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食監発第0404001号
平成15年4月4目

社団法人 日本畜産副産物協会会長 殿
日本ゼラチン工業組合理事長 殿
社団法人 日本食肉加工協会理事長殿

厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課長

牛せき柱の使用実態等について

 日頃から食品安全行政の推進にご理解、ご協力頂き感謝しております。
 さて、OIE(国際獣疫事務局)による国際動物衛生規約の改正が昨年9月に公表され、食用とすべきでない部位として、従来の脳、眼、せき髄、回腸遠位部に加え、新たに頭蓋及ひせき柱が追加されました。わが国では、頭蓋については既に「頭部」の一部としてと畜場での除去を実施しているところであり、せき柱については、国内外とも、と畜場ではなく、食肉処理場等においてせき柱の除去讐が行われている状況にあります。
 わが国では、いわゆる全頭検査等を実施しているところですが、これに加え、伝達性海綿状脳症に関する食品等の安全確保に万全を期す観点から、せき柱の除去等に関する措置の必要性について検討するため、本年4月2日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において伝達性海綿状脳症対策部会の設置が承認されました。
 第1回部会については4月中旬を目途に開催予定であり、本部会において、我が国における牛せき柱の使用及び廃棄等の実態を踏まえ議論する必要があると考えております。
 つきましては、貴団体において把握されている牛せき柱の流通実態、食品への使用実態、廃棄方法及び今回の検討に関するご意見等について、書面により4月11日までに提出方よろしくお願いします。
 なお、提出頂いた文書については、第1回部会資料として活用させて頂くことを申し添えます。


15日副協第48号
平成15年4月11目

厚生労働省医薬局食品保健都監視安全課長殿

社団法人 日本畜産副産物協会
 会長 野間 嘉愛        

牛せき柱の使用状況等について(回答)

 日頃から当協会の業務推進について、御指導いただき感謝申し上げます。
 さて、平成15年4月4目付け食監発第0404001号で御依頼のありましたこのことについて、提出いたしますのでよろしくお取り計らいください。
 なお、今回御提出いたしますものにつきましては、御依頼から提出期限までが短期間でありましたので、取りまとめが不十分なものとなり、今後変更もあり得ますので、御理解のほどお願いいたします。

 牛せき柱の流通状況
(1)  牛骨は、せき柱に限らず、と畜場で枝肉にした後、精肉に至る処理段階で食用とならない骨を外す(脱骨)ことにより発生する。
(2)  牛肉の流通経路は、複雑であり、枝肉(骨付き)のまま小売段階まで流通し脱骨する場合、小売段階に至る中途で脱骨して部分肉として流通する場合に大別できるが、後者の場合の脱骨は、生産者組織や大手卸業者が経営する大規模なカット処理場で行われる場合のほか、小規模な卸業者で家内工業的に行われている場合等様々であり、枝肉から食肉と牛骨がどの段階でどの程度の量が処理されているかについては、当協会はその実態を承知していない。
(3)  牛せき柱を含む牛骨は、(2)で述べた枝肉から精肉に処理される過程で分離され、当協会員に直接搬入され肉骨粉やエキス等に加工されるほか、当協会員以外のエキス製造業者、ラーメン店等の飲食店へ搬入される。当協会員以外のエキス製造業者、飲食店へ搬入されたものも、その後、廃棄物として処理されるもの以外は、当協会員へ化製原料として搬入される。
(4)  なお、当協会員へ搬入されるものは、せき社とそれ以外に分離されることなく混合されたものである。

 牛せき柱の最終処理の状況
 当協会員に直接搬入される牛骨以外の場合、ラーメン店等飲食店が少量を利用しているものについては、事業用一般廃棄物として処理されているものと推測されるが、エキス製造業者が処理しているものは、最終的には当協会員へ化製原料として搬入されていると理解している。

 牛せき柱からの生産物の食用等としての流通状況
(1)  せき柱を含む牛骨を原材料として、当協会員が生産しているものは、加工方法や販売目的により異なるが、エキス、蒸製骨粉、肉骨粉、油脂に大別される。
 このうち、エキスは、専ら食用として利用されており、蒸製骨粉は肥料として利用され、油脂は主に家畜の飼料用、肥料用として利用されている。なお、肉骨粉については飼料利用を停止し、焼却処分を行っている。
(2)  この場合、当協会員が最終的な製品として消費者等に供給しているのではなく、食品製造業者、飼料製造業者、肥料製造業者等が製造する製品の原材料として、これら製造業者に供給しているのが実態である。
 したがって、食用への使用状況については、当協会はその実態を承知していない。

 部会における検討を進めるに当たっての意見
(1)  仮に牛せき柱が食用等に使用できないとした場合、次のような問題が想定されるので、十分な検討をお願いしたい。
 1の(4)で述べたとおり、現状では牛せき柱が他の牛骨と分離されないまま流通しているのが実態であるが、混在状態で搬入された牛骨を当協会員が分離することは不可能である。
 また、当協会員が、牛せき柱を処理しているのは、それを原材料とした生産物が販売でき、事業活動として成立するという前提であり、仮にせき柱が化製原料として使用できなくなれば、その受入れはできない。
 更に、頭部を除く牛骨に占めるせき柱の割合は、20から30パーセント程度といわれており、これが原材料として使用できなくなると処理単位が少量となり、現在は受入れができているところもできなくなるおそれもあり、牛せき柱のみならず牛骨全体の処理をいかにするかという問題も発生する。
(2)  仮に食用等に使用できなくなった場合については、現状の処理方法等の大幅な変更とコストの増大を招くおそれがあるほか、新たな風評被害の発生等につながる可能性等も否定できないという点についても十分に検討していただきたい。
(3)  また、全頭BSE検査が実施されていることを踏まえ、同検査の実施下での異常ブリオンの不活性化処理基準の設定、不活性化技術の開発と評価体制の整備等を行うことも含め幅広い検討をお願いしたい。


厚生労働省医薬局
  食品保健部監視安全課御中

平成15年4月10日   
日本ゼラチン工業組合

ゼラチン生産に使用される牛骨原料の脊柱の扱いについて

 日本ゼラチン工業組合メンバー各社がゼラチン生産に使用しております牛由来原料の脊柱の扱いにつきまして、ご報告いたします。

(1) 脊柱の扱い
 「特定危険部位(SRM)」として指定されている脊髄を除去し、ゼラチン用骨原料の一部として使用しております。

(2) ゼラチン原料の安全性確保
 当組合が生産に使用する牛由来原料は、以下にご報告する管理内容により、その安全性を担保しております。したがいまして、当組合の牛骨ゼラチンには、BSEリスクはありません。
i) 原料原産国
 日本産を含めたBSE発生国(EU諸国)を原産とする牛骨は使用しておりません。主要原産国は、欧州委員会による地理的BSEリスク評価で低リスク(IおよびII)に分類された諸国(インド、アメリカ、カナダ、オーストラリア等)です。
ii) 由来
 獣医検査により、健康な家畜で、食肉用に適することが確認されたと畜に由来しております。
iii) 特定危険部位
 脳・眼・脊髄・回腸遠位部を除去しています。(ゼラチン生産に用いる骨および皮は、BSE感染性が検出されない部位です)
iD) 原料の加工
 生の牛骨そのままでは、晶質の良いゼラチンを効率よく製造することができないため、ゼラチン生産に適した形態に生骨を加工処理しています。専用の原料加工設備によって、骨から油を除去したり、粉砕して一定サイズに揃え、乾燥し、チップ状の粉砕骨とします。さらに、粉砕骨は、塩酸などの強酸で処理し、コラーゲン主体の物質(オセイン:脱灰骨)まで洗浄、精製したものが、ゼラチン生産の出発原料となります。これらの原料加工ラインは、化成品製造ラインとは仕組みが異なり、区別されていますので、肉骨粉等が混じり込むことはありません。
D) トレーサビリティ
 ゼラチンメーカーは加工業者を指名し、由来(原産国、家畜の健康、使用部位など)が明らかな牛骨のみを購入し、ゼラチン製造に供しております。これらの履歴は、健康証明書、品質保証書などで、加工業者に保証させています。

 当組合が用いる牛骨は、原産国、使用部位、加工工程の各段階で厳しく品質管理されており、脊柱を使用することについても全く問題がないと考えております。

 なお、OIE(国際獣疫事務局)の国際動物衛生規約が、牛の背骨を使用禁止部位に指定しているのは、BSE発生国、高リスク国を原産とする場合です。この考えは、米国FDAでも同様で、BSE清浄国の半製品については、脳、脊髄含めて、特に特定危険部位(SRM)の指定はありません。

(3) ゼラチン製造工程によるBSE安全桂の確保
 ゼラチンは、上記工程を経た精製牛骨(オセイン)を、さらに酸やアルカリで化学的処理して、抽出された純粋なタンパク質で、ろ過、イオン交換処理等の精製、高温殺菌を経て製造されています。
 牛骨そのものにはBSE感染性は検出されないため、ゼラチンのBSEリスクが問題になるのは、脳などの特定危険部位(SRM)が、原料骨に汚染を起こす可能性です。しかし、万一牛骨原料にSRM汚染が起こったとしても、ゼラチン製造工程で施される化学的処理や加熱処理により、BSE感染性が完全に除去されるため、世界保健機構(WHO)はゼラチンが安全な食品であると述べています。欧州ゼラチン工業組合(GME)は、これらゼラチン製造工程が持つBSE不活化効果を研究し、現実に起こり得る1,OOO倍の汚染が牛骨原料に起こった場合でも、最終製品のゼラチンには、BSE感染性が検出されないことを検証しました。GMEの研究成果は、仮にBSE発生国の牛骨が原料として用いられたとしても、最終製品であるゼラチンには、事実上、BSEのリスクはないことを示しています。これらの研究成果は、EUの専門委員会(SSC)によって、その有効性が認められており、「ゼラチンの安全性」として意見書がまとめられています。
 したがって、適正な原料管理のもとで、ゼラチン生産に脊柱を使用することは、何ら問題はありません。

(4) タンパク資源の有効利用の問題
 当組合の牛骨原料は、全て海外より輸入しておりますので、国産の牛脊柱がリスク部位として使用を禁止された場合でも、現時点では実質的な問題は発生しません。しかし、牛骨原料に業を依存する立場として、脊柱廃棄による環境や経済への影響の大きさにつき、注意を喚起したいと思います。

 脊柱は牛骨の総重量の約3割に相当するといわれており、年間の屠殺頭数(約140万頭)から発生量を推定すると、年間約2万トンになります。仮に廃棄せざるを得ないとしても、資源活用の道を絶つという二重のロスを最小限にするために、EUのような最高月齢を考慮したSRM指定も必要です。また、処分量に見合う焼却設備や輸送能力の見直し、インフラ整備が求められます。畜産業の円滑な運営、発展には、非可食部位を副産物として適正にリサイクル活用することが重要であることは言うまでもありません。伝達性海綿状脳症対策部会の方々には、脊柱の扱いに関し、リスク対ベネフィットを十分考慮された議論、ご検討をいただきますようお願い申し上げます。

以上


平成15年4月10目

厚生労働省医薬局食品保健部
監視安全課長 殿

社団法人 日本食肉加工協会
理事長 伊藤研一      


牛脊柱の使用実態等について


拝啓
 平成15年4月4目付食監発第0404001号において質問がありました上記の件について、牛枝肉を購入して部分肉等への加工処理を行っていると思われる一部の会員企業に対し、牛脊柱の取扱いについて調査した結果、下記の結果でありましたので、ご報告申し上げます。
敬具



 調査した会員企業20社中、牛枝肉を取扱っている会員企業は11社であり、その11社とも、枝肉から除去した牛脊柱は他の牛骨とともに化製処理業者へ処理を依頼していた。また、牛骨と同時に牛脂肪も渡している企業が2企業あった。

以上



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