03/03/18 第6回少子化社会を考える懇談会議事録           第6回少子化社会を考える懇談会 <議事録> 1.日時  平成15年3月18日(火) 15:00〜16:40 2.場所  厚生労働省省議室(中央合同庁舎第5号館9階) 3.出席者  <メンバー>   木村尚三郎(座長)、山崎泰彦(座長代理)、青木紀久代、安達知子、大日向雅美、   奥山千鶴子、黒澤昌子、玄田有史、小西秀樹、残間里江子、清水ちなみ、   水戸川真由美、山田昌弘  (敬称略)  <厚生労働省>   水田政策統括官(社会保障担当)、青木政策統括官(労働担当)、   井口審議官(年金担当)、吉岡少子化対策企画室長、伊原政策企画官 4.議事内容  木村座長  定刻になりましたので、第6回「少子化社会を考える懇談会」を開催いたします。委 員の皆様方には、年度末のお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございま す。  本日は、大越さん、柏女さん、熊坂さん、酒井さん、白石さん、津谷さんがご欠席と いうことで、こぢんまりとした会でありますが、それだけに自立的な討議ができるので はないかと思っております。  それでは議事に入らせていただきます。なんとなくお久しぶりという感じがあります が、前回は9月13日でありまして、半年ぶりでございます。懇談会における前回の議論 の中間とりまとめを、この間行なったわけであります。その後、厚生労働省におきまし てこれを踏まえた更なる少子化対策の検討が進められたと伺っております。  本日は、これまでの検討状況につきまして、厚生労働省から説明を受けたいと存じま す。その後で、皆様方から自由にご意見、ご質問等を頂戴するということにしておりま す。  それでは本日の配付資料の説明をお願いいたします。  水田政策統括官  政策統括官の水田でございます。私のほうから、配付資料、総合説明の前に当懇談会 から中間まとめをいただいた後の状況につきまして、簡単にご説明をさせていただきた いと思います。  昨年9月13日に中間とりまとめをいただいたわけでありますけれども、その後、関係 各省と連携しながらいろんな作業をやってきたわけでございます。資料1に、お手元に 経過についてというものをお配りしておりますけれども、そこにありますように、9月 20日に厚生労働省におきまして「少子化対策プラスワン」をまとめまして、坂口厚生労 働大臣から小泉総理大臣に報告をさせていただいたところでございます。この「プラス ワン」につきましては、すでにその時点で送付させていただきましたけれども、保育を はじめとすると従来の子育てと仕事を視野に加えまして男性を含めた働き方の見直し、 それから地域における子育て支援等にも施策の重点を置くという、まさに当懇談会の中 間取りまとめの柱立てに即したものとしてとりまとめを行ったものでございます。  その後、省内に昨年10月、少子化対策推進本部を設けまして、この「プラスワン」の 内容の実現を図るための枠組みと、立法措置を含む具体的な措置について検討を進めて 来たところでございますけれども、その結果としまして今般、国・地方公共団体・企業 が一体となって子育て支援に取り組む基盤をなすものとしてここに掲げてございます 「次世代育成支援対策推進法案」、それからもう一つは、地域子育て支援の充実を図る という趣旨から「児童福祉法改正法案」をまとめまして、先週、金曜日14日に閣議が決 定が行われ、3月17日、昨日でございますけれども国会に提出をされたということであ ります。  それからもう一つは、「次世代育成支援に関する当面の取組方針」とございます。後 程お目通しをいただきたいと思いますけれども、「少子化対策プラスワン」につきまし て、その後の新年度予算それから今申し上げました立法措置、その他を折り込んでいわ ばバージョンアップしたものを、この少子化対策推進関係閣僚会議において決定をした というものでございます。  今後の進め方でございますが、私どもとしては、平成15年度、16年度の2年間、いわ ば基盤整備期間だと思っておりまして、15年度におきましては今申し上げました2つの 法案を出し、16年度には、さらに児童手当の拡充ということが一つ予定に挙がっており ますし、またこれに加えまして年金改正に関する議論をまた深まってくる、その過程で 少子化についてもいろいろ議論がでてくるだろうということを考えておりまして、働き 方の見直しも含めまして所要の検討を行って、また更に必要な法的措置が必要であれば それを行っていくということを考えております。  それらをもって17年度から、この「次世代育成支援対策推進法案」で定めております 国、地方公共団体とそれから事業主の行動計画が10年というタームでスタートいたしま す。そういう形で、全国でこの少子化対策と申しますか子育て支援対策が実施される体 制というものを作っていこうと、こんなふうなことを考えております。その手始めとし て、この2つの法案が国会に提出されまして、私どもとしては、国会での議論それから 地方の議論、職場での議論そういったものを大いにしていただく、その過程で、そのプ ロセス自体も大変大切なものだと思っておりまして、そういう意味でこれからいよいよ 当懇談会において端緒となりました動きが大きな社会のうねりになりつつあると、こん なような認識でおります。この場をお借りいたしまして感謝を申し上げますとともに、 また今後とも更に私どもこの対策を取り組んでいくつもりでありますのでよろしくお願 い申し上げます。以上でございます。  木村座長  ありがとうございました。それでは続きまして伊原政策企画官。  伊原政策企画官  少子化対策推進本部の事務局次長をいたしております伊原と申します。  お手元の資料に即しまして、20分ほどお時間をいただきまして今統括官が申し上げた 法案の内容や取組方針について、ざっとご説明させていただきたいと思います。  まず資料2−1でございますが、「次世代育成支援対策推進法案の趣旨」というもの がございます。これをご覧いただきたいと思います。  「少子化対策プラスワン」につきましては、仕事と子育ての両立支援と従来政府とし て取り組んできた項目に加えまして、新たに「男性を含めた働き方の見直し」、専業主 婦世帯も含めた「地域における子育て支援」、あるいは、年金制度をはじめとした「社 会保障における次世代支援」、そして「子どもの社会性の向上や自立の促進」を図る。 こういう大きく4つの柱を新たに設けまして対策を講じていきたいという提案を申し上 げたところであります。  こういう考え方に基づきまして、大きく2つのアプローチを行っております。1つ が、「総合的な推進体制の整備」、次世代育成支援対策を進めるための枠組みを作ると いう観点から、先ほど統括官からもご説明したような自治体・企業におけるアクション プラン、行動計画を作っていくこととしています。このための法案を今国会に提出いた しました。  それからもう1つの対策は、そういう枠組みに対しまして個別のきめ細かな施策を講 じていく必要があるということで、法律としましては、児童福祉法案を合わせて国会に 提出いたしました。さらに16年度に向けて育児休業制度なりあるいは年金制度における 次世代支援という項目につきまして今年ずっと検討していきたいと思っております。  2ページ目をご覧いただきたいと思います。次世代育成支援対策推進法案のアウトラ インであります。  自治体・企業が10年間集中的にあるいは計画的に取組を進めるということから、行動 計画を策定していただくことが主たる内容です。  左の下のところに地方版エンゼルプランとございますが、従来から市町村あるいは都 道府県でエンゼルプランというものが設けられてまいりました。しかしながら現在でも 策定市町村数は1,300程度でありますし、内容も保育所の整備といったことが中心であり ました。ということから今回の法案では、もう少しきめ細かなウイングの広い対策を講 じていただくとともに、全ての市町村で策定していただくという内容となっておりま す。  それから右側にございますように、働き方を見直していくことが少子化対策あるいは 次の世代を支援していくという観点から必要ではないかと。これはこちらの懇談会でも よくご指摘を受けたところであります。働き方の見直しを進めるためには、全国レベル でキャンペーンをしていくということも大事でありますが、個々の職場ごとに子育てを しながら働きやすい職場環境というのはどういうものかということを、それぞれの場で 考えていくということが必要ではないかということから、今回の法案では、企業でもア クションプラン(行動計画)を作っていただくということを考えております。  3ページ目に具体的な中身が書かれてあります。国が行動計画策定指針を設けまし て、地方公共団体それから事業主がそれぞれ計画を作っていく。市町村あるいは都道府 県の作る行動計画につきましては、地域の子育て支援という取組だけではなく、親子の 健康とかあるいは教育環境の整備それから居住環境、それから仕事と家庭の両立といっ た、従来厚生労働省だけがやってきた対策だけでなくて、文部科学省や国土交通省、環 境省など政府全体の関連する対策が一体となって、全体を網羅するような行動計画を 作っていただくということを考えています。またその際は、地域住民の意見を十分に聞 き、それを公にし、常に評価をしていくと、こうしたプロセスをたどりながら中身のあ るものを作っていただきたい、このように考えております。  更に右側でございますが、事業主の行動計画でございます。これは、(1)一般事業主 行動計画と(2)特定事業主行動計画の2つに分かれまして、普通の企業はこの一般事業 主行動計画というものを策定していただく。301人以上の大企業には、策定を義務とし て全ての企業で作っていただく。それから300人以下の中小企業につきましては努力義 務としております。  例えば大企業でいきますと、全国で13,000社を超える数の会社が対象になりますが、 労働者数でみますと約43%ぐらいの方が対象になると思っております。また、特に一生 懸命取り組んでいる事業主については認定という仕組みを設けることにより、どんどん そういう取組を進めていただきたいと思っております。  また、国や地方公共団体も公務員を雇用している立場にありますので、特定事業主行 動計画というものを策定することとし、厚生労働省をはじめとした省庁それから自治 体、それぞれの役所ごとに作っていただくことを考えております。  こうした計画を策定するに当たっていろんな支援が必要と思われます。特に民間企業 などは次世代育成支援と言われても日常の仕事とあまり直接関係のないようようなに感 じられると思いますので、「次世代育成支援対策推進センター」という名称の支援団体 を指定することを考えています。具体的には、経済団体にぜひ手を挙げていただいて やっていただきたいと思っておりますが、様々な事業主の行動計画を作る際のお手伝 い、相談、いろんなアドバイスをしていただきたいと思っております。  それから地域では、次世代育成支援対策地域協議会という形で、官民それから一般の 市民、住民、教育関係者多くの方々に参加いただいて、地域ごとにそれぞれの対策を考 える場を設けていただくことを考えております。以上が、次世代育成支援対策推進法案 の概要です。  それからもう1つは、児童福祉法の改正法案を提案しております。これは資料3−1 「児童福祉法改正法案の趣旨」をご覧いただきたいと思います。この児童福祉法改正法 案は今回の次世代育成支援対策推進法案と対をなす法案でありますが、問題意識としま しては、子育て家庭が地域で孤立している、とりわけ専業主婦家庭などは負担感が高く なっている、また、地域全体の子育てをする力が低下してきている、こういう状況に鑑 みまして全ての子育て家庭を支援するという観点から改正を行うものです。  従来の児童福祉法は、ややもすれば虐待を受けている子どもたちの入所措置といった 要保護児童対策であったり、あるいは保育に欠ける子どもたちに対する対策というのが 中心でありましたが、これをもう少し幅を広げて取り組んでいこうということで改正を 行っております。  改正の中身はその下にございますが、最近だんだん増えてきておりますけれども、地 域で子育て支援を行うようないろんな取組、事業を法定化することとしています。「子 育て短期預かり支援」は、一時保育とかパートタイマーの方などを対象とするような特 定保育、あるいは「放課後児童クラブ」などが該当します。それから「子育て相談支援 」は、保育所あるいはその他の場所で運営されている地域子育て支援センター事業、あ るいは「つどいの広場」と呼ばれる地域の母と子を対象にした様々な相談あるいは交流 するような場を提供するような事業が該当します。それから「居宅子育て支援」には、 出産後、産褥期にヘルパーさんを派遣するような事業が当たります。  こうした地域子育て支援事業と呼ばれるものを児童福祉法に位置づけまして、その整 備あるいは支援ということを市町村が責務としてやっていただくということを明確にす る改正を行うこととしております。  それからもう1つ、左の下のほうにございますが、待機児童解消計画ということで児 童福祉法に新たに保育の計画を作っていただく。待機児童が非常に多い地域、局地的な 問題ではあるのですが、こうした地域に計画を作っていただいて、いかにして待機児童 を解消するかということについて考えていただくように思っております。また、要保護 児童施策と書いてありますが、様々な要保護児童施設におきましても地域の相談支援と いうものを新たにやっていただくといった規定も新たに設けられるところであります。  以上が、ちょっと堅い話でございましたけれども法律の中身でございます。もう1つ が資料4−1「次世代育成支援に関する当面の取組方針の概要」でございます。これを 先週ですが、少子化対策推進関係閣僚会議という会議で決定いたしました。先ほど申し 上げましたのが法律の改正でございますが、こちらのほうはいろんな施策のメニューを 取りそろえまして厚生労働省だけではなく、各省の施策、予算そういうものを取りそろ えたメニューを決定したものでございます。  1ページ目に基本的考え方・目的とあります。こちらは先ほど申しましたような、少 子化対策プラスワンで決められました大きな4つの柱を基本にして対策を講じるという ことが書かれております。  2ページ目以降に、具体的な施策のメニューが載っております。ここに載っておりま すのは要約版でございまして、詳しい資料は4−2「次世代育成支援に関する当面の取 組方針」という縦紙のほうに書いてございますので後ほどご参照いただければと思いま す。概略版でご説明しますと、1つは、「すべての働きながら子どもを育てている人の ために」ということで、3つの柱が立っております。  1つが、男性を含めた働き方の見直し、多様な働き方の実現ということです。例えば 1例を挙げますと、子どもが産まれたら父親が5日間ぐらい休暇を取って、母子が帰っ てきて少し落ち着くまでの間、父親が一緒にいてあげようと、こういうような取組をし ていこうではないか。あるいは多様就業型ワークシェアリングとか、パートタイム労働 者の均衡処遇の普及という形でもっと多様な働き方を実現する対策を講じていくことが 提案されています。  2つ目が仕事と子育ての両立の推進ということで、これは新聞報道等でもずいぶん取 り上げられておりましたけれども、目標値を定めて取組を進めると。例えば育児休業取 得率でございますが、男性は10%、女性は80%という水準を掲げて取組む。あるいは子 どもの看護休暇制度の普及率、それから小学校入学までの勤務時間の短縮措置の普及率 を25%に設定いたしまして実現に資する。あるいはその下にございますような仕事と子 育ての両立指標などを普及させる。あるいは育児休業取得を促進するための奨励金など を新たに設ける。こうした施策が掲げられております。  3つ目では保育サービスの充実ということでは、待機児童ゼロ作戦を更に進めていく ということや、15年度からはパートタイム労働者等のための新しい「特定保育」という 事業をスタートすることとしております。具体的には、3歳未満の子どもたちを対象 に、週2、3日、あるいは午前とか午後だけといったもっと弾力的な利用ができるよう な制度を導入するものであります。  次のページにまいりまして、「子育てをしているすべての家庭のために」ということ で、大きく6つの柱があります。1つは、地域の様々な子育て支援サービスの充実と ネットワークづくりを進めていこうではないかということで、先ほど児童福祉法の改正 の説明の中で地域子育て支援の事業をご説明いたしましたが、そこに書かれているよう なものを予算の上でいろいろ支援していくこととしております。一時預かりといったも のを推進していく、あるいは地域子育て支援センターとか「つどいの場」というものを 全国に広めていく、あるいは地域の子育て支援の情報を集約しまして、子育て家庭に情 報提供していくような総合コーディネーターの仕組み、あるいは子育てサポーターとい ったものを設置するというようなことも掲げられております。  それから文部科学省のほうでは、家庭教育支援というようなことが掲げられておりま すし、あるいは国土交通省の仕事にも関連しますけれども、「子育てバリアフリー」と いった取組、公共施設の託児室とか乳児コーナー、乳幼児に配慮したトイレを作ってい くというようなことを促進していく。これらは先ほど申し上げました、市町村の行動計 画に期待するところが大きいわけですけれども、地域ごとにそういうきめ細かな措置と いうものをやっていただけないかと思っております。  それから再就職の促進ということで、子育てのために一時的離職した方が円滑に再就 職できるように対策を講じる。  5番目でございます。これは、現在、年金制度改革が検討されておりますが、こうし た中で育児期間中収入が下がったり、なくなるという場合に年金額を計算する際になん らかの配慮措置が取れないかということも提案されておりまして、こうした議論が年末 に向けて進んでおります。  それから奨学金制度の充実ということで、若い世代がお金を借りてそれで高等教育を 受ける、こうした仕組みを充実していくということが必要ではないかといった提案もな されております。  4ページにまいりまして、「次世代を育む親となるために」ということで次の世代の 親づくりということで、大きく5つ挙げられております。1つが、親になるための出会 い、ふれあいということで、最近の中高生の場合、兄弟が少なく赤ちゃんと触れ合う機 会が少ないと言われています。そこで、保健所とか保育所あるいは幼稚園などいろんな 場で中高生が出かけていって赤ちゃんと触れ合う機会を作る。こうしたことを全国で もっと展開していきたいと考えています。あるいは学校教育の場、社会教育の場で子ど もの生きる力を育成しよう、子育てに関する理解を促進しようと、こうした取組を進め ています。  それから若者自身の安定就労とか自立した生活を促進するための事業、フリーター対 策。それから4番目にございますが、子どもの健康と安心・安全の確保ということで、 次第に人口に膾炙してまいりましたが「食育」、つまり食べ物の問題。あるいは望まな い妊娠といった問題が言われておりますがか、性に関する正しい理解を普及していく、 あるいは安全で快適な「いいお産」といったものの普及を進めていく。こうしたことが 掲げられております。  それから不妊治療についてももっと支援をしていくべきだという声がございます。倫 理面、技術面、体制整備などいろいろ難しい問題がございます。このあたりの課題につ いてどう答えをだしていったらいいのか検討を進めるとともに、経済的な支援をどうす るかということについても検討していくということが提起されております。あるいは不 妊専門相談センターというのものを都道府県単位で整備していく、このようなことも掲 げられております。  5ページでございますが、今後の推進方策ということで今年、来年と2年間を次世代 育成支援対策の基盤整備期間と位置づけまして、今回国会に提出いたしました2法案を はじめとした一連の法律改正、あるいは新法の制定といった立法措置を講じてまいりた いと思っています。15年度は今申し上げた2法案でございますし、16年は児童手当制度 の見直しあるいは育児休業制度の見直し、多様な働き方を実現するための条件整備と いった課題につきまして検討して必要に応じて法案をまとめていきたいと思っておりま す。  さらに17年度からは、今国会で議決していただきますと、今回の次世代育成支援対策 推進法案が施行されることになります。そうなりますと市町村、都道府県、事業主で行 動計画づくりが全国一斉にスタートするわけです。これらをいかに円滑に進めていく か、また、そうしたためにどのような準備が必要なのかということもこれからの1年、 2年の間に力を尽くしていかなければいけないと考えております。  以上が、去年の9月以降いろいろと政府の側で取り組んできたもののアウトラインで ございます。あと残りの資料について簡単にご説明してしまいますが、資料5は、この 懇談会でまとめていただきました中間とりまとめと今回政府でとりまとめた取組方針あ るいは法律改正とを対比したものでございます。政府として様々な対策を取りまとめる にあたりましては、この少子化社会を考える懇談会の中間とりまとめを非常に参考にさ せていただきました。それが資料5であります。  それからお手元には、今日ご欠席でございますが、宮古市長の熊坂委員から是非配付 してほしいとご要望がございました「みやこ子育てプラン」という宮古市の子育てプラ ンの現在(案)というものを配付させていただいております。是非ご一読いただければと いうことでございますので、ご参照いただければと思います。ちょっと長くなりました が以上でございます。  木村座長  ありがとうございました。ただいまの資料の説明につきまして、ご質問、ご意見ござ いましたらよろしくお願いします。  大日向委員  2点、質問とちょっと申し上げたいことがあります。この次世代育成支援に関する当 面の取組方針(資料4−1)のところです。まず1点は、多様就業型ワークシェアリン グの普及に努めるとありまして、大変これは大切なことだと思います。いわゆるオラン ダ型ワークシェアリングに近いのかなと思いますが、短時間正社員制度ですね、それを 実施していく上で、大企業はできるかもしれないけれど中小とか零細企業はなかなか大 変だという声をよく聞きますが、そのあたりについてどういうお考えをお持ちなのかと いうことを伺わせていただきたい思います。  もう1点は、不妊治療のことです。やはり次世代育成支援の中の最後のところに不妊 治療というのが入っております。不妊問題に直面している方々の支援は大変必要だと思 いますが、若干危惧を持ちますのは、少子化対策の中にこれが入ることによって当事者 の方々の心境をいささか思うところもあります。不妊治療というのを少子化対策として やると、場合によっては「産めよ増やせよ」というプレッシャーをかけかねないので、 そのあたりは慎重でありたいなというふうに思いますし、治療というのは成功の確率は 現状まだ非常に低いわけですから、産むことに対するプレッシャーとならない形でとい うことは考えております。その2点です。  木村座長  お願いいたします。中小企業の場合と不妊治療。  青木政策統括官  労働担当の政策統括官の青木でございます。多様就業型ワークシェアリングの普及促 進でございますが、ご案内のように今の働き方というのが実際には5千万人、6千万人ぐ らいの雇用者のうち、1,500万人ぐらいの方々がパートタイマーだとかいろんな形で就 業しているのに、どちらかというといわゆる正社員型でいろんな構造が組まれておりま す。最近の数字は持っておりませんけれども、ここ10年ぐらい間にどんどんいわゆる正 社員でない形の就業が進んできているんです。この就業の仕方がただもう少し「間に合 わせ的」な形で労働力を調達しているのではないかというのが一つあります。それから もう一方では、こういう世界のかなり大競争の中で、企業も今までどおりの労働力供給 に耐えられないという形があります。そういう中で、できるだけ働くほうのニーズに沿 いつつ、企業の労働力調達というのも合理的にしていこうということを契機に、フルタ イムばかりが労働力調達ではないでしょうと、もっといろんな力のある人たちをいろん な形で採用していくという形が必要なんではないでしょうか、これが一つ。それからそ この中で、特に去年あたりから短時間正社員という言葉がでてきたのですが、この基本 的な考え方はいわばもっと弾力的な働き方があっていいのではないか、一人の方が働い ている上でも、例えばフルタイムで働く期間もあるし、それからいろんな個人的な例え ば学習をするとかあるいは子育てをする。そういう中で、それが今だと一旦雇用関係を 切って別の形にならなければいけないわけです。それをもう少しうまくいったらどうな んだということです。  ただこの問題は、労働力の供給側である働く方々の立場とそれからあるレベルの労働 力維持しなければならないという企業の立場があるので、なかなかある程度大きなとこ ろでないとなんて言うのですか、膨らみ分が調節できない面があって、今お話になった ように小さなところでどうやってこれを入れていくかというのはかなり大きな課題に なっていくと思います。  今、このペーパーにもございますけれども、パートタイマーの方々の均衡処遇そうい った問題も含めて議論が続いていますけれども、今申し上げたような課題をどういうふ うに克服していくかという問題がございますので、今実は来年度になって一部の企業に お願いをして、モデルケースということでちょっと実験をさせていただこうかなという ステップに来ています。  吉岡室長  少子化対策企画室長の吉岡でございます。大日向先生から不妊治療についてのご懸念 のお話があったわけですけれども、「少子化対策プラスワン」をとりまとめて以降、今 のようなご指摘を種々いただいてきたわけです。それは不妊治療の問題に限らず、子育 て支援の問題についても、私たちは少子化対策のために子育て支援をやっているんじゃ ないというようなご指摘もいただいてきたわけです。今回、政府でとりまとめましたこ のタイトルを見ていただきますと、そういったことも踏まえての「次世代育成支援に関 する当面の取組方針」ということで、私どもまさしく子どもを生み育てやすい環境づく りをやっていくというのが我々の役割であるということを改めて、この名前の上でそう いった位置づけをしっかりしたということであります。  今後、不妊治療の問題につきまして具体的に施策を講じていくにあたりましても、今 ご指摘いただいたこと十分踏まえてしっかりとした説明をやっていきたいと思っていま す。  木村座長  よろしいですか。それでは黒澤さん。  黒澤委員  1点だけお伺いしたいことがあります。それは次世代育成支援対策推進法案、ここで いわゆる地域の声を聞きながら地域の事情を踏まえながら地域単位、地域ごとの行動計 画を策定なさるということで、非常にこれ重要で素晴らしい点だと思うのですけれど も、その際に、いわゆる地域の地方自治体の権限というものはどんなふうになるのか、 今の状態から変わるのかということについておうかがいしたい。  特に、例えば保育所の設置基準、認可保育所の設置基準ですとかそういったところの 緩和、あと予算の面、そういったところでどういうふうにお考えになっているかをおう かがいしたいと思います。以上です。  吉岡室長  市町村の権限ということですけれども、先ほどご説明した児童福祉法の改正と合わせ て今回この推進法を提出するということです。1つには、これまで市町村の取組という のは保育というものが中心で、小さい町村であれば私ども保育をやっているけれども子 育て支援はやっていませんとおっしゃるところもあったわけですが、それは児童福祉法 の上でも、そういう地域の子育て支援事業というものが市町村の仕事になっていないと いうことがありましたので、改めて今回そういう地域の子育て支援事業というものを市 町村がやっていかなければいけないということを児童福祉法の中で明確化しました。そ ういう意味で、この行動計画の中でもそういう子育て支援事業についてのメニューとい うものが十分盛り込まれていくことになるであろうと、そういうふうに権限なり責任と いうものを市町村に与えて、やっていただこうということであります。  ご指摘の保育所の問題等につきましては、これまでも種々いろいろ総合規制改革会議 なり地方分権改革推進会議なりでもいろいろご指摘をいただいておりますので、その都 度現場のニーズに合った見直しというものをやらせていただいているわけでありますけ れども、引き続きここは行動計画を策定する中で、また市町村から改めて様々なご指摘 なり意見なり要望なりでてくると思いますので、そういうものも受け止めながらこれか らまた更に考えていきたいと思っています。  山田委員  大日向委員に引き続いて、やはり若者の労働環境について質問というか要望、対策み たいなものをしていきたいと思います。  まず、やはり今までの正社員中心主義からパートとかそういう不安定、契約社員なり パートなりそういうところに配慮をというのは方向性としてはいいと思うのですけれど も、どうもこの議論の中の方向を見ていると、もともと正社員として勤めたものが短時 間になれるのではないと、それを推進したり、というようなそちらの発想が非常に強く 見えるんです。でも現実の若い人の間で増えているのは、もう正社員になりたくても最 初から契約社員とか派遣社員とかアルバイトしかない。仕方なく働いている人のほう が、玄田先生が専門ですので後で直していただければいいと思うのですが、つまり男性 も女性もそういう形になっていると。そうするとどういうことが起こっているかという と、私、厚生労働省から研究費をいただいてインタビュー調査など繰り返しています が、例えばある企業に勤めている既婚の女性がいまして、その人が言うところによる と、「そこに最初から正社員として勤めている人は育休も産休もある。でも私は非常勤 の司書なので、もう子どもを産んだら辞めるしかない」と。つまり最初から正社員とし て勤めている人だったらいろんな対策、施策はあるのだけれども最初からパートなりア ルバイトなりという人に対しては、同じ企業に勤めていながら何も対策がないというよ うな状態に陥っている。さらにそれが、中小企業どころではなくて、起業した人に話を 聞いたのですが、ラーメン屋としてやっている人にインタビューをしたのですが、もう 夫婦2人で朝から晩まで働かなくては経営自体ができない。こんなところに子どもなん か産まれたら倒産するしかないというような状況なんです。  つまり何か企業を通して支援するという形だけではなくて、別の形の支援方法を考え てもいいのではないかというふうに私は考えるのですがいかがでしょうか。例えば先ほ どの労働者の43%をカバーしているとおっしゃいましたけれども、つまり50、60%の労 働者に対して育休が保障されてもしょうがないわけですから、果たして20〜40%ぐらい の労働者の中で非正勤がどれぐらいで、その中で育休その他がカバーされているのは何 パーセントなんだろうかというようなデータで示していただきたいというのが質問とい うか、今すぐでないでしょうけれども私の希望であります。  あと、やはり対策全般ですが、この方向性は全然間違っているとは全く思っていなく て、このまま推進していただきたいのですが、残念なのは5年前、10年前の正社員が一 般的だった時代にこれをやっていたらどれだけ良かったのというふうに私は思うのは残 念だったの1つであります。  第2点は、これは厚生労働省の研究発表会、成果報告会でも言ったのですが、そのと きはガダルカナルにしてはいけないと言ったら、あとで聞いてきた学生に「先生、ガダ ルカナルと言ったって誰もわかりませんよ」と言われて「しまった」と思ったのです が、何か小出しに小出しに政策を進めていっても、それが若い層に「ああこれで安心し て子どもが産める」というふうに浸透するまでに時間がかかってしまって、それまでに さらにまた状況が変わっていくというようなことがたぶんあるんだと思いますので、何 かインパクトのある対策というのでしょうか、バーンと。もう若者たちが「ああこれで 子どもを産んでも経済的に安心してやっていけれるんだ」というようなものを、何か政 治的なところで打ち出していただければなと思っております。これは意見でございま す。  青木政策統括官  雇用問題で若い人たちの就職の仕方、これは専門の先生方もたくさんいらっしゃるの であまり洒落たことは申し上げられないのですが、最近の傾向を見ると確かに就職をす る、フリーターとここにも書いてございますけれども、昔流に言うとちゃんと仕事に就 かない人ですね、それからまるで就かない人が増えている。これは本当で、ここ10年ぐ らいで、数字がなくて恐縮ですが、倍ぐらいに最近なっている筈なんです。  それから企業のほうも、これは経済環境もあるのですが、できるだけ即戦力になるよ うな方をかなり選別し、採用数を少なくして採っているという現状があります。それか ら逆に平成12年からスタートしたんですけれども、派遣就労で来た方でいい方があれば 採用するとか、それから今も特にフリーターの方々などの常用に入る道に大きな門があ る。トライアル雇用とか企業に入ってみて、そういうふうにいろいろ就業の仕方が変わ っていることは事実だと思います。ですけれども、それをその何かこれ一つの経済の大 きい意味の流れでなっている部分がありますから限界があるんですけれど、むしろ雇用 されている方、経営者を通じて仕組んでいる、例えば雇用保険のいわゆる三事業という 形で組んでいるのもあるのです。そうするとこれは今、派遣労働者の方だとかパートタ イマーの仕事の人にも適用をすると、適用しているのでそれは育休とかそういうものの 対象にもなる、という形で広がっていくのだろうと思います。  雇用以外の道でどういうふうに、そういう対象の方をとらまえてそしてお手伝いがで きるのかと、これはまた別の課題としてちょっと別の面から答えてもらうといいと思い ます。  水田政策統括官  雇用以外の面ということと、それから併せましてもう一つ先生おっしゃったインパク トのある対策ということでございましたけれども、例えば社会保障給付が80兆円あって 高齢者と年金といろんな配分があって、そのアロケーションの問題でありますとか、あ るいは更にそれを外に出た社会全体のアロケーションの問題まで行かないとおそらくイ ンパクトのあるというのは出てこないだろうと思っておりますけれども、私ども事務局 のほうで受け止めるにはなかなか荷が重いわけであります。今、同時に社会保障改革、 まさに年金改革を端緒としまして改革の議論がありますので、大きなアロケーションの 議論はそこでまたやっていかなければいけないのかなと思っております。  具体的にどうすればいいかというのは、また言葉だけ言っても仕方がないものですか ら背景から構造的なところから取り組んでいかないと、なかなか言葉だけでていくとい うわけにもいかないなと本当辛いところがあるところでございます。  木村座長  ありがとうございました。他に。  清水委員  2、3細かな点ですが、育児休業の父親が5日間ぐらい取ろうというところで、この 間子どもを産んだときに5日目に病院から帰ってきたのですが、5日間休業とっても妻 が病院にいる間に旦那が家で楽しているだけで、これは困ったぞと。この5日間は帰っ てきてからですか、そうでないと困るなと思いました。  それと、あとまとめていただいたものを見ると、実際に保育園で聞いてきたりお母さ ん同士で話したりする噂話で確かな話でないかもしれないのですが、例えば23区の保育 所では4、5歳はもう取らないことに決めたとか、学年別の保育でないと認可保育園に なれないので保育園をやめたいとか、そんな話をよく聞くのですが、どうしてこうやっ て上のほうでよくしようという計画がいろいろ練られていて、一般で聞いてくる話がこ ういう話ばかりなのかなあと少し疑問に思っています。  それと山田先生がおっしゃった医療以外での対策というのも少しないと、実際に子ど もを産もうかどうしようかという私ぐらいの、あるいはもう少し下の世代に個々に働き かける「子どももいいかも」というような思いがなかなか生まれてこないのではないか なと思っています。先ほど10年前だったら良かったなというお話があったのですが、私 が思ったのは、親になるために支援していこうというページがありましたけれども、あ あ私たちの時代はこれがなかったのかなというふうに思いながら見ていました。ちょう ど私が自分に近いところの、私を挟んで前後10歳違いの人まで調査していますけれど も、親になるためにどうやって育っていくかというところ全く配慮されないで育った私 たちのような世代は、自分のことがすごく嫌いだと答える人が多くて、かつ親のことも すごく嫌いだという人が多くて、子どもも嫌いだと答える人も多い。そういう人たちは どれだけいろんな整備が整おうともやっぱり子どもは産まないと思います。ですので、 親になるための子どもに対する支援というのを今からすぐにやらないと、今後何十年も 子どもは産まれていかないということになるのではないかなと思いました。  青木委員  私の関係しているところが1点ありまして、それは子育て支援の総合コーディネート というご提案の部分です。資料3−1をいただいたところで、ああ本当にいよいよ子育 て支援の地域の活性化というところで前進があるんだなという実感がとてもわいて嬉し かったのですけれども。私は子育て支援センターのほうで実際の臨床活動をしておりま すと、要するに情報を繋いで発信するだけでは駄目で、発信したあとどうなっているか もまた確かめるぐらいのやりとりですね、フットワークの軽さと充実したマンパワーが ないとこのコーディネートも本当に実現するのかというところがとても、これからのい よいよ育てる作業だというか、そのシステム、箱はできたしシステムが上手に動くよう に育てる時期なんだということがとてもありまして、ここで「子育て支援総合コーディ ネート事業」というのをおやりなさいというふうに市町村にこちらが働きかけをした後 の、中身というのは自由にまだ任されているという状況なんでしょうか。  つまりそれが早いうちに見直しをするとか、状況を調査するとか呼びかけておいたあ とどうなっているかを早いうちに調査をして、うまく回っていない市町村というのはた ぶん多いと思うので、早い時期にモデルプランをある程度選択肢として馴染むようなも のをこちらが多少添えられるような、少し先駆けの調査なり実践なりをしたモデルの情 報というのも提示されるような部分というのはお考えがあるのかとか、準備があるのか どうかということについてお聞きしたいと思います。  吉岡室長  まず子育て支援のコーディネーターですけれども、法律でもって市町村がこれをやら なければいけないという規定を設けるのと併せまして、このコーディネーターを設置す るための経費について支援をしていこうということで来年度の予算を用意しておりま す。極力、今後できるだけ早いうちに、全市町村でもってそういったコーディネーター が配置されるようにということでやっていきたいと考えています。  一方で、地域のニーズのくみ取りみたいなお話でありますけれども、地域の行動計画 を作っていく過程で、今後法律が通りましたらば、来年度の早いうちに国としての指針 を作ることにしており、それを踏まえて、15年度中に各市町村で地域の住民に対する ニーズ調査を行っていただきたい、ということを各市町村にお願いをしております。そ ういったニーズ調査の結果も踏まえて、16年度に各自治体で計画していただくというふ うな流れで取り組んでいきたいと思っています。  玄田委員  私も基本的に清水さんとか山田さんと同感で、やや直接的に子どもを産む人たちに対 するインパクトがまだちょっと弱かったかなという意味で2つ質問があります。  1つは、資料5の一番下に書いてあるところですが、プラスワンでも中間とりまとめ でも、一番そこそこ話題になったかなと思うのは10%男性の取得をという目標数値を出 したということと、女性の80%。特に男性のほうがやや話題になったかなと思うので す。どういう意味で話題になったのかという私の理解では「そんなの無理だ」というの で話題になっています。  私が聞いたところによりますと、この10%の目標プラスワンで大臣が仰ったときに記 者から「これは何年以内の目標なんですか」と聞かれて、「それは期間の問題じゃなく て心の叫びなんだと理解してほしい」とおっしゃったという話をきいて、やっぱり心の 叫びだということで、「わかった。じゃあ産もうかな」とはなかなか思わないものだか ら、こういうことを関するある種の本気を、行政の取組の本気を感じさせるためには 10%目標だけではなく、もう一歩踏み込んだ期間だとか何かもう少し具体性が必要だっ たのかなということを思うのです。特にこの目標に関する社会的な受け止めに対して、 行政の方はどういうふうにおもっていらっしゃるのかというのが1点目です。  2点目は、やはり本気を表すために、やや冷たい言い方かもしれませんがお金だと思 います。資料5を見ていきますと、早期再就職の促進のための基盤整備で401億円と402 億円で、803億円とこれは大変大きな数字であります。いったい803億円を何に使うのだ ろう、私が見間違いかもしれませんが、ここでは早期再就職をするための800数億円と いうのは、別に女性とか子どもを持っている人のためでなく、中高年の再就職を含めた 全般の数字をここに出しているのではないかなと思っているので、そうだとすればこの 803億円をこういうことで通知だすと、そうはいってもこれは実際には子育てに使われ るのではないと思われる可能性がある気がして、果たしてこの803億円は何に具体的に しようと思っているのかということとです。  同じように2ページのところに待機児童ゼロ作戦で、やはり306億円と301億円という 非常に大きな数字が並んでいて、さっきの804億円を足せば1,410億円という、これから イラクと戦争でまたまた日本もお金がかかるかもしれないときに、この1,410億円とい うことの具体的な中身によっては、あれこれは本気だぞとか、いやいやこれは実際には というふうなことになり得る気がして、実際にこの大きなお金のもう少し具体的な使い 途とか少子化対策のところで具体的にはこういうことを考えているのだと。例えば保育 でいえば民間への委託をもっと大胆にやるとか、もっと地方に権限移譲するとか、何か 少し具体的なアイデアがこの数字に裏側にあれば是非教えていただきたいと思います。  吉岡室長  まず育児休業取得リストの目標値の関係でありますけれども、大臣のご発言について のご紹介もありましたけれども、私どもこの数字をどういうふうに考えているかという と、基本的に80%、10%の数字というのは、いろいろな調査の結果を元にして、取りた い人が取ったらどうなるのかという数字を表していると、だから決して私どもは押しつ けで作った数字ではなくて、いわば大臣の言葉で「心の叫び」とおっしゃいましたけれ ど国民の声であるというふうに私ども思っているわけです。それを具体的にどう実現す るために何をやっていくかということですけれども、それぞれの企業で考えていただく しかないだろうということで、これは推進法でもって企業の行動計画を策定していただ く。その中の一つの取組としてこういう取得率等について目標をできるだけ掲げてやっ ていただきたい、ということを考えているわけであります。  そのための重要な手段として、今後経済団体でもって推進センターという役割をやっ ていただこうと思っておりますけれども、そういう推進センターが個々の企業に対して そういうきっちりとした行動計画を作るための指導なり支援というものをやっていただ くということが大事になってこようかと思いますので、そういったことでの取組を是非 ともやっていきたいなと思っております。  それとインパクトのある対策というふうなことでございましたけれども、この推進法 に基づいて16年度中には3,300市町村・47都道府県それから13,000を超える企業での行 動計画づくりが一斉に始まるというのは、世の中に対する一つの大きなインパクトにな ると思っております。そういった計画の中身をしっかりと我々も見ながら、もう一つ今 お金の話ということもございましたけれども、ここに掲げている数字の外の話として、 私ども16年度末には今の新しいエンゼルプランが終了しますので、そういった自治体等 の行動計画に沿ったような新しいプランを17年度からは作っていかなければならない、 そういう意味でこれからそういった財政的な面での措置ということもこれからしっかり と考えていかなければいけないと思っているわけです。  玄田委員  私が聞きたいのは、具体的な中身で今何を考えていらっしゃるのか、特に早期再就職 促進のためにということで、私の勉強不足ですが、この子育て支援と早期再就職促進の ために具体的にどういうことを考えていらっしゃるのかをお聞きしたい。ちょっとハロ ーワークで何か取組があるのかわからないものですから。  青木政策統括官  直接の担当者ではないので適切にお答えができるかどうかわからないのですけれど も、要するにトータル803億円というのは少子化対策ということで積み上げたものでは ございません。  もちろんハローワークでいろんな形で、子育ての方が仕事を探しに来られたりあるい は子育てが一段落して来られたと、そういう方にどうやってその方に合ったサービスが 可能であるか、ですから適応になるサービスの総額を表したということだろうと思いま す。  玄田委員  確認ですが、子育てをしながらどうしても働かなければならない人のための助成措置 って今日本にありますか。子育てをしながらどうしても働かないといけなくて、そのた めの人を雇った場合に、本人だったり企業に対して助成金の補助を出すということ日本 にありますか。中高年に対してのは山ほどありますね。もし本当に早期再就職という絡 めていって、働きながら子育てしなければいけない人が現実にいて、その人の対応策を 取らないというのであれば、それはそれで考えていかなければいけないだろうし、もう 少し具体的なことを是非教えていただきたと思います。別に今わからなければ構いませ んけれど。  青木政策統括官  ちょっと調べておきたいと思いますけれども、そういうふうにはなっていないと思い ます。確かに高齢者の方々などにそういう措置はありますし、障害者の方にもあります けれども、むしろいい仕事を早く探してあげるというふうなサービスにとどまっている ように思います。ちょっと調べてみます。  伊原政策企画官  玄田先生からご質問のありました保育のほうですけれども、保育所についてだいたい 306億円の受け入れ児童数の増大とございますが、これはだいたい5万人を15年度中に 受入増をしようというための費用であります。それからもう一つ、延長保育で301億円 とありますが、これは延長保育の実施個所を1,500カ所増やすというための予算であり ます。  木村座長  ありがとうございました。水戸川さん、どうぞ。  水戸川委員  取組方針を拝見させていただいて、要点がまとめられてわかりやすいのですが、基本 的なところ「すべて働きながら子どもを育てている人のために」という部分で、妊婦も 子育てが始まっていると思うのですけれども、そういったマタニティーウーマンのため にも働きやすい環境づくりというのも検討に入れ、強化していただけたらと思うのが1 点です。  それから次の「次世代を育む親となるために」というところでも、安全で快適な「い いお産」の普及というふうに挙げていただいていますけれども、「いいお産」から「い い子育て」へ繋げていく意味でも、やはり産後うつの状態とかを改善していくために は、新生児時期からの仕組みを作り上げていくことも必要かなというふうに感じていま す。子育て支援事業の法定化というところの枠に入るのかと思うのですが、そういった ところも視点に入れていただけたらいいなと思っております。  やはり継続的に繋げられてこそ少子化も反映されていくのではないかなというような ことを考えておりまして、そのあたりも今後課題にしていっていただけたらと要望とい うかお願いということです。一応、組み入れていただいているかどうかということに関 してどうなんでしょうか。  伊原政策企画官  例えば資料4−2でございますが、例えば4ページのところで妊娠・出産や育児休業 の取得を理由とする不利益取扱いや嫌がらせの防止が挙げられています。職場で妊娠し ている女性などが非常に居づらいとか働きにくいとかという話がございますが、こうい う対策も大事だと思っております。その他、今ご指摘のありましたような産後うつの問 題とかそういうことを含めてもう少しどういうことができるか考えたいと思います。  安達委員  今の質問に近い答えになるかと思いますが、「プレネイタルビジット」という考え方 があったと思います。「健やか親子21」から出てきたんだと思います。妊娠中の段階 で、まだ子どもが産まれてくる前に担当の産婦人科医が小児科医と連携をとって、何か 不安ことをいろいろ相談してできるようなシステムを少し広めていこうという動きで す。公的な予算が確かあって、そういうことをしていこうという動きが始まっていると 思います。大分県の方ではかなりなされているようですが、ただ非常に難しいのです。 もちろん妊娠中になんともなくても不安を持つ方はいらっしゃいますが、実は妊娠中に 赤ちゃんに少し問題があるということがわかってしまったときのご本人ないしはご夫婦 及びその家族に対応することも入ってきますので。医師だけでは対応できず、心理士と かいろいろな方たちの協力がないと本当にいいお産ができないかもしれないのです。確 かそういう取組が広がりつつあると思っていますがどうでしょうか。  伊原政策企画官  今日はそのあたりの専門家が事務方にいないものですから申し訳ございません。  安達委員  それも一つのいい妊娠、いいお産の取組かと思っています。それから追加ですが、妊 娠・出産が終わりまして、育休それからワークシェアリング等のいろいろなシステムを 確立させようということがあって大変いいことだと思うのです。しかし、今度はその中 からまた専門的なキャリアを磨いてステップアップしようとするときに、常勤に戻った りするような体制がとりやすい環境に配慮がいただけるような社会を作っていただきた いと思います。  というのは、えてして子育てというのは別に2、3歳で終わるわけではありませんし それぞれに大変な時期はあるのですが、ステップアップしようとする親は「君はそんな ことまでやる必要ないよ」というような形で言われやすいところがあるのではないかと 思います。一時的な措置としてワークシェアリングやそういういろんな配慮が必要な時 期があっても元のキャリアを磨いたり、ステップアップできるような体制に戻れるよう なシステムを考えていただきたい。それはきっと男性も同じことかと思います。  それから不妊治療のところで、この資料5のほうには少し書かれているのですが、主 な取組のところに抜けてしまっているものについてです。不妊治療に関して診断を受け たり、治療をしたり定期的に通院したりということを仕事の合間にしなくてはいけませ ん。不妊治療は果たしてその後妊娠に成功して子どもを持てるかどうかわからないので すが、そういうことができるような企業の配慮を具体的な取組のところに書いていただ きますよう、お願いしたいと思います。  木村座長  今のは要望でよろしいですか。  安達委員  はい。  木村座長  ありがとうございました。他いかがでしょう。  奥山委員  私たちが懇談会を始めてから「少子化対策」という言葉が、「次世代育成支援」に替 わったということはとても良かったと思います。実際の子育てをしている立場からいっ て、少子化のために子どもを産んでいるわけじゃないという気持が大変ありましたの で、この「次世代育成支援」という言葉をもっと世の中に広めていただきたいなと思い ます。今までのエンゼルプランが働く人たちの支援が中心だったのに対して、今回は子 育て中の家庭全般に、すべての子どもたちを育む家庭に対しての支援に変わったこと、 これは非常に大きなことだと思うのです。そのあたりの認識は、これからの法律ができ ていく過程で社会に浸透してくるとだいぶ変わってくるだろうなというふうに思いま す。  インパクトのある施策とともに、「次世代育成支援」という言葉をどう社会にアピー ルしていくか、高齢者の方々にもアピールしていくかというところを重点的に、つまり 子どもがいない方にも高齢者の方にも、これは関係のある法律だということを認識して いただけるような環境づくりが、まずは大事なんじゃないかなということを感じまし た。  それから、これから地域にこの施策は下りていくと思いますけれども、エンゼルプラ ン同様、だいぶ時間がかかると予想されます。今回は制度化するということで時間が きっと短縮されるだろうと思うのですが、やはり地元地域や地方自治体レベルでは、な かなか温度差があるなということも感じるところですので是非モデルケースなど提示を 早めていただくことが大事であると思っております。  それともう1つ、本当に今回の目玉でありました男性の育休の10%取得、これに関し てはかなり経済団体からのいろんなご意見もあるんじゃないかと思うのです。そのあた りの状況というのですか、どんな感じなのかということをわかる範囲で教えていただけ ればと思います。先日もある講演会で、男性の方が自分自身が育休をとった際に会社を 辞めさせられそうになったという話もでてきて、涙ぐんでいらっしゃる現状を見て、な かなか現場の声というのを広く社会に伝えていくシステムも実はないのかなと思いまし た。こういうところで議論するだけでなく本当に実際今子育てしている人たちがどんな 状況なのか知らなくてはなりません。私もNPOの端くれとして、子育て中の方々の声を きちっと社会に伝えていかなければいけない立場だと思っているのですが、そういった 現状とそれから地域の施策というのがかみ合っていけるよう期待しています。是非「少 子化対策プラスワン」に関する経済団体の感触など教えていただければと思います。  木村座長  私もそれは伺いたいと思っていました。よろしくお願いします。  吉岡室長  今回の推進法の枠組みにつきまして、各種経済団体といろいろ協議もさせていただい たわけであります。当初は、プラスワンでのこの目標値というのが非常に社会的にイン パクトを与えましたので、すべての企業に全部義務づけるものなのかといったような誤 解もあっていろいろとご意見もあったわけですけれども、そこはそれぞれの企業の実情 に応じて極力盛り込んでいただきたいものであるというふうなご説明をしていく中で、 概ねこの枠組みについてはご了解をいただいたということであります。  ただ、これから各企業の行動計画にどうやってより良いものにしていくのかというの は、やはり最大の課題でありますので、今後指導する推進センターをどういう形で位置 づけていくのか、あるいはそれぞれの個別の企業なりセンターを我々もどうやって支援 していくのかといったことを含めて、更に経済団体と話をしていかなければいけないな と思っております。とりわけ企業が計画を作るにあたって、国のほうで策定指針を来年 度早々にまとめたいと思っておりますので、そういう中でそういった数値目標も含めた 具体的な取組としてどういうことがあり得るのかというものを総ざらいして、企業がよ り良い計画を作ることができるようなことを考えていきたいなと。それには役立ってい く上では当然ながらまたこれは経済団体とも十分話をしていかないといけないと思って おりますので、そういうことで今後ともやっていきたいと思います。  木村座長  ありがとうございました。よろしいですか。今、奥山さんのほうから「少子化対策」 という言葉いってみれば年寄り臭い言葉で、それが今度改められて「次世代育成支援」 となって年寄りも若者も理解できるようになったと、確かに大事なことだと思います。 語感の問題ですが、はじめて積極的に評価する意見が一つでましたが他いかがでしょ う。  山崎委員  何か相当今後大きな事業になりそうな兆しが、今後の推進方策の中に書いてありま す。ということで財政的な措置という話がありました、おそらく企業なり自治体の計画 がでてくると、介護のゴールドプランの例でいうと、計画的に予算をはじめとして資源 配分を子育てに重点的に行うということにならざるを得ないので、いずれは大変な責務 を負うことになる、取組の方針がここに書かれてあるんだろうというふうに思います が、16年度において児童手当の見直し等3点挙がっていますが、これは16年においてと いうことですから、今年新年度15年度に入ればすぐ議論が始まることだと思いますが、 論点なり何か方向についてお考えのことがあれば話していただきたいのですが。  伊原政策企画官  16年で、まずこの児童手当制度の見直しというのを位置づけておりますのは、既に配 偶者特別控除の廃止に伴う措置として与党内でそのための協議機関を設け、児童手当に ついてもその支給対象年齢の引き上げ等を図っていくということが決められているわけ であります。それを受けた形で、私どもこの児童手当制度の見直しというものを16年に やるということで、このための法律改正を、来年には提案していかなければいけないと いうことでございます。  また、山崎先生からご指摘いただきました財政的な問題につきましては、今後、17年 度から自治体等の行動計画が始まっていく中で、どうやって財政的な枠組みを作ってい くのか、財源の確保をやっていくのかということについて、あわせてこれからいろいろ と種々検討していかなければいけない課題であろうと思っております。  山崎委員  児童手当については、最近少しずつ拡充されてきているのですが、いつも予算の時期 のどさくさ紛れで、政治的な決着で積み上げられてきているという感じがするのです が、もう少し全面的に児童手当そのものの上げ方について見直すということがあっても いいのではないかなという気がします。今の児童手当は暫定措置の上に特例を繋いで、 それにまた同じようなものが積み上がるというふうななんとなく感じになっていまし て、しっかりした制度に再編成されることを希望しております。  それから16年においてはという中で、育児休業制度等の見直しとありますがこれも何 か具体的にあるのでしょうか。  伊原政策企画官  まだ具体的な中身についてまで決まっているものではありませんけれども、一つに は、やはり育児休業について請求権化しているわけですが、それでもなお取りにくいと いう環境が指摘されており、そういう環境を是正するために、推進法に基づく企業の取 組とあわせて、制度自体としてもう少し取りやすい制度としていくためにどういう見直 しが必要なのかということを検討していくことになると思っております。  あるいは看護休暇については努力義務にとどまっているものを今後どうするかといっ たことも含めて、考えていかなければいけないと思っています。  木村座長  他、いかがでしょうか。  玄田委員  すみません。ちょっと2つだけ要望に近いものですが、資料5の企業認定のところで す。私、基本的にはこの企業認定に関して一応肯定的で、ちょっと去年1年間に雇用均 等審にずいぶん伺う機会が多かったものですから、こういう認定制度というのは強制の 反対でいいことをしているところに自主的に手を挙げてもらって、それに対して積極的 に肯定していこうというのが比較的受け入れられやすいだろうというとことを思ってい ます。ただISOがいい例なのか、ミシュランの三ツ星がいいかわかりませんけれども、 ちゃんとした取組をすることによっていい人材を確保したい、そういう人に残ってもら いたいという企業ニーズは当然あって、それを何か企業から情報開示するようなシステ ムの中に認定制度が位置づけられれば、それは非常に働き手と企業との間の幸福な出会 いを見いだすものになりうるわけで、この認定ということはかなり本格的に考える余地 がある得るのだと思います。  ただ、やや懸念しているのは、今新しくこういう認定制度を作ることは一種の屋上屋 になるのではないかと。実は今既に認定制度に近いものがずいぶんあって均等推進企業 表彰もしかり、ファミリー・フレンドリー表彰もしかり、今こういう企業を表彰しよう とするものはたくさんあって、また更に増えるとするとおそらく行政としてはそれぞれ 役割が違うからということがあるのでしょうが、いざ企業から来ると一体どこが違うん だということになりかねなくて、せっかくこういうワークライフバランスとかポジティ ブアクション、ファミリー・フレンドリーとか次世代育成支援をやるのだったら、やや 一本化してちゃんとしたもの「これを取る」ということがある種のステータスになるよ うな認定をそろそろ本気で考えないとまたまた行政に対する批判で、縦割りでそんな賞 をいろいろ作っているのでしょうと言われ兼ねないので、この認定については、既存の ものを抜本的に見直すことも含めて是非本格的に考えていったほうが、それのほうが企 業から受け入れやすいというふうな感覚は私にはあります。  もう1つだけ、男性への働き方、見直し方に、長時間労働の話があまり入ってこない で、これはちょっと考えないといけないし、やっぱり去年厚生労働省が出した報告の中 で一番インパクトがあったのは、サービス残業について本格的に調査をしたということ と、このサービス残業調査というのは非常に大きな受け止められていて、もちろん奥さ んが婦人科では5日間休むのももちろん必要でしょうけれど、それ以外でもっと今の働 き方というのがあまりにも正社員男性に対する長時間労働がかかっていることは、間接 的にも子どもを持つということの懸念材料になっていることがあると思うのです。  私はそういう意味では今年は長時間労働に対する積極的な是正をするということに関 しては追い風が吹いている年だと思うのです。是非それについても男性の働き方を見直 すということも含めていくべきだし、女性も男性並に長時間働けという風潮がなくなる ためにも、今年は是非この労働時間の見直しということも働き方の見直しの中で考慮す べきではないかと思います。印象がありました要望です。  木村座長  ありがとうございました。  黒澤委員  今、玄田委員からお話がございました均等ですとかファミリー・フレンドリーなど 色々な賞があるという話ですが、それに付け加えて1点だけ申し上げさせていただきま す。実は、私はファミリー・フレンドリーの指標作成のほうの委員に関わっておりまし て、そこで非常に問題になったのが、何をファミリー・フレンドリーの指標にするのか という点です。例えば非常に極端なことを言うと、一つの企業の中で女性がある特定の 職務に限定されているような職場でも、そこで女性が多いがために女性が就業継続しや すいような制度は整っていたとします。このように均等度は非常に低いような職場で あっても、ファミリー・フレンドリーの指標というのは非常に高くなってしまうように 作ってしまったのです。しかしながら、ここでこの次世代の考え方、育成の考え方でい いますと、例えば男性を含めた働き方の見直しですとか多様な働き方ですとか、仕事と 子育ての両立ということを考えますと、実はファミリーフレンドリーだけではなくて、 やはり均等というものも考えなくてはいけない。逆に均等のほうの指標でもやはりファ ミリー・フレンドリーのところが十分に考慮されていない部分もあると思うので、これ は是非先ほど玄田先生おっしゃったように、ブリッジした究極の指標というものを作成 していただければということを重ねてお願い申し上げます。  大日向委員  今お二方がおっしゃったことに全く同感なんですが、例えばファミリー・フレンドリ ー企業で表彰を受けている企業に時々伺うのですが、ほとんど女性社員が両立支援で助 かったと言っています。男性も同じような発言をできる環境を整えていかないと女性の 雇用環境も全然変わらないと思います。例えばノルウェーでは「パパ・クォーター」と いって、男性しか取得できない1ヶ月間の育児休業制度を設けています。いわゆる「愛 ある強制」といわれてますが、そういうようにある意味平等じゃない形で男性が育休が 取れるような方策もやっていくなど、10%という数値目標を掲げることにプラスしてそ うした工夫が必要だと思いました。  それからもう1点、3ページ目のところに、子育て支援のところでシルバー人材の活 用ということがありまして、これは大変いい点だと、今までなかったポイントだと思い ます。今、地域にいらっしゃる定年後の男性とか女性、中高年の方々が子育て支援とし て活躍する動きがNPO等で始まっています。それを積極的に支援していくということ、 4億円の財源をつけていただいていますが、これなどは本当にある種の一つの目玉だと 思いますので大変素晴らしいと思いました。  小西委員  すみません、遅れてきて申し訳ありませんでした。私は、だいぶここのメンバーの方 と考え方が違うのかもしれませんが、そういう意味ではあまり発言は差し控えておくべ きかなと若干するのですけれど。一つは、いろんな目標では10%の育児休業であるとか いうのがでてくるわけで、それでインパクトが重要だというお話がありましたけれど、 私はもう少し実態経済というかあるいは少子化でもいいですし、人口でもいいですがそ れへのインパクトというのもきちっと考えておいたほうがいいのかなと思っています。  例えば、この目的でいいますと、少子化の流れを変えたいと書いてあるわけです。 じゃあ具体的にどれくらい変えたいのかということですね。例えば合計特殊出生率をど れぐらいまで上げるんだとかいう目標をもし何かお持ちであるならばお聞かせいただき たいと思いますし、またここの政策によってそれがどれぐらい可能なのかということも 実際問題としてどうなのかという感じがちょっと気になるわけです。  子どもが減っていくという流れは、ある種のライフスタイルの選択であって、今の若 い人たちはおそらく、例えば自転車の前にも後にも子どもを乗せて背中にも背負って マーケットに行ったりしたいなんて思っていないと思うのです。そういう人生を選びた いと思っているわけではおそらくないと思うのです。おそらくは、きれいな紺色のスー ツを着て幼稚園の入学試験に臨むようなお母さんになりたいと思っている人がたくさん いるんじゃないかなと思うのです。その時におそらく手を引いている子どもは1人か2 人ぐらいしかいないのですね。そういう意味で考えますと、確かにいろんな少子化ある いは次世代育成支援という政策が10年間、僕の観点からすれば女性は働いてもらうとい う意味で重要なんですけれど子どもを増やすという意味ではなくてですね。逆にこう いったいろんな政策をとることがむしろ子どもを増やすことにあまり繋がらないで、い ろんな教育だとかあまり関係のないといいますか、直接は経済的にはインパクトのない ような方向に向かってしまうのではないかなという懸念が若干はあるわけです。  1つ遅れてきたので伺いたいのですが、奨学金ですね。これはその資料を拝見します と大学に行く奨学金でないかなという感じがするんですけれど、その教育に伴う経済的 負担を軽減すると、要するに教育に伴う経済的負担がたくさんあるので仕事をしながら 子どもが産めないとか、あるいは子どもの数が減っているとかというような趣旨の話な のかなと思うわけですが、これは半分冗談みたいなものですけれど、今の日本の大学生 といのは別に自分で稼いでほとんど大学へ行かないでも卒業できてしまうわけです。そ ういう意味では、やろうと思えば自立して学べるような仕組みになっているわけです。 奨学金なくたって平気なんじゃないかなという気がするのです。ということは、逆に言 うと奨学金制度を充実させたとしてもそんなに、親はお金を渡すかもしれませんけれど も、逆に若者が自立して学んでとかいうふうな話にどれぐらいなるのかなというのが一 つ気になっていて、逆に言うと今の奨学金制度がどれぐらい若者の自立した勉強という か、それを阻害しているのかなというのがちょっと気になるなという感じがすると。  それからもう1つ、それが話の中ででてくるのは若い世代の親離れを促進するという ふうに書いてあるわけですけれど、これも決して高齢者が同居するのと違って寄生虫と いうと怒られますけれど、あれは親が裕福だからですね。親が裕福で子どもを置いてお けるわけですね、そういう意味で奨学金を持っていたって別にもらったからといって自 立しろとか思わなくてもっと裕福なるからもっと一緒に住んでしまうのではないかなと いう気が何となくするのです。別にお答えいただかなくても結構ですが、そんな感じで す。  木村座長  今のお話は、お金増やしてもしゃんとしないということですね。  小西委員  あんまり変わらないんじゃないかなという気がします。  吉岡室長  前段ご指摘がございました目標値みたいなものをどう考えるのかということですけれ ども、この中間とりまとめの際にも「産む産まないは個人の自由」ということを留意点 としてしっかりと押さえておくように、というご指摘をいただいたわけです。そういう 中で数字を掲げるということには、非常に慎重にならないといけないというふうに思っ ていますが、私どもこの子育て支援ということでやっておりますことについて一つ数字 として申し上げれば、今結婚している夫婦の平均の子ども数は2.2人ですけれども、理 想としている子ども数としては2.5人ということで、やはり2.2を2.5に引き上げるとい うことは一つの私どもとしてのやっていかなければいけないことであろうと思っている わけです。これを仮に、合計特殊出生率に換算するとどうなるかということですけれど も、様々な前提を行わなくてはいけませんけれども、2.5の社会が実現できれば合計特 殊出生率はおよそ1.52、今の1.33からスウェーデン並の数字になるということは申し上 げられるということです。  伊原政策企画官  それから非常に興味深い奨学金の話が出たのですけれども、事実だけちょっとお話申 し上げますと、今手元にございませんが、子どもが2人いて親が2人という標準世帯と 呼ばれる50代前半の方々の家計の状況を見ますと、単年度マイナス(赤字)になっていま す。理由は何かと申しますと、高額な教育費を負担していることが挙げられています。 今後だんだん賃金も伸びない中で、将来を見渡していくと今のように親がかりで果たし て高等教育を誰もがだいたい受けられるようになれるかどうかというあたりについて、 考えなければいけない時期に来ているのではないかと、このように考えられるのではな いかと思います。  山田委員  「寄生虫」の産みの親としてちょっと反論と言うかさせていただきたいのは、やはり 調査をしましても、子どもを持つ親がもう一人産めない理由のナンバーワンが子育てに お金がかかるからと、そして子育てにお金がかかるというときに、アメリカでは子ども が中学になったのでお金がかからなくなったと、アメリカではベビーシッター費用に主 にかかりますので言うのですけれども、日本の場合は、ほぼ確実に高等学校なり大学な りの授業料等で出さざるを得ないと思ってしまっているわけです。そこを変えない限 り、つまりもう何人産んでも大学は自立して行くもんだという形にしない限り、親が負 担するから奨学金は遊んでしまうのだというような議論をずっとしているから、逆に、 これから子どもを持とうとする親がますます子どもを絞ろうとする傾向が強くなるので はないかと私は調査結果等を見ると思っております。  さらに50代が平均的に下がっているとありますけれども、近年は50代ぐらいの人も年 収格差が広がっています。裕福な人は何人持ってもいける、だけどもうちは収入が少な いんだから大学に行かせるんだったら1人しかならないといったような意見も結構聞か れます。更に、今子どもを産む若い人が10年後、20年後になったときに、いや俺のとこ ろは裕福だから奨学金なくても大丈夫だと言えるとはとても考えていないというところ を前提にご議論いただきたいというのが私の願いでございます。  残間委員  今朝ブッシュ大統領の最後通告を聞いて来たこともあって、「こういうことをやって いてもやっぱり無理だろうな」という思いに捕らわれてしまったので、発言をしないで 帰ろうかと思ったのですが、でも今回のとりまとめは近年になく、まあ画期的といわれ るものだと思いますので、時限立法で10年なんて書いてありましたが、このままやれば どのぐらいの時期から数字に表れると厚生労働省は思っているのか、本当のところを聞 いてみたいと思いました。ただ一つこの会の冒頭でも言いましたが、なぜ子どもを増や したいのかということと、増えるとどんないい社会になるのかということを自信を持っ て言っているようにはみえないというあたりは、まだ変わっていないように思います。  何故、子どもが必要で、どのくらいの子どもが必要かというのもまだはっきり言って はいないように感じます。ほどなく戦争が始まるかもしれないという世の中の情勢を見 ていると、私たちがこういうことを考えていても世の中が不安定で、みんな全然幸せ じゃないというときに、子どもをもってほしいと言ってもなかなか難しいし、そう思え ば思うほど、せっかくこういうものを作ったのならば、子どもが増えたらどんな素敵な 社会になるのだろうということを積極的に言っていただきたいなと思います。  それからたまたま先月アメリカのローンのことを調査に行っていたのですが、今の山 田先生の話ではないですが、向こうは豊かな家の子どもでも大学へ行くときは自分で ローンを組みます。最初のローンは、学生になったときに組んで、いい学校へ行けばそ の後その人が大人になったときのカードまで繋がるという、アメリカの銀行の一種の営 業システムも絡んでいるのですが。また、アメリカのローン観というか人にお金を借り るのは悪いことではないという感覚、むしろローンを借りると一人前と言われるような 金銭感覚も関係あるとは思いますが、日本でも自己責任という時には、子どもの学資は 子ども自身に払わせるというあたりから考え方を変えていくのが一番わかりやすくてス ムーズな移行ができるんじゃないかという気がしました。少子化と直接繋がらないかも しれないけれども、インディペンデントで一人ひとりが自分の将来を考えるためにも、 特に大学生ぐらいになったら「自分のことは、自分でやりましょう」というふうになる と、親の負担も軽減して、子どもの数が増えてもそんなに経済負担がかからないという ことになるので、このへんはパラサイト以前の問題かもしれませんが、若い人の金銭感 覚を変えていくというようなこともどこかに忍ばせておいてほしいと思って聞いており ました。  木村座長  はい、ありがとうございました。一通りご意見を頂戴しましたが、何かもう言い残す ことはありませんでしょうか。  この中間とりまとめは、形の上では中間まとめであったわけですが、要するに私たち の任期の途中ででたから中間とりまとめという形になっていますが、しかし皆様方の意 見をとりまとめた結果でのまとめでございました。それに沿って、厚生労働省のほうで 本来これは大臣の私的諮問機関でありますが、ともかくも誠実に対応してくださって フォローアップしていただいて、次世代育成支援対策という形でまとめていただいたと いうことは大きく評価していいのではないか、我々が言い放しですまなかったわけで、 その点は良かったのではないかと思っています。  同時に、自治体及び企業に対して育成支援のための行動計画を義務化したと、その反 応はどうか私も気になるのですが、これはまた非常に今後にとりまして画期的なことで はないかと、それによってつまり子育てについてそれぞれ覚悟せよと自治体もそれから 企業もですね、そういう厚生労働省なりの意思表明だと思いますのでそれはそれで次の ステップの大きな一歩だったというふうに評価していいと思います。  確かに皆様方おっしゃったようにパンチが効いていないとか、お金だけで子どもを産 むか、産まないかいろいろ問題はあるのですが、そういう議論はあると思いますが、し かしいわゆる先ほど案内しました奥山さんからお話がありましたように、年寄りから見 ての少子化対策ということではなくて、年寄りはもちろんだが今子どもを産んでいる世 代あるいはこれから子どもを産むであろう世代、そうした人たちにとっても共感のある 「次世代育成支援対策」とこういうふうに名称が変わったといいますか、新しい名称が でてきたことは評価していいのではないかと思っております。  世の中、これからどうなるかそれが非常にわからなくて、それは国もわからないし企 業もわからないし、個人もわからない。不安がいっぱいというその不安をお金で解消す るということは難しいのではないかと思いますが、それだけに先ほど残間さんから子ど もが増えたらどうなるか、何がいいんだというお話がありましたけれども、自分の安心 できる頼りになるものが身近にいるということは、これはこれからひとりぼっちで生き る生き方よりははるかに大事なことではないかと、それが国にとって良いか悪いかそう いうことは別としまして、誰もがそういう安心できる者と傍に一緒にいたいという気持 が非常に強くなるのではないかと、不安が大きくなればなるだけですね。という気持は 持っております。  いずれにいたしましても、今日のこの会議を持ちまして、「少子化社会を考える懇談 会」は終了とさせていただきたいと思います。委員の皆様方、今日も非常にいいご意見 をたくさん頂戴いたしましたが、そういう意見を基に厚生労働省の皆様にも大いにこれ から頑張っていただきたいと思いますが、同時に皆様方もこの少子化なり子育てなりの 問題について今後より一層積極的に各方面においてご活躍くださることを願って止まな い次第でございます。  ということで、この懇談会をこれで終了させていただきます。ありがとうございまし た。                                      以上     (照会先)    厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室     政策第一係長 野村     政策第一係  木寺    電話:03−5253−1111(内7692)