03/03/07 薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 平成15年3月7日議事録       薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年3月7日(金) 14:00〜   霞が関東京會舘 ロイヤルルーム7〜8号室 2.出席委員(14名)五十音順   井 上 章 治、 上 田 志 朗、 大 澤 真木子、 岸 田   浩、   北 村 啓次郎、 倉 田   毅、 倉 田 雅 子、 首 藤 紘 一、   菅 谷   忍、 田 代 眞 人、 土 屋 文 人、 埜 中 征 哉、   長谷川 隆 一、 堀 内 龍 也、◎松 本 和 則 (注) ◎部会長  ○部会長代理   他 参考人3名   欠席委員(9名)五十音順  ○池 田 康 夫、 甲 斐 知恵子、 倉 田   毅、 相 楽 裕 子、   清 水 弘 之、 首 藤 紘 一、 菅 谷   忍、 田 代 眞 人、   土 屋 文 人 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 黒 川 達 夫(安全対策課長)、   池 田 年 仁(安全対策企画官) 、 金 子 和 代、 山 田 雅 信、   日下田 俊 彦、 関 野 秀 人、 池 田 三 恵  他 4.備  考   本部会は、公開で開催された。 ○事務局 厚生労働省安全対策課の関野でございます。定刻になりましたので、平成14 年度第3回医薬品等安全対策部会を開催させていただきます。先生方におかれましては 足元の悪い中御出席いただきまして、ありがとうございます。本日の会議におきまして は、お手元の座席表にも書いてございますが、9名の先生が御欠席ということでござい ますけれども、現在13名の先生方にお越しいただいております。本部会の定員が23名 でございますので過半数以上に達しておりまして、本日の部会は成立しております。そ れでは以後の議事進行を松本部会長にお願いしたいと思いますので、カメラ撮りの方は この辺りで終えていただきたいと思います。御協力よろしくお願いします。 ○松本部会長 それではよろしくお願いいたします。まずは事務局から本日の配付資料 の確認をお願いいたします。  ○事務局 それでは事務局より配付資料の確認をさせていただきます。お手元の封筒に 入っております資料をお出しいただきたいと思います。まず最初に議事次第があります が、その下に「配付資料一覧」というものがございます。そちらを御覧いただきながら、 配付しております資料の確認をさせていただきたいと思います。  座席表がまず一枚ございまして、その下に資料1ということで、「医薬品の使用上の 注意の改訂について」という横長の資料がございます。続きまして資料2-1の「コウジ 酸を含有する医薬部外品について」、資料2-2の「コウジ酸の安全性評価について」、 資料2-3の「コウジ酸の遺伝毒性について」、資料2-4の「コウジ酸の発がん性につい て」、資料2-5の「食品添加物『コウジ酸』について」というものでございます。以上 が資料2の関係でございまして、そのほかに資料3ということで「ゲフィチニブ(イレッ サ錠250)について」という資料があるかと思います。そのほか委員の先生方におかれま しては、厚い小冊子と申しましょうか資料集がございまして、席上配付ということで参 考資料をお手元に置かせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思いま す。配付資料は以上でございます。 ○松本部会長 よろしいでしょうか。それでは早速議題に入りたいと思いますが、その 前に議題2に関連しまして、専門委員の先生に御出席いただいておりますので、まず御 紹介させていただきます。国立医薬品食品衛生研究所病理部第一室長の西川秋佳先生で す。 ○西川専門委員 西川でございます。よろしくお願いいたします。 ○松本部会長 同じく国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部長の林眞先生です。 ○林専門委員 林です。よろしくお願いいたします。 ○松本部会長 それから聖マリアンナ医科大学代表教授であられます溝口昌子先生で す。○溝口専門委員 溝口でございます。よろしくお願いいたします。 ○松本部会長 先生方、よろしくお願いいたします。それでは議題1に入ります。「平 成14年度における安全対策の実施状況について」、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは事務局より資料1の「医薬品の使用上の注意の改訂について」に基 づきまして、御説明させていただきます。本日お配りした資料は前々回の安全対策部会、 平成14年6月の部会で報告した以降、本年2月12日発出分までの使用上の注意の改訂 指示についてまとめたものでございます。個々の指示内容については、その都度部会の 先生方に御確認いただいているところでございますけれども、この機会に主なもの、あ るいは少し説明を要するもの等につきまして、発出順に簡単に御説明させていただきた いと思っております。資料の見方でございますけれども、一番左側に数字がございまし て、例えば一番上のカラムに「6月5日発出」、「02-21」とございますが、これは「02」 というのが2002年度ということで、そのうち21件目の改訂指示ということでございま す。つまり20件目までは前回御報告させていただいたということでございます。  順に御説明いたしますと、まず6月5日発出分でございますけれども、合計として25 件ございまして、主なものとしましては一番上のアレンドロン酸ナトリウム水和物、こ れは骨粗鬆症治療剤でございます。本剤については従来から消化器系の副作用が知られ ていたわけですけれども、「重要な基本的注意」の項に本剤の服用方法及び副作用の発 現等に関する患者への指導を行うよう追記し、更なる注意喚起を行ったという内容でご ざいます。それからその下の02-22のエダラボンでございますが、これは脳梗塞急性期 の治療薬でございまして、この指示の際に「重大な副作用」の項に「急性腎不全」、「黄 疸」に関する記載を追記したというものでございます。  続きまして、3ぺージを御覧いただきたいのですが、真ん中より下のところに「7月 10日発出」とございます。このときは18件ございまして、主なものとしましては02-46 のマキサカルシトール(外用剤)で、これは尋常性乾癬に使用される薬剤でございますけ れども、「重大な副作用」の項に「高カルシウム血症」、「急性腎不全」に関する記載 を追加したというものでございます。  続きまして5ぺージを御覧いただきたいのですが、真ん中に7月23日発出の塩酸チク ロピジンがございます。これは前回の部会でも御説明させていただきました緊急安全性 情報発出の際の指示でございまして、「警告」及び「用法・用量に関連する使用上の注 意」の項に「投与開始後2か月間は、原則として1回2週間分を処方すること」と追記 するというものでございます。  それからその下が8月12日発出分ということで、一番下のカラムの02-68、インフル エンザHAワクチンでございます。この際の使用上の注意の改訂指示は、「重大な副反 応」の項に「ギランバレー症候群」、それから「けいれん」に関する記載を追記したと いうことでございます。  続きまして6ぺージを御覧いただきたいのですが、真ん中のところに9月10日発出分 がございまして、02-76のリバビリンとその次のインターフェロンアルファ-2b(遺伝子 組換え)、これは2剤両方についての指示でございます。内容につきましては、リバビリ ンとこのインターフェロンの併用において脳出血の副作用が報告されたということで、 「重大な副作用」の項に追記するなどの指示を行っているところでございます。  続きまして9月25日発出分として7ぺージを御覧いただきたいのですが、上から3行 目のO2-81、タゾバクタムナトリウム・ピペラシリンナトリウムでございます。これは 抗生物質でございますが、「重大な副作用」の項に「劇症肝炎」を追記したものでござ います。  それからそのぺージの下の方、10月15日発出の02-90、ゲフィチニブとございますが、 これは本日も資料を御用意させていただいておりますけれども、緊急安全性情報を発出 したときの指示でございます。  続きまして8ぺージですが、02-91のエダラボンでございます。これも緊急安全性情 報を発出したときの指示でございまして、内容としては「急性腎不全」に関する注意喚 起を行ったものでございます。   それから10月30日発出分でございますが、02-94のファモチジン、これは医療用製 剤でございますけれども、「重大な副作用」の項に「間質性肺炎」を追記するよう指示 しております。  それから10ぺージを御覧いただきたいのですが、11月7日発出の02-114、フマル酸 クエチアピンに関しまして緊急安全性情報を発出したときの指示でございます。内容と しましては、「警告」の項に「糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡」に関する注 意、それからこうした副作用についての患者への十分な説明と多飲、多尿、口の渇きな どの前駆症状が現れた場合に受診するように指導する旨を追記させたというものでござ います。  それから12月4日発出分でございますが、02-115のカンデサルタンシレキセチル、 これはアンギオテンシン受容体II拮抗薬でございますけれども、「重大な副作用」の項 に「間質性肺炎」に関する記載を追記させております。  それから11ぺージを御覧いただきたいのですが、12月26日にエダラボンについて指 示をしておりまして、緊急安全性情報の発出時に急性腎不全について注意喚起をしてい たわけですけれども、新たにDIC(播種性血管内凝固症候群)に関する記載を追記する ほか、「高齢者」を「慎重投与」に追記し、また「重要な基本的注意」に頻回に腎機能 検査を実施するよう追記するという内容の指示をしております。それからその下のゲフ ィチニブでございますが、これは12月25日に行われました検討会の結果に基づく指示 でございます。  12ぺージを御覧いただきますと、一番上の02-125、塩酸イリノテカンについて「重要 な基本的注意」の項に「過敏症」、「高度な下痢」、「播種性血管内凝固症候群」、「腸 炎」に関する記載を追記するほか、「重大な副作用」の項にも「腸炎」等について追記 させたというものでございます。以上簡単ではございますが、概略の説明を終わらせて いただきます。 ○松本部会長 ありがとうございました。委員の先生方の元にはもう少し詳しい資料が 届いているかと思います。ただいまの平成14年度における安全対策の実施状況につい て、御質問、御意見ございませんでしょうか。  特に御質問がないようでしたら、議題2に進みたいと思います。「医薬部外品に含有 する成分の安全性について」、専門委員の先生方よろしくお願いいたします。この議題 はコウジ酸という医薬部外品に含まれます美白成分について、発がん性及び遺伝毒性に 関する安全性を検討してきたものです。本日はその検討状況を基に、コウジ酸を含む医 薬部外品の取扱いについて御議論いただきたいと思っております。専門委員として御出 席いただいている先生方には専門的な御意見、またこれまで検討されてきた内容などに 関するお話をしていただきたいと思っておりますが、まず事務局から資料に沿って説明 をお願いいたします。 ○事務局 安全対策課の池田でございます。それでは資料2の枝番が1〜5までござい ますが、そちらに基づきまして説明をさせていただきます。資料2-1を中心とした説明 になります。まず資料2-1の1ぺージをお開きください。コウジ酸を含有する医薬部外 品の概要でございますが、最初にコウジ酸含有医薬部外品としての承認がなされました のは昭和63年4月でございます。有効成分であるコウジ酸の配合割合といたしまして は、現在存在するものでは0.1〜1.0%までの含有量でございます。原体製造企業は三省 製薬株式会社でございます。効能・効果といたしましては、日やけによるしみ・そばか すを防ぐということで、御案内がございましたようにいわゆる美白の効能を有している ものでございます。用法・用量といたしましては、少量を顔面に塗擦する、あるいは少 量を肌に塗布するということになっております。物といたしましては構造式がここにご ざいますが、このような物質から成っております。  次のぺージをお開きいただきますと、「2.これまでの経緯」とございます。今回の医 薬部外品としての審議に至る経緯となっておりますけれども、コウジ酸は医薬部外品の 美白成分としてのほかに、食品の漂白などの用途に用いられてきたものでございます。 先ほど申し上げましたように、医薬部外品としての承認を昭和63年4月に有しておりま すが、食品添加物としての関係では平成7年5月に食品衛生法の改正がございまして、 指定制度の対象が化学的合成品のみから天然添加物へ拡大されております。この改正に 絡みまして、平成8年4月にコウジ酸を含む既存の添加物については既存添加物名簿の 告示がなされまして、これによりまして引き続きコウジ酸も既存添加物としての使用が 認められております。これらにつきましては、安全性の評価が行われることとなりまし て、以下には食品分野での検討、経緯が述べられております。  コウジ酸については、まず平成8〜12年にかけまして食品添加物としての安全性評価 のための試験研究が実施されました。これは国立医薬品食品衛生研究所等を中心として 行われた試験研究でございます。こちらの試験研究の結果、まずコウジ酸については甲 状腺での発がん作用が当初問題になりました。ただ、甲状腺に関する作用については非 遺伝毒性のプロモーション作用によるもの、すなわち一定量以下では作用が見られない ものであるということで、閾値が1,250ppm(66mg/kg/day)と推定されました。一方で、 甲状腺への影響を検討する課程で肝臓への影響が問題となりまして、このため平成13〜 14年にかけまして、肝臓への影響を確認するために引き続き食品添加物としての安全性 評価のための研究が実施されました。この結果といたしまして、コウジ酸が肝臓に対し て発がん性を示す可能性が示唆されまして、これが遺伝毒性によるものである可能性が 否定できないという評価がなされました。以上を踏まえまして、平成14年12月19日に 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会、毒性・添加物合同部会の方で、食品添加物とし てコウジ酸を使用しないように必要な基準を策定することが決定されております。この 際の当部会の考え方でございますが、それが(1)〜(4)まで紹介されておりますので、読ま せていただきます。 (1)マウス及びラットにおいて甲状腺及び肝臓での発がん性が示唆され、肝臓での発がん 性については遺伝毒性によるものであることを否定できない。 (2)食品添加物としてのコウジ酸は意図的に添加するものである。 (3)食品添加物としてのコウジ酸は使用実態なし。 (4)みそ、しょうゆ等の食品については ・食品中に残存するコウジ酸は微生物、酵素等によって分解されると報告されて  い ること、 ・食品中の濃度はごく微量で限られたものであること、  ・みそにより、がんの発生が抑制されるという動物試験結果があるなど、みそ、  し ょうゆ等のリスクは食品全体として評価する必要があること、 などから、みそ、しょうゆ中のコウジ酸については、直ちに何らかの措置を講じる必要 はないとの評価になっております。  食品分野における評価については、本日お配りしております資料2-5の方により詳細 なものがございますので、適宜御参照いただければと存じます。  資料2-1の次のぺージに移っていただきますが、3ぺージでは今申し上げましたよう な食品での検討の経緯等も踏まえまして、部外品としての検討について、これまでの経 過を御説明しております。まず平成15年1月30日にコウジ酸の安全性に関する検討会 を開催させていただきました。専門の先生方にお集まりいただいて、現在得られる資料 について御検討いただきました。得られる資料というのはここに「検討対象」と書かれ ておりますけれども、すなわち医薬部外品承認申請時の提出資料、薬事・食品衛生審議 会食品分科会、いわゆる食品分野での検討資料、それからコウジ酸原体製造企業、三省 製薬でございますが、こちらからの提出資料等でございます。これらに基づき安全性の 評価を行いまして、この検討会の開催以降も個々に御意見を伺うなどいたしまして、最 終的に検討会の評価を取りまとめということになっております。  検討会の評価について御説明させていただきますので、資料2-2を御覧ください。最 初に目次がございますが、こちらが取りまとめられた検討会の評価になっております。 目次の方でお分かりいただけますように、コウジ酸について問題となりました発がん性、 遺伝毒性についての評価、それから医薬部外品としての皮膚に塗布するという使用方法 を考慮した、吸収・分布・代謝・排泄、いわゆるADME関係の評価、また医薬部外品 の安全性についての総括となっております。  表紙をおめくりいただきまして1ぺージでございますが、まず「1.コウジ酸の遺伝毒 性及び発がん性について」ということで、遺伝毒性について書かれております。若干内 容を御説明させていただきますと、in vitroにおいて実施された試験に関しましては、 DNA傷害性を見る大腸菌SOS試験で陰性、DNA傷害性を見るRec-assayでは1,000 μg/diskで陽性という結果。それから細菌を用いる復帰突然変異試験では、代謝活性化 の有無にかかわらず1,000μg/plate以上の高用量域において陽性という結果でござい ます。  それから次にほ乳類培養細胞を用いる試験系での結果がずらっと書かれておりますけ れども、チャイニーズハムスター細胞株V79を用いた遺伝子突然変異試験では陰性、マ ウスリンフォーマhprt試験においては陰性、それからチャイニーズハムスター細胞 株CHO-K1細胞を用いた姉妹染色分体交換試験及び染色体異常試験では10mM以上高い濃 度で陽性、チャイニーズハムスター培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験では総合 的には陰性という評価でございます。それからV79細胞を用いる染色体異常試験におき ましては、陽性とは評価できないものであるとされております。また、ヒトケラチノサ イトとヒト肝がん細胞を用いたin vitro小核試験では、細胞毒性が強く発現している高 い用量のみで小核の出現頻度の上昇傾向という結果でございます。  ほ乳類培養細胞を用いる試験系についてのまとめは、1ぺージの下から二つ目のパラ グラフの5行でございます。内容としましては、遺伝子突然変異誘発性は認められなか ったが、染色体異常誘発性に関しては一部の試験で陽性の結果が得られており、染色体 異常誘発性の可能性は否定できない。ただし、陽性が認められるのは培養条件が非生理 的になるような高濃度域のみであったり、同一細胞を用いた試験での再現性が得られな かったものであったという結果でございます。  次にin vivoの試験でございますが、ラット肝細胞不定期DNA合成試験で陰性。D NA傷害性の検出系である単細胞ゲル電気泳動法(コメット法)では、マウス肝及び甲状 腺で陰性でございますが、マウス肝臓での陽性結果もございまして、ラット肝及び骨髄 での陽性の結果もございます。それからトランスジェニックマウスを用いたin vivo遺 伝子突然変異試験では、甲状腺については試験継続中でございますが、肝臓においては 陰性という結果でございます。それからin vivoでの染色体異常誘発性に関しては多く の小核試験がございまして、造血系ではマウスで陰性、ラットで陽性、それから肝細胞 に関してはマウス再生肝で陽性、幼若ラット肝で陰性ということでございます。ただし、 いずれの陽性結果に関しても強いものとは考えられないという評価でございます。  まとめとしましては、読ませていただきますと、  コウジ酸の遺伝毒性に関する試験結果を総合的に評価すると、多くの陰性結果と共に、 幾つかの試験系で陽性結果が得られている。しかし、それらの陽性反応は強いものでは なく、がん原性が疑われる腫瘍誘発標的組織である肝臓で、極めて高濃度のコウジ酸で DNA切断が誘発されており、これがコウジ酸の遺伝毒性によるものであるか否かは不 明である。総合的に判断して、コウジ酸に遺伝毒性があったとしても強いものではない と考えられる。しかし、肝臓における発がんに遺伝毒性のメカニズムが働くかを、肝臓 におけるDNA付加体形成試験等により、コウジ酸が直接DNAと反応し、傷害を及ぼ すか否かを早急に確認する必要がある。  次に発がん性でございますが、まず甲状腺での発がん性については、発がん試験とし まして承認申請時に企業から提出されておりますマウスにおけるがん原性試験では、1 %コウジ酸までの投与で発がん性を示す結果は得られておりません。しかしながら、そ の後行われたより高濃度の試験では、マウス18か月がん原性試験で1.5及び3%の混餌 投与により甲状腺腫瘍が誘発されるという報告がございます。一方、甲状腺発がんに関 する遺伝毒性でございますが、甲状腺発がんの機序を明らかにするために種々の試験が 行われておりまして、それが2ぺージの下から2行目からの(1)〜(7)の試験でございます。 これらの試験結果を踏まえまして、コウジ酸が甲状腺の濾胞上皮細胞に対してイニシエ ーション作用を有する可能性はほとんどないと考えられております。それから甲状腺に おける発がん作用のメカニズムといたしましては、ヨードの取り込みと有機化の阻害に よる甲状腺ホルモン合成阻害に続く下垂体甲状腺のネガティブフィードバック機構を介 した非遺伝毒性に起因するものであることが強く示唆されるという評価でございます。 これらの評価の結果、コウジ酸は非遺伝毒性の甲状腺発がん物質だと結論されておりま して、作用機序は1,250ppmと考えられるとされております。  次に肝臓での発がん性でございます。3ぺージの中段ぐらいからでございますが、甲 状腺のところで述べましたように、承認時のマウスがん原性試験では発がん性を示す知 見は得られておりません。しかし、先ほども御紹介いたしましたより高濃度のマウス18 か月がん原性試験で、甲状腺腫瘍のほかに、雄の1.5%投与群で肝腫瘍の増加傾向、雌 の3%投与群で肝腫瘍の有意な増加が認められたという報告がございます。その後の試 験でございますが、「また」以下に書かれているものを読ませていただきます。  遺伝毒性発がん物質に高感受性を示すp53ノックアウトマウス及びその野生型マウス に1.5%及び3%のコウジ酸を26週間混餌投与した結果、コウジ酸の1.5%以上投与群 でノックアウトマウス及び野生型マウスにおいて肝細胞腺腫が誘発されており、1.5%投 与群における肝細胞腺腫の発生頻度はノックアウトマウスの方が野生型マウスより有意 に高かった。この実験では肝障害が多く認められており、肝腫瘍の増加が細胞障害に基 づく二次的な細胞増殖によって修飾された可能性がある。  コウジ酸のCBA[p53(+/+)]マウスにおける6か月間反復投与実験では、肝増殖病 変の発現率及び肝細胞小増殖巣の平均発生個数が2%コウジ酸投与群で増加する傾向が 認められ、2%群では肝細胞巣状壊死の増加傾向も認められている。  その他、コウジ酸のF344ラットにおけるN-nitrosobis(2 -hydroxypropyl)-nitrosamine(DHPN)を用いた肝二段階発がん実験では、DHPN+ 2%コウジ酸群において、前がん病変であるGST-P陽性細胞巣の単位面積当たりの個 数及び平均面積が有意に増加し、また、DHPNのイニシエーション処置なしのコウジ 酸単独投与群においてもGST-P陽性細胞巣が無処置群に比較して有意に増加してい る。さらに、ラット肝中期発がん性検索法(伊東モデル)を用いた検討では、2%コウジ 酸投与群で単位面積当たりのGST-P陽性細胞巣の個数及び平均面積が有意に増加し ている。  以上の成績から、コウジ酸がマウス及びラットの肝臓に対して発がん性を示す可能性 が確認され、コウジ酸が肝発がんプロモーション作用を有することは明らかであるが、 その肝発がんメカニズムにコウジ酸の肝傷害性のほか、イニシエーション作用が関与し ている可能性も否定できない。  次に5ぺージに入りますが、吸収・分布・代謝・排泄の関係でございます。吸収・分 布に関しましては、ラットのデータが承認時に提出されております。ラットにコウジ酸 10mg/100g体重を経口投与、皮下投与及び経皮投与した場合のAUCから見ますと、ラ ットでは経皮投与の場合のバイオアベイラビリティは経口投与、あるいは皮下投与の場 合の約2分の1であると推察されております。また、これらのAUCの値から体重100 gのラットの血液量を10mLと仮定した場合、経口、皮下及び経皮投与の吸収率はそれぞ れ10.5%、10.O%及び4.5%と計算されました。ただし、ヒトとラット等の皮膚は厚さ や構造等に相違があるため、ラットにおける吸収率をそのままヒトにおける吸収率に当 てはめることには問題があり、一般にはヒトにおける吸収はラットなどげっ歯類におけ る吸収よりも低いと考えられるという評価でございます。それから分布につきましては、 ラットでは経皮投与におきまして、発がん性の標的臓器として今回検討されております 肝臓への分布が見られております。  それからコウジ酸1%を含有する医薬部外品200mgを1日2回塗布した場合を考えま すと、皮膚に適用されるコウジ酸は4mg/dayでございまして、ラットにおける皮膚吸収 率をヒトにそのまま当てはめることは問題がございますが、仮にラットにおける吸収率 を用いると、経皮吸収率は180μg/dayと起算されます。通常ヒトではラットなどよりも 吸収率は低いものと考えられるが、ヒトにおける経皮吸収量を適切に推定するためには、 ヒトでの試験の実施によって吸収率を求める必要があると考えられるとの御評価でござ いました。  それから次に総括でございます。少々長くなりますが、正確を期するために読ませて いただきます。 1) 遺伝毒性に関する試験結果を総合的に評価すると、多くの陰性結果と共に、幾つか の試験系で陽性結果が得られている。しかし、それらの陽性反応は強いものではなく、 毒性学的意義をすべて否定はできないものの、がん原性が疑われる腫瘍誘発標的臓器で ある肝臓で、コウジ酸が遺伝毒性を示す可能性は低いものと考えられる。ただし、DN A付加体形成の検出等によりDNA傷害活性を確認する必要がある。 2) 甲状腺の発がん性については、閾値が設定できるプロモーション作用によるものと 考えられる。 3) 肝臓の発がん性については、プロモーション作用を有することは明らかであり、さ らにイニシエーション処置なしにコウジ酸のみを投与して肝腺腫や前がん病変の増加も 認められていることから、マウスのみならずラットに対する発がん性も示唆される。ま た、遺伝毒性発がん物質に感受性が高いp53ノックアウトマウスにおいて、肝細胞腺腫 の発生頻度は、野生型マウスよりも有意に高かったことから、遺伝毒性による発がん物 質である可能性も否定できない。 4) 医薬部外品として適正に使用した場合に皮膚に適用されるコウジ酸は、4 mg/day(体重50kgのヒトの場合、0.08mg/kg/day)程度と推定される。ヒトにおける経皮 吸収量を推定するためにはヒトにおいて吸収率を明らかにする試験が必要であるが、一 般にヒトより吸収率が高いと考えられるラットでの吸収率が4.5%程度であることを考 慮すれば、コウジ酸含有医薬部外品を使用した場合に経皮的に吸収されるコウジ酸の量 は、甲状腺発がん性に関する閾値66mg/kg/dayと比較しかなり低い量であると考えられ る。 5) これまでに得られている試験結果からは、肝臓の発がん性については、すべてを非 遺伝毒性によるものであるとする根拠は得られておらず、発がん性に関する試験結果か ら、遺伝毒性物質である可能性も否定できない。したがって、発がん性及び発がんメカ ニズムを追究する上では、さらに次のような試験が有用と考えられる。 (1)ラットを用いた肝臓での発がんイニシエーション試験(フェノバルビタール等の既知 のプロモーター処置群と無処置群を用いた検討)(経口投与)  (2)肝発がんプロモーション作用のメカニズム試験 (3)ラットを用いた混餌投与による発がん性試験 (4)ラットにおける代謝試験(代謝物の特定) (5)32Pポストラベル法による肝臓及び皮膚におけるDNA付加体形成試験(光の影響の 有無も含めた検討)(経皮及び経口投与) (6)ヒトでの経皮吸収試験 (7)光遺伝毒性試験 (8)げっ歯類を用いた皮膚腫瘍に関するイニシエーション・プロモーション試験(経皮投 与) 6) なお、医薬部外品としての安全性を判断するためのデータは現段階では不十分では あるが、これまでに得られている遺伝毒性及び発がん性の試験結果のみから判断すると、 コウジ酸の発がん性を疑わせる病変は高用量でのみ見られるものであり、肝臓等におい て遺伝毒性による発がんを起こす可能性は否定できないものの、ヒトにおける健康被害 につながる可能性はかなり低いと推察される。  また、昭和63年の医薬部外品としての承認時から現在まで、美白の効能を有する医薬 部外品の成分として使用されている。現在までに、コウジ酸含有医薬部外品の使用と肝 臓がんあるいは甲状腺がんとの関係を示唆する報告はない。  なお、資料2-3と2-4は遺伝毒性、発がん性それぞれに関する専門家による取りまと めとなっておりまして、評価と評価データのより詳細が分かる資料になっております。 今御紹介申し上げました資料2-2の評価の結果についてはこれらに基づくものとなって おりますので、必要に応じてこちらも御参照いただければと存じます。  資料2-1の3ぺージにお戻りいただきますと、こちらに「評価結果」とございますの が今読み上げました検討会における評価結果のポイントとなる部分を記載したものでご ざいます。繰り返しになりますが、読ませていただきます。 評価結果: ○マウス及びラットにおいて肝臓及び甲状腺に対する発がん性が示唆され、甲状腺に対 する発がん性については、閾値が設定できるプロモーション作用によるものと考えられ るが、肝臓に対する発がん性については、遺伝毒性によることを否定できない。 ○肝臓での遺伝毒性による発がん性の有無を明らかにするためには、追加的なデータが 必要。 ○医薬部外品として使用実態(皮膚に塗布)を踏まえた、ヒトでの吸収量を明らかにする ための試験等による追加的なデータが必要。 ○これまでに得られている遺伝毒性及び発がん性の試験結果から判断すると、肝臓にお いて遺伝毒性による発がんの可能性は否定できない。   しかしながら、ヒトにおける健康被害につながる可能性はかなり低いと推察され、 また、現在までにコウジ酸含有医薬部外品の使用と肝臓がんあるいは甲状腺がんとの関 係を示唆する報告はない。  4ぺージを御覧いただきたいと思います。こちらは今申し上げました検討会での安全 性の評価を踏まえまして、コウジ酸含有医薬部外品等の取扱いの事務局案をまとめたも のでございます。こちらを読み上げさせていただきます。 (基本的考え方) (1) 医薬部外品及び化粧品(以下「医薬部外品等」という。)は、疾病の治療等を目的 として有効性と安全性を勘案して使用する医薬品とは異なるものであり、リスク・ベネ フィットに基づく評価を行うことは適当ではない。 (2) 現段階において得られている科学的知見からは、コウジ酸の肝臓における発がん メカニズムは明らかでないものの、遺伝毒性による可能性が否定できず、また、動物実 験において発がん性が示唆されている。 (3) 一方で、 ・ 昭和63年の承認以降、コウジ酸を含有する医薬部外品等の使用による肝臓がん等の 健康被害が発生した症例報告はなく、 ・ これまでに得られている科学的知見の多くからは、医薬部外品等としての用法・用 量の範囲で使用する限りにおいて、発がん性及び遺伝毒性が発現するという明らかな科 学的根拠はなく、また、発がん性及び遺伝毒性の発現を否定するだけの科学的根拠もな い、 という状況である。 (4) このような状況において、コウジ酸を含有する医薬部外品等について、現時点で は直ちに安全性に問題があるとは考えられないが、追加試験が実施され、コウジ酸と発 がん性及び遺伝毒性との関係について明らかになるまでの間、新たな製造・輸入をしな いことにより万が一のリスクを少なくする必要がある。 (当面講ずべき安全確保措置) (1) コウジ酸を含有する医薬部外品等の製造・輸入業者は、以下の措置を講ずること。 (1)コウジ酸による肝臓での発がんメカニズム等を明らかにするため、追加試験を実施す ること(別紙参照)。 (2)追加試験の結果が出るまでの間、コウジ酸を含有する医薬部外品等の新たな製造・輸 入を見合わせること。 (2)厚生労働省は以下の措置を講ずること。 (1)関係業界団体等に対して今回の措置について周知を図るとともに、消費者に対して関 連する情報提供を徹底するため、インターネット等を通じて積極的な広報に努めること。 (厚生労働省ホームぺージhttp://www.mhlw.go.jp) (2)現在コウジ酸を含有する医薬部外品の承認を有する製造業者等が、コウジ酸と同様の 効能又は効果を有するとして承認されている成分への切り替えを行う場合に限り、承認 審査上、優先的な手続きを考慮すること。  別紙の追加試験でございますが、 追加試験一覧 (1)ラットを用いた肝臓での発がんイニシエーション試験(経口投与) (2)肝発がんプロモーション作用のメカニズム試験 (3)ラットを用いた混餌投与による発がん性試験 (4)ラットにおける代謝試験(代謝物の特定) (5)32Pポストラベル法による肝臓及び皮膚におけるDNA付加体形成試験(光の影響 の有無も含めた検討)(経皮及び経口投与) (6)ヒトでの経皮吸収試験 (7)光遺伝毒性試験 (8)げっ歯類を用いた皮膚腫瘍に関するイニシエーション・プロモーション試験(経皮投 与)  当該事務局案をたたき台として、コウジ酸を含有する医薬部外品等について行うべき 追加試験等も含めまして、取扱いについて御審議を頂きたいと存じます。長くなりまし て大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。 ── 説明途中、渡辺委員、大澤委員着席 ── ○松本部会長 ありがとうございました。検討会の座長でいらっしゃいます西川先生、 いかがでしょうか。 ○西川専門委員 今事務局から御説明いただいたとおりで間違いありませんけれども、 まず私の方からラット、マウスにおける発がん性についての補足説明をさせていただき ます。特にマウスにおいて高用量で投与しますと、甲状腺の腫瘍及び肝臓の腫瘍が出て まいりますけれども、同じ実験で甲状腺で出てくる腫瘍の発生頻度と肝臓での発生頻度 を比べますと、これははるかに甲状腺腫瘍の出てくる頻度が高いということ。それから マウスの肝臓の腫瘍ですが、これはいわゆる良性の腺腫と言われるもので、組織学的に も明らかながんと言い切れるだけのものではないということから、単純に肝発がん性と 甲状腺発がん性を比べますと、明らかに肝発がん性の方が弱いという事実があります。  次にメカニズムについての話ですが、発がんの過程にはプロモーションの過程とイニ シエーションの過程があるのは御存じかと思いますが、イニシエーションの過程という のは標的組織の細胞に何らかの遺伝子傷害が起こって、それが変異として固定するまで の段階でありまして、それは通常肉眼的に見てもがんがあるかどうかは分からない段階 であります。それに対してプロモーションの過程といいますのは、イニシエーションを 受けた細胞が選択的に増殖してがんにまで成長する過程でありまして、この過程は通常 遺伝子の傷害とはかかわりのない過程であると言われております。したがって、そのほ とんどの場合において高用量でしかプロモーション作用が出てきませんので、安全性評 価上は閾値、それ以下では発がんは起こらないという閾値、を想定することができると いうふうになっております。  それで先ほど申し上げました肝発がん性について、作用のメカニズムとしてイニシエ ーション作用とプロモーション作用が両方あるのか、あるいは例えばプロモーションだ けの作用で説明できるかということが問題になってきます。仮にプロモーション作用だ けであるということになれば、これは全く甲状腺発がんの場合と同じような考え方でリ スク評価すればいいということになります。イニシエーションの作用が疑われる実験デ ータといいますのは、p53ノックアウトマウスを使った実験でその遺伝子をノックアウ トしたマウスの方が、ノックアウトしていない普通のマウスに比べて発がん率が高かっ たという事実があります。これでイニシエーション作用が断定できるかと言いますと決 してそうではありません。いろいろな遺伝子傷害性物質、非遺伝子傷害性物質を試して みますと、こういうマウスではかなりの割合で遺伝子を傷害するものの方が発がんの率 をより高くするというような経験的な事実に基づいているわけで、メカニズム的にはこ のノックアウトマウスで発がん率が高いということが、すなわちイニシエーション作用 を示すということにならないことは注意すべきであります。  そのようなことから、とにかく発がん性に関してはこの物質にいわゆるイニシエーシ ョン作用があるかないかを早急に明らかにしないといけないということが、この前話し 合われた結論であります。したがって、事務局から御説明のあった追加試験の中にそう いうものが含まれてきているということになっております。以上でございます。 ○松本部会長 どうもありがとうございました。遺伝毒性が御専門で、これまで食品添 加物としての御検討も行っておられます林先生、いかがでしょうか。 ○林専門委員 先ほど事務局の方から詳しい説明がありまして、そこでほとんど言い尽 くされているのではないかと思うのですが、今の西川先生のお話にもありましたように、 肝臓で実際にDNAの傷害性が出ているかどうか、実際にその場で突然変異だとか染色 体異常が起こるかどうかということが非常にキーになってくるわけです。このものの性 質としての遺伝毒性を考えますと、まずin vitroというか試験管内での系では、やはり 陽性の結果と陰性の結果が入り交じっています。一番一般的に使われています「Ame s試験」と呼ばれる方法では、これは一応陽性という結果で再現性がよく得られている のですけれども、これも強さ等を考えますと実際にはかなり高用量の部分のみで陽性の 反応が得られているという特徴。それから代謝活性化、実際にいろいろなものが体内に 入ると代謝されるわけですけれども、その代謝活性化の系を組み込みますとそれが若干 弱くなっているという事実がございます。それからあともう一つは、先ほどの事務局の 話にもありましたように、培養細胞を使ったときに染色体異常とか姉妹染色分体交換な どが出てくるという御説明があったのですが、確かに陽性の結果が得られていまして、 ほとんどの部分がかなり高用量で陽性の反応が得られています。  今我々の分野では、培養細胞を使ったときに培養の条件が非生理的にならない範囲で 試験をしましょうという了解事項があるのですが、今回の場合はデータが古いという意 味もありまして、それ以上のかなり高い用量まで試験がされています。その高い用量の ところでの反応ということで、これが本当にこのものによって引き起こされたのか、非 生理的な条件になったために細胞毒性に絡む事象として何か出てきたのか、その辺のと ころがまだ最終的な結論を得るには至らないという状況です。  あと実際にいろいろ問題になるのはin vivo、要するに動物を使ったときにどうかと いうことですが、この仕事もかなり多くなされているのですが、やはり結果が割れてし まっているというところがあります。実際にマウスやラットの肝臓で先ほど話のあった コメット試験という、要するにDNAに傷が付くかどうかを見る非常に高感度の試験で すとか、それから染色体異常を見る小核試験というもので陽性という報告もございます。 一方、それが出なかったというネガティブな報告もあるということで、再現性に多少問 題があるという部分がございます。このものが本当に肝臓で強い遺伝毒性を示すもので あれば、恐らくそれは再現性を持ってきちんとした陽性が得られるものだろうと考える のですが、今回の場合はその再現性という意味でも、少し問題を残すような現状である ということは言わざるを得ないと思います。  事務局の説明にもありましたように、最終的には本当に肝臓でコウジ酸がDNAと直 接インターラクトしているのかどうか、その辺をまず確かめるということが最終的な結 論を導く場合には必要なステップではないかと考えております。その方法というのは追 加試験の中に含まれております。遺伝毒性の方からは以上でございます。 ○松本部会長 どうもありがとうございました。皮膚科学が御専門の溝口先生、いかが でしょうか。 ○溝口専門委員 皮膚科からは経皮吸収のことを申し上げたいと思います。先ほど事務 局の方が御説明になりましたが、ちょっと補足させていただきます。ブタとラットは大 分吸収が違うのですが、ラットで計算した場合にヒトでは3.6μg/kg/dayと試算されて います。これは甲状腺発がん性に関する閾値66mg/kg/dayと比較しますと、18,000分の 1でございます。ヒトとげっ歯類の経皮吸収というのは、角層や皮膚の厚さで大分差が ございます。先ほど事務局の方もそのように御説明されていましたが、物質によって非 常に違います。分子量、それから脂溶性か水溶性か、溶解温度なども関係がありますの で、一つ一つの物質によって検討する必要がありますが、これまで報告のあるデータを 見ますと水でラットの方が2倍吸収がいい、それから物質によっては5倍いい、10倍い いというデータがございます。したがいまして、この閾値の大体10倍でも18万分の1 となりますが、それより低いとしても随分低い濃度しかヒトには吸収されません。しか し吸収されないと効果はないはずですから、少しでも皮膚から入るからこそ美白剤とし ての効果はあるので、全く吸収されなかったら単なる夢を売る何とかになってしまいま す。しかし、非常に少ないものですので、この追加試験一覧の中、ヒトでの経皮吸収試 験を是非やっていただきたいと思います。もしかしたら血中に検出されないと思ってい ます。  それから光遺伝毒性試験は、普通の医薬部外品ですと顔に塗り光に当たるものですの で光パッチテストはやりますが、光遺伝毒性試験まではやっていませんので、この上の 試験で遺伝毒性がはっきりしたらやるということでも遅くはないと思います。私は遺伝、 発がんという問題は専門ではございませんので、これの御判断は御専門の先生にお願い したいと思います。  先ほど西川先生と林先生のお話を伺っていましたら、やはりこれはまだ発がん性に関 して白黒はっきりしないと考えられます。実は私はこの追加試験一覧を決めるときに同 席していたのですが、そのときにぼんやりしていたようで(8)が入っております。発がん 性が極めて弱いものをげっ歯類に塗って経皮投与で皮膚腫瘍に関するイニシエーション ・プロモーション試験をやりますと、実験者が生きている間に陽性結果は得られないの ではないかと思います。放射線でさえ放射線皮膚炎を起こしてから20年、30年たって がんが発生していますし、山際先生のウサギの耳にコールタールのようなものを塗って も相当掛かっていますので、もしかしたら(8)は必要ないのではないかと思います。今ご ろ申し上げて申し訳ありませんが、ちょっと意見として述べさせていただきます。 ○松本部会長 どうもありがとうございます。それでは審議をお願いいたします。専門 委員の先生方もどうぞ御自由に御発言ください。御意見ございませんでしょうか。 ○上田委員 コウジ酸というのがみそとかしょうゆに入っているわけですね。そういう 食事などで自然に入ってくる量というのは大体推測されているのでしょうか。 ○松本部会長 コウジ酸の吸収…。 ○事務局 食品保健部基準課の方から御説明させていただきます。先生御指摘のとおり、 コウジ酸はみそとかしょうゆから出る可能性がございますけれども、食品保健部におい て検討する際におきましても、みそ、しょうゆ、お酒の中のコウジ酸の量について分析 させていただきました。その結果といたしましては、みそにおいて0.5ppm検出されたも のが1件であったと。それ以外につきましては、すべて検出されなかったという結果が 得られております。したがいまして、非常に微量のものしか含まれていないということ を確認しています。以上でございます。 ○松本部会長 よろしいですか。倉田委員、どうぞ。 ○倉田(雅)委員 先ほど溝口先生からヒトでの経皮吸収試験について御説明いただい て、かなり低い濃度であるということを伺ったので安心はしているのですが、私ども消 費者が実際にこのコウジ酸入りのクリームを使うときにそれだけで終わりませんよね。 そのクリームの上にひょっとしたらキュウリのパックをするかもしれないし、ほかのも のをつけたりするかもしれないし、その上にお化粧をしてアクセサリーや香水をつけた り制汗剤をまいたりして、外へ出て、一日中太陽を浴びるようなスポーツもしてという ような使い方をします。そのときにどこまで安全かなということが私たちとしては心配 になるところです。実際にどのように消費者が使っているかということは、やはりメー カーそれぞれに電話相談などを設置していただいて…。先ほどおっしゃったように、水 溶性のものもあればそうでないようなものもあってそれぞれによって違うということで すので、やはりそれぞれのメーカーで電話対応をして、どのように自分のところの製品 を使っていて、ひょっとしたら皮膚に炎症が起きたりほかのことが起きるかもしれない、 そういう対応をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○松本部会長 その辺のことをお答えできますか。 ○溝口専門委員 化粧品業者がどういう指導をしているか分かりませんが、もしかした ら自分の会社のものは混ぜても大丈夫という宣伝はしているかもしれません。しかし、 例えば皮膚の軟膏などは混ぜるとpHとかいろいろ変わりますので、余り効果がなくな るということもあります。これに限らず、消費者の方があれがいいこれがいいと言われ て飛びついて、いろいろなものを顔に塗ること自体余りいいことではないので、そうい う点はちょっと心配です。ただ、顔は経皮吸収のいい場所ではあるので、気を付けた方 がいいとは思います。美白剤というのは値段が高いので、体中に塗るような人はまずい ないと思います。効果も余り強くなく、ずっとつけていないと感じられないくらい弱い ものです。特にひどいしみの人の方が効果は分かるのですが、程度の軽いしみの人は効 果がはっきりしませんのでやめてしまう方が多いようです。それをどうやって長くつけ させるかというところが、宣伝とかいろいろあるのだと思います。大体しみを気にして 美白剤を使う人というのは神経質で、かぶれにもとても神経質ですので、今おっしゃっ たような使い方は普通はしないと思います。 ○倉田(雅)委員 ありがとうございます。そうかもしれませんが、美白ということに関 しては高いお金を使っても一生懸命やる方というのは結構多いと思うのです。そういう 方たちが「そんなばかな」とおっしゃるような使い方もするかもしれないので、そうい うときの対応というのはやはりどこかに開いておいていただきたいと思います。 ○溝口専門委員 まだ危険と決まったわけではないのですが、これだけの対応を厚生労 働省が考えていらっしゃるようですので、その点は問題ないかと思います。私がちょっ と気になりますのは、美白剤はたくさんありまして、これは食品添加物であったために たまたまこういう検査に引っ掛かっておりますけれども、ほかの美白剤はスクリーニン グテスト的なテストはみんな合格したからこそ売り出されているのだと思いますが、コ ウジ酸でやったようなこれだけ高濃度の試験に耐えているかどうかというのは分かりま せん。それからほかの物質でも、医薬部外品の審査を受けるものとこういう食品添加物 での試験は違います。皆さんいろいろな美白剤もお使いになっているとは思いますけれ ども、みんなそれぞれ医薬部外品としての厳正なる検査を受けて出ているものです。 ○松本部会長 これは持続して用いるもの…、これは酸ですから体には蓄積はないので すよね。 ○溝口専門委員 最初のデータを見ていないので分からないのですが…。 ○松本部会長 事務局で分かれば…。 ○事務局 蓄積性については、特に承認時の検討では問題になっておりません。 ○溝口専門委員 毎日使わないと効果はないものです。やめると元に戻ります。 ○松本部会長 そうですね。やはり女性には関心が深い薬剤ですから、確かに…。 ○岸田委員 in vivoのデータで結果が割れているという話がありましたけれども、甲 状腺の疾患というのは女性に多いわけですね。ということになりますと、基の発がん性 がジェンダーで差があるかどうか、そういう実験的なものがあるかどうか、もしその辺 の結果があるようでしたらちょっとお聞きしたいのですが。 ○松本部会長 今答えられますか。 ○西川専門委員 要するにマウスの実験のことですね。多少雌雄で差があります。甲状 腺の発がん性の性差を見ますと、むしろ雄で低い用量で出て雌の方が高い用量でしか出 ないということですので、そういうところからいきますと、特に雌で多いということで もないと思うのですが。 ○松本部会長 p53ノックアウトマウスにおいて雌雄の差というのはありますか。雄で 一応検討されていましたね。というのは、肝腺腫というのはヒトの場合は女性に頻度が 高いのですね。それでもし雄雌で差があるのであればというのが…。 ○西川専門委員 p53ノックアウトマウスでは雄のみでの検討ですが、実験全体を通じ て雌で特に高いということではないと思います。 ○松本部会長 いかがですか。 ○堀内委員 少し違う話になりますが、今肝臓が問題になっていますけれども、吸収の 問題から言うと医薬部外品使用となると皮膚につけるので、比較的吸収は低いというお 話もありましたけれども、1%ぐらい使っているわけですから皮膚組織では高濃度にな っていると思います。参考資料の一冊目の承認時の4ぺージのところを見ますと、塗っ た後は大量の紫外線を浴びると皮膚が着色するので、紫外線吸収剤を併用しなければな らないと書いてあるのです。したがって、やはり皮膚に対する影響はかなりあるのでは ないかと思いますし、ケラチノサイトは旺盛に分裂しているわけですから、皮膚の傷害 は余り問題が起こっていないのでしょうか。もしデータがあれば教えていただきたいの ですが。 ○松本部会長 このことについて溝口先生から何かありますか。皮膚についての…。 ○溝口専門委員 先ほど厚生労働省の方が御説明になりましたが、昭和63年に発売され て毎日塗っている人はたくさんいると思いますけれども、そのための発がんの報告はご ざいません。 ○松本部会長 ということで、堀内先生よろしいですか。 ○堀内委員 問題がなければ結構です。 ○松本部会長 医薬品も同じなのですが、確かにこういうがんとの因果関係を明確にす るというのはなかなか難しい問題ではあるのですね。ほかにございますか。どうぞ、長 谷川先生。 ○長谷川委員 溝口先生、先ほどの御説明のときに追加試験の(8)は必要ないとおっしゃ ったのですか。ちょっと聞き落としたものですから。 ○溝口専門委員 西川先生と林先生の御説明では、このイニシエーションにしろプロモ ーションにしろ、まだ白黒はっきりしないデータがある非常にマイルドなものですので、 こういうものをげっ歯類に塗って試験をしても、例えば放射線皮膚炎でさえもそこにが んができてくるのに20年、30年と掛かります。ですから、塗っていてもその実験をし ている方が生きている間に結果が出ない可能性がありますので、何年と区切ってやって 陰性というデータを出せばいいのですが、これは余りにも実際とかけ離れているので必 要ないのではないかと思ったのですが。 ○長谷川委員 ただ、実験的にはげっ歯類ですと寿命が2年ちょっとですので、げっ歯 類の実験としては可能だろうと思います。 ○溝口専門委員 可能ですが、生きている間に多分出ないと思うので。2年で済むのだ からやればいいわけですね。 ○長谷川委員 ええ、げっ歯類の実験は早く済みますので、ヒトでの実験ということに なるとそうはいかないと思います。遺伝毒性のデータはいろいろポジティブ、ネガティ ブが出ているということで、ここまで出ている以上実際に白黒はつかないだろうという 気が私はいたします。  もう一つは、発がん性に関して3%、4%というのは、こういう化粧品の材料はたま たまそういう構造から見ても明らかなように合成できるものですので、大量に3%、4 %の実験はできますが、そうでないようなものだったら実験的に不可能なことは確かだ と思います。ただ構造を見ると、これはひょっとすると酸化還元関係でラジカルが出る とか、あるいはちょっと途中で測っていますけれども、8-OH-dGのようなDNAの酸化 が起きるという可能性があるのではないかなと。そうすると、遺伝毒性の関係の試験系 の中でそういうことが起きやすいか起きにくいかということで、ポジ、ネガが出る可能 性もあるのかなという感じもします。少なくとも、いわゆるこのものとしてのDNAに バインディングするアダクトができるような種類の遺伝毒性は起きないのではないのか なという気がいたします。 ○松本部会長 ありがとうございます。西川先生、林先生、このイニシエーションがあ るかどうかもう少し強く言えるような所見が得られるには、どのくらいの期間が必要な のでしょうか。 ○西川専門委員 イニシエーションの試験といいますと、まずコウジ酸を与えてその後 からプロモーターと言われる、例えばフェノバールビタールを長期間投与してコントロ ールと比較して見るわけですけれども、そういう試験というのも短いものから長いもの までいろいろあるわけです。標準的なものとしては10数週あれば分かるというように理 解しておりますけれども、もちろんもっと短いスクリーニング的なものがありますので、 それでやるのも手かもしれません。しかし、出なければ出ないでそれはやはりスクリー ニングだからということになってしまうと思いますので、その辺はいろいろケース・バ イ・ケースで対応しないといけないのではないかと思うのですが。 ○松本部会長 ありがとうございます。ほかに御意見ございませんでしょうか。 ○渡辺委員 ちょっと確認したいことがあるのですが、事前にお電話を頂いたときに伺 ったことですが、事務局案の「基本的考え方」の(1)のところで、結局私は医薬に関し てのリスク・ベネフィット、ハーム・ベネフィットのバランスで物事を評価することに 慣れていますので、ここにそういう評価は適当ではないと書かれているのですが、この 一文がここに加わっているということは、要するに今回のコウジ酸のような医薬部外品 の評価は絶対的リスクに基づいて評価するという考えでいいということですか。 ○松本部会長 事務局、答えられますか。 ○事務局 医薬部外品の場合は、勘案すべきベネフィットの部分が医薬品のように言え ないのではないかというふうに考えております。 ○松本部会長 それでいいですか。 ○渡辺委員 細かい問題で申し訳ないのですが、この資料を見ますと動物実験でもダブ ルブラインドのヒトを対象とした検討でも、物質として美白の有用性があるということ は書いてありますよね。ですから、やはり同じような考え方ではいけないのかなと思っ て、是非その点だけを確認しておこうと思ったのですが。私の理解では、つまりベネフ ィットは度外視して、少しでもリスクのあるものはシャットアウトすべきという立場で 医薬部外品は対応するべきなのかということをちょっと教えていただきたい。 ○松本部会長 一応使う方に選択権があるということでしょう。課長、答えますか。 ○安全対策課長 まず医薬部外品でございますけれども、基本的に作用が緩和なものと いうことでございまして、例えば効果としてはここに示します美白、そのほか脱毛とか 染毛といったものが対象となっているわけであります。いわゆるベネフィット、効用と いう点では、もちろん申し上げたように美白が得られるわけでございますけれども、一 方で医薬品の場合は例えば患者さんが抱えている生命に対する脅威、あるいは生活の質 の低下をある程度リスクを払って介入して取り払うというような、本当にシビアなリス ク・ベネフィットの議論ができるわけであります。それと比較すると、当面例えば救命 的な措置にどうしても必要なものかというとそうではないという意味から、相当質的な 開きがあるだろうということでの御説明でございます。したがいまして、ゼロというこ とではないのですが、他にも代替品があるというようなことも考え合わせますと、この リスク・ベネフィットという考えで、ベネフィットの方を非常に大きくとるような通常 の医薬品というと語弊がありますけれども、医薬品のような考え方をそのままというの はなかなか難しいという趣旨であります。 ○松本部会長 ありがとうございました。ただいま御意見を伺いましたところでは、倉 田委員の相談窓口に関して事務局案と少し違うかと思ったのですが、差し当たりは「厚 生労働省は以下の措置を講ずること」の(1)程度の対応でもよろしいでしょうか。それか らこれからの追加試験におきまして、「(8)げっ歯類を用いた皮膚腫瘍に関するイニシエ ーション・プロモーション試験(経皮投与)」、この試験も可能であればやってもいいか と思うのですが、いかがでしょうか。溝口先生、これは要らないと…。 ○溝口専門委員 陰性という結果が出れば安心すると思いますので、やってもよいかと 思います。 ○松本部会長 そうですね。ということになりますと、ちょっと時間が限られておりま すけれども、お伺いした限りではおおむね事務局案に沿った御意見だったように思うの ですが、いかがでしょうか。これは絶対に違うという御意見があったらおっしゃってい ただきたいのですが。もし御異存がなければ、本部会としましては現在における科学的 知見に基づけば、コウジ酸を含有する医薬部外品の取扱いとして事務局案は適切である と考えてこれを了承したいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。それで はそのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。専門委員の先生方、 このままおいでになってもよろしいのですが…。ありがとうございました。このことに 関しましては、事務局は了承された部分については本部会終了後速やかに製造業者に対 して指示するなど、必要な対応を採るようにお願いいたします。  それでは次の議題に進みたいと思います。当初の御案内では「その他」になっていた かと思いますが、冒頭事務局から説明があったとおり、去る3日にアストラゼネカ社か ら厚生労働省に対しまして、昨年末に実施しました今後の対応に関する対応状況の報告 があったとのことであります。その内容について報告を受けたいと思います。よろしく お願いします。 ── 西川、林、溝口専門委員退席 ── ○事務局 それでは資料3を御覧いただきたいと思います。こちらに沿いまして、前回 の部会でも若干御紹介いたしましたが、その部分を少し復習するとともに、現状私ども が報告を受けております内容について御紹介申し上げたいと思います。資料3の表紙が 目次になってございますが、一枚おめくりいただきまして1ぺージがございます。こち らの方が「1.イレッサ錠250の申請から市販後までの経緯」でございまして、前回もお 示しした資料でございますが、昨年の7月に承認されておりまして、10月の段階で緊急 安全性情報を発出しております。この時点で問題となりました副作用、間質性肺炎ある いは急性肺障害は26例ございました。その後暮れになりますが、12月25日にこういっ た副作用の発現状況を受けまして、ゲフィチニブ安全性問題検討会というものを設置し 開催させていただいております。その結果については、前回の部会でも御報告させてい ただいたとおりでございますけれども、当時の副作用の状況といいますのが、間質性肺 炎、急性肺障害の数が358例、そのうち死亡例が114例あったという状況を踏まえまし て御議論いただいたところでございます。その結果を踏まえ、翌日に私どもの方から通 知を発出することにより、速やかな安全対策を講じたという状況でございます。  その内容につきましては、1ぺージおめくりいただきますと、「2.ゲフィチニブ安全 性問題検討会における検討結果に基づく対応について」という表題が付いてございます が、昨年の12月26日付けでアストラゼネカ社に対しまして、通知によって検討会の方 で御議論いただいた内容のうち企業に関係いたします部分を指導したところでございま す。その内容が2ぺージの下の方の「記」に示しますとおり1〜4までございます。こ の内容につきまして、アストラゼネカ社の方から検討状況の報告が今週の最初にござい ましたので、本日はその内容についてそれぞれ1〜4の項目ごとに御紹介させていただ ければと思っております。  その後にこの26日付けの通知の部分が続きますので少し飛ばせていただきますが、こ ういった暮れの措置を講じたことによって現在どういう状況かということを粗々御紹介 申し上げたいと思います。8ぺージを御覧いただきたいと思います。8ぺージは「イレ ッサ錠250による間質性肺炎及び急性肺障害の副作用発現状況」という資料でございま して、一応2月28日現在で取りまとめたものでございます。ただ、この集計は「(注1)」、 「(注2)」に書いてございますとおり、今回のこの部会で今後の対応に関する取組状況 についていろいろな角度から御意見、あるいは御指摘を頂くに当たりまして、現在の発 現状況を参考として示すことが妥当ではないかと我々の方は考えまして、取りあえず粗 々の数字ということで御用意させていただいたものでございます。したがいまして、 「(注2)」の中段から下の方に書いてございますが、集計した症例の中には報告内容が 重複しているような可能性も実はございまして、今後更なる追加報告がいろいろ上がっ てくる段階で、今回お示しいたします数値が変わってくることもあり得るということは お含みおきいただきたいと思います。その上でこの表を御覧いただきたいと思うわけで すが、縦軸のところに時間的なところを書いてございます。まず「10月15日以前」と いうことで、これは緊急安全性情報を発出する前の段階までの状況でございまして、我 々が頂いておりました間質性肺炎、あるいは急性肺障害の副作用の報告件数は168例と いう状況でございました。そのうち85例が死亡例でございまして、その割合が更に右側 に書いてございますが、50.6%という状況でございました。その後、緊急安全性情報の 発出によりまして、その次のラインの「10月16日〜12月26日」までの間、いわゆる検 討会の結果を踏まえて通知を出す前までの段階になるわけでございますが、この段階で は副作用の報告件数が208例ありまして、うち死亡例が65例、その割合が31.3%とい う状況でございました。これは言い換えれば緊急安全性情報を発出した後の状況という ことで、その措置を講ずる前に比べて効果があったということが言えるのかもしれませ ん。そういう見方もできるかと思います。その後年末の検討会の意見を踏まえ通知を出 した後の状況が、その下の「12月27日以降」の状況でございます。現在報告を頂いて おります数を粗く集計いたしますと41例の副作用件数がありまして、うち死亡例が5 例、割合が12.2%という形になっております。これが現状の状況でございます。発現日 不明のものもございますので、以上申し上げた3種類のそれぞれのカテゴリーに分類で きないものも100例ほどございますが、合計で523例の副作用報告に対しまして、177 例の死亡例というものが累積の数字でございます。重ねて申し上げますが、この数字は 非常に粗い集計でございまして、前回御紹介させていただきました数字とは若干性格を 異にするものであることはお断りさせていただきたいと思います。  そういう状況を踏まえまして、我々が年末に講じた措置に対し現状企業等がどういう 対応を採っているかということを次に御紹介します。9ぺージ以降を御覧いただきたい と思いますが、まず9ぺージでございます。我々が採りました対応が大きく4種類ほど ありまして、それぞれ1〜4ということで枠で囲ってございます。まず「1.医療機関へ の有効性及び安全性の適正使用に資する情報提供を徹底すること」ということを求めた わけでございますが、それに関しましては、その通知を受け取った後企業の方でそこに 示しております(1)〜(7)のような対応を採ってございます。  具体的にはそれぞれ別添ということで資料を付けてございますが、まず「添付文書改 訂のお知らせ」として27日に配ったものの内容を、「別添1」ということで13ぺージ に示してございます。これは御覧いただければ分かるのですが、改訂した部分について 医療機関等に対して御案内しているという内容でございます。  それから別添の方で申し上げますと、次に21ぺージを御覧いただきたいと思います。 こちらにございますのは「イレッサ錠250の使用に関する説明ー御使用に際してー」と いうことで、医療機関に対して配っております御案内のペーパーでございます。  その次の22ぺージがいわゆる私どもの指示に基づく部分でございますけれども、同意 文書の案というものを企業の方で作成しておりまして、基本的に患者さんに対する同意 は医師等が行うわけでございますので、企業から医療機関に提示するものはあくまで同 意文書の案という形になるわけでございます。この案を一応標準型といたしまして、各 先生方に患者さんとの間での同意を行っていただくために作ったものと説明を受けてお ります。一応そのアンダーラインに示しておりますところが、我々が年末に指示をした 以降改訂した部分でございまして、中段にあります「他の治療法の有無又はその内容」 や、その下の「このお薬(イレッサ)の特徴」、更に次のぺージの下の方にありますよう に、「この副作用は早く見つけて、早く処置を行わないと、致死的な経過をたどる場合 があります」といった記載を、年末以降追加しているという状況でございます。そうい う形で、この同意文書の案を御覧いただければと思います。  更にぺージをおめくりいただきまして、26ぺージにございますのが1月27日の段階 で企業が配布しているものでございまして、「ゲフィチニブ(イレッサ)海外臨床試験(ビ ノレルビン併用試験)における安全性に関する御報告」ということで、海外で起きました 試験成績を速やかに医療関係者に対して御案内するに当たって作成したペーパーでござ います。内容は時間の関係で省略させていただきたいと思います。  それから28ぺージにまいりますと、先生方にお配りいたします媒体といたしまして 「別添4」がございます。「イレッサ処方時チェックシート」というものがありまして、 いわゆるコンパクトな小冊子のようなものでまとめておりまして、チェックシートを用 意していると。これも新たに開始したことでございます。  それから一枚おめくりいただきまして、29ぺージの「別添5」ということで、これも 小冊子のようなものでございますが、「イレッサ適正使用のために」ということで先生 方に対しまして企業が用意した資料でございます。  それからその次の30ぺージにありますのが「別添6」でございますけれども、一応社 内の方でこのゲフィチニブに関しましていろいろ専門家による検討を行っております。 その検討結果を中間報告として取りまとめたものを、やはり広く内容を御覧いただくた めに、医療関係者等に対しまして配っているものでございます。中間報告のフルペーパ ーもございますが、サマリーということで今回はお付けさせていただいております。  それからまたぺージをおめくりいただきますと、34ぺージに「別添7」がございます。 これは2月の段階で企業が作成した情報提供のための文書でございまして、本文のとこ ろにアンダーラインが引いてございますけれども、「本剤は単独で御使用いただきます よう、改めてお願い申し上げます」ということで、化学療法との併用に関する安全性・ 有効性が確認されていないといった趣旨を情報提供したときに用いたペーパーでござい ます。  それから更におめくりいただきまして36ぺージにまいりますと、「別添8」がござい ます。ここからが大きく指示をいたしました内容で申し上げますと2ということになり まして、申し訳ありませんが、9ぺージにお戻りいただけますでしょうか。中段から下 にございます2のところでございますが、いわゆる服用者向けの情報提供資料として作 成することという指示に基づきまして、幾つか企業が対応を採っております。その一つ 目といたしまして、今お話しいたしました36ぺージのものがございます。患者さんに対 しまして医師経由で渡すいわゆる小さな手帳のようなものでございますが、見開きでコ ピーを撮っておりますので少し見づらいかもしれませんけれども、こういった少し記載 を充実させたものが患者さんの手元に渡るような形の対応を採っているということでご ざいます。  その続きにございます39ぺージの「別添9」、こちらも内容的には似ているものでご ざいますが、少し大きめのカラー刷りのものでございまして、「イレッサ錠250につい ての御説明」というタイトルの媒体も作っているという御報告がありました。  すみませんが、10ぺージにお戻りいただけますでしょうか。先ほどの服用者向けの様 々な対応の一環でございますが、2)のところにありますとおり、「イレッサ患者用指導 せん(薬袋用)」ということで、薬袋に入れるようなものも作っております。これが「別 添10」でございまして、43ぺージでございます。それぞれ一枚ずつ切り離すメモ用紙の ような大きさでございますが、これを一枚一枚薬袋の中に入れるということで対応を採 ってきているということでございます。  それからその続きにございます44ぺージ以降の「別添11」と「別添12」でございま すが、それらに関しましては、実際に患者、家族に対する間質性肺炎による死亡例を具 体的に記載したという資料を作成しているということで、これも年末の検討会で御指摘 のあった部分でございますが、死に至ることがあるということを正確に伝えるべきだと いう御意見を踏まえまして作成したものでございます。以上が患者、家族に向けました 医療情報提供を行うための資料でございます。  再度申し訳ございませんが、10ぺージにお戻りいただきたいと思います。3の指摘事 項に対する対応状況を御説明いたします。承認条件として付されたいろいろな試験研究 を実施することに対します対応が以下に述べられてございます。まず1)といたしまして は、非臨床的な試験を行うという中で、そこに示しました3種類の試験を今実施中、あ るいは準備中という状況でございます。それから2)でございますが、専門家による検討 を行うということで、これは既に4回行っているということでございまして、第1回目 を12月5日に開いております。次のぺージに移りますが、3回、4回ということで1月 あるいは3月という段階で断続的に会議を開催し、本剤の対応に関します検討を行って いるという状況でございます。最後に4の指摘に対する対応でございますが、情報提供 の実施方法について再検討するということ。また、プロスペクティブ調査を行うことに よって本剤の適正使用を推進するという指示でございました。これに関しましては、ま ず情報提供の方でございますが、1)に書いてあるような緊急安全性情報の発出を最初に いたします中で、そこに示しましたような対応をいろいろ行っていると。その下の部分 でございますが、12月26日に我々の方から出しました通知に基づきまして、市販直後 調査の終了から更に6か月間市販直後調査と同程度の対応を採るということも聞いてお ります。それによりまして、迅速な情報収集と的確な情報提供を行うという対応になっ ているということでございます。  それから12ぺージにまいりますが、説明と同意、あるいは投与開始後4週間の入院又 はそれに準ずる管理の状況把握という点でございますが、これに関しましてはモニタリ ングを行っておりまして、「別添14」に円グラフをお示ししてございます。一番最後の 50ぺージにその資料がございます。そこの左側が入院の状況でございまして、本剤を使 っております施設が全体のNでございまして、1,624施設がこのモニタリングの対象に なってございます。その中で4週間入院しているというのが42%、更に4週未満入院と いうものが18%、あるいは入院しない、医師の判断という形で大きくカテゴリーが分か れてございます。入院あるいはそれに準ずる管理ということを求めておりますので、そ の辺に関しましては必ずしも入院していなければならないという状況ではございません が、現状調べた範囲内ではこういった結果が出ているということでございます。その右 側の円グラフでございますが、患者さんに対する同意の取得状況でございますが、これ も施設で調査をしてみますと、全体のNの数が1,553施設でございます。その中の状況 でございますが、文書によります同意を行っているのが27%、口頭による同意が44%、 両者を合わせますと71%ということで、現状同意を得た中で使われているということが この結果から分かるかと思います。そういう中でこういった報告が企業からあったとい うことでございます。  申し訳ございませんが、またぺージをお戻りいただきまして、12ぺージでございます。 最後の部分でございますが、プロスペクティブ調査の実施に関しましては、現在計画中 という形で報告がありまして、具体的な計画の内容等についてはこれから再度企業と我 々との間で調整ないし話を伺っていくという形でございます。資料3に関する説明は以 上でございます。 ○松本部会長 ありがとうございました。何か御意見等おありでしょうか。倉田委員、 どうぞ。 ○倉田(雅)委員 38ぺージの「イレッサを服用される患者さんと御家族へ」というパン フレットを見せていただいているのですが、左下のところに医療機関名、医師名、薬剤 師名を入れる空欄があります。多分これは医療機関のはんこをポンと押して終わりかな と思って、それだと非常に困るなと思ったのです。というのは、何かあれば即対応しな ければいけない患者さんばかりですので、その場合24時間対応してくれるところの電話 番号なり連絡先を必ず入れていただきたいと思います。 ○松本部会長 よろしいですか。どうぞ、事務局。 ○事務局 この点に関しましては、恐らくといいますか間違いなく、ここに書かれるの は実際に患者さんを診られている先生が属する医療機関であり、また先生のお名前だと 思っておりまして、その施設が24時間対応かどうかはともかくといたしまして、恐らく 主治医の先生方に対する連絡がまず最初ではないかと思いますので、全く別の施設の名 前をこの中に書くことはどうかということは、またいろいろな御意見を頂ければと思い ます。 ○倉田(雅)委員 そういうことではなくて、普通医療機関名といって病院名と電話番号 が書かれている場合は大代表が多分多いと思うのです。それだとたとえ連絡をしたとし ても夜間受付と電話番号が違っていたり、その受付で速やかに医師の方に連絡が行かな かったりするということがあるものですから、直接医師に連絡できる番号、若しくはほ かのスタッフでもいいですから24時間対応で患者さんのことを即把握できる人が対応 に出てほしいと思ったということです。 ○松本部会長 それはあり得ることですね。ですから、具体的にそうするためにはMR の人がそういう点も先生に十分説明するように、実際に動けるドクターの連絡先を書く というのが大事かと思います。もっともな御意見かと思います。ほかにございませんで しょうか。どうぞ。 ○渡辺委員 50ぺージの円グラフなのですが、これは1,553の医療機関ですね。医療機 関のうちに同意をとらないというのが1%あるというのはちょっとひどい話だと思うの です。さらに現在こういう状況でも検討中が20%あるということについては、MRが調 査をして検討中と言われました、MRが調査をして同意をとらないと言われました、そ れではいそうですかという対応でよろしいのでしょうか。もう少し突っ込んだ内容を確 認する必要はないでしょうか。 ○松本部会長 いかがですか。事務局、答えられますか。どうぞ。 ○事務局 現状この円グラフに基づく話のやり取りをしている中では、実際に個々の実 態、検討中という状況がどういう状況かということは余り詳細に確認しておりませんの で、ここは少し調べさせていただきまして、また御報告させていただきたいと思います。 ○松本部会長 よろしいでしょうか、先生。ほかにございませんでしょうか。堀内先生、 どうぞ。 ○堀内委員 前回も申しましたけれども、22ぺージの同意文書(案)の「このお薬(イレ ッサ)の特徴」というところに「このEGFRからの信号の伝達を止めることで、がん細 胞の増殖を抑え、また、骨髄細胞などの正常な細胞への影響は少ないのではないかと考 えられています」という表現がありますが、正常な細胞への影響は少ないというのは明 らかになっていないわけです。ですから、これだけ予期しない副作用が出ているにもか かわらず、こういう表現がとられているのは納得できません。下の方にちょっと書いて ありますけれども、「がんを小さくする作用機序、正常細胞への影響などの詳細は、ま だ分かっていません」と言いながらこういうことを書く。これは同意文書ですから、患 者がこれを見て判断するわけなので、まずいのではないかと思います。  それから40ぺージの「このお薬(イレッサ)の特徴」というところも同じことなのです が、「イレッサはがん細胞を直接攻撃するのではなく、このEGFRからの信号の伝達 を止めることで、がん細胞の増殖を抑えます。したがって、正常な細胞への影響は少な いと考えられています」と書いてありますけれども、EGFRレセプターががん細胞だ けに多いということは全くなく、上皮性の細胞その他いろいろな細胞に発現しているわ けですから、それに対する影響がどう出てくるかやはりきちんと評価しないといけない と思いますので、このような言い方はまずいと思います。  それからその下の「このお薬(イレッサ)の効果」のところですが、日本人の患者51名、 外国人の患者52名が参加した治験を行って、約半数の患者で進行が止まり、また全体の 20%の患者さんではがんの大きさが約半分以下になったということですけれども、日本 と外国での治験のデータは違うと思うのです。日本では一応20%と言われていますが、 西欧だと10%以下ということになっていると思います。いかにも有効性が大きく現れて いるような表現になっていると思います。この前から私はメーカーの姿勢について指摘 をしているわけですが、こういう事態になっているわけですから、やはり謙虚に対応す ることが大変重要だと思います。きちんと指導していただきたいと思います。 ○松本部会長 ありがとうございます。これのチェックは事務局ではしているのですか、 していない…。確かにこれは先ほど言われたように、40ぺージの真ん中のは特に事実と いいますか、報告とは異なっておりますのでまずいと思いますし、22ぺージの同意文書 の説明に関しましては、誤解を抱かせるのではないかというのも事実だと思いますので、 これは検討して…。課長、どうぞ。 ○安全対策課長 御指摘ありがとうございます。重ねてよく指導したいと思っておりま す。途中の段階や様々な段階で事務局と製造業者との協議、あるいは指導が繰り返され るわけでございますけれども、一方で日々使われている医薬品でございますので、ある ところでは取りあえずこれで使っていただいてという部分も実際にはないわけではあり ません。しかしながら、前回の御指摘も踏まえながら、今回はまた改めておしかりを受 けたということでありまして、ここはちょっと腰を据えて改めて製造業者に対して指導 を行いたいと思います。ありがとうございました。 ○松本部会長 堀内先生、それでよろしいですか。どうぞ。 ○渡辺委員 堀内先生がおっしゃるのはごもっともだと思いまして、まず表現の問題で すが、この「少ない」ということに関しては非常に相対的な意味が含まれます。例えば 40ぺージの一番上の「正常な細胞への影響は少ないと考えられています」というのは、 要するに我々がんの専門家としては従来の細胞毒性抗がん剤と比べてというのが常に頭 の中にあって、それに比べてつい「少ない」と言ってしまう慣例がありましたので、そ ういう流れからどうしてもこういうことになっているのだと思います。ここはなるべく 少ない、多いという表現は避けた方がいいのではないかと思います。  それから後半の「全体の約20%」というのは、我が国の日本人を対象としたデータが あるので20%で、従来ほかの薬剤で比較的日本人を対象とした臨床試験がなかった状況 では海外でのデータを使わざるを得なかったわけですが、この薬剤に関しては日本人を 対象としているので、この「20%」という数字を出しても問題ないと思いますが、もし 書くのであれば幅を持たせて「11〜20%」という感じか、国によって多少違うというこ とを書くのだったらいいのです。ですから、この「20%」というのをあえて否定すると いうか、出さないようにする意味は私はないと思います。 ○堀内委員 この前の段階があるものですから、日本人の患者51名、外国人の患者52 名が参加して、その結果についての話が書いてあるので問題にしているわけです。日本 人だけだったら、確かに「20%」というデータは一応出ていると思います。これに関連 して言えば、この間実際にどのくらいの患者に有効であったかというのがやはりそろそ ろ評価されないといけないと思うのです。市販直後調査だけですと副作用だけが出てく るので、分母が分からないからそこが評価できないということがあると思うのです。で すから、その辺をどうするかはこの委員会の問題だと思いますけれども、やり方を考え なければいけないのではないかと思います。 ○松本部会長 そうですね。有効性に関してのデータが必要になってくるかと思います ので、なかなか難しいことは難しいとは思いますが、その点も検討していただきたいと 思います。ほかにございませんでしょうか。もしほかになければそろそろ時間になりま したので、本日の議論はこのくらいにしたいと思います。ただ、ゲフィチニブにつきま しては非常に重要な問題ですので、今後も企業における市販後安全対策への取組の状況 や国としての対応などについて、引き続きフォローしたいと思っております。事務局は 今後も定期的に本部会に報告するようにお願いいたします。全体を通じて何もなければ …。どうぞ、倉田委員。 ○倉田(雅)委員 今日報道関係の方がお見えになっているかと思うのですが、私ども消 費者がどういう形でこういうお薬や副作用のことを知るかといいますと、やはり新聞や テレビなどを見て知るわけです。それで幾つかの新聞にこのイレッサに関してもたくさ ん報道がされています。しかし、新聞社によって書いていることが違っていて、私ども がどういうふうに判断したら良いのか、「本当なのか」それともまた「違うのか」とい うことが分からなくなっているのが現状なので、国の方でどういうことが事実であった かということを調べていただくわけにはいかないのでしょうか。 ○松本部会長 いかがですか、課長。 ○安全対策課長 御指摘のとおり幾つかの報道によりまして、例えば市販直後調査の履 行状況の記事などがあったものと思います。一方で毎日使っておられる先生、患者さん がおられることですから、私どもも一つはそういった患者さんのお気持ちになって事実 関係を調べ、かつ安全対策に万全を期するために必要な手だてをきちんと採っていきた いと、その結果を公表していきたいと思っております。  また、先ほど堀内先生の方から副作用が出たケースだけというお話もございましたが、 本日の資料の中にもございますように、プロスペクティブなものがまだ若干遅れており ます。ここについては私どももいわば大変ゆゆしい問題と思っておりまして、引き続き 強力に指導していきたいと思っております。ありがとうございます。 ○松本部会長 倉田委員、よろしいですか。ほかにはございませんでしょうか。もしよ ろしければ、これで閉会といたします。本日は長い時間どうもありがとうございました。                                   ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 安全対策課 課長補佐 渡邊(内線2748) - 35 -