03/03/07 第15回社会保障審議会年金部会議事録              第15回社会保障審議会年金部会                    議事録                 平成15年3月7日 第15回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成15年3月7日(金) 10:00〜12:30 場所  :霞が関ビル35階 霞が関東京會舘「ゴールドスタールーム」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大山委員、岡本委員、      翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、矢野委員、山口委員、山崎委員、      若杉委員、渡辺委員 ○ 高橋総務課長  ただいまより、第15回社会保障審議会年金部会を開会いたします。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  座席図、議事次第のほか、横長のものでございますが資料1「給付と負担の在り方 (2)」、資料2「第15回年金部会委員提出資料」、これをお配りいたしております。  委員のご出欠の状況でございますが、本日は大澤委員、堀委員がご欠席とのことでご ざいます。若杉委員は30分ほど遅れるというご連絡をいただいております。現在ご出席 いただいております委員の皆様方は三分の一を超えておりますので、会議は成立をして おります。  では、以降の進行につきましては、部会長にお願いいたします。  それから、年金局長は10時から3時の予算委員会に呼ばれておりまして、出られませ んので、ご了承願いたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、本日は前回に引き続きまして、「給付と負担の 在り方」について意見交換を行いますが、先ほど総務課長から説明がありましたよう に、本日は給付と負担に関し、追加の資料として「給付と負担の在り方(2)」が出て おりますので、まずその説明を受けます。前回の資料の中でややこしい話の部分を本日 の資料で説明していただくことをお願いしてありますので、まず、この資料について若 干の質疑を行っていただきまして、その後、資料2といたしまして、委員から出ており ます意見書に沿いまして、委員からそれぞれご説明していただくことにいたします。そ の後、意見交換をいたしますが、ペーパーを提出されましたが、ご欠席の大澤委員の意 見書につきましては、事務局から説明させていただきます。  無論、ペーパーを出していただかなかった方にも、当然ご自由に審議に加わっていた だくことになります。資料を提出された方からご意見を伺った後、ご発言のご希望も 伺っておりますので、その方にはご自由にご発言をいただきたいというように考えてお ります。  それでは、まず「給付と負担の在り方(2)」でございますが、これにつきまして、 事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○ 木倉年金課長  それではお時間をいただきまして、前回、「給付と負担の在り方(1)」ということ で資料をお出ししましたけれども、今回はその(2)ということで、前回ご説明しまし たものの中で、特に「方向性と論点」の試算で用いております保険料固定方式につい て、少し技術的な事項にわたりますけれども、補足的な部分の説明を追加をさせていた だきたいと思います。  お開きいただきまして、1ページからでございます。保険料を固定しての自動調整と いうことで試算をしているわけでございますけれども、それについてどういった仕組み を考えて試算をしているのかということについてのご説明でございます。  まず1の保険料を固定するということでございますけれども、これについて、今の年 金の仕組み上はこんなふうなところを変更しなければいけないのではないかということ を書いております。次の2ページに書いてありますが、財政再計算の規定といいますの は、国民年金法の87条も厚生年金保険法の81条もそうなのですけれども、保険料の額あ るいは保険料の率について、必要があれば所要の調整を加え変更するというような規定 でございます。 まず2ページの規定を見ていただきますと、例えば国民年金法の規定でございますと、 保険料の額は給付の費用、運用の収入、国庫負担、こういうものに照らしまして、将来 にわたって財政均衡を保つものでなければいけない。そこで少なくとも5年ごとにこの 基準に従って再計算をして、結果に基づいて所要の調整が加えられるべきものとする。 4項は、当分の間、保険料を1万3,300 円で凍結している規定ですけれども、5項で、 この保険料の額は、先ほどの3項の基準で将来均衡するところまで段階的に引き上げら れることとされており、一遍に上げられておりません。平準化された保険料に至ってお りませんので、段階保険料で引き上げていくのだということをここで明示をしてあると いうことでございます。  厚生年金保険法も同じような規定を持っておりますが、こちらの方は保険料率、今ま でであれば17.35%、4月からであれば13.58%という率で書いてございますので、この 率について、同じように、将来にわたり財政均衡を保つための見直しを行うという、こ れは再計算の規定がされているわけでございます。  同じように、将来にわたり均衡するまでにまだ至ってないわけでございますけれど も、6項で、それを基準に適合するに至るまでの間、段階的に引き上げるものとすると いう規定が置かれているわけでございます。  1ページでは、この規定を改正をする必要があるだろうということを述べています。 保険料なり、保険料率というものを、将来にわたってこの水準で固定するということを 規定していく必要があるだろうということでございます。  二つ目の「○」、給付でございますけれども、今の給付の仕組みは、一人当たりの賃 金の伸び、あるいは物価の伸びに応じまして給付が改定されることになっておりますけ れども、これは原則として置きながらも、自動調整といいますのは、一人当たりの賃金 や物価の伸びで伸ばしていったら収支均衡しないという中で、バランスを取り戻すため に社会全体の変動に応じて給付を調整していくというマクロ経済スライドを一定期間適 用する。それで収支均衡に至るときがきたならば、その適用は終えて、もともとの一人 当たり賃金や物価の上昇で年金を改定してもいいというルールに戻す。そういうことで スライドの特例の期間を設けさせていただくということになるのではないでしょうかと いうことを書いております。  こういう保険料を固定して給付の方が調整されるという仕組みとした場合にも、しか しながら、人口や経済の状況が変わるわけでございますから、定期的に、今の財政計算 時そのものとは違うと思いますが、財政の検証でどのような状況になるのかということ のチェックは必要だろうと思います。少なくとも人口推計が見直しされる5年ごとに、 スライドの調整をする期間におきまして、当初見通していたものと比べて、実際にどの 程度調整が進んでいるか、あるいは最終的な時期の給付の水準はどの程度になるかとい うことについて、当初の見込みと照らし合わせて検証をし、それをご報告していく必要 があるのではないかということを書いております。  次に3ページ、4ページでございますけれども、3ページ、保険料を固定することに ついては、何を固定するという意味なのかということで例を挙げて書いております。  まず最初の「○」ですが、これは厚生年金、国民年金ともに、まずは最終的な保険料 の水準はここまでですということを規定する必要があるのではないか。例えば、試算に 用いている厚生年金の20%ということをなぞれば、最終的な保険料率20%ということで 固定をして、それ以上上げないということを規定する。  それから、先ほど見ていただいたように、収支均衡するにはまだ至ってない保険料水 準ですので、その途中の段階引上げの階段についても、こういうふうに上げていくとい うことの固定をすることが必要であるということでございます。  例えば、こういうふうな方法ではないかということで、(@)に書いておりますの は、1回ごとに毎年0.354%、これは「方向性の論点」に示しているのですが、前回の 11年の再計算のときに5年に一度1.77%という引上げで再計算をさせていただいており ますが、これを単純に1年ごとに刻んでみますと、1/5である0.354%でございます ので、毎年0.354%引上げていくという書き方もあるのではないか。あるいは(A)の 方で、毎年、率そのものを変えてしまう。すなわち今の13.58%から始まって、改正が 行われたとして1年後の16年10月には13.934%、そういうふうに、0.354%ずつ毎年上 げた数字を表のような形で書かせていただき、最終的に2022年4月以降は20%ちょうど になると、こんな形で規定をすることもあり得るのではないかということでございま す。  なお、その次の「○」は、当然のことながら最終的な保険料水準を固定する前提とし て、基礎年金の国庫負担の割合、こういうことをきちんと決めておいていただく必要が あるということでございます。  次に国民年金の保険料でございますけれども、先ほど見ていただきましたように、 1万3,300 円という額で規定されております。この額は、これまでですと5年に一度の 財政再計算時の改正のときの価格で設定しておりました。次の改正、例えば16年のとき に、まず、その時点の価格の表示でその額を規定する。その後、上げていかなければい けないということになりますので、その後の時点、毎年なら毎年の名目の保険料、物価 や賃金等が上がるときにこの額はどういうふうに変わっていくのか、その名目の保険料 額に換算する指標も同時に規定をする必要があるだろうと思います。  ちなみに、次のページの四角の中に入れておりますのは、現在国民年金法の附則に書 いてある規定でございます。今は凍結されておりますので12年3月までの分しか書いて ございませんけれども、これは平成6年のときに定めた保険料を、前回の改正のときに 12年3月まで、ここに書いてありますように1万2,200 円から500 円ずつ上げて1万 2,700 円、1万3,200 円と定めております。  ここの中に何が書いてあるかといいますと、この間に年金の給付の方が物価スライド したならば、そのスライド分だけここに書いてある名目の、6年価格のこの数字を物価 スライドした分の率だけ上げて適用するということが書いてございます。この間、平成 7年に+0.7%で給付の物価スライドがなされておりますので、その0.7%を掛けます と、例えば1万3,200 円は四捨五入して1万3,300 円ということになります。ここで凍 結されて、先ほどの本則のような、当分の間、1万3,300 円とするという規定が置かれ ているということでございます。  このように物価等の変動に応じて、そのときの名目の価格で書いているものがどのよ うに変わるのかということの指標を書いておく必要があるということでございます。  四角の中の「※」で書いていますが、国民年金の今までの保険料は、5年に一度の再 計算の際に、賃金の上昇あるいは年金の改定率等を勘案して、水準が改定されていま す。その5年の間においては、物価スライドしたら、物価スライド分しただけ改定され ているということでございます。  四角の外の「○」ですが、国民年金と厚生年金との関係から見ますと、前回も少し見 ていただきましたように、被保険者の方の保険料の負担をする力というものは大体同程 度です。賃金なり所得なりの伸び方が大体同程度というふうに考えさせていただきます と、国民年金の保険料額を上げていく指標、名目を上げていく指標としてどういうもの が考えられるかということでございますけれども、被保険者の方の一人当たり賃金上昇 率を指標として、国民年金の保険料の額も、そのときそのときの名目額に換算するとい うことも考えられるのではないかということを挙げさせていただいております。  それから、一番下の「○」ですが、これは1階、2階の関係でございます。報酬比例 の厚生年金と国民年金というものの関係ですが、最終保険率というのは、それぞれの水 準調整をどういうふうにするか、伸び方の調整をどのようにするかということに関係し てくるということでございます。この「方向性と論点」の試算の中では、1階と2階を 同程度に調整していくという仮の前提を置いて試算をさせていただいております。そう しますと、この前申したように、20%固定だと国民年金の方は1万8,100 円でとまると いうことでございまして、これがもし、1階、2階で違うような水準調整をしようとい うことになりますと、保険料相互の関係も変わってくるということを書かせていただい ております。  次の5ページ、6ページは、今申しましたように、サラリーマン世帯と自営業世帯で 大体同程度に所得が伸びており、同程度の保険料の伸び方で負担をお願いできるのでは ないかということを申し上げた前回のデータでございます。  次に7ページからでございます。今度は給付の調整の仕組みについて、こんな試算を しているという話をさせていただきます。まず最初に、現在の年金給付の改定の仕組み ですが、(1)にありますように、新規に裁定をされるときに、厚生年金につきましては、 賃金の全体の平均をとって計算をするわけでございますけれども、現役一人当たりの可 処分所得がどのように上昇しているかというその数字を使いまして、現役時代の賃金を 今のレベルに再評価して計算し、それで年金の額を決めさせていただいている。これを 「賃金スライド」と称しております。  国民年金(基礎年金)については、総合勘案ということで、国民生活の動向等を考え ての政策改定ということでございますが、これまでの改正の中では、ほぼ2階の厚生年 金部分と同程度に近いような改定をさせていただいているということでございます。  それから、(3)でございますけれども、新規に裁定をされて年金受給が始まった方に つきましては、その後の年金額は毎年の物価の変動に応じての改定ということで、賃金 スライドをしない。新規裁定との乖離が2割になるまでは賃金スライドしないという ルールに前回見直させていただいたということでございます。  その次にマクロ調整のスライドの趣旨をもう一度確認をさせていただいております。 今の仕組みは、賦課方式を基本にしての社会保険方式であるということでございまし て、賦課をするということでございますので、社会全体が生み出す所得や賃金の一部を 保険料負担として求めている。それを給付に充てているのが原則であるということで す。マクロ経済スライドというのは、年金制度を支えていただいている社会全体の所得 や賃金の変動の動き方に応じて年金の改定をする。年金改定率(スライド率)を一人当 たりの可処分所得で変えるのが多過ぎるということであれば、少し調整をさせていただ く。自動的にそれを調整できる仕組みを入れていってはどうか、そういうことによって 社会全体の変動に応じて時間をかけて緩やかに給付の方も調整するという仕組みがとれ ないかということでございます。  なお、最後の「○」にありますように、これは例えば次世代育成の中で少子化傾向が 改善する見込みがあった、あるいは経済の力が好転をしたという場合には、総賃金が伸 びていく、あるいは被保険者数の落ち方も小さくなり、年金の改定率そのものを底より も押し上げていくということで、給付水準が想定よりも改善される結果をもたらすとい う効果もあるのではないかということを言っております。  次に8ページでございますけれども、マクロ経済スライドをやらせていただく期間に ついての考え方ですが、最初の「○」にありますように、最終的な保険料水準を固定す ると、その負担の範囲内で収入が決まりますので、その範囲以内で将来にわたって年金 財政が安定する見通しが立つまでの間、年金の改定率についてマクロ経済スライドを適 用して改定率を少し小さくさせていただくということでございます。例えば16年改正に より、マクロ経済スライドを17年4月から施行させていただくということであれば、17 年の3月までの期間については、一人当たり賃金の伸び率での改定方法でやらせていた だき、その後の期間についてはスライド調整をかけた少し小さい年金改定率でやらせて いただく。そういうふうに施行時期を境につないでいくということでないかということ です。  次の「○」ですが、最終的な負担の範囲以内で年金財政が将来にわたって収支安定を する、将来にわたって均衡するということが計算上わかったときには、調整期間を終了 し、もともとの一人当たり賃金で年金を改定する、あるいは既裁定の方については物価 で改定をするという仕組みに復帰をすることができるということでございまして、「方 向性と論点」の基準のケースでは、今の見通しを使ってでございますが、2032年まで調 整をさせていただければ、その後はもともとのルールに戻ることが可能であろうという ふうに見ております。  次の「○」でございますけれども、このような自動調整の仕組みを入れた場合にも、 先ほど申しましたように、人口、経済が変化していくわけでございますから、定期的 に、例えば少なくとも人口推計は5年度に一度出るわけでございますので、こういうも のが出るときに、従来の再計算とは意味が異なると思いますけれども、財政の状況を検 証して報告させていただく必要があるのではないか。特にスライドの調整をやっている 期間といいますのは、最初に予測を立てていった調整期間、あるいは調整の終了時にど の程度の代替率までいくのかということにつきまして、見込みと比べてどの程度進んで いるか、早いのか、遅いのか、最終的にどこまで調整をする必要があって、そのときの 給付水準はどの程度見込めるのかということについて、その時点での検証をし、チェッ クをしていく必要があるのではないか。  (2)にありますように、その時点での新たな人口や経済の指標の下に検証をし、最終 的な時期が変わるかどうかということもご報告させていただく必要があるのではない か。最後の「○」にありますように、この時点で調整を終えても、将来にわたって20% の保険料の下で収支均衡してやっていけるということがわかりました時点で、スライド 調整の期間を終了します。  次の9ページ、10ページは、具体的な指標についてどのようなことが考えられるのか ということでございます。まず9ページの上の方ですが、「方向性と論点」の試算の中 では、原則は一人当たりの賃金や物価の上昇ということでございますけれども、これだ けだと給付が伸び過ぎるのではないかということで、保険料を負担する総体の力とし て、労働力人口、被保険者の総数などの変動率を加味し、その分だけスライド率を小さ くしていってはどうかということをやらせていただいているわけでございます。  (1)で書いてありますように、新規裁定者の年金の場合には、厚生年金なら賃金再評 価、あるいは基礎年金なら最初の額を決める政策改定をするわけですが、この決め方に つきまして、被保険者の総賃金、一人当たり賃金×被保険者総数でございますけれど も、その総賃金の伸び率ということに合わせたスライド率にしたらどうかということで ございます。なお、試算の上では、繰り返しになりますけれども、1階、2階を同じ ペースで水準調整するということにしているわけでございます。  その次の「・」で、すなわちこういうふうにするということは、一人当たりの賃金、 試算上は名目で2.0%の伸びとしておりますけれども、被保険者数がだんだん減ってき ますので、総賃金の伸び率は小さくなるということでございまして、この差の分、スラ イド調整率と称しておりますけれども、その小さくなる分だけ年金の給付の伸び方が少 し抑えられる。給付水準が調整されていくということを申し上げております。  (2)の方でございますけれども、裁定後の年金も、受け取り始めた後の年金につきま しては、試算の上では、新規裁定の方の年金と同じだけの調整をお願いできないかとい うような趣旨で同程度に、同じスライド調整率で調整する。すなわち物価上昇率につい て試算上は毎年1.0%の上昇率を置かせていただいておりますけれども、そこからスラ イド調整率分を控除したもので年金改定をしたらどうかということを挙げております。  「なお」と書きましたのは、前からのルールでございますが、既裁定を物価スライド した場合にも、新規裁定の方と余り大きく差がついてはいけないということで、新規裁 定年金の8割程度まで落ちてきた場合には、それ以上広がらないように新規裁定の方と 同じ率をその後適用するとルールで試算をさせていただいています。  次に、実績準拠法と将来見通し平均化法という二つのものを試算の上で挙げていると いうことを紹介しております。  まず実績準拠法は、毎年毎年、実際に労働力人口、被保険者総数が小さくなっていく 率に応じてスライド率を少しずつ小さくさせていただくという、実績に応じた方法とい うことでございます。  将来見通し平均化法というのは、2050年なら2050年までの人口の見通しがあるのであ れば、その間の人口の変動率を平均して、最初のうちから一定の率で、実績よりも大き くなると思いますけれども、その一定の率でずっと調整をさせていただく。この両方の やり方を試算では紹介しているということでございます。  もう一つ、試算の中では、名目年金額を下限とするのか、物価を下限とするのかとい うことも両方使わせていただいております。毎年毎年スライド調整をして、年金の改定 率(スライド率)を少し小さくさせていただくわけでございますけれども、そのときに 名目年金額を下限にするという意味は、新規裁定年金あるいは既裁定年金それぞれにつ きまして、新規の場合ですと名目賃金の上昇率を2.0%からスライド調節率を差し引か せてもらう、既裁定の場合ですと物価の上昇率1.0%から同じ率、スライド調整率を差 し引かせてもらうということでございますが、その差し引いた後の残りがマイナスに なってしまうという場合には、そのマイナスの率で年金を改定するということは、前年 の年金よりも低くなってしまうということでございますので、試算の上では、下回るよ うにしない、差し引いたものがマイナスになる場合でも最低限0にとどめるということ で、前年と同額という改定でやらせていただいていますということです。  なお、これは一人当たり賃金や物価が伸びる中での試算でございますので、これらが 実際に下落する場合についてはマイナスの改定ということもあり得る、これはまた別の 議論であるということです。  それから、(2)の物価下限型でございますけれども、物価を下限とする意味は、先ほ どのようにスライドの調整をして年金の改定率を少し小さくする場合に、物価が毎年 1.0%で上昇するという前提を置いておりますけれども、物価の上昇率を割り込むよう な改定率にすべきではないという場合の試算でございます。すなわち毎年1.0%の物価 上昇率を保つ。2.0%から物価上昇率を引くにしても、1.0%より小さくなるような年金 改定はしないということでございます。  既裁定年金の場合には、これまで物価上昇率で改定させていただくというルールを とっておりますので、調整率を差し引けない。すなわち既裁定年金は、スライド率は物 価上昇率のままであるということで、調整ができないということになろうかと思いま す。そういうふうにして試算をさせていただいております。  そのことを整理し直したのが11ページ、12ページでございます。繰り返しになるの で、簡単に申し上げますが、上の方に書いてありますように、総賃金というものは一人 当たり賃金×労働力人口(被保険者数)ということになります。今までは一人当たり賃 金で改定をしておりました。しかし、これからは被保険者数が少しずつ減っていく時代 だから、総賃金の伸び率に合わせて改定させていただいたらどうか。この総賃金の伸び 率の部分を、特例期間で用いる年金改定率ということで使わせていただいています。こ れはすなわち、これまでの一人当たり賃金上昇率よりも、被保険者数の変動率分だけ小 さくなる。この小さくなる率のことをスライド調整率と呼ばせていただいているという ことでございます。  下の表にも、特例期間中はこういう改定率を使わせていただくということを書いてお ります。  12ページの絵は、左側が現在のやり方でございます。左側の下の方で、現役の所得や 賃金がだんだん伸びていく。労働力人口も伸びていく中では、一人当たりの所得や賃金 が上がった分の率だけ年金も改定するということでやっていればよかったのかもしれま せんが、右のように、これから同じように所得・賃金が伸びるにしても、労働力人口の 減少ということが始まってくると、所得・賃金の上昇というAの部分は労働力人口の減 少分だけ小さくなるのではないかということなので、これからの年金の伸び方は、現役 の支える力に応じたものにするということであれば、A−Bの率で年金を改定していく という方が望ましいのではないかということで、絵にさせていただいております。  13ページは細かい数字になりますが、先ほど申し上げましたようなスライドの調整率 そのものを具体的に書き出させていただいております。簡単に申し上げますが、左半分 は名目年金額を下限にする、すなわち、前年よりもマイナスにはしない改定をする。右 半分は物価上昇率は維持していく改定をするということでございます。  左半分の方を見ますと、新規裁定の方々は、実績に応じた今の人口の被保険者の減り ぐあいを反映させますと、2025年の前半ぐらいまでは0.2 とか0.3 とか、おしなべて毎 年0.3%ぐらい小さ目な数字になっていく。一人当たり賃金の伸びからこの率を差し引 かせてもらう。基準ケースでは、名目賃金の上昇率の2.0%という改定率ではなくて、 それからこの数字だけを差し引いた改定率で年金改定をさせていただくということでご ざいます。  左から2番目の既裁定年金の欄ですが、最初の方に0とありますのは、これは物価の 伸びを足元では0%と置いておりますので、物価の伸びから差し引くことはできないと いうことで0でございます。その後は物価の伸びを1.0%と置いておりますので、1.0 の伸び率から、新規裁定の方と同じだけのスライドの調整をお願いしたいということ で、同じ率をずっと差し引いております。  なお、2029年以降で−1.0 のままになっておりますのは、新規裁定の方は、2%の伸 びから差し引くものですから、1.03とか1.10を引けるのですが、既裁定の方は物価の伸 びから差し引くものですから、物価の伸びを1と置いておりますので、1以上は差し引 けない。マイナスになってしまうということで、1だけの差し引きだけでやっていま す。いずれにしても、2032年までで調整が終わり、この時点で代替率52%までいくので はないかという試算をさせていただいています。  右側の方は物価を下限とする場合でございまして、一番右の既裁定年金は調整ができ ない。1.0の物価の上昇率で年金を改定していくというルールでございますので、物価を 下限とするということは調整ができないということでございます。ずっと0が並んでお ります。  右から2番目の新規裁定の方々については、2%の伸び率から、左と同じような調整 率を差し引かせていただくのですけれども、しかし物価の分だけは維持するということ で、一番下の方になりますと、2029年以降は1.00だけは残すために1%しか引けない。 また、新規裁定の方だけで調整を続けなければいけないので、長い期間かかりまして、 2036年までかかって、このときの所得代替率は50%程度になるのではないかという試算 をさせていただいています。  次に15ページからですが、実績準拠法と将来見通し平均化法ということでもう一度簡 単に対比をさせていただいております。左側の実績準拠法といいますのは、繰り返しに なりますが、実際の被保険者数の減少が始まったときに、それに応じてその分だけ給付 水準の調整をする。将来見通し平均化法というのは、将来、例えば2050年までの人口 (被保険者数)の減りぐあいの見通しを平均化して、最初のうちから、あらかじめ盛り 込んで平均的に調整をさせていただくというやり方であるということでございます。  繰り返しになりますからポイントに絞りますけれども、論点のところに書き出してお りますように、自動的に実績に応じた調整をする場合には、5年ごとにいろんな水準を 見直すということは基本的には不要ではないか。ただし、緩やかに人口が減っていきま すので、2025年ぐらいまでの前半は余り調整が進まないで、後半の方で調整度合いが大 きくなってくるということになるのではないか。  右側の将来見通し平均化法ですと、将来見通しに基づいておりますので、例えば5年 ごとに将来人口推計等が出し直されることになりますと、その見直しを踏まえて、平均 でやっておるスライド調整の数字も見直す必要が出てくるのではないかということを書 いております。ただし、一番下の「○」にありますように、将来大きく減少していく人 口などから、早めに取り込んで調整をしておりますので、早めに給付水準の調整が進ん でいき、短い期間で調整期間が終わる。また、そういうことで結果的に最終的な給付水 準、所得代替率は実績準拠法よりも低くなくて済む結果になります。  16ページは、実績準拠法と将来見通し平均化法のスライド調節の率がこんな変動をす るということを見ていただいております。0.0%のところに横にずっととっております のが、一人当たり賃金の伸び率の基準の線です。ずっと変動しておりますグラフは実績 準拠法ですが、こういうふうな人口の変動を掛けた結果、すなわち総賃金が小さくなっ ていくのではないかということで、前半のころは0.3%前後ずつスライド率を小さくさ せていただかなければいけない。後半になると人口の減りぐあいが大きくなってくると いうことで大き目に調整をしていかなければいけない。「▲」を付けてあるところまで が調整が必要な期間と試算しています。  それから、0.5%、0.65%、0.8%で横に線を引いておりますが、将来見通し平均化法 ということは、人口の中位推計なら中位推計の2050年までを平均的に最初から調整をす るということで、平均値は0.65%になりますので、0.65%、毎年スライド率を小さくさ せていただくということになるのではないか。そのときの調整の終了は2023年後という ことで早めに終わるのではないかということです。  次に17ページでございますけれども、保険料固定方式というのは、固定をした最終的 な負担の範囲内で、社会経済の変動に応じて給付が自動的に調整されるという考え方を 基本にしておりますので、平均的に調整をしてしまうというよりも実績に応じた調整と いう方が、仕組みの考え方にはより整合的かということで、試算の上では、基準ケース はそちらを使わせていただいております。  しかしながら、二つ目の「○」にありますように、実績準拠法ですと、今見ていただ きましたように、将来見通し平均化法に比べて水準調整の本格化が遅くなってしまう、 調整に時間がかかるということでございます。世代間の関係を考えてみますと、なるべ く早めに調整をする。将来の世代の方の調整を続けさせていただいて、より給付の水準 を低くするということでない方が適切なのではないか。より早めに調整した方が適切で はないかというご指摘があるところでございます。  そこで、この将来見通し平均化法でやるやり方もありますが、実績準拠法をもう少し 調整して、少し早めに調整をするような考え方はないかということで書き出しておりま す。  (1)は、実績準拠法を基本にしながらも、その分と将来見通し平均化法、例えばその 中位の分の0.65%との差は、大体0.35ぐらいずつ将来見通し平均化法の方が大きいとい うことになるわけですが、実績の変動を踏まえた毎年の調整率プラス将来見通し平均化 法との差分だけ、0.35%上乗せをした形で早めに調整をしたらいかがか。すなわち実績 の数字+0.35で調整をするというようなことで、機械的にここで提示しているわけです が、そういうことにしてみると、実績は大事にしながらも少し早めに調整が進むという ことではないだろうか。まだ試算もできておりませんが、そんなことではどうだろうか ということで一つ書き出しております。  また、次のページの(2)ですが、寿命の延び分を加味するという考え方はないだろう か。寿命はさらに延びていくという人口推計になっておりまして、2050年までとってみ ますと、65歳の平均余命は男女平均で22.95 歳まで延びる。それも下の表のように、 2025年までの前半の方がぐっと大きく延びて、年平均0.36%ぐらい延びていくというこ とでございます。この辺の率をどう考えるかということで、例えば毎年毎年の実績に準 拠してスライドを小さくさせていただく率+2050年までの毎年の余命の伸びの平均値、 0.28なら0.28を加える。寿命の延び分で給付が伸びていくわけですから、その分だけは スライド調整率に加えて調整をしていくということも考えられないか。あるいは毎年の 実績として、仮に生命表などで毎年の65歳平均余命などが出てくれば、それを使って、 寿命が延びていく分を実績の数字にのせて調整をさせていただくことも考えられるので はないか。こんなことで、実績を大事にしながらも早めに調整を進めるやり方もあるの ではないかということを書き出させていただいております。  なお、19ページは、これまで水準の伸びを調整するということでとってきた方式を改 めて簡単に書き出しております。これまで、乗率や定額単価を見直す、あるいは支給開 始年齢を見直すということで、いろいろ組み合わせはさせていただいた。これが従来か らの方式ということで紹介しておりますが、こういったことを組み合わせることもある かもしれませんが、年齢の見直しも既に引上げのスケジュールを決め、乗率も既に時間 をかけて調整をさせていただくという中で、こういうものを加えるようなことが適切か どうか。これはまた、ご議論をいただくということではないかと思っております。なか なか難しい面もあるのではないかと思っております。  次に21ページからでございますけれども、実際に年金改定率として何を使っていくの かということでございます。今までは、新規裁定は一人当たり手取り賃金上昇率、既裁 定については物価を指標にしていますということですけれども、一人当たり賃金の上昇 にかえて、特例期間においては、(1)とか(2)みたいな、被用者年金全体の総報酬で改定 をする考え方、あるいは一人当たり賃金から被保険者数を引いたもの、同じような考え 方になると思いますけれども、そういうもので被保険者数変動率を差し引いたもので改 定をする考え方、これを紹介しております。  こういうやり方ですと、利点に書きましたように、年金制度の中の数字を使いますの で、早くに把握ができ、それを年金改定率に使いやすいということです。  論点の方に書き出しましたのは、いずれにしましても、被用者の方の数字を使うこと になると、自営業の方々の国民年金の額について同じように適用していいかということ があります。これについては所得の伸び率が大体どの程度見れるか、あるいは消費の伸 びがどの程度見れるかということを見ていただきましたけれども、そういうものから考 えて、被保険者全体の数字で年金改定率というものを動かしていくことも一つの考え方 ではないかということをお示しをさせていただいております。  そのほかに国民所得で見る、あるいはGDPで見ることもあり得ると思いますけれど も、国民所得などでございますと、ある程度保険料の賦課ベースに近いものがとれるの ではないかと思いますけれども、しかし、数字の確定そのものがどうしても遅くなって しまう。あるいは確報が出た後に、確々報ということでまた修正がされたりするという ことで、大分変わってしまう。あるいは過去の状況を見ましても、変動の幅も大きいと いうことで、今までの一人当たりの手取り賃金上昇でやってきたものに対して大きく 違ってしまうのではないか、これはいかがなものかということを書かせていただいてお ります。  あるいはGDPで見るということもあろうかと思いますけれども、GDPはNIに保 険料の賦課ベースでないものも加わった数字になると思いますから、それをそのまま使 うということはどうだろうか。あるいは確報、確々報の段階でいろいろ修正が加わって 変わってきますので、それはどうだろうかということ。  その四角の下は、現在の一人当たりの手取り賃金、可処分所得でやらせていただいて いることとの連続性になりますと、こういうふうなマクロの数字を使う場合であって も、可処分所得の割合を使わせていただく方が適当ではないということです。  それから、一番下には、繰り返しになりますが、基礎年金と報酬比例、2階との関係 ということで、試算の上では1階を2階と同じペースで、同じ賃金の指標で調整してい くということでやらせていただいておりますけれども、これについて、例えば違うスラ イドの調整の考え方、実績準拠法と平均化法のそれぞれ違う手法を使うとか、あるいは 違うスライドの指標を使うとか、名目額を下限とするか物価を下限とするかを違えて考 えるとかいうことになりますと、1階、2階の調整の割合が違うということになります ので、1階、 2階の比率も変わってくる。あるいは最終的に終了する期間の長さも変わ ってくるということを書いております。  次の23、24、25、26ページは前回と同じ資料ですが、自営業の方々とサラリーマンの 方々の過去の消費の動き方は大体同程度であるということを掲げさせていただいており ます。  なお、最後の27ページには、前回お示しできておりませんでした、足元の10年、11 年、12年、13年、14年の物価の動き、それから標準報酬の動き、毎月決まった支給する 給与の動き、あるいはボーナスを含んだ給与総額の動きを改めて付けさせていただいて おります。これも足元を見た上でこれからのスライドをどう考えていくかということの ご参考にしていただければということでございます。  ちょっと技術的な事項にわたりましたが、以上です。よろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。前回の部会の際に、追加資料の要望がございました。一部 それも含んでおりますが、必ずしも全部それに応えていただくということでもございま せん。今日は、いわゆる保険料固定方式の自動調整というようなことが前から一つの大 きな議論の対象に挙がっているわけですが、特にマクロ経済調整がどういうものである かということについて、新しい話でございますから、皆さんにぜひその性格をご理解い ただきたいという点がございまして、少しその辺のところをきちんと説明していただい たという次第でございます。  その意味ではかなりテクニカルな事項も含んでおり、これはやむを得ない面もござい ます。今の年金課長からの説明に対しまして、15分ほどでございますが、もし何か、特 に資料の内容や説明につきまして、意見あるいは質問でも結構ですが、何かございまし たらお願いします。どうぞ、小島委員。 ○ 小島委員  意見は後にしまして、とりあえず質問をします。現行は、実際の新規裁定の年金を計 算する場合、過去の毎年の標準報酬月額を裁定の時点で再評価をして計算するというこ とになっています。マクロ経済スライドを入れる場合には、過去の賃金から、2025年ま では、例えば私の今年の賃金から0.3 %分を引いたものを私の年金の算定基礎にして毎 年積み上げていって、最終的に平均の標準報酬を計算して、乗率を掛けるという計算の 仕方になるのでしょうか。 ○ 坂本数理課長  基本的にそういうことでございます。順序としては、現在一人当たり賃金上昇率を基 本にいたしまして、再評価率をつくっておりますけれども、その再評価率をつくります ときに、一人当たり賃金上昇率と総賃金の伸び率の差を反映させるということになろう かと思います。 ○ 小島委員  個人の毎年の賃金からスライド調整率0.3 を差し引くのでなくて、再評価率に反映さ れるということなんですね。そこは技術的な問題としてはわかりました。 ○ 渡辺委員  今の小島さんの質問に関連するのだけれども、もうちょっと具体的に言えば、マクロ 経済スライドを、例えば来年やるとした場合、まず過去の賃金再評価、例えば昭和30年 代は十何倍とか、この数値は確定したものはありますね。これはいじらないわけでしょ う。まず、その確認を一つ。 ○ 坂本数理課長  そこは現在と同じものでございます。 ○ 渡辺委員  それで来年度以降実施したとした場合には、従来の指標と違った、個人ではなくてま さにマクロ経済というか、総賃金の数値を使って再評価率を決めていくわけですね。そ れは従来の手法に比べると当然低いものになってくる。例えば、昭和42〜43年に入社し た人が退職したときには、今までの三十数年間を全部これまでの再評価率を使って計算 するというやり方は変わらないと、こう考えていいのですか。 ○ 坂本数理課長  そのとおりでございます。 ○ 渡辺委員  わかりました。 ○ 岡本委員  ちょっと内容を理解するために一つだけご説明をお願いしたいのですが、9ページ、 10ページのところの新規裁定年金については被用者年金の被保険者の総賃金の伸び率で 行うという考え方と、名目年金額下限型、物価下限型の考え方と、それから、13ページ の数字と、最後の21ページの指標のところの被用者年金の総報酬と、この全体を含めて 理解したいのです。非常に単純なモデルで、今後一人当たりの賃金上昇率がゼロ、それ から物価もプラス・マイナス・ゼロということを前提にしますと、総労働人口だけがど んどん減っていき、総賃金報酬が減っていくわけですね。単純に今後賃金上昇率がなく て、物価上昇率がゼロで、労働人口だけがずっと少子化で減っていくというようになっ たときに、基礎年金については、変動なり水準について、どんなふうになっていくので しょうか。 ○ 坂本数理課長  2階部分を合わせたものですか。 ○ 岡本委員  2階部分は結構です。1階部分のところだけどんなふうになるのかなと思いまして。 ○坂本数理課長  まず基礎年金をどういうふうに考えるかというのは、これからの大きな検討課題かと 考えられます。基礎年金は物価上昇に合わせてその価値を維持すべきだという考え方が あるといたしますと、そういう形で基礎年金の水準を考えていくということになろうか と思います。ただ、この試算では、基礎年金と報酬比例部分を同じように扱っておりま す。  今、岡本委員が挙げられました前提の下におきましては、賃金も上がらない、物価も 上がらない、それで人口だけが下がっていくということになりますと、スライド調整率 といたしましては、例えば0.3 といった数字が出てくるわけでございますが、それを一 人当たり賃金上昇率から引きますとマイナスの数字になるわけでございます。そうしま すと、名目年金額下限型という考え方からいたしますと、それはマイナスにはしない、 ゼロのままということになるわけでございますので、この場合は改定が行われない。  既裁定につきましても、物価がゼロでございますので、ゼロからスライド調整率を引 きますとマイナスになりますので、名目額は保証するということから、ここも改定を行 わないということになろうかと思います。 ○ 神代部会長代理  18ページの寿命の延びを勘案するやり方なのですが、これは従来なかった考えが新し く出てきたように伺いましたが、人口推計が5年ごとに変わるわけですから、ここに書 いてある例示で出ている0.28というのは、5年ごとに変わる可能性があるということで すか。 ○ 坂本数理課長  この数字をどういうふうに扱うというのは、また検討課題かと思いますが、ここで出 しております0.28 の根拠になりますものは、5年ごとに変わる可能性があるというこ とでございます。 ○ 宮島部会長  マクロ経済スライドの考え方のついて、非常に細かい点ではいろいろございますが、 ほかに何か、ご質問があれば伺っておきたいと思いますが。 ○ 渡辺委員  今回のテーマとは直接関係ないのかもしれないけれども、現在の保険料負担は13.58 %となっているけれども、例えば仮に、いずれ私たちもこの部会で議論しなければいけ ない女性と年金の問題で、3号被保険者が全員保険料を払うとする、その可能性はない わけではない、そうなりますと、当然13.58%という水準も、例えばこの試算の20%と いう上限も全部変わってきますね。その場合試算というのは、もし仮にできるのだった らやってもらいたい。あくまでもこの試算は3号被保険者の存続を前提にしていますね。 ○ 坂本数理課長  保険料固定方式の場合には、将来の保険料の拠出計画を固定して、そのかわりに給付 水準を調整するということです。例えば3号が拠出するということになりますと、その 分、財政的に収入が多くなるという形に全体としてなり、その分、調整される給付が少 なくなる。したがって、最終的に給付水準が高くなる、基準ケースでは52%という数字 が出ておりますけれども、この所得代替率がもう少し高くなるということが起こり得る のではないかと考えられるところでございます。 ○ 木倉年金課長  補足しますと、あくまで今の保険料階段と最終保険料を固定しておきますから、13.58 から上がっていく率で収入が決まっていくということですが、今、おっしゃるように支 える方の保険料総額が人数が伸びたりして増えていくということになりますと、収入が 多くなる分、スライド調整を適用する期間の方が変わってきて、早めにスライド調整を 終えても大丈夫でございますから、所得代替率は予測よりも落ち込まないで済むという わけです。 ○ 渡辺委員  仮に3号という制度がなくなった場合、厚生年金保険料から3号分として基礎年金勘 定にいくお金は少なくなる理屈でしょう。そうすると今のお話だと、いかなくなるお金 は給付改善の方に使うという発想だということですか。 ○ 坂本数理課長  そのようになろうかと思います。 ○ 渡辺委員  それを前提に、20%の場合には云々という試算をしていらっしゃるというふうに解釈 していいのですか。 ○ 高橋総務課長  3号については、年末に四つの案を示しています。一番今の形に近いのは、第4案と してお示ししたパートへの適用を拡大し3号を縮小するものです。これは基本的には余 り影響を与えない。それから、3号の方の年金についてそのご主人の配偶者の2階分の 年金を分割して奥さんに与える案、これは基本的には、負担と給付の関係は何も変わっ ていませんから、こういう調整だと何も変わりありません。  もう一つは、例えば奥さんの方についても、何らかの特別な負担をしていただく、あ るいは給付の方を、今は基礎年金を満額お出ししますけれども、それを削っていく。負 担を余計に出してもらうという方は収入は多くなる。けれども、給付は別に現行と変わ らない。それから給付の方を少し抑制しますというものは、負担の構造は今と変わりな くて給付が減るということですから、財政的にはいずれにしてもプラスの方向にしか働 かないはずです。それがどれぐらいのウエイトになるかというのが問題なんですけれど も。 ○ 渡辺委員  それはわかるのだけれども、財政的にはプラスの効果があることは確かでしょう。特 にII案、III案といった方針をとれば。その場合に、20%か18%でもいいのだけれども、 固定する保険料は3号の見直しがプラスに働くことを考慮しているのか、してないのか という前提があるわけでしょう。仮にIV案が採用された場合に、IV案とII案では違う結 果が出るわけでしょう。当然この試算も、変わってくるのではないでしょうかというこ とを申し上げている。 ○ 高橋総務課長  第3号の方につきましては、第I案と第IV案は、財政的には基本的に変わりないので すけれども、負担調整なり給付調整を入れた場合には明らかに財政に影響を与えます。 具体的には、第3号被保険者についてどういう案を実際に設計するかによって変わりま すから、そこが決まらないと、財政にどのようなインパクトがあるかわからないという ことでございます。 ○ 宮島部会長  今、渡辺委員からお話が出ましたように、給付と負担の議論は、例えば第3号被保険 者をどうするかなど、女性と年金の問題でこれまで検討した議論に絡む問題であるとい うことは十分承知しております。最後の方に、もう一度申し上げようと思ったのです が、給付と負担の議論は一たんこういう形でいたしまして、また、各論を展開する中 で、再度大きな議題として取り上げていく。ほかの個別の議論をしながら、恐らく最終 的にはこの議論に全体的にまとめ上がっていくというような意識を持っておりますの で、今日のところは、少なくとも資料の(2)についての質疑は一応ここで終わらせて いただきたいと思います。  なお、この中身につきましては、もっと細かい議論をするといろいろございます。た だ、アイディアについての大きな問題点なり考え方をどう考えていくか、特に新しい テーマでございますので、私自身も自分で計算したりなんかしてやっておりますし、ぜ ひ委員の方々には大変申し訳ございませんが、そういうやり方で理解を深めていただき たいと思っております。  それでは、これから前回に続きまして、給付と負担の在り方に関しまして、委員の 方々からいただいております意見書をもとにこれからご説明をいただき、意見交換を行 いたいと考えております。本日は資料2のように、井手委員はじめ山崎委員まで大変貴 重な資料をいただいております。中には、前回の私の要望に応えていただきまして、数 字的な資料も提出いただいたケースもございます。大変ありがとうございます。  まず、提出された委員の方からご説明をいただき、その後、ご欠席の大澤委員のもの は簡単に事務局からご説明いただいた後、発言のご希望があれば伺い、それから意見交 換をしていきたいと思っております。  いつもアイウエオ順ではやや不公平でございますので、今回は逆回りにしたいと思い ます。山崎委員、矢野委員、杉山委員、翁委員、岡本委員、大澤委員、井手委員、こう いう順番でお願いしたい。時間に限りがございますし、大変申し訳ございませんが3分 から5分ぐらいを目処にご説明いただければというように思います。それでは、山崎委 員。 ○ 山崎委員  「給付と負担の在り方」について、前回のご説明を受けて考えましたことをまとめま した。短いので読み上げさせていただきます。  まず給付水準の考え方でありますが、給付水準の設定につきましては、「共働き世帯 モデル」、「転職者世帯モデル」で設定して、それらの世帯において現役世代の消費水 準と比較して、ある一定の消費水準を確保できる給付水準を確保できればよいのではな いかというふうに考えます。  共働き世帯の給付水準は片働きの被用者世帯よりも高く、転職者世帯の給付水準は夫 婦共に生涯第1号被保険者で基礎年金のみである世帯よりも高いので、従来の世帯モデ ルには問題がある。また、高齢世代の消費水準は年金水準によって規定される要素が相 当にあるので、これを給付水準の設定や改定の指標とすることは必ずしも適切でないと 思います。  世代間の消費水準の比較でございますが、前回、『家計調査』による比較についてい ろいろ議論がありました。特に大澤委員からそういうご指摘があったわけですが、『国 民生活基礎調査』の「生活意識」の調査結果ともほぼ一致するように思います。ちなみ に、『平成12年国民生活基礎調査」の世帯主年齢階級別生活意識をみると、「苦しい」 世帯の割合は、全世帯で50.7%でございますが、年齢階級別では現役世代に苦しい人が 多くて、総体的に高齢世代では若干ですが、低くなっております。また、児童のいる世 帯では、「苦しい」世帯の割合が56.1%と高くなっています。  それから、給付水準の下限でございますが、保険料固定方式では、給付水準は一義的 には定まらないが、「公的年金が老後生活の支えとしてふさわしい価値のあるものであ るためには、給付水準の調整には一定の限度(給付水準の下限)が設けられることが必 要である」とか、「自営業者世帯(基礎年金2人分)における給付水準の下限について は、モデル年金に関する所得代替率のような指標がない中で、どのように考えるか」と いう給付水準の下限について問いかけがあったわけですが、生活保護の生活扶助の基準 や改定方式が参考になるのではないかと思います。  生活保護基準と年金給付水準の間には直接的な関連はないわけですが、社会保険とし ての年金について防貧機能が期待されていることからすれば両者が全く無関係だともい えないわけであります。今日の生活保護基準は、一般国民の生活水準との均衡を図ると いう観点から設定され、国民の消費支出の伸び率に準拠して毎年改定されているわけ で、少なくとも基礎年金の給付水準については生活保護の基準や改定方式が手掛かりに なるように思います。つまり先ほどの議論にもありましたが、1階と2階はやはり区別 すべきだと私は思っております。  一方、2階部分の年金額の改定については、既裁定年金を含めて給付水準の調整を急 ぐという観点からすると、スライド調整を行うと前年度の名目年金額を下回るときは年 金改定率をゼロとするという提案の「名目年金額下限型」を採用するか、あるいはさら に踏み込んで一定水準を超える年金については年金額の改定を当分の間凍結するという ことも考えられると思います。つまり1階と2階の改定方式を分けて、さらに2階ある いは全体の年金額の水準が高い人については、この際、改定を凍結するということまで 考えてはいかがかということであります。  次に負担の在り方でございますが、厚生年金・国民年金の保険料収入について、前 回、実績と14年、15年の見込みが出されたわけですが、14年及び15年はかなりあまい数 字になっているのではないか。つまり財政的には非常に厳しい状況に既に達していると みるべきではないかと思います。雇用、賃金の動向からすると、13年度の実績に比べて 14年度うんと保険料収入が増えるというようなことはあり得ないわけでございますが、 そのような予算になっているということでございます。  保険料の引上げ計画でございますが、社会保障制度審議会年金数理部会『第四次報告 書』では、「世代間扶養の考え方を取り入れた公的年金においても、保険料の拠出時点 に給付が確定できて、しかもその負担を平準化する必要があると考えられる部分(たと えば、スライド再評価を除いた老齢年金の報酬比例部分)については、その給付に見合 う積立金を確保していく必要がある」としていますけれども、保険料の引上げ計画を策 定するにあたっては、最低限の財政規律としてこういった考え方を取り入れるべきでは ないかと思います。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次は矢野委員、お願いいたします。 ○ 矢野委員  私からは、2通出しておりますけれども、もう一通の方は岡本さんにやっていただく ことにして、「事業主負担の日米比較」についての意見の部分について申し上げます。  読み上げます。前回の資料1の29ページに記載されている「社会保障費用及び租税等 の事業主負担の国民所得比の日米比較」、これは私の資料の3枚目に付けております が、これは議論をミスリードする資料となるおそれがありますので、公正な比較を行う ために、両国のデータの基礎をできるだけ合わせたものとする必要があると考えており ます。  国際比較の難しさは十分承知しておりますが、日本の事業主負担に退職一時金に係わ る負担が含まれていないのは明らかにおかしいと思います。基本的に退職一時金のない 米国と違い、日本では、年金と退職一時金が一体として退職給付制度を形成しておりま す。特に企業年金は、大部分が退職一時金から移行したものとなっております。  したがって、米国の私的年金に係わる負担に対応するものは、日本では、年金の掛け 金だけでは不十分であり、退職一時金に係わる負担を加えたものとする必要がありま す。  そこで、前回の厚労省資料に、退職一時金等に係わる日本の事業主負担を加える方法 で推計を行いました。それによりますと、別紙2枚目でございますけれども、退職一時 金、医療保険等に関する日本の事業主負担の国民所得に対する割合は、2.1 %と私ども は見ております。これを加味いたしますと、日本の事業主負担の方が高くなり、厚労省 資料のように、「わが国よりアメリカの事業主負担の方が高い」とは言えない、と見る わけであります。  また、このような事業主負担の比較にあたっては、単に社会保険の料率だけで比較す るのでなく、総額人件費といった、雇用に伴う総コストで比較することも重要でありま す。さらに、多くの企業が現在、雇用維持に努めており、それに伴うコストの負担の大 きさも認識しておく必要があると思います。  2ページの比較表についての説明は省略いたします。ご覧いただきますとおわかりの とおりであります。ちょっと追加して、このお配りした3ページの資料、図表7、これ の左側の表についても一言申し上げたいと思います。ここでは、事業主が負担する社会 保険料率の国際比較を行っておるわけでありますが、事業主負担である労災保険料、雇 用保険三事業負担が含まれていないという問題があります。より重要なことは、企業が 従業員を雇用することに伴いまして、負担しているのは社会保険料だけではないという ことであります。当然ながら、賃金や法定外の福利厚生費等も負担しているわけであり ます。  意見書にも書きましたけれども、事業主の負担を見る場合、単に社会保険の料率だけ を取り出して比較するのでなく、このような従業員雇用と切り離せない負担も加えてみ る必要もあるのではないかと思います。我々の推計では、とりあえず賃金に社会保険料 だけを加えた従業員一人当たりの事業主負担を比較すると、日本はドイツ、アメリカ、 フランス、イギリスを大きく上回っているということを指摘しておきたいと思います。  このように日本の事業主負担が決して低くない上に、現在過剰雇用が指摘されてお り、内閣府の大分前の推計では、140 万人とも言われておりますし、別のシンクタンク ではもっと多いという推定もあるわけで、今後、保険料負担を安易に引き上げていくこ とは企業の活力を奪い、経済の活性化を阻害し、さらには企業の雇用維持の努力に棹差 すことにもなりかねないというふうに強く懸念する次第でございます。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。岡本委員と連名のペーパーは後ほどということですね。 ○ 矢野委員  後ほどでよろしいと思います。 ○ 宮島部会長  では、杉山委員にお願いします。 ○ 杉山委員  私のペーパーは3点ばかりの簡単なものなので読み上げさせていただきます。これは 前回配っていただきましたモデル年金の給付水準と高齢者世帯の生計費の表を見ながら の意見なのですけれども、モデル年金の水準で比べてみますと、確かに試算の年金水準 で老後生活の基礎的部分をカバーすることはできるのですけれども、例えば自営業など 第1号被保険者の場合で見ますと、基礎的な消費をカバーするのが精いっぱいで、保健 医療費も、交通通信費、教育費、教養娯楽費も捻出することができません。本当にこれ でよいのかどうかということをもうちょっと丁寧に見た方がいいのではないかと思って おります。例えば、私も何度か申し上げているのですが、スモールオフィス、ホームオ フィスといった自営業の新しい形態が50年後にあった場合に、本当に資産を持たずにそ ういう自営業をやった人たちがどうなるのかという部分を少し考えていった方がいいの ではないか。そのときには、所得に応じて負担額が増えて、比例して給付額も増えるス ウェーデン方式が望ましいのではないだろうか。  次に、試算の前提の数値をちょっと確認したいので後で教えていただきたいのです が、このモデル年金の試算を行ったときの、男女の労働力率をいくつと前提して試算を されたのか、その場合の男女の平均報酬をいくらと仮定して出されたのか、教えていた だければと思います。  それと保険料率の引き上げ計画についてなのですが、先ほどご説明があった実績準拠 法と将来見通し平均化法のことにもなるかと思うのですが、既に若い世代ほど人口が 減ってきている現状の中では、後の世代の負担を少しでも軽くするために保険料水準の 到達時期の前倒しの検討が必要ではないかと思っております。  というのは、人口のボリュームが違うということについて、単なる数字だけではない 部分で、先輩世代の重さを若い世代はひしひしと感じているところがございます。前の 世代の方たちが切り開いてくださった道を後の世代が歩いているというのは重々承知し ているのですけれども、例えばこうした年金部会の場に支え手である若い世代がどれぐ らい入っているのかということを見れば、なかなか意見が通らないという部分もありま す。また、例えば若い世代は失業率が実は高い、就職ができない、働く機会が得られて いないというような現状などと見ますと、数字以外の部分の重さというのを感じた場合 に、だからどうしたらよいかといわれれば前倒ししてほしいということしか言えないの ですけれども、そういった部分があるということを意見として出しました。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、翁委員。 ○ 翁委員  それでは申し上げます。私はこれまでの5年ごとの再計算のたびに、人口推計や将来 の経済見通しの変化を踏まえて、給付の内容や保険料を見直すという方式につきまして は、少子高齢化の一層の進展の中で限界に来ているというように思っております。今後 は、5年ごとに給付が削減され、保険料が引上げられるというような繰り返しをやめ て、もちろん財政再計算というモニタリングは続けていく必要があると思いますが、保 険料をどこまで引き上げるのかということがわからないというようなことではなくて、 一定の財源の中で年金給付をどう考えるかという観点に発想を変えて、保険料を固定す る方式を採用するということが望ましいというように思います。  換言すれば、保険料率に上限を設けて給付を自動的に調整するという仕組みは、年金 制度として将来期間に対応した給付の純債務が新たに生じないような方向に寄与すると いう点で意義があるように思います。ただし、もちろん自動調整ということが行われる 結果、その下限をどう考えるかということは議論が必要で、生活水準をどういうふうに 維持するのか、税財源の在り方も含めて別途議論が必要だというように思っておりま す。  それから、前回までに説明していただいた厚生労働省案というのは、実績準拠法に基 づいた保険料固定方式でございましたので、それで見る限り、給付と保険料の組み合わ せは、2025年までは比較的変化がなくて、少子化の影響が出てくる2025年以降の受給世 代の給付に対してマクロ経済スライドが効いてくるというような形になっておりまし た。杉山さんもご指摘になりましたけれども、現在の若い現役世代や将来世代に影響が 大きく出る姿となっていました。したがいまして、2025年までに給付を受け取られる世 代も含めて給付内容の見直しについて議論を行うべきだというように考えました。  その点については、今日いろいろご説明がありましたけれども、スライドの在り方に つきまして、高齢化の影響も考えるべきだというように思いますし、それから今日お示 しいただきました将来見通し平均化法ということに関しても、前向きに検討してみる必 要があるというように思います。  また、本日はご紹介がありませんでしたが、運用利回りの低下というのも、今までの 議論では、先送りの形で調整される形になっておりましたので、そういった経済情勢の 変化も、その世代で自動的に給付に反映させるということについて議論が必要なのでは ないかと思います。  それから、既裁定者の物価スライドに関しましては、前回もちょっと触れましたけれ ども、賃金下落率が物価下落率を下回るというような状況になると、物価スライドでい くと将来債務を大きくしてしまうということがあります。また、賃金上昇率が物価上昇 率を下回るということもデフレを脱却する場面ではあり得るかもしれませんが、そうし た期間のスライドのあり方について議論を行うことが必要だろうと思います。そのほか にも、支給開始年齢の弾力化とか、給付乗率の見直しといったことも併せて検討してお く必要があると思います。  一方で換言すれば、先ほどの杉山委員の議論とも共通する面ですが、今回の改正をラ ストチャンスとして、保険料を早めに引上げて、早めにスウェーデン型を実現するとい うことによって最終保険料率を低くするという考え方があり得ると思います。保険料の 小刻みな引き上げというのは、今までの経緯を見てみましても、政治経済情勢によって 実現ができないという可能性がありまして、こうした事態も考えますと、年金制度のサ ステナビリティーというのが失われて、将来世代に大きな負担を先送りするという可能 性もあるかと思います。  それから、最終保険料率の水準については、20%ということについてのいろいろな議 論があるわけでございますが、前回に2025年の社会保険の負担の合計が3割強という資 料をお示しいただいたのですけれども、2025年以降に少子高齢化が本格的に進む状況 で、医療や介護の保険料がどの程度大きくなるかということが本当は非常に大きな問題 だというように思っています。医療保険と介護保険と年金という社会保障の三つの分野 を比べてみますと、医療とか介護というのは個人の情報を民間の保険者が正確に把握す ることがなかなかできないので、民間で対応しようとすると、逆選択という問題、つま りリスクの高い人ほど保険に入りづらくなってしまうという、情報の非対称性という市 場の失敗が非常に大きい部分でございますので、年金に比較するとその点では医療や介 護保険の方が公的に対応する必要性が高いというように見ることもできるように思いま す。  一方で、もちろん医療や介護に伴う自己負担が増えていくと、この面で年金の必要額 が増えてしまうというような点もあって、三者が相互依存関係にあるということにある と思います。いずれにしましても、三者につきましての負担の在り方をよく考え合わせ て議論していく必要があるのではないかと思います。ただ、いずれにせよ、2025年以降 の介護、医療保険の負担というのは、高齢化の急加速に伴いましてすごく速いスピード で大きくなるのではないかということが予想されますので、年金の保険料率2割という 水準については、十分視野を長くとって議論することが必要なのではないかと思いま す。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは岡本委員。 ○ 岡本委員  それでは、ペーパーを読ませていただきます。今回、私と矢野委員の連名でペーパー をつくりました。  厚生労働省から、一つのモデルとして、最終保険料率を20%に固定するという前提で 現在様々な試算がされ、議論がなされているわけでございます。  しかし、今後の経済と社会の構造変化を展望しますと、現行の社会保険方式を基本的 に維持していくことの是非という根本的な問題であるとか、あるいは今、ご指摘があっ たように、最終保険料率の20%という水準の妥当性の問題とか、あるいは財源として保 険料と税の組み合わせの在り方等々、制度改革に関する抜本的な議論がかなり多く残さ れているのではないかとこう思っております。  ただ、今回の審議会は、宮島部会長の下で時間の限られた中でまとめていかなければ いけないということを我々よく承知しております。そういう意味で、我々はこれから議 論をまとめる方向で論点について意見を述べていきたいと思っておりますが、ただ、今 の「方向性と論点」の議論だけで結論を得ても、それが本当にこれからの20年、30年の 日本の変化を考えるときに、十分な年金改革であるかということになりますと、いろん な問題を残します。したがって、我々は現実的に議論していきたいと思っております が、そういうようなあるべき論の議論が、今回も時間のある限り、あるいは将来にわた っても展開されていくのだという前提を持って、我々は今後とも議論をしていきたい、 こんな立場で参加していきたいと思っておりますので、よろしくご理解賜りたいと、こ んなふうに思います。  そこで、具体的に、まず負担と給付の調整手法でございますが、『方向性と論点』で 示された案では、保険料を長期間にわたって毎年段階的に引き上げていく一方、給付水 準につきましては時間をかけて徐々に調整するため、結果的にはそのしわ寄せが、制度 を長期間支える将来世代ほど負担増と給付削減という形であらわれる結果になるのでは ないかという点を懸念しております。  今後とも我が国経済は厳しい状況が続くと想定される中で、現役・将来世代の負担を 過重なものとしないためには、大変辛いことではございますが、できるだけ早く給付水 準の調整を進めていかなければならないと思っています。今回の提案の基準ケースで は、2025年度の所得代替率が56%であり、今後20年間かけて現行より3ポイントしか引 き下げられないのに対しまして、その後の7年間で一気に4ポイント引下げられると、 このようなことが示されております。このように、将来世代ほど急激な調整を行うので は、世代間格差は是正されませんので、私は辛い議論であってもなるべく早くすべきこ とはしていくということが今求められているのではないか、こんなふうに思っておりま す。  制度に対する国民の不信感を払拭するために、現役・将来世代の負担増を極力抑制す るとともに、これは毎回私が申し上げていることですが、速やかに既受給者を含めて給 付水準を見直すことにより、全ての世代が痛みを分かち合うことが必要ではないかとい うふうに考えております。  次のところは資料の提示をお願いしている部分ですので、これは時間の関係上、事務 局の方でお読みいただいて、必要な検討をお願いしたいと思います。  2の最終的な保険料率の水準について。現役世代や企業は、社会保険料や税の負担を 通じて、年金だけでなく、医療や介護保険も含めて様々な制度を支えております。低成 長基調、各産業における国際競争の激化、世界に類をみない少子・高齢化の加速に伴う 社会保障全体の負担増などが避けられない中で、これから20%という高い最終保険料率 に向けて現役・将来世代の負担を引き上げていくことは、経済社会の活力が損なわれ、 ひいては制度の存続可能性そのものが揺らぐのではないか、こういうふうに懸念してお ります。  前回等も説明がございましたが、20%というのが心理的負担の限界であるというよう なご説明がたしか資料にもございました。私はこれまで議論された20%というのが、ま だまだ日本の現状の深刻さが比較的甘く考えられて議論がなされた経緯があるのではな いか、当時の議論がそういう雰囲気であったのではないかということを懸念しておりま す。私は現時点ではこの20%というものはそう簡単な数字ではないと、こんなふうに理 解をしております。  わが国が直面している経済や社会の状況が他国に例を見ないほど厳しいものであるこ とを考慮しますと、単純な欧州諸国との比較だけではなく、現役及び将来世代と企業の 負担増を極力抑えて経済社会の活性化を図りつつ、制度の持続可能性を確保するという 視点が求められるということで、20%については、今後大いにこの場で議論をお願いし たいと、こんなふうに思っております。  次に4と書いておりますが、これは3の間違いで、給付水準についてでございます。  現役世代の所得の実態と現在の年金給付の水準を併せて考えますと、所得代替率のみ を指標とするという時代ではなくなったと思っております。高齢者世帯の支出面の実態 に着目していくことも重要であります。先ほど杉山委員の方からも1号被保険者につい ての話がございましたが、現在のモデル年金の水準は、それだけで高齢者世帯の平均的 な消費支出のほとんどを賄い得る水準であろう。ただ、これはいろんな会社がございま すので、私と違う見解がおありの方も当然いらっしゃると思います。私は、老後の生活 を賄うためには、退職するまでの長期間にわたり自助努力によって準備をするというこ とが基本にあるべきだと思っておりまして、すべてを年金で賄って生活するということ ではないわけであります。そういう自助努力によって準備をする面もあるということを 踏まえれば、現在のモデル年金の水準は十分に高い。十分というか、高いというか、こ こは人によって表現の違いはあると思いますが、私は高いと思っております。  特に消費支出に含まれております教養娯楽費や交際費等というのは、これは一人一人 によってライフスタイルが全然変わってきますので、そういう個人の属性によって変わ るところについては、現役時代にそれぞれの自分のライフスタイルに応じて準備すべき 性格のものである。こう考えますと、現在のモデル年金額についてはもう少し引き下げ る方向で議論してもいいのではないかと、こんなふうに私は思っているわけでございま す。  次は、データの開示についてご検討をお願いしておりますので、事務局の方でご検討 をお願いしたいと思います。  また、物価スライドにつきましては、今年4月から、前年分の物価下落率0.9 %分を 反映させることになりました。これはいろんな経緯がございまして、前回私は全部きち んとスライドすべきだということを申し上げておりますが、いろんなご判断があり、そ れを私は是としておりますが、過去3年間停止している1.7 %分をすべて反映させた数 字が、本来制度としてあるべき年金の水準額でございます。0.9 %落とした水準と本来 あるべき水準と、二つを両方頭に置いて、あるべき年金の水準の議論をしていかないと いけないのではないかと思っております。  次に、既裁定年金の給付水準の調整についてです。2004年の年金改革の大きな課題の 一つは、世代間格差の縮小あるいは世代間格差を大きくしないということでございま す。現役世代に比し増加していく高齢者の中には、今日では経済的に余裕を持って生活 している人もいらっしゃるわけでございます。このこと自体は大変好ましいことであり ますが、それは現役世代の負担によって可能となるわけでございます。公的年金の財源 は現役世代のみの責任によって維持されるべきものではなく、これからは既裁定者を含 む国民全体で支え合い、維持していくべきものであろうと考えておりまして、ぜひとも こういう考え方にはご賛同賜りたいと、こんなふうに思います。  次に、年金改定率(スライド率)の下限についてでございます。これは、先ほど冒頭 の事務局の方からのご説明のときに、確認をしたかったことも含めて質問したわけでご ざいますが、現在の給付水準は高いとの判断にもし立つならば、保険料固定方式に基づ き、社会経済情勢の変化に応じて給付水準を調整していくとした場合、現役のみでな く、既裁定者も等しく調整することこそ世代を超えて全国民が支え合う公的年金制度と しての在り方に沿ったものと考えておるわけでございます。  年金改定率の下限として、物価下限型を採用すれば、既裁定者についてはスライド率 の調整が十分働かないことから、現役世代や新規裁定者から理解を得られない。したが って、物価下限型については、私は採用すべきでないと思いますが、大いにこれは議論 をしていくべき必要があると思います。  また、名目年金額下限型では、これは先ほど事務局のご説明もあったわけでございま すが、名目年金額が保証されるため、スライド率に関わる指標が大幅なマイナスとなっ た場合には十分調整がなされない懸念がございます。そのような状況下、言ってみれば 指標がマイナスになるという異常な事態では、経済全体、そして現役世代に大きなマイ ナスの影響が生じているということが推定されますので、世代間の公平の観点から、あ らかじめ名目年金額を下限とするような特例を固定的に設けるのでなくて、柔軟な考え 方があり得るのだというような姿勢で、大いに議論していただくことが必要ではないか と考えております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、井手委員。 ○ 井手委員  私の意見は、前回、給付と負担の在り方(1)の資料の中で、保険料固定方式を導入 する場合に挙げられた、被用者世帯(モデル年金)における給付水準の下限について、 例えばモデル年金に関する所得代替率を指標とした場合に、どの程度の割合を下限と見 ることが適当かという論点に関するものでございます。  ここでの「モデル年金」というものは、「片働き世帯」(夫 40年加入、妻 厚生年 金加入期間なし)が取り上げられております。これまで言われてきたモデル年金の所得 代替率が様々な前提でどのように変わっていくかを見る上では、当然このモデルを使わ ざるを得ないと思いますけれども、2050年という将来を展望したときに、この世帯のみ の所得代替率を試算して、その下限が、例えば52%まで落ちるとか45%まで落ちたとき にどうかということを、その判断にするということだけでは不安があるということでご ざいます。  先ほど山崎委員からも、共働き世帯、あるいは転職者世帯についてのモデルが必要と いうお話があり、先ほどの岡本委員、矢野委員のご意見の中にもモデル年金世帯の見直 しという表現がございましたし、また部会長からも今後の論議の中で、前提条件が変わ れば、また給付と負担の議論の中に戻ってくるというようなお話がございましたので、 そのような方向で議論が進められればよいかなというふうに思っております。  ここから先は、モデル年金について、これまでいろいろな部分で問題提起がされてき たものの引用でございます。若干ご説明いたしますと、2001年6月の骨太方針の中で は、時代の要請に応えるということで、個人のライフスタイル、就労形態、家族形態の 多様化が急速に進んできているので、これに対応した制度が必要だという記述がござい ました。  それから2001年12月の「女性と年金検討会」の報告書の中では、より具体的に、女性 のライフスタイルの多様化とモデル年金の在り方ということで、モデルとして共働き世 帯等を想定して、女性の一定の厚生年金加入期間を前提としたモデル年金を想定してい くことが妥当であるということと、モデルとしての共働き世帯等の年金水準がどうある べきかは別途議論されるべき問題ということで問題提起がございましたので、やはり共 働き世帯のモデル年金かどのようになるかについては当然議論をしていかなくてはいけ ないだろうと思います。  そのときの論点として、女性について、どのような厚生年金の加入期間を考えるかと か、賃金を想定するかというようなことが論点として提起されておりまして、ここでは 世帯類型別に、現在のモデル年金である夫40年加入の片働きから、共働き夫婦40年加 入、また妻の厚生年金加入期間23年9カ月、これは15年以上加入している方の平均被保 険者期間ということだそうでございますけれども、それから男性の単身、女性の単身と いうような形で、それぞれの世帯の手取り収入に対する所得代替率というようなものも シミュレーションをされておりました。  この中で、世帯当たりの所得に対する代替率が最も高いのは片働きであるというよう な数字が出ておりまして、かなり世帯類型によって代替率が異なりますので、もしこれ を給付水準の指標とするならば、やはりパターン化された世帯類型別の試算というもの が必要なのではないかと思います。  その後、男女共同参画会議の中でも、「所得代替率の均等化」という表現で、世帯ご とで見た老齢年金額と平均賃金額の比である所得代替率が片稼ぎ夫婦世帯、共稼ぎ夫婦 世帯、単身世帯といった様々な形態の間で均等となることを個人単位化と捉える考え方 があるというような表現がされております。  さらに、今回のたたき台となっております「方向性と論点」の中の基本的視点の中で も、第5点目として、少子化、女性の社会進出、就業形態の多様化等の社会経済の変化 に的確に対応できるものを目指すということがございますので、そういうことから考え ても、こうした片働きのみをモデルと見るというようなことだけで終わらないようにぜ ひお願いしたいということでございます。  平成11年度に、65歳になっている女性の基礎年金受給者のうちで1カ月でも厚生年金 に加入していた方は既に56%を占めていたわけでございまして、今後を展望すると、夫 40年加入、妻は厚生年金加入期間なしというようなご家庭をむしろ探す方が今後は難し くなるのではないかというふうに考えております。  再度、繰り返しになりますが、所得代替率の下落が何%までなら給付水準が妥当であ るというような判断をこの議論の中でするならば、世帯類型別にこの試算を行うことが 必要と考えますし、当然のことながら、多くの女性が一定の厚生年金加入期間を持つ時 代にふさわしいような給付水準の設定、あるいは世帯間の公平性をどのように考えるか というものを論点として加えていく必要があるというふうに考えております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、大澤委員の意見を事務局から、ご説明といって も、資料的なものでございますが、ご説明を。 ○ 高橋総務課長  4ページでございます。前回、部会で大澤委員が述べられた意見の補足ということで ございますけれども、前回の資料12ページ「(3)現役世代の生計費との比較の観点か ら見た給付の水準」では、高齢者夫婦世帯の消費水準が、30代、40代を上回る水準にあ るというふうに書いてございましたけれども、これについては、ちょっと留保付でみな ければいけないだろうということでございます。現在の家計調査が個人的な消費を把握 していないという特質があって、その面を加味すると、高齢者世帯の消費水準が、40代 を超える水準にあるのはやや疑問ということでございます。  5ページは、大澤委員からご提出のあった数字の方でございます。30代、40代、50代 の数字につきましては、通常の全国消費実態調査報告の消費支出、教育関係費のほか に、これは帝塚山学院大教授の室住教授の推計でございますが、個人的消費というもの が多分あるだろうということで、それも含めて一人当たり消費支出を出した場合には、 それは(2)の欄に該当しますが、40代ぐらいになりますと、私どもの試算よりも1万 8,629円ほど余計に消費をしているということでございます。  4ページに戻りますが、したがいまして、高齢者に比べて現役世代の消費水準の方が つましいという議論はちょっと誤解を生じやすいだろう。高齢者の“つましくない”消 費支出をほぼカバーする現行の年金給付は十分すぎる、したがって、最終保険料率は 20%より低く抑えてよいという判断につながりやすいのだけれども、それは誤解である ということです。現役の方がつましいとして判断するには、留保が必要ではないかとい うご意見でございます。  それから、高齢者の生活水準は、現役世代よりもかなり分散が大きい。これは一般的 な消費、貯蓄すべてに見られるところでございますが、現役世代よりもかなり分散が大 きいので、平均値だけで議論することについては限界があるだろう。こういうご意見を いただいております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。意見書を出していただいた委員の方々、大変ありがとうご ざいました。推計資料を提出いただいたり、全体の考え方、今後の在り方についてのご 議論、あるいは今日ありましたマクロ経済調整の在り方についてもかなり具体的な点に ついてのご指摘もございました。  16年の年金改革に向けて、各論に入ってまいりましたことは確かでございますけれど も、今ご指摘がございましたように、例えば財政方式でありますとか、財源の在り方に 関する基本的な論点がある、あるいは年金だけではなく、医療・介護といったような全 体の社会保障なり社会保険という中でどう位置づけていくかということもある。あるい は、人口については2025年ぐらいまではかなりはっきりしている点でございますけれど も、経済状況については、一定の仮定を置いた中でいろいろな議論をしているわけで、 無論経済は生き物でございますから、それについてどう考えていくかというようなこと もある。これらは共通に、今後に残されている大きな問題であると思います。年金部会 だけでコントロールできる問題でないことは確かでございますけれども、そういう議論 をする必要性は私も十分認識しておりますので、その点はご理解をいただきたいと思い ます。  伺っておりますと、例えば、データを見ますと、2025年以降に人口変動の影響が非常 にはっきり出てくることになりますけれども、それを待っているのではなくて、早くか らアクションをとった方がいいのではないかという意見が比較的多かったように思いま すし、その際には既裁定年金も含めて考えた方がいいのではないかというようなこと も、複数の委員の方からご指摘があった。ただ、その水準でございますとか、世帯類型 の在り方については、まだ少し意見が分かれるようなこともあるのではないかというの が私の印象でございました。  それではあと45分ほど時間がございますが、提出された意見も含めましてご意見があ れば伺いたいと思います。小島委員等から発言をしたいということを既に伺っておりま すので、まずそちらをお願いして、その後、ご自由にご議論していただきたいと思いま す。 ○ 小島委員  ポイント絞って3点ほど述べたいと思います。  今、皆さんのご意見を伺っていますと、どうも水準をもっと引き下げろと、もっと将 来を厳しく見て、保険料引上げも早めにやれというようなご意見が多数です。それでは この部会としてのバランスが崩れるのではないかと思いますので、別の考え方を意見と してお話ししたいと思います。  一つは負担の問題です。保険料率20%を上限にということで試算がされていますけれ ども、この前提としては、今の国民年金第1号の空洞化問題、これをどうするかという のが一つ大きなポイントになるのではないか。第1号被保険者の2,200 万人ぐらいの対 象者のうち、保険料免除者を含めると4割近くが実質的には今保険料を負担してないと いう実態があります。  こういうものを前提にした上での試算ということがある限り、やはり負担が多めに出 てくる、あるいは給付を多めに調整するという話になってくるのだと思います。まさに 足元の基本的な1階部分をどうするかというところがこれからの議論になるのだと思い ます。そういう観点からすると、私どもは皆年金制度をきちんと確立するという意味で 1階を税方式化すれば、この全体の負担の在り方についても大きく変わってきます。そ れが結果的に、最終保険料方式という考え方に立ったとしても、その水準は大きく下が ると思います。1階部分を税方式にして、それを国民が広く負担をして支えていく制度 に改革するということをまず考えるべきです。税方式にした場合には、財源の問題等が ありますが、そこは年金課税の見直しも含め、年金受給者世代も自ら制度を支えていく というような仕組みに変えていくことも重要なテーマではないか。それが第1点であり ます。  次に給付水準の問題です。この間から示されている資料は、あくまでもモデル年金を 基準にした議論になっている。モデル年金と高齢世帯の消費支出を比較していますけれ ども、実際は現在年金を受け取っている年金受給世帯は必ずしもモデルの水準に達して ない。そういう実態を考えれば、今の年金受給実態、それと今の高齢者の消費実態とい うことを将来的にどう見ていくかというところから考える必要がある。将来的な見通し を考える場合には、高齢者の消費支出というのは、先ほどもご意見があり、前回私も言 いましたけれども、医療保険の自己負担が4月から3割になることが予定されておりま す。70歳以上からは1割か2割ですけれども、70歳未満のところは3割自己負担という ことになります。消費支出の中では医療保健負担として当然増えていく。そのほか、医 療保険の保険料も年金受給者も負担していく。あるいは介護保険の保険料も負担してい く。そしてもう一つ、先ほど言いましたように、年金課税の強化ということになれば、 所得税、住民税を含めた年金受給者の社会保険料と税の負担というのは増えていく。そ ういう支出全体の見通しをどう考えるか。その意味では年金制度と医療制度、そして介 護制度は、まさにリンクしており、トータルな形で年金の水準というのは検討しなけれ ばならないと思っています。そういう意味では、現在の水準を引き下げることにはなら ないだろうと私は思っております。  それと高齢世帯は、所得格差が相当大きくなります。現役世代の格差以上に高齢世代 の格差は大きくなりますので、そう考えた場合に、モデル年金を基準にした水準だけで 議論することはできないと思います。高齢世代の所得格差等を踏まえた実態に合った水 準論が必要だと思っております。私からは、以上の3点です。 ○ 宮島部会長  大山委員からもご発言の希望を伺っておりますが。 ○ 大山委員  給付の水準についてかなり慎重に検討する必要があるのではないか。それは公的年金 制度そのものの根幹に関わる。これまで、いろいろ厚生労働省の方から、厚生年金ある いは公的年金の在り方について考えを聞いてまいりました。意見にもありましたが、将 来、いわゆる第一線・現役を退いた時点における経済社会がどのように変わっていくか わからない中で、きちんとした、従前と余り変わらない生活をきちんと保障する必要が ある。  公的年金は三つのリスクに備えるものということですが、一つは、経済や社会の変動 によって、自分たちの老後の生活がどうなるかということについて一人一人が見通すこ とは非常に難しい。そういう中で、将来の老後の生活を保障するという観点から、公的 年金制度が必要だということが、この間、大分強調されてきたわけです。  今出されている提案は、そこはあくまで試算ですから最悪の方の数字を考えるのは考 えすぎだと言われるかもしれませんけれども、私は前提になっている経済指標というの だって、実質的に賃金が2%ずつ上がっていきます、物価上昇は一定程度ですと言われ ても、今のような状況もあるし、これから日本の将来を見通しした場合、そういうもの が保障されるかどうかという問題もあるわけです。そういう中で52%だ、45%だという ような所得代替率が出されてきても、それで本当にこの間、指摘されてきた、公的年金 制度のいわゆる老後の生活保障という役割が、そういう水準で果たせるのかどうかとい う問題があると思うんですね。  海外の様々な制度がどういうふうになっているかということについてはこの間もいろ いろ厚生労働省から説明を聞いてまいりましたけれども、水準そのものについては、な んだかんだ言いながら、それなりに60%ぐらい維持するということで、諸外国の制度は 運営されていると思うんですよ。  そういう点では、所得代替率が45%あるいは52%というものが示されているという点 について、慎重に給付の問題について考える必要があるのではないかということを意見 として言いたいと思います。特に、基本的にはよほどの問題がない限りは、60%の所得 代替率を維持するためにどうしたらいいのかということを、負担の問題も一方でありま すけれども、ここで議論を深めるべきだ、ほかに方法はないのかどうか、そういう点を しっかり議論するべきだと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。山口委員はいかがですか。 ○ 山口委員  部会長のご指摘のとおり、マクロ経済調整というものをしっかり勉強しなくてはいけ ないのですが、イメージできている範囲で申しますと、今回の給付と負担のところで言 えば、最終保険料に至るまで段階的に保険料を引き上げて、逆に給付水準をなだらかに 下げていくというこちについては、これは何人もの方がおっしゃっていますけれど、特 に若い世代にとって、この年金に対しての不信感が強くなる、それから世代間格差が拡 大されてしまうというようなことに対して大変不安を持つわけです。  特に給付水準が変動するということは、将来不安を大きく招くことだと思うんです ね。老後生活への備えが非常に不安定になって、一層将来不安が高まるという中で、先 ほど年金だけで老後をすべて賄うのではなくて、自助努力も必要だというご意見もござ いましたが、今現在でも賃金は上がらない、生活も大変厳しい。自助努力をできる層は しています。ただ、それが結果的に経済的引きこもりではないですけれど、消費も非常 に少なくなってきている。そういうようなことを考えると、年金だけでなくて自助努力 もしないといけないのであったら、年金に頼る必要はないというような年金不信をさら に増大させるのではないかというふうに思っております。  そういう意味では、年金水準については、現役世代の手取り年収の一定水準、代替率 が維持されるということで、それに基づいて自分の将来設計ができるという仕組みがぜ ひとも必要だというふうに思います。それが公的年金の役割ではないか。  先ほども申し上げましたように、公的年金が一部あって、それプラス自助努力という ふうなことに、公的年金を老後の生活を支える一部なのだということにするのかどうか というような議論を十分しなくてはいけないというふうに思っております。そういう中 で、私は公的年金というものについては、保険料を若いときから支払いながら、それが 将来自分の安定した老後につながるのだという思いを込めてといいますか、思いがあっ て保険料を払い続けていくという、そういう公的年金であってほしいと思っています。  もう一つ、先ほど部会長の方で、各論を議論した後、また給付と負担については戻っ て議論するということでしたので、それを伺った上で、遺族年金の部分についても申し 上げておきたいのですが、遺族厚生年金の受給者比率が2000年では約20%ということで すが、今後は2025年は約25%、2050年は約26%と段階的に増えていく。遺族年金の受給 者が増えていくことによって給付費も増えていくわけですけど、こういった遺族年金の 仕組みを現状のままとして試算されている。これだけ比重が高いものについては、その ままではなくて、見直しをするべきであるというふうなことを、これはまた別の各論の ところで議論すると思いますが、試算の中に反映されているという意味で意見を言わせ ていただきました。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。近藤委員、どうぞ。 ○ 近藤委員  先ほどから世代間の公平性という問題が出ているのですけれども、世代間の公平性と いうのであれば、今の財政方式の中で段階保険料をとっている限り、財政的にみれば、 20代の人も30代の人も負担を先送りして、要するに今日生まれた子どもに将来薄くです けれども負担していただくことになる。ですから世代間の議論は、この間の年金局の数 理課から出ている数字で皆さんやっているわけですけれども、あれは60から65に支給開 始年齢を延ばしたり、経過措置がいろいろ入っていることによってそれが出てきている わけで、今回の改正の結果で、段階保険料を最終保険料まで引き上げ、また、給付のマ イナスが多分2割ぐらいのところにおさまるスライドをします。そうすれば多分ある程 度公平な水準にもっていけるのではないかという気がします。ただ、世代間の公平性の 問題については、もし段階保険料をやめて、最終保険料にすぐ引き上げるということで 首尾一徹すれば、これはいいのですけれども、そうでない限り、余り議論しても私はし ようがないのかなと思います。  ただ、一つ問題なのは、既裁定年金者の問題で、これについては、皆様方でも、高い という人もいれば、いいじゃないかという人もおられるのですけれども、さっきの資料 の18ページにあるようにスライド率に寿命の延びを勘案するというのを、これは新規裁 定についてということですけれども、何かこういう考えを既裁定の中に取り入れてやっ ていくというようなことが可能ではないか。できれば、理論的にはいろいろ問題が出て くるかもしれませんけれども、割り切りの問題もあると思うので、ぜひ若い人たちが納 得する材料として組み込めればいいという気がしております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。今、伺っておりますと、かなりいろいろ意見の違いが明確 になってきてございますけれども、それでは、他によろしゅうございますか。それで は、岡本委員、どうぞ。 ○ 岡本委員  他の委員の方に対する反対の意見ということでよろしゅうございますか。 ○ 宮島部会長  どうぞ。 ○ 岡本委員  小島委員と大山委員と山口委員がおっしゃったことについて、私は気持ちとしては理 解できますし、少しでも高い水準の年金のある社会をつくろうということについて、私 は異論はないのですが、公的な制度というものが持続できるかについては、やはり国の 力であるとか、あるいは負担する力に限りなく依存しているわけであって、そういうも のとして議論しませんと、いつまでたっても、給付が高ければ高いほどいいという議論 になっていくわけですし、それをまたやりますと、従来のように負担の引上げを繰り返 すというようなことになるわけでありますから、私は、ここはつらい議論でありますけ れども、そういう日本という国の今の負担力なり、財政力なり、現役世代の負担を見 て、現実的に議論をしていくことが、お気持ちはわかりますけれども、必要ではないか と考えておるわけです。矢野委員も私も、今回は負担に軸足置いて議論しようではない かという点はそういう趣旨であるわけでございます。  もう一つ、先ほどから平均値の問題であるとか、所得代替率の問題という議論が出て おります。私は、年金について議論をするときに、所得代替率というのは、一つの視点 としては有効だと思うのですが、随分とその持つ意味が変わってきたと思うのです。従 来は、日本は終身雇用で年功序列で、しかも各人に差がなくて、大体一定の幅で報酬が 決まっておりましたから、そういう意味では標準報酬の平均値も非常に意味を持ってい たのですが、これからは、100 万単位で派遣とかパートとかアルバイトで働く方も増え ていきますし、それから現役の世代でも、成果主義であるとか、いろんなそういうこと で非常にバラツキが大きくなっている。例えば、100 万の収入と500 万の収入を合わせ て平均が300 万といっても、私はそれがどんな意味を持つか疑問です。これからの時代 はますます実態のバラツキというのが大きくなってきまして、余り平均値で議論すると 実態との乖離が逆に大きくなる。そういうことで私は、所得代替率というのも一つの見 方でありますけれども、実際の給付の水準の絶対値が実際どんなふうに評価できるの か、そういう議論も併せてやりませんと、所得代替率だけで、高い、低いという議論を すると間違う危険があるのではないか、こんなふうなことを考えております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 神代部会長代理  今の岡本委員のご意見に私も全く賛成なのですけれども、どういうわけか、この部会 では、従来もそうだったかもしれませんが、平均的な標準報酬に対するモデル年金の割 合をもって「所得代替率」という言葉をずっと使っていて、それはそれで定着している のですからしょうがないのですが、ほかの国で所得代替率の議論をしているときは概念 が違う方がむしろ多いと思うんです。一つは、退職した場合は、実質的に同じ生活を維 持するにしても、活動中とは必要な生計費の水準がおのずと違いますから、そういう意 味で、生計費の視点から見た所得の代替率というのが、同じ実質生活水準を維持するた めに必要な所得水準という意味で、しかもそれは所得階層別に当然違うということを前 提にしています。家計調査のミクロデータを使って、大変な計算をアメリカなどでは やっていますが、日本ではそういう生計費の計算を一つもやってないんですね。ですか ら生計費の読み方についていろいろ議論が出るのは当たり前の話で、本来は所得階層別 に、引退前後で実質的に同じ生活を維持するにはどれだけの所得が必要かという、本来 の意味での所得代替率を本当はきちんと把握できればした方がいいのですが、これはす ぐには、日本の現状では難しいと思います。学者がやってできないことはないのかもし れませんが、かなり難しいと思います。  それともう一つは、例えばOECDなどの出している資料をご覧になっている方は多 いと思いますが、実際の所得階層分布ごとに、5分位階級別に見た実際の引退時点の所 得に対して、年金あるいはその他資産所得まで加えて計算する場合もいろいろあります が、引退後の所得が何%かという率を普通「所得代替率」と呼んでいます。いずれも所 得階層によって所得代替率というのは非常に大きな格差があって、日本はほかの国と同 じカーブをしていますが、低所得層、第一5分位の人あたりでは7割前後であり、非常 に高い。日本だけが高いわけではなく、どこの国もそういう国が多いですが、第5分位 あたりにいきますと25%ぐらいで非常に低い、こういうカーブをしているわけですね。  そういう所得分布と所得代替率の関係を前提にして本当は議論しないとおかしいの で、岡本委員がおっしゃるように、ここで使っている所得代替率という定義は国際的な 常識から見ると特殊な定義だと私は思いますので、ぜひ、常識的な定義にも注意を払っ て議論をした方がいいと思います。そうでないと、さっきどなたかおっしゃっていたよ うに世帯モデルごとにいろいろやって計算するなんて気の遠くなる話になるわけで、そ れよりは所得階層別の所得代替率というものを念頭に置いて議論した方が適当ではない かと思います。 ○ 宮島部会長  どうぞ、大山委員。 ○ 大山委員  外国の例についてはもっと教えていただきたいと思いますが、現に今、所得代替率と いう概念は機能しています。どの程度の年金になるかということです。特に一番私なん かのところで問題になっているのは単身男性です。何でこんなに年金が低いんだという ことがよく問題になります。それは40%程度で、今まで間違っていたんじゃないかとな るのです。一般的にはいわゆる60%がずっと頭に入っているものですから、それでみん な考えているんですよ。  そういう意味では、今の所得代替率の考え方が、海外との比較で見た場合にはこうい った問題があるというのはこれから議論していただきたいと思いますが、所得代替率と いうものが今、全然機能してないかというと、現に年金をもらうとき、特に定年直前に 年金額を計算してもらいますが、そのときに年金が低いということになる。例えば特に 出てくるのは単身男性です。それについては所得代替率で私たちは説明します。所得代 替率というのはひとり歩きしているのでなくて、そういう事実に基づいて一定の水準が 出てくるわけです。だから海外との比較の関係でいろいろやるというなら、これから教 えていただきたいと思いますけれども、所得代替率が機能してないということはないと 思いますよ。 ○ 宮島部会長  今の所得代替率については、従前の給与所得ベースで見るという考え方と生計費で見 るというような考え方がありました。それから、従来のような終身雇用というか、年功 賃金というようなベースで、老後にスムーズに生活が維持できるような発想で今まで年 金水準が考えられていると思いますけれども、今後、賃金体系が変わってくるとその考 え方も違ってくるだろうという意見もありました。  これらの発言を受けて、どう具体的な資料を出すかは、もちろん事務局の方にも、そ の点は検討できる範囲でやってもらうということにはしたいと思います。ただ、なかな かその辺のデータの制約もあって簡単にはいかないかもしれませんが、検討させていた だきたいと思います。  他にいかがでしょうか。 ○ 小島委員  私が発言した内容に対し、給付を現状のまま維持した場合には負担が大変じゃない か、多分そういうご意見が岡本委員からあったと思います。私が言ったのは、1階、2 階を含めた負担の在り方を考えた場合に、1階の基礎年金を誰が負担しているのかとい う問題です。それは、空洞化の問題と関わります。、第1号のうち4割の方が保険料を 負担してない分は、、保険料を負担している1号と2号の保険料で賄っているというこ とです。1階の姿をどうするかによって、第2号、いわばサラリーマン世帯の保険料は 大きく変わってくるということです。  今の1階の社会保険方式を将来的に維持していくことが本当に可能かどうかというこ とです。税方式にすれば、そこは広く国民全体が負担するという形になる。財源につい ては、我々は1/2を一般財源、1/3を年金目的税、6/1を社会保障税と考えてい る。年金目的税は消費税率換算で2025年で3%ぐらいと想定しております。このよ うな形で負担をすれば、今まで1号と2号にいわば負担が偏っていたものがもう少しな だらかになる。そうすれば、保険料としてはそんなにいらない、少なくて済むことにな ります。  我々の試算では、2025年時点で考えれば、厚生年金の保険料は15%程度で済むという ことになっています。我々が試算したときには、支給開始年齢は65ではなくて平均62か 63のところで試算をしましたので、2025年時点では65ということになりますので、そう する、人口変動等も勘案するとしても、15%程度でそんなに違わないだろうというふう に思います。2025年までは人口構成はそんなに変わらないという見通しですが、202 5年以降については、これからの少子化対策の在り方、社会全体の在り方をどう描いて いくのか、これからの政策をどう打ち出していくかというところに関わってくるのだと 思います。それは年金を支える21世紀の日本の社会の在り方自体に関わってくる。これ をどういうような方向に持っていくかというところによって大きく変わってくると思い ますので、2050年までの人口推計をそのまま前提にした議論というのは、今の時点でな じまないのではないかと思っています。 ○ 宮島部会長  ただいまのご意見についてもいかがでございましょうか。矢野委員。 ○ 矢野委員  1階を税方式にするという前提にした場合には、保険料率の負担というか限度という ものも変わってくるわけです。ですからその点はしっかり議論していろいろなシミュレ ーションをする必要があるのではないだろうかと思います。現在1/3が税ですけれど も、財源を手当てして半分にしようとしているわけです。私どもはその分を消費税1% で賄うべきだと言っているわけですけれども、その先も考えて、どういう負担の方式が 望ましいのかということを考えますと、当然今出ている保険料率20%という数字も随分 大きく変動してくるだろうと思いますので、そうした意味のシミュレーションもしなが ら、やはりこの場で検討して、どういうものが現実的なのか、どういうものがあるべき 論からいって望ましいのかということをしっかり詰める必要があるのではないだろうか と思います。 ○ 宮島部会長  わかりました。他にいかがでしょうか。ただいまのご意見などを伺っておりますと、 保険料の問題と税の問題と分けて考えて議論していいのだろうか、保険料は下がるけど 税の方は上がりますよということで国民の納得を得られるのかなど、いろんな問題が当 然起こってくるということでもありまして、その問題と今後の水準の問題は、そういう 意味ではリンクしていることは確かでございます。ただ、年金制度としての枠内の話と 合わせて、例えば税や運用ですとか、こういう世界との関係まである程度視野に入れて 議論する必要が出てきます。私は、年金部会として議論できることは何であり、あるい は年金制度としてできることは何かということはある程度はっきりしていると思います けれども、もう少し視野を広く持って議論しておく必要があるという気が私はいたしま した。  今日のご意見の中で、杉山委員から、特に今後の労働力人口あるいは労働力率につい て、男女それぞれどういった前提をおいているのかというコメントがございましたの で、それについて事務局からお答えいただきたい。  もう一つ、寿命の要素を考えるという話が今回出てきたわけですが、先ほど近藤委員 から、これは一体新規裁定だけなのか、あるいは既裁定も視野に入れたような話なのか という議論がございましたが、その辺のところ、事務局から今お話しがございますで しょうか。 ○ 坂本数理課長  まず、杉山委員のご質問に対します回答でございますが、順序が前後いたしますが、 まず男女の平均報酬をいくらと仮定して試算を出したのかという点については、平成12 年度末の実績値を用いておりまして、平均値で申しますと、男子が37万円、女子が22万 円でございます。ただし、シミュレーションをやりますときには年齢分布を考慮いたし ましてシミュレーションをしているところでございます。  それから、男女の労働力率をいくつと仮定して試算したのかということでございます が、これは次回その資料を具体的にお示ししたいと思っておりますが、典型的な年齢階 層だけ申し上げますと、例えば30歳から34歳という年齢階層の男子につきましては、平 成12年の労働力率が97.6%で、平成37年までこの97.6%が続くと前提を置いておりま す。それに対しまして、女子の方は、30歳から34歳の年齢階層でございますけれども、 平成12年の労働力率は57.4%、平成22年の労働力率は61.1%、平成37年の労働力率は 65.0%と、徐々にM字型の谷の部分が上がっていくという前提で計算しております。 ○ 宮島部会長  そういうお答えですが、よろしゅうございますでしょうか。 ○ 杉山委員  ありがとうございました。 ○ 坂本数理課長  もう一つ、近藤委員のご質問でございますけれども、まだ具体的にどういうふうにや るかという詰めた検討は行っておりませんけれども、一応ここで想定されますのはいわ ゆるスライド調整率を調整するという考え方でございますので、新裁・既裁両方に、適 用される場合には適用されるということになろうかと思います。 ○ 宮島部会長  わかりました。とりあえず質問があったところだけ済ませましたけれども、まだ時間 が若干ございますので、何かご意見なりご質問があれば伺っておきたいと思います。本 日のテーマでございますが、いかがでございましょうか。よろしいですか。  それでは、冒頭に申し上げましたように、今後、各論が進み、個別の問題をさらに議 論する中で、この部分が一番今後の核心部分に当たるわけでありまして、各論の議論を 含む形で、給付と負担の在り方について再度ご議論いただく機会を設けたいと思います ので、改めましてそのときにまたご議論をいただきたいというように思っております。  今日はそういう意味で大変貴重な意見書を出していただきまして、ありがとうござい ました。特にデータについて教えてもらった件もございますし、また、かなり制度的な ものに踏み込んだ議論もございましたので、そういう意味で大変実りある部会であった というふうに思います。  それでは今後のスケジュール等、あるいはほかの報告事項が事務局からございますで しょうか。総務課長からお願いいたします。 ○ 高橋総務課長  次回は財政再計算の諸前提などに関わる論点につきましてご議論いただきたいと考え ております。開催日時については、日程を調整し、改めてご連絡申し上げます。  それから、先日の部会でもお話いたしましたように、年金改革について幅広く国民的 な議論を進めていくために、各地で国民との対話を行う予定といたしております。現 在、小泉内閣では、閣僚と有識者の方々が参加するタウンミーティングを随時開催して おりまして、先週の日曜日(3月2日)でございますけれども、坂口厚生労働大臣、根 本内閣府副大臣、また宮島部会長にもご参画いただきまして、年金を中心とした社会保 障改革をテーマにいたしまして、静岡市でタウンミーティングを開催いたしたところで ございます。  それから、私どもの主催で、あす3月8日に和歌山市で、これは行政側だけでござい ますが、また3月15日、来週の土曜日には熊本市で年金対話集会を開催する予定でござ います。熊本市の分につきましては、神代部会長代理、杉山委員、山崎委員、渡辺委員 にご参加いただくことになっております。今回、時間的余裕が大分ございませんで、一 部の委員の方々に個別にお願いをさせていただきまして、ご参加をいただきましたけれ ども、4月以降に開催する年金対話集会につきましては、日程・場所が決定いたしまし た段階で、改めて委員の皆様にご参加のお願いをさせていただきたいと思いますので、 よろしくお願いを申し上げます。  今後の日程に関しましては以上でございます。 ○ 宮島部会長  私の方から最後にお願いがございます。次回は財政再計算の諸前提ということでござ いますが、本日の議論を踏まえまして、もし何かご意見を表明されたいということであ れば、改めて意見書のような形でご提出いただければありがたいと思います。そのこと だけお願いしておきまして、本日の部会はこれで終了させていただきます。  どうもありがとうございました。  (照会先)   厚生労働省年金局総務課企画係   (代)03-5253-1111(内線)3316