全国を区域とし、(一つの都道府県の区域を単位とし、当該区域内の栄養士を会員として民法第34条の規定により設立された法人である)都道府県栄養士会に所属する者及び都道府県栄養士会を持って組織する。
正会員は、管理栄養士(55%)・栄養士(45%)で、平成15年末で、56,394名
会員の所属する勤務先により、次の7つの職域協議会を設置している。
(1)学校健康教育、(2)行政、(3)研究教育、(4)集団健康管理、(5)地域活動、(6)病院、(7)福祉
  事業又は活動の内容 本会は、前条の目的を達成するために、次の事業を行う。
                  一、 国民の栄養に関する調査研究及び集会
二、 国民の栄養に関する知識の普及
三、 栄養改善の振興に関する事項及び資料資材の斡旋
四、 月刊「栄養日本」その他刊行物の発行に関する事項
五、 都道府県栄養士会相互の連絡調整に関する事項
六、 会員の相互扶助及び連絡並びに資質の向上に関する事項
七、 その他本会の目的を達成するために必要な事業

 健康食品に係る制度のあり方に関する意見内容
(1) 国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割をどう位置付けるか。「医薬品−現行制度に基づく保健機能食品−いわゆる健康食品−一般食品」の体型のあり方。
(2) 「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているか。「健康食品」の安全性・有効性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。
(3) 1及び2を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度はどうあるべきか。

 結論的には、健康食品(いわゆる健康食品を指すものとする)の是非ということになろう。保健機能食品制度に関しては、多少の問題を抱えているとはいいながらも少なからず、既成の事実として国民に受け入れられ定着したと見ることができる。中でも、特定保健用食品は、一定の評価基準を満たしたものにのみ厚生労働省より表示が許されたものであり、現在のところ問題は生じていない。また栄養機能食品は、特定の栄養成分を含むものとして厚生労働省が定める基準に従い当該栄養成分の機能表示を行ったものであり、これも現在のところ問題は生じていない。
 健康食品は、錠剤・カプセル形態のいわゆるサプリメントの他、古くから伝承の健康食品、代替療法に用いられる健康食品等、きわめて多種多様なものが存在する。かつて、「栄養成分を補給し、又は特別の保健の用途に資するものとして販売の用に供する食品」と概念整理したことがあるが、現在は国(行政)としても、厳密な定義をおかず保健機能食品以外の一般食品との間に位置するものとして取り扱われている。それ故に、その有効性の問題だけでなく、安全性にも問題を生じているのである。
 現実に、特定保健用食品は、ヒトにおいてその健康機能を実証しているのに対し、健康食品は、動物実験によってのみが9%、昔からいわれているが12.9%、健康機能は明らかでないが0.5%存在する(平成11年度厚生科学研究補助金「いわゆる栄養補助食品等の流通実態と食品衛生に関する研究(主任研究者 田中平三)」)。然るべきして、健康被害は起こりえる状況と考えられる。
 加えて、昨今では、食品の流通が盛んで、諸外国からの輸入品が広く販売されている。これら商品に関しては、さらに不透明の部分が多い。そして、現実に健康被害が起こっているのも、これら商品の中からである。
 しかし、多くの国民は、どの食品が特定保健用食品であり、栄養機能食品か、はたまたいわゆる健康食品か、分類の複雑さのためか十分認識しておらず、いずれの食品を活用しても効果があるものと信じて、平成13年の国民栄養調査結果からも対象者の男性で17.0%、女性の23.6%が何らかの栄養補助としてこれらを利用している。
 こうした状況の中、健康食品の効用は認められるものもあるが、その多くは誇大広告に例を見るように製造・輸入・販売側のモラルの問題が非常に大きい。その反面、消費者である国民の意識の高揚と、正しい知識の普及に勤めるべきであろう。実際的には、健康食品は、法的には位置付けられていることから、積極的に利用者側に立った対策を講じるべきと考える。
 そのためには、個々人の栄養診断に基づいて適切な栄養補助食品の活用や栄養指導能力を有する管理栄養士を中心とした運用が、健康被害の防止及び消費者サービスの向上に繋がるものと考える。
  (1) 販売制限:販売箇所を限定する。食品とはいいながらも、過剰摂取の問題、あるいは相互作用の問題が生じることは明白である。調剤薬局、ドラッグストアー等で、摂取指導を伴った販売を義務づける。
 現実に、一部の薬局等では、健康食品の販売に際し、管理栄養士・栄養士を雇い栄養指導を行っており、その個人にとって、健康食品あるいは保健機能食品が本当に必要であるかどうか、あるいは、服薬している薬があるとするとその薬との併用に問題がないのか等を薬剤師と管理栄養士等が連携を取って指導販売に当たっている。薬剤師だけでは、消費者の質問に対応しきれないという実情からといわれており、いわゆる健康食品の利用は、食生活に係わる因子は非常に幅広く、ファジーな部分も多く、実際に栄養学を修得し人体の構造機能ならびに栄養(食品)成分の生理作用を理解している管理栄養士でなければ対応できないというのも現実であろう。また、栄養士法の改正に伴って管理栄養士は、栄養管理の専門家として位置付けられたこと、さらに、今般、日本栄養士会は、「いわゆる健康食品」の問題に対応するため、管理栄養士・栄養士の生涯学習制度の中に、保健機能食品等(サプリメント)に係る栄養指導講座を設け、新生涯学習制度を立ち上げたところである。他団体、他組織が実施しているサプリメントアドバイザリースタッフ制度との連携も視野に入れ、他団体、他組織との連携を築き始めているところである。
 一方で、食品衛生監視員の関与も考えられるが、これまでの業務が主として食中毒発生の監視役的役割を担ってきた関係、あるいは現状の新興あるいは再興感染症、食品汚染の観点で考えると、健康食品の取り締まり的役割に就き、指導的役割には管理栄養士の役割が重要である。

(2) 製造販売責任の明確化と健康情報発信源の責任体制:この分野に関しては、日本栄養士会は的確なコメントは難しいが、国レベルでの製造販売責任、ならびに健康情報発信源を問う制度を創設いただきたい。既に、「特殊な方法により摂取する食品等の暫定流通禁止措置」あるいは「健康の保持増進効果等についての虚偽・誇大広告の表示の禁止」がなされているところでありますが、あわせて国民への健康・食生活に係わる情報の発信源としてのテレビ局、出版社、インターネット販売業者への責任を明確にしていただきたい。栄養や食事に関する情報源の主体は、テレビ・ラジオが圧倒的で、ついで雑誌・本、新聞である。これらからの情報が、家族、友人・知人を介して伝わることが平成12年の国民栄養調査結果から明かとなっている。それだけに、特にテレビ、雑誌・本の社会、国民に対する影響の大きさを考え、責任ある編集企画をテレビ局、出版社等に課すべきと考える。誤解を招く報道であったり、国民の健康観を損なう情報が氾濫するケースが多いのも事実である。また、時代を反映して、インターネット販売が広く普及し、実際に健康被害を生じている多くの商品は、インターネットを通しての販売が主である。こうした販売方法の規制は非常に重要である。
 実際には、前述の販売制限(規制)、すなわち、確実に管理栄養士による健康栄養相談を伴って販売されるならば特段の問題はないわけであるが、管理栄養士がその業に就く制度が導入されるまでの期間の対策としてお考えいただきたい。

(3) 輸入品の取り扱い:上記の他、輸入品の取り扱いが重要な課題である。これらの販売についても、(1)同様に取り扱うとしても、製造・輸入代理店の責任を問うことが難しいと考える。そうなると、現実的には、販売を担う、管理栄養士の指導のもと販売を許可された調剤薬局、ドラッグストアー等ということになるが、その際の責任を指導販売の任に当たる管理栄養士にすべての責任を背負わせるわけにはいかない。それ故、是非とも国内販売の許認可をする際に、成分分析等のチェック機構を設け、これら商品には添付文書あるいはインタビューフォームをつけるべきであると考える。その上で、販売ルートに載り市場に出された際には、管理栄養士が添付文書あるいはインタビューフォームの内容を基に消費者に真に必要な商品なのかどうかをチェックし、その商品を販売するようなシステムを構築できれば、安全な販売が期待され、確かなものだけが市場に残ることになろう。国内企業においては、真に国民の健康を考え商品開発販売を行っているところもあることから、こうした会社は少なくとも国民の健康保持増進のためにも生かされるようになってほしいものである。節操のない企業との区別化がされることを期待したい。

 最後に、有効な健康食品は、管理栄養士の指導のもと、販売され利用されれば、当然その効果が期待され国民のメリットにもなると考える。また、指導に基づき、販売を行うことによって健康被害のリスクも軽減できるはずである。野放し状態での販売形式では、このリスクリダクションに係わる規制が非常に掛け難いはずである。非常に大きな改革になるが、現状から考えるともっとも国民のためになる対応だと考えている。



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