03/03/13 第16回労働政策審議会 雇用均等分科会            第16回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成15年3月13日(木)9:30〜11:00 2 場所: 厚生労働省省議室9階 3 出席者:    労側委員:岡本委員、秋元委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:前田委員、志村委員、遠藤委員、山崎委員    公益委員:若菜会長、樋口委員、今田委員、佐藤(博)委員 ○分科会長  ただいまから第16回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日は渥美委 員、奥山委員、吉川委員がご欠席です。  それでは早速、議事に入らせていただきます。本日の議題は前回に引き続きまして、 「今後のパートタイム労働対策について」です。前回2月27日の均等分科会では、その 前の1月31日に提示しました報告案たたき台を労使のご意見を踏まえて、公益委員とし て修正したものについてご議論をいただきました。その際に出されたご意見を踏まえ て、本日の報告の取りまとめに向けて公益委員としては事務局を通じまして、調整して 努力を重ねてきました。しかし、まだ十分ではないということがありまして、取りまと めに向けて再度調整をしたいと考えています。そこで本日はお手元に、前回の議論を踏 まえて修正した案文をお配りしていますので、まずその修正箇所について事務局から説 明をしていただいて、そのあとで報告案について労使のご意見をいただきたいと思って いますので、よろしくお願いします。それでは、最初に事務局から説明をお願いしま す。 ○事務局  2月27日の分科会の議論を踏まえて、報告案を修正した箇所についてご説明させてい ただきます。2月27日からの修正箇所は4カ所です。1カ所目は、1頁の前文の第2パ ラグラフの最後の文です。ここはパートタイム労働者と通常の労働者の平均所定内給与 の比較に対して、職種の違いを考慮せずに一律に格差が拡大するような記述は不適切と のご指摘もあったことを踏まえて、「職種による違いがみられるものの、マクロの数字 でみて」という文言を追加しています。2カ所目が3頁のいちばん上で、前回は「今後 とも必要な法的整備を着実に行ってゆくこととするが」となっていましたが、これに対 しまして法的整備を行う主体は国会であるとのご指摘もありまして、それを踏まえて 「今後とも必要な法的整備が着実に行われてゆくべきであるが」に修正してあります。  3カ所目は4頁に「(5)その他」とありますが、そのあとに2に短時間正社員の記 述がありました。これについては「多様な働き方とワークシェアリングに関する政労使 合意」においても、短時間正社員については言及されていまして、現在、労使で議論さ れているということで、前回の分科会では労使で合意された定義を用いるべきというご 指摘がありました。しかしながら現在のところ、まだ労使で定義について合意に向けて の検討中ということでもありまして、また短時間正社員については国でモデル事業を実 施することによりまして、労使に情報提供をしていくというものです。そういったこと から2という項目を立てるのではなくて、1の「(5)その他」にある「公正な処遇の 実現に向けた取組に関する企業の好事例に関して情報収集を行い、労使団体等に情報提 供をし」というところで読み込むことにしました。その結果、項目2の内容が削除され たということで、2以下の項目番号が繰り上がっていくということです。4カ所目は、 6頁の税・社会保険制度についての言及ですが、そこの最終パラグラフの最後の文言で す。これについては年金保険、医療保険の見直しは他の審議会で議論されている問題で あると。このように他の審議会で議論されているものに対する記述というのは、5頁の 3の(2)で有期労働契約について労働条件分科会にかかる記述というのがありますの で、それと合わせるべきとのご指摘を踏まえて、ここでの記述も「検討を進めるべきも のと考えられる」という末尾のところを、「国民的な議論の下に、検討が行われること が期待される」と修正したものです。修正は以上です。 ○分科会長  公益委員としては最終的な取りまとめに向けて、労使双方の委員に最大限の歩み寄り をしていただくということを期待していますが、本日最終取りまとめに向けて報告案に ついてポイントを絞って、労使それぞれからご意見をお願いしたいと思います。どちら からでもどうぞ。 ○労側委員  27日までに労使から書面で意見を出してほしいということで出させていただいていた 中で、いま報告がありましたように前回もそうですが、いくつかは文章修正等短時間正 社員について、定義が明らかでないという問題は今回、12月の政労使の合意の項目のと ころには短時間正社員とありますが、これは事実ということでそういう域は越えていな いですが、中身的にはモデル事業にかかわる短時間正社員問題について文言がなくなっ たということがあるのですが、ポイントからしますと今回当分科会の審議に求められた 課題というのは、10年も続いた努力義務規定にまさに法律に欠陥があるから、フルタイ ム労働者とパートタイム労働者の処遇格差が一向に改善しないことに起因しているとい うことで、直ちに均等待遇の法制化を当分科会は報告に盛り込むべきであることをずっ と主張してきましたが、いまなおこの報告にはその記述は全くありませんし、そういう 意味では昨年9月以降議論してきたものが、いったい何であったのかなと。公益委員の 皆さんは3条に問題があるのではなくて、現状の指針に問題があるのだとおっしゃる し、したがって素晴らしい指針ができるのだから、努力義務規定も大きく格差を改善し て前進するのだとおっしゃる。では、なぜ前進するのかがどれだけ記載されるかについ て、前回お伺いしたのに返答はありませんでした。法律の仕組では事業主の方に周知徹 底を図りながら、それによっていわば改善に向けてなかなか努力しない場合には勧告と いう仕組もあるのですが、本当に勧告というものをどこまで使うのか。例えば均等法な んかにも同じような仕組があるが、どれだけ勧告しているのか。努力義務規定の世界に おける勧告の数と、義務規定後の勧告の数を参考になれば教えていただきたいのです が、多分私の記憶ではそんなに勧告という仕組を使って、やっていることではないと思 います。いわば指針が良くなったのだから、それを使ってこのモノサシもできたのだか ら勧告するのだということをはっきり言ってほしいし、指針が良くなったから前進とい うことの自信は持てないし期待も持てないことについて、できれば事務局からどんなふ うに周知徹底を図って、その後どうしてそれをやられる理由に対してちゃんとやるのか という勧告の仕組ついて、いままでの実績を含めて明らかにしていくことが必要ではな いかと思います。  もう1つは、使用者の方々が雇用管理について行政はあまり口を出すなと、ずっと 言ってきているわけですね。それを越えて勧告までするということで、はかっていくと なると、これはちょっと違うのですが事業主の方々にお聞きしたいのは、逆に努力義務 規定さえ嫌っている。加えて私どもが言っている強制力を持った義務規定を嫌う。努力 義務自体と強制力まで義務規定の、いわば事業主側としての受け止め方は、どう違うの かをお聞きしたいのです。どうも公益側の先生方は、すごくあるのだと言っている。受 け手の事業主は余計なことを言うなというところを、こういう現状の中で前へ行くのだ といくら言われても、良くなるのは全く確信できない。したがって、私どもとしては強 制力を義務化する。短時間労働なりを理由にした差別を禁止するという均等待遇の法制 化についての強制力を持ったものにしないと、もう10年も経っているわけですからこれ また続けるというのは異常だと思うのです。全くない中での努力義務規定でかつ指針な らわかるのですが、10年間やってきて、また改正指針をやってみて周知を図ってまた調 査をして、必要な措置は引き続き指針が続くかもしれないし、法律もあり得るというこ とを含んだ必要な措置で。うまくいかなかった場合でも、私は法律だと思っている、う まくいっても事業主の方がそれを受け入れて改善する。あとの次の世界は多分法制化だ と思うのですが、それさえも明らかにしない中で会長が申したお互い寄せ合ってといっ ても、私どもとしては納得できないし賛成しかねる。いま期待しているのは、まさにそ こだと思うのです。それに答えるのはこの分科会の役割ですから、そこも是非この報告 に盛り込むべきですし、盛り込まない限りは私どもは反対しかないということです。 ○分科会長  いま労側のほうから問題が出されました。これについて公益の先生方からご意見があ りましたらお願いします。勧告の仕組とかは行政に答えていただきます。 ○公益委員  どういう形でこの指針を取り入れることによって前進していくのだろうか。具体的に は法律ができ、指針ができても、どう運用していくかに大きく左右されるだろうと思う のです。現在までも現行パート法においても、3条で努力義務という形で均衡の考慮に 努めるというものが入ってきたわけですが、いったい何をもって均衡と呼ぶのかの基準 がなかったために、ある意味では行政はフリーハンドで介入することができる反面、逆 にそこが明記されていないために、どういう形でどういう場合に介入したらいいかがわ からなかったのだと思います。これは現行パート法ですから、そこでの努力義務が既に 行政に対しては、そういった介入したものを認めるという法律になっているわけです が、今回はその内容の基準をはっきりさせることによって、それがやりやすくなるので はないか。逆に労使共に、ここでいままではいろいろな意見が闘わされてきたと思いま すが、ここで一定の方向を打ち出すということで議論をしやすくなる素地を用意できる のではないかと思っていて、その点前進するのではないかと期待しているところです。 ○事務局  努力義務規定と行政の勧告権についてお尋ねがありましたので、男女雇用機会均等法 の例でお話をさせていただきたいと思います。男女雇用機会均等法は昭和61年に制定さ れまして、その時点では募集、採用、配置、昇進は均等取り扱いの努力義務でした。そ れ以外の教育訓練、福利厚生、定年退職は当初から差別的な取り扱いを禁止する規定で した。このうち努力義務規定の部分についてはそれぞれの項目について、事業主に何を 講じていただくかを具体的に明示をする指針が当初からありました。平成11年から改正 された男女雇用機会均等法が施行になっていますが、改正均等法では努力義務規定であ った部分もすべて禁止規定になっているということです。  お尋ねの点についてお答えすれば、努力義務規定であった時代の行政指導のことです が、行政指導の権限としては助言、指導、勧告の3つのレベルがありまして、通常のケ ースですと例えば女性労働者が雇用均等室のほうに、当時は婦人少年室でしたが、これ は均等法に照らして問題ではないかと相談に来ます。自分は女性であるということで不 利な取り扱いを受けているという相談があった場合いきなり指導から始まることもあり ますが、通常は助言、指導、勧告と段階を踏んで行政指導をします。ほとんどすべての ケースで助言、指導をやった段階で改善が見られました。したがって勧告までいったケ ースは、数としては極めて少なかったと思いますが、それは勧告権限を発動しにくかっ たということではなくて、行政が介入をして助言、指導をする過程でほとんどすべての ケースは改善したということであったと思います。以上、均等法の施行を例にとりまし て努力義務規定と助言、指導、勧告の関係を簡単にご報告しました。 ○労側委員  事業主の方々に努力義務規定と義務規定はどう思ったりするのか。努力義務規定につ いても改善しない、改正するんだといままで述べていたと思うのですが、いま公益の方 から基準はできるのだから、ちゃんとできるのだと。ついでに事務局も助言、指導、勧 告でやるのだとおっしゃっていますが、その辺はどうですか。 ○使側委員  いまの事務局の説明にありましたように、使用者側としても努力義務規定が設けられ ること自体でも、かなり重いと受け止めていて、だからこそ今回の厚生労働大臣告示に ついても、かなり真剣に我々としては考えているところです。労働側からは法律を禁止 規定によって均等待遇を規制すべきだという話がありましたが、それを受け止める事業 主としては、自分の会社の中でどのように生かすかについては最終的には労使の話し合 い、あるいは企業側の経営負担ということもありますので、この辺についてはこれまで 繰り返し述べておりますような、自主的に検討に取り組んでいくべき課題であると認識 しているところです。以上です。 ○分科会長  ほかの使用者側の方で、ご意見がありましたらどうぞ。 ○使側委員  努力義務と義務規定の関係ですが、当面は労側委員や事務局がおっしゃったように必 要があれば義務規定にも同調していっているわけですから、当面は努力義務でいって、 法律的にどうしてもいろいろな事情を見て、そういう法律的な規定が必要ということに なれば、それはまたその段階で必ず拒むわけではなくて、同じ場所にいてまたそれなり の議論をして進めていくことでいままでもきているわけですから、そこは十分にご理解 をいただきたいと思います。今回のものでもある程度指針ができれば、かなりの1歩前 進だと思います。こういうものを期待している事業者もいるわけですから、そういう事 業者がこういうものを見て、自分たちもパートに対するいろいろな改善策を講じてやる ことは当然1歩前進の1つの過程だと思います。やはりこの状況を少し見ていただい て、そのあとまたその状況に応じていろいろと議論することは必要ではないかと思いま す。 ○公益委員  努力義務規定でも困るというお話があったわけですが、経営側も公正処遇に向けた取 り組みは大事だと、ずっと言われていたと思うのです。今回はどういう方向に進めるべ きかの方向を示したものですね。その方向を示されたことも困るので、そういう方向に 向けて努力してくださいということも困るのだと。つまり、そういう意味ではやらない ということまで言われるのか、その方向を示して、その中で努力してください。それぞ れ置かれた条件がある、1歩でも進んでくださいという仕組なわけです。それもやらな いという趣旨なのか。 ○使側委員  こちら側としては、少なくとも3頁の(1)(2)については努力をしましょうとい うことで申し上げてきていますように、例えば(1)でしたら新たにイ、ロ、ハという 取り組みの指針を設けるということで、(2)はパートタイム労働者について、さまざ まな要素に応じて処遇するための措置を実施する。この辺を努力することを通じて、現 実的な公正な処遇が進んでいくのではないかと考えてきているということです。何もし ないわけではないです。 ○公益委員  (3)以降はどうですか。 ○使側委員  (3)については、これまで採用に関わる問題ですので、その辺のことを阻害しない ということであれば了解しましょうという考え方で、いま私はいるところです。ただし (4)については、なお問題点があると私としては思っていまして、なお賛成できない という考え方です。 ○分科会長  いまおっしゃった(4)の問題点というのは、具体的にはどういうことをおっしゃっ ているのでしょうか。 ○使側委員  例えばということですが、「労働者の人材活用の仕組みや運用等」という書き方をさ れていらっしゃると思うのですが、企業側から見たときにこれが外形的な判断基準にな ってしまっているのではないかとか、従業員の個々人の企業に対する貢献度、あるいは 企業側の期待といったことにその違いがあると私どもは考えています。それによって処 遇のあり方を決めている企業があるということで、この辺のことがはっきりとわからな いということでは、なお問題があって企業側の混乱を起こしかねないということで1つ の例示なのですが、問題が多いと考えているということです。 ○使側委員  いまのことに関連して、私は(1)(2)が今回できるということは、非常に進歩だ と思っています。ここのあたりは使用者の側のほうもやっていこうではないかと言って いるわけで、これからパートタイマーの方々と会社、経営者のほうでいろいろな議論を していこうということだと思うのですが、ここについてはそのとおりと思います。しか し、実際に議論をしていくときにここの場では1つのルールというので、ここに書いて おいたほうが議論がしやすいというご意見なのだと思いますが、実務を担当している人 たちからすれば、これは多分パートタイマーの方々の側、労のほうも実際に議論をして いくところでは具体的に企業の中で、どれが同じ職務なのだとか、どれが違うのだとか の議論をしていかざるを得ないわけですが、そこのところで最初からこういう視点で見 ろと、こういうことよりも、私はその会社の実態で、こういうふうに区切っていくとど うだろうと。例えばいまの通常の労働者といいますか、フルタイマーの方々の職務区 分、職務記述書といいますか、そういうのは案外大まかにできているのではないかと思 いますが、パートタイマーの方々が担当している仕事というのは案外もっと細分化され たものであって、いままでの職務記述書というのをお互いに見直していかなければいけ ないなどが起きるのだろうと思うのです。  例えば販売員と事務という分け方みたいなものが、実は販売員と言えば誰も販売員で あるわけですが、その販売の中身の仕事を見ていくとちょっと違うところがあるのでは ないかとか、そういう議論をこの労使の(1)のロのようなところで話し合いをしても らう。そういうものを積み重ねていくと、「こういうところが違うのかな、こういうと ころが同じなのかな」というようなことがお互いにわかっていくのだろうと思います。 そういうことを重ねていくことが、より良い労働条件を作る基なのだろうと思いまし て、何かの基準に先に合わせて国でこういう指針なのだからというのを先に出して議論 するよりは、自分たちの身の回りのことを議論していくことのほうが、そしてそういう 議論の積み重ねによって行政のほうもいろいろな例をみんなに広めるとおっしゃってい るわけですから、いわば判例のように基準が積み重なっていく。そういう中で次の段階 に進むほうが実際の現場で、企業の中で、労使のためにはもっと進んだいいものができ るのではないかという観点から、まだ自由に議論をすることを進めていってもらうほう が、いまの段階ではいいのではないかと思っています。 ○公益委員  労使のご意見を伺っていて改めて感じたことですが、基本的に極めて重要なことが、 今回の意義というのはルールの明示化ということというのを再確認しました。これにつ いての評価がいろいろと異なると。労働側のご意見は、こうした指針の効果について非 常に懸念を持っておられます。努力ということのレベルで留まっていることで、こうし た指針の改正をやったとしても効果がないのではないかということにあります。  我々の理解は、これまでそれなりのパート法の効果はもちろんあったわけですが、均 衡に関して必ずしも期待されたような効果がなかった最大の問題は、努力義務というこ とよりも均衡ということを明確に明示することをしなかった。そのルール化がなかった ことによる問題点が、最大の問題であると理解していまして、今回このルールを明らか にすることによって、労働側、使用者側が何をもって均衡と考えるか、そのためにどの ようなことが必要かということについて議論のできる場、そのようなものが与えられる という。  この意義というのは、もちろん法制化ということによる実効性、強制力ということに 比べても、匹敵するくらいの現実的に職場において均衡を実現していく上での効果につ いては、非常に大きなものであると期待しているわけです。それがないと言われたらそ れまでなのですが。  もう一方、いま使用者側のご意見を伺ったのですが、特に(4)のルールの明示化に ついて拘っていて、使側委員のご意見も非常にわかるような気がします。ご意見として は、こうしたものを明らかにしないで自由に職場でとおっしゃっているのですが、実際 にお聞きしていると、自由に考えていく場合の基になっているのは何なのかというと、 おっしゃっていることはこういう職務を同一職務かどうか、そういう同一の場合、違っ た場合にどのような処遇をすればいいかを自由に考えていくということなのですから、 ある意味ではこうした大きなルールがあって、初めて職場における均衡の議論が中身の あるものになっていくということをおっしゃっていることと同じだと私は解釈していま す。  何もなくて、均衡を実現しましょう、均衡処遇をしましょう、労使で職場で議論をし ましょう、改善しましょうという状態が、これまでだったのだと思うのです。そこに考 えていく上での1つの基準というようなものが提示されることによって、これは我々が しつこく公益が言っているように、非常におおまかなルールなわけですから、それぞれ 同一か同一でないかとか、どこが違うのかというのは、それぞれの職場の実態に依存す るわけです。実態はそれぞれ働いている人や使用者側が、この仕事、あの仕事という、 特殊な特性というものを踏まえて議論することになるわけです。その場合にも、ただ一 般的にどうかという議論をするのではなく、(4)に示しているような1つの考え方に 従って、議論あるいは蓄積をしていくことになるわけです。  明らかに今回の議論、指針の方向として極めて重要なのはルールの明示化というとこ ろなのだと思います。そういう意味で、ルールの明示化についての評価がいろいろ分か れているし、ある意味では誤解もあると思うので、改めてルールの明示化をすることの メリットということが労働側にも、使用者側にも十分にあるということを主張したいと 思います。 ○労側委員  いまの公益委員の話、また元に戻っての議論ですが、こういう議論は佐藤博樹先生が 座長にあった研究会報告なども、事務局もこれを土台のようなことをおっしゃって、私 どもは1つの資料という前提を付けて議論をした中に、いわば労使という枠組みでこの 10年間パート労働問題については前進を見なかった。労使では駄目なのだということを 総括しているわけです。  だから、いま公益委員が労使という言葉を使っていたので、労使の労、使というのは 何なのかということからすると、その機能が働いていない。努力義務規定の世界だった というのが、研究会報告に出ているわけです。そこをどう考えるか。  残念ながらパート労働者というのは組織率が2.7%、28万人しかいません。中小の分 野が非常に多い。そこにおける労使というのは、労使機能が働いているかという、つま りお互いが要求を出して、あるいは団体交渉をして決めるという仕組みが機能している かどうかといったら、機能していないと。だから1つの新しい法律を作ったほうがいい というのが、法制化グループを立ち上げた背景だと私は認識しているわけです。  一般的に、抽象的に労使という言葉、そういう意味では正しいかもしれません。実際 に労使という機能が行われているかということの事実に着目して議論をしないと駄目な のではないかということなのです。  そこが私どもとしては、この前に書面でも出しましたが、10年間の総括が違うので す。指針は立派だと、問題がないという公益の皆さんと。我々は法律に問題がありと、 こうやって10年も続いたではないか。いまさらで悪いけれども、指針が悪かったという ことを開き直って言う。  そうではないと。加えてこれから増えていく中で、まだ指針でいきましょうというの は、本当にこれからの労働市場の不均衡をどう考えるのか。そういうふうに先取りする ということも必要ですから、その点が私は研究会報告にも後退しますし、そこの立場に 立つ公益委員の皆様もどういう説明をしてくれるのか、全然私は理解できません。  公益の皆さんは報告の前の議論は法制化は必要だと言っていたわけです。わざわざ報 告の中に法制化の道筋を書いてくださいと、何で書けないのですか。法制化問題は何も 書いていないではないですか。いままでの議論は何だったのか。使用者側の皆さんは一 貫しているのですが、公益の皆さんが法制化というのを言ったではないですか、何で書 けないのですか。5年後にやりますというのでもいいわけです。そこに向かった指針で すと言えば全然迫力が違ってくるのです。行政だって違ってきます。それを書かずに、 どっちに向かっている方針かわからないわけです。この指針がいくら立派だといって も。  加えて使用者側は余計なことをするなと言っているわけです。(4)は目玉ではない ですか、それがノーと言っているわけです。私らもたくさん言われているわけです。そ れでは私は絶対に納得できないです。 ○労側委員  いま労側委員が言われたことと重なるところがありますが、そもそもこの議論が審議 会で始まった背景、それから佐藤(博)委員に座長を務めていただいたパート労働研究 会がスタートし、まとめてくださった背景は、1993年のパート労働法ができた当時と違 うのだと。当時とは違う、いまやらなければいけないということで、この議論が始まっ たと思っているのです。  放置できないから何とかしないとということで、日本の労働市場のあり方全体、暮ら し方を含めて、同じにするということではなくて、同じ仕事だったら6時間か8時間の 差だけではないかということを言っているだけであって、水準のことの議論もいろいろ とありましたが、水準を同じにという議論をしてきたわけではなくて、パートタイマー だからという差別をやめましょうということの議論をずっとしてきたわけです。  1993年の指針の中には均等の基準がなかったからいま作りましょうとおっしゃるので すが、その当時のスピードと、いまパートの人たちが増えているスピードとは全く違っ て、どんどん増えていく中でこのままではいけないからということで、この議論が始ま ったと思いますし、まさにやらなければいけないと思います。この議論の中で、あるべ き道筋の最終目標は法制化プラスガイドラインと。ただ、それはすぐにはできないかも しれませんから、そのためには何をしていくかという議論をずっとしてきました。その ことについては公益委員の皆さんも、そうあるべきとずっとおっしゃってくださってい たと思っているのです。  そのことについて、とりあえず指針だけでということについては、いまの環境とか、 使用者側のいろいろな思い、意見を出されていること、経団連が見解を示されているこ との中で、本当にいまの環境の中で労使でやっていけるかについては非常に問題があ り、個別の紛争がこれだけどんどん増えていく中で、そういうこともなくきちんと公正 なルールをつくりましょうという中での議論だと思いますから、もう少し明確にあるべ き姿ということを、この分科会としては示していくべきだと思います。 ○公益委員  労使それぞれの主張を聞いて、この問題の重大性、複雑さ、難しさをつくづく感じて います。ここに出ているメンバーはすでに10回近く真摯な議論をしてきて、なおかつ内 容について、特に指針の(4)について十分な理解が得られていないかと思われるよう な発言があったように思います。  例えば使側委員の方々から指摘されました、例えば、使側委員が労働者の人材活用の 仕組みや運用は外形だというおっしゃり方をしたのですが、運用が外形だと聞いたのは 私は初めてです。制度は外形と聞いた可能性はありますが、それをどう運用していくか ということについて、それを外形的であるとおっしゃったのは、どうもこの文書を十分 に理解なさっていないかと思います。  あるいは別の使側委員においても、例えば職務区分というのは、例えば販売の仕事、 事務の仕事、その中身を見れば違っているではないかということがあったわけですが、 我々がここで職業中分類に基づいて給与の決め方を同一にしろなどということは言って ないわけです。むしろ職業の中の例えば販売の中身を見て内容が違えば、それはやはり 違うと。この職務というものも違っているのだということになってくるわけですから、 おっしゃっていることそのままが古いのではないかと。先ほど公益委員がご指摘になり ましたが、同じことをおっしゃっているのではないかと思うのですが、いかがなので しょうか。  販売で仕事の内容は違っても同じにしなさいということは言ってないわけです。それ ぞれの実情に応じて職務というものは決まってきて、何を同一と考えるかということに ついては、労使で議論をしてくださいということを言っているわけで、その点をどうも 誤解なさっているのではないかと、外形とか、行政がそれを決めるということにはなっ ていないことを十分ご理解いただきたいと思います。 ○公益委員  先ほどの公益委員の方々に重なるのですが、(4)については何度も議論をしてき て、別に仕事とか、人材活用が同じなら同じ賃金水準にしてくださいとはどこにも書い ていないわけです。何度も議論をして説明してきたと思います。使側委員から「外形的 で貢献度等を評価しないように読める」と、それはもう何度も説明しています。  つまり、同じ仕事で、同じ人材活用であれば、同じ給与体系を適用してくださいとい うだけです。給与体系の中で、成果や能力を見る要素があれば、当然同じ仕事や、同じ 人材活用の区分にあっても、AさんとBさんがいたとしても、例えば成果で評価をして 成果が違えば、違う給与水準になっていいのです。ですから、その賃金のつくり方につ いては企業なりが、その仕事に応じて合理的なものを選べばいいわけです。  何で同じような対応が出てくるのかは私はよくわからないです。そこをぜひ、いま公 益委員が言ったように説明していただきたいと思います。 ○使側委員  異動の幅、頻度、役割の変化の度合いといった運用ということについては、出ている 異動の幅というような基準とか、頻度という基準で測ること自体が、外形的だと私とし ては考えられるということで。 ○公益委員  役割もですか。 ○使側委員  はい。役割の変化の度合い、それはわかっておりますが。その運用の結果がどうなっ ているかということの違いを測るに当たっても、この基準だと書かれているふうに読め るわけで、その辺で我々としては外形的だと見ざるを得ないということです。 ○分科会長  よくわからないのですが、もう1回説明していただけますか。 ○使側委員  異動の幅、頻度、役割の変化の度合いといったことが書いてあるわけなのですが、企 業の中でパートであれ、通常の労働者であれ、異動なりをさせていくということなので すが、運用の結果で測るということで、運用の結果を測る基準がこの異動の幅、頻度、 役割の変化の度合い等となっているわけですから、そこで区切られてしまったときに は、企業としては公正な処遇を進めるに当たって外形的なモノサシになっているのでは ないかと受け止めるということです。 ○公益委員  いま8時間働いてフルタイマーと、6時間のパートがいます。そのときにパートの方 がフルタイマーと同じ仕事だけれども、そういうふうに言われたときに、いま適用され ている処遇の仕組みが違う。でもBというパートの人からすると、Aさんと同じ仕事を していておかしいではないかと言われたときに、公正な処遇を実現するときに誰と比較 をしなければいけないかというところを判断しなければいけないですよね。  その基準についてここに書いてあるわけですが、同じでなければ同じ給与体系を適用 しなくていいと言っているわけです。同じ場合は同じ給与体系を適用してくださいと 言っているわけです。そういう考え方はどうしても公正処遇をやるときに必要だと思う のです。どういうふうに比較したらいいのかということを、もうこれを10回くらいやっ ているわけですから、その場合に言っていただかないと困るわけです、この最後のとき になって。  パートのBさんから同じ仕事だと言われたときに、例えばどう答えるのですか。その 基準を出してくださいということを何度も言っているのです。我々はこういうものをつ くったわけです。これはものさし研から、もう何年も前からの議論を踏まえたもので す。ですから私はいろいろなアイディア、ものさし研のときは経営者側の方も入ってい ました。賃金の専門家の日経連の方が入って議論をして出来たものです。  ですから、私はそんなに目茶苦茶、100%であるかどうか、それは具体的な考え方で すね。個々の企業で議論をしていくときにいろいろなバリエーションが出てくると思い ますが、私は相当いろいろな人のアイディアを入れてつくったつもりです。  それをいまになっておかしいと、おかしいと言われるのであれば代案を出していかな いと。私はおかしいと言われただけでは納得できないわけです。どういう仕組みならや れるのか。  1つは就いている仕事だけで判断をしてくださいという議論もあるわけです。これは 仕事だけではなくて、人材活用の仕組みから幅を持った基準を提示しているわけです。 ○使側委員  私としては、異動の幅とか、役割の変化とか、こういうことが判断の基準になるであ ろうということは、そうだと思います。ここに「等」と書いてありますが、現実の社内 で議論をするときに、例えば能力の差だというのと、仕事の差、例えば前にも申し上げ たと思いますが、日本の中では決められたというか、その仕事だけをしていることが必 ずしもいいということではなくて、周りのことまで気配りをして仕事をすることが非常 にいいという評価をされることがあるわけですので、そういった場合に、職務が同じな のか、能力が高くて、たまたまその人がフルタイマーと同じなのか、そういうようなこ となども、きちんと会社の中で整理をしていかないとわかりにくい部分があると思うわ けです。 ○公益委員  基準をどうするかは個々の企業が決めるのです。 ○公益委員  だから議論をしてくださいということなのです。そのように曖昧な状況なのはよくわ かるのです。 ○公益委員  そういう議論をするためにも、いまおっしゃっているように同じような仕事をしてい るのかどうかという、そういう判断ルールを入れることによっていまの議論が具体化す るし、中身のあるものになるという。同じことをおっしゃっています。 ○公益委員  気配りを必要とするという判断であれば、そういう基準を設けてくださいと言ってい るわけです。 ○公益委員  そういうことです。 ○公益委員  それは駄目ですということではないのです。 ○使側委員  ですので、ここにたまたま例示がされている、そういうようなことがあると、これが ある意味では一人歩きしてしまうことがあると思うので、現実の話合いの中ではもっと 先に話合いをして、そしてこういうものはどうなのだという整理をしていかないと、例 えば同じパートタイマーの方々でも、ただ一律にパートタイマーというのではなくて、 どこの所属のどうと、こういうようなことを見ていかなければいけないのだと思うの で、そういうことがこの中の例示だけだと、非常にわかりにくいということです。私は 研究会報告というのも、ぜひお互いに勉強をして、そういうことが判断の1つの基準だ ということを持ちながら話合いをするということは非常にいいことだと思いますが、そ れが国の指針とか、ルールとか、それで話合いを先に規制してしまうようなやり方でな いほうがいいのではないかと思っております。 ○公益委員  使側委員の言われていることと我々が考えていることはほとんど同じだと思うので、 もしこの指針改正ということになったときに、その説明なり、情報提供のやり方だと思 います。私は他の公益委員の方々も言っているように、これは基本的な考え方です。そ の中で、いま言われたように、具体的にその会社ではどういう基準で、同じ職務、同じ 職務ではないとした評価基準として何を入れるべきかを議論していただきたいというこ とですので、その考え方を出すということなのです。  ですから、それについて、こうしなさいというものを入れているわけではなくて、考 え方の方向だけですので、もしこの後に指針の改正ということになれば、その指針の説 明のところで、もう少し企業なり、パートの方がわかりやすいような情報提供をすると いうことで、私は十分にカバーできるのではないかと思います。 ○分科会長  使側委員、よろしいですか。 ○使側委員  中身がよくわからないので、もう少し考えてみたいと思います。やはり違うのではな いかという感じはするのですが。 ○使側委員  いまの使側委員と同じですが、例えば感性という言葉があります。機械を動かして部 品を生産します。その部品の生産高は同じなのです。ところが1人は動かしている機械 に故障があってはいけないということで、油をさしたりいろいろなことをします。結果 は同じであっても、自分が感じたことをきちんとやることによって、仕事がうまくいく ということを常に考えている人と、そうでない人がいます。私はこれが評価基準になる ということであればいいのですが、それはなかなか説明ができないです。 ○公益委員  ただ、いまのは役割の変化。 ○使側委員  それはそうです。もう一言申し上げると、労使の問題というのは社会の変化にひどく 影響されるものなのです。そういうものも背景に置いて、いろいろ判断をしていただき たいと思います。以上です。 ○使側委員  いま、そういう場合は役割の変化だとおっしゃいましたが、グルーピングをするとき に、本当に役割の変化なのか、同じグループの中でありながら能力が高いからそういう ことをするのか、この辺は多分話合いをしていく中では、非常に難しい、それぞれの会 社の中での整理が必要になるのではないかと思います。例えばそういうことがあるわけ なので、すぐにパッと割り切れて議論が進められるというものではないのではないかと 思うのです。  実際にやってみる中では、この仕事と、この仕事というふうに比べようとか、こうい う職場の人のグループでやってみようということをやりながら、ちょっと違う形のグ ルーピングをして、同じとか違うという議論をしてみようというような、試行錯誤がそ れぞれの会社の中で現実問題として起きてくるのではないかと思うわけです。  そうしたときに、こういうようなもので強く言われてしまうと、本当に自由な議論が しにくくなってしまうということがあるのではないかと危惧しています。 ○分科会長  もう1度説明してあげてください。 ○公益委員  使側委員が言われることでやったら正社員の人事処遇制度のつくり方も問題になって きます。例えば専門職と管理職コースを分けて、仕事も区分けして、それぞれに適用す る人事考課を変えるというのをやっています。それについてもボーダーは確かにありま す。しかし、それは組合がないところも含めて、従業員が納得できるような仕組みかど うかを考えて人事はつくっています。ですから、パートについてもそのように考えてく ださいということなのです。その程度のはちゃんとやってくださいということなので す。 ○使側委員  このルールで話合いがうまく進むということなのか、こういうものを参考にしながら もそれぞれの会社で自由に議論をしたほうがいいのかということだと思うのですが、い ままさに正社員のほうもいろいろな議論をしているわけですから、そこの中でパートタ イマーの処遇も一緒に考えていくところなのだろうと思いますが、それに多少のずれが あったりしたときに、何でも合わせなければいけないということに、この文面だと読め なくもないというところが、非常に話合いをする当事者にしてみれば、難しいところが あるのではないかと思います。 ○公益委員  基本的には自由に議論をする、ただし公正な処遇に向けて自由に議論をしてください ということなのです。ですから、自由だと言っても、公正処遇に向けて自由に議論をし てくださいということなのです。その枠組みを示しているということです。  もう1つは、これを目指してくださいということで、明日から全部これになるとは、 もともと人事制度、賃金の場合は難しいです。一歩ずつということです。すぐに明日か ら100%こうしてくださいというのは。ただ、その方向に向けて改善を進めていくとい うことの努力をしてくださいという趣旨です。 ○使側委員  それであればまさにそういうことが望ましい姿だと思いますが、いまの時点では (1)と(2)というのがあって、具体的に進んでいくのではないかと考えているわけ です。 ○労側委員  なかなか興味深い議論だと思いますが、ちょっと話を元に戻したいのですが、ほかの 分科会でワークルールの見直しの議論があって、その報告も出ていますが、多様な選択 肢が広がるということでは、意味があると思うのですが、やはり多様な選択肢を選ぶ立 場からいえば、そこにどういった処遇が担保されるのかということは、非常に重要なこ とだと思います。ほかの分科会の中では均等待遇ということについて、十分な議論がさ れたというふうには思っていませんし、その意味では、当分科会がここについて、きち んと長い間議論してきたということは大きな意味があると思います。先ほど私たちの側 から伺った、これまでの議論、この指針の中でいえば、やはり実効性があがらないじゃ ないかということを再三申し上げてきました。  このワークルールの見直しも含めて、使用者側のコスト削減という、きわめて強い経 済要求を背景にしているというふうに思うだけに、その実効性があがらないのではない かということを再三申し上げてきたのですが、私は審議会が単なる調整機能だというふ うにも思っていませんし、力関係によって決まっていくものでもないというふうに思い ます。まして、厚生労働省の役割といえば、やはり労働者の立場に立って、1歩でも2 歩でも政策を引張っていくという役割があるというふうに思っています。先ほどお伺い しました「今後の道筋」、つまり実効があがらなかったときに、一体どうするのかとい うことについて、もう一度伺いたいのです。  この報告の中では、最後の所で「指針改正の一定期間経過後、実態把握を行う」とい うことが書いてありますが、例えばこの一定期間というのはいつぐらいのものなのかと いうことも含めて、どういった状況になったら法改正をしていくのか、ということを再 度お伺いしたいと思います。今の時点でのお考えを聞かしてください。 ○分科会長  この「一定期間経過後」という趣旨は、前を受けて企業の雇用管理、労使の取組み、 パートタイム労働者の就労状況等、改正指針の社会的な浸透状況を見得る期間という意 味です。だから、別に何年ということはもちろんないのですが。それは実際にやってみ ないとわからないけれども、ただ、これが浸透することを目指してやっているわけです から、いつとは言えないけれども。 ○労側委員  こういった報告だとか、法改正のときに、例えば「3年後に見直しをする」というふ うに期間が明確になっているものもあると思いますが、そういったことについて、今回 そういった検討ができなかったのかどうか、ということについてはどうなのでしょう か。 ○公益委員  一定期間というのを何年かと規定するのはすこぶる難しい問題です。むしろ、この審 議会の中で、その必要性を感じ、そしてみんなが合意すれば、実際問題として、そこで やっていくということになるのではないでしょうか。あらかじめ3年ですとか、5年で すということではなく、その状況把握ということですから、この中で提案していただい て、必要ですというようなことであれば、それに応じてやっていくというようなことに なるのではないかと私は一委員として思います。 ○労側委員  よく分からないのですが、審議会のメンバーとして、そういったテーマの設定につい て、物を申し上げることは可能なのですか。これは厚生労働省に伺いたいのですが。 ○事務局  審議会令等で具体的に定めたルールはないと思いますが、当然のこととして、この テーマについてこの時期議論したいということで強いご要請が審議会全体としてありま したら、厚生労働省としては、そのことについてはこれを前向きに受け止めてご検討を お願いするということになると思います。 ○公益委員  先ほどの使側委員に対する公益委員や私の質問なのですが、使側委員は「(1)と (2)で、(4)は駄目だ」と言われたのですが、(1)と(2)を議論するときに は、何度もいまだにみんながやっているとおり、(1)と(2)を進める場合でも、何 が公正なのかということについて考え方がないと、実は議論が進まないですね。ですか ら、外形的基準だと言われるなら、我々は「そうじゃない」と言っているわけですか ら、(1)と(2)を進めるときにどういう基準の議論を言われるのか、あるいはどう すれば、外形的な基準でない基準なのかということを是非説明していただかないと議論 にならないと思います。 ○使側委員  (2)の所で、「職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇するための措 置の実施」とありますように、この辺を労使間でパートタイム労働者の処遇のあり方を 検討するときに、この辺を考慮していけば、実際上は公正な処遇が自分の会社の中で、 どのようなものが公正な処遇かというのが進むのではないかというふうに思うわけで す。だからこそ、(1)、(2)について、進めていきましょうと我々としても、考え ているということなのです。 ○公益委員  冒頭申し上げましたように、これまでの指針で不十分であったことは何かといいます と、「公正な基準が一体何であるか」ということがわからなかったわけです。書いてな かったわけです。この(4)が設けられることによって、逆に公正な処遇というものの 内容が見えてくるという、ここを考えてほしいということです。(1)(2)ですと、 何をもって公正な処遇というのかということは、これまでのパート法の指針と全く同じ だったのです、というようなことになると思うのですが、その点、いかがでしょうか。 どういうふうに具体的に公正な処遇というものを規定していくのかということはいかが でしょうか。 ○使側委員  それはやはり個別企業さんの中でどういうふうに考えるかというふうに変わってくる のではないかと思います。(2)の中にも書いてありますように、「働きに応じた公正 な処遇という観点からも重要である」というふうに書いてあります。このように個別の 労使の中で考えて、労使間で議論して、その中から公正な処遇というのは何かというの が見えてくるのではないかというふうに思うわけです。それは基本的に使側委員の考え 方として一致しているとわけです。 ○分科会長  ご質問の趣旨は、個別の企業の中でやるときに何が公正かということの基準がなけれ ば、全然話をしたことにならないでしょう、基準が必要でしょうということで、大枠の 考え方を提示することは、いま使側委員がおっしゃった話し合いにとって、非常に重要 なことですね、という提案だと思います。 ○使側委員  何が公正な処遇かということについては、やはり1つ1つの現場から見ていかない と、わからない話だと思うので、それは個別の現場で話し合ってもらったほうが、自分 の会社に合った、あるいは労使間の実情に合ったものができるというふうにしてあった のです。 ○分科会長  現場で話し合うことは前提にしているのです。前提にしているけれど、その話し合い のときに考え方なり、基準がなければ、話が進まないですねということを申し上げてい るのですが。それはそれで、この方式が外形だとか何とかおっしゃるから、外形とは思 えないけど、どうして外形なんでしょうというご質問が先ほど公益委員から出たわけで す。そこは行ったり来たりしてしまっている。 ○公益委員  使側委員双方は同じだと言われますが、一方の使側委員はたぶん先ほどの議論です と、公正な処遇を議論するときに異動の幅とか、頻度というものはたぶん要素になるで しょうと言われています。そういう意味では我々と近い方もおられる。  そういうパートの方からフルタイマーの議論をするときに私は同じ仕事をしていると か、例えば、いろんな提案活動も自分がやっているというふうに言われて、「私はおか しいのではないかと思う。なぜ向こうの人の基準と我々とは違うのか」と言われたとき に何をそこで議論したらいいのかがなくていいのかということですね。  こういうのが当然上がってくるだろうと思います。そこまで自由にやれれば、済むん だというのは、それは今までそうやってきて、済まなかったんですね。それについて、 これまでの審議会ではモノサシが必要だと、労使が入った委員会で決めたのです。それ は「昔のことだから」と言われては困るわけです。日経連も入って、モノサシが必要だ と議論したのです。そのときは経営側も、そういうモノサシがないから、判断基準がな いから議論が進まないということは認められていたわけです。それ以前に戻れというこ とですね。それはちょっと無責任なのではないかということです。 ○使側委員  だからこそ、繰り返しますが、職務の内容に基づいたものとか、1つ1つ公正な処遇 という問題について、個別の労使で話し合ってというようなことが求められるというの が、この(1)(2)の意味合いだと思います。これだけでも、かなり大きな前進だと いうふうに私どもとしては考えております。 ○公益委員  前のときでも、そういう議論をする場合、考え方の枠組がないから議論が進まないか ら、ものさし研を作り、議論をしてくださいというふうに審議会は決めたのです。それ 以前の提案だと思います。 ○使側委員  「役割の変化の度合」という言葉ですが、これはどういう意味ですか。役割が決まっ ていますね。その役割が変化する度合というのは、誰が判断するのですか。 ○公益委員  当事者ですね。 ○使側委員  当事者ですね。ところが、私が先ほど申し上げたのですが、わかりやすく説明するた めに油を注すという話を申し上げたのです。あれは役割には入っていないのです。役割 に入っていないことをやることによって、機械が順調に動きます。片一方の人はその役 割がないから、油を注さないと。それをわかりやすく言ったのですが、もっと難しい問 題があるのです。  機械の変化を微妙に感じて、それを感性という言葉でちょっと表したわけですが、そ ういう変化の度合という問題を、今回は新しく、これから度合を変えるよということで もってそういうものを付加した役割に変えていくというような意味も込められているの かどうか、それが上から決められてしまうと、進歩がなくなるということになります。 ○公益委員  それは個別労使で。 ○使側委員  でしょう。そうすると、個別の労使でということになってくると思います。 ○公益委員  いまのお話で、例えば、そういう自分から進んで設備の改善なんかやる人が企業とし て望ましいと思って、それを評価するわけですね。 ○使側委員  そうです。 ○公益委員  それが人事評価の項目に入っているわけです。それを入れるか入れないかは、経営側 の判断です。もちろん、それについて個々の労働者、組合があればおかしいと言う場合 もあるかもわかりませんが、納得できるものであれば、当然入れていいわけです。それ は当然、この仕事をして、改善もするということを評価もしますというふうに言えば、 労働者もそれを評価されるような行動を取っていくわけでしょう。それを否定するわけ ではないです。 ○公益委員  どこが問題かというと、まさに理解を超えたところなんですね。 ○公益委員  この審議会での均衡議論の長い歴史があるわけですが、パートタイム法の改正、その 後均衡問題を、という建議があるわけです。それはこの審議会で労使を加えてそうした 均衡へ向けての議論の必要性を認識しながら練り上げてきたというプロセスがあるわけ です。その結果として、具体的なモノサシというようなもの、日本的な雇用の慣行の下 において、均衡というものを実現するのはいろいろ難しい問題があるだろうと。それは 労使が知恵をしぼって日本の職場の現状を踏まえた上での均衡というようなものをどう 考え、どう実現していくか、これは知恵をしぼれという建議があったわけです。  それに基づいて、このものさし研ができ、さらにそのものさし研も労使が入っていろ んな調査もやり、情報を蓄積して、ある具体的なルールを出してきた。それを材料にし て、パート研究会がもう少し広い日本的な雇用慣行や現状の労働市場の変化とか、そう いう今日的な現状の変化を踏まえて、具体的な実現のためのルールは何が必要かという ことを議論してきて、そういう労使の蓄積、努力の蓄積がこの審議会に上程されたわけ です。  ここに言っているように、一般的に「均衡が望ましい」というようなお題目のような ことを言っていては、一歩も進まないと。具体化するためのルールをどうかというレベ ルでいま議論をしているのだと思います。それについて、使側委員の先ほどの公益委員 へのご返答は、私はお聞きしていて、十分ではないというふうに思うわけで、この (4)が何がそうした問題になっているのか、それについて使用者側の一員として、き ちっと答えていただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○使側委員  これまでの経緯等については、不十分ですけれども、公益先生がご指摘のような経緯 があるというのは、不十分ですが、知っているところです。ものさし研、パート研等の 議論が続いてきたということは、十分承知しているところです。なお、(4)につい て、今回新しいレベル、つまり厚生労働大臣告示というふうな、非常に重たいものにつ いての議論をするというような状況だというようになりまして、それについて、再び改 めて企業側からの意見の聴取とかをやってきますと、なお、(4)というような形につ いて非常に懸念されるという企業の声もあるということで、私どもとしては、前回及び 今回申し上げているような意見を述べさせていただいているところです。 ○公益委員  今回のルールの明示化というのは、労側から見れば、ほとんど効果ないというふうに 再三、労側委員は言われました。一方、いま使側委員から言えば、非常に重たいと。 我々はそれをその2つの意見を聞いて、どう判断したらいいのか。改めて再認識させて いただきたい。 ○公益委員  使側委員が言われている主張は、この10回、前と変わらないですね。私はそれが我々 が納得できるような説明ではないと私は思います。企業側から反対があるというのは、 具体的にどこなのかということを言っていただかないと、私はそれは無責任だと思いま す。この場で言っていただかないと、議論にならないです。 ○使側委員  私はいままでの蓄積をなしにして、話し合いが進むというふうにも思っていません で、たぶん今までよりも(1)と(2)が出来るということはものすごい進歩なのでは ないかと思っているわけです。そして、この中でお互いに話合いをしましょうというふ うになっているわけで、その話し合いの基本となるルールについては、今までのいろい ろ出ている研究報告ですとか、ものさし研の報告書というのか、そういうものをそれぞ れ参考にしたらいいと思いますが、そういう中で各社でこういう基準でうちの会社の処 遇をみていこうという話し合いをすれば、いいことです。限定してこのことについての 国のルールに従ったことで話し合いをしろというようなニュアンスのものは必要ないの ではないかと思います。 ○労側委員  報告をまとめていこうという段階に至っていますが、今日も非常に使と公の意見とい うのはもっと早い段階でそれを詰めていくということもあってほしかったという感想を 持ちましたが、いずれにしてもそのお話のやりとりを聞いていましても、非常に不安が 残ります。ですから、初めに労側委員がおっしゃったのは、その労側委員だけが言って いるのではないという、パート労働者の現状を踏まえたときに、やはり、この報告の中 では法制化の必要を明らかにすべきであるという、同じ意見になりますが、それを言わ せていただきたいというふうに思いました。労使の労にパートタイム労働者がどれだけ 当事者として対等な関係になって、自分の労働条件を改善し、働きがいを追求し、成果 を出そうかという意欲につながるかと考えるとき、現実はそうじゃないという組織労働 者の先ほどの割合いのお話や、もちろん正社員組合の私たちのいままでのパートタイム 労働問題に対する関心についての反省も当然ありますが、そういう状況だからこそ、先 ほど公益委員がおっしゃいましたが、労使のお互いの議論の状況を見つつ、やはり公益 委員から、この際、社会政策として、牽引力となる報告書を出して、それに向かって、 お互いが努力するというものを、むしろ公益委員から積極的に言っていただきたいと思 いました。  雇用の不安がますます労基法、派遣法の状況も相俟って不安定な雇用が増えるという 予測は私たち自身が変えることはできませんし、いただいた資料の中で、新卒者がます ます非典型的労働力として増えているということについては、現状のパートタイム労働 者の問題と併せて、これから世の中に出て働こうという人に意欲のある仕事を提供でき るのかということがここでは問われていると思います。そういうことから、もう一度報 告書をまとめる、その中身に法制化の必要を明らかにしていただきたいと思います。 ○使側委員  6頁に、パートタイム労働者への社会保険の適用拡大の指摘がありますが、その点に ついて、一言だけ言っておきたいと思います。この拡大については、付随する多くの検 討課題も含めて、幅広い観点から議論すべきであるというふうに考えます。特に煩雑な 企業の事務手続も含めて、こういうコストの増大などが重い負担になるということを使 用者側として懸念します。 ○公益委員  前回も出たのですが、研究会報告の中にも入っているのですが、「労使の取組みに限 界がある」という表現を書くのですね。そういうことで、いま委員が言いましたが、そ ういうことであれば、労使の取組みのあり方も触れないと、いま言ったように要求を出 しても受取らない、要求を出しても、交渉にのらないというような現状がある中では、 そういうような労使の取組みのあり方まで言及しないと、その報告はちょっとまずいの ではないかという感じがしていますので、是非その辺をお願いしたいと思います。 ○分科会長  それでは時間になりましたので、本日の分科会はこれで閉会とさせていただきます。 本日の署名委員ですが、片岡委員と前田委員にお願いしたいと思います。次回の日程に ついては、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  次回は3月18日(火)15時から、場所は経済産業省別館の825会議室です。議題は「 今後のパートタイム労働対策について」ということと、「雇用保険法施行規則等の一部 を改正する省令案要綱」、それは育児休業介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の 福祉に関する法律施行規則の関係の諮問、その他です。 ○分科会長  本日は長時間大変、貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)