03/03/05 第3回労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会        第3回労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会  【議事次第】  1 日時  平成15年3月5日(水)10:00〜12:00  2 場所  厚生労働省専用第16会議室  3 議事       (1) 家内労働部会の公開について       (2) 平成14年度家内労働調査結果について       (3) 第7次最低工賃新設・改正計画の進捗状況について       (4) その他  4 出席者 公益代表    渥美委員、大沢委員、清水委員、水野委員        家内労働者代表 加藤委員、柴田委員、豊田委員、古川委員、丸山委員        委託者代表   浅澤委員、泉委員、志村委員、名倉委員、橋本委員  【配付資料】   資料No.1   労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会名簿   資料No.2   労働政策審議会雇用均等分科会の公開について   資料No.3   平成14年度家内労働調査の概要   資料No.3−2 平成14年度家内労働概況調査結果の概要   資料No.3−3 平成14年度家内労働等実態調査結果の概要   資料No.4   第7次最低工賃新設・改正計画(平成13年4月〜平成16年3月)          進捗状況(平成15年2月28日現在)   資料No.4−2 第7次最低工賃新設・改正計画進捗状況総括表   資料No.4−3 平成14年度改正諮問見送り決定状況   資料No.4−4 最低工賃一覧(平成15年2月28日現在)   資料No.5   家内労働者労災保険特別加入状況   資料No.6   年別監督指導実施結果   資料No.7   平成13年度家内労働等実態調査(在宅就業実態調査)結果概要    【議事録】 ○部会長 皆さん、お忙しいところご苦労さまです。ただいまから第3回労働政策審議会雇用均等 分科会家内労働部会を開催いたします。本日は奥山委員が欠席しております。初めに、 事務局から挨拶をお願いいたします。 ○事務局 本日は、それぞれお忙しい中ご出席いただき大変ありがとうございます。本日は家内労 働の現状と家内労働対策の推進状況について私どもから説明し、皆様方からそれに対し てご意見、そして皆様方が日ごろの活動を通じて得ておられる様々な情報を提供してい ただければと思います。 家内労働の現状について1つだけ申し上げるとすれば、その数が大変な勢いで減少して おります。平成14年10月時点で約26万人です。1年前が約30万人でしたので、13%の減 少率、昭和45年に調査を開始して以来、最も大きな減少率になっております。 これは国内の長期にわたる景気低迷の問題もありますし、人件費の安い海外製品との競 争で、生産の現場が国内から無くなっているというような問題も背景にあろうかと思い ます。 家内労働対策の中心は最低工賃の見直しです。最低工賃の新設、改正のための3年計画 に基づいて最低工賃の見直しを行っておりますが、現在は平成13〜15年度までの第7次 計画に基づいて実施しております。詳しくは後ほど説明いたします。 平成14年度の状況を見ますと、都道府県労働局の審議会で最低工賃の見直しについて着 手したものが61件ありました。そのうち5件は廃止することになり、28件は、審議会の 公労使の合意で、改定することが難しいということで諮問自体を見送る事態になりまし た。これも一般的な賃金状況であり、最低賃金自体も改定されない地域が大変多くなっ ているという状況を踏まえた、厳しい現状ではないかと思います。 この家内労働部会は1年に1回程度の開催ですので、今日は本当に貴重な会議であると 思っています。見方を変えれば、26万人と労働市場全体から考えると非常に少なくなっ た家内労働者として働いている方たちのことについて、しっかり議論していただく場が あるのは大変有意義なことではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○部会長 審議に先立って、家内労働部会の委員の交代がありましたので事務局から紹介していた だきます。 ○事務局 資料No.1として家内労働部会委員名簿が付いておりますが、家内労働側委員のうち、渡 辺委員に替わって加藤委員が、原委員に替わって柴田委員が選任されておりますので報 告いたします。 ○部会長 一言ずつご挨拶をお願いします。     (新任委員挨拶) ○部会長 それでは、お手元に配付されている議事次第に沿って議事を進めてまいります。まず議 題1「家内労働部会の公開」について、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 資料No.2に基づいて説明いたします。審議会の公開については、情報公開という観点で 昨年5月に、厚生労働省所管の審議会についても、特段の事情がない限り、会議議事録 や提出資料などを公開するという方針が定められました。家内労働部会の上位の雇用均 等分科会でも、昨年9月から会合が公開となっております。 家内労働部会については、現在でも議事録と資料は公開しております。委員の発言につ いては、個人名を出さずに「委員」と表示しております。そこで、今後の取扱いとして、 1つはこの会議について一般の方の傍聴も認めることにしたいということ。もう1つは、 議事録の記録で、単に「委員」という表現ではなく「部会長」「公益委員」「家内労働 者側委員」「委託者側委員」という形で区別して表記する、そういう形に変えさせてい ただきたいのです。ただし、特段の事情がある場合には、部会の議決をもって、会議や 議事録について非公開とすることができることになっております。 また、会議の公開に当たっては「傍聴される皆様への留意事項」にある12項目について 前もって示し、議事進行の妨げにならないように十分配慮したいと思っております。こ の取扱いについて本日の部会で議決をいただいたら、次の会議からこのような取扱いと したいと思います。よろしくお願いいたします。 ○部会長 ただいまの事務局の説明に関して、何かご意見ご質問のある方はいらっしゃいますか。 ほかの会と同様の取扱いということになろうかと思いますが、ご説明のとおりの扱いで よろしいですか。     (異議なしの声) ○部会長 皆様の賛同をいただいたものとさせていただきます。次に第2議題「平成14年度家内労 働調査結果」について事務局のほうから説明をお願いいたします。 ○事務局 資料No.3から説明いたします。家内労働調査は、家内労働概況調査と家内労働等実態調 査という2種類の調査を行っております。 家内労働概況調査は、都道府県労働局を通じて家内労働者数や委託者数の現状調査をす るもので、平成14年10月1日現在で調査をしております。家内労働等実態調査はサンプ ル調査ですが、例年、委託者の調査と家内労働者の調査を交互に行っております。ただ、 平成13年度は在宅就業の調査をこの枠で行った関係上、平成14年度は委託者を対象とし た調査を、平成11年度以来3年ぶりに実施いたしました。 資料No.3−2に従って、家内労働概況調査結果の概要を説明いたします。家内労働者数 は平成14年10月1日現在で257,270人でした。減少幅が13.4%で、本調査を開始して以来 最大の下げ幅でした。家内労働者の経年推移については、4頁の第1表のような形でず っと推移しております。 ここで「家内労働従事者数」と「家内労働者数」の2つの欄があるわけですが、家内労 働者数に補助者数を加えたものが「家内労働従事者数」で、平成13年度との比較で、い ずれも13.4%のマイナスでした。これまでいちばん下げ幅が低かったのは平成11年の 12.9%ですので、かなりの割合で下がっているといえるかと思います。 家内労働者の男女別の比率は、女性が91.7%を占めております。この女性の割合もずっ と落ち込んでおり、今回の調査で初めて92%を下回りました。 業種別についての全体像は5頁の第2表に示してありますが、家内労働者数と補助者数 を合計した家内労働従事者数269,815人のうち、いちばん人数が多いのが「衣服・その他 の繊維製品製造業」で、家内労働者数全体の約3分の1を占めております。次に多いの が「電気機械器具製造業」で、53,316人、20%ぐらいです。 業種別に経年変化を見たのが6頁の第3表です。平成14年度の対前年比増減率も、業種 によってかなり凸凹がありますが、いちばん下げ幅の大きかったのが「電気機械器具」 で、18.5%のマイナスで人数にして12,000人弱の減少です。最も人数の多い「衣服・そ の他の繊維製品」は13.5%で、人数にして約1万3,000人の減少といった状況でした。 4頁の第1表に類型別家内労働者数が専業、内職、副業と3つに分けてあります。この うち大多数を占めるのが内職型、つまり主婦や高齢者など世帯主以外の家族の方が家計 補助として家内労働に従事するという型ですが、その割合が94%と過去に比べて増えて おります。逆に、世帯主が本業として家内労働に従事する、いわゆる専業的家内労働者 の割合は4.8%とずっと小さくなっております。 7頁の第4表で、都道府県別の家内労働者数の分布を、補助者を除いた数で集計してみ ますと、いちばん人数が多いのが大阪の22,705人、次いで東京の22,640人、それから愛 知の15,232人という状況です。大阪、東京、愛知という順番自体は前回とは変わってお りませんが、大阪の22,705人というのが前年に比べて15%ほど、かなり大きな減少を示 しております。一方で東京都は前年度比3.3%ほど減少ということで、両者の差が今回の 調査で一気に縮まって、ほぼ同数に近い水準になっています。 都道府県別にどういった業種の家内労働者数が多いかを取りまとめたのが第5表です。 それぞれ上位3業種について、業種名と人数を取りまとめております。 10頁の第6表は危険有害業務に従事する家内労働者数ですが、危険有害業務のうちプレ ス機械を用いるなど特に危険有害性の高い業種については、労災保険の特別加入が認め られており、この件数は別の調査で数字を把握しております。したがって、概況調査で は、特別加入の対象作業以外の危険有害業務に従事する家内労働者数を出しております。 合計では18,217人。資料には経年変化を付けてありませんが、前年比で約16%人数が 減っております。 作業別では8割近くを「動力により駆動される機械を使用する作業」が占めております。 具体的にはニット編み機、レース編み機、動力ミシンなどの機械を使う作業が大多数を 占めております。あとは「鉛を使用する作業」、「火薬類を使用する作業」、この辺り が割と数が多い分野です。 最後に委託者の状況について説明いたします。12頁の第7表が委託者の数ですが、全国 で19,347人でした。この経年変化は4頁の第1表にも出ていますが、調査を始めて以来 初めて2万人を下回りました。 業種別では、家内労働者の多い「衣服・その他の繊維製品」や「電気機械器具」といっ た所が多いのですが、家内労働者の減少幅13.4%には及ばず、前年比11.2%の減少です。 このようなことを反映して、第7表のいちばん右側の欄にある、1委託者当たりの平均 家内労働者数が、昨年の調査で13.6人だったものが13.3人に減っています。家内労働概 況調査については以上です。 続いて、資料No.3−3に沿って、家内労働等実態調査の結果概要を説明いたします。こ れは平成11年度以来3年ぶりの調査ですが、基本的に調査項目は変えずに、経年変化が 追えるように調査をしております。 この調査では委託者を営業所単位で捉えております。営業所の雇用者の人数別の規模で 見ますと、「1〜4人」が15.3%、「5〜29人」が45%、トータルで30人未満の小規模 営業所が6割以上を占めています。 1頁の第1表、委託している家内労働者数では、絶対値で平均何人というのは求められ ないのですが、括弧内の数字が前年度の調査結果で、それとの比較でも、全体的に少人 数のカテゴリーにシフトしている傾向が見られ、先ほどの概況調査で平均の家内労働者 数が減っているという傾向とも一致します。 2頁の第2表ですが、家内労働者に仕事を委託する理由として圧倒的に多いのが「手作 業であるから」「コストが安く済むから」という理由です。また、「仕事量が変動する から」「少量多品種であるから」あるいは「高い技能が必要であるから」という理由で 家内労働を委託しているという回答が前回調査より増えています。 次に3頁の第2図の委託する仕事量の変動とその理由。これは2つの観点に分けて聞い ております。まず、「1年前と比較して仕事量が増えたか減ったか」。それから、「今 後1年間を見通したときに増えると思うか、減ると思うか」という調査です。 前回調査と比べると「増えた」と「減った」という回答が減り、「変わらない」という 回答が38.2%。「減った」という回答が半数以上を占めておりますので、仕事量につい て全体を見ると、減少傾向にあるといえるかと思います。 今後の見込みについては「増やしたい」という回答が増えている一方で、「わからない 」という回答が約4ポイント増加しております。これは家内労働は今後どのように進ん でいくか、それがなかなか見えにくい状況にあることを示していると思われます。 このような状況下で、1年前と比較して仕事が減ったと回答した方に減った理由を尋ね たのが4頁の第3表です。いちばん多いのが「製品の需要が減った」で84.6%を占めて おります。一方「海外生産の導入」「経営の困難」、こういった所のポイントが増えて おります。それから「家内労働者の確保の困難」というポイントも回答者の割合が増え ております。逆に「工場内生産への切替え」はポイントが減っている状況です。 今後の仕事量について「減らしたい」とか「委託を中止したい」という回答を寄せた方 に同じ質問をしたところ、第4表のような状況です。「工場内生産への切替え」「家内 労働者確保の困難」といった項目は減っている一方で、「海外生産の導入」「経営の困 難」といった理由を挙げる方の割合が大変増えております。 5頁の第5表、委託契約の方法については、家内労働法で、委託契約の際には家内労働 手帳などで委託条件の明確化を図るようにとなっております。調べたところ、「家内労 働手帳を使っている」が75.6%でした。前回調査に比べて数字は上がっているのですが、 一方で「口約束による」という回答がいまだに8.8%あり、この率も前回調査に比べて 増えております。 6頁の第6表の不良品が出た場合の取扱いについて、あらかじめ取決めをしているかど うかという問いに対しては「取決めがある」と「取決めがない」という回答がほぼ半々 でした。実際に不良品が出た場合については、約7割の回答者が「やり直させる」とい うことでしたが、「問題にしない」という回答も14.5%出ております。 第7表の家内労働者の募集方法ですが、割合として多かったのが「家内労働者を介する 」あるいは「従業員を介する」など、会社の関係者を介して募集するケースでした。「 公共機関を介する」という回答の中で内訳を見たところ、県や市区町村を通じて募集す るケースが6割強を占めております。「その他(不明を含む)」が13.6%ありますが、 この中には「最近家内労働者の新規募集をしていない」という回答も含まれております。 第8表は、調査時点から遡っていつごろに最終的に工賃を改定したかという調査です。 平成13年10月1日以降というのは、調査時点から1年以内に工賃が改定されたものです。 それから順番に1〜2年以内、2〜3年以内、3年以上ということになるのですが、 全体の4割ぐらいは1年以内に工賃の改定がなされている一方、3年以上工賃が改定さ れていないという回答が36.2%あり、前回調査に比べて8ポイントの増と、工賃改定の スパンが延びている状況が窺えます。 第9表の工賃の決定要素別委託者数の割合ですが、率として多いのは「工賃相場」の 56.9%ですが、この割合は前回の調査より減っております。最低工賃や類似労働者の賃 金を工賃決定の参考にするという回答が減っている一方で、「納入価格や利益」を重視 するという回答が若干増えている傾向が見られました。 第10表は、家内労働者に対して工賃以外に何らかの経済援助を行ったかという調査です。 援助をした委託者が回答者全体の9.4%で、前回調査の14.2%から大幅に減っておりま す。経済援助の内容についても、「機械器具・補助材料購入費」といった、実際の仕事 に直結する内容が多く、前回調査に比べて増えたのは「光熱費・水道代」、「作業服代 」、「医療費」、それから「保険料」で、「慰安旅行の費用」や「一時金・ボーナス」 などの項目は減少しています。 経済的援助について実際にどの程度の額を援助しているかという調査が第11表です。こ れも、家内労働者1人当たりの合計額が37,018円から28,092円と、金額的にも前回に比 べ落ちておりますし、項目別でも割合が減っていた「慰安旅行の費用」や「一時金・ボ ーナス」は金額としても減少傾向が見られます。 最後に安全衛生に関する項目で、危険を伴う業務を家内労働者に対して委託している委 託者数を調査した結果が、11頁の第3図です。前回の調査では全体の5.4%の委託者が対 象でしたが、今回4.3%に減少しています。業種別にはかなり差がみられます。実際に委 託している業務については第12表に入っております。いちばん多いのが「動力により運 転する機械を取り扱う業務」、次いで「有機溶剤を使う業務」、「鉛等を使う業務」と いったものが多く示されていました。 こういった委託者に関して、安全衛生について具体的な対策を施しているかどうかを聞 いたのが12頁の第4図と第13表です。「何らかの対策を講じている」という回答は全体 の89%。大多数の委託者は何らかの措置を講じているということです。具体的な内容に ついては、第13表にあるように、「機械類に覆いを付けさせる」、「作業心得などの書 面を交付する」、「有害物の名前や取り扱いの注意事項を表示する」、といったことで した。以上、家内労働概況調査と実態調査の結果について説明いたしました。 ○部会長 いまのご説明に関してご意見、ご質問がありましたらお出しください。 ○公益委員 非常に単純な質問なのですが、統計を見ると家族従業者という数がよく出てきますが、 家内労働者と家族従業者というのは、どういう関係にあるのでしょうか。どのぐらいの 割合が家内労働者として占められているのか教えていただけたらと思います。 ○事務局 統計上家内労働者は自営業種です。 ○公益委員 内職ではなくて、自営に入るわけですね、わかりました。 ○委託者側委員 家内労働者に仕事を委託する理由の中で、高い技能が必要であるからというのが増えて いるとおっしゃるのですが、こういう傾向が今後望ましいと思うのです。これは、仕事 にどうして高い技能が必要であるという理由が出てきたのか、もしわかりましたら教え ていただけますか。 ○事務局 海外との競争の中で、差別化が進んでいるものと思います。 ○委託者側委員 将来、家内労働をやるというのは、やはりこういう方向に持っていかなければ本当に成 り立たないと思います。 ○委託者側委員 いまご質問がありましたのでお答えさせていただきますが、私のほうも実はいま大変数 は少ないのですが、非常に複雑な内職を取り扱っておりまして、特に編み物などは、本 当にこんなことが実際人間によってできるかということもやっていまして、品質の高い、 精密と言いますか、それに対しては講習を必ずやらなければ、それに取り組めないよう な状態です。高い技能が必要なものはすべて、いままでの内職とは違った、講習をやら なければできないというものが多いです。 これは編み物が一つの例ですが、ビータッチというのをいまやっていますが、ビータッ チというのはビーズのようなもので絵を描いたりと、非常に複雑です。従って若い人が 取り組むことは、現実としてはなかなか難しいわけです。 このような難しいものはできないと言います。それをどのようにして講習を受けていた だくかが、私どもとしては課題だと思っています。 ○部会長 例えば非常に付加価値の高い製品を作らなければいけない、京都の何とか染めなど、そ ういう関係でこういう部分の内職はあるのですか。 ○事務局 染め物は聞いたことないですが、むしろ高級和服の染み抜きの作業は、とても技術がい るらしいのですが、そういうものは内職に出していると聞いたことがあります。 ○委託者側委員 私は実際うちでやっていますが、いま京都、東京の例ですが、ほとんどそこら辺のとこ ろの商品が多いです。例えばいまおっしゃっていただいたように、ビーズの刺繍でも、 ものすごく複雑なのです。教えると言いましても、とても付加価値の高いものが多くな っています。 ○家内労働者側委員 私も現場でものをつくっている家内労働者の立場なのですが、高い技能が必要であると いう意見には全くこの点が一つのポイントだろうと思うのです。ただ問題は、高い技能 を持っていても、全くそれが評価されていなかったというのが、この間の技術の経過で す。 そうは言っても、この点で言うと例えば靴などの場合も、現在皆さんが履いている靴は ほとんど、違う方もいらっしゃるかもしれませんが、つくる現場で私が前から問題提起 しているのは、左右1ミリと違わない全く同じ靴をつくっているのです。人間の足とい うのは絶対に左右ピッタリということはあり得ないです。そういう点で言うと、例えば 大量生産で外国からいまどんどん輸入品が入ってきて、最近では中国だけでなく、ミャ ンマーやバングラディッシュなどからも入ってきているのですが、そういう中で国内の 技術者、家内労働者がいわゆる本来「ものづくり」の原点である技術をどう向上させる か、この辺が求められているという点で、そういう対策が全く非常に不十分なのです。 我々としては東京都に対して、靴の技術者を養成する学校を公共機関として運営しても らい、そういうものに対する補助制度や、向上訓練のための短期講習の制度を実現させ る、そんなところをいま一生懸命力を入れてやってきているところです。 ものづくりがなくなるような国というのは発展しないと思います。本当にいま家内労働 者が減っているということで、やはり問題としては中小企業が本当に大変なところへ追 い込まれているという、国の政治の結果の一つであろうと思います。 いわば国政改革としておきながら、どんどん中小企業が切り捨てられている、そういう 総合的なものがあるのかと思うのですが、いずれにしても我々のところでは本当に委託 者の要望に応えられる、いわば外国と競争しても負けない技術の向上、この辺を付けら れると思うのです。 そういう点では、家内労働業種においても、技術の向上や技術の継承、そこら辺に光を 当てた政策、方策が大事ではないかと思っています。 ○公益委員 いまのお話で、高い技術が全然評価されないとおっしゃいましたが、その理由はどうい ったところにあると思われますか。 ○家内労働者側委員 一つはやはり規制緩和がどんどん進んで、外国から安い製品がどんどん入ってくる、逆 に言うと、どうしても競争原理で、国内の業者さんも海外へ行って、日本の技術、ノウ ハウを全部向こうへ持っていく。将来的には向こうが全部取得してしまって、逆にそれ が国内を圧迫する、いわば自分で自分の首を絞めることになるのです、それが一つある。 やはり思うのは、技術が評価されない面で言うと、どうしても労働者としての保護が極 めて弱い、この面があろうかと思うのです。 例えば倒産した場合に、先だっても埼玉で大きな靴の会社が倒産し、最近も東京でメー カーが倒産したのですが、家内労働者の工賃は例えば、自己破産の場合は一切保障され ないのです。いわゆる請負だという形で。本質的には労働者なのです、手間でやってい ますから。それは全く保障されない、いわゆる一般債権、商業債権と同じですよ、労働 債権ではないとされる。そういう問題からやはりどうしても技術的な評価がきちっと担 保されない。 イタリアなどで言えば、マイスターというきちっとした評価が社会的にもある。これが 全くないです。例えば靴でも3年から4年のベテラン技術者が、時給にするとそれこそ 700〜800円という実態です。そこら辺の問題があるのではないか。 我々もただそこに安穏としているだけではなく、自らの技術の向上というのはどうある べきかを、いまいろいろ模索しているところです。 ○委託者側委員 いまのご質問に対してですが、私はやはり日本人といういわゆる社会の環境の問題、生 活環境の問題がいちばん大事だと思うのです。 例えば、昔は畳の生活です。いわゆる外人と比べて日本人の清潔観というのは、抜本的 に違っていたわけです。そういう環境が、日本人の感覚を非常に鋭いものにしているの です。それを要求するような社会の構築という面から教育をする。環境から受ける自分 の生活観というものが大きいと思います。安ければいい、と走る経済環境の問題を凌駕 するのはやはりそういう感覚の問題だと思います。 ○家内労働者側委員 大量消費、大量生産が美徳だと、アメリカナイズされた状況が、やはり問題だと思いま す。いいものはやはりそれなりのコストがかかるのです。それなりに技術が加わってな ければならない。それなりにきちんと評価をしていく、そういう状況をつくらないとい けません。そういうことでやはり家内労働というのはまさにそこら辺が放置されてきて いるという面があるのではないかと思っています。 特に家内労働だけではなくて、日本の「ものづくり」をしている中小企業に対する位置 付けが、非常にやはり政府が弱いのではないかと思っています。これはどんどん切り捨 てられています。 ○部会長 例えば畳の生活から床の生活になってしまいましたが、それをまた畳の生活に戻すとい うことは難しいですよね。 ○委託者側委員 日本人の感覚は例えばスリッパを履くなど、いろいろありますね。土足で入ってくると いうのは少なかったのですが、土足で入ってくると、その土足で入ってきた所へべたっ と座ってしまう。いまの若者は平気で道路に座ってしまうのですね。昔は道路に座ると 批判も強かったのです。小学校、あるいは幼稚園のころからそういう教育を受けていた わけですが、そういう感覚を醸成するということなのです。ですから、畳から板の間の 生活をしたから悪くなるということではないです。 ○家内労働者側委員 家内労働者が減っているということで年々歳々いろいろお聞きしているのですが、いろ いろ総合的な問題があろうと思いますが、ちょっとお聞きしたいのは、家内労働対策予 算というのは、政府として、年間どのくらい取っていらっしゃるのか。私が知っている 範囲ですと、平成10年は大体1億3,900万円程度です。 これは当時労働省の資料でもらったもので、家内労働対策に必要な経費というのは7,000 万円です。これは都道府県の家内労働審議会の開催だとか、家内労働の実態把握を行う ために調査にかかる経費というのが一つです。 それから、家内労働者の安全性に関するもの、これは労災保険の特別加入や、安全衛生 指導の実施ということで5,700万円。 家内労働者の特殊健康診断実施に対する経費として800万円。家内労働安全衛生講習会の 実施に関するいわば労働者と委託者に対しての講習の実施に300万円というのは、前に資 料をもらっているのですが、これが増えているのか、減っているのか。年々減ってきて いるわけなので、そういう点で別に予算が減ったから減るわけではないのですが、その 辺はどのような状況になっているのですか。 ○部会長 その辺事務局でわかりますか。 ○事務局 細かい数字ではないのですが、基本的には前年の水準で推移するようにしています。 ただ先ほどありました家内労働者の特殊健康診断の委託費につきましては、予算額ほど 実績が上がらない状況が続いており、実績見合いで予算を組み直していますので、この 金額については年々減っている状況です。 審議会の費用につきまして、都道府県労働局でやっている審議会が地方労働審議会の中 に統合されたということで、いわゆる地方審議会の経費でも一括計上されていますので、 平成13年度の予算からは私どもで持っている家内労働対策の経費から落ちているという 状況です。 ですから家内労働の安全者指導員の経費やいろいろな実態調査の経費などにつきまして は、基本的に前年と同様な形で要求して、認められているという状況です。 ○家内労働者側委員 できましたら部会に、そうした資料を出していただけるとありがたいです。 ○事務局 以後そういう形で準備したいと思います。 ○部会長 それからさっき家内労働者側委員から、委託者が破産してしまった場合、これは自己破 産に限らずとにかく破産してしまった場合に、債権が守られないのではないかというお 話がありました。その点について若干の動きがあるようですから、ちょっとここで事務 局のほうから少しご説明していただきましょうか。 ○事務局 現在民法によると家内労働者の工賃というのは、農工業の労役により生じる債権として、 そういう意味では債務者の特定動産の上に先取特権を有しまして、それは商法でいうの と、ちょっと違いがある状況です。 現在商法のほうでは、委託者が商法上の会社である場合は、家内労働者も商法295条の使 用人に含まれ得ると考えられているというところでして、その場合は会社の総財産の上 に先取特権が存在する。 そうでない場合については、先ほど言いました工業の労役者という形でありまして、最 後の3カ月間の賃金について、その労役によって生じたる果実や、制作物の上に先取特 権が存在するという形で違いがある状況です。 これに関して法制審議会のほうで議論がなされまして、そこでは担保・執行法制の見直 しに関する議論が行われまして、雇い人の給料の先取特権、これにつきましては商法295 条における使用人との間の雇用関係に基づく債権、そういったものと同じ内容にする方 向でどうかということで議論が行われまして、その方向で今年1月28日に担保・執行部 会において了承されて、2月5日の本審でも了承されたと聞いています。 その審議の経過の中で、家内労働者などの請負契約については、商法295条で言うところ の労働者に含まれるのかということが議論になったようで、そのときに事務局のほうの 解釈としては、家内労働者などの請負契約について商法295条の労働者に含まれ得るとい う解釈が示されまして、それに基づいて中間試案という形で意見募集がなされまして、 そのあとまた同様の解釈が示されたという経緯があります。そういうことを踏まえまし て、法務省のほうでは2月5日に了承された案につきまして、法案提出という形で準備 されているということです。 私どものほうとしても、そういった意味で、この解釈について法務省に確認していきた いと思っているところです。方向としては、雇用労働者の賃金債権の先取特権について 民法のほうでも商法と同じにしていくということですが、請負人がそれに含まれるかと いうことについては、やはり商法の解釈と同じになる。 商法の解釈でいまどういうふうに扱われているかということについては、例えば労働組 合法第3条に規定する労働者に該当するようなケースについては、そういった請負契約 の人についてもそのように考えられ得るということでありまして、必ず家内労働者全て がそういう形になるかということでは、整理されていないという状況です。 ○家内労働者側委員 労組法第3条の適用ということになりますと、家内労働者の中でどの部分が適用になっ てどの部分が適用にならない、あるいはまた在宅就労と言われるテレワークの場合はど うなのか。 それから同時に、労働者であるか否かといういろいろな労働基準の関係もありますね、 それとの関係などは、どう判断するのかを、できたら教えてほしいと思います。前から 賃確法の問題、倒産法制に関する改正事項に対しては、審議会でもその度聞いていたの ですが、できればそのような資料はこういう部会へ出していただいて、家内労働者に関 係があるので示していただければありがたいです。 というのは、人に委託をして仕事をやってもらって、万が一会社が駄目になったときに、 雇用労働者には賃確法があるのですが、委託者、職人には払えないというのは非常に心 苦しいし、悩んでいる経営者がたくさんいるのです。そういう点ではそれができればそ こら辺が保全されるし、経営者にとっても非常に経営上安心していられる感じもあるの で、是非その点はもうちょっと聞かせてほしいのです。 ○部会長 労働組合法第3条での範囲というのは、どのくらいの家内労働者に及ぶのか、ちょっと 何か資料はありますか。 ○事務局 そこのところは幅広く解釈されているということでありまして、実際に例えば昭和35年 に中央労働委員会で決定されたヘップサンダル事件というものでは、家内労働者に対し ても労働実態を考慮して、労働組合法第3条の労働者に該当すると判断された例がある のですが、やはり事例で考えていかないと明確でないという形でありまして、請負契約 でも実質、雇用契約的なものについては、労働者としての性格を帯びているということ で考えていくという考え方はあるという状況です。 ○家内労働者側委員 難しいですね。例えば個々の実態で、いわゆる家内労働者で使用従属関係なりあれば救 済の対象になる。ヘップサンダルの場合は私よく知っています、当該の組合は近いです から。あそこは法人格まで持っているのです。 それから、東京に靴工組合があったり、草履や鼻緒の組合もあるのですが、こういう所 はいずれも労働組合法に基づく法人格を持っているのです。家内労働者が個人でやって いる場合にはどうなのでしょうか。 ○事務局 私自身も今朝初めて経過を聞きまして、おっしゃるようにほとんど家内労働者一律に雇 用労働者の適用になるということではなくて、個別具体的な実態判断をすることだと思 いますが、そうは言いながら何か判断のメルクマールはやはりいるのではないかと思い ますので、関係局とも相談の上、また法務省と相談してみまして、何かそういう適用関 係がもう少し個別具体的な事例ごとの判断ということではないものができないかという ことは相談させていただきたいと思います。 立替払いはいまの仕組みではなかなか家内労働者には適用拡大にはならないと思います。 いまの倒産のときの賃金の未払いの立替払いというのは、企業が全額拠出しています労 災保険を使って、個々の企業の使用者責任を労災保険という仕組みの中で、個別の企業 に代わって立替払いしているのです。 一方、家内労働者の場合には特別加入といって家内労働者が自ら保険料を払って入ると いう道は例外的にありますが、一般的には家内労働者は、企業の使用者責任で労災保険 に入っているという制度上の整理ではありませんので、いまの立替払いの制度の中で、 家内労働者に適用を拡大して救済するというのは率直に申し上げまして、それは不可能 ではないかと思います。 ○家内労働者側委員 建前上はそうだろうと思うのです。ただ、実際に言いますと家内労働者で、委託者との 間で労働契約を結んでいたので、家内労働に従事していて、委託者が倒産し自己破産を しても、破産管財人のほうでこれは優先債権で、いわば劣後債権ではないということで、 いわゆる破産財団のほうの配当がないものの、結局それを賃確で救済したという例は何 件かあるのです。 そういう点で言えば、いわゆる一般家内労働者にはないのですが。 ○事務局 在宅で雇用関係があるケースですね。 ○家内労働者側委員 ただ、逆に言うと、現象的には在宅で労働契約を結んでいても、実際は家内労働者なの です。ただ契約上の問題です。だから、契約上の問題があればすべて救済できるのかと いう問題も出てくるのです。当然家内労働者の場合は特別加入で労災保険に加入してい るわけですので、例えば特別加入されて道を開かれている家内労働者の方の場合は労災 保険の勘定には入っているわけですから、賃確の適用があってもいいかと思います。い わゆる優先債権として認められれば、当然それは賃確の対象にならなくてはおかしいの です。当然、労働債権として認定されるのですよね。 ○事務局 そこはもう少し整理をさせていただきたいと思います。労働債権という位置付けになる のか、労働債権と同じ順位の先取特権ということの整理なのかということもあると思い ますし、ちょっと関係方面と議論をして、整理をさせていただきたいと思っています。 ○部会長 メルクマールをつくっていただけると、私もよく破産管財人をやらされるものですから、 助かります。一体払っていいのか、いけないのか困るのです。裁判所のほうもきちんと したメルクマールがないと、破産管財人から許可申請が出たのにそれにどう対応するか 困ると思うのです。 ○事務局 これまでの法務省とのやり取りでは、民法、商法という性格上行政解釈等を示すのは難 しく、裁判の個別判断の積み重ねが必要であると解されていることもお含みおきいただ きたいと存じます。 ○家内労働者側委員 それでは要望ですが、デリケートな問題はあるのだろうと思うのですが、要は家内労働 法というのはいわゆる家内労働者の無権利の状況などをどう雇用労働者に近づけるか、 いわば均等待遇の方向へなるべく持っていこうではないか、という点では日本政府もす べてに賛成をしてつくられたILOの在宅就労の家内労働契約、そういうものもあるわ けだし、倒産法制に関する法務省の、まったく同じではなくて実態的に同等に扱おうで はないか、いわば労働の対価として公正にということだから、そういう方々に対する仲 裁はあって然るべきだから、という点で言えば、その辺はむしろこの部会でも論議して、 そして、その法務省の倒産法制の改正に対し積極的に意見を出していく、というのは大 事ではないかと思います。 そのことは、別に働いている人だけがよくなればというのではないのです。使っている 経営者のほうも安心するのです。万が一払えなかったら、今度は個人的な恨みとかいろ いろ私怨が出てくるのですね。そういう点から言っても、そこら辺がやはり、安心して 経営もできるし働けるという関係というのは非常に大事なのですね。そういう点はやは り、当然家内労働者を保護するという趣旨からできている法律としても、家内労働法成 立過程においても付帯事項で、その辺が埋まるのではないかと私は思っているのです。 ○部会長 それはご意見として伺っておきます。 ○公益委員 労働者の賃金の定義の問題に入りましたので。非常に基本的な質問で、いつもこの部会 に参加しながら、当初からずっと何度か伺っている質問で恐縮なのですが、この部会を 対象としている家内労働の労働者が非常に限られたもので、そのパーセンテージがどん どん減ってきていて、その定義がいまの調査の概要の最初のページで教えてもらったわ けですが。こういう形での労働者の保護体制というのが、従来の日本の終身雇用の基幹 労働者を、また、それ以外の不安定雇用の中の、パートタイム労働ないしは家内労働の 定義に当たる者たちを、最低賃金法のような形で守っていくという、従来の労働者の保 護のあり方がいま大きく崩れてきているわけです。基幹労働者自身がアウトソーシング で、その数自体がしぼられつつあるわけですが。現実にたくさん、みんな労働者として 働いている、その労働者全体をどのように把握して、そして、この部会で扱っている労 働者はその中でどのような位置に当たるのか、ということが常によくわからない形で、 この部会に参加しているのです。 先ほどからお言葉が出ていましたように、在宅就労者であるとか、この家内労働法に当 たらない形、あるいはこの法規が当たる中に、例えば従来基幹労働者がやっていたこと がアウトソーシングで、労働者、在宅就労をとる形でアウトソーシングをされていた人 々がどれだけ入って来るのか、あるいはそういう人々が家内労働法の適用に全然ならな いのか、その辺が私いま一つよくわからないでいるのです。労働者全体について考えた ときに、この部会が対象としている労働者は何であって、そして、これからその労働者 全体の下支えをする構図、それがどういうふうにイメージされているのかについて教え てもらいたい。それから、先ほどからご議論がありましたように、ともかくマイスター 制度の中の技術の向上で、そして、そういう形で労働者の保護をしていくことのほうが グローバル化の時代の日本の労働者の保護に資するだろうと。そのお考えはそのとおり だと思うのですが、それは従来のように基幹労働者を労働の質を問わずに守り、こうい う家内労働者の場合には技能は問わずに最低工賃で守るだけという、このシステム全体 が崩れていかざるを得ないということなのだと思うのです。そうなったときに、マイス ター制度というような形で、どういうふうに労働者の保護を図るのか。これまでですと、 ある意味では労働者側の保護もある部分失われていかざるを得ないと思うのですが、そ れでもその労働者全体を守りつつ日本の産業を生き延びさせるような労働者政策のアウ トラインについてどうもなかなか見えずにいるのです。何かこの部会が対象としている ものがそういう将来像についての議論のベースになるような議論ができるのか、それと も恐竜時代が亡びていく、かつての恐竜時代のその尻尾のような家内労働という小さな 部分だけを我々は議論し続けていけばいいのか、そこのイメージがよくつかめないので す。非常に基本的な問題で恐縮ですが、何か教えてもらえればと思います。 ○事務局 なかなか答えづらいところなのですが、家内労働部会の法令上の所掌を厳密に申し上げ ますと、家内労働法の適用になっている家内労働者になります。家内労働法の適用とな っている家内労働者の範囲は、26万人で、それは製造業的な家内労働者です。これは家 内労働法制定後、ピークには200万人程おり、その人たちは形式的には雇用関係にはない が、実態は非常にそれに近かったため、雇用労働者に準じて労働条件等を保護するため に講じられた対策であります。 現在、フロッピーディスクをやりとりする場合には、物の原材料を渡して製品を納入さ せるという、物のやりとりに該当するとみなし、家内労働法を拡大して解釈をして、家 内労働法の中で保護をすることとしています。一方、在宅労働には様々な形態がありま して、いまの議論を聞いていても出てきましたが、ある会社と雇用関係があるが勤務場 所が自宅であるという者については労働基準法など雇用労働者を保護する法律の体系の 中で保護されます。しかし、そうではなく、請負契約で働いているような、また、家内 労働法の適用を受けない在宅労働者については、委託者に契約締結に当たり、遵守すべ き事項を定めたガイドラインを示し、注意を呼びかけたり、在宅労働者が、自分が持っ ている能力が在宅ワークをするうえで必要な技能としてどういうレベルにあって、それ をスキルアップするためにはどんなプログラムがあるかというようなことについて情報 提供したり、といった対策を行っていますが、家内労働法の適用の対象にするとか、労 働基準法の適用の対象にするとかというような対策は行っていません。ここの部分をど うするかというのは大きな政策課題の1つではあるというふうに思いますけど。ここで 若干のご議論をいただくことはいいと思いますが、ここが部会の法令上の所掌の範囲か らは外れるということもあります。 もう1つ、マイスターの話など、高度な技術・技能の継承の問題や社会的な評価の問題 については職業能力開発局において対策を講じていますが、雇用されている労働者が主 な対象ですから、どういうふうに議論がつなげていけるかが問題となります。  従来、旧労働省からずうっと取り組んでいますのは、雇用関係にある労働者を念頭に おいた対策だったと思います。就業形態が多様化している中で非雇用の部分が増えてき ていて、そこが広い意味での雇用機会の受け皿になっているということもありますので、 法律的な、厳密な意味での雇用関係ということではない、広い意味での就業機会といい ましょうか、雇用機会全体を念頭においた対策、そのためにどこの部分が足りないかと いうような議論はやるべきだと思っています。また、この部会の親会議である労働政策 審議会ではそういう議論もなされていますので、ご紹介をしておきたいと思っています。 ○委託者側委員 先ほどからお話しした中でも、市場経済を認めていないというのではなくて、市場経済 があるからいろんなことをやらなければいけないと、私はそう考えています。 このいまの状態が起こってしまった、こういう状態になってしまったというのは、やは り冷戦構造の崩壊からだと、こういう指摘をされている。私もそうだと思います。とに かく中国13億の労働人口が一遍に資本主義経済社会へ入って来たわけですね。もちろん その他にもロシアをはじめたくさんありますね。日本の経済はいまこの大きな変革時期 にはまってしまっているのですね。ですから、市場経済でもって我々の生活レベルとか、 あるいは考え方、そういうことがよくなるというのは、これはそのとおりだと私は思い ます。やはり基本的には自助努力なのです。ですから、政府が何とかするとか、これに 頼っていたのでは本質的な改善というものは得られないと思います。 マイスター制度という言葉が出ましたが、その制度に頼った、いわゆる既得権に頼ると いうような形では決して物事は解決しないのだというふうに私は考えるのです。だから と言って補助をしてはいけないというわけではないのです。こういう大きな変革のとき には政府が率先して、それを補う部分が必ずあるのだから、それはやっていかなければ いけないと考えます。だけど、すべて政府に任せて、それでいくということは絶対あり 得ませんから、保護するだけでは物事は解決しないということです。  もう1つは、いわゆる企業と雇用です。企業がなければ雇用というのはあり得ないの です。先ほどのお話の中でも、企業家が心配するのだと、これは駄目なのですね。企業 家は労働者を雇うといいますが、中小企業では企業と労働というのは一体なのですよ。 労働者がなくても成り立たないし、企業がなくては労働者も、それを何とかうまい具合 に調整する、既得権でもって何とかやっていこうというのは、これは大企業のやること ですよね。韓国でも問題なのは、四大財閥というのがありますね。ああいうことでは大 企業といえども絶対これから存続していきません。やはり自助努力であり、労働を雇う という中でも必ず競争条件というものがあるのだと、これを忘れてはいけないと思いま す。 ○部会長 もう1つ大きな議題があるので、もしご異論がなければ次の議題に進みたいのですが。 ○公益委員 いま問題にされているのは、一方で雇用関係があると労働者保護が非常にあるのだけど、 他方で雇用関係が変わると労働者保護が薄いという、そこの格差をどうするかという問 題だと思います。だから、それが格差であるから、むしろ家内労働とか自営業とか、そ ういう不安定な方向に労働者が流れていく、その歯止めをどうつけるかということがこ この論点になっているということを確認しておいたほうがいいのではないかと思います。 ○部会長 では次に進ませてもらいます。議事の3番目に書いてある「第7次最低工賃の新設改正 計画の進捗状況について」という議題です。では事務局からご説明をお願いします。 ○事務局 資料No.4をご覧いただきたいと思います。 「第7次最低工賃新設改正計画」は平成13年度から15年度までの3カ年計画ですが、こ のような形で各都道府県労働局で計画的に最低工賃の改正を行うことにしています。こ の色分けしていますのは、青い文字が平成13年度中に諮問と何らかの着手をしたもの、 緑文字が平成14年度中に何らかの着手をしたということで、ほぼ計画的に進行している のですが、一部黒文字のものが残っていましたり、平成13年度計画のものの中で計画が 遅れて緑文字になっているものなどが見られるところです。 この状況を集約したものが資料No.4−2です。平成13年度には56件を計画していました が、このうち平成13年度中に40件、平成14年度中に9件を処理して未処理が7件、平成 14年度に計画したものは55件、平成13年度中に前倒しで2件、平成14年度中に36件を処 理して未処理が17件、大体こういった状況です。 別枠にしていますが、適用家内労働者数300人未満というのは47件あり、平成13年度に10 件、平成14年度に14件処理しました。 各年度での処理件数の合計がいちばん右側の欄で、平成13年度はトータルで52件、平成 14年度はトータルで61件処理しています。 この中で、処理件数の具体的な内訳として、いちばん上は改正諮問実態調査の結果等を 踏まえて改正の諮問にこぎつけたものです。その下に、うち改正見送り答申ですが、こ れは改正を念頭において答申をしたものの、その後の審議の結果、今回は改正をできる 状況ではないということで、審議会で改正を見送りましょうという答申を得たものです。 3番目は廃止諮問でして、適用家内労働者数が100名を切るなどの理由によって廃止をし たものです。諮問見送りというのは、最低工賃の改正に当たっては、工賃の相場、その 他諸々、実態の調査を事前に行って、その結果を踏まえて諮問するかどうかを決めると いうことなのですけど、実態調査の結果を見たところ、改正できる状況にはないという ことで、関係の公労使の合意をいただいた上で諮問を見送ったという案件です。平成14 年度の処理件数に関しては、全体で61件処理したのですが、このうち実際に改正の諮問 をしたのは28件、廃止諮問が5件で、結果的に諮問を見送ったものは28件でした。この 諮問見送りの28件のうち、都道府県労働局からの情報収集がどうにか間に合った22件に ついて、どういった理由で諮問を見送り、また、今後どういった対応を考えているかと いうことをまとめましたのが資料No.4−3です。この諮問を見送った理由については工 賃の種類によって様々ですけど、「家内労働者数が減少している」「仕事量が減少して いる」「工賃相場が上がっていない」「類似の作業から労働者の賃金が上がっていない 」といった理由が多く挙げられています。こういった状況を踏まえまして、各労働局に おいては来年度以降、それぞれ適切な時期に再度実態調査をやって、改正の必要性につ いて改めて検討するということにしています。  今年の2月末日現在、161件の最低工賃が存在しています。これは資料No.4−4につ けています。これは公示日の順番に並んでいますが、こういった工賃がいま現在ありま す。 4枚目以降に官報のコピーがつけてあります。これは平成14年6月までに改正された工 賃については今年の秋頃に各委員の先生方に資料をお送りしています。それ以降に官報 公示をされたものについてはコピーをつけたということです。以上です。 ○部会長 それでは行政の取組み事項と関連がありますので、資料No.5、6も続けてご説明しても らえますか。 ○事務局 まず資料No.5ですが、これは家内労働者の労災保険特別加入状況です。平成14年7月末 日現在ですけど、加入者数総数1,193名でした。人数の最も多いのは(イ)のプレス、シ ャー、旋盤など危険な機械を使う作業で、次いで(ハ)の有機溶剤を使う作業、(ホ) の動力により駆動される合糸機、撚糸機、あるいは織機を使用して行う作業などに人数 が多く見られています。 特別加入の保険料は家内労働者の希望に基づいて、都道府県労働局のほうでも決める給 付基礎日額に料率をかけて決めるのですが、この給付基礎日額の分布をまとめたのがこ の資料の2枚目です。2,000円から2万円まで、これだけランクがあり、それぞれの作業 別に大体こういう感じで分布しています。 それから、資料No.6ですが、これは家内労働関係の監督指導実施結果をまとめたもので す。家内労働者数、委託者数が減少しているという中で監督指導の実施事業所数もずっ と減っているのですが、平成13年では1,010件の監督指導を実施しました。実際に監督に 入ると大体半数の事業所で違反が見られて、これは必ずしも家内労働法の違反とは限ら ないのですが、うち家内労働法の違反に関してピックアップすると、いちばん多いのが 家内労働手帳で、監督指導に入った事業所のうちの大体4件に1件は家内労働手帳に違 反が見られています。帳簿の備付けというのも7.5%ということです。いずれも数字とし てはかなり落ちてきているかとは思うのですが、いまだに違反が見られるといった状況 です。最低工賃の効力ですとか安全性基準の違反も数件見られているような状況です。 工賃の支払いに関する違反も若干ながら見られています。以上です。 ○部会長 それでは、ただいまのご説明に関してご意見、ご質問がありましたらどうぞお出しくだ さい。 ○委託者側委員 家内労働者の労災保険特別加入状況ということで、ちょっとお尋ねします。手続きの点 なのですけど、特別加入というか、これに入る際は家内労働手帳とか、何か家内労働者 であるという証明がないと入れないのですか。 ○事務局 特別加入をしようとする場合には家内労働者の団体を作ってもらい、そこが特別加入の いろいろな手続きなどをしてもらうという形をとっています。ですから、まったく個人 の立場で入るのではなく、まずはその団体の構成員ということで加入してもらう形をと っています。 ○委託者側委員 そうすると、家内労働者の団体というとどれくらいあるのですか。 ○事務局 資料No.5に加入団体数ということでつけていますが、1,193人の家内労働者の方が82の 団体のどこかに所属をして、それで特別加入の審査をなさっているということです。 ○委託者側委員 団体というと、例えば名称で言うとどういう団体があるのですか。あまり聞いたことが ないのですよ。 ○事務局 労災保険の加入のために事務組合のような形で作られるというケースがあるほか、いわ ゆる業種組合として、例えばプレスの加工業組合というような形で加入されているもの もあります。いったん労災保険の組合という形で、例えば商工会のほうでそういった組 合を結成して、それで加入団体ということでやっておられるケースが割と多く見られま す。地域によってもいろいろ差があります。 ○委託者側委員 要するに家内労働者の団体というよりは、労働保険事務組合に入ればいいわけですね。 事務組合というものでしょう。 ○事務局 はい。 ○委託者側委員 だけど、それは家内労働者で構成している団体とは限りませんよね。やはりいろんな。 普通、中小企業事業主はなかなか入れないですから、こういう特別加入制度を利用して 入っているということで、家内労働者の方もこういう形でそういう事務組合に入られて 加入していると、そういう理解でいいのですよね。何か家内労働者だけの団体があって ということではないと思うのです。 ○家内労働者側委員 基本的には、家内労働者だけで任意で特別加入団体を作るのですよ。これは基準局まで 届け出をして、そこで認められればそこが取り扱うのです。ただ、事務組合と違うとこ ろは、要するに保険で業務を代行するわけですね。家内労働だった場合、それに対する 手数料は一切ないのです。事務組合の場合、集金手数料とか事務取扱い手数料がちゃん と政府のほうから戻るわけですけど、それは一切ないのです。だから、よけいできにく いというような状況なのですね。 実態で言うと、東京の場合は東京の家内労働の担当をしている所管の所で、こういうふ うに作ればいいですよと、約款から定款から全部作って、いわゆるマニュアルを作って、 それを家内労働者団体に配って、そういう団体を一生懸命作って届けるというようなの があるのですけど、ほかはちょっとそういうのをやっていないみたいなのでよくわから ないのではないかと思います。 実態で言うと、青色申告会みたいな所が家内労働者部会というのを作って、それで、家 内労働者の団体ということで届け出をしてやっているというのはあります。 ○部会長 マニュアルがあるというのは東京だけなのですか。 ○家内労働者側委員 これは、東京の家内労働を所管している所で、当該の団体が要望して作らせて、4名ほ ど家内労働相談員が配置されていて、巡回しながら委託者団体や家内労働者の所を回っ て、入りなさいよというようなことをやっているのですね。 ○委託者側委員 だから、ここにある加入団体82団体というのは、家内労働者だけの任意団体だけではな くて、その他のいろんな団体も含めてのものですよね。 ○家内労働者側委員 私は全然わからないですけど、東京の実態で言うと。 ○委託者側委員 東京はそういうことであるでしょうけど。 ○事務局 多い例で見ますと、やはり既存の商工会とか、そういう中に○○商工会家内労働労災保 険組合とか、そういうものを作ってやるみたいな形のケースが多く見られるように思い ます。 ○家内労働者側委員 加入者団体で、木工機械を使う、仏壇または木工もしくは竹製の食器の製造または加工 という、この加入者数は昨年は23名で、今年が22名なのですね。この間、私がこの労災 保険の特別加入団体を局に申請したときには大体30名ぐらいいないと認めないと言われ たのですけど。そこら辺をもう少し緩やかにして、本省としてはそういうふうに考えて いらっしゃるのか。 それから、非常に少ないのですけど、これは大変家内者に喜ばれている制度ですね。こ れはもっと大いにPRして、本当に加入者を促進することが大事かなと思います。とい うのは、本来一般的な雇用労働となれば、労災保険は企業主が全面的に責任をもってや るわけですけど、家内者の場合は自分で団体を作って、なおかつ自分で金を集めて自分 でお金を払って、ということでやらないとなかなかできないということなのです。しか も、それも特定の業種で特定の作業に従事しないと入れない。逆な意味で言うと、危険 率が高いからそこだけ救済しましょうという政策的な意図があるのかもしれないですけ ど。そういう点で言えば、もう少しそこら辺をPRしたほうがいいのではないかという 感じがするのです。年々減ってしまうというと、制度的な問題も出てくるようになりま す。 それとの関係で、先ほど冒頭に危険有害業務の種類等々で、労災保険の加入対象以外の 危険有害業種家内者。これは昨年も出されて、今年も出されているのですが、昨年2万 1,000余で今年は1万9,000ちょっとということです。これと特別加入できる人との違い というがよくわからないのですけど、業種の、いわゆる業態の関係なのか、使う機械な のか、その辺のところ。ただ、有機溶剤を使う、革の場合は認められるけど、革ではな い場合は、人形の製造だとか金属を洗浄する場合は認められないとかあるのだけど、ど うしてそういう差異があるのかということと。もう1つ聞きたいのは、併せて加入対象 者はどのくらいいるのか。一方で、入れない人はキチッと出ているわけですよ。内職副 業に至るまで、非常に細かくキチッと出ているわけですね。単位が1人に至るまで。だ けど、こちらは出ていないので、できたらその辺を教えてほしいのです。 ○部会長 ではご質問の部分だけ、いいですか。 ○事務局 加入者に対するPRについては、どういう方が対象になるとか加入の手続をどうすると いったことをまとめたパンフレットを労働局や監督署を通じて配っております。 特定の作業に、労災保険の加入が制限されているという意見に関しては、有機溶剤の場 合は安全衛生法に基づく有機溶剤中毒予防規則で、たしか40いくつか50いくつしか対象 になっていないのですが、そういった有機溶剤を使う場合に限って認められることがあ るので、それに当たらない有機溶剤を使われている場合は労災保険には加入できません。 労災保険に特別加入できる母数ですが、平成14年7月で1万4,437人が労災保険に特別 加入か、特別加入し得る方の数として把握しています。 ○家内労働者側委員 これは作業別の明細が出ますか。あとででも、できたら詳しくいただければ。 ○公益委員 労災保険との関連でお伺いします。資料No.3−3で、表の11、12、13を見ると「医療 費(見舞金)」というのがありますが、これはどういう意味ですか。労災のことを言っ ているのか、あるいは単なるほかの一般的な病気に対するものなのか。それから、いろ いろと危険業務の委託内容や安全性対策とかありますが、実態は鉛を扱ったり有機溶剤 を扱ったり、粉じんを扱ったりする職場があるわけです。そういった実際の職業病の実 態の把握はできているのですか。それは、労災保険の支払いから考えればいいというこ とでしょうか。 ○事務局 医療費見舞金については、あくまで委託者の側が工賃とは別に支払うものですので、労 災保険の適用を受けて保険料が出たものは入らないと解釈しています。あくまで委託者 自身が払ったものということです。 実際に有機溶剤や鉛で傷病が出ているかの情報については、いま現在は手元に資料を持 っていないのですが、特別加入という制度もあるのでその給付がなされたかどうかとい うことで、家内労働に限った形でピックアップができるかどうかを労災の担当課にも問 い合わせをしたいと思います。 ○公益委員 いろいろと違反をしているような所もあるようですが、結局そういうものが徹底しない 限り疾病の発生をなかなか防げないことになると思うのです。その辺がうまく機能して いるのかどうかを教えていただければと思ったのです。 ○部会長 あとでお調べください。 ○公益委員 前回の労働者保護の話と関連するのですが、労災保険に入っている人数が非常に少ない し、対象になっている人も少ないということで、労働者保護がほとんどない状態だとい うことが非常に気になる。ここだけというのではなくて、雇用者であれば保護されるも のが全くここでないという状況について気になっているのですが、どういった労働者保 護が実際にはあるのか。組合としてはそれに対して、もうちょっとなんとかできるのか を教えていただきたいと思います。 ○事務局 まさに、そのために家内労働法が制定されたのだと思うのです。たしかあれはヘップサ ンダルの有機溶剤の事故があって、それで家内労働者が亡くなったことがあって、それ がきっかけで家内労働法というのができたのです。だから、特に製造業型の業務ですか ら、いまの家内労働法はカバーをしている業務というのは。家内労働法を見ていただく とわかりますが、柱になっているのは最低工賃と安全衛生と労災の特別加入ですね。も ちろん最低工賃の話はありますが、家内労働対策の中心は健康と安全の保護、保障が対 策の中心であったのです。ですから、今日の説明で情報が不足したところは追ってお出 ししたいと思います。少なくとも社会的な問題になるような、家内労働者の疾病の問題 や事故の問題は最近は全く聞いていませんので、問題はないと思いますが、データに当 たって確認をしたいと思っています。 ○公益委員 そういった安全衛生だけでいいのか、それとも倒産の問題などいろいろと出てきていま すので、もう少し全般的な意味での労働者保護を見直す必要が出てきているのか、そこ ら辺はどうですか。また後ででもいいのですが、そういうところについても考えていか ないと、家内労働法は在宅勤務とかいろいろな人に影響を及ぼす法律ですので、ここで ちゃんとした保護ができないということはこれから広がるほかの自営業についても、労 働者保護ができないと。手厚い保護をする必要はないとは思いますが、最低の保護とい うのは働いている者すべてにとって非常に重要なものですので、そこについて家内労働 法の持つ意味というのは、ただ単に家内労働者だけを保護するものではなくて、これか ら広がりつつある委託労働者や独立自営の人たちへの波及効果を考えて、労働者保護の 問題というのは今後考えていくべきなのではないかと思いました。 ○家内労働者側委員 関連するのですが、監督指導実施結果というのがありますが、平成13年が1,010事業所 ですが、対象の中の臨検率というのはどのくらいになっているのか。この違反事例なの ですが、家内労働手帳の違反というのは手帳の交付をしていないなどかなと思いますが、 もう少し詳しく教えていただきたい。あとは事業所を監督しているということだと思い ますが、家内労働者の場合それぞれ仕事をしているのは個々人の家庭だったりすると思 うのですが、そういうところのチェックはあるのかないのかを教えてください。 あと1点は別のことなのですが、最低工賃の諮問見送り決定状況を今回は22件について 出していただきました。いままでずっと、こういうものを出してくださいとお願いして いましたが、出していただいてありがとうございました。確認ですが、いまおっしゃら れた監督指導実施事業者数に対して、全体というのは委託者数全体の中での割合でしょ うか。それとも監督という観点からの全体なのでしょうか。 ○事務局 委託者の中です。それから監督という観点から言いますと、事業主というか委託者に対 してという形であって、個人の労働者のそういう実態を調べるというのではなくて、委 託者のほうがそういった家内労働手帳を交付しているかとか工賃の支払いをちゃんとし ているかとか、そういう観点から見るという監督です。 ○家内労働者側委員 委託者のほうの安全衛生基準というのは、どう調べているのですか。 ○事務局 家内労働法の第17条というのは、委託者が家内労働者に対して機械を貸与するとか、原 材料を支給するとした場合に、貸与する機械についてはきちんと安全措置を講じた上で 貸与してほしい。原材料を提供する場合には、危険有害性などについて十分な情報を与 えてほしいという内容でして、それに関して法令で求めていることをやっていなかった というものです。家内労働者の作業場は委託者の管理監督下にありませんので、あとは 家内労働者自身が安全な作業をしていただく形になっています。 ○委託者側委員 資料No.6で、最低工賃の効力というのは、工賃に違反したという意味ですか。そうだと して、平成13年度は7件というのは大分減っているのです。昭和61年はパーセンテージ ですか。 ○事務局 そうです。 ○委託者側委員 2.6%、これも減っているのです。違反が少なくなるということは、景気が悪くなってく ると、この工賃の支払いが良くなるのですか。昭和61年は、第二次オイルショックか円 高不況かのどちらかです。こういうことは何か理由があるのですか。 ○事務局 あくまで結果の数字でして、どうしてトータルとしてこういう数字になったかは、いま の段階では解釈をいたしかねます。 ○委託者側委員 景気が悪くなると倫理観が発達して、倫理観が良くなってこういう事件が少なくなると 考えたほうがいいのか、世の中の推移を知りたいものですから。それはいいです。 ○公益委員 大分減っていますよね。 ○委託者側委員 それは指導がいいという意味ですね。悪いことをする会社はつぶれたということです。 ○公益委員 家内労働者の場合は勤続を積んだり特殊な技能を持っている場合には、最低工賃とは別 にかなり高給で処遇されているのですか。やはり賃金のバリエーションというか、ばら つきがかなりあるというか。 ○委託者側委員 大きいですね。 ○公益委員 これは、あくまでも下支えとなっている数字という意味でしょうか。 ○事務局 法律で定まっていることに対して違反しているかということになるので、最低基準をち ゃんと満たしているかという観点からになります。 ○部会長 次に、資料No.7のご説明をお願いしたいと思います。 ○事務局 資料No.7は、前回の家内労働部会のときに、家内労働等実態調査については平成13年 度は家内労働を対象とした調査を1年間お休みをさせていただいて、在宅就業の調査を やらせていただきますというご説明をしましたので、その結果を取りまとめて平成14年 11月に記者発表したものを、参考としてお付けをしています。在宅ワークを対象とした 国として初めての調査でして、発注側と在宅就業者側の需給のミスマッチといいますか、 本当に優秀な人をどうやって探すかで苦労されていることが見られたという結果が、い ちばん特徴的だったかと思います。先ほどもこの部会の所掌事務の話が出ましたが、直 接の守備範囲ではないのですが、家内労働実態調査の枠を利用させていただいたことも ありまして、今回ご報告として資料を付けさせていただいたところです。 ○部会長 いまのご説明に関して、ご意見ご質問はありますか。このミスマッチを解消していくた めには、どうすればいいのですかね。 ○家内労働者側委員 参考になるかどうかですが、東京では普通の家内労働者に対しては東京都の家内労働分 室を作りまして、そこで委託者からの情報と家内労働者がそこに仕事情報を求める。そ の関係で電話やファックスや、いまはインターネットで。ただ家内労働者がパソコンを 持っていない人が多いので、なかなか大変なのですが。現業の家内労働者は職人ですか ら、なかなかそういうものに優れないというので、そこら辺がミスマッチのないように、 スポッとできるものをパッというようなことはしていますから、そういうのを今後考え たらいいのではないかと。 ○事務局 そしたら宿題で後日。 ○公益委員 何かトラブルがあったときの解決法ですが、何か対策や方策があるのですか。在宅ワー クのほうで。 ○事務局 こういった形で聞いているわけですが、それに対してはガイドラインという形で周知は して、トラブルが生じないように書面でやり取りをしたほうがいいでしょうとか、そう いうことをしているわけですが、そのあとをどういう形でするかというのは個別それぞ れのところでやってくださいという形になるかと思います。 ○事務局 具体的には「21世紀職業財団」という公益法人があるのですが、そこに在宅ワークのホ ームページがありまして、相談支援事業というのもやっているのです。行政ではありま せんが公益法人としていろいろと情報提供をしたり、もし深刻なご相談であれば例えば 労働基準監督署が処理するわけにもいかないので。よくご紹介しているのは消費者行政 の窓口をご紹介して、そちらで解決していただいたりというように、どこでご相談して いただくのがいいかというのをご相談内容に応じてアドバイスしているような、そうい う事業はやっています。 ○公益委員 そういったところで何か問題があったときに、相談できるような、広く知らせることも 重要なのではないかなと思いました。 ○事務局 話題になっているトラブルには2種類あるような気がするのです。そもそもこういう在 宅就業というか、そういう委託でビジネスというか仕事に入る前の段階で、いわゆるイ ンチキ内職と言ったら変ですが、いまのこういう時代なので、こういう仕事をやりませ んかということで高い機器や高い教材を与えて、これをマスターするといい仕事をあっ せんしますよというトラブルが結構多くて、そういったことに関しては消費者行政とい うことになると思います。あとは実際に契約して、例えば仕事の出来具合に対して満足 いかなかったとかの話になると、なかなか中に入り込んでやり取りするのは難しいかな ということなので、事前防止という形でそれぞれ契約や仕事の発注段階で、ちゃんと話 し合いをしておいたほうがいいですよということかと思います。 ○公益委員 フロッピーのやり取りでというのはなんとか家内労働法にかけようということでしたが、 いまは出版社とのやり取りでフロッピーはすっかりなくなって、メールでやり取りして いるのですが、そうなってしまうと要するに保護のかけようはない状態になっているわ けですか。 ○事務局 家内労働法でいいますと、物品の加工などの形になるので、ギリギリそのフロッピーに 対して加工しているという読み方をしているわけなのですが、この調査を見てもこうい う情報通信なので、メールでやり取りということが多いのかなとは思ったのですが、実 際のもので見ますと結構フロッピーのやり取りといったものも多く出ているという結果 は出ています。 ○家内労働者側委員 そうしますとフロッピーの場合までは、長野の場合はワープロの最低工賃が決まってい ますよね。このときに出されている基発184号というのがあるのですが、これは長野労働 基準監督署や局がこうしたものを加えたと思うのです。本省の基準としてはこれを認め ているのかどうなのか、いまのは受けるのかどうか。いまのお話で例えばテレワークの 場合に、いわゆる家内労働法の範疇に入るテレワークと入らないテレワークがあるとい うふうに理解することになるのですが、それでよろしいのかどうか。その辺の問題が1 つあります。 もう1つは、平成12年3月の在宅就労問題研究会報告では、「在宅就労」に関するアン ケート調査結果が出されています。研究会はここが所管ですが、当時は女性労働課が所 管をされて、家内労働部会にも報告がありました。一方、今回の平成13年度調査は、「 在宅就業」となっています。厳格に言いますと、就労と就業は大きく意味合いが違って くるのです。かつては就労だったのが就業になっている。どういう意味合いがあるのか がちょっとよくわからないのです。いわばグレーゾーンの家内労働、在宅就労といいま すか、ここのところを別に全面的に保護しろという主張ではないのです。基本的権利と してのものを付与すべきだという立場なのです。当然自力自助でやるのは当たり前なの です。家内労働者は自力自助がなかったら、こんなのは防げないのです。いくら言われ てもちゃんとした技術を持って、ちゃんとした能力を持っていないといいものを作れな いのです。当然のことです。 しかし、その自助自力でやったものが、基本的権利がきちっと担保されない。要するに 働いても、基本的労働者としての賃金、工賃が保障されない。もっと言えば仕事が非常 に不安定ですから、収入がないときは全く何の保障もない。失業保険はもちろんないわ けです。退職金ももちろんないし、ボーナスもない。年金も国民年金だけですから、も らえるかどうかという話にもなっているわけですが、そういった意味でいえば別にそれ を手厚く保護しろと言っているわけではないのです。そういう無権利に近い状況で働い ている人を保護するのであれば、家内労働法でそういう保護しているのだというのであ れば、もう少しそれを雇用労働者に認められている基本的権利に近付けるべきではない か。そういう点でいえばILOの家内労働条約に日本政府も賛成して、私も散々言って いるのだけれども、これは採択されたわけです。日本政府が賛成するのは珍しい。パー トのときは賛成しなかった。 これは日本ILO協会の理事をやっている木村先生が日経新聞に出しているもので、ち ょっと古いのですが「テレワークにILOの指針」が日経連に出されているわけですが、 国内法の見直しが必要だと学識経験者というか、この方は専門家でILO総会へも自費 で参加したらしいのですが、そういう点ではそこをちょっと検討する必要があるのでは ないですかね。そうしないと、また家内労働法よりさらに低位のテレワークの在宅就労 の状況を放置することになると思うのです。自助自立といっても、全く自助自立なので す。ガイドラインを見させてもらいましたが、家内労働と同じようなことが書いてある のだけれども、何もそれに対する強制力がないのです。道徳的なことがずっと書いてあ って、悪いことはしないように、働いたらちゃんと工賃を払うという程度のものです。 それでは効力がないと思うのです。そこら辺でもう少し踏み込んだところでいうならば、 これはここでやるものではないのだと冒頭で言われたからあれなのですが、その辺も含 めて検討しないと本来の問題の解決に迫るところに論議がいかないのではないかと思う のです。これは要請です。 ○事務局 最初の「フロッピーに加工」という部分なのですが、単にフロッピーディスクを使って いればいいという問題ではなくて、かつて、印刷業の和文タイプの作業が家内労働法の 適用を受けていまして、ワープロの普及でそれがワープロに移ってきたときに仕事のや り方というか、道具が変わっただけで家内労働法の適用を受けなくなるのはよくないと いうことで、基本的には原稿をそのまま打つような文字入力の作業でフロッピーに納め て納品するような場合について、それはフロッピーを加工したことになるという解釈を して家内労働法に適用しているということです。ですから一般の在宅ワークでデータ入 力の作業などをやって、それをフロッピーに入れてというものは和文タイプで原稿を作 ってというのと作業の性格が違いますので、それについては現在も家内労働法の対象に はなっていません。 ご指摘は、大変大きな問題提起だと思うのですが、難しさは在宅ワークが抱えている問 題と製造業型の家内労働の問題は、必ずしも一緒ではないのではないかという気持がし ています。いまお配りした資料No.7の10頁を見ていただきますと、在宅ワークをやって らっしゃる方に「いま何に困っていますか」というアンケートをしているわけです。図 表の5−3です。そうすると「仕事がない」「単価が低い」、これは行政としてどうい う介入の仕方、保護の仕方があるかというとなかなか難しいところです。その次にレベ ルアップや能力の問題が出てきていますが、これは少しやれるかなという感じはありま した。21世紀職業財団のホームページにアクセスすると、まずは自分の能力診断を自分 でやれるシステムを開発していまして、そのレベルアップするためにはどういう教育の 機会があるかの情報提供などもやり始めていますので、まだ端緒についたばかりかもし れませんが、このあたりは支援をする仕方をもっと検討すればいいのかなと思います。 ただ、在宅ワークは、安全衛生の問題や労災の特別加入の問題ということでもありませ んので、家内労働対策とは問題の素材が違うのかなと。問題がないとは申し上げません が、違うという感じが個人的にはしています。いずれにしろ、まだ厚生労働省として本 格的な検討ができているわけではありませんので、今日は実態調査についてはご報告だ けをさせていただきましたが、これからどの方向で検討すべきかをまた専門家の先生方 のご意見を頂戴しながら考えてまいりたいと思います。 ○家内労働者側委員 現象的にはたしかに違うと思うけれどもテレワークも、従来の伝統的家内労働者も現実 は同じだと思います。平成8年11月に労働大臣官房政策調査総合政策課が出したテレワ ーク推進会議最終報告で、「テレワークの普及推進に向けての今後の取り組み」として、 テレワークに関する情報の積極的な提供は政府の審議会でも言われているわけです。 そういうところをきちっとすること。もう1つは、いずれにしてもテレワーク推進の場 の継続的な設置が最後に言われているのです。そういう点からいっても在宅就労のテレ ワークと、従来の家内労働と国際基準としてのグローバル化が言われている中、ILO では、ここをきちっと統一して捉えてやっているわけですよね。経済だけはグローバル で労働だけは全く日本的というのでは、非常にバランスを欠くのではないか。そこら辺 をもう少し踏み込む必要があるのではないかということを意見として出します。 ○事務局 おっしゃったことはもっともなのですが、実態としてILO条約は雇用労働者も含んで おります。 ○家内労働者側委員 雇用労働者を含んでいれば、労働基準法でいいのです。問題ではないです。 ○公益委員 雇用関係とみなせるかどうかというところも重要で、それをみなして従来の法律でカバ ーしようという動きもヨーロッパの中にはありますから、そこも含めて考えなければい けない重要な問題だとは思います。 ○事務局 そういった面で雇用の関係があるケースとそうでないケースと、そういう場合や請負的 な場合でも自営業的に、自分でかなり企業的にやってらっしゃる方といろいろなケース があるので、こちらとしてもこの調査は雇用でない方たちを対象にどういう実態がある かということで、実態を探るというので1歩進んだことを報告させていただいたところ です。 ○委託者側委員 図表の5−3の「困っていること」で、「忙しすぎる」「体力的にきつい」とあります が、ソフト関係をやっている人たちが勤めて、徹夜は常識なのです。ですから、そうい う問題と絡めて「これはきついんですよ」というレベルというか、仕事の内容について 実態をきちっと教えてあげるとか指導するとかは、いちばん大事だと思うのです。これ がわからないとやってみたけどという。最近、買わされたりして騙されている人がたく さんいるでしょ。ああいう悲劇が起こりますから。それだけです。 ○部会長 それでは時間がまいりましたので、本日の部会はこれで終了とします。本日の署名委員 は橋本委員と丸山委員にお願いしたいと思います。ご協力をありがとうございました。  資料照会先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課最低工賃係(内線7879)