03/03/26 第14回 これからの医業経営の在り方に関する検討会議事録        第14回 これからの医業経営の在り方に関する検討会        日時   平成15年3月26日(水)10時30分から11時15分 場所   KKRホテル東京 10階 瑞宝の間 出席委員 石井孝宜、大石佳能子、川原邦彦、小山秀夫、田中 滋、津久江一郎、      豊田 堯、西澤寛俊、西島英利、南 砂                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  定刻となりましたので、ただいまより第14回「これからの医業経営の在り方に関する 検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、ご多忙中のところ、当検討 会にご出席いただき誠にありがとうございます。出欠状況ですが、本日は内田委員、遠 藤委員、川合委員、谷川委員、長谷川委員の欠席の連絡を受けております。大石委員は まもなくお見えになると思います。  それでは議事に入りたいと思います。本日はご案内にもありましたように、最終報告 書案について議論をお願いしたいと思います。事務局より資料の確認をお願いいたしま す。 ○中野補佐  お手元の資料は議事次第、委員名簿、座席表に続き、前回の検討会に対する報告書案 からの修正を「見え消し版」とした資料、それを反映させたものとなります。 ○田中座長  本検討会も本日で14回目となりました。議論に入る前に、座長としての発言をお許し ください。  報告書については、これまですでにいろいろな議論がなされ、皆様方の意見を反映し 修正を重ねてきました。本日は最終的な取りまとめを行いたいと思いますので、委員の 皆様方には、是非ともその方向でご議論をお願いいたします。最終報告書案は前回の議 論を踏まえて一部修正しております。事務局より前回からの変更点について説明をいた だき、さらに追加で意見を出していただいた津久江委員より補足意見の発表をお願いい たします。 ○中野補佐  右上に「見え消し版」と書いてある資料の5頁の2つ目の○ですが、前回の委員会に おいて、公私の役割分担では意味が不明との指摘を踏まえたものです。2つ目の・の「 病院の」の追加については表現の適正化でございます。6頁の「範囲」の追加は、この 部分の発言をした委員自身の意見を踏まえた修正になります。8頁の2つ目の○は、「 例示については過剰に受け取られかねないので、慎重に取扱うべき」との委員の意見を 踏まえたものであります。9頁のアは、「政策医療という文言が多義的で不明確である 」との意見を踏まえての表現の適正化です。  11頁では「引き続き」の削除は表現の適正化です。(4)の「法人検査」の部分は、現在 でも行われている事項について「促進」と敢えて言う必要はないとの委員の意見を踏ま えたものでございます。いちばん下の「なお」書きの追加については、後ほど津久江委 員より報告があります。13頁はいちばん下の部分で、医療機関等の非営利法人のガバナ ンスの視点を盛り込むべきとの意見を踏まえた修正です。14、15頁は表現の適正化のた めの修正になります。17頁ですが、様々な状況の内容が不明確ということで、表現をよ り明確化した修正でございます。18頁の2つ目の○ですが、「新しい病院会計基準に絡 めて条件を付与するのは、少し状況を見てからでいいのではないか」との委員の意見を 踏まえた修正です。  19頁の4つ目の○については、「公的な情報提供に偏っている」との委員の意見を踏 まえて、情報提供の例示の1つとしてWAM NETを表現した形での修正です。20頁の 4つ目の○は表現の適正化です。いちばん下の○のうち、「速やかに解消する」という 修正ですが、これは「改革の方向について迅速性を示すべき」との委員の意見を踏まえ た修正になっております。その上の部分については、「証券化、小口化」だけではわか りにくいので、表現を適正化した修正でございます。21頁の債券発行の条件のいちばん 下のところについては、後ほど委員から追加の説明がございます。 ○田中座長  津久江委員より医療法人の非営利性の徹底に関して、補足意見の発表をお願いいたし ます。 ○津久江委員  私の不手際もあって、座長には12月18日にすでにお手紙を差し上げているところでし たが、事務局に出すのを失念しており大変失礼いたしました。かねてから日精協が主張 しているところは、運用面を含めたモデル定款の見直し、脱退、解散などの際の内部留 保権、あるいは配当が行われないことにするための方策を速やかに講ずるべきというこ とです。かつ、それは行政が画一的に押し付けるのではなく、関係者の自主的な対応を 促すものであるべきと考えております。繰り返しますが、出資額限度法人を巡っては、 関係者による検討の場を設ける方針がすでに表明されているようですが、こうした運用 面を含めてモデル定款の見直しも重要な問題と捉え、追加意見を申し上げる次第であり ます。 ○田中座長  他に補足意見がありましたらお願いいたします。特に質問等がなければ、引き続き最 終報告案について意見をお願いいたします。 ○西島委員  いまの意見ですが、本文がどうのこうのということではなく、いちばんスムーズにい くことを含めて債券の検討をするということがありますので、これを含めて検討と考え てよろしいのでしょうか。要するに、出資額限度方式を含めて、医療法人協会のほうか らいろいろな意見をいままでいただいてきたわけですが、これも含めてと考えていいの でしょうか。 ○渡延課長  これについて、現時点での事務局の立場として、この案を整理するに当たり考えたと ころでは、前回、いま指摘のあった(2)の最終行を受けての検討、研究の場をつくる ことを事務局方針として申し上げたところです。そこでの検討テーマは相当幅広いもの になろうかと思っており、今回、津久江委員から提起があった問題についても、その1 テーマとしておそらく取り上げることになるかと思います。具体的な場のしつらえ等に ついては、また行政のほうで関係者と調整させていただきたいと考えております。 ○津久江委員  西島委員が言われたように、出資額限度法人の問題は日医の重点項目の1つとして入 れていただいておりますので、それを含みながら検討の場を設けていただきたいと思い ます。 ○田中座長  報告書全体について、特に文章を変えるといったことではなく、意見、感想をお願い いたします。この報告書自体だけではなく、今後の方向に関するような意見でも結構で す。この報告書はこれとして、今後このようなことも考えたいというような意見の表明 でも構いません。 ○小山委員  大変よくまとまった最終報告ではないかと思います。どこかで発表するときには、こ のままでは長いので、ダイジェスト版を作っていただければと思います。 ○田中座長  確かに、この種の報告書としては大変長いものですので、ダイジェスト版をご苦労で すがお願いいたします。せっかく局長もお見えですし、最後の会ですからご意見をお願 いいたします。多分、報告書についてはこれでいいのだということだと思いますが、今 後の方向について、一言発言しておくにはよい機会だと思いますのでよろしくお願いい たします。 ○西島委員  実は私ども日本医師会には日医総研というものがありますが、このようなものも含め て検討しているわけです。今回も株式会社の持っている機能というか、そのようなもの もいろいろと議論されたわけですが、この中に織り込んでありますが、やはり、医療法 人と言えども、常に質の向上を目指し、経営の透明化といったことも当然必要だろうと 思います。そのようなものも含めた株式会社が持っている機能を積極的に私どもは取り 込んでいかなければいけないのではないかと思っています。医療本体というのはまた別 の問題ですが、そのようなことを考え、この報告書の中にそれが盛り込まれているので 、日本医師会としても全国にこの報告書を送付し、啓発していきたいと考えております 。 ○田中座長  医療本体の非営利性、公益性を強めつつ、株式会社が持っている経営のテクニカルな 優れた部分については積極的に取り入れるという方向がこのトーンになっていますから 、ありがたいご指摘だと思います。 ○豊田委員  すでにこの報告書に入っていますので繰り返しになりますが、現在、医療法人の98% を占める持ち分のある社団の医療法人の問題が、まさに最大の問題だと思うのです。持 ち分のある社団の医療法人が、本来の医療法人としてこれからも機能していくような手 だてを早急に立ち上げていただきたいと思います。 ○西澤委員  資金調達の件ですが、いま非常に民間病院の経営が厳しくなってきています。それで 、この資金調達の手段を早急に検討することが必要だと思います。全日病あるいは四病 協で、これに対しての取り組みを早急にしたいと思っております。3月の報告書を活用 させていただければと思います。 ○豊田委員  私のほうから追加の発言を予定していましたのでここで述べたいと思います。前回、 日本医療法人協会では少人数私募債を地域医療振興債として、病院債として発行するこ とをお話しましたが、それについてはいろいろ問題点も出てくるわけで、私どもがここ ではっきりしておかなければならない点について、前回十分に言及しなかったと思いま すので、改めて申し上げたいと思います。  最終報告書の21頁、最後の○のところですが、ここに・で書かれてある「債権者によ る経営介入の排除」の部分について、私どもの病院債の認証に関しては、実施基準とし てきちっと記載されていますが、特に医療法人の配当類似行為の禁止。非営利を守らな ければならないということは非常に大事な問題ですので、ここに書かれてあるとおり、 「債券発行による医療法人の役員及び当該役員の同族関係者に対する特別の利益給与の 禁止」は非常に大事にしたいと思っております。私どもの実施基準としては、理事長あ るいは親族に関する応募者の数は3対1、3分の1以下と厳しく実施基準として定めて おります。これがまた配当の類似行為となっては非常に困りますから、その辺は厳しく 押さえております。 ○田中座長  先ほども申し上げましたように、非営利性を守りつつ、一方で経営手法として直接金 融の一部をうまく使うことのすり合わせの歯止めをきちんと入れておきたいということ です。西沢委員が言われた資金調達については、今後とも四病協あるいはその周辺でい ろいろな検討も行われるそうです。 ○南委員  14回にわたる会議で、いろいろな立場の方のお話を伺い、問題点が非常にクリアにな ったと思います。一般の国民にとって、株式会社参入論というのはわかりにくい議論だ ということを何度か申し上げたのですが、株式会社参入論と表に出てはいますが、実は 医療の質の向上のために何が問題かということは、ここでかなりはっきりしてきたと思 います。何度もお話に出ていますが、医療の持つ公益性と非営利性といったものをきち んと守りながら、株式会社機能が持っているような効率性を取り込んでいくということ がはっきりと謳われたことは、非常に意義のあることだったと思います。税制の問題な ど、この検討会ではなかなか手の付けられない部分もあるということですので、是非こ れを実現していただくように関係の方々の努力をお願いしたいと思います。 ○石井委員  私は会計という観点からこの検討会に出席させていただいておりましたので、その立 場から意見を述べさせていただきます。現在、病院会計準則の見直し及び医療法人会計 の基準の必要性に関する研究班が設置されており、昨年7月に第1回会合が持たれまし たので、まだ8カ月ほどしか経っておりませんが、平成14年度が3月で終わりますの で、できれば今月末をもって、研究作業の結果としての報告書作成を主任研究者である 会田先生を中心にやっていただいているところです。  今回の検討会の報告書にも記載されておりますように、医療における非営利性の向上 、公益性の向上という問題と、そして、経営における透明性の確保の問題、さらに、経 営そのものの効率性の再評価といったことと、会計が非常に大きな関わりを持っている ということがあります。研究班では、準則や基準のあり方の見直し議論をしているわけ ですが、非営利組織の会計というものと、営利法人、株式会社の会計というものが融合 し始めてはいますが、全く同じものではなく、非営利には非営利のきちっとした価値観 があるわけです。その辺のところをどのように対応していくかが最も大きなテーマだと いうことで、最終的な検討に入っております。しかし、なかなか難しい論点なので、提 出された研究報告が、世の中できちっとした評価を受け、それをもって具体的な対応に なっていくのではないかと思っております。  画期的な意識というものも当然持ちながら対応していかなければいけないものですか ら、会計に馴染みのない方にとっては、どうしてこのような形になるのかという疑問も 出てくる可能性もありますが、その辺のところは研究に従事した者が対応して説明して いきたいと考えております。また、研究を行うに際して、医政局の方々には大変ご協力 や時間をいただきました。この場をお借りして、会田主任研究者に代わりましてお礼申 し上げます。ありがとうございました。 ○田中座長  大石委員には前回も学問的には興味のある、非営利法人の統治の在り方とは何かとい う指摘もいただきました。今後の検討の方向などについて、さらにご意見があればお願 いいたします。 ○大石委員  まず、私個人が非常に問題だと思っている医療機関の金融の在り方、要するに手綱資 金をどのようにして確保するのかということが、今回割と大きく取り上げられるように なったことを非常に嬉しく思っております。これは大きな一歩ではないかと思っており ます。  本件に関して、今後どのように進めるのかについてはいろいろな方法があると思うの ですが、1つ追加で申し上げておきたいのは、多分、例えば債券とか、ある種の証券化 などといったいろいろな手法の検討が今後進むのだろうと思うのです。その中で非常に 重要な観点は、手法として整ったとしても、現実に貸し手とか投資家から見て魅力的に 映らなければ、結局、仕組みがあったとしても現実化しないという課題が出てくるとい うことです。  それには貸し手もしくは投資家、投資家は一般の個人のような方もいるでしょうし、 機関投資家もいるでしょうが、その人たちにとって、病院の債券を買うといいことがあ る、大丈夫だという感覚を持ってもらうために、西島委員が言われたような形で、医療 界特有の事情は残しつつ、株式会社的な運営論なども含めて医療界全体が自己改革して いるとか、病院自体が基本的に大丈夫なのだといった安全性を確保する、もしくはその 安全性を感じさせるような仕掛けが必要になってくると思うのです。  今回の報告書の中で具体的に取り上げられている、例えば、21頁にある債権者、債券 発行を円滑にするためにということで、(b)の2つ目の○に・がいくつかある中で、 「債権者による経営介入の排除」とか「債券の流通制限」というのは、一見すると、や はり債権者にとって魅力的ではないように映り得ると思うのです。例えば、流通制限と いうのは、買ったのだが、買ったら永久に持っていなくてはならない、要するに売れな いということになれば流動性がないわけで、他の投資に比べると魅力度は下がるわけで す。経営介入の排除というのは、駄目になってどうにも手が出せないということになる と、突っ込んだら最後、見守るしかないのかということになり、やはり魅力的には映ら ないという現実論を踏まえ、しかしながら、医療というのは非営利であるとか、むやみ やたらに投資対象になってはいけないという原則論を踏まえ、両方の難しいものをいい 案配に兼ね合わせて、仕組みを作り、かつ、それが魅力的になるような仕掛けをつくっ ていくことは、困難ではあるが大変意義のあることだと思うのです。これが具体的に進 むような方策が今後出てくればいいと思います。 ○田中座長  アメリカでも地域住民が買うような場合と、機関投資家向けの大型ロットの場合とで は、同じ債券という名前でも仕組みは全く違いますし、いま言われたように、どのよう な形で投資家に魅力を与えるか、金銭的魅力を与える話と、そうではない実質的に地域 のものだという参加感によるインセンティブパターンと2種類ありますので、そのよう な検討が必要だとの指摘は大変よくわかります。 ○川原委員  前回、前々回を含めて、私があまりにも直截的に申し上げたことを先ずお詫びいたし ます。報告書に対する評価ですが、先ほど来、話がでているように、論点整理がきちっ となされ、医療法人の経営、あるいは医療法人に限らず、病院の経営がどうあるべきな のかという1つの将来方向について、論理的に、整理がついたのではないかと思います 。これは先ほど西島委員もいわれていたとおりです。  そこで、これから私どもが考え取り組まなければならない課題は、このような素晴ら しい報告書を世に出し、医療法人が実際にこの方向性に従った中で、具体的に経営が成 し得るような環境整備を今後どのようにつくっていくべきかということだと思います。 むしろ、私は第2のステップとしての環境整備の構築へ、いよいよ移り出したのではな いかと思うのです。そうであるならば、いま大石委員が言われていたように、今いろい ろなことを解決し、実現に移していくためには、調査研究をしなければならない項目も あるでしょうし、あるいは広報を通じていろいろと情報提供をしていかなければならな いこともあると思います。そのようなことを、行政側はもとより、関係団体の皆さん方 が率先して調査研究、敷衍的な広報も含め必要なことを是非やっていただきたいと考え ています。いずれにしても、この1年半、結果的にはこのような素晴らしい報告書がで き、大変ではありましたが、私は疲れが全部取れてしまったような、自己満足というか 、そのような気持ちで拝見しております。 ○田中座長  小山委員からは研究者としての立場から、この分野の研究についてご指導をいただき たいと思います。 ○小山委員  14回議論をして、建替資金がいちばん大きな問題だと私が言い出しましたが、はっき り申し上げて、建替の時期にきて、資金調達ができない医療法人には将来はないと私は 思っています。事実、調査の仕方はいろいろですが、最近改築を考えている医療法人で の銀行へ持ってきた案件で、どのくらい断わっているかというのを聞いていくわけです が、それほど数が多いわけではありません。計画が杜撰、経営が全く駄目、将来展望は ないからという場合には貸さないということで、診療所はわかりませんが、一般に言わ れるように、病院に関して金融機関の貸し渋りが非常に大きいということを証明するこ とは現在できないと思っております。  そのような意味では、医療経営の在り方の検討会もいいのですが、もう少し、日本の 民間病院であれば、公的病院はもっとですが、経営マインドをしっかり持って、国民医 療を守っていくという姿勢がないと、経営はフラフラし、意思決定は散漫、自分たちの やりたい放題をやっているというのでは国民からの支持は得られないと思います。金融 機関からの支持が得られないのは、国民からの支持も得られないことと同じだと考えた ほうがいいのではないかと、研究者として一言申し上げたいと思います。  何度もいろいろとぶつかりましたが、いまのような時勢で、医療機関が、例えば事業 継承ということで困難になるから、何となく医療継承もしやすいように、医療法人の永 続性だから潰れないようにとの主張はよくわかるのですが、現在の国民世論で、医療に これだけ風当たりが強いときに、今度は相続税もまけろといった大合唱をするのは、い かがなものかという観点を私は研究者として持っています。ただ、委員としての発言は あれですが、そのことは十分に理解するべきだと思うわけです。  今後ですが、債券化の話は、豊田委員が言われたように、意味はすごくよくわかるの ですが、債権者による経営介入の排除とか債券の流通制限をしろということを言えば言 うほど、債券化の道は遠のいて、資金調達ができなくなるわけです。つまり、サイドブ レーキを引きながらアクセルを踏んでも、車はちっとも動かないわけで、やはり、次の 検討会で行われる場合には、机上の議論ではなくて、きちっとした方針を明確にしてや らないと、結局は議論していただけで、何も役に立たないということになってしまうの ではないかという私には危惧がすごくあるわけです。  医療機関の資金調達は、市場調達もあるわけですが、そのような意味では、今後、医 療団体によく検討していただき、本当に日本の民間病院の将来がかかっていることです から、今後とも様々な議論を積極的にしていただきたいと思います。 ○田中座長  研究上、大変貴重な点をご指摘いただきありがとうございました。津久江委員は先ほ どの点以外での意見をお願いいたします。 ○津久江委員  小山委員には今ぶったたかれたわけですが、第1回のときに、すでに民間病院におけ る資金調達という資料が出ていたわけで、このとき私も医療法人の資金調達というもの は、金融機関からの借入とか、あるいは公的資金、僅かな公的資金の導入しかないと発 言していたのです。前回になって、医療機関の債券化、病院債の問題などがにわかに浮 かび上がってきたわけですが、病院債の市場での信用力を付けるためにも、例えば四病 協とか日精協といった団体で債務保証機構といったものをつくることによって、力を付 けていくことを今後検討していけばいいのではないかと思っております。 ○田中座長  最終回で、今後の方向についてそれぞれ貴重なご意見を頂戴しました。特にこの報告 書そのものの文面、内容に関して修正すべきという意見はありませんでしたので、本報 告書を以て、本検討会の最終報告書とさせていただきたいと思いますがよろしいでしょ うか。                 (異議なし)                  ○田中座長  まとまりましたので、本日ご出席の篠崎医政局長より一言ご挨拶をお願いいたします 。 ○篠崎医政局長  最後の検討会に当たりましてお礼を申し上げたいと思います。平成13年10月ですから 1年半ほど前に、この会がスタートし、当時、榮畑課長の前任の大谷さんが総務課長で あり、この会をつくる際、どうするかという話があったのです。そのときから、この会 には株式会社のことについてご審議いただきたいと私は思っておりました。もちろん、 医療法人制度等、改革のことについても当然議論をいただくわけですが、当時から行政 改革会議のほうでは、特区ができる前でしたから、そのときから株式会社参入の議論と いうものがありました。私どもが反対、反対というよりも、専門の先生方に集まってい ただき、十分議論していただくことが必要なのではないかということでこの会をスター トさせていただいたわけです。  いまからちょうど10年ほど前ですが、私が渡延課長と同じ指導課長をやっておりまし たとき、医療関連ビジネスの検討会を立ち上げました。関連ビジネスというとちょっと どぎついので、医療関連サービスという言葉に換えたのですが、そのときの医師会の担 当理事が坪井先生であり、今日ここにご参集の委員の中では、川原先生がおられました 。その後、医業経営コンサルタント協会というのができたのですが、そのときの医療関 連サービスの検討の一環でできましたし、医療関連サービス振興会というのもそれでで きました。小山委員、田中座長もその会のときにいらっしゃいましたし、日精協では津 久江先生が担当だったと思います。10年前も同じような議論があり、そのときにセコム の会長がおられ、株式会社がどうして駄目なのだということを盛んに言っておられた記 憶があります。  最終的に、医療関連サービスということでは医業の本体は非営利だが、その周りの関 連は民間活力を大いに利用すべきだというようなことでまとまったわけであります。当 然、そのときも持ち分の医療法人の話もあったのですが、そのときは特別医療法人はで きておりませんで、特定医療法人と医療法人でした。病院関係団体の意見もまとまらな いということもありましたから、なかなか最終的にはまとまらなかったのです。今回、 そのような意味では、田中座長のお働きで、かなり意見が収斂されておりますし、かえ って医療法人、あるいは医療についての非営利というのを強く打ち出していただいたと ころは10年前とかなり違うと思います。  株式会社の問題が言われるように、サービス、医療に関する様々なサービスの質の向 上という意味でも言われるところもあるということですから、改善すべきところは改善 しなければならないわけで、そのことも盛られていることは、今回の報告書は10年前の ものと比べて、大きく前進していると感じております。今回の株式会社問題等について も、いろいろ言われるのは、医療も結構金儲けをしているのではないかということで、 そこがいちばんつらいところで、非営利、非営利と言っても、決して国民の目にはその ように映っていないわけであります。ここで改めて原点に戻っていただき、医療の非営 利ということを、関係者、特に医療関係者は認識を新たにしていただきたいと思います 。  収入の部分が診療報酬で賄われていますから、余計にそのような批判があるわけで、 診療報酬というのは税金と保険料と患者負担で成り立っているわけですから、いわば公 共料金でございます。そこがあるが故に、やはり医療の非営利というのは強く求められ るのではないかと思っております。ただ、戦後我が国の医療が、非常な勢いで量・質と もに充実をしてきまして、いまでは世界一の医療水準だと、これはWHOで客観的にも 言われるところですが、そうなったのは非常に民間の働きが大きかったと思っておりま す。我が国には9,300ほど病院がありますが、その8割は民間立であり、ベッド数で言え ば7割が民間病床であります。一人当たりにかかる費用から言うと、OECDの中でも いちばん安いほうの国でもあります。そのような意味では、効率的に医療が行われてお り、医療の水準も世界のトップレベルに立っていることは、私どもとしても大いに自慢 していいのではないかと思っております。いままでの悪いところは直さなければなりま せんが、いいところは是非伸ばしていかなければいけないと思っております。  医療については、先進国のどこへ行っても問題を抱えており、これでいいと満足して いる国はまずないと思います。WHOに加盟している国は191カ国ありますが、大多数の 国は医療そのものが不足している開発途上国です。ごく一握りの、20数カ国の先進国の 中でも、これでいいのだという国は1つもないわけです。いまから30年近く前にイギリ スに留学しましたときに、イギリスのNHS、ナショナルヘルスサービスが非常に素晴 らしいものだと日本でも考えておりました。実際に行ってみましたら、要するに、いち ばん医療で問題なのはウエイティングであり、システムがきちっとできていて、総予算 制でありますと、特に問題は「待つこと」が当たり前になることでした。  例えば、その当時でも整形外科で股関節の手術をしてもらうのに、私の住んでいたア パートのお婆さんは、9カ月ぐらい待たないと手術が受けられないということでした。 私はGPにかかっておりましたが、風邪で電話をすると、開業医の受付の女性、この人 は市町村の職員ですが、その人が大体振り分けて、熱や体の状態を聞いて、10日後に来 るようにとなり、大体風邪だと治ってしまう、あるいはもっと重病になってしまうかの どちらかでありました。ウエイティングというのは、当時のイギリスでも非常に大きな 問題でありました。  結局、いろいろな問題を含めても、医療に対する国民の要望は無限大に近いわけで、 自分の命はすごく大事であり、なるべく長生きしたい、健康で長生きしたいというのは 人の常であります。ただ、それにかかる費用は有限ですから、なかなかそこが、これで いいのだということにはどこの国でもいっていないのだと思います。アメリカでもクリ ントン政権のときに、大改革を志しましたが、結局うまくいかなかったわけで、私ども はそのような他の先進国の例も参考にしながら、改革はしていかなければならないと思 っております。改革と言っても、鉄骨の錆びついた所の錆びを落としたり、ペンキを塗 ったりするのは非常に大事なことでありますが、骨格そのものを崩してしまうと、もう 1回立ち上げるのは大変な作業であり、なかなかコンセンサスは得られないことも事実 です。  昭和36年に国民皆保険が導入され、右肩上がりの経済成長の中で発展をしてきたわけ ですが、今後はいままでのような形でなかなかいくとは限らないわけでございます。そ のような意味では、株式会社問題というのは、ある意味で外からの大きな刺激になった のではないかという気がいたします。  今回の報告書、田中座長以下、委員の先生方にまとめていただきましたことを大変感 謝いたしております。中身を拝見しますと、法律改正というものがまず必要はなく、そ の他の省令、政令あるいは通知などで対応できると考えております。早速、このご意見 を参考にし、行政としても次の施策を打っていきたいと思っております。どうもありが とうございました。 ○田中座長  皆様のご協力によりまして、本日最終報告書の取りまとめを行うことができました。1 4回にわたって、それぞれの立場で熱心なご議論をいただいたことに心からお礼申し上げ ます。最終報告書の取扱いについて、事務局より説明をお願いいたします。 ○渡延課長  本日、取りまとめていただいた最終報告書については、本日付けで対外的に公表とな ります。委員の皆様方には、後ほど製本したものを改めて送らせていただきたいと考え ております。 ○田中座長  本日は以上で閉会いたします。どうもありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 橋本 昌男(内線2560) 医療法人係長  手島 一嘉(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194