03/03/13 第25回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録             厚生科学審議会生殖補助医療部会                (第25回 議事録)               平成15年3月13日(木)               厚生労働省共用第7会議室 ○対策準備室長  定刻になりましたので、ただいまから第25回厚生科学審議会生殖補助医療部会を開催 いたします。  本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日の出欠 でございますが、金城委員、高久委員が御欠席という連絡をいただいております。  それでは、早速議事に入ります。矢崎部会長、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  本日も1時開始ということで、 1時間早めさせていただきまして、私自身も遅刻しそ うになったので、何人かの委員の方が遅れられるのはやむを得ないと思います。  それでは、議事に入りたいと思いますが、まず最初に資料の確認をお願いいたします 。 ○対策準備室長  資料といたしましては、1番と2番の2つの資料をお配りしております。1番につき ましては、1番から6番までの別紙を添付しております。また、参考資料といたしまし て、御意見募集でお寄せいただきました御意見が1件ございましたので、そちらも配付 しております。  以上です。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。それでは、議事に入らせていただきますので、よろしくお願い いたします。  まず、資料1で、事務局から加筆あるいは訂正していただいた部分が青字になってお りますので、その部分について議論を進めていきたいと思いますので、まず事務局から その部分を読んでいただければと思います。 ○対策準備室長  それでは、資料1に従いまして、青字になっております部分を中心にお話をさせてい ただきます。  まず、2ページ目でございますが、下の方になりますけれども、「『加齢により妊娠 できない』ことの具体的な判定基準については、国として義務的な基準を示さず」とい う部分がございましたけれども、そういった表現がわかりにくいという御指摘がござい ましたので、「基準については、国として義務的な基準を示さず」を青字で消しました ものにしてございます。 ○矢崎部会長  この件については前回御議論いただいたので、意味も重複するということで省かせて いただきました。これについては、あと何か所かに同じ訂正がございますので、よろし くお願いいたします。  それでは、3ページ。 ○対策準備室長  続きまして、3ページに移ります。上に掲げておりますのは専門委員会報告から抜粋 したものでございますが、これは前回の御議論の中で、提供を受ける条件としての卵子 または精子が得られるかどうかということが、専門委員会の検討の中では得られないと いうことが条件になっていたのではないかという御議論を受けまして、その検討のため に再度掲げているものでございます。  内容を申し上げますと、「第三者がリスクを負って対価の供与を受け取ることなく提 供した精子・卵子・胚の利用条件は厳格なものとされるべきであり、また、精子・卵子 ・胚の提供等による生殖補助医療は、子を欲しながら不妊症のために子を持つことがで きない夫婦に子を持てるようにする範囲で行われるべきであり、その便宜的な利用は認 められるべきでなく、精子・卵子提供はそれによらなければ子を持つことができない場 合のみに行われるべきことであることから、自己の精子・卵子を得ることができる場合 には、それぞれ精子・卵子提供を受けることはできないこととしたものである」という ことで、専門委員会の検討においては、直接精子・卵子が得られないということよりは 、実質上、それによらなければ子が得られないということを重視した記述というものを 強調しているために取り上げたものでございます。  続きまして、同様の部分について先に進めてよろしいでしょうか。 ○矢崎部会長  どうぞ。 ○対策準備室長  4ページ目を先に見ていただきたいんですが。 ○矢崎部会長  ちょっと待ってください。3ページ目の下は。 ○対策準備室長  吉村委員より御指摘いただいた議論をまとめたものでございます。 ○矢崎部会長  よろしく御了承をお願いします。 ○対策準備室長  4ページ目でございますが、「AIDを受けることができる夫婦の考慮すべき基準の 具体的な内容としては、夫に精子の提供を受ける医学的な理由があり、かつ妻に明らか な不妊原因がないか、あるいは治療可能である場合であることとする」、そのような内 容でございます。  別紙1も併せてごらんいただきたいと思います。こちらの方には、精子の提供を受け ることができる医学的な理由、それから卵子の提供を受けることができる医学的な理由 、それぞれを前回の御議論の指摘を受けまして、再度吉村委員などとも相談しながらま とめ直したものでございます。こちらも併せて紹介させていただいてよろしいでしょう か。 ○矢崎部会長  これは前回、時間をかけて議論されましたが、このままお認めいただいてよろしいで しょうか。 ○石井委員  ここで議論するんですか。 ○矢崎部会長  御議論があれば是非していただきたいと思います。 ○石井委員  私は先日の議論をこういうふうに理解していなかったんです。精子について、精子が あっても認めると卵子についても認めることになるというのは広がるのではないかとい う議論があったと思うんですが、私は精子と卵子とは違うというふうに吉村先生は説明 されていると理解していたものですから、精子を認める結果、卵子も同じように顕微受 精を何回やってもできないという場合に卵子提供を認める、そういう形の案を出すとい うことについては、従来考えていたよりも適用を拡大することになるのではないかとい うので、疑問に思うのですけれども。 ○矢崎部会長  それについて、いかがでしょうか。3ページの専門委員会は、「精子・卵子提供はそ れによらなければ子を持つことができない場合のみに行われるべきものである」という 範疇には一応それが入るという吉村委員の御意見ではないかと思いますが、吉村委員か ら何かコメントはございますか。 ○吉村委員  石井先生のおっしゃることは大変ごもっともで、精子に関しましては(1)から(6)でよ ろしいのではないかなと私は思うんですが、卵子に関しましては、この点につきまして は、鈴木委員の方から卵子に関してもこういったことはあるのではないかなという御質 問があったということです。私も、この(5)、(6)を入れるということに関しましては、 私たちの厚生科学研究におきましては(1)から(4)まででありました。ただ、女性の卵子 の場合、「加齢により妊娠できない夫婦は対象とならない」というふうになっているん ですが、卵子のクオリティーを評価するということが極めて困難である。結局のところ 、受精をさせまして、その卵子が例えば胚盤胞までいくということがわかればこの卵子 はよかったということがわかるだけであります。  ですから、(5)、(6)をどうしても入れてしまいますと、顕微授精をやって、ある一定 の回数妊娠しなければ、精子も提供を受けることができるし、卵子も提供を受けること ができるというようになってしまうという問題点はあると思いますので、卵子に関しま してはこの(5)、(6)をどうするかということについては、精子の場合は(1)ないし(6)ま では問題は余りないと思うんですが、卵子に関しては少し御議論をされた方がよろしい かなと思います。 ○矢崎部会長  この間は、精子も卵子も統一的なという御意見でこういうふうになったわけですが、 卵子の場合には受精卵に至らなかった場合には、吉村委員の御意見では、それは精子は 大丈夫だけれども卵子が悪い場合と、医学的に区別がなかなかできないというお話でし たよね。 ○鈴木委員  私は前回、別に卵子も同じにすべきだと意見した覚えはないんですけれども、この間 からの疑問は、結局文面では、今日は事務局の方も今さっきおっしゃっていたんですが 、もともとは精子があるなし、卵子があるなしを物差しにしてこの議論を進めてきたと 私は思ってきたのですが、どうやらそうではなく、さっき事務局は実質的に得られない ことが問題であるということでこの文面を挿入したということもおっしゃっていました し、あるなしではなくて、今まで受精能が問われていたんですかということなんです。 受精できるか否か、妊娠できるか否かが物差しに変わってしまうのではないかと。変え るというのなら、それは一つの意見としてはありましょうけれども、そこが私にはよく わかっていないのが一つです。  あともう一つは、特に精子の場合、機能性不妊の人も結果的に精子に受精能がないと わかった場合、例えば卵子を受精させる力がない、入り込む力がないとか、それは顕微 受精をやることでクリアできるわけですよね。卵子の中に送り込んであげても受精しな かった、妊娠しなかったという場合はできるということなのか。その2点です。 ○矢崎部会長  そうですね。今までは精子・卵子に明らかに異常があった場合に、あるいは勿論なけ れば当然適用ですが,アカデミックに鑑別できなくて、実際に受精させたときにそのま ま受精卵までいくかどうかというところの機能障害というものを、提供の受けることが できる医学的な理由に入れるか入れないかと、今議論いただいたと思うんです。  要するに、恐らく委員の皆さんが思っておられる危惧は、そういうことで適用が拡大 していくのではないかという心配があるのかと存じますが、その辺の実感が専門家以外 はわからないので、吉村委員からもう少し説明いただけますか。 ○吉村委員  今までAIDの適用は大体(1)から(6)まででありました。精子の場合には、例えば精 子に起因するのかどうかを医学的に決定するということが比較的可能なわけです。しか し、卵子に関しましては非常に難しいところがありまして、受精させて受精後の発育が どうだったかと見ない限り、卵子のクオリティー、細胞質の評価ということはできない ところがあるわけです。  そういう点を考えますと、私たちは当初は厚生科学研究では(1)から(4)まででやめま しょうといって、(5)、(6)に関しては私たちのところでは胚提供でこれをカバーしよう というふうに、一応研究ではしたわけです。卵子の提供に関しましては、(5)、(6)に関 しましては大変難しいところがあるのではないかなと思います。  だから、こういったケースも実際においては存在すると思います。頻度としてどちら が多いかというと、当然のことながら、精子の提供を受けなければならない人の方が多 いわけですけれども、卵子の提供に関しても、こういった理由で受精ができない、ある いは受精後の発育が起こらないといった女性の方は一定数お見えになると思います。 ○対策準備室長  私どもが3ページのところで、専門委員会報告にこのように継ぎ足しました意図とい たしましては、確かに専門委員会の報告書には、「自己の精子・卵子を得ることができ る場合には、それぞれ精子・卵子の提供を受けることはできない」というふうにまとめ としてはされているわけですけれども、その内容を見ますと、掲げましたように、「そ れによらなければ子を持つことができない」という部分にかなり力点が置かれていると いうふうに解釈をして紹介したものであります。  そのほか、報告されております記述としましては、AIDに関しますところでのまと めの表現としまして、「精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦のみが、提供精子 による人工受精を受けることができる」というふうにされておりますし、また、提供精 子による体外受精におきましても、「女性に体外受精を受ける医学上の理由があり、か つ精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦に限って、提供精子による体外受精を受 けることができる」、それから提供卵子による体外受精の部分も、「卵子提供を受けな ければ妊娠できない夫婦に限って、提供卵子による体外受精を受けることができる」と いうことで、必ずしも精子・卵子の有無にこだわってまとめているわけではないという ところが専門委員会報告でされているということも改めて、確認させていただきます。 ○石井委員  今の点は確かにそうなんですけれども、あえて最終的なまとめに「精子・卵子を得る ことができる場合に」という形で限定的にしたのは、拡大をなるべく防ぐという意図か ら限定的な書き方をしたのではないかと私は思うのですが。 ○加藤委員  ここの書き方だと、やはり危ないんですか。余り細かくごちゃごちゃ言うと抜け道が できるんだけれども、最初の規制だったら抜け道ができないという形になったのではな いかと思うんですけどね。 ○矢崎部会長  でも、専門委員会の場合は非常に漠とした決め方ですよね。ですから、ある程度国と して基準を定める、その基準が医学的な基準、医学的な理由という別紙1になっている わけです。 ○鈴木委員  頭の整理ということで更に質問するんですが、不妊学会のガイドラインの方も調べて きたんですけれども、一応AIDの適用は、ここに書いてあるように、無精子症状です ね。それから、無精液症というのもありました。それから、死滅精子症。あと、ここに 載っていないのがいわゆる極端な乏精子症、とても精子が少ない、状態が悪い方で、そ れらの方で様々な精子増強策や顕微受精などを行っても受精せず、妊娠不可能と考えら れる場合についてAIDを行うとなって、勿論現状もそうだと思うんです。  多分、精液所見上、全く問題がないケースというのは、通常これまでのAIDからは 除外されてきたのではないかと思うんですが、それとも最近は、最初に精液所見に全く 問題がなくても、顕微を何回もやってだめな方はAIDに進んでいらっしゃるのでしょ うか。まずそこをお伺いしたいんですが。 ○吉村委員  現在のところ、例えば不妊学会の会告が出たころというのは、顕微受精が余りうまく 行われていなかった時代のものでして、95年ぐらいではないかと思うんです。それは古 いんですね。その後、顕微受精が大変できるようになりまして、顕微授精が行われるよ うになってからは乏精子症というのはAIDに進まないことが多くなりました。今はT ESE、MESAをやる時代でもありますので、私のところでやっているAIDに関し てはほとんどありません。ほとんどの症例が無精子症です。TESE、MESAをやっ ても妊娠できないような方以外は、ほとんどAIDは今私たちのところではやっており ません。 ○鈴木委員  もう一つの質問です。今言ったように、最初、精液所見上全く問題がなくて顕微を続 けてだめだった方というのもAIDに移行しているんですか。 ○吉村委員  私たちのところでは、そういった方はもう一回私たちのところで顕微授精をやらせて いただいています。ですから、AIDに進むということはありません。 ○鈴木委員  であれば、ここの文面にそういった機能性不妊の方が入り込んでしまうような文面を 入れる必要はないのではと私は今思いました。 ○吉村委員  そうではなくて、そういったケースのことを言っているわけです。ICSIという方 法はTESE、MESAの方法でやるわけですから、そういったことを言っているわけ です。 ○鈴木委員  わかりました。そうしますと、「上記の方たちで」とか、あるいは「乏精子症を理由 にICSIを相当回数実施したが、妊娠に至らなかった場合」と書くのが正しいんでし ょうか。 ○吉村委員  極端な乏精子症とか、そういう書き方がそういう意味で言えば正しいですけれども、 それは医学的には(5)、(6)で同じことだと思います。もし、その方がわかりやすいなら ば、それで結構だと思います。 ○鈴木委員  つまり、吉村ドクターはこの文面の中に、先ほど言った精液所見が全く問題のない方 はこの(5)、(6)に含まれないということでお書きになっていたわけですね。 ○吉村委員  そういった症例は極めてまれだと思います。精液所見が全く問題なくて、受精できな いという症例は私は余り知りません。その場合は卵子に問題がある場合の方が私は多い と思います。ただ、それを客観的に医学的に評価することができないので、こういった ガイドラインになってしまうということです。 ○矢崎部会長  ですから、拡大を広げるというよりは、まれなケースも含めたらいいのではないかと いうのが吉村委員の御意見で、この厚生科研の(5)、(6)が入ったということですか。 ○吉村委員  (5)、(6)というのは厚生科研では入らなかったんですが、そういったケースもあるの でここでは入れておいてもいいのではないかと。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。そうしますと、(5)、(6)だけで第三者提供配偶子の生殖補助医療 に進むわけではないということですかね。  ですから、今のお話では、精子が1つあってもこういう先端技術を用いればと。 ○吉村委員  患者さんも、当然のことながら自分の子どもが欲しいと思われているわけだから、精 子がどこからか見つかれば、TESE、MESAをやられる。そういったことが面倒く さいから精子をくださいという方はお見えにならないんですね。やはり皆さん、自分の 配偶子で子どもさんをつくりたいと思っておられるわけですから、余りその辺のことを 心配される必要はないのではないかなと思います。医者がこんなのは無理だからやめな さいと言うようなことは一切ありませんので。 ○矢崎部会長  そういうことがあり得るのではないかという御心配なんですか。 ○石井委員  卵子の提供については、専門委員会のときに議論していたときにも、吉村先生は加齢 によってどうしても卵子の質が落ちる、そうすると何回やってもだめだと、やはりもら ってやったらいいのではないか、そういう形になる危険性があるということは繰り返し おっしゃっていたように思いますので、(5)、(6)を入れることは、安易なと言うと言い 過ぎかもしれませんが、拡大のおそれがあるのではないかと私は危惧しているというこ とです。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。そうしますと、元に戻して、卵子の(5)、(6)を外せばいいわけで すよね。 ○町野委員  前回の議論を承っていないのでわからないところがあるんですが、結局、(5)、(6)は あっても悪くはないけれども、乱用のおそれがあるから入れないという理由ですか。  これだけ「乱用のおそれのある、医師の判断による」というのを乱発しておきながら 、ここだけ急に厳しくなるというのはいかがなものかと私は思います。 ○石井委員  「裁量による」と言って、あえて制限するために基準を書いているんですね。「裁量 にする」と書いた上で、「ただし」と言って。 ○町野委員  「裁量とする」というのはお医者さんの判断によるということですから、これは規制 をしないということですよね。要件があるかどうかという点では規制をしていますけれ ども、実質的にはその要件の判断をお医者さんにゆだねるわけですから、どこかでもう 一回司法判断をするとか、そういうことをしないわけですから、その限りでは乱用のお それがあると言われれば、みんなそれはそうあるわけです。  もし絶対に(5)、(6)がおかしいということであるなら、私はそれを認めるべきではな いだろうと思いますけれども、乱用のおそれがあるからという理屈だけでいいのかなと いうのはかなり疑問に思います。 ○対策準備室長  5番、6番の議論でございますけれども、前回の検討の中で幾つか御意見がございま して、精子の側と卵子の側との条件の不均等というのがあるのではないかというような 御指摘がありました。そういったものも踏まえまして、精子の方の5番、6番において は、「その原因が妻側にないものと医師によって診断されている場合」というのをつけ 加えまして、また同様に、卵子の側についてはそういった条件で、「かつ、その原因が 夫側にないものと医師によって診断されている場合」ということで、条件として精子の 場合と卵子の場合がそれぞれ見かけ上ですが、対称になるように整理をしたという経緯 で、このようにまとめているものでございます。 ○石井委員  先ほど鈴木さんがおっしゃったように、不均衡だというのは卵子の方も入れろという 意見ではなかったんだと思うんですけれども。 ○松尾委員  この(5)、(6)の条項を外した方がすっきりするという理由は、町野先生がおっしゃっ た理由だけではなく、医学的に(5)、(6)というのはあいまいなグループで、(1)、(2)、( 3)、(4)というのは非常に明確な病態だということです。それらが一律に並ぶことに臨床 家としては若干違和感を感じます。夫側の判断があいまいだと思います。 ○鈴木委員  先ほど言ったように、これは精子のあるなしで最初から何となく話し合いが進んでい ますけれども、結局、あっても物すごく極端に少なかったり、状態が悪くて、それこそ 顕微受精をやっても妊娠は恐らく不可能だろうというケースはあるわけですよね。(1)、 (2)、(3)、(4)だけにしてしまうと、そのケースが救えないということになるんだと思う んです。だから、私は極端な乏精子症を理由に顕微受精をしたけれどもだめだったとい うような表現を一つ加えれば、私はすっきりするのではないかなと考えていたんです。  吉村先生は、「極端な乏精子症」という文面を入れなくていいというような感じで先 ほどお話しなさったんですが、私は誤解を受けないように、わかるものはわかりやすく 書いてくださった方がいいと思っています。 ○吉村委員  「極端な乏精子症」を入れていただいても、これは入れたと同じに医学的には判断さ れますので、皆さんがその方がわかりやすいということであるならば、入れても全然構 わないです。  それから、(3)に奇形精子症がありますけれども、この精子に関しましては全く受精が 起こらないという精子がわかっておりますので、そういった意味で卵子よりは比較的判 断がしやすい。精子があっても機能しないということが明確にわかるわけでありまして 、このほかにもテイパリング精子という非常に先のとがった精子、こういった精子は受 精できないわけですから、精子に関してはいろいろな理由がわかる。精子に関しては、( 5)、(6)は余り問題ないのではないかなと思います。だから、「極端な乏精子症で」とい うことを入れた方がわかりやすいということであるならば、それをなさってもいいと思 います。 ○平山委員  それはおかしいと思います。極端な乏精子症でなくても、そういう奇形精子、Globozo ospermia 以外のものもあるわけですし、先ほど吉村委員がおっしゃったように、精液所 見が全く問題がなくても、精子の側の問題で妊娠しないという可能性が理論的にあり得 る以上、(5)、(6)は入れてもいいと思います。極端な乏精子症というふうに限定するの はおかしいと思います。 ○矢崎部会長  そうしますと、精子の方はアカデミックにある程度はこれは機能がないとか、そうい うことがわかりますので、(5)、(6)を精子に関しては入れさせていただいて、卵子の方 は精子のようにいろいろやってみてどうこうというのが、不可能だという判定がなかな か難しいところもあるので、卵子の方は元に戻って、(5)、(6)はなくて、卵子の場合は( 1)から(4)で、精子の場合には(1)から(6)と。  (5)、(6)に関しては、内容について厳しく枠を決めるのと、機能的にどうしてもだめ だといった場合の御夫婦にこういう道もあり得るということで(5)、(6)が入るというの はなかなか難しいですかね。 ○平山委員  1順目の議論のときに、卵子があるないではなくて、妊娠の可能性があるないで分け たというふうに議論がまとまったというふうに記憶しております。それで、(5)、(6)が 入ったわけですよね。  皆さんは生殖医療の現実を御存じないみたいなので、(5)、(6)というのを外してもい いんだと思われるのかもしれませんけれども、実際上、何度も何度も、それこそ何百万 円も使っても、何十回もやっても、妊娠されない方はたくさんおられて、そういう方も 対象に含めるというつもりだったのかなというふうに私は記憶しているので、(5)、(6) だってそういうふうになったんだなというふうに解釈していたんです。  もう全くとれない方のみにするというのであれば確かに楽ですし、多分対象は非常に 少なくなりますし、やりやすいとは思いますけれども、そういう発想での議論というの は、不妊症患者さんでどうしてもできないけれども、子どもは欲しいということのため の医療ではないというふうなことで私たちの部会は進めていくということになりますよ ね。そういうことでよろしいんでしょうか。 ○鈴木委員  平山委員の意見の確認なんですが、先ほどの精子に関しては、例えば最終的に妊娠で きない原因とか受精に至らない原因は精子の異常であると医師によって判断された場合 は、精子提供をオーケーにしようよという意味で(5)、(6)、そういう意味ですよね。今 もおっしゃっていた、同じように、加齢は除外しても卵に原因があるなら、最終的にそ れも卵提供の対象にしていいのではないかということですよね。 ○平山委員  そうです。 ○矢崎部会長  そうしますと、精子にも卵子にも(5)、(6)は入るということになるわけですかね。 ○松尾委員  先ほども発言したんですけれども、(5)、(6)が違和感を感じるのは、(4)までのものと 対応構造になっていないことによります。(5)と(6)は病態として1つにまとめられると 思います。そしてその上で表現を少し変えたらいいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  確かに、おっしゃるように(1)、(2)、(3)、(4)と(5)、(6)はちょっとランクが違いま すよね。  そうしますと、今にわかに結論づけるのが難しい感じでございますので、一応(1)から (4)までは皆さん当然御了承いただく。(5)、(6)に関しては専門委員の方々と私どもで対 応をもう少し、松尾委員が言われたように、(1)から(4)までのスタンスで議論すると、( 5)、(6)というのがなかなかなじめないところがありますので、これについては、余り先 に延ばしたくないんですが、もう少し詰めさせていただきます。  それでは、次に進んでいただけますか。 ○対策準備室長  今、御検討いただいたところと関連しているわけですけれども、AID以外の部分と いうのも同様に修正をしております。  4ページ目、提供精子による体外受精において、検討結果としましては、つけ加えて いる部分としましては、「提供精子による体外受精を受けることができる夫婦の考慮す べき基準の具体的な内容としては、夫に精子の提供を受ける医学的な理由があり、かつ 、以下のいずれかの場合であることとする」ということで、「(1)妻に卵管性不妊症 や免疫性不妊症など、体外受精を受ける医学的理由がある場合」、(2)としましては 「AIDを相当回数を受けたが妊娠に至らなかった場合」ということです。  続きまして、提供卵子による体外受精につきましての検討結果ですが、つけ加えた部 分としましては、「提供卵子による体外受精を受けることができる夫婦の考慮すべき基 準の具体的な内容としては、当分の間、妻に妊娠の継続が可能な子宮があり、かつ、臨 床的診断として自己の卵子が存在しない場合や存在しても事実上卵子として機能しない 場合などの卵子の提供を受ける医学的な理由がある場合に限ることとする」ということ でございます。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○松尾委員  この文章ですけれども、「当分の間」という副詞は「限る」というところにかかるん でしょうか。そうなら、後ろへずらしたらどうですか。 ○矢崎部会長  どうでしたか、吉村委員。 ○吉村委員  文章としては「当分の間」以下に全部かかるんですよね。 ○矢崎部会長  文章としては、今松尾委員が言われた、当分の間限るということになるわけでしょう ね。  ここの部分に、「臨床的診断として自己の卵子が存在しない場合や存在しても事実上 卵子として機能しない場合」というのが、先ほど平山委員が言われた(5)、(6)のところ に入ってくるわけですよね。たしか、今までの議論では、そのまま事実上卵子あるいは 精子として機能しない場合などの云々というのはすっすっと通ってきたような感じがし て、今改めて議論の基になったわけですが、これも先ほどの基本的な問題になるので、 自己矛盾を来してしまって、先ほどの議論にここで戻ってきてしまうんですよね。  たしか、今までの議論では、卵子があっても機能しない場合には、そういう部分があ ってもいいのではないか、すなわち、最初から卵子がない人はすっすっと提供を受ける のに、なまじ卵子あるいは精子があって、何度も何度も苦労してやっていても結局妊娠 できなかったという人が出てくるので、そういう方にも道を開いてあげましょうかとい うのが前回の意見です。ですから、わかりやすく無精子症とか、卵子がないという方は こういうふうに決めると極めて有利で、実質上は、幾ら苦労してもお子さんが得られな い夫婦はどういうふうに対応するか、そういう難しい議論があって、そういう方もそう いう道が残されてもいいのではないかというので、恐らく(5)、(6)が入ってきたのでは ないか。 ○石井委員  そこまでの議論はしていないと思うんですけれども、前回の議論は一致していたんで しょうか。 ○矢崎部会長  私の記憶では、卵子、精子がない人は非常に早くこういうような生殖補助医療が受け られるのだけれども、何度トライしてもだめな人は、苦労したけれども、全然こういう 治療を受けられないのではないかということもあって、この5ページの青字のような部 分が考慮されて、その結果として基準として別紙1ができた経緯があったと思うんです ね。そのときは余りそういう深い議論はなかったかもしれませんですね。 ○石井委員  先ほどのあそこで委員長に預けたんですけれども、ここもその結果によって決まるの ではないかと思います。  1つだけ質問なんですが、「当分の間」というのを入れた意味はどういうことなんで しょうか。 ○矢崎部会長  それも含めて議論させていただきます。 ○町野委員  確認したいのですが、今石井さんが言われたように、最初の段階ですでにこの問題は 出てきていましたね。そのところで十分詰めた議論が行われなかったという感じは、私 もしていました。  今部会長がまとめられたところにると、どうやら受精能力ということに置き換えると いうことに、もう部会としては考えるようになってきた。まず、その点はよろしいんで すかということです。その確認があって、初めて次の問題に進めるはずなんですが、そ れはもう確認済のことなんでしょうか。 ○矢崎部会長  今申し上げたのは、(1)から(4)まではもういいわけですよね。 ○町野委員  (1)から(4)までいいということは、結局、今の受精能力の有無ということを考慮した 基準になっているということです。精子・卵子が存在しても、つまり「精子・卵子が得 られないとき」という中に、「受精能力のある精子・卵子が得られないとき」も入るん だという具合にもう決まっているということなんでしょうか。 ○矢崎部会長  受精能力のないというのは、明らかに受精能力がないというものを言っているわけで 、機能的に受精能力のないというものはまた別問題で、それが(5)、(6)に入ってしまう ので、それはまた別扱いにしましょうということです。 ○町野委員  その2つの差がどこにあるか、私はちょっと理解しがたいんですが、それは置くとし て、とにかく物理的に精子・卵子があるということではないのだということでしょう。  そうすると、次に先ほどの「当分の間」ということの理解ですが、今のような受精能 力の有無ということで考えると、現在の医学の限界からするとかなり判断しづらい限界 線上のものが出てくる。それが(5)、(6)のような場合だ。だから、当分の間こういうも のについては厳しい基準でやらざるを得ない、「当分の間」というのは結局そういう意 味だという具合に理解してよろしいでしょうか。その件もまた後で検討されると言われ れば、それは結構ですけれども。 ○矢崎部会長  そういう理由かどうか、私自身も自信がないので。ですから、今、町野委員が言われ ましたように、機能的な不妊症を対象にするかどうか。機能的というのは、アカデミッ クに、科学的に。 ○町野委員  済みません。だから、私は「機能的」という言葉は避けて、そういうあれではなくて 、卵子・精子の受精能力ということで申し上げたわけです。機能なら、いろいろ問題が 別のところにありますから。 ○矢崎部会長  今、町野委員から御提言いただきましたが、その辺のコンセンサスがないときに、私 もまとめようがないので、ほかの委員の方からも御意見をいただけますか。その場合、 医学的な理由がないわけですよね。 ○吉村委員  簡単に言えば、町野先生がおっしゃったことでいいと思うんですけれども、受精卵が 得られないということは受精能力がないわけですね。それから、受精卵が得られたとし ても妊娠できない場合というのを考えますと、それは主には胚の発育が起こっていない ということですよね。その2つのケースは必ずあるわけですから、5番目と6番目の違 いはそういったふうに理解をしてくださればよろしいと思います。ですから、受精だけ ではなくて、受精後の胚発育が起こらないということも勿論あるわけですから。  こういった点については、精子に関しては比較的研究がしやすいという点もあって、 いろいろな意味でわかってきている。しかし、卵子に関しては、人の卵子というのは使 うことはできませんので、卵子のクオリティーの評価というのは大変に難しい。実験に 使うことが非常にできない。 ○矢崎部会長  そうしますと、私自身が徐々に記憶が戻ってきましたが、今吉村委員が言われたよう に、今はアカデミックにわからないけれども、医学の進歩が著しいので、もしかすると 、今までは受精能力あるいは受胎能力があると判断していてもなかなか受胎しない原因 がわからなかったけれども、2年後にはそれがインビトロと申しますか、取り出した状 態で科学的に診断できるかもしれないと。 ○吉村委員  多分、そういう意味でいいと思うんです。 ○矢崎部会長  そういう診断技術が開発されるまではという、「当分の間」ではなかったかと思いま す。申し訳ありませんでした。  そうしますと、時代とともに(5)、(6)の方々というのはどんどん少なくなってきて、 医学的にも精子・卵子を見ればすぐ診断ができるようになるかもしれないので、時代と ともに(5)、(6)というのは解決されていく可能性はありますね。だから、どんどん適用 が拡大するというのとニュアンスがちょっと違うように思いますが、また(5)、(6)に戻 ってしまいますが。  ですから、この検討部会でそういうケースもカバーしていいという意見をいただけれ ばまとめることができるんですが、それが絶対にだめだということになると、ちょっと まとめようがありませんが。 ○鈴木委員  質問していいですか。結局、私自身はあるなし、レベル1ですよね、物差しのここで 、あるなしで一つ線引きがあるんだと思っていたんです。ない人に限るというふうにこ の議論が進んできたのではと思い込んでいました。どうやらそうではなかったんだとい う御意見が今あって、あっても、それこそ事実上機能しない場合も入れましょうという 考え方がもう一つあると。そこまではわかるんですが、今の部会長のお話だと、さっき 言ったように、例えば正常に見える卵がちゃんととれる、あるいは正常に見える精子が ちゃんと採取できる、そういう人でも何度くり返しても妊娠できない場合はこれの対象 になるというふうな感じで今お話を聞いてしまったんですが、その3番目のレベルも入 れるんですか。私は、2番目のレベルまでの話までならわかるなというふうには思って 聞いていたんですけれども。 ○矢崎部会長  確かにそうですね。だから、議論は恐らく3番目のレベルですよね。どこが正常でど こが異常というのがなかなかわからない世界ですので、もう少し学問が進めば、繰り返 しになりますが、今まで正常と思われていたのが異常という診断ができるようになりま すが、今はできないので、そのあたりは含みを持たせてこういうふうにまとまったので はないかと思います。余り専門的な細かいことまで全部規制して区切ってしまうのも。 私としてはそれでいいのかなという気もしますが、いかがですかね。 ○松尾委員  私は含めることに反対ではないんです。(5)と(6)というのをまとめまして、くり返す ICSIによって不妊、不育の例というような形でまとめたらどうかと思うんですけれ ども。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。それでは、一応そういう方向でまとめさせていただきたいと 思いますので、よろしくお願いします。  それでは、次の検討課題です。 ○対策準備室長  続きまして、9ページから10ページにかけまして。 ○鈴木委員  その前に済みません。5ページの波線部分というのは新しく入った項目でしたか。2 つ波線のある囲みがありますが、ちょっと確認を。 ○対策準備室長  これは前回議論をいただいて御理解をいただいたものということで、ほぼ確定に近い ものということでこのような書き方にしております。ちょっとわかりにくい部分がござ いまして、申し訳ございません。 ○鈴木委員  では、1つだけ確認ですが、提供精子による顕微受精は必然性があるんですか。ある という議論だったんでしたか。ちょっと確認させてください。 ○吉村委員  これは理論的にはないことはないと思います。例えば兄弟、姉妹からいただきたいと いう方がお見えになったとすると、そういうことだってあってもおかしくない。例えば 、兄弟、姉妹が認められるということになれば、そういうこともあってもおかしくはな いではないでしょうか。兄弟で両方とも精子が少ないということがあってもおかしくな い。 1人が無精子症で 1人が乏精子症だということがあっても、全然おかしくはない。 ○平山委員  それだけではなくて、実際に提供された精子であっても、体外受精をして受精しない ということはかなりあると思うんですね。そのときに別にすぐ卵子提供にいかなくても 、精子提供でICSIをすればできる場合というのはかなりあると思うんですね。だっ たら、これはあってもいいと思うんです。提供された精子による体外受精では妊娠でき ないと判断された場合に、では次に提供精子によるICSIであって、それでもできな い場合はというのがまた次にありましたよね。だから、そういう意味かなと私は思って いたんです。 ○吉村委員  一般的にAIDの提供に関しては、精子の所見が正常であるということが前提条件に なっておりますので、鈴木さんのように疑問に思われることは私は事実だと思うんです ね。しかし、今平山先生もおっしゃったケースもありますし、兄弟からもらうときにそ ういうことだって起こり得る可能性はありますし、これは別にそれほど問題なことでは ないのではないかなと思います。 ○鈴木委員  実施して悪いといこうとではないんですけれども、つまりICSIを必要とする精子 の場合、最近不妊遺伝子というんでしょうか、そういった男性側の因子が子どもに伝わ るのではないかという心配も指摘されているわけですよね。それをあえて提供という技 術の中で持ち込む必要があるのか、私は疑問は感じました。勿論、受ける方がそれでい いというふうな形で納得されればいいことなのかもしれませんが、あえて入れることが 安全、もしくはその後の考えるといいのかどうか、ちょっと不安ではあります。 ○矢崎部会長  その判断はなかなか難しいですね。 ○吉村委員  確かに、私のところなどではそういう研究をしておりますし、ICSIは危険ですよ といったことは私たち常々皆さんに話しております。しかし、実際においてプラクティ カルにやる場合に、こういったケースも想定しておかないと、せっかく提供していただ いて子どもをつくろうと思っている方が、精子をいただいたんだけれども、普通の体外 受精では受精しないといった場合に、その精子を有効に生かすためにICSIをすると いったこともおこりうる。当然のことながらそういったときには遺伝子も調べなければ いけないかもしれないし、そういったことを調べた後に、例えばクライアント夫婦がそ れでいいとおっしゃるならば、そういったことは起こり得るということでこういったこ とが書かれたんだと私は理解しているんです。  確かに、もらってやるのに、あえてそのような精子を使わなくてもいいのではないか なということは、おっしゃるとおりだと思います。 ○加藤委員  頭の体操をするために書いたんですかね。 ○矢崎部会長  ただ、いろいろのケースを考えながら。これは別紙の中に入るべき文言ですかね。こ れは本文でないかもしれませんので、ちょっと細かいことですので、いろいろなことを 考えて処理させていただきます。  それでは、次、よろしいですか。 ○対策準備室長  では、戻りまして、9ページから10ページにかけての提供に対する金銭の授受に関す る部分ですが、ここの表現振りにつきまして修正をいたしました。提供を受ける人と提 供者の間の金銭の対価の授受については、「実施医療施設または公的管理運営機関は、 提供を受ける者と提供者の間の匿名性を担保できる方法で提供を受ける者から医療費以 外の実費相当分の金銭を受け取り、提供者に渡すこととする」と。  続きまして、医療費以外の部分に対応しまして、医療費ということですが、「提供者 が精子・卵子・胚を採取するためにかかった医療費については、提供を受ける者が全額 負担することとする。実施医療施設や公的管理運営機関は、提供を受ける者と提供者の 間の匿名性を担保できる方法で医療費に関する金銭の授受を行うこととする」というこ とで、どちらも匿名性を担保できる方法という点を強調する内容にしてございます。 ○矢崎部会長  前回は、実費相当分ということでしたが、今回は提供を受ける人と提供者の間の対価 の授受についてどのように行うかということは、実施医療施設または公的運営機関が匿 名性を担保して行うということですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○石井委員  意見ではなくて確認なんですが、私は個人的に事務局の方とお話しして確認したんで すが、今委員長がおっしゃったように、これは匿名性を担保する方法で金銭の支払いが なされるということに意味がありますので、かかった人の分をもらった人イコールで実 費相当分のやりとりが必ずあるということを意味するものではないと。AさんからBさ んがもらう、Aさんの費用そのままがBさんということではないということですね。 ○矢崎部会長  そういうことではないです。恐らくどこかでプールされたもので、そこから相殺され るのではないかと思います。 ○石井委員  下の「全額負担する」という趣旨も、すべて提供を受ける側が実質的に全額負担しな ければいけないということの趣旨でもないということですね。保険制度とか、いろいろ な形での仕組みを考えて、負担の仕方ということは考えるということですね。 ○矢崎部会長  だけど、額としては全額は支払いますということですよね。 ○石井委員  この趣旨は、提供した側が負担することはないということを意味するのではないんで すか。 ○矢崎部会長  そういう意味です。 ○吉村委員  提供を受ける者が負担するんですよね。クライアント夫婦が負担するんでしょう。 ○矢崎部会長  そうです。ただ、それは必ずしも1対1の対応でないかもしれないということで、ケ ースバイケースになると思います。よろしいでしょうか。  それでは、次の青字はどこですか。 ○対策準備室長  13ページから14ページにかけての出自を知る権利の部分についてですが、これは簡単 に書いておりますけれども、「別紙2のとおりとする」ということで、別紙2の内容と しましては前回御議論いただいた内容そのままを確定したものとして掲げてございます 。 ○矢崎部会長  この間の御意見では、開示に当たっての説明・カウンセリングを国でしっかりサポー トしてほしいという御意見があって、これについては文章には書けませんが、一応国と してもいろいろな方法でサポートするというふうな理解でよろしいわけですね。国とし てサポートしていただけるわけですよね。  恐らく、今まで議論がありましたように、それに携わるような方々の人材育成とか、 どういうふうに説明・カウンセリングを進めていくかという大筋のやり方とか、そうい うのは今後公的運営機関を含めて検討させていただくというふうな理解でお認めいただ ければ、この別紙2で出自を知る権利をまとめさせていただきたいと思います。よろし いでしょうか。 ○平山委員  補足意見ですが、イギリスでももうそろそろ情報をHFEAの方に開示請求をする年 代に近づいてきたようです。そのために、今日届いたのでまだ全く見ていないんですが 、HFEAの不妊カウンセラーのグループがどういうふうに伝えるかというガイドライ ンが今年できたみたいなんですね。ですので、やはり私たちもそういうふうにつくって いくというのが必要ではないかなと思います。 ○矢崎部会長  ですから、この検討部会は大筋をこのように示させていただいて、実際のガイドライ ンとか、そういうものは今後具体的に詰めていただくということで御理解いただければ と思います。 ○才村委員  こういうふうに支援する体制が整えられるということが、15年後を目標につくってい ただけたらありがたいなと思うんですけれども、この間の論議で少し意見を言わせても らったところで、別紙の2ページ目の上の公的管理運営機関の開示に当たっての説明・ カウンセリングのところなんですけれども、 2番目の丸ですが、「開示に関する相談が あった場合、予想される開示に伴う影響についての説明が行われ、カウンセリングの機 会が保証される」というところに、できたら、カウンセリングだけではなくて支援体制 ですね、体制という言葉でなくてもいいので、例えばカウンセリング等でもいいんです けれども、もう少し訪問等、出動して支援ができるような援助か何か、そういう言葉も 入れてもらえないのかなと思うんです。  だから、説明とカウンセリングだけになっているんですけれども、できたらカウンセ リング等でもいいですし、支援か、子どもに対する援助、何かそういうふうなものが入 らないのかなというふうに少し思います。 ○矢崎部会長  「カウンセリングの機会が保証され」と「特段の配慮を行う」という中にそういう意 味が含まれているのではないかなと思います。  それでは、「カウンセリング等」と入れていただいて、これに関しては恐らくこれが 実際に法案となって通った場合には、当然そういうことに関するディスカッションがあ ると思いますので、そういうふうに御承知おきいただければありがたいと思います。 ○鈴木委員  言わずもがななのかもしれないんですけれども、結局これが適用されるのはこの制度 の枠の中で開始した人に限るということですよね。過去にさかのぼっての適用はできな いというようなお話は当然ありましたけれども、何かそういった補足を入れておく必要 があるのかどうか、そこはちょっとわからないんですけれども。 ○矢崎部会長  これは、これが実施されてからのことですよね。ですから、それは何かなかったんで したか。 ○加藤委員  町野さんはこの前、過去にさかのぼるべきだと。 ○矢崎部会長  それはちょっと無理だと思いますけどね。 ○加藤委員  町野さんの権利解釈だと、さかのぼるべきだと言ったような気がするんだけれども。 ○矢崎部会長  それはまた違う議論なので、これはここが行われてからの話ですので、そういうふう に理解していただければということです。 ○鈴木委員  報告書を出すときに書いておく必要はありませんかということだけです。 ○矢崎部会長  これはどうでしょうか。事務局で何か。 ○雇用均等・児童家庭局長  議論があったのなら書いた方が。 ○加藤委員  書いておかないとというのは、開示しないという約束で提供されたものは、だまし討 ちでもって実は開示されてしまうという結果が起こり得るわけですよね。 ○鈴木委員  今現在受けている方、受けてきた方が、今回の新聞報道や何かで随分動揺されている のではないかと思うんです。 ○加藤委員  だから、だまし討ちで開示されてしまうということで動揺しているというのではない んですか。 ○鈴木委員  だまし討ちと言われると、ちょっとわからない。 ○加藤委員  開示しないという条件で提供した人が、約束が守られないで開示されてしまうのでは ないかと。 ○鈴木委員  そうではないかというおびえを抱いている方もいらっしゃるかもしれないということ です。 ○渡辺委員  今の議論に関しての参考資料ですけれども、今平山委員がおっしゃったイギリスの例 が私の方にも届いておりまして、2月1日付の『British Medical Journal 』なんです けれども、AIDで生まれた子どもが国を相手取って人権の問題の訴訟を起こした結果 、現時点で厚生労働省大臣が法律を変えようというふうに言い始めまして、自分の出自 のアクセスをより広げようということが起きていまして、この場合は今から生まれた子 ではなくて、1990年に生まれた人以降というふうに規定しているんですね。  ですから、この規定をいつにするかという問題を明確にしないと、現在例えばイギリ スで法律的に訴えている人に対しては何もできないことになりますから、改めてこうい うい世界の動きがあるときに、今までの流れをイギリスはあえて法律によってさかのぼ って変えようとしているという動きで、まだ結論は出ていないんですけれども、そうい うことも少し考えて明確にした方がいいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  わかりました。では、この検討部会では「これが施行されて以降の」という文言をど こかにつけ加えて入れていただきたいと思います。 ○松尾委員  もう一つよろしいでしょうか。資料1別紙2の2ページの4ですけれども、「子ども が生まれた後の相談業務」というところですが、これは実施医療機関が主体であるべき で、生まれた子どもに関する相談については実施医療機関が児童相談所及び公的管理運 営機関と連携をとりながら対応するという趣旨で、主体者をはっきりさせた方がいいと 思います。 ○矢崎部会長  それは難しいところですね。それは直近の問題はある程度できますけれども、そうい うふうに規定してしまうと、理由は何か。 ○松尾委員  少なくとも、ここの中に実施医療機関というのを含めていただきたいと思います。 ○荒木委員  実施医療機関というのは、先生の意味では受精させて子宮に戻すことを行う機関です ね。分娩機関と違う場合はどちらになるんですか。 ○松尾委員  実施医療機関は子どものケアができるところに限るかどうかという議論は、結論が得 られていないと思います。 ○対策準備室長  その部分は前回御議論いただいたところなので修正してございますので、それを踏ま えまして御議論いただければというふうに思います。22ページでございますが、読み上 げます。  「精子・卵子・胚の提供により子供が生まれた後、(1)提供された精子・卵子・胚によ る生殖補助医療によって生まれた子、(2)精子・卵子・胚の提供を受ける夫婦及びその家 族、(3)精子・卵子・胚の提供者及びその家族(提供者の子どもを含む)は、当該生まれ た子に関して、児童相談所等に相談することができることとする。児童相談所等は、必 要に応じて公的管理運営機関等と連携をとることができることとする。公的管理運営機 関や実施医療施設は、生まれた子に関する相談があった場合は、必要に応じて当該相談 に応じ、児童相談所等を紹介するなど、当該相談に対する適切な対応を行うこととする 。国は、生まれた子に関する相談のマニュアルの作成やその周知などを通じて、生まれ た子に対する相談が適切に行われるよう努めることとする」。  以上のように、前回のものに比べまして若干修正を行ってございます。 ○矢崎部会長  そうですね。ここに支援体制の具体的なことが書いてあります。今、松尾委員の言わ れたのはここの別紙の説明にないのではないかというお話ですよね。 ○対策準備室長  こちらの方で確定しましたら、その内容を反映させるようにしたいと思います。 ○矢崎部会長  加えればいいわけですね。ダブってもいいわけですから、ちょっとそこは加えさせて いただければと思います。  次の青色のところがまだ残っているので、松尾委員には、子どもが生まれた後の相談 業務について少しこの本文の青色の部分も書き加えてまとめるということでお願いした いと思います。 ○平山委員  一ついいですか。先ほどの鈴木委員と渡辺委員にちょっと補足です。日付というか、 これ以降のというのを規定することは重要なんですが、実際イギリスは1990年以降とい うことになっていますが、このカウンセリングの情報提供をどうするか、伝えていくの をどうするかというガイドラインに、90年以前に生まれた子どもとその家族に対するケ アについても考えていこうというふうなリコメンデーションがありますので、そういう 形で、知る権利は規定上はこうなっているけれども、ケアとしてはちゃんと体制が整え ていくんだよということを決めているようですので、そういう形にしていくのが現実的 かなと思います。 ○矢崎部会長  これは、今までの生殖補助医療のいろいろな問題点を踏まえて、新たな医療として定 着させようということですので、今回はこれに限って、今までの生殖補助医療のいろい ろな問題点に関しては、勿論夫婦間のものもあると思うんですが、それはちょっとまた 違う検討会を是非事務局でやっていただいて検討していただけばということで、今回は これが実施された以降のことに限定させていただきたい。それがわかるようにしたいと 思います。 ○鈴木委員  確認です。開示請求ができるのは勿論実施以降の方ですが、相談をしていいのはそれ 以前の子も含まれると考えていいですね。つまり、それ以降の生まれた人しか相談に乗 りませんよという体制では困ると私は思います。 ○矢崎部会長  いかがですか。 ○雇用均等・児童家庭局長  いいと思います。 ○矢崎部会長  大変強力なサポートが出ましたけれども。 ○吉村委員  そういうことは理想的なことですけれども、テリングしていませんのでほとんどの方 が知らないので、物理的に困るとか、そういうことはないと私は思いますけれども。ほ とんどの方はテリングされていないので、余り問題のあることはないと私は思います。 ○矢崎部会長  現時点ではそうですが、これから情報開示の時代になって、いろいろな予測できない 事態が起こり得るので、それに対しては今局長が言われたように、それに対しても今後 は検討していただくということで御理解いただければと思います。よろしいでしょうか 。  それでは、青字は22ページが最後ですか。今、読んでいただいた部分ですが、よろし いでしょうか。それで、先ほどの才村委員と松尾委員からお話しになった子どものサポ ートについて、更にここに踏み込んだ記載がありますので、そこを別紙の方にも書き加 えていただいて、国としてもサポートしていきますよ、サポートしていくことを了承し てくださいというこの部会の報告ということにしたいと思います。 ○松尾委員  一つよろしいですか。本文の3ページの一番下の(要検討事項)という囲みのところ ですけれども、「優先順位を設定する」ということに関して主語は一体何なんでしょう か。どこが設定するのかというのを確認した方がいいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  優先順位については、シェアリングとか、そういうのが全部定まってからですね。こ れはケースによって違うんですかね。 ○吉村委員  でも、この事務局が出されているのを見ますと、マッチング業務というのは公的管理 運営機関がやるというようになっているんです。 ○対策準備室長  よろしいでしょうか。その際に基準をもって運用するということになります。ですか ら、それは公的管理運営機関といいましょうか、こちら側の基準を設定するということ でございます。 ○矢崎部会長  ですから、提供より提供を受けることを希望する方が多い場合には、公的運営機関が マッチングする。 ○松尾委員  通常,公的機関はある決まった基準に適合しているかどうかということを判定するわ けです。その基準作成は専門学会が主体的にするか、あるいはどこか別の公的機関が。 ○矢崎部会長  その優先順位をどういうふうな順番にするかはまだこれから決めないといけないこと で、これに関しては、希望者が多い場合には公平と透明性を保つためにしっかりした優 先順位のクライテリアをつくって、しかも公的運営機関が第三者的に決める。そういう 内容だと思います。 ○松尾委員  わかりました。今後の議論ということですね。 ○矢崎部会長  公的機関がやるということはもう決まっていますが、優先順位は、吉村委員、たしか 最終的にはまだ決まっていないですよね。 ○吉村委員  科学研究で決められると思います。 ○矢崎部会長  専門の委員の方にお願いしたい。  以上が、大分時間をとっていただきましたが、前回までの青字のところでございます 。宿題は、先ほどの出自を知る権利について、別紙のサポートの体制についてもう少し 本文にあるのをつけ加えるということと、それから別紙1の医学的な理由について御議 論がありましたが、皆様の御意見では(1)から(4)まではある程度理解は十分できる、(5) 、(6)に関しては同列にはかけられないので、松尾委員の御提案で、これについては余り 誤解のないようなわかりやすい文言に変えて、次回専門家の御意見を聞きながらまとめ させていただくということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。  それでは、今日の議論の本題です。残された赤字の部分を議論を進めさせていただき たいと思います。よろしくお願いします。  では、事務局からお願いできますか。赤字は兄弟姉妹の提供が課題でありますが、兄 弟姉妹からの提供となりますと、匿名性が保持できないので、匿名性保持の例外として 兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることとするかどうかということで、11 ページにございます。 ○石井委員  その議論に入る前に1点よろしいでしょうか。33ページですが、ここで議論するのは 適当でないというのはこの前これが問題になったときの議論で明らかですので、議論は しないんですが、この間説明があったときもそれで承っておいたんですけれども、私と してはこの同意の開示についてもう少し制限的にした方がいいと思っているんですね。 開示請求について、裁判所からの請求等をかなり限定的にしないと、かなり重要な個人 情報ですので、簡単にほかの人がアクセスできる道を開かない方がいいのではないか。 これだと訴訟前でもできるという形で、利害関係人ができるという形にした場合には、 情報がかなり広く知ることができるようになってしまう危険があるのではないかと思う ので、その点については実務として進めるときにはもう少し検討していただきたいとい う希望を述べておきます。ここでこれ以上議論しても無理ではないかと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。これは法制局の方のお考えで、こういうふうに訴訟の前にあ る程度情報開示できる道を残しておいた方がいいのではないかということでございます が、今石井委員が言われたプライバシーの保護で、これは大変なプライバシーの侵害に なりますので、それについては十分留意して対応するということで、これはどういう形 で残しておいたらいいですかね。 ○石井委員  報告書の中にこうやって入れてしまうと、これで決まったということになってしまう と困るというふうには思うんです。 ○鈴木委員  この部会でいろいろ議論した記憶は私はありませんが。意見は出ていましたけれども 、こういうふうに丸をつけるほどの話し合いができていたかどうかは疑問ですが。 ○矢崎部会長  2時間近くこれについては議論されましたが、ほとんど議論していないというと心外 です。随分時間をかけてこの親子関係の。 ○石井委員  鈴木さんは、この結論をいいですかという議論をしていないという趣旨です。 ○鈴木委員  丸をつけるということに関しては。 ○矢崎部会長  こういう文言を前々回にまとめとして出していますよね。資料はありましたか。 ○石井委員  1度説明を受けたということは認めます。そのときは、前回の議論が余り生産的でな かったので、それ以上議論することに意味を認めなかったので何も言わなかったんです が、こういう形で報告書の中に入ってくるとすると、これで決まっているから以後これ になっていくとすれば、ちょっと待ってくださいということで今発言させていただいた という趣旨です。 ○矢崎部会長  そうしますと、今のプライバシーの問題については。 ○石井委員  もう一度、事務局で取扱いをどうするかを考えていただいて提案していただいた方が よろしいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  今、石井委員の言われた趣旨を生かして。 ○加藤委員  むしろ、石井さんの意見はこういう点に留意すべきであるというような文言にして、 この委員会では開示条件について手続面まで踏み込まないような形にした方がいいので はないですか。石井さんのこういう主張をしたことについて、こういう点を留意しなけ ればならないという文言を残しておく。 ○矢崎部会長  これは大分法制局の御意見を伺ったんですよね。今、石井委員が言われた 3番目の点 ですよね。  でも、石井委員としては、こういう項目はなくていいんですかね。 ○石井委員  私は、裁判所の命令に従って開示するということでも困らないのではないかと思って いるんですが、今は何でも裁判ではなくて事前的に処理しようという法務省の意向があ りましたけれども。 ○矢崎部会長  この間はそういうお話でしたよね。 ○石井委員  訴訟前でもということになりますと、利害関係人から請求して公的管理機関が対応す ると、今の戸籍のあれみたいに、一定の人から請求があれば認めるみたいな、そういう 形になっていく危険性があって、それはかなり危険なのではないかなと私は思っていま す。 ○矢崎部会長  わかりました。そうしますと、今の御意見を参照して、同意書の開示請求に対する対 応については事務局と相談して、また石井委員にも相談して、これをまとめさせていた だきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは、11ページの匿名性保持の特例についてということで、事務局から専門委員 会報告から説明していただけますでしょうか。 ○対策準備室長  この部分につきましては、前回の出自を知る権利と同様に、一つの考え方を、結論を 仮定として置きまして、それに対しての考え方をこれまで検討いただいたものから整理 をしたということで、資料2の中にまとめてございます。こちらの方を読ませていただ きまして、これまでの論点を踏まえてまた検討いただければと思います。 ○矢崎部会長  資料2に入る前に、11ページの検討結果の案を読んでいただけますか。匿名性の保持 の特例から読んでいって、その後別紙に移る。それで、皆さんの意見を聞いた後でまた 、最初からそういうことではない方がいいと思いますので、11ページから読んでいただ けますか。 ○対策準備室長  精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例につきまして、専門委員会報告書 では、「精子・卵子・胚を提供する場合には匿名とする。この場合の匿名とは、精子・ 卵子・胚の提供における提供する人と提供を受ける人との関係の人を示している。精子 ・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例として、精子・卵子・胚を提供する人が 兄弟姉妹等以外に存在しない場合には、当該精子・卵子・胚を提供する人及び当該精子 ・卵子・胚の提供を受ける人に対して、十分な説明・カウンセリングが行われ、かつ、 当該精子・卵子・胚の提供が生まれてくる子の福祉や当該精子・卵子・胚を提供する人 に対する心理的な圧力の観点から問題がないこと及び金銭等の対価の供与が行われない ことを条件として、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることとする。兄弟 姉妹等から提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行う医療施設は、その実施 内容、実施理由等を公的管理運営機関に申請し、当該生殖補助医療が上記の要件に則し て行われるものであることの事前の審査を受けなければならない」、こういった内容で ございました。  これまでの検討の状況としましては、精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の 特例として、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることとするかどうかにつ いては、案1としまして、「兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供」を認める。  案2としまして、「兄弟姉妹のみからの精子・卵子・胚の提供」を認める。  案3としまして、「姉妹等からの卵子の提供」のみ認める。精子・胚については、兄 弟姉妹等からの提供を認めない。  案4としましては、「兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供」は(当分の間)認め ない。当分の間認めない場合は、精子・卵子・胚を提供する人の匿名性が保持された生 殖補助医療が実施されてから一定期間経過後、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供 による生殖補助医療の実施の是非について再検討することとする。  こういった内容でございました。 ○矢崎部会長  前回はこのような案が出て議論が行われました。この点について、もう一度委員の皆 様から御意見をまず伺ってみようと思います。 ○古山委員  「兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供」という「等」という文字がございますが 、その「等」の中に、義父が入っているのか、入っていないのか。精子提供者は満55歳 未満の成人とするということでしたら、義理のお父さんも入り得ることになりますので 、もし義理のお父さんから提供を受けた場合には、親子関係の確定において重大な問題 が起こるのではないかと思います。従って、「兄弟姉妹等」の中に義父が入るかどうか ということ。それを除外するかどうかということも含めて考えていただきたいと思いま す。 ○荒木委員  そういう例が何年か前に、西日本のある医院で行われた事実はあるんです。お義父さ んの精子をもらって妊娠して生まれたという事実がありますので、やはりはっきりして おいた方がよろしいと思います。 ○矢崎部会長  それでは、今具体的な案件に入ってしまったので、最初に資料2の「匿名性の保持の 特例の是非」ということからまず御意見を伺っていきたいと思いますので、事務局から 説明をお願いします。 ○対策準備室長  資料2につきまして説明申し上げます。こちらの方は、先ほど申し上げたように、前 回と同様、一つの考え方を示しまして、それに至る道筋をこれまで議論いただいたもの から整理をして並べているものということでございます。  まず、匿名性の保持の特例の是非についてですが、「精子・卵子・胚の提供における 匿名性の保持の特例を認める。精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例とし て、匿名性が担保できる提供者が存在しない場合には、精子・卵子・胚の提供者及び提 供を受ける人に対して、十分な説明・カウンセリングの機会が保証され、かつ、当該精 子・卵子・胚の提供が生まれてくる子の福祉や当該精子・卵子・胚を提供する人に対す る心理的な圧力の観点から問題がないこと及び金銭等の対価の供与が行われないことを 条件として、匿名性を担保できない者からの精子・卵子・胚の提供を認めることする」 ということでございます。  こちらの考え方に至る道筋としまして、提供者の確保としまして、「精子・卵子・胚 の提供の対価を受け取ることを禁止することから、提供者がリスクを負うこととなる卵 子の提供をはじめとして、精子・卵子・胚を提供する人が兄弟姉妹等以外に存在しない 事態が起こり得ることも想定されるところである」。これは専門委員会報告による内容 でございます。  続きまして、匿名性が担保できない場合の弊害としまして、「しかしながら、兄弟姉 妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることとすれば、必然的に精子・卵子・胚を提 供する人の匿名性が担保されなくなり、また、遺伝上の親である精子・卵子・胚を提供 した人が、その提供を受けた人や当該提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に より生まれた子にとって身近な存在となることから、精子・卵子・胚を提供した人が兄 弟姉妹等でない場合以上に人間関係が複雑になりやすく子の福祉の観点から適当ではな い事態が数多く発生することが考えられる」。こちらも専門委員会報告によるものでご ざいます。  続きまして、一律禁止の妥当性。「一方、上記のような兄弟姉妹等が精子・卵子・胚 を提供した場合の弊害の発生の可能性を理由として、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚 の提供を、精子・卵子・胚を提供する人及びその提供を受ける人に対して、そうした弊 害についての十分な説明・カウンセリングが行われ、当該精子・卵子・胚を提供する人 及びその提供を受ける人がそうした弊害について正しく認識し、それを許容して行う場 合についてまで一律に禁止するのは適当でないと考えられる」。こちらも専門委員会報 告でございます。  以上が全体的な考え方です。 ○矢崎部会長  兄弟姉妹等からの提供の前に、こういう特例を認めて、こういうこともあり得ると。 一律禁止の妥当性についてはいかがなものかというのが専門委員会の報告だと思います 。 ○加藤委員  「等」の範囲について議論していなかったのではないかと思うんですけれども。 ○吉村委員  結構しましたよ。友人もオーケーということでしましたし。お義父さんは否定的な意 見が多かったと私は理解しています。 ○加藤委員  だけど、いとこやはとこまで認めるとか、親子関係は認めないけれども、おじさん、 おばさんの関係になった場合には認めるとか、そういう範囲の細かい議論は全然してい なくて、今古山先生がおっしゃったような親子関係になるようなものについては感情的 に否定的な意見が多かったと思うんです。しかし、例えば友人だとか、いとこ、はとこ なんかを大体想定していたのではないかと思うんです。 ○石井委員  今のその話をしてしまうと、広げる方の議論が多かったように印象が残ると困るので 、私の印象としては、これは妥協の産物として「等」がついたんですけれども、もとも とは兄弟姉妹も認めないという意見がかなりあって、認めるんだったらなぜ兄弟姉妹に 限るのかという議論があったので「等」というのがついたという形になっているので、 広く認めようという趣旨で専門委員会の報告書はつくられていないと私は思っています 。 ○加藤委員  そのとおりです。 ○矢崎部会長  前回の1回目の議論では、案1から案4までございますように、とにかく一律禁止と いうことはいかがなものかという議論があって、いかに問題なく対応できるかという議 論が随分行われて、この1、2、3、4という案が出てきたのではないかというふうに 理解しています。 ○松尾委員  文章の論理性についてなんですけれども、資料2の一番下の「一律禁止の妥当性」と いう文章ですけれども、「一律に禁止するのは適当でないと考えられる」という結論で すけれども、これは親が全部自己責任が完結するならいいですけれども、結果は子ども にいくわけですから、この文章は矛盾していると思うんですよね。親が全責任をとれる ということであればこれでいいと思いますけれども、そうではないので、ここは是非書 き換えていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  例えばどういうふうに。この趣旨は、もう一切認めないということはやめましょうと いう趣旨だと思うんですが。 ○松尾委員  今すぐ文章は思いつきませんけれども。 ○矢崎部会長  では、また後ほどにでも。これは専門委員会の報告を述べたものですので、この部会 の結論になるわけではありません。一応はこの専門委員会の考え方をベースにして前回 議論が進められて、ここまでに至りましたが、いかがですか。 ○荒木委員  たびたび私どもの学会の意見として主張しているように、やはり私どもは匿名性とい うものを重要視していますので、兄弟姉妹からは認められないということでございます 。  それからもう一つ、これは提供者がいないという前提で決めつけたような委員会報告 でございますが、我々学会としても、更に技術の改良とか、あるいは卵子提供者が多く 現れるような方策というものも努力したいと思いますので、私はこの案でいえば「当分 の間」ということを生かしてもらって第4案をかねがね主張しているところでございま す。その他、細かい理由に関しては常々主張しているとおりで先生方は御存じだと思い ますが、私は第4案を支持したいと思います。 ○鈴木委員  その話に入っていいですね。では、案4を支持いたします。兄弟姉妹からの精子・卵 子の提供に私は反対します。  理由は幾つかありますけれども、先日、出自を知る権利という話し合いの中で、例え ば吉村ドクターがお話しになっていたように、わかってからというんでしょうか、つま り匿名であるということは、提供によって生まれた子や、それで家族をつくっている方 、あるいは提供した人自身やその家族を守るためであるんだなというふうに再認識した という感じがあります。  提供者の存在というのが提供を受けた家族を脅かすことがあってはならないというふ うに感じましたし、もし、全面開示ということであれば、もしかしたらあるかもしれな い開示請求の日まで、親子関係が安定した中で、安心した中で築けることというのはす ごく大事であるというふうに思うんです。  身近に提供者がいるという中ではやはり不安とか、いろいろなことが大きいと思われ ますし、ドナーが親族内にいるということは、才村先生は開示に耐え得る親子関係とい うふうに表現なさっていましたけれども、それを築いていくにはやはりドナーが見えな いということが私は非常に大事であると思いましたので、また学会の方で再三指摘して いる、親族内からの圧力も当然起こり得るものとして私は思いますので、以上のような 理由から私は兄弟姉妹は反対です。 ○福武委員  直接これにかかわるわけではないんですけれども、実際に、例えば妹さんの子どもを 姉夫婦の子どもにするケースがあるんですね。大体それは妹の不倫の子なんです。ある いは、夫がほかの女性に生ませた子どもを夫婦間の子どもにするというケースで、これ は戦前あるいは戦後のある程度のときまでは実際に行われて、戸籍上問題とされず、受 けつけられていたんだろうと思うんです。  それで、どういったところで問題になるかというと、やはり家族はほとんどみんなそ れを知っているというのが現実なんです。どこで育つかというのは別にして。そうした ときに、本当はあの子はうちと同じ兄弟ではないというのが何となくわかってくるし、 あるいは実際の親とか、あるいは戸籍上の親が死亡したときに、一体どうなんだ、戸籍 上と違うではないかというのが、別に遺産あるなしにかかわらず問題になってくるのが 多いんです。ということは、実際に生まれた子にとって、生まれたばかりの時点の話で はなくて、むしろ何十年もたって、ずっとその人間関係の中でいろいろややこしい話に なってくる。それは絶対に解決できない話として残ってしまうんだろうという感じがす るんですね。  そうしたときに、お姉さんや妹さんがオーケーしたよ、周りもオーケーしたよという ことだけでやっていったら、生まれた子どもにとっては何か変な形での生まれ方になっ てしまうのではないかという感じがするんですね。  ですから、実際に今までは直接生殖医療とかかわらない話で問題になってくるのに、 それを人工的な形で認めていくということが本当に将来的にいいかというと、私はかな り否定的なものを感じています。ですから、こういった法律をどこかでつくって、それ を施行してみて、どういったことになるかということを確かめてから、またその時点で 考えた方がいいのではないかという気はいたします。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。 ○石井委員  私も第4案の「当分の間」を。専門委員会も匿名の第三者の提供がなかった場合に認 めると言っているんですから、初めからなかったかどうかわからない段階でそれを認め るという形をつくっておく必要はなくて、施行して提供者が全然いなかったら、せっか く認める制度をつくったのに機能しないのはどうかということで改めて議論して考えて もいい問題ではないかということが1点です。  もう1点目は「等」の問題なんですが、兄弟姉妹を認めるかどうかということ自身は 大変苦しいところで、今、福武先生は否定的におっしゃったんですが、私も認めないと いう結論で、それはそれでいいと思うんです。ただ、我が国の場合、慣行的に逆にそう いう形で行われてきています。また、生体肝移植や何かを見ても、やはり一定の家族と いうものは特別に見るという実態があることは否定できないので、その部分についてだ け限って例外ということはあり得るということの兄弟姉妹だろうと。「等」まで広げて いくと際限がなくなって、このもともとの匿名の第三者の提供によって成り立つシステ ムというものが成り立たなくなってしまって、提供というものはすべてお互いにわかっ ている同士で提供するというシステムになっていく。そういうシステムとしてでき上が ってしまうのではないかという危険が感じられるので、もともとの匿名性の例外が本筋 になってしまうような形での広げ方ということについては反対です。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。専門委員会で「等」を入れた議論はどういうことですか。 ○加藤委員  一律に禁止すべきでないというのは、私の発言からその文言は出たのではないかと思 います。確かに、私の実の父なんていうのは戸籍上の母親と実の母親が違っていて、父 が大きくなってから実の母親が名乗りを上げて出てきたとか、そういう話は私の恩師と か何かでもしょっちゅう起こっていまして幾つもそういう話を聞いていますから、当人 の精神的な苦痛も大変大きかっただろうと思うんです。ただ、それほどのドラマは起こ らないだろうというある程度の予測の中で、相当いろいろな問題は起こるにしても、そ ういうリスクをかけてもやはり子どもが欲しいという人を、一概に全部だめだというの はかわいそうなのではないかという気もするんですね。ですから、一概に禁止しない方 がいいと。だから、状況をよく考えて、これで大丈夫だとわかったら、子どもをつくる 可能性というのを細い道でも残した方がいいのではないかというのが私の考えなんです 。 ○矢崎部会長  「兄弟姉妹等」の「等」を入れられたのは加藤委員ですか。 ○加藤委員  「等」は、私の娘たちが話をしていると、高校時代の友達だとか大学時代の友達で、 卵子が得られなくて子どもができなかった場合には提供し合うというようなことをよく 話をしていますから、同世代の中で提供し合うということで、かなり健全な提供もあり 得るのではないかと思いました。 ○矢崎部会長  この「等」が入ることによって、そればかりではなくて、さっきの古山先生が言われ たようなケースも入ってきてしまう。 ○加藤委員  ですから、もし「等」を入れる場合にはここまでの範囲にするとか、禁止条項という のを当然入れるべきでだと思います。ただ、兄弟姉妹よりも、うちの娘たちが話してい るみたいに、高校の同級生同士で提供するという方がむしろうまくいくのではないかな という気がしますけれども。 ○石井委員  そうなりますと、本当に匿名の第三者の提供、善意の提供によってこのシステムが動 いていく制度ではなくて、知り合い同士が提供し合ってこのシステムをつくろうという 形になっていってしまうのではないですか。 ○加藤委員  匿名性というのを、どうしても全く知らない人から提供されるというほど厳密に考え る必要はないのではないかと思います。 ○吉村委員  「等」が入ったというのは、私がこの専門委員会のときには兄弟姉妹に関しては反対 であった、兄弟姉妹が許されるならば友人がどうしていけないのかと、逆の立場から「 等」を入れたわけですね。  ただ、実際に考えてみますと、専門委員会のときの状況と今の状況は全く違ってきて いるんです。明らかな違いは、やはり出自を知る権利です。これは完全な違いです。  ですから、石井先生はそうおっしゃるんだけれども、例えば実際に兄弟姉妹以外に提 供する人が本当にいるんでしょうか。考えてみてください。私は本当にいないと思う。 卵子提供を考えてみてください。無償で、しかも2週間の制約を受け、なおかつ出自を 知る権利、自分がだれだということがわかって、本当にこの医療ができるか。やはりこ れは真剣に考えないかないと、私たちはこういったガイドラインをつくったんですけれ ども、向こう5年間1例も行われなかったと。例えば兄弟姉妹というのは、私はいいこ とだと決して思いませんが、兄弟姉妹まで否定するということは今の段階ではどうかな と私は思います。  専門委員会の状況のときには、私は兄弟姉妹に関しては反対をしておりました。けれ ども、今の状況において、本当にこの医療をやるためのガイドラインを私たちはつくっ ているのか。その辺をもう一度考える必要がある。そういう意味で、この出自を知る権 利と兄弟姉妹というのは必ずリンクしてくる問題である。この状況下の中でそういった 方というのは、私は想像がつかないんですけれども。 ○鈴木委員  それについて、ずっとペンディングになっているシェアリングのことを私はその点で は前向きに考えてみたいなというふうに思っています。当然ながら、既に体外受精なり 不妊治療で1人子どもを設けた方ということにはなりますけれども、先日も仲間たちと 話していたんですが、不妊仲間の助け合いということで、その方がよほど可能性がある のではないかという声は出ていますし、全くそれがゼロだというふうに考えるのも余り に悲観的過ぎるかなという気もします。むしろ、シェアリングは私は積極的にできるよ うな体制というのも考えてみていいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  そうですね。シェアリングの場合と胚の提供をどうするかということにもなってきま すが、結局は匿名性を保持した提供が、これは例外的な例外ですよね。そういう認識で まとめていったらいかがなものか。  先ほどの医学的理由の(5)、(6)がどんどん拡大解釈されて、安易に行われるような状 況をつくりださないかどうかの心配の発言がありましたが、これについても同様のこと がいえるかと思いますが、吉村委員は、先ほどの加藤委員と同じように、一律禁止とい うのはいかがなものかということの視点から言われたわけですね。 ○吉村委員  そうです。やはり公的管理運営機関で十分な審議をし、例えば兄弟姉妹以外に存在し ない場合という場合も、私たちが実際に行うような場合だと、どういった場合にそうい うことが言えるのかということだって大変大きな問題になってくると思うんですよね。 提供者がいないんですと御本人はおっしゃっているかもしれないんですけれども。  ただ、この場合、例えば精子を提供してください、お願いします、お願いしますとい うような問題ではないですよね。ドナーをどうやって探してくるかということは非常に 大きな問題になってくるだろうと思うんですよね。例えば、特に卵子提供の場合にどう やって卵子提供していただける方を匿名で探してくるのか。これはどこがどうやって努 力されるんでしょうか。そういうことを考えますと、ある一定のこういった公的管理運 営機関でドナーを探してくるようなシステムをつくらないと、これは匿名でできないで すよね。 ○加藤委員  先ほどの松尾先生の質問なんですけれども、この最初の委員会のときに、例えば公的 運営機関に卵子の提供者のリストが上がっていて、またそれを必要とする人も上がって いて、だれとだれをマッチングするかという、ちょうど臓器移植のマッチングと同じよ うな可能性を考えたんですね。その場合には、どうしても公的運営機関がマッチングを しなければ、言わば縁組ができないという形になるのではないかと思います。ただ、そ れが実際そういう方向にうまくいくかどうかは、また別問題です。  もう一つは発言させてください。1つは、法律で出産を禁止するということは非常に 難しいのではないかと思うんですよ。明らかに無理して出産すれば危険ですよという場 合でも、それはお医者さんの説得によって、あるいはまた家族関係の中でそれはやめた 方がいいというようなことで、説得によってやめさせるということはあっても、法律的 に初めから絶対こういうケースについては子どもをつくることが不可能だという制度を つくるというのは、例えば犯罪を禁止するとか不正を禁止するという場合とは違って、 例えばアメリカではロングフルライフといって、子どもが親を訴えるという変なケース があるんですけれども、その場合でも非常に不幸な結果になるとわかっていても、法律 で出生そのものを不正と見なすことは不可能だという判断枠が使われていると思うんで すね。ですから、こういういろいろなケースについて、法律でどうしても禁止しなけれ ばならないというのは、うんと狭い範囲でないと許されないのではないかというのが私 のもう一つ別の考えです。 ○矢崎部会長  これはガイドラインみたいなものですから、禁止するといっても、それに備わった罰 則の規則というのはないわけですから。 ○加藤委員  ですから、それが実際にそういうガイドラインとして運用されるのであればいいんで すけれども、今の状態だと、法律として不可能だということにいくのではないかと思い ます。 ○石井委員  少なくとも、医師はこのガイドラインに従って行わなかった場合には、一定のサンク ションはあり得ると私は考えています。 ○矢崎部会長  それは当然なんですが、自動的に刑事的な責任にどういうふうにつながるかどうかと いうのはなかなか決められないという意味です。 ○岸本委員  以前から同じようなことを言わせていただいているんですけれども、やはりこういう 場で兄弟姉妹は必ず問題があるので認められないということを決めるということ自体が 私は納得がいかないんです。実際、例えば第三者がゼロにしても、たくさんの提供者が いたとしても、兄弟姉妹がいない方は勿論第三者になってくるんですけれども、兄弟姉 妹のいる方で、例えば姉が、妹が本当に妊娠しなくて困っているところを助けてあげた い、何とか力になってあげたいという兄弟愛とか姉妹愛の中で、それを果たして否定で きるのかということですよね。  だから、第三者がいなければ兄弟姉妹を認めるではなくて、初めから私はお姉さんか らだといただきたい、知らない人からだったら嫌だという人も実際にいると思うんです ね。前回募集した国民の意見の中でも姉妹兄弟を認めるべきだという意見が本当にたく さんあって、そういう現実はやはりあると思うんです。  それなのに、こういうところで兄弟姉妹は必ず圧力がかかっているとか、実際に妹も お姉ちゃんもお互いにいいよと言って納得の上で、またカウンセリングを受けてきっち りした形で行うのにもかかわらず、それは必ず問題があるということは断定できないと 思うんですね。  だから、私の会は兄弟姉妹を認めてほしいということなんですけれども、中には兄弟 がいても、第三者からの方がいいという方もいらっしゃいますし、母親が我が子に卵子 をあげたい、という方も実際に今現在おられるんです。そういう中でも、問題があるか ら第三者だけしかだめだとこの場で言うことは、納得できない。私たちはその御家族の2 0年、30年先まで絶対に見えないと思うんです。だから、私も本人たちが兄弟姉妹でした いということをここで禁止するのは絶対反対です。 ○渡辺委員  選択肢を広げて、そしてその結果を私自身が担わないで、次の世代に担わせるという ことは、私は人間的に許されないと思うんですね。  ですから、私が繰り返し申しているのは、この医療は第三者が加わらないと絶対にで きない行為ですよね。少なくとも生殖補助医療というのが加わらないと、こういったこ とができないわけですね。ですから、その加担をしているこの生殖補助医療自身が責任 を持って自分たちの行為の結果を見ていかなければいけない。ただ、医者も人間ですか ら、産婦人科医一人一人が自分がかかわってつくった命を一生負えとは言わない。それ に代わるものとして、公的運営機関をきちんとつくろうとしているということだと思う んですね。  既に公的運営機関をつくっているイギリスのHFEAでは、積極的にいろいろなリス クやメリットをエビデンスとして蓄積しようとしているわけですね。そういった公的機 関でみんなでオープンに考えていこうという姿勢ができない限り、うやむやな部分とか 危険の部分はむしろ隠されて、部分的なものしか国民や人々に知らされていかないとい うことがあると思うんですね。  私はいろいろな御議論を伺いながら思ったんですけれども、吉村先生がおっしゃった ことも日本の一つの事実ですけれども、例えば1997年にHFEAにドナーとして登録さ れている人たちの調査をしたのがありまして、その中には35名のドナーと、その3倍ぐ らいのレセピエントの調査があるんですけれども、その中には、35名のドナーは皆自分 がドネイトすることを、先ほど鈴木委員がおっしゃたように、人間として不妊治療者を 支えたいというところでやっているという結果が出ているんですね。それから、そこに は金銭の授受は必要ない、そんな問題ではないということをちゃんと公的運営機関がや ったデータで出ていたりするんですね。  もう一つ、今度は同じく一九九〇何年かのリスター病院の結果では、加藤委員がおっ しゃったように、幾らでもドネイトしたいという人がいて、80%ぐらいの人たちが自分 たちの名前を知られてもいいと。知られるということを前提にしてドネイトしてもいい ですかということに対して、イエスと言っているんですね。ところが、受け取る側は、 もしかするとドナーの名前が知られるかもしれないと思うときには、ノーだという人た ちですね。イエスの人たちが4分の1ぐらいしかいないわけですね。だから、こういっ た中に、提供する側の気持ちと受け取る側の気持ちのずれとか、いろいろなものが展開 するということをしっかり見ていける公的運営機関が必要だと思うんですね。  私は、もし匿名性に関して今までいろいろなエビデンスが蓄積されていないのであれ ば、唯一今まで既に匿名性でなくてやってきて、兄弟姉妹間でなさった産婦人科医たち が、データとして、エビデンスとして、これは害がないということがみんなに納得でき るようなものを本人たちの言葉で言わせるべきなんですね。そういうエビデンスがない ところで大丈夫だといっても、まず家族精神医学の専門家たちは信じないと思います。 家族精神医学というのは、バウンダリー、境界というものがあいまいなときには、親子 の境界とか夫婦の境界とか、性の境界があいまいなときには人間は安定した健やかな自 我が形成できないということを家族精神医学は家族精神医学で膨大な研究をしているわ けですよね。だけど、そんなのを乗り越えて、日本は日本でこれが成り立つんだという ことを本当に主張したいのであれば、それをなさっている産婦人科医の人たちが、自分 たちからそういう資料を提供してもいいという方たちをボランティアとして募って、そ の方たちが精神医学的なきちんとした評価を受けるべきだと思うんですね。  一般のアンケートでは、こういうアンケートをしますと、自分たちの思惑で実際に起 きていることは隠されてしまって、実際の気持ちの揺れとか不安は全部隠されてしまっ て、いいようにしか動かない。だから、そこら辺は人間の愛憎の念とか二つの揺れ動く 気持ちが動く領域であるので、かなりエビデンスをしっかりしないといけないというこ とを、公的運営機関を持っているイギリスなどが言い始めているんですね。  だから、そこら辺をもう少し明確にする意味でも、今絶対に卵子の提供はないなんて 断定せずに、まずはみんなが納得できる、そういった公的運営機関で卵子の提供者をき ちっと募り、その人たちの匿名性を守り、しかもそれはその人たち提供者も、受け取る 側も、子どもも守る形のシステムの中で、責任ある専門家がエビデンスをきちっと10年 、20年、次の何十年と蓄積していくといったことが必要なのではないか。そのスタート をきちんと切るべき時期に来ているのではないかというふうに思います。 ○岸本委員  私は決して第三者からの卵子提供がゼロなので兄弟姉妹を認めてほしいと言っている わけではなくて、たとえゼロとしても、例えば第三者がボランティアで精子・卵子を提 供してあげるという人がたくさんいたとしても、お姉ちゃんからじゃないと嫌だ、妹か らじゃないと嫌だという人はどうなるんですか。 ○渡辺委員  そこら辺は大変申し訳ないんですけれども、私がそう言っているということではない んですけれども、この議論を例えば心理臨床科あるいは精神医学者の間でフリーディス カッションしますと、例えばそのようにお姉ちゃんの卵子に固執するという、その兄弟 関係とは一体何なのかというふうにはっきりと言う人たちもいるわけですね。それ自体 が例えば拒食症を生み出したり、精神分裂病を生み出したりする家族病理の一端ではな いかと。決して、精神障害というのは家族関係だけで起きるわけではないわけですけれ ども、いろいろなその人の資質とか、たまたまということもありますし、いろいろな出 来事とかトラウマとか、いっぱいありますけれども、その中の一部としてやはり家族因 子ということも否定できない事実としてあるんですね。ですから、たくさんの要因の中 の一つの切り口として、家族の中の自己の確立、自我の兄弟からの分離とか、親からの 自立とか、そういった問題があるんですね。  ですから、そういう思いが強いからといって、その思いがその人には多くても、それ を言われたお姉さんの方にとっていいとは限らないわけですね。現に、私が見ているお 母さんたちなどは、自分の子どものケアをしながら、自分の姉や妹の子どもたちがあの おばちゃんとお話ししたいからといって、善意でおばちゃんとして相談に乗っているわ けですね。おばちゃんとして相談に乗っている間に、子どもたちがどんどん精神的にお かしくなるということもあるわけですよね。  その場合には、例えばその母親と姉との姉妹間の密着が、結局はおばちゃんではなく てお母さん自身が引き受けるべき一つの責任を回避させるような病的な動きになってい るために、自分の妹の家族まで巻き込んで若い者の世代がおかしくなっているというこ ともあり得るわけですね。  これは専門的になって申し訳ありませんけれども、おっしゃることの意図は私は十分 にわかるんですけれども、一見善意というものが、実は心理的な障害やいろいろな問題 を引き起こしていることもまた事実ですので、そういう事実を多く見ている私どもは、 それは一つの思いとして受けとめても、本当にそれでいいのかということを責任を持っ て判断していく第三者というのが必要だというふうに思います。 ○岸本委員  勿論、この生殖補助医療で責任を持って決めないといけないですけれども、最終的に は当事者がそのことを決定して、兄弟姉妹からもらったら、その後はちゃんと当事者が 本当に責任を持っていっていくのは当然ですし、今渡辺先生がおっしゃたように、問題 がないとも限らないですし、でも必ずあるとも限らないと思うんですね。  例えば兄弟姉妹ですごく幸せだわという言葉というのは現実に出てこないと思うんで す。何か問題があったときに、悪い例はすごく出てくると思うんですけれども、家族で 幸せだね、兄弟姉妹からもらってよかったわという声は、現実のところ、そういううれ しいことでカウンセリングを受けにいく方はいらっしゃらないと思うので、そういう声 がないと受けとめられてしまうかもしれないんですけれども、実際はあるかもしれない し、その辺をここで必ずだめだということは、言えないと思います。才村先生に、養子 縁組として兄弟でどういう形でうまくいっていらっしゃるのか、現状をちょっとお聞き したいと思うんですけれども。 ○渡辺委員  今の発言にちょっと加えさせていただきたいんですけれども、必ずだめだとか、そう いうことを一人の人間が他者に言うことはできないと思うんですけれども、私がお願い したいのは、必ずだめだとは言っていないんですけれども、どうしてそこまで無理をす るのか。その無理をすることが引き起こしている問題がある。  正直に言って、臨床現場では、例えば戦争の後、お兄さんのお嫁さんが弟と結婚した だけで、生まれた子どもたちがひどい精神障害になっているという事実が多発している んですね。生き延びている御兄弟や御本人に対して、こういうところで否定的な色合い で言わなければいけないのは大変申し訳ないですけれども、でもそれは人々がそういっ た家のための無理ということが個人をつぶすかもしれないという感性をもう少し持って いたら防げたかもしれないと思うから、私はあえて申し上げるんですね。  どんな人生もそれぞれ意味があると思いますから、私はそれを悪いとは思いたくない ですけれども、でも目の前に子どもたちの死にたいという自己破壊の姿を私は日々見て おりますから、それを見てしまいますと、どうしてそこまで無理をしたのかと。その問 いかけを同時に持ちながらこの生殖補助医療をやっていかなければ、これは不自然な営 み、不自然な医療になっていき、やがては大勢の人々、常識のある人々の支持を失って いくと思うんですね。 ○才村委員  今、岸本委員の方から養子縁組の方ではどうかというふうなお話があったんですけれ ども、兄弟で養子をもらうというのは昔は日本でもあったと思うんですけれども、私が よく知っている里親制度を利用した養子縁組というのは、むしろ兄弟とかは実際には少 なくて、やはり他人からもらうという時代でした。  ついでに私の意見を先に言わせてもらっていいですか。申し訳ありません。私は、今 渡辺委員が言われたようなリスクはすごく感じますし、複雑な人間関係、そして岸本委 員の言われるように、お姉ちゃんからでなくてはならなという、すごく狭い形での思い 込みというか、その辺にもっと広い気持ちというか、価値観でもって例えば子育てをで きないか。むしろ、子どもがなくても生きる道もあるんだというぐらいの広い気持ちに なれないのかなというふうに思うんです。  ただ、私は案がどれというのはまだちょっとはっきり自分の中では決められないんで すけれども、兄弟姉妹からもらうということに関しては、実のお父さん、実のお母さん 、それから夫婦の子どもだけの家族が理想的な家族ではないと現実に思います。ステッ プファミリーとか、家へ養子を入れているとか、連れ子して再婚されているとか、果て はまた同性愛の家族なんかもこれからもどんどん増えてくるかもしれないですし、多様 な家族を支える仕組みが必要だと私は思うんですね。  日本では夫婦そろって実の子どもがいるのが普通という価値観がまだまだ大きいです から、血縁的な社会であると思うんですけれども、今回出自を知る権利というのを全面 的に認めるというふうなことになりました中では、私は否定的というよりも、兄弟姉妹 からもらってもいいのではないかと思うわけです。むしろ、生殖補助医療自身が、渡辺 委員の言われるようなリスクを既に負っている。既に負っているのを、生殖補助医療自 身を全部否定するわけではないので、それであれば私はむしろ兄弟姉妹からもらって生 殖補助医療で子どもを出産するということは、最初から知れるということでは告知をせ ざるを得ないような状態になっているわけで、子どもにとったら出自を知る権利を、確 保までいっているかどうかはわからないんですけれども、最初からオープンにした形で 子育てをしていく。私はむしろ、すごく複雑な人間関係、家族関係、そして渡辺委員の 言われるようなリスクの研究をして、そこにまで研究者も関心がいっていないというこ とでは、もっともっと研究をして、本当にそのリスクはどんなものがあるのか、そして そのリスクに対応する援助のシステムというか、支援のシステムがどんなものが必要な のかをもっともっと研究していくべきだと思うんです。  その中で、私はむしろ出自を知る権利を確保するためには、小さいころから告知をし ていくべきだと思いますし、そしてさっき鈴木委員が言われた開示に耐える親子関係と いうふうな言葉で、私は必要だと言ったんですけれども、最初にそれを隠しておいて親 子関係をまず安定させてから、大丈夫になってから言うということではなくて、その夫 婦自身が開示に耐えられるような価値観の人に生殖補助医療をやってもらいたいと思う わけで、最初のそういうようなものはまるで受けつけない、それで親子関係がしっかり なってから言うといっても、いつ親子関係がしっかりなっているか、そんなのはなかな かわからないわけで、その辺の幅の広い価値観、考え方ができる人が生殖補助医療をこ れからやっていくべきだと思いますので、私は「等」はその辺がすごく難しい面がある かなと思うんですけれども、兄弟姉妹を認めるべきでないという案4ではなく、2か3 ぐらいが適当ではないかと私は思います。 ○矢崎部会長  今、養子縁組の視点からいうと、第三者のお子さんをもらった方が問題ないというお 話でしたが、岸本委員がそういう視点から養子縁組との関連で才村委員がどう考えます かというときに、養子縁組のときはやはり第三者の方が問題ないというふうに言われた んですかね。 ○才村委員  いえ、兄弟と第三者とを比較した研究を私は知らないんです。だから、その辺ではこ ちらが安定しているというふうなことは言い切れないです。 ○荒木委員  私どもは生殖補助医療を推進する立場にありますけれども、現実として、長い間の不 妊治療で最終的に子を持たない、もうあきらめたというカップルもたくさんいるんです ね。そういうカップルの下した決断に対して私どもはその意志を尊重したいと思うんで す。兄弟姉妹からもというような特例が一人歩きしてしまうと、これは決断したカップ ルに非常に心理的な圧迫を持たせるという結果になります。私には兄弟姉妹がおります よというような風潮になることがより怖いんですね。世間の風潮が、兄弟姉妹からもら いなさいというような流れにだんだんなって、特例が薄れてくるということを非常に恐 れているわけです。 ○矢崎部会長  安藤委員。 ○安藤委員  私も荒木先生と同じような考えでして、特例というものが、どうしても日本の制度の 中では血縁というものを第一にしているというところがありますので、こちらの方がす ごく重要視されていく可能性が強くなってくると思うんですね。そうすると、兄弟姉妹 であるということから卵子を提供しなければならないというような義務感が今度起こっ てくるのではないだろうかなと思うんです。  確かに、全体から見た場合に兄弟姉妹はだめというのは私も言えないと思うんですけ れども、当分の間、やはり養子縁組とか、子どもを持たなくても自分たちの人生という ものを楽しみながら生きていける、そういうふうな自由な発想の下に生活していけるよ うな時代になってくるように願いまして、当分の間は兄弟姉妹というのは避けていただ きたいなと思っております。 ○加藤委員  渡辺先生に申し上げたいんだけれども、私が考えていることは、こういうケースの出 産がいいか悪いかという議論と、それを法律で禁止すべきかどうかという議論との間に はかなりずれがあると思うんですよね。ですから、お兄さんが戦争でなくなったので、 お兄さんの嫁さんが無理やりに弟と結婚させられて子どもをつくるというケースは随分 方々であって、そういうことからいろいろな悲劇が起こってきていると思うんですね。 そういうケースについても、今まで法律は禁止できなかったんです。だから、こういう ケースは危ないから、法律上結婚は認めませんということは言えなかったんですよね。 ですから、今まで結婚とか出産について明らかに倫理的に妥当でないというケースはい っぱいあるんですけれども、それを禁止するというところまで法律は踏み込まないとい うのが今までの法律の性格だったと思うんですね。  生殖補助医療になると急に法律が個人の生活の中に入り込んできて、これもいけない 、あれもいけないと言い出すと、今度はそういうことの弊害というものをまた考えなけ ればならないので、渡辺先生がおっしゃったような事例について、もっとしっかりとカ ウンセリングが行われて、カウンセリングなしにそういう結婚が起こらないような、そ ういう社会的なバックアップの体制をつくるということについては私は大賛成なんです けれども、そういうことが法律で一律に全部禁止されてしまうというのは、今までの出 産や結婚についての規制の在り方から見ると無理だと、今までは法律はそこまで踏み込 んでいなかったんだと。だから、いいか悪いかではなくて、法律的に禁止できるかどう かということは、必ずずれがあるということを知ってもらいたいと思います。 ○渡辺委員  大変参考になる御意見で、私はそれもすごく大事だと思います。ただ、ちょっとお言 葉を返すようですけれども、加藤委員のおっしゃったことともうちょっと観点を変えま すと、例えば法文化された法律以前に、人間の集団がつくっている自然の秩序いうもの がやはりあったと思うんですね。例えば近親相姦で兄弟で結婚すると奇形の子どもが多 いとか、これは非常に明らかな怖いタブーになっていますけれども、それと同じように 、例えば義父の精子をもらって子どもをつくったときに、理屈の上では一応合意が得ら れたりしても、何となくイメージの中に一体だれの子どもだろうという気持ちでボーダ ーがよくわからなくなるとか、そういった日常生活の中で目に見える親戚がいる中で子 どもが自分のアイデンティティーがあいまいになるのではないかというのは、これは法 律以前の人間の秩序感覚でうまくやってきたと思うんですね。  欧米でさえも、例えば女性の側のある研究は、例えば夫がお姉さんから卵子をもらえ ばいいじゃないかといっても、そうなってしまうと、女性自身は自分の夫とお姉さんと の子どもを自分が産む形になるんだから嫌だといった自然な秩序感覚というものが結構 アンケートなどに出ているんですね。  ですから、法律で禁止するというよりも、もう少し人間の共存のレベルで、ここら辺 はやはりやばいぞとか、きもいぞと若者たちが言いそうな、変なイメージが動きやすい 、そういう中で本当に子どもたちがさわやかに自己確立ができるのかと、もっと生物学 的な人間集団のサバイバルな問題から考えていってもいいのではないかと私は思うんで すね。 ○矢崎部会長  もし、ほかの方でも何か御意見があればお願いしたいと思います。 ○鈴木委員  私も今の加藤委員のおっしゃった、もともと法律で禁止すべきかというのは、確かに その御議論はあったかと思いますけれども、私は別の視点で言えば、もともと自然には 起こり得ないことをあえて起こしているわけですよね。あえて手伝うべきなのかという 問題の立て方もあると思うんです。  そもそも、AIDが認知されてきた背景というのは、多分議論の中で、妻が夫以外の 子どもを産むということは自然の場合にも起こり得ることだということはたまに言われ てきたんですが、卵をもらって人の卵で出産というのは普通の人間の生活の中ではあり 得ないことですね。それをあえてドクターというか、技術が手助けしようといっている わけなんですが、そもそもそれが医療なのかということも考えてみてもいいと思います 。  あと、これは全然関係ないんですが、さっきお母さんから卵子をもらいたいという方 もいるとおっしゃったんですが、これは私は考えていてまだわからないんですが、これ はだれの子というか、母と夫の間にできた受精卵を私が産むんですよね。やはり子ども の気持ちも考えるべきでしょうし、周りの家族、卵提供してくれた女性の方のパートナ ー、それからそこに生まれてきている子どもたちにとっても、ではその子どもは一体だ れになるんでしょうかということ、そちらの子どもたちの気持ちも考えてみた方がいい のではと、私は正直思いました。 ○松尾委員  前に加藤先生と近親相姦というので議論したんですけれども、母子関係を混乱させて はいけないと思います。仮に不妊の娘が母親から卵をもらうと、祖母の子どもができて 、その子どもとその母親は姉妹という関係になるんですね。近親者の卵のドネーション をどこまで規制するか、様々な形の母子関係の環境下で子どもが健全に自己を形成でき るか真剣に考えないといけないと思います。ゴーサインを出すのは非常に無責任だと思 います。当分の間という条件がつき、全面禁止とは違いますので、私は4が正しい方法 だと思います。  特に、管理運営機関というのが本当に判定業務ができるのか、また、予算的な裏づけ や人の手配を財務省がしてくださるかというと非常に疑問だと思うんですね。ですから 、不確実な仮定の下に先へ進むのは危険だと思います。 ○相良委員  結論から言うと、私も案4がいいと思います。いろいろな方向から見ていかないとい けないと思うんですが、子どもとその子どもを取り巻くいろいろな人間関係ということ を考えると、先ほど渡辺委員がおっしゃられたような問題がいろいろ出てきますし、た とえあげたい、もらいたいという関係から始まったとしても、実際それが起こってから 出てくる心理的な利害関係みたいなものは非常に大きいと思います。あと、荒木先生が おっしゃっているように、本当はあげたくない、本当はもらいたくない兄弟にも物すご く圧力がかかってくるということもあると思います。  もともとこの医療というのは、ボーダーがなくなっていく方向に向かっている医療だ と思うんですけれども、最初は匿名から始めた方がいいのではないかなと思うんですね 。20年、30年、遠い将来にこういった医療が普及していく先に親兄弟でもというのが出 てきてもいいのかもしれないんですけれども、兄弟姉妹のように、もともと匿名性が保 持されない状況で生まれてくる子どもというのはむしろ応用問題なのではないかなと思 うんです。ですから、最初は匿名性というのを保持して始めた方がいいと思います。  ただ、やはりドナーがいるかという問題がすごく大きいとは思うんですけれども、私 の患者さんで、(こういったことは普通は起こらないと思うんですが、)御主人が乏精 子症だと思って、体外受精なり、顕微受精なりをやろうと思って、排卵誘発をして、卵 をたくさんとって、御主人の精液もとったけれども、そうしたら無精子症だった。勿論 、体外受精も顕微受精もできなかったわけですが、卵は10個ほど保存されている。医者 はAIDを進めたけれども、自分は御主人とフェアな立場でいたいからAIDは絶対に したくない、むしろ卵を提供するという方向を考えてみたい、そういう方もいらっしゃ るわけなんですね。  先日、ハートクリニックの先生がいらっしゃったときも、余剰の受精卵をどなたかに 提供してもいいと言った方が何人かおられたというお話も聞きましたし、世の中にはい ろいろなことを考える方がいらっしゃるので、やってみないとわからないのではないか 。ドナーが本当に出てこないかどうかというのは、そう一概には言えないのではないか なという気がしています。 ○矢崎部会長  難しいですね。  では、10分間休憩して、最終的な討論を進めたいと思いますので、よろしくお願いい たします。                   (休憩) ○矢崎部会長  それでは、休憩後の議論を進めさせていただきます。兄弟姉妹等の事項ですが、今ま で多くの委員の方々がコメントしていただきましたが、御発言いただかなかった委員の 方々からお考えをお伺いしたいと思います。 ○平山委員  私は案はどれがいいかというのは本当に今悩んでいて、迷っているというのが実際で す。兄弟姉妹“等”については意見がありますので、また後で言いますけれども、兄弟 姉妹に関してですけれども、なかなか難しい問題があるのは事実だろうなと思うんです が、一つ思うのは、この議論全体でもそうなんですけれども、先ほど渡辺委員もおっし ゃたように、社会のコンセンサスというか、そこら辺の重要性というのは理解はできる んですけれども、社会がこの不妊の人に対してどんな仕打ちをしているかということも やはり覚えておかなければいけない。  子どもがいなくてもいいじゃないというのは正論なんですが、子どもを産ませている のは、子どもを産むように無理やり治療に仕向けているのはその世論であり、常識であ り、そういうものですよね。そういうのが「気持ち悪いから」といってこの医療を認め ないというふうになってくると、では本当に苦しんでいる人はどうなるのかなというこ とです。確かに家族病理の問題というのは私も実際に患者さんと接しているわけですか ら日々感じます。何故部会での議論と、この治療を望む人たちの思いに大きなズレが生 じているのかと考えると、私たちはこの部会の中の議論というのは、社会のシステムも 変え得るような医療としてこの生殖医療というのを考えていこうというふうにしている んだけれども、実際にユーザーである不妊の方々というのはそういうふうにはとらえて いないんですよね。そこのギャップがすごくあるのではないかなと思うんですね。  私たちが話し合っているのは、これからシステムとして社会システムを変え得る、今 までの親子環境を変え得るようなものとして、この非配偶者間の生殖医療をとらえてい るんだけれども、実際の患者さんというのは、「ただ子どもが欲しいだけなのにどうし て」というところのレベルで、レベルというのは別に低いという意味ではなくて、違う 次元で、ずっと議論していてすごく違和感を感じたのはそこなんだと思うんです。患者 さんの生の思いとどんどんずれていっていて、そこがわからなくなっていて、それで兄 弟姉妹についても、先ほど岸本委員がおっしゃったこともそのとおりだなと思うし、渡 辺先生がおっしゃったことも、私は専門家としては家族病理の問題というのは軽視でき ないと考えていますので、いろいろ悩んでいます。  ただ、本当に利用する人が少ない、マイノリティーのための施策を考えるときに、常 識とか、世論とか、社会のコンセンサスの方だけでいってしまう、決めていくというの が、果たして本当にその人たち、そして生まれてくる子どもたちのためにいいのかどう かというのは難しい問題ではないかなというふうに思います。まとまらない意見なんで すが、現在私は本当に悩んでいます。 ○古山委員  結論から言いますと案4になります。その理由は、生まれてくる子の福祉を優先する という考え方に立ったときに、先ほど福武委員、それから渡辺委員より具体例を挙げて 教えていただきましたが、兄弟姉妹のかかわった人間関係で、子が不幸の転帰をたどっ たという事例があったわけです。全部がそうではなくても、そういう事例があるという ことを知った時点で、そういうことを回避できる手段が講じられるようになるまで、な るかならないかはわかりませんけれども、当分の間認めないのが妥当ではないかという のが私の考え方です。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。澤委員。 ○澤委員  先ほど相良委員から、この医療がボーダーがだんだんなくなってきたというお話があ ったんですけれども、世界的に見れば、これはアメリカ型のアジェンダの流れの中で私 たちは翻弄されているだけで、例えば今こういう問題を憲法に制定した一番新しい国は スイスですよね。2000年発布だと思いますけれども、委員がおっしゃったように、子の 福祉を一番最初に憲法に持ってきてしまった。そうすると、当然のことながら、卵およ び胚の提供やもちろん代理母も法の上ではまだ禁止行為です。そういうヨーロッパの流 れは、我々はこういう議論をしていますから、すごく保守的で、なんだそれというよう な感じですけれども、アメリカに対応してヨーロッパでは、我々の議論からすれば、お およそ保守的な論理の展開が進められている事実も私たちは忘れてはいけないのではな いかと思いますし、そういう点から見れば4番目ということになります。 ○新家委員  我が国において、非配偶者間の生殖補助医療の答えがわからないでいるわけです。今 言ったように、新しい医療に換えるんだということで今この論議をやってきているわけ で、その辺は私は反対はいたしません。ただ、胚の移植ということに対しても私自身は 反対だったし、それから出自を知る権利も認められたので、この点も反対であったわけ です。  前にも申し上げましたが、適用の拡大自体を初めから大きくしていくと、これを縮め るというのは物すごく大変だと思うんです。縮めているのを広げるのは楽だと思います けれども、そういう意味で、当分の間は提供者は減るかもしれないけれども、ゼロには ならないと思うので、余り安易なところからの提供というのは反対をします。したがっ て、私の案は4だということです。 ○矢崎部会長  一応委員の皆様の大体の意見をお聞きしましたが、これは出自を知る権利とはまた違 ったまとめの難しさがあって、なかなか苦慮するところであります。  実は、私は生体肝移植の倫理のときに、やはりこれは相当心理的な圧迫もあるので許 可すべきではないという議論を展開していました。この間の『New England Journal of Medicine 』で、アメリカでも脳死肝移植ではなくて生体肝移植がすごく増えている、要 するにドナーが少なくてという報告がありました。我が国では生体肝移植がやられてい るんですが、これは提供して受けるということで当事者の間で終わるわけですよね。や はり生まれた子がどうなるか、その視点からの議論がこの兄弟姉妹というのは更に加わ るので、もっと複雑な問題が絡んでくるというのは委員の皆様の御意見だと思います。  しかし、それを禁止するというのも、だからというわけではなくて、本当にゼロにな るかどうかわからない、原則として匿名性の保持が原則であるという前提でこの医療が 進んでいるということもあって、大方の委員の方々は当分の間成り行きを見て判断をす るというような御意見が多かったかと思います。  認めないというのはすごい重い決定でございますので、今すぐここで認めないという ふうに結論するかどうかというのはちょっと私も難しいところがございますので、今日 は一応大方の委員の方々の御意見は案4あたりかなということでございますが、この点 について、もし可能であれば、また次回に時間を置いてもう一度考えさせていただけれ ばと思います。大体の雰囲気は、そういう方向に向かっているということで認識をさせ ていただきたいというふうに思っています。 ○平山委員  1つだけいいですか。さっき言い忘れたのではなくて、言わなかったところなんです 。「兄弟姉妹等」のことなんですけれども、兄弟姉妹はだめで、「等」だけはあり得る ということもあり得るわけですね。つまり、フランス方式です。フランス方式について は全然検討していないんですよね。自分がドナーを募集をして連れてきた人からはもら えないけれども、ほかの連れてきた人のはもらえるという方式でフランスはやっていま すよね。その方式については全然検討していないんですけれども、可能性としてはある かなと思ったので、一応「等」のところでの議論かなと思ったので、皆さん、どういう ふうなことになっているのか、一応確認をさせてください。 ○矢崎部会長  兄弟姉妹というと、もう血縁主義ですよね。ですから、「等」が入ると、もう少し対 象が広がるということで、今平山委員が言われたような道もあり得る。 ○平山委員  広い意味では第三者なわけです。だから、兄弟姉妹等と別として考えることも可能か もしれないから、ちょっと思ったんですけれども、自分はもらう人のことは全く知らな いということになるので、匿名の第三者とも言える可能性がある。そういうふうにフラ ンスは考えているわけですよね。だから、これは絶対に問題になってくると思うので、 そこについては確認しておいた方が。 ○松尾委員  誤解していたんですけれども、いとことか、おば、めいとか、母親とか、そういうも まで全部入りませんか。 ○矢崎部会長  「等」の意味は、兄弟姉妹以外のというのは、要するに血縁以外のという理解だった んですが。 ○松尾委員  そうすると、これは文言をクリアにした方がいいのではないでしょうか。 ○矢崎部会長  あと、もう一つの点は、今ちょっとお話があったんですが、近隣諸国では商業ベース でこういう医療が結構行われているわけですよね。そうしますと、我が国で認めないと いうふうにやっても、近隣諸国でやられた方は、結局面倒を見るのは松尾委員であり、 渡辺委員なんですよね。恐らく近隣諸国でやられることが物すごく増えてくる可能性も ありますので、そういうことも視野に入れないと、最終的な決定は難しいかなという感 じがします。  一応この議論は、大体は当分の間は御遠慮いただきたいという御意見だと思います。 ○加藤委員  今の平山さんの意見はまだちゃんと議論が出ていないと思うんですね。自分の兄弟を 連れてきて、兄弟の精子を使うわけではなくて別の人の精子を使うとなると、優先的な 配当権がもらえるわけですよね。 ○矢崎部会長  優先順位ですかね。 ○加藤委員  ですから、提供者を連れてきても、自分にもらえるという可能性がわからないという のではなくて、だれかを1人連れてくれば、別の人のものをもらう権利が発生するとい う方式ですね。そうでしょう。 ○平山委員  はい。 ○矢崎部会長  今ちょっとお話ししました海外でこういう医療が行われているということで、もう一 つは代理懐胎という大きな問題が残っているんですよね。これに対して、どう対応する かというのも議論させていただきたいと思います。ちょっと資料を見てください。今日 結論づけるということではなくて、これも含めて次回議論していきたいと思います。こ れは専門委員会では禁止するということになっておりますが、これについて御意見を少 し承ればと思います。 ○安藤委員  先ほど平山委員と加藤委員がお話しされた「等」については、次回検討ということで すか。 ○矢崎部会長  そうです。先ほどの提供者を連れてくるケースですね。先ほど申し上げましたように 、私自身は兄弟姉妹が血縁関係で、それ以外の方を「等」というふうに理解していまし たが、今のお話ですと、いろいろ諸々のことが入ってきますので、それももう少し次回 までに整理させていただきたいと思います。  13ページのこれを先にやっておかないといけないですね。13ページに赤字があります ね。これは時間がかかるかな。これをちょっと読んでいただけますか。 ○対策準備室長  13ページなんですが、12ページのところから始めまして、「精子・卵子・胚の提供者 と提供を受ける人との属性の一致等の条件」ということでございます。専門委員会報告 書におきましては、対応する部分というのが直接ではないんですが、間接的に、「当該 生殖補助医療により生まれてくる子の血液型などを当該生殖補助医療を受ける夫婦に合 わせることができない場合もあること」というような表現になっておりまして、できる 可能性があるというところを若干含みを持たせたような表現になっているというところ でございます。  検討の結果といたしまして、これまでに確定している部分としましては、「精子・卵 子・胚の提供者と提供を受ける人との属性の一致等について、ABO式血液型は、提供 を受ける人の希望があり、かつ可能であれば、精子・卵子・胚の提供者と属性を合わせ ることが出来ることとする。それ以外については、希望があっても属性を合わせること は認めない。Rh型血液型に関しては、Rh不適合型妊娠の可能性も含めてインフォー ムド・コンセントで対応することとする」ということで、基本的にこの部分も認めない という内容になってございます。  続きまして、「提供された精子・卵子・胚を使用して第1子が生まれたのち、提供さ れた精子・卵子・胚の残りを第2子のために使用することを、提供を受ける人が希望す れば希望に答えるかどうかについて」ということでございまして、この部分が2つの案 が残ってございます。案1としましは、「可能な場合は認める。ただし、精子・卵子・ 胚を提供する際に、当該提供により、第1子だけでなく第2子も生まれる可能性がある ことについて、提供する人に対し、インフォームド・コンセントを取っておくこととす る」、案2としましては「認めないこととする」。こういった2つでございます。  もう1点、御理解いただいている点としましては、「実施医療施設は、精子・卵子・ 胚の提供を行った結果子どもが生まれたかどうかを、提供者の希望があった場合には提 供者に知らせることとする」、こういった内容でございます。 ○矢崎部会長  これは、インフォームド・コンセントをとっておけば、こういうケースも認めていい ということでよろしいですかね。何か認めないという確固たるものは。 ○鈴木委員  これは多分、同意の撤回ができるかできないかということの絡みで随分紛糾したんだ と思うんです。同意の撤回は認めるということに今落ち着いていますので、これは多分 案1ということでよいのではというふうに私は理解しています。 ○矢崎部会長  だから、インフォームド・コンセントが前提ということですね。それでは、案1にさ せていただきます。  それでは、最後のページの赤字ですね。「代理懐胎などの日本で認められていない非 配偶者間の生殖補助医療を海外で受けることについて、規制することとするか?」とい うことですが、専門委員会で一応代理懐胎については認めないという方針でございまし て、この部会でもそういう方向で検討されてきたかと思いますが、今いただいた資料は 専門委員会の確認ということですかね。 ○対策準備室長  お配りしておりますものは2つございまして、1つ目は専門委員会報告において代理 懐胎に関連した記述がある部分を抜粋したものでございます。1枚目にありますものは 、代理懐胎、代理母、借り腹、両方とも禁止するということで、理由としましては、第 三者の人体そのものを妊娠・出産のための道具として利用するものであり、「人を専ら 生殖の手段として扱ってはならない」という専門委員会の基本的考え方に反するもので あるということ。それから、生命の危険さえも及ぼす可能性がある妊娠・出産による多 大なリスクを負わせるということで、「安全性に十分配慮する」という専門委員会の基 本的考え方に反するというようなこと。それから、代理懐胎を依頼した夫婦と代理懐胎 を行った人との間で生まれた子をめぐる深刻な争いが起こることが想定され、「生まれ てくる子の福祉を優先する」という専門委員会の基本的考え方に反するというようなこ と、ということで禁止をするというような内容でございました。  その次にありますのは規制に関するものでございまして、後ほど議論が進めば御紹介 したいと思います。  もう一つお配りしておりますものは、本日欠席でありますけれども、金城委員から提 出されておりますこの部分に関します意見ということで、内容を紹介いたしますと、金 城委員といたしましては、提供された精子・卵子・胚などの使用を認めながら代理懐胎 については罰則つきで禁止をするという異なった結論に至った理由について了承できな いということでして、専門委員会の報告として挙げております論理をもう一度再度整理 をいたしまして、「人を専ら生殖の手段として扱ってはならない」という基本的な考え 方に反すること、それから妊娠・出産による多大なリスクを第三者に負わせるという代 理懐胎は、「安全性に十分配慮する」という基本的な考え方に反するということ、それ から、依頼夫婦と代理懐胎を行った女性との間で生まれた子どもを巡る深刻な争いが起 こることが想定され、「生まれてくる子どもの福祉を優先する」という基本的な考え方 に反するということ、こういった内容について反論を行うという内容になっております 。  その1つ目としまして、卵子の提供と代理懐胎について、出産経験があり、十分休養 が取れ、医学的なサポート体制が整っているなどの条件が整えば、そういった代理懐胎 によって負うリスクというのは、言わば自然の生理の結果である妊娠と同じであり、そ のリスクというのは小さいものである。これに対して、卵子提供の場合には、これは明 らかに医学的な侵襲なのだから、見方によってはかえってリスクが大きいともいえると いうように主張されております。  また、生体肝移植のように、幾ら危険であっても、本人が同意している事故危害は禁 止できないということで、他者のためにあえて代理懐胎しようとする女性の自らの意思 によって、自らの身体を使用する権利を侵害することで、女性の自己決定権を否定する パターナリズムであるというように主張されております。  また、依頼夫婦と代理懐胎を行った女性との間のトラブルの可能性でありますけれど も、2000年中にアメリカで実施された代理懐妊は2万件であったが、その中で代理懐胎 を依頼した夫婦が子どもを引き取らないであるとか、代理母が子どもの引き渡しを拒ん だというようなケースは8件にすぎず、発生率としてはわずか0.04%にすぎないという ことで、多くのケースでは子どもは円満に引き渡されているということでまとめられま して、発生するかどうか極めて不確実な可能性を理由に罰則つきで禁止をするというこ とは許されないというような内容になっております。  以上です。 ○矢崎部会長  専門委員会では、今事務局から述べたような理屈で代理懐胎あるいは代理母、借り腹 というものは認めないという方向で、この検討部会でもその方向で議論が行われました が、議論の先は、一応禁止ということになっても規制しない場合には行われてしまうの ではないかという議論がありました。  昨日、金城委員から、今日御出席できないのは残念ですが、このような御意見が届い たので、少し議論したいと思いますが、いかがでしょうか。 ○加藤委員  私たちの前の委員会で代理母について検討したときには、代理母を推進する会みたい な人を呼んだんですね。あっせんする会ですか。その人たちが、代理母は非常に危険が あるので、もう自分たちはあっせんする会をやめると言い出したので拍子抜けになって 、そういう人たちが自分たちがやめるというものを、こっちがわざわざ認めてやると言 ってやる必要はないのではないか、そういう雰囲気になったと思うんですね。ですから 、もうちょっといろいろな観点から代理母をやってほしいという意見も出てきたので、 再検討するということについては私は賛成です。  そして、いろいろな代理母を禁止する理由がありますけれども、私の観点からすると 、代理母を禁止する理由で有効なのは、子どもの奪い合いの可能性について対処できな いというのが私から見た場合の唯一の正当な理由です。というのは、代理母というのは 、心理的にも、また今までの法律からみても実の母であって、依頼人ではなくて代理母 の方が実の母なんですから、子どもを自分の子どもだと要求する権利は心理的にも法律 的にも存在すると思うんです。それを、おまえは代理契約を結んだんだから子どもを手 放すべきだというのはできないのではないかというふうに思います。ですから、子ども の奪い合いの可能性を排除することができない限り、それを認められないというのは私 の判断です。  ただし、アメリカでこの事例について報告したいろいろな文章とか事例を見てみます と、奪い合いの発生する率はかなり低いとか、実際奪い合いの発生はないというふうに 評価にしてもいい事例は確かに存在するようなんですけれども、もし代理母を認める前 に、この人は奪い合いの可能性がないという事前の判断が有効に下せる場合には、代理 母は禁止でないというふうに思います。 ○石井委員  今のでいけば、アメリカの場合には依頼者側に結局は子どもは引き渡されるという結 論になっているので、紛争が少ないというのは、紛争の解決の方法がある意味で見えて しまっているから出てこないということでもあるかもしれない。数字が少ないというこ とは、紛争がないというか、やむを得ず引き渡している女性がいないということにはな らないだろうと思いますということが1点です。  私自身は、第一に子どもの福祉という点でいけば、アメリカではこの数が行われてい るということはお金をもらって代理母をしているわけですよね。基本的に有料のは認め ないという方針であるとすると、兄弟姉妹については先ほど提供についても大問題とい う議論になっているわけですから、そのような代理母を認めることについては大問題と いうことは言えるだろうと思います。  それだけではなくて、なる人についても24時間、10か月近く、全身全霊を拘束される ことになる契約だと思いますので、そのような契約をやはり認めるべきではない。専ら 人を手段とするという言い方は適当ではないと思うんですけれども、生殖のために相手 を10か月間拘束する、そこまでの子どもを持つ権利というものはないのではないかと私 は思います。 ○加藤委員  契約は公序良俗に反するから無効という考えですか。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○荒木委員  日本産科婦人科学会の立場としては、代理懐胎は認められないという方向で会告の準 備を進めております。  ただ、将来の検討課題も残されております。代理懐胎は認められないんですけれども 、代理懐胎でなくして挙児を持てない場合は、また一定の条件、例えば親子関係がしっ かりした法的なものの下で整備されたとか、そしてまた社会的通念といいましょうか、 社会が許容する意見が多く出てきた場合は、先ほどの兄弟姉妹を含めてその時点でまた 考え直すという附帯事項をつけての代理懐胎は認めないという方針でございます。理由 は、多分資料として学会の見解が先生方に配付されていると思います。  以上です。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○岸本委員  私たちの患者会には代理懐胎は直接関係なくて、卵子提供を認めてほしいということ で厚生省に意見を出した会なんですけれども、実際、私たちの会は物理的に卵子がない ので卵子提供を認めてほしい。代理懐胎を望んでいる方というのは、物理的に子宮がな いので代理懐胎を認めてほしいということだと思うんですね。  これはいい悪いではなくて、私も加藤先生がおっしゃるように再検討していくことに は賛成です。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。 ○福武委員  私はこれは反対なんです。人を専ら生殖の手段として扱うというのが一番大きな理由 ではないかという気がするんですね。最近、子どもたちの事件をいろいろやっているん ですが、そのときに自己決定で売春して何が悪いという話が、子どもの方から出てきて いるんですよ。私にとっては、この子たちは何でこんなふうに考えるんだろうかという 気がするのと、最近は電話で知り合って金をもらって売春するというのがあって、それ を規制しようという話もあるんですが、そういったときに使われるのが専ら自己決定だ と。自分で決めてやっているんだからいいんだという議論なんですが、私は代理懐胎も 自己決定として自分が手段としてそれをやってあげるんだから、それをほかの人がやっ てはいけないよと言うべきではないという議論はあるんですけれども、それは人間の本 来的な意味を持った性行為と売春は違うんだし、代理懐胎も同じように違うんだろうと いう感じがするんです。  アメリカ型みたいにお金をもらってやればいいのではないかという議論は、私は論外 だと思うし、といって、日本みたいに姉妹の間でそれを行うのがむしろ美談に近いんだ というような言い方をされるのは、これもまたすごく心外で、そんなので子どもさんが 生まれてきたら、やはり人間関係がおかしくなるという気がするんです。  それと、今の法務省の部会で検討しているのは、実際に子どもさんを産んだ女性を母 とする規定を作ろうということですが、そのときには、産んだ人が戸籍上は母親になっ て、実際にそれを依頼した夫婦と養子縁組をするという手段をとる形になっていくんだ と思うんですね。  養父母及び実父母は遺伝上は逆であるという形で、かなりややこしい話にはなってく るわけです。その子が大きくなったときには、いずれわかるような話になるだろうとい うことを考えると、どうしても代理懐胎に対して今ゴーサインを出す気にはとてもなれ ないということです。 ○矢崎部会長  部会では、それは専門委員会の方式で今までそれを認めてきて、その上で今までの非 配偶者間の生殖補助医療がどうあるべきかというのを検討してきました。 ○安藤委員  私も代理懐胎の方には反対の意見を持っています。やはりおなかの中に母親が子ども を宿している期間というのは親となる非常に大事な期間であるし、親子関係を築く非常 に大事な期間だと思うんですね。そこというのは、これから生まれてくる子どもの人間 性、生まれて育てていくその期間というものがその後の親子関係、それから子どもが人 間として成長していくときに非常に大事な期間であるように思いますので、この代理懐 胎というのはできるだけ避けていきたいというふうに思います。ですので、私はあえて 生殖医療として代理懐胎を認めるということは避けていきたいというふうに思っており ます。 ○才村委員  私も同じ意見ですけれども、子どもを育てるということは、妊娠中ないしはその前か ら親となる準備性を養っていかねばならないと思いますし、そういう意味では妊娠する ということ自身はこれから育てるという上でも非常に重要なことですので、やはり子ど もの福祉を考えても代理懐胎には反対です。 ○平山委員  私は別に代理懐胎に賛成ではないんですが、今の意見に関してはちょっと疑問があり ます。確かに、妊娠中あるいは妊娠前からのレディネスや、その準備性というのは非常 に重要だし、愛着関係というのは妊娠中からできるというのは否定しませんし、その重 要性というのは十分認識していますが、それは絶対的なものではない。絶対的なもので あるならば養子は育てられないわけですから、それは理由とはなり得ない。代理母でも 、妊娠中から代理母と接触をきちんともってやっていくことで解決をしようとしている ところもあるわけですよね。ですから、いまのは理由にならないのではないかなと思い ます。 ○吉村委員  代理懐胎については、専門委員会でも賛成の方は余りいなかったのではないかなと思 います。ただ、罰則を伴う法律によって規制するというとき、代理懐胎のための施術は 医者がやる可能性がありますね。それから、施術のあっせんとなりますと、代理懐胎を あっせんする業者などを刑罰で処するということになると思うんですけれども、この辺 は刑罰になじむんでしょうか。私は法律のことはわからないんですけれども、これは罰 則を伴う法律によって規制しなければいけないことですか。それがちょっとわからない んですが。 ○対策準備室長  その部分も含めまして、次の資料に書かれているものでございます。 ○矢崎部会長  規制方法の資料が関係しますよね。ちょっと説明してください。 ○対策準備室長  後からお配りしたものの2枚目でございますが、規制方法につきましても専門委員会 報告の中にまとめられてございます。内容としましては、「以下のものについては、罰 則を伴う法律によって規制をする」ということで、逆に言いますと、以下のものに限定 をして罰則を伴った規制を行うというような限定的な内容になっております。  内容としましては、「営利目的での精子・卵子・胚の授受・授受の斡旋」、「代理懐 胎のための施術・施術の斡旋」、「提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に関 する職務上知り得た人の秘密を正統な理由なく漏洩すること」、そういった内容になっ ております。  繰り返しますけれども、この中では施術を受けた人を処罰するというような内容にな っていないというところで、一律に処罰を行うというものになっていないという点が内 容となっているところでございます。  3ページ目に移りまして、そういったものの考え方の中で、まとめがあるわけですけ れども、「最も重い規制の様態である罰則を伴う法律によって規制する範囲については 他の法律における罰則との均衡をも鑑み、立法過程において更なる慎重な検討が行われ ることが必要と考えるが、こうした観点から、本専門委員会としては、以下の理由によ り以下のものについては、罰則を伴う法律によって規制することが適当であるとの結論 に達した」ということで、その中では、営利目的での精子・卵子・胚の授受・授受の斡 旋及び代理懐胎のための施術の斡旋は、「商業主義を排除する」、それから「優生思想 を排除する」という専門委員会の基本的考え方に著しく反し、なおかつ、医師以外の人 々によっても行われる可能性が高いことから、実効性を担保するために罰則は必要であ ると。  それから、代理懐胎のための施術は、「生まれてくる子の福祉を優先する」、「人を 専ら生殖の手段として扱ってはならない」、「安全性に十分配慮する」という専門委員 会の基本的考え方に著しく反する。  それから、生殖補助医療は特に人のプライバシーを重視しなければならないという観 点から、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に関する職務上知り得た人の秘 密を正統な理由なく漏洩することは、「生まれてくる子の福祉を優先する」という専門 委員会の基本的な考え方に反し、また医師以外の者も罰する必要がある。  こういったものによって、最初に申し上げたようなものが罰則を伴う法律によって規 制される対象になるというようなまとめ方がされております。  以上です。 ○矢崎部会長  そうしますと、代理懐胎そのものではなくて、それにまつわるいろいろな行為で、法 律に反するものは罰則を伴って規制することができる。営利目的であるとか、あっせん を行うというものは法的に規制できる。その範囲にとどまるわけですね。これは1回目 の議論のときに、代理懐胎を行ってしまった、要するに、産婦人科学会の戒告に反して 、あるいはこれのリコメンデーションに反して行った場合の規制、あるいはここに書い てある、海外で受けることについて規制することができるかどうかということが課題な んですが、そういう規制の枠組みがある中で、もう一回代理懐胎について御議論いただ ければというふうに思います。 ○石井委員  もう一度改めて議論するとなったら、次回で終わりのこの会で結論を出すような、簡 単に出るような問題ではないと思うんですが、大半の人は今反対の意見をおっしゃった んですけれども、改めてもう一度議論し直そうといった場合にはとても簡単に議論でき る事柄ではないかと思うんです。資料についても、本当にどうなのかということになれ ば、わからないことがたくさんありますし。  もう一度ここで検討して、大部分の人が反対であったということまでは言えるかもし れませんけれども、それ以上、もう一回改めて議論するということにするのであれば、 次回までに結論を出すなんて。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○松尾委員  金城先生の文章は医学的に非常にたくさん間違った前提があって、内容的に正しくな いと思いますけれども、もし検討しなければいけないとすると、卵子の提供者のリスク というのと子宮を提供する人のリスクというのは量的な差しかなくて、どちらも自己の 子どもを持ちたいという子どものために他者にリスクを与えるということですから、卵 子の提供について禁止している国もたくさんあるわけで、そこの説明をどうするかとい う点で、若干まだ説明不足かなと思います。 ○矢崎部会長  一応この部会では認めないという前提で今日まできましたが、金城委員からこういう 意見書が出ましたので、今日はそれを議題にさせていただきました。  今日はもう大分時間が過ぎていますので、先ほどの兄弟姉妹に関しては、委員の皆様 方の意見は大体は同じ方向に向かっていると思いますが、もう少し先ほどの兄弟姉妹等 の規定とか、そういうのを検討したいということと、本当に当分の間といえども禁止し ていいのかどうかということもありますので、もう一回この問題については議論をさせ ていただいて、できれば次回で議論を収束させたいんですが、もしどうしてもというこ とであれば、大変恐縮ですが、エキストラに開かせていただいて、そこでもう収束と。 ○加藤委員  次回ですべて結論を出していただいて、矢崎部会長見解というのでまとめていただい たら、その方がいいのではないでしょうか。議論は出尽くしているのではないかと思い ます。 ○鈴木委員  次回というのはどこのことですか。兄弟姉妹については次回にという意味ですか。す べてについてですか。 ○矢崎部会長  ただ、この報告書全体をまとめて、最終的に一度承認いただかないといけないと思う んです。事務局で全部まとめた報告書としての形を皆様方に承認していただかないとい けないので、加藤委員の御指名で私が次回最終的にまとめたとしても、最終的な報告書 の形とか、そういうものはやはり1回委員の方々に見ていただく必要はあるんですか。 ○母子保健課長  まさにそのとおりでございまして、今日すべて議論が終われば、早速報告書の準備に 入ろうかなと思っておりましたが、なかなかそういうわけにもいかないかもしれません けれども、そうは言いましても、ほとんどのところは尽くされたと思いますので、でき れば次回、今日十分でなかったところも若干それは修正はあり得るという前提で、可能 性として報告書を案として出させていただければと。それを一遍、先生方に御議論いた だいた方がいいのではないかというふうには考えているところでございます。 ○矢崎部会長  そうすると、もう次回は今の大方の委員の方々の意見に沿って報告書の最終案を事務 局から用意してくださるんですか。 ○母子保健課長  案の案みたいなものでしょうけれども、それに一遍目を通していただかないといけま せんし、それがまさに次回だけで済むかどうかという話は大変大きな話でして。 ○鈴木委員  質問ですが、それは検討課題1に関してでしょうか。公的管理運営機関をどうするか という話は、まだ残り続けているというふうに私は認識しているんですが。 ○母子保健課長  幾つかのレベルがあると思いますけれども、ここで議論していただく中身と、あとど ちらかといいましたら、事務局で行政として整理する問題とレベルがあると思うので、 そこのところは今後整理をさせていただいた上で報告書にまとめて、皆様方に提示をし たいと我々としては考えているところであります。 ○矢崎部会長  そうしますと、次回に、今鈴木委員の言われたような疑問もある程度理解できるよう な案をつくっていただけるんでしょうか。 ○母子保健課長  できるだけ努力はしたいと思います。 ○鈴木委員  次回は、それをまた頭から確認していく作業をするんでしょうか。 ○矢崎部会長  委員の皆様方にあらかじめ送ってコメントをいただくという方法もありますが、どう しましょうか。 ○母子保健課長  すべてをきれいな形でまとめ切れるかというと、今日のような議論もありますので、 正直言いまして、そこは自信がないんですけれども、できる部分についてはもうぼちぼ ちある程度のところは報告書のスタイルでまとめてもいいのではないかと我々は考えて はいるんですが。 ○加藤委員  従来の報告書とは少し毛色が変わっていて、この点についてはまだ議論が十分でなか ったというものを入れてもいいのではないですか。あと十年ぐらいやっても、とても決 着はつかないと思いますよ。 ○鈴木委員  意見として。私は、やはり公的管理運営機関をどういうものにするかという提言が最 終的にすごく大事だと思うんです。それについて私としてはすごく未消化な感じがして いるんですけれども、是非それについてもう一度設けてからその部分のまとめに入って いただければと思います。 ○母子保健課長  各委員のお考えからしますと、公的管理運営機関だけではなくて、私はこの部分につ いてまだ未消化だと思っているという御意見をお持ちの委員も多分いらっしゃると思う んですけれども、それをすべてやりますと、まさに今加藤先生がおっしゃいましたよう に、10年ぐらいたっても本当はまとまりつかないのかなという議論は、我々として恐れ ているところもございます。ですから、まとめられる分については、できればまとめさ せていただけないだろうかと考えているところなんですけれども、その辺はいかがでご ざいましょうか。 ○矢崎部会長  公的管理運営機関がどういう方向で検討され得るかということは、行政的な視点から 何か示していただければ、皆さんある程度の理解を得られるのではないかと思いますの で、それについても御配慮いただければと思います。  大体、方向性は定まっていると思います。この検討部会で、この問題については全員 一致でこうだという結論には、どうしてもなじまない課題ではないかと思いますので、 たとえ少数意見でもそれを全部無視して一方にまとめるということもやはり難しい問題 がありますので、この検討部会でおおよその意見はこうであると。ただし、さっき言わ れましたように、こういう意見もあるということも付記することもあり得るということ を頭の中に入れながら、最終的な報告案というのを作成していきたいと思います。 ○荒木委員  1つだけ確認させていただきたいんですけれども、私どもは代理懐胎の実施は認めな いとしておりますけれども、それに罰則規定を伴うか、そのまま認めないのか、また必 然的に罰則規定を伴って認めないということの結論はいかがなんでしょうか。学会とし ては見解を示していないんですけれども、それが大きな問題だと思うんですね。例えば 、罰せられるのは我々医師側が大部分だと思いますし、その点をはっきり議論がされて いないような感じをいたしております。 ○母子保健課長  くどいようでございますが、私どもは専門委員会の報告をベースにして事務局で整理 をさせていただいているんです。今も議論が出ましたけれども、専門委員会では罰則を 伴う法律によって規制をするという一応の方向性が示されておりますので、我々はそれ を尊重したいと思っていますけれども、今日の資料の代理懐胎は禁止するというところ の3ページ目の2つ目のパラグラフですけれども、先ほど宮本の方から御説明申し上げ ましたように、「立法過程において更なる慎重な検討が行われることが必要と考えるが 」というふうなことも専門委員会でお述べいただいておりまして、この部会の結論がい きなり本当の法律にそのまま反映するかどうかというのは、それは正直言ってまだ我々 としても責任持って言えないところがございます。  ただ、部会として、もしくは専門委員会としてこうだという御意見があれば、我々と してもそれを尊重して準備を進めるということでございますので、その辺は分けて考え ていただいた方がいいのかもしれません。 ○吉村委員  ただ、私は別に医師を守るためにいるわけではないんですけれども、これは刑事罰に なるわけですね。そういうものに本当になじむんでしょうか。例えば今あっせんをやっ ているところというのは刑事罰を受けるということになるんでしょうか。 ○母子保健課長  例えがいいのかどうかわかりませんけれども、クローン規制法でも実際には10年、そ れから1,000 万円という罰則がもうできておりますので、そういう意味からいたします と、必ずしもおかしくはない。 ○吉村委員  クローン法は私も今例に挙げようと思ったんですけれども、クローンと代理懐胎とい うのは同じレベルの問題として刑事罰で本当にいいのかということですね。 ○母子保健課長  だから、確約はできないと先ほど申しましたけれども、一つそういう前例がございま すので、横並びとしてクローン法というのも比較の対象となり得るのではないかと我々 としては考えているところでございます。 ○加藤委員  本当のことを言うと、大体罰則をどういうレベルでやるかというところから議論を始 めなければいけなかったんですよね。 ○矢崎部会長  これは極めて難しい問題で、我々の手で処理できることではないと思いますが、想像 としては、あっせんしたり、そこで金銭の授受があったりということは罰せられるし、 それから情報の漏洩はプライバシーの保護法に違反するということで罰せられますが、 行為そのものはもう少し強い立場で規制できるということは少し行政と立法の方で考え ていただいて、対象の違反に対する罰則もいろいろグレードがありますよね。ですから 、なかなか難しい問題ですが、ある程度筋道をつけて示していただければ大変ありがた いと思います。  御不満だと思いますが、また青字にして、そこでまたすごい議論があってなかなか黒 字にならないということも予想されますので、今日の赤字の部分を次回には青字にさせ ていただいて、そして宿題が3つありましたので、その宿題を解いて、次回は報告書の 案の案かもしれませんが、それを提示して、またディスカッションしていただければと いうふうに思います。 ○石井委員  今の刑罰の点は、確かにバランスということはあるかと思いますけれども、今の戒告 の実効性のないところの問題から法律で規制、その担保としての刑罰ということを委員 会としては考えていたということがあるということが1点です。  それとの関連でいきますと、今日何度か部会長がおっしゃったんですけれども、40ペ ージの海外に対する規制の可能性というのは、私も法律家なんですが、わからないので 、是非事務局と法務省との御相談の上、どの程度、何が可能なのかということを次回ま でにお示しいただければありがたいということです。  本当にしり抜けになって海外でみんなやっているだけに終わっているのでは何の意味 もないと私も思いますので、その点の上から規制の可能性があるのか、現行として立法 すれば何ができるのか等々のことも。 ○加藤委員  海外に行くのまで取り締まるというのはやり過ぎだという気もしますけどね。 ○石井委員  でも、あっせんについての規制ということについてはどこまでできるかとか、そうい うことですよね。 ○矢崎部会長  それを含めて、事務局として大丈夫ですか。  それでは、今回も長時間にわたりまして、議論をありがとうございました。 ○対策準備室長  次回ですけれども、 3月26日水曜日の午後を予定してございますが、いかがいたしま しょうか。                 (次回日程調整)  それでは、1時から5時ということで。 ○矢崎部会長  申し訳ないです。もう1回だけお許しください。  それでは、今日の検討会は終わります。どうもありがとうございました。 ○対策準備室長  また、資料作成の関係上、御意見がありましたら 3月24日月曜日の午前中までにいた だきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。                     照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                         03−5253−1111(代)                         宮本(内線:7933)                         天本(内線:7939)