戻る

参考資料1

WHO水道水質ガイドライン第3版 専門家最終会合 報告


1.日時 2003年3月31日(月)−4月4日(金)

2.場所 スイス ジュネーブ WHO本部 3階B会議室
 事務局 WHO本部 水・衛生・健康計画事務局

3.参加者 約53名(米国、カナダ、ドイツ、EC、スウェーデン、フィンランド、ベルギー、ウガンダ、中国、フィリピン、タイ、WHO地域事務局など)
日本からの出席者   眞柄泰基、国包章一、遠藤卓郎
WHO関係者   橋詰博樹
(オブザーバー 健康局水道課 浅見真理)

4. 概要
1) 飲料水水質ガイドライン第3版第1巻の見直し、ドラフトに対するパブリックコメント及びその回答の方向性
2) 同ガイドライン第3版逐次見直し方式の実施計画
3) 同ガイドラインの発展に対する方向性と方法
4) 同ガイドラインの最終調整において事務局で留意すべき事項
等について討議を行った。

5. ガイドラインの構成(最終案)
第1章   導入
これまでの経緯。
第2章   ガイドラインの性質
水の安全管理計画についてフレームワークを提示する。
第3章   健康に関連する目標
病原微生物に対する基本的な対応方法として汚染防止と処理(除去、消毒)に関するガイドライン。特定の病原体に関する基準値は示さない方針。
第4章   水安全計画
Water Safety Plans (WSPs)の概念の基にそれぞれの事業体が独自に安全確保のためのプランを策定することが重要。また、小規模水道等でも同様にWSPsの適用が必要で、その際には行政によるプランの策定や第三者機関による認証が必要。
第5章   サーベイランス
WSPsにおいて採水計画を定める必要。
第6章   その他の利用
いわゆる水道事業体の管轄外となるような関連施設へのWSPsの適用の重要性。大規模ビル、旅行者の飲料水、海水淡水化施設、ボトル水、食品製造における水、航空機・船舶の飲料水等、あるいは災害時等における飲料水について注意事項。
第7章   微生物
ウイルス、細菌、原虫について記述の大幅修正。原水の微生物汚染状況とそれに見合う処理技術について図による例示。第3章で提案された管理目標値(年間個人の許容置:10-6DALYs)に関して、病原体(クリプトスポリジウム、カンピロバクター、ロタウイルス)の原水汚染状況とそれに求められる処理が例示され、その計算根拠を記述。
第8章   化学物質
代謝の機構も含め毒性が不明確な物質についてはローリングリビジョンとする。(付表)
第9章   放射線
新しいICRP規則に合わせて見直し。
第10章   快適性
微生物等の記述について全体の整合性を調整。

6.全体的事項な変更点
 今回のWHOガイドラインは、水の安全管理の総合的なフレームワークを提示しようとするものであり、水安全計画(WSPs)の策定の重要性が指摘される見込みである。また、化学物質と並び微生物問題の重要性が強調されるものとなっている。この背景にはクリプトスポリジウムをはじめとする塩素耐性病原微生物による汚染問題と、レジオネラに代表される水道水内で増殖する病原体の存在が注目されていることなどがある。全般的に、病原体汚染と化学物質汚染との調和を重視して編集を進めるべきとの判断がなされた。

 また、以下の項目についてはローリングリビジョンとすることとなった。

7. 今後の予定
2005年  フェーズ1 原稿ができているものの見直し(18ヶ月毎)
2006年  フェーズ2 原稿がこれからの項目
2008年  第4版の準備(GDWQ50周年)
毒性評価、曝露量についてはIPCSで行う体制に移行する予定

8.会合のまとめ
 今回の会合は、飲料水質のガイドライン値のみを記述するのみならず、水の安全を確保するための計画全般について水道版HACCP、すなわち、Water Safety Plans(水安全計画)を策定することを強く推奨する内容となっている。これは地域の実情に合わせて、目標を定め、目標を達成するために計画を策定し、計画的に監視を行う手法である。具体的には、事業の責任者、処理の専門家、水質管理者、そして一般市民の代表で構成するチーム(委員会)を作り、事業計画を定めることが求められる。今回の会議では全体をWater Safety Frameworkとよび、そのあり方について議論がなされた。国や地域、対象となる事業体の規模によってもWSP計画は大きく異なる性質をもつと考えられる。


付表 WHO飲料水水質ガイドライン第3版における化学物質のガイドライン(案)

事務局案より仮訳(2003.4.17現在、変更の可能性あり)

  第2版から変更なし 新しい情報に基づき修正 新GV値 or 変更後 GV値 RR(ローリングリビジョン)
予定等
天然物質 ほう素
塩素
クロム
硬度
硫化水素
モリブデン
pH
セレン
ナトリウム
TDS
ひ素
バリウム→RR
 不確実係数
ふっ素
硫酸
マンガン:
  0.5(P)→0.4 mg/L(C)
ウラン:
  0.002(P,T)→0.015mg/L(P,T) (水の割り当て率80%)
(暴露量見直し)
EHC, CICADのリスク評価が変更されれば見直し

[2次RR]
ほう素(新 UD データ)
モリブデン (調査中)
セレン (WSH文献調査)

[他]
ふっ素 (新しい情報追加)
ウラン
工業や
生活に用いられる人為汚染物質
シアン
水銀
ジクロロメタン
1,1-ジクロロエタン
1,1-ジクロロエテン
1,2-ジクロロエテン
トリクロロエテン
テトラクロエテン
ベンゼン
キシレン
エチルベンゼン
スチレン
1,2-ジクロロベンゼン
1,3-ジクロロベンゼン
1,4-ジクロロベンゼン
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
石油
ニトロベンゼン
EDTA
ニトリロ酢酸
ペンタクロロフェノール
カドミウム
トルエン
ヘキサクロロブタジエン
 1994EHC を引用に追加
1,4-ジオキサン:→RR
四塩化炭素:
  2→4ug/L
1,2-ジクロロエタン:
  30→30 ug/L (4ug/L is at 10-6)
1,1,1-トリクロロエタン:
  2000ug/L(P)→NGV
モノクロロベンゼン:
  300ug/L→NGV
リクロロベンゼン:
  20ug/L→NGV
アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル:
  80ug/L→NGV
EHC, CICADのリスク評価が変更されれば見直し

[1次RR]
トリクロロエテン
1,4-ジオキサン
石油
MTBE (Canada 作業中)
シアン (CICAD 作業中)
農薬 アンモニア
硝酸/亜硝酸
アラクロル
アメトリン
アトラジン
クロロトルロン
シアナジン
2,4-DB
1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン
1,2-ジクロロプロパン
1,3-ジクロロプロパン
1,3-ジクロロプロぺン
ジクロロプロップ (2,4-DP)
フェノプロップ
イソプロチオラン
MCPA
メコプロップ
メトラクロル
モリネート
ペンジメタリン
シマジン
2,4,5-T
テルブチラジン
トリフルラリン
アルディカーブ
アルドリン・ディルドリン
カルボフラン
クロルデン
2,4-D
1,2-ジブロモエタン
 0.4-15(P)→0.4ug/L(P)
 腫瘍種特定
グリフォサート
 及び代謝物AMPA
ヘキサクロロベンゼン
 1 ug/L→NGV 飲料水中の濃度が低いため工業用用途に移動
メトキシクロル
ベンタゾン:
  300ug/L→NGV
ディメトエート:
  new (6ug/L)
ジクワット:
  10ug/L→NGV
エンドスルファン:
  NGV (new)
エンドリン:
  0.6ug/L (new)
フェニトロチオン:
  NGV (new)
ヘプタクロル・ヘプタクロルエポキシド:
  0.03ug/L→NGV
リンデン:
  2→2ug/L
(新TDI 2002 JMPR)
マラチオン:
  NGV (new)
パラチオン:
  NGV (new)
メチルパラチオン:
  NGV (new)
ペルメスリン:
  20ug/L→NGV
2-フェニルフェノール:
  NGV (new)
プロパニル:
  20ug/L→NGV
JMPR等のリスク評価が変更されれば見直し

[1次RR]
カルバリル (JMPR報告更新)
ジフルベンスロン (JMPR 評価あり)

[他]
アトラジン (新 US データ)

[クライテリアに達しない物質]
アミトラズ
クロロベンジレート
クロロタロニル
シペルメスリン
ダイアジノン
ディノセブ
エチルチオ尿素
フェナミフォス
フォルモチオン
ヘキサクロロシクロヘキサン (同位体を含む)
MCPB
メタミドフォス
メソミル
マイレックス
モノクロトフォス
オキサミル
フォレート
プロポクサー
ピリデート
カントゼン
トキサフェン
トリアゾフォス
酸化トリブチルスズ
トリクロフォン
浄水薬品
または
消毒
副生成物
塩素
よう素

2-クロロフェノール
2,4-ジクロロフェノール
2,4,6-トリクロロフェノール
ホルムアルデヒド
クロロアセトン
塩化シアン
クロロピクリン
アルミニウム

アスベスト

ニッケル
PAH
 ベンゾ(a)ピレン
 フルオランテン
亜鉛
クロラミン
 モノクロラミン(ジ、トリに言及)
二酸化塩素
 "塩素酸と亜塩素酸"に変更
 DBPに変更
 消毒を妥協してはならない旨追加

MX
ブロモ酢酸
ブロモクロロアセトニトリル
アクリルアミド
エピクロロヒドリン
銅 (新データにより暫定外す)
無機スズ
有機スズ
 ジアルキルスズに変更
 TBTOを外す
塩素酸:
  NGV→0.7mg/L(D)
臭素酸:
  25(P)→10ug/L(T)
塩素化酢酸
  モノクロロ酢酸:
  NGV→20
ジクロロ酢酸:
  50(P)→RR
トリクロロ酢酸:
  100(P)→200ug/L
(pH 制御に関する記述削除)
抱水クロラール:
  10(P)→RR
ハロアセトニトリル
  ジクロロアセトニトリル:
  90(P)→20ug/L(P)
ジブロモアセトニトリル:
  100(P)→70ug/L
トリクロロアセトニトリル:
  1ug/L(P)→NGV
アンチモン:
  0.005→0.018mg/L
→丸めて 0.02 mg/L
塩化ビニル:
  5→0.3ug/L
EHC, CICADのリスク評価が変更されれば見直し

[1次RR]
トリハロメタン
 ブロモホルム
 ブロモジクロロメタン
 ジブロモクロロメタン
  クロロホルム
抱水クロラール
ジクロロ酢酸
塩化シアン (CICAD検討中)
ホルムアルデヒド
ニッケル(新データ)

[2次RR]
イソシアヌール酸 (JECFA参照)

[他]
よう素 (JECFA参照)
衛生上用いられる農薬     クロルピリフォス:
  30ug/L (new)
DDT 及び分解物:
  2→1ug/L
ピリプロキシフェン:
  300ug/L (new)
[1次RR]
メソプレン(2001 JMPR)

[他]
Bt. Israelensis(微生物 WG)
テメフォス
藻類毒素 ミクロシスチン-LR      


トップへ
戻る