03/03/18 第17回労働政策審議会雇用均等分科会議事録            第17回労働政策審議会雇用均等分科会 1 日時:平成15年3月18日(火)15:00〜 2 場所:経済産業省別館第825会議室 3 出席者   労側委員:岡本委員、秋元委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員   使側委員:前田委員、吉川委員、遠藤委員、山崎委員   公益委員:若菜分科会長、奥山委員、今田委員、佐藤(博)委員 ○分科会長  ただいまから、第17回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日はご多 忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。本日の出欠ですが、 渥美委員、樋口委員、志村委員がご欠席です。議事に入ります。この分科会では、前回 まで今後のパートタイム労働対策についてご審議をいただいてきましたが、今日はその ほかに、平成15年度予算案の中に盛り込まれた、制度創設に係る案件が議題として取り 上げられています。これは予算が成立すると来年度当初からの施行が予定されるという ことですので、まずこの議題から始めます。  それは議題1のとおりで、「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱につ いて(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規 則関係)」で、これについては、本日厚生労働大臣より労働政策審議会会長宛てに諮問 がありました。これを受けて、当分科会で審議を行うことにいたします。まず議題1に ついて事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局  議題1についてご説明いたします。本日諮問させていただく雇用保険法施行規則等の 一部を改正する省令案ですが、これは育児・介護休業制度等に係る助成金等の事業で、 雇用保険三事業によって実施されている事業の内、現在国会で審議いただいている平成 15年度予算案において制度の見直しを予定しているものです。予算の実施に際して省令 の改正を要するものについて、本日、育児・介護休業法第57条の規定に基づいて、省令 案要綱を本分科会に諮問させていただくものです。  具体的な内容ですが、資料1及び資料2をご覧ください。まず1点目ですが、育児休 業取得促進奨励金、これは新たな奨励金の創設です。これについては資料2でご説明さ せていただきます。この育児休業取得促進奨励金については、当分科会においても「少 子化対策プラスワン」のご説明をいたしましたときにも、内容についてご説明させてい ただいているものです。  資料2に基づいて再度ご説明させていただきます。本奨励金については資料2にある とおり、育児休業の取得促進のための環境整備を目的として新たに創設をしたいという 奨励金です。具体的な要件がこの省令案要綱のほうに書いてあります。要件としては、 (1)として、職業家庭両立推進者を選任していること。これはご案内のとおり育児・介 護休業法において、選任が努力義務になっていますが、こうした取組みを進めるに当た っては、これを選任していただくことを要件にするものです。  (2)として、こうした取組みを行うという旨を、この奨励金の支給を担当する21世紀 職業財団に対して申し出ていただきます。手を挙げていただいて、取り組んでいただく という形です。  (3)として、具体的にどのような取組みをしていただくかが、イロハニにあります。 まずイにあるとおり、育児休業取得促進についての基本的な方針を作っていただきま す。ロとして、従業員の方のニーズ調査等をしていただきます。これは取組みの実際の 対策を立てるに当たっての参考にするためです。ハとして、具体的な取得促進の取組み を効果的に実施することを目的として、労使の代表者を構成員とする委員会を設けてい ただきます。そして、ニにあるような内容を含んだ計画を作って、実施していただきま す。  具体的には(イ)(ロ)(ハ)にあるとおり、現状ではまだ育児休業制度について は、企業において、この育児休業の規定がどういった形で規定されているのか、あるい は自分がそもそも取れるのかどうか、さらにはどのくらいの期間取れるのか、またその 期間の給付や社会保険料はどうなっているのか等についても、必ずしもまだ従業員の方 は十分に知識を持っていないのが実態だと思います。  そういった部分について、(イ)(ロ)のような形で、従業員の方に情報を提供して いただきます。さらには(ハ)にあるとおり、育児休業の取得については、いちばん大 きな問題として職場の雰囲気で取りづらいというのが挙げられていますが、そういった 状況を踏まえて、管理職に対する育児休業取得促進のための研修を実施していただきま す。  こういったイロハニにあるような取組みをすべて実施していただいて、かつ3年間の 内に男女それぞれ1名以上について、実際上、育児休業を取得された方が出たという ケースについて、この奨励金を支給するというものです。支給額については、(2)に あるように、1事業主当たり70万円ということです。これが育児休業取得促進奨励金の 内容です。  続いて、2番目、3番目の改正点です。これについては資料1の2頁をご覧くださ い。まず「育児・介護休業者職場復帰プログラム実施奨励金制度の改正」です。この育 児・介護休業者職場復帰プログラム奨励金ですが、これは育児休業中の方、あるいは介 護休業中の方について、その休業中において在宅講習をしたり、あるいは職場復帰をす る前後に講習をしていただくといった形で、育児休業、介護休業から円滑に職場復帰を していただくための奨励金として、これまでも実施をしてきております。  今般この奨励金の支給対象の内、この資料にあるような情報及び資料の継続的な提供 ということで、具体的には郵送で資料を送るというものですが、それについて助成の対 象から除外するという内容です。  ご案内のとおり、すでに企業の規模を問わず、現状においてはこういった資料の提供 等にはかなりの部分がインターネット等によって行われているという状況を踏まえて、 この部分については助成金の対象からは除外するという内容です。  3点目が、「勤労者家庭支援施設の設置に要する経費の一部補助事業の廃止」です。 この勤労者家庭支援施設ですが、これは従前は「働く婦人の家」と言っていたものです が、平成7年の均等法の改正によって、「働く婦人の家」から「勤労者家庭支援施設」 と名称が変わっています。具体的には、仕事と家庭の両立のために、労働者の方に相 談、指導、講習等を行うという施設です。  「働く婦人の家」と「勤労者家庭支援施設」を合わせると220程度あります。これは 市町村が設置をして、その設置について国が助成をしたというものですが、現状既存の 施設については、それぞれ活発に活動をしていますが、新たな設置については平成10年 度以降は市町村からも手が挙がっていないという状況です。また、こういった公的な施 設を新たに設置をすることについては昨今は非常に厳しい状況です。そういった状況を 踏まえて、平成14年度までは予算の枠としては計上していましたが、平成15年度予算に おいては、この予算の枠自体の計上をとりやめて、併せてこの根拠となる省令からも、 この項目については削除するということです。以上、3点が内容です。  第二にあるように、施行期日については本年4月1日から施行したいと考えていま す。ただし、二にあった育児・介護休業者職場復帰プログラム実施奨励金の施行です が、これについてはいままで補助対象にしていたものを除外するという形ですので、そ の周知期間を踏まえて、7月1日から施行するという内容になっています。その他、新 規の助成金を作りますから、それにかかわる併給調整等の規定の整備を行うこととして います。諮問の内容は以上です。 ○分科会長  ただいまご説明のあった諮問案件について、ご意見、ご質問があればお願いいたしま す。 ○労側委員  まず最初に、育児休業取得促進奨励金の新設についてですが、これは育児休業の取得 を促進しようということで趣旨については、これが実効が上がるようなものになってい くことが望まれて賛成ですが、中身についてお聞きします。  (1)の(3)で、「育児休業の制度を実施したこと」という記載の部分がありますが、 この「育児休業の制度を実施」というのを、例えば何日以上取得したことに対して助成 金を奨励するのかということについて、どうお考えなのでしょうか。1つは、あまり ハードルが高すぎても、この取得を促進することにはならないと思うので、有効にこの 奨励金を活用していくために、制度利用が広まり、なおかつ、このことが有効に活用さ れていくためにという観点が必要だと思うので、お考えをお聞きしたいというのが1点 です。  それから、70万円というのがどういうことで出てきたのかをお聞かせいただきたいと 思います。  それから、いままで取得している事業所があるわけなのですが、すでに取得した人が いる事業所に対して、新たに申請することについて、そのことが対象となるのかどうか をお聞きしたいと思います。  それから、育児・介護休業者職場復帰プログラム実施奨励金制度の改正について、情 報提供の廃止というのがありますが、現状について教えていただきたいのですが、現在 は5つのメニューの中からどれか1つを利用したものに対して、奨励金が払われている と思うのですが、それぞれ5つについての現在の利用状況と、中小企業と大企業の利用 状況についてお聞かせいただきたいと思います。  と言うのは、私の実感では、情報等の提供というのは育児休業をしている人たちに、 非常に有効に活用されていて、休んでいる人は会社の情報があることをとても安心して その間を休めるということで、喜ばれている制度と思っています。それで、この5つの メニューの中でもいちばん多い活用のメニューだと思っているのですが、そのことを外 すということが若干理解できない部分があります。  それと、先ほどインターネットで行われているという話がありましたが、これはどち らかと言うと、大企業というより中小企業の人たちも含めてみんなが活用できるという ことを考えると、インターネットで行われているということを、中小も含めてどのよう にお考えになっているのかを教えていただけたらと思います。以上です。 ○事務局  いま主として4点ありましたが、まず育児休業取得促進奨励金についての「育児休業 を実施したこと」ということについて、これは何日以上なのかということですが、その 辺りの具体的な要件については実施要領で定めることになりますが、ご指摘のとおりあ まり高いハードル、特にこれは男女それぞれの取得を要件にしているので、女性の場合 はともかく、男性については現状を考えると、6カ月以上という形でハードルを高くす るとなかなか厳しいのだろうと思います。そういった実態を踏まえて、実施要領上、要 件を設定したいと思っています。  それから、70万円の根拠ですが、これは先ほど説明をし忘れました。9月頃に少子化 対策プラスワンのご説明をしたときには、要求としては100万円ということでご説明を したかと思います。それが財務省の査定で70万円となったわけです。根拠としては、こ れは100万円のときに申し上げたかもしれませんが、ここでいろいろと取組みをお願い しているような一定の費用について、実際上それぞれニーズ調査をしたり、委員会をつ くったり、講習をしたりということで一定の費用がかかります。こちらでそういった費 用の積算をして、その2分の1見当ということで、100万円を要求したわけですが、そ れが査定で3分の1見当になっているということです。  3点目については、こういった取組みをして、その結果として取得者が生じるという のを要件にしているので、例えば女性の場合には、いままでも取得していたような方は たくさんいると思うので、そういった場合でも対象になるということです。  4点目は、職場復帰プログラム実施奨励金についてですが、いま労側委員からお話が あったとおり、この奨励金については5つの項目を支給対象としています。情報の提 供、在宅講習、職場環境適応講習、職場復帰直前講習、職場復帰直後の講習です。  このそれぞれの内訳ですが、現状としてはいまご指摘のあったとおり、情報等の提供 が件数としてはいちばん多くなっています。ちなみに平成13年度の実績ですと、金額 ベースで、実績支給額3億5,800万円で、情報等の提供についてが1億2,700万円で、約 3分の1となっています。中小企業と大企業についてですが、プログラム奨励金につい ては、支給実績自体は大企業が8割です。  3点目のインターネット等による通信網を構築している企業ですが、総務省の調査に よると、中小企業を含めて約85%の企業がこういった通信網を構築しています。300人 未満の中小企業でも、4割近くの企業がこういったネットワークを構築しているという データが出ています。以上です。 ○分科会長  他にありますか。 ○使側委員  育児休業取得促進奨励金制度の創設なのですが、これが創設された場合に数量的に、 どのような効果が得られると予測されているのか、その辺のご説明をお願いいたしま す。 ○事務局  まずこの奨励金については、少子化プラスワンのご説明のときにも申し上げたとお り、少子化プラスワンで、男性及び女性それぞれの育児休業の取得目標を掲げています が、男性10%、女性80%という目標です。その際に現状についてもご説明いたしました が、現状は男性0.55%、女性は約57%という数字です。これは平成11年度の女性雇用管 理基本調査の数字です。したがって現状で言うと、例えば女性の育児休業の取得率につ いては、さらにそれよりも数字としては高くなってきていると想定されるところです。 したがって、正直なところ、今回のこの奨励金の要件については、女性というよりも男 性が育児休業を取得するかどうかというところがいちばん大きなポイントになるのだろ うと思っております。  その際にもご説明いたしましたとおり、男性の育児休業の取得率はいま申し上げたよ うな数字です。したがって、まだ男性が育児休業を取得すると世の中でニュースになる ような。これは別途私どもがファミリーフレンドリー企業ということで、こういう取組 みについて熱心に行っている企業の表彰等も行っていますが、こういったファミリーフ レンドリー表彰を行ったような企業についても、未だ男性の育児休業ということになる と実績がない、あるいは非常に少ないというのが実態だと思います。  そういう状況ですので、少しなりともこういった男性の育児休業を、0.何パーセント という、これがニュースになるような状況から、少しずつでも珍しくはないのだという 状況に変えていかなければならないと思っています。  これも少子化プラスワンの説明のときにお話をしたと思いますが、一方で10%という 目標を設定したのは、潜在的には、男性でも育児休業を取得したいという方が、少なく ともそのくらいの層はいらっしゃると思っています。そういった状況を踏まえて、一歩 でもそういったものに近づくという雰囲気づくり、環境づくりということで、この奨励 金も、それ以外にも私どもとしていろいろな周知、広報は行っておりますが、その1つ の手段として考えているというものです。 ○分科会長  他にありますか。 ○労側委員  先ほどお答えいただいたことに対してなのですが、インターネットの普及率は企業内 でのことをおっしゃっていると思うのですが、ここで言うのは、休んでいる個人と企業 が連携を取るための情報提供であるはずと私は理解しているのです。個人と企業とが連 携を取るのも、インターネットの普及でもう十分だとご理解されての提案なのでしょう か。 ○事務局  説明不足でしたが、社外からの企業内通信網への接続状況の規模別の数字として、 300人未満の企業でも4割近くが接続可という状況です。 ○使側委員  先ほどの説明ですと「少しなりとも」というご表現で、数量的な回答とは受け取めら れないと考えます。  それから、雇用保険制度については、ご存じのとおり本体事業についても、三事業に ついても、かなり大幅な赤字の状況だと認識しています。したがって、奨励金、助成金 についても、徹底的な合理化等が必要な状況であると思われますが、今回これを新設さ れるに伴って若干見直しをされることはあるようですが、もう少し抜本的に育児・介護 部分についても、スクラップアンドビルドをするというお考えがあったのかどうかを教 えていただきたいと思います。  それから、仮にこうした育児休業取得奨励金を創設するに当たって、国策として実施 するのであれば、雇用保険の三事業ではなくて一般会計等で負担をするという考え方も あろうかと思うのですが、その辺についてどのようにお考えなのかご説明をお願いしま す。 ○事務局  ただいまの使側委員のご意見ですが、三事業の収支状況については大変厳しい状況に あることについては、私どもとしても十分に認識しています。そういった観点で、今回 の新たな奨励金の新設に合わせて、今回お諮りしているような形で、省令上も現行の事 業の見直しも行っています。  さらにそれに加えて、基本的にはこの育児・介護休業法に基づく助成金を含めた諸事 業については、育児・介護休業法の指定法人の21世紀職業財団に対する交付金という形 で予算を行われている部分が大層を占めているわけです。その予算全体についても十分 精査をして、こういった新しい奨励金については新設をしていますが、平成15年度の指 定法人に対する交付金全体としては、既存の事業を見直す形で前年度マイナスにしてい ます。また、こういった奨励金、助成金の見直しについては、今後も引き続き検討をし ていきたいと思っています。  それから、こういった部分について国策としてであるならば一般会計ということも考 えられるのかということですが、これは事業主に対する奨励金です。こういった奨励金 については、雇用保険三事業という形で、事業主のみから徴収する保険料によって、助 成金という形で事業主に還元する形でこういった措置が、この育児休業関係以外も含め て行われております。この奨励金についてもそういった考え方で、育児休業法に基づ く、かつ雇用保険三事業に基づく奨励金として、雇用保険三事業により措置をしたいと 考えているものです。 ○労側委員  育児休業を取った方で復帰できなかった労働者の数というのはどんな傾向にあって、 その場合の復帰ができない主たる要因はどう考えられているのでしょうか。つまり、先 ほどの情報提供、休んでいる間の会社の動きなどが非常に大きなウエイトを占めるとい うこともあって、そのことがこういう制度になったと思うのですが、その辺を教えてく ださい。 ○事務局  いまの労側委員のご質問ですが、育児休業を取得した方で復帰した方、あるいは退職 した方の統計については、先ほども言及した女性雇用管理基本調査で調査がされていま す。それによると、平成11年の調査ですが、育児休業を取得した方の内、復帰した方が 82.4%、退職した方が17.6%です。  ただ、この調査ではどういう理由で育児休業から復帰せずに退職されたのかというと ころまでは調べていませんので、その辺りについては、今後そういった原因も我々とし ては十分認識をしながら、対策を考えていく必要があると考えています。 ○分科会長  他にありますか。 ○労側委員  復帰プログラムについてもう一度確認したいのですが、先ほど、社外から接続できる という話が85%だということでした。ホームページを作っている所は非常に多いと思い ますので、そういう意味ではこれだけの数字になっていることはわかるのですが、ホー ムページ以外の会社独自の情報というものに入っていくことは、セキュリティーの問題 もあって、もう少し難しい問題だと思うのです。  例えば私どもの所は非常にITも進んでいると思いますが、ごく最近になってやっと パスワードを取得して、ダイヤルアップで自宅から接続することがやっと認められたの です。そのような状況を考えますと、インターネットで情報提供を実際に行っていると いう数字を伺いたいのです。それが85%ということではないと思うのです。 ○事務局  いま申し上げているのは、社外から企業内通信網への接続状況として、「接続ができ る」という所が300人未満でも約4割という数字であるということです。情報提供して いる云々というところまでは私どもの所に数字がございません。 ○労側委員  数字がないと言いながら、インターネットでもできていくでしょうということなので すか。 ○公益委員  いまの話と関連して、中小企業20社ぐらいを回って、育児休業の取得者にどういう情 報提供をしているかについて2年ぐらい前に調べたことがあるのですが、社内報等を送 るというのが結構多く、ほとんどの所がやっています。そういう意味で、この助成金の 対象の5つのうち1つを外すというのは、ここは助成金を出して進める必要がない。企 業は自主的にすでにやれているということで、普及が進んでない、そういう大事なもの に重点的に助成金を配分する、そういう趣旨だと私は思います。  もちろんインターネットというのも1つですが、別にインターネットでやらなくても いいのです。多くは会社の社内報等を送っており、助成金がなくてもそれをやっている 所はたくさんあるのです。これはかなり進んでいますので、そこに助成金を付けるより も、大事なものであまり進んでないものを促進するためにお金を回そうという趣旨なの ではないかと私は理解しているのです。 ○分科会長  ほかに別段なければ、当分科会としましては諮問のありました「雇用保険法施行規則 等の一部を改正する省令案要綱」につきまして、おおむね妥当と認めることにして、そ の旨私から労働政策審議会会長宛てに報告することにしたいと思います。これにつきま して事務局のほうで案文を作っていただいておりますので配布してください。                  (案文配布) ○分科会長  いまお手元に配布していただきましたが、「記」以下にあるように「厚生労働省はお おむね妥当と認める」、こういう報告案文のとおりでよろしいでしょうか。ご承認いた だいたものとして、このとおり報告することにいたします。ありがとうございました。  次の議題に移ります。議題2は「今後のパートタイム労働対策の方向について」で す。これについては前回3月13日の均等分科会で、報告の取りまとめに向けて1月31日 及び2月27日とご議論いただいた中で、公益委員において調整を重ねた案文を示してご 議論をいただいたわけです。本日の分科会では、3月13日に出された意見を踏まえてさ らに調整し、また労使からの意見を付け加えたものを示しております。事務局のほうか ら、3月13日に提出した報告(案)からの修正箇所、それから労使の意見が付け加えら れた箇所についてまず説明していただき、その後で報告(案)についてのご意見をいた だきます。 ○事務局  資料番号3です。3月13日の分科会の議論を踏まえて、報告(案)を修正した箇所 と、労使から意見の付いた箇所について説明いたします。資料番号3の4頁、1(4) 「職務が通常の労働者と同じパートタイム労働者の取扱い」のイで、「人材活用の仕組 みや運用等」の説明について、育成のあり方というのを加えております。そこで「異動 の幅、頻度、役割の変化の度合等」と3月13日の報告(案)ではなっておりましたが、 そこを「役割の変化や育成のあり方その他の‥‥」という形に修正されております。  同じくイの所で、前回では「合わせることにして均衡を確保」となっておりました が、「合わせる等をした上で意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、 均衡を確保」と修正しております。  イ、ロの説明の後になお書きがありますが、なお書きの前に「職務が同じかどうか、 労働者の人材活用の仕組みや運用等が同じかどうか等については、職場の実態も考慮し て判断するものであり、その際に混乱をもたらさないよう十分な配慮が必要である」が 追加されております。以上が報告(案)の修正箇所です。  労使の意見が付けられた箇所について説明いたします。まず労働側の意見についてで すが、これはお手元の報告(案)の7〜8頁に添付してあります。それから使用者側の 意見は2箇所に付いております。6頁の中ほど、4「パートタイム労働の就業に影響を 及ぼしている税、社会保険制度」に関連して、年金保険と医療保険の見直し等の関係の 所に、一部の使用者側委員からということで4行意見が入っております。  それから、5「その他」の末尾に「なお‥‥」という形で使用者側委員からの意見が 付いております。 ○分科会長  いま労使からのご意見の記載については一応の説明がございましたが、労側委員と使 側委員からさらに説明をお願いしたいと思います。 ○労側委員  労働側は、5人の委員でこの報告に反対する意見ということで添付いたしました。報 告に反対するという意味合いを、説明に前書き的に書いてあります。  9月以降11回にわたる当分科会に課せられた課題ということで、私どもとしてはそん なにしょっちゅう見直しのチャンスはありません。93年の法制定以降いろいろ行政施策 で行われてきたことがありますが、フルタイム労働者とパートタイム労働者との賃金や 労働条件などの処遇格差が拡大しているという現実を見たときに、どこに原因があるか と考えますと、法律のあり方そのものに問題があるという認識ですから、これにどのよ うにして当分科会が対応するかということであったはずです。  今後の見通しも含めて、私どもとしては、企業の人件費削減圧力というものがある。 いろいろなデータを見ても、パートタイム労働者を採用する理由の中に「人件費削減」 がトップです。パートタイム労働者とフルタイム労働者と処遇格差をそのままにした場 合に、ますますそういう傾向になっていって、いわばパートタイム労働者の置き替えと いうものが、安上がり、かつ雇用不安定な労働者がどんどん増えていくということがさ らに強まるだろうと思われます。  加えて、今国会にかけられようとしている労働基準法や労働者派遣法に私どもも反対 してきたのですが、それを押し切ってまでやってきた規制緩和の問題。均等待遇原則と いうものがない中で実際にそれが強行されますと、一層労働市場の著しい不均衡や処遇 労働条件の低下をもたらすことになりかねない、そんな見通しも見てございます。  最も重大な課題とされた有期雇用契約の問題についても、実態としては反復更新を繰 り返して、その度に雇用不安になっているパートタイム労働者の雇用安定をどう図る か。  私どもを含めて、いろいろな所での労働相談等を考えますと、個人紛争の問題も非常 に多くなっています。有期雇用問題について、パートタイム労働者の立場から検討して ほしいということで、私どもは何度も、何度も求めましたが、これは労働条件分科会の 問題であるということで議論にならず、極めて残念です。  いま政府に求めているのは、175号のパート条約、我が国が批准している100号の同一 価値労働・同一報酬条約、156号の家族的責任条約も踏まえて早期に均等待遇原則の法 制化を図らないと駄目ではないかという認識です。労働者がライフスタイルの中でパー トタイム労働を安心して選択できる、そういう我が国の経済社会をつくることも大事で すし、それが経済社会の発展に貢献する、そういう問題であろうかと思います。そうい う観点から見ますと、今なされようとしている報告(案)は全くこたえ切れてないとい うことで、私どもとしては反対せざるを得ないという意見です。  その理由ですが、1つは均等待遇原則の法制化を明記してないということです。現行 の法律に問題があるということからしますと、私どもとしては、均等待遇の原則の法制 化を明らかにすることが大事であり、多くのパートタイム労働者がそのことについて期 待していたと思いますが、それにこたえていない。見限っているということです。  直ちに現行パート法の法改正を行って、少なくともその旗を掲げながら、賃金等に関 わる問題については、5年ぐらいの経過措置を講じて、労使がそれに向けて頑張ってい くということがあっていいのではないか、私どもとしてはそういうことを求めてきまし たが、受け入れられませんでした。私どもとしてはどういうふうにそれを考えているか ということで、報告をまとめる段階の前に、私どもの考え方を資料として提供いたしま した。その内容はここに紹介しているとおりで、短時間労働等を理由にして通常労働者 との差別的な取扱いを禁止するという法律の枠組みを作った上で、法律に書いてある事 項は(1)〜(4)までのことを定め、加えてその差別的扱いなどの条項については指針で労 働大臣が定めるということで考えたらどうかと求めてきました。  指針改正が今回の大きな目玉ですが、現行パート法第3条をそのままにした指針改正 は容認できないということです。なぜかということは再三再四申し上げてきましたが、 現行のパート法というのは、事業主に雇用管理の改善を促す行政指導の根拠法にすぎな い。第3条が、「均衡考慮に努める」という努力義務規定であることは、処遇改善の実 効が上がってこなかった要因です。この状況で多くの、労側委員以外の公益委員の方た ちが、いまの指針に問題があるから、いい指針を作るのだからと一生懸命に力説されて も、そのことがどのぐらい効果を及ぼすかが私どもにとっては全く期待できないので す。そういう2点の観点でこの報告(案)に反対します。  報告で言っていることは指針の改正だけではないとおっしゃいますが、指針以外の項 目を見ても、現状、厚生労働省の各局が行っている行政内容の引き続きの事業です。 税、社会保険についても、いま他の所で検討していることについて期待を表明するもの であり、さらには、「その他」の事項にあるような今後の見通しにしても、通常の行政 事務手続を書いているということですので、まさに今回の報告の中心は「指針の改正」 ということですので、これについて私どもは容認できませんので、報告に反対するとい うことで対応させていただきました。 ○分科会長  使用者側委員のご意見をお願いいたします。 ○使側委員  使用者側の意見は6頁に2点書かせていただきました。1点目がパートタイム労働者 に対する社会保険の適用拡大の問題です。我々使用者側委員の一部から、パートタイム 労働者への適用拡大に伴い付随する大きな検討課題がある。その点も含めて幅広く検討 すべきである。それから、拡大に伴って、煩雑な企業の事務手続も含めて、雇用コスト の増大などが懸念される。審議会の報告として、こうしたことを是非盛り込んでいただ きたいということでここに書かせていただいたところです。  同じ頁のいちばん下、5「その他」、今後の進め方の問題についてですが、使用者側 委員としては、基本的には企業における雇用管理のあり方については、労使が自主的に 取り組むべきであると考えております。企業活動に対する諸規制の過度な強化にならな いようにすることが今後とも重要であり、この辺は一致した意見ということで付けさせ ていただきたいと思います。以上が使用者側として盛り込んでもらった意見です。  なお、1(4)「職務が通常の労働者と同じパートタイム労働者の取扱い」の部分に ついては、コスト面や企業実務面、その他さまざまな問題点や懸念点について、まだな お多くの問題点が残っていると思っており、全面的に賛成するわけではないのですが、 当面については、これ以上意見等を付け加えることなく、ここで矛を収めさせていただ くというふうに考えているところです。  イ、ロの中に例えば「育成のあり方」といった文言等が入ったことにより、企業側が 従業員に対して抱いている期待がこの辺に含まれていると解釈させていただきたいと思 います。 ○労側委員  先ほど事務局から説明していただいた訂正箇所について質問させていただきたいので す。私どもは、法改正が伴わない指針の改正は容認できないということを申し上げてき ました。実効性が認められないということが大きな要素ですけれども、この変更を単純 に読みますと、ますますその思いを強くいたしました。均衡処遇をしていくための指針 と言いながら、非常にハードルを高くし、また何本もハードルを設置していると思わざ るを得ないのです。誤解がないように、その上でいくつか質問させていただきます。  まずイで「育成のあり方その他の」が変わったわけですが「その他の」がどこに掛か る文言なのかが私には読み取れませんで、日本語として理解できないというのが第1点 です。「その他の」というのは一体どういう意味を持つのかということです。  同じイの4行目の「決定方式を合わせる等をした上で」、これがハードルを高くした と感じるわけですが、その「等」というのは具体的にどういったことを想定されている のかを伺いたいのです。  先ほど使側委員が説明された、使用者側としては矛を収めることによって意見を付け ていないということなのだと思いますが、「混乱をもたらさないように十分な配慮が必 要である」というのは具体的にどういうことを意味しているのか。どういうことを書き 込もうとするのかを、もしこの時点であれば教えていただきたいのです。これは留意事 項だと思いますが、これが今回の指針に対してどういった影響を置くのかが、この部分 が入ることによって非常に心配しております。そういった点について、これをまとめた 公益委員の皆様にお答えいただければと思います。 ○公益委員  イ、ロについて、前回から付け加えられていますが、私の理解としては、内容につい ては変更はない。例えば「同一処遇の決定方式に合わせる」。これは先回だけでなく、 前々からいろいろな方から、特に使用者側の方からご意見があって、同じ賃金水準にす るのではないかと。しかし、元々そういう趣旨ではなかったのです。ですので、正確な 理解をしてもらえるように書き加えたものです。  「その他」についても、育成のあり方その他人材活用の仕組みや運用として、ほかの ものがあればということです。人材活用の仕組みや運用についてここに挙げたもので、 私は十分尽きていると思うのですが、もしあるとすればということで入っていると理解 していただければと思います。  「等」についても、現状「等」についてほかにあるかと言われれば、当面は思い付か ない。ですから、これが主たるものです。ただ、ほかにあるかもしれないというご意見 もあったので、もしほかに均衡の考え方として労使に受け入れられるものが出てくれ ば、順次そういうものも考えていく。当面は「同一の処遇決定方式」だけだと私は理解 しています。  「混乱をもたらさないように‥‥」の所ですが、フルタイマーなりパートタイマーな り、人材活用の仕組みというものは職場ごとに違いますので、十分その実態に即して、 配慮した上で取り組んでほしいという趣旨です。当初からそういうことを考えて作られ ているわけです。実態が違うということを十分考慮してやってもらえるようなものなの かということが議論されていましたので、それを付け加えたという趣旨です。基本的に はみんな元々入っていたもので、それを分かりやすく説明したと私は理解しておりま す。 ○労側委員  いまの質問に関連しますが、そうしますと前回3月13日の議論は相当使用者側から反 対意見が出されていました。そういう使用者側の意見が公益側の説明によって理解され た、そういう認識でいいのかどうか、その辺を伺います。 ○使側委員  先ほど私がお話申し上げたように、コスト上の問題点や企業実務上の問題点などがま だ完全に理解されているとは必ずしも言えないということで、全面的に賛成しているわ けではないと申し上げました。その点につきましては、なお今後ともこの審議会で議論 があると思いますので、そこにつきましてはその場で議論したいと思っています。そう いう状況だということで理解しております。 ○労側委員  ここに書かれていることを理解するということで質問させていただきます。いま議論 している所と同じ所なのですが、4頁のイ、ロの後の3行について、何を意味するのか わかりにくいので質問させていただきます。  この報告書の前段階にも書いてありますが、平成12年からの「ものさし研」で、不十 分であるということをたたき台にしてその後の研究会報告がされ、社会的ルールが必要 ということで、何かしなければいけない。この審議会もそういうことで始まったと理解 しています。公益委員の皆さんからは前回も、指針のここの部分があることによって均 衡の中身を明確にし、これを進める上での責任のある施策だというふうな発言があった と理解しているのです。この追加された3行というのは、今まで言ったことだというふ うに公益委員から返事がありましたが、混乱を起こさないためにイとロのことを付け加 えようと、その部分はそういうふうに理解していたのですが、「その際に混乱をもたら さないよう十分な配慮が必要である」というのは、混乱をさせないためにイ、ロの指針 を作るということでここに提起されていながら、その際に起こる混乱とはどんな混乱な のか、十分な配慮というのは誰がどのように何をするのか理解できないのです。追加さ れた3行のこととイ、ロのことがどう関わっているのかについて教えていただけたらと 思いますのでお願いします。 ○公益委員  誰と比較するのかということでは、同じ職務に就いている方です。人材活用の仕組み や運用が同じかどうかというのは、判断した上で同じであればイを適用するということ です。また、仕事が同じでも、人材活用の仕組みが違えばロを適用するということで す。これが議論の出発点なのです。  そのときに、名前が同じであればすぐ比較すればいいかというと、実態を見て比較し なければいけないでしょう。人材活用の仕組みも、複数事業所か単独事業所か、中での 事業所の異動があるか、そういうことを見ていかなければいけないと思いますので、そ ういうことを見た上でイとロを適用してくださいということです。ですから、そこにつ いて同じ仕事か、人材活用がどうかということをまずよく議論するということです。そ れをしないでイとロをやると混乱が起きる。ですから実態に即して、職務が同じかどう か、人材活用の仕組みや運用について、職場の実態に即して企業が判断するなら議論し てください。組合がある所は組合と話し合ってくださいということなのです。 ○労側委員  そこの部分は理解しています。その後の「混乱をもたらさないような十分な配慮が必 要」というのは、誰がどのように何を配慮するのか、そこの部分がわからないのです が。 ○公益委員  それはそこに関わる人たちみんなということです。十分に実態に即したような形でや れないと、イとロについての適用はうまくいかないでしょう、という趣旨です。 ○労側委員  そのことはずっと私は理解していたつもりなのですが、そのことをあえてここに書か なければいけない、付いた理由というのがわからないのですが。 ○公益委員  もともとこういうことを含め、実態に即して運用していくということですから、当 然、「労使で話し合って」と1にありますので、1と2のところに当然含まれるわけで す。このほうが理解されやすいということであれば、ここでも触れておこうという趣旨 です。 ○労側委員  同じ所で、意見になりますが、基本的に労働側委員としては法整備ということを前提 で臨んできましたので、この指針の改正にかかる部分について踏み込んだ議論に入って いません。いませんが、いまご説明があったように、使側委員から「なお問題は残る」 とされながらも、意見としては付けなかったというご説明があったことも含めますと、 私の印象ですが、既に日本経団連は見解を表明された中で、行政指導を強化しようとい う姿勢には反対という主張されていることを、これはそのまま受け入れているものでは ないかという印象を持ちます。  事務局や公益委員の皆さんは、この指針を改正することによって、行政指導によって 実を上げるというふうに何度も説明をされましたが、私はここに付いた文言、内容から 読み取るものは、いま申し上げたような使用者側の反対を、ある程度、単に受け入れる という、そういう文言を表わしているものというふうに読み取れます。公益委員の皆さ んは、どう思われますか。先ほど委員は、内容には変更がないというふうにおっしゃい ましたが、私のこういう意見に対しては、どう思われますか。ご意見をお聞かせくださ い。 ○公益委員  では私のほうから、これは公益委員の1人としての意見ということですので、必ずし も公益委員統一の意見ではないことを、予めお話しておきます。労側委員のおっしゃる ことは気持の上では十分理解をし、認識をしているところであります。  ただ、いままでの経緯を見ますと、もちろん指針の改正という形のところについて是 か否かの議論はありますが、少なくとも公益の1人としては、いままでの指針の中身自 身が行政指導をしていこうにも、例えば問題があるような事例について行政指導をして いこうにも、そのための処遇の同一性とか、それを判断する基準自身が、必ずしもそう いう指針の中に明確にされていなかった。したがって行政側としても、立ち入ろうとし てもなかなか難しい部分が現実的にはあったということです。  今回、少しその基準を明らかにすることによって、そういう問題についてもトラブル が起きる可能性があり、また現に起こっているような場合については、以前よりもより 強い、いわゆる権限と立場から、そういう行政指導、助言、勧告等を行使して、適切な 解決を図り得る手立てというものが、これによって一歩前進という形で出てこれるので はないかと考えています。  経団連自身がそういう声明をお出しになったことは、もちろんそれはそれとして一方 であるかもしれませんが、だからといって私どもがそれに直ちに関与して、言ってみれ ばそのような要請をここに取り入れたということでは決してありませんし、むしろそう いうことがあろうとなかろうと、こういう指針を一歩でも進めることによって、行政が そういう問題に対して、さらに前進的に関与していける、1つの根拠を作っていければ というようなことで考えているということが、私、公益委員の1人としては言いたいと ころです。 ○公益委員  行政指導を拒否している使用者側に与した結果というふうにおっしゃるわけですが、 そういう理解は、いまお聞きしている限りで私にはよくわからないということです。つ まり、これはこういう形で、均等についての基準というものが明確に指針の中に設定さ れるということで、明らかに以前とは違った形で、均等についての行政指導が明確に行 われる根拠ができるということになるわけです。この報告書の考え方が、経団連が目指 している行政指導排除を体現しているという、そういう性格づけ、位置づけというの は、やはり誤解である、と私は明確に申し上げたいと思います。 ○分科会長  それでは、これまでの議論もいろいろお出しいただいて尽きたと思いますので、この 辺で当分科会として「今後のパートタイム労働政策の方向について」の報告というもの を、私のほうから労働政策審議会会長宛てに行うことにしたいと存じます。これにつき ましては事務局のほうから案文が用意されていますので、まず配布をお願いします。                  (案文配布) ○分科会長  報告の内容ですが、いま、お手元にお配りしたとおりでございます。短いものですの でご覧いただければわかると思いますが、このような案文どおりでよろしいでしょう か。 ○労側委員  「なお」以降の「労働側委員から意見書が」というくだりですが、「今後のパートタ イム労働対策の方向について(報告)」に反対する意見書という書きぶりをお願いした いと思いますが、いかがでしょうか。 ○分科会長  意見書はいただいておりますので、その表題の点については、いま労側委員がおっ しゃった意味はわかりますが、これは他の分科会の場合でも同じなのですが、労働政策 審議会への報告にあたりまして意見書が付けられた場合には、特段、意見書の表題をそ のまま持って来るという形ではなく、こういう形で意見書が提出されたからということ で添付して、その意見書の中身自体を、労働政策審議会のほうで十分に考慮していただ くというやり方を取っていますので、それを踏まえて、こういう案文にしたものです。 この点について、ほかの委員の方のご意見も承りたいと思います。 ○公益委員  公益委員のほうから先にお話していいかどうかわかりませんが、私もこういう審議会 に係わってそれほど長くはありませんが、私が係わってきた特に女性局の女性労働部会 で、これは他の審議会などでも形式は、いま分科会長がおっしゃったように同じだと思 います。1つは、こういう分科会で議論された議論の内容とその結論を、どのような形 で上位の審議会に報告していくかということの、1つの形だろうと思います。  そういう形については、分科会の会長がその職責上の責任と権限でもって、いままで の議論の中身というものを考慮され、その中身をこういう形で上に報告されるというこ とだろうと思いますので、そこに「意見書」という以外に「反対のための」と書くの は、どうかなというふうに公益委員の1人としては考えています。お気持は非常によく 理解をしているところです。それから、これは労働側が出された意見書自身も一緒に付 いていくわけですよね。 ○分科会長  それは後ろへ添付したものが、報告書としてなっていきます。 ○公益委員  ですから、ここの場だけで意見書が開示にされて、ほかに報告されないということで あれば、いまおっしゃったような気持は更によく理解できますけども、この報告書に一 緒に意見書が添付されていくわけですので、それでいいのではないかと思います。  それから、もしどうしてもということであれば、いまのご発言を議事録に留めておい ていただく。議事録の中でそういうことを労側としては要求されたということを、きち っと書き留めておけば、私はそのご趣旨は通るのではないかと思いますが、いかがです か。 ○分科会長  いま、公益委員がおっしゃったように、報告書と一体のものとして労働政策審議会会 長宛てに報告されますので、その実質的な中身については同じことでございます。ほか の委員の方、ご意見がございますか。いかがですか。 ○労側委員  特に決まりであるということではない、ということでしょうか。 ○分科会長  別に規則とか、そういう意味での決まりはないと思いますが、大体、こういうことは 慣行によって処理しているのだと思いますので、その取扱いからいうと、いままでにな い形だということは言えると思います。ただ、あえてそうしなければいけないかという と、例えばこれが分離したものですとそういうことはありますが、一体でいきますの で、特に必要はないのではないかという考え方です。 ○労側委員  1つは、わかりやすさということがあります。もう1つは、私も婦少審の女性部会か ら長く参加させていただきましたが、今回、報告するものに労働側委員全員が反対する といったこと自体も初めての経験です。そういうことからも、この報告書に反対すると いうことの思いを込めて、ここにそのタイトルを入れていただきたいというのが、いま 言ったことに対する理由としてあります。 ○分科会長  使用者側の皆さんのご意見は、いかがですか。 ○使側委員  結論から申しますと、このとおりでいいというのが、私の意見です。それは、いま会 長がおっしゃったように、これに一緒に付いていくものですから、その前の文章からき てもそうですが、やはり賛成、反対というものを先にここで出すのでなくて、その後に 付いているものですから、このままでいいと思います。 ○労側委員  労側委員の先ほどの説明にもありましたが、労側委員1人の思いではなくて労働側み んなの思いですので、改めてここで発言だけさせていただきます。わかりやすくという か、いま、前に出さなくてもというご意見がありましたが、前に出すぐらい、そういう ことをわかりやすくしてほしいということで、労側委員からも発言しましたし私たちも そう思っています。あとは最後、こういう結論にならざるを得なかったことがとても残 念です。 ○分科会長  当然のことながら、先ほど公益委員もおっしゃったように、議事録上は残るというこ とですので、この提案した形でご了承いただけますか。では、この案文のとおりという ご意見が多数のようですので、そのようにさせていただきます。パートタイム労働対策 については終了しました。 ○事務局  長い間、ご審議ありがとうございました。 ○分科会長  次の議題にまいります。次は、「次世代育成支援対策推進法案」および「次世代育成 支援に関する当面の取組方針」について、事務局から報告がございますので、ご説明を お願いします。 ○事務局  ご説明いたします。去る3月14日、資料で配布していますように、「次世代育成支援 対策推進法案」と「児童福祉法の一部を改正する法律案」の2つの法案が閣議決定され まして、昨日夕方の国会に提出されています。また同じ3月14日、少子化対策推進関係 閣僚会議におきまして、「次世代育成支援に関する当面の取組方針」というものが決定 されていますので、簡単にご説明させていただきます。説明にあたりましては資料番号 4、資料番号6、資料番号9の資料でご説明します。  まず資料番号4の「次世代育成支援対策推進法案」ですが、これにつきましては急速 に少子化が進んでいるわけですが、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、 育成される環境の整備を図るという観点から、国において指針を作成するとともに、地 方公共団体、さらには事業主において、その行動計画を策定していただくことをポイン トとする法案になっています。  概要ですが、「基本理念」ということで、次世代育成支援対策は、保護者が子育てに ついて第一義的な責任を有するという基本的認識の下に、家庭その他の場において、子 育ての意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びを実感されるように配 慮して行わなければならない、ということを前提にした上で、推進法のほうは行動計画 がポイントですが、その行動計画を策定するにあたりまして、主務大臣、これは厚生労 働大臣ほか6大臣ということになっていますが、基本理念に則った形で地方公共団体、 事業主が行動計画を作成するにあたっての拠るべき指針を策定するということになって います。  地方公共団体の行動計画につきましては、市町村及び都道府県で作成をしていただく ことになっています。中身としては、地域における子育て支援、親子の健康の確保、教 育環境の整備、子育て家庭に適した居住環境の確保、仕事と家庭の両立等となっていま す。これらの項目について目標、あるいはその目標を達成するために講ずべき措置を記 載する行動計画を作成することになっています。  事業主の行動計画については、大きく一般事業主の行動計画と特定事業主の行動計画 に分かれます。一般事業主の行動計画については、従業員の仕事と家庭の両立等に関 し、目標、あるいはその目標達成のために講じる措置の中身を記載していただくことと なっています。この事業主につきましては、301人以上の企業については策定が義務づ けられ、300人以下の事業主については努力義務ということになっています。なお、事 業主からの申請につきまして、いわばマル適マークのような形で、認定する仕組みが設 けられる等の措置が講じられることになっています。  特定事業主の行動計画については、国及び地方公共団体が該当するわけですが、こう した国及び地方公共団体につきましても、目標、目標達成のために講ずるべき措置の中 身の行動計画を策定して、公表をするということになっています。  こうした行動計画を策定するにあたって、支援するための仕組みとして、まず事業主 のものについては事業主の団体、ここでは日本経済団体連合会とか日本商工会議所等、 あるいは中小企業団体の中央会等を考えています。どういう形で指定するかは今後の議 論になるわけですが、そうした事業主の団体を次世代育成支援対策推進センターとして 指定して、事業主の行動計画の策定・実施を支援する仕組みを設けることにしていま す。  また地域におきましては、地方公共団体、事業主、住民、その他の団体、あるいは福 祉とか教育の団体も含めてもよろしいかと思いますが、協議会を作っていただき、地域 におけるそうした次世代育成支援対策の推進に役立てていただくという仕組みになって います。  この法律につきましては、平成17年4月1日から行動計画を動かすということで、そ のための指針の策定につきましては、法律が通りまして6カ月以内で政令で定める日と なっています。それと、こうした施策というのは集中的に実施をしようということで、 10年間の時限立法ということになっています。  資料番号6の児童福祉法につきましては、簡単にご説明します。地域における子育て 支援策を強化しようということで、市町村における子育て支援事業の実施を努力義務と して定めるということと、子育て支援策の中身として保護者からの相談、あるいは情報 提供、助言を行う事業であるということ。あるいは保育所等において児童を一時預かっ て養育する事業と、反対に居宅に出向いて養育を支援する事業というものを類型化し、 地域における子育て支援事業のサービス量の増加につなげていこうということが1つで す。  2点目は、地域社会の中で、そうした公のもの以外にもNPOが集まった子育て支援 のサークルであるとか、あるいは保育所だけでなく幼稚園で預かり保育をしたり、いろ いろな子育て事業がございますので、そういうものを情報収集して利用者に提供しよう という事業を法定化することにしています。  そのほか、現在、待機児童が大都市部を中心にまだございます。例えば100人以上待 機児童がいる市町村が63ぐらいありますが、そうした市町村、あるいはそれを含む都道 府県につきましては、待機児童を解消するための計画を策定していただく中身になって います。この法律につきましても、平成17年4月1日から施行しようということで考え ています。  次に資料番号9です。「次世代育成支援に関する当面の取組方針」ということで、関 係閣僚会議で決定をされています。これは昨年9月20日に厚生労働省として「子育て対 策プラスワン」ということで発表したものを、さらに検討を深めると同時に、関係する 各省庁とも協議をした上で、さらに深めたものでございます。  簡単にご説明させていただくと、1頁目ですが、以前にもご紹介しましたように昨年 1月に、社会保障人口問題研究所が新しい人口推計をしています。そうした作業の中で 従来、少子化の主な原因である晩婚化とか非婚化ということだけでなく、結婚された夫 婦の出生力の低下という状況も出てきているというお話をしました。そうしたことが更 に少子化を加速化させているということで、従来の取組みに加えて、もう1段の対策を 推進しようということです。このために政府として、次世代育成支援に関する当面の取 組方針を策定する。こうした取組方針に従って、政府・地方公共団体・企業等が一体と なって、家庭あるいは地域社会における子育て機能の再生を実現しようというもので す。  この下の絵にある4つの柱につきましては、9月にも説明しましたが、男性を含めた 働き方の見直し、地域における子育て支援、社会保障における次世代支援、子供の社会 性の向上と自立の促進ということで、考え方は変わっていません。  「基本的な施策」ということで3頁にわたって書いています。先ほどご説明した2法 案に基づく行動計画の策定・実施等によりまして、自治体、企業等における取組みを促 進しようということです。  まずは、「すべての働きながら子どもを育てている人のために」ということで、3つ 大きなパーツがあります。「男性を含めた働き方の見直し、多様な働き方の実現」とい うことで、子育て期間における残業時間の縮減とか、子どもが生まれたら父親が5日間 の休暇を取得する。多様就業型ワークシェアリングの普及、パートタイム労働者の均衡 処遇の普及・社会保険の適用拡大等々が挙げられています。  「仕事と子育ての両立の推進」については、先ほども議論になっていますが、社会全 体の目標値を作った上で、取組みを進めようということで、育児休業の取得率、看護休 暇の普及率、勤務時間の短縮等、これらの普及率についてプラスワンで掲げた目標を、 そのとおりこちらでも取り組んでいます。また先ほどの法案の中にも出ていた次世代育 成支援対策推進センターにおける事業主への相談援助であるとか、認定の仕組み、さら には両立指標の活用、あるいは本日お認めいただいた育児休業取得促進奨励金の創設と いうことが掲げられています。  「保育サービス」については、待機児童ゼロ作戦を一層推進するということ。あるい は平成15年度から「特定保育事業」ということで、特定の曜日とか午前・午後と時間を 切った保育事業を始める。あるいは保育ママについて利用しやすいようにしていく。さ らには放課後児童クラブを実施していくといったことを掲げています。  次の頁は「子育てをしているすべての家庭のために」ということで、1の「地域にお ける子育てサービスの充実」、さらにはネットワークづくりを進めようということで、 一時預かりサービスとか「つどいの場」の設置、あるいは先ほども法案でご説明しまし たが、コーディネート事業等を実施します。また全般的な問題として小児医療の話、母 子家庭の話、虐待の話、障害児施策の充実というようなことも掲げています。  2の「家庭教育」については、子育て支援講座であるとか、そうした情報提供を掲げ ています。3は「生活関係の整備」ということで、バリアフリーの議論であるとか、住 宅問題を挙げています。4は「再就職の促進」ということで、出産や育児のために仕事 を離れた方に対する再就職支援を推進という項目を書いています。5は「社会保障にお ける次世代支援」ということで、年金制度が来年改正になります。そういうなかで年金 額計算における育児期間への配慮が検討されることになっています。また6は「教育費 の問題」ということで、奨学金制度の充実ということも検討していくことにしていま す。  「次世代を育む親となるために」という表題の下では、親になるためにということ で、中高生が乳幼児とふれあう機会が少ないという状況にもありますので、そうした機 会の拡大であるとか、お子さんの生きる力の育成とか、あるいは子育てに関する理解を 促進するための活動、さらには若者の安定就労、自立した生活の促進というような視点 も入っています。子どもの健康と安心・安全、さらには不妊治療の問題ということにつ いても取り組むことにしています。  最後の頁ですが「今後の推進方策」ということで、平成15年、16年の2カ年にわたり まして、次世代育成支援対策の「基盤整備期間」と位置づけて、一連の立法措置を講じ ることを考えています。そこで平成15年度につきましては、先ほどご説明した2法案 で、地方公共団体及び企業における10年間の集中的・計画的な取組みを促進するための 推進法案と、児童福祉法の改正案を提出するということ。  さらに2年目にあたる平成16年においては、「児童手当制度の見直し」「育児休業制 度等の見直し」「多様な働き方を実現するための条件整備」等について、幅広く検討を 行った上で、所要の法案を提出するという考えでいます。そして平成17年度から市町 村、都道府県、事業主の行動計画の円滑な実施を支援するための問題であるとか、ある いはさらなる取組方策については、引き続き検討をしていこうというスケジュールで取 り組んでいくことにしています。 ○分科会長  ありがとうございました。ただいまのご説明についてご質問等がございましたら、お 願いします。特にございませんか。特にご発言がないようですので、以上で本日の分科 会は閉会といたします。