03/03/03 第15回医療安全対策検討会議議事録              第15回医療安全対策検討会議                    議事録                         日時 平成15年3月3日(月)                            16:00〜                         場所 厚生労働省9階省議室 ○森座長  定刻になりましたので開催いたします。第15回医療安全対策検討会議です。ご案内を 差し上げたところ、年度末を控えて大変お忙しい中、天候もこのような具合ですし、遠 方からもお出かけいただいて、どうもありがとうございました。よろしくお願いいたし ます。  本日の議題は、お知らせしているとおり、「医療に係る事故事例情報の取扱いに関す る検討部会」、その部会でのご検討の状況を伺って、私どもとしても意見があれば申し 上げるということです。できるだけいろいろなご意見を頂戴したいと思います。それが 本日の主題ですので、よろしくお願いいたします。  現在15名の委員の方にご出席をいただいています。まだ1人、2人お見えでない方も いますが、15名ということで進めさせていただきます。  実は児玉委員から辞任したい旨の申し出がありました。ご本人の意向を尊重すること が第一であるとして、事務局でもそのような了承をされたようですので、皆様方にもご 報告しておきます。  議事に入りますが、まず事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○宮本専門官  事務局から資料の確認をさせていただきます。資料1が、医療に係る事故事例情報の 取扱いに関する検討部会の、「これまでの議論を踏まえた具体的な取組みのイメージ (案)」になります。資料2が「医療事故情報の活用システムのイメージ(案)」で す。資料3が、「これまでの議論の整理(案)」になります。以上、資料1〜3が医療 に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会の関係の資料です。  資料4ですが、ヒヤリ・ハット事例検討作業部会における、医療安全対策ネットワー ク整備事業、ヒヤリ・ハット収集等の改善に向けた検討状況についてという資料です。 資料5が、医療安全対策ネットワーク整備事業、第5回集計結果になります。最後に参 考資料として、医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会のこれまでの開催状 況という資料を付けています。以上です。 ○森座長  議事を進めます。本日の主題は医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会 の、現在の検討状況について、あるいは中間的の結論めいたものについてご報告をいた だき、私どもからいろいろと感想なり、意見を申し上げることです。「事故」という言 葉の解釈もいろいろあろうかと思いますが、ここでの検討に当たっては、いわゆるヒヤ リ・ハット事例が中心であった模様です。そのような例の収集などを心掛けている、医 療安全対策ネットワーク整備事業なるものが現存し、活動しています。既に何らかの実 績もお持ちのようですから、そちらの状況を伺うことは大変参考になると思うので、ま ず医療安全対策ネットワーク整備事業についてご説明をお願いして、もしご質問なり、 ご意見があれば、それを済ませましょう。そしてその後、本番の部会の検討状況をご説 明願い、ディスカッションをしたいと思います。  何か議事に入る前に何かご発言があれば伺いますが、よろしゅうございますか。それ では医療安全対策ネットワーク整備事業について、事務局のほうからご説明をお願いい たします。 ○宮本専門官  お手元の資料4をご覧ください。資料4「ヒヤリ・ハット事例検討作業部会における 医療安全対策ネットワーク整備事業の改善に向けた検討状況について」という資料で す。まず医療安全対策ネットワーク整備事業の現在の体制についてご説明いたします。 資料4の4頁の図をご覧ください。まず左側の「現在の体制」というところを簡単にご 説明いたします。現在の体制を示したものがこの図ですが、医療機関、いちばん下にあ る、特定機能病院、国立病院・療養所、国立高度専門医療センターのほうから、情報の 提供をいただいています。  情報提供をいただいているカテゴリーとしては、大きく3つあります。その上に書い ているように、全般コード化情報というもの、2つ目が重要事例情報、3つ目が医薬品 ・医療用具・諸物品等情報ということで、この3つのカテゴリーに分けて情報収集をし ているところです。  この3つの情報についてですが、同じく資料4の9頁以降をご覧ください。参考とい うことで「現行の医療安全対策ネットワーク整備事業の収集フォーマット」というのを 付けています。10頁からいちばん最初の全般コード化情報というカテゴリーのコード表 を付けています。20頁まであります。このようにコード表を作って、発生したヒヤリ・ ハット事例全般について、コード化をして情報をいただいています。  2つ目の重要事例情報ということになりますが、21頁にそのフォーマットを付けてい ます。この重要事例情報では、それぞれの医療機関で発生した事例のうち、他の医療機 関にも情報提供したほうがいいのではないかと思われるような重要な事例について、記 述で情報をいただいています。  22、23頁が3つ目のカテゴリーで、医薬品・医療用具・諸物品等情報のフォーマット になります。このカテゴリーでは医薬品、医療用具、諸物品など、ものの要因で発生し た事例について、その物の名称等も記述の情報でいただいています。  以上が現在のヒヤリ・ハット事例の収集の体制ですが、同じく資料4の3頁をご覧く ださい。先ほどご説明したような体制で、平成13年の10月から収集を開始したところで すが、昨年4月にとりまとめいただいた、医療安全推進総合対策の中で、このヒヤリ・ ハット事例の収集についてもご提言をいただいたところです。この3頁に抜粋を付けて います。真ん中に下線を引いています。「事例分析的な内容については、今後より多く の施設からより的確な原因の分析・検討結果と改善方策の分析・検討結果を収集する体 制を検討する必要がある。また定量分析的な内容については、より精度が高くかつ効率 的に収集できるよう、あらかじめ決められた医療機関から報告する体制(定点報告体制 )の構築などについて検討する必要がある」ということでご提言をいただいたところで す。  このご提言いただいた内容に基づいて、収集体制の変更等を検討することになって、 同じく資料4の1頁目に付いている「ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」というものを 昨年7月に設置いたしました。このヒヤリ・ハット事例検討作業部会においては、2番 の検討事項のところにあるように、収集されたヒヤリ・ハット事例の分析及び改善方策 の検討に加えて、(2)にあるように、医療安全対策ネットワーク整備事業によるヒヤ リ・ハット事例収集方法等に関する事項ということで、収集体制の変更についてご検討 いただいたところです。  その検討いただいた結果が、資料4の4頁で、先ほどの横表のところです。その右側 の「今後の体制(案)」というところが、収集体制の変更後のイメージの図です。まず 体制の変更としては、事例を報告していただいている医療機関の対象を全医療機関に広 げるということが1つ目です。2つ目の変更は、その中で記述情報として収集していた 重要事例情報と、医薬品・医療用具・諸物品等情報を、1つのフォーマットに変更し て、「記述情報」という形で、全医療機関からご報告をいただくという体制に変更する ことを考えています。  さらに、全般コード化情報というコードでいただいている情報については、その精 度、定量的な分析を行うので、精度を上げるために、特に定点ということで報告してい ただく医療機関を定めて、そこからご報告をいただく体制を考えております。以上が医 療安全対策ネットワーク整備事業において、収集体制の変更を考えている部分の説明に なります。  続いて、資料5をご覧ください。これは本年2月13日にヒヤリ・ハット事例検討作業 部会に報告した、ヒヤリ・ハット事例収集の第5回の集計結果になります。現在どのよ うな形で集計結果を出しているかという点について、簡単にご説明いたします。現在の 集計結果の主なものについてご説明いたしますが、まず資料5の1頁をご覧ください。 この第5回の集計結果では、1番の1)にあるように、平成14年7月1日から9月30日 までの3カ月間に発生したヒヤリ・ハット事例に基づいて報告されたものを集計したと いうことになります。  その報告された事例の数が大きいものは4番にあり、全般コード化情報として8,375 事例、重要事例情報として583事例、医薬品・医療用具・諸物品等情報として201事例を ご報告いただいたという結果です。  それぞれのカテゴリーの集計の結果のイメージですが、9頁をご覧ください。9頁以 降が全般コード化情報の集計結果です。9頁以降をご覧いただくと、グラフと表が載っ ています。全般コード化情報については、このよう形で統計的集計を行って、結果を報 告しているところです。  次に重要事例情報の集計結果の報告ですが、45頁以降をご覧ください。45頁以降が重 要事例情報の分析結果になります。重要事例情報は記述で情報をいただいていますが、 48頁にあるような形で、医療機関のほうから情報をいただいています。こういう形でい ただいた情報に対して、49、50頁にあるように、専門家からのコメントということで、 それぞれの事例について、さらに改善策等に関するコンメントを付けて公表していると いうことです。このような形で、重要事例情報は公表しております。  その重要事例情報として報告された全事例は105頁以降に付けています。105〜145頁 までが重要事例情報として報告された事例の一覧です。  最後になりましたが、医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析についてです。これは 147頁以降です。147、148頁が集計の結果の部分です。149頁以降が、医薬品・医療用具 ・諸物品等情報として報告された情報の一覧になります。このカテゴリーについても、 こういう形で一覧として結果を公表しているところです。以上が、医療安全対策ネット ワーク整備事業、ヒヤリ・ハット事例収集等事業の概要の説明になります。以上です。 ○森座長  以上がご説明です。現在すでにかなりの成果を挙げておられ、将来なお継続、万事い い方向に変えていこうと、そういう意図をお持ちのようですが、いかがでしょうか。 ○井上委員  要因を分析されているわけですが、要因分析の手法というのは基本的にはどういった ものを使われているのでしょうか。  もう1点は、改善策が示されていますが、「防止マニュアルの徹底」と書いてあるの ですが、こういうのはもう少し具体的に、どういうふうに防止マニュアルを使ってどう するのかという、具体的な記述方法は今後できないのですか。 ○医療安全推進室長  まず分析手法についてですが、特にただ1つの方法ということでお示しはしていませ ん。ただ、いろいろな情報に馴染んでいただくことが重要ということから、現在、厚生 労働科学研究の中で分析方法、どのようなものがどのように適応されているのか、実際 に分析をなさっている方たちに事例集的に作っていただいて、それを普及すべく最終的 なまとめに入っているところです。こういうものを普及していきたいと思っています。  2点目ですが、ご指摘のように、結論としては原因として「確認不足」ということが 多数見受けられますが、このヒヤリ・ハット事例検討作業部会においても、もっと深い 背景要因や原因を分析して、それを明らかにする必要があるということから、それにつ いて専門家の意見もいろいろなところに書いてありますが、こういう分析が必要ではな いかということで、単なる確認不足ということで終わらないような、どうやって仕組み というか、システムを改善できるのか、その辺のことを分析していただけるように現場 の分析をされている方々に、情報提供というか、普及啓発を図っているところです。 ○井上委員  例えば薬剤の取り間違いという同じようなことが起こったとしても、看護師が取り間 違えたときと、薬剤師が取り間違えたときとか、職種によって取り間違いが起こった原 因の分析は、分析手法が異なってくると思うのです。一応科学的に分析をするのであれ ば、各職種ごとの統一的な分析手法を今後確立していくことが大事かなと思っています ので、ぜひその点の検究をしていただきたいと思っています。  それから、その対策も具体的な内容を、できれば今後詳しく書いていただいたほう が、より現場の役に立つものになるかと考えています。 ○全田委員  資料4の4頁で、従来にさらに拡大されて全医療機関を対象になさるということは、 極めていいことだと思います。具体的には資料5の1頁を見ても、返答をした施設で89 という大変な数例が報告されています。そういう中で定点方式を取るというのですが、 具体的にはどういう定点方式を取るのでしょうか。 ○医療安全推進室長  ただいまのご質問ですが、今後改善していく上で、定点でする部分と、全医療機関に 拡大する部分と2つに分かれてきます。資料4の6頁から始まる「事例の分析」につい ては、すべての医療機関を対象に収集したいと思っております。  資料4の11頁から始まる、全般コード化情報については定点方式で集めたほうが精度 がいいのではないかというご指摘をいただいているので、定点方式にしていきたいと 思っています。この定点の選び方については、まだ検討中で、どのような形でいくつく らいやったらいいのか、これはいろいろと統計学的な方法と同時に、ご協力いただける 病院を募るという側面もありますので、そういう面から現在ヒヤリ・ハット部会におい てご検討をいただいているところです。平成15年度内には定点化できるようにしたいと 思っているところです。 ○堺委員  資料5の1頁をご覧ください。ここに、この3カ月間で報告をしていただいた施設の 数が、265施設中89施設となっています。前に年間の収集例で265施設中180弱、3分の 2くらいだったと思います。しかし今度の3カ月間では3分の1の施設からの報告と なっていて、これが実際に自分のところの病院の状況を見ると、この3分の1に減った 理由がわかるような気がするのです。  3カ月ごとにフォーマットを切り出す作業というのは、結構事務作業があります。 せっかくのこのシステムですので、ぜひ参加の施設には十分な報告をお願いしたいと思 いますし、こちらの検討部会のほうで今後どういう頻度で情報を収集するのがいちばん いいかという、そういう後調査も各施設に問合せをしていただければということを希望 いたします。 ○医療安全推進室長  正確な数字を覚えていませんが、年間を通したときも全般コード化情報にご協力いた だいたのは176施設にご協力いただいています。ご指摘の点については、これから対象 となっている病院にアンケート調査等でいろいろと調べたいと思っております。 ○森座長  少し大げさなようですが、この事業の目的というか、重点について伺いたいのです。 これからもずっとこういう形で収集を続けていかれると、当然こういうミスがあった、 こういうことが起こったといった事例は蓄積され、表になるなり、どのように推移した かを数字が示します。ただ、より重要なのはそのような記録を取ることではなく、それ を将来どのように活かすかということだと思うのです。  まず3カ月の実績として1万例が集まっています。そうすると、これが10万例になる のはそう遠い先のことではありません。そういう事例が集まってきて、それを解析、分 析して、将来に活かすということから考えると、例えば10万、20万という数が集まれ ば、そこから先をさらに重ねていっても、ごく僅かなその時代、その時期による変化は あるとしても、全体に関しては大体最初の10万例なり20万例で、経験的な意味では相当 の目的を達してしまうのではないかと素人なりに考えますが、そのようなことはないで すか。 ○医療安全推進室長  事務局からお答えするのが適切かどうかわかりませんが、これまで集めているところ では、数字のデータに関してまだ1年ちょっとです。1年ちょっとの状況を見ると、年 間でのサイクルが少しありそうだというようなところがわかってきております。これが 今年だけの影響なのか、毎年同じような傾向なのか、もう少し集めてみないとわからな いかというのが1点です。  もう1つは、どこで間違いが起こるかということに関しては、これがまさに教訓とし て活かす上でより重要な部分に当たるのではないかというご指摘もいただいておりま す。この部分に関しては、実は重要事例の部分について、今回も500例ほど集まってい ますが、まだまだその傾向を把握するというよりも、一体何が起こっているのか、どう いう原因なのかの分析等を深めていただく必要がある段階で、まだ一定の傾向というと ころまで申し上げる状況にはなっていないのではないかと思います。  したがって、もう少し見ると、座長がご指摘のような、大体全体の傾向が落ち着くの か、それとも事故というのが、新しい体制を組めばまた新しい事故が起こっていくとい うようなことになるのか、もう少し様子を見ていく必要があるのかなと、事務局のほう は思っております。もう少しいろいろな分析をなさっている先生方は違うご意見かもし れませんが、ヒヤリ・ハットから見ると、そのような感じがしているところです。 ○森座長  私が言ったのも、今日もうすでに十分だという意味ではなくて、これからしばらく時 間が経ち、症例が集まってくると、その辺りである意味の飽和に達するというか、十分 なときがくるのではないかということを申し上げました。ありがとうございました。 ○堺委員  自分の所属している組織だけのことですので、全体とは違うかもしれませんが、私の 受けている印象は、これは継続すべきだということです。というのは、出てきた結果を 分析して、その現場に戻して、そこで改善策を講じてもらって、それをまた全体に伝え てということを繰り返していると、件数自体は大きな変化はなくても、中身がだいぶ変 化してきていると私は感じています。その意味では、これが全国で同じ動きになるかど うかはわかりませんが、そういうことがあるので、やはり継続して観測していくという ことが必要なのではないかと思っております。 ○森座長  それではこの、医療安全対策ネットワーク整備事業についてのご報告は、これでひと まず終わりとします。いつでも必要とあれば前に戻って、ご質問なり、ご意見をいただ きたいと思います。  次に、今日のいわば中心ともいうべき、部会の検討状況なり、当面のお考えを堺委員 からご説明願えますか。 ○堺委員  お手元の資料1から資料3まで、それと資料のいちばん最後の参考資料があります が、この4つの資料をご覧いただきたいと思います。  まずいちばん最初に、資料のいちばん最後の参考資料「医療に係る事故事例情報の取 扱いに関する検討部会の開催状況」です。これまでに8回開催して、現在は議論のとり まとめに入っています。この一環として前回の第14回の医療安全対策検討会議、以後検 討会議と省略させていただきますが、ここでも検討部会の起草委員長の前田委員からご 報告させていただいて、いろいろとご意見を頂戴したところです。本日もいろいろなご 意見を賜りまして、それをまた検討部会のほうで議論を進めさせていただく礎にしたい と考えています。  お手元の資料1から資料3ですが、主に資料1と2を基にご報告いたします。資料3 はこれまでの議論の整理ですが、これは前回の第14回の検討会議でお伺いしたものもこ の中に入っています。委員の先生方のご議論はほぼ資料3に盛り込まれているかと思う ので、本日は主として資料1と資料2でお話をさせていただきたいと思っております。  まず資料1に沿ってご報告いたします。これまでの議論を踏まえた具体的な取組みイ メージの案です。基本的には四角で括ったように、「医療の安全と信頼の向上を図るた め、事故事例情報等を活用して、以下のとおり新たな社会的システムを構築する」とい うことを目指しています。  具体的には、まず1番ですが、事故の発生予防・再発防止のための第三者機関の設置 です。資料2のカラーの図の真ん中の紫色になっている部分です。まず、この第三者機 関の目的です。これは行政及び事故の直接の関係者から独立し、国民や医療関係者から 信頼される中立的な第三者機関(以下第三者機関と省略)、それを設置するということ を目的に掲げています。この第三者機関は事故情報を収集・分析して、その改善方策等 を社会に還元することにより、事故の発生予防・再発防止を図ることを目的とすること を、主要な目的とすると考えています。  第三者機関の業務ですが、まず第三者機関は事故の発生予防・再発防止に資する情報 を広く収集する。収集した事故情報は専門家によって分析し、改善方策等に関する情報 を幅広く公表する。なお、行政、医療機関、医療関係団体、医薬品・医療用具等企業な どの関係機関は当該情報に基づき、必要な対策を進めるということです。業務の3番目 として、この他、第三者機関は事故の発生防止、再発予防に関する普及啓発や助言等の 技術的な支援を実施するということです。  どのようなところから情報を収集するかという、収集対象です。第三者機関は医療機 関、医療関係団体、今度の4月から都道府県に設置される医療安全相談センター、患者 ・家族などから幅広く情報を収集する。このスキームは資料2の図をご覧いただければ と思います。  次に収集の方法です。事故の発生予防・再発防止に有用な情報を可能な限り幅広く収 集するためには、収集範囲を厳密に区分せず収集できる仕組みを設けることが現実的で ないかと考えています。  収集する情報は、改善方策等の策定に有利となる事故の原因や背景を、できる限り掘 り下げて分析したものを幅広く収集する。このためすべての医療機関を対象に、事故事 例情報等を幅広く収集するとともに、重大な事例を重点的に収集するため、例えば事故 の分析体制が確立されている特定機能病院等については、これらの事例の報告を制度化 することも考えています。収集のために現行の医療安全対策ネットワーク整備事業、た だいまご議論のあったヒヤリ・ハット事例収集システムを参考に、新たな収集システム を構築するということです。なお、収集情報は事故の発生予防・再発防止という目的の 範囲に限って活用するとともに、患者・家族等の個人情報の保護には十分努めるとして います。  その2頁目です。その他、国は事故の発生予防・再発防止に有用な情報が十分に収集 されるように、医療機関等において事故事例等の収集や分析を行う者に対する教育研修 や、事故事例情報等の提供が促進される環境の整備を図ることを求めております。ま た、国は事故事例情報等の収集状況等を踏まえて、この第三者機関における収集の仕組 みの充実を図るため、適宜見直しするものとする。以上が第三者機関にかかわる検討部 会で考えている内容です。このまま続けて最後までいってよろしいですか。 ○森座長  続けてお願いいたします。 ○堺委員  続いて資料2の左側のピンク色の部分です。医療安全相談センター(仮称)の機能充 実です。まず、医療に関する患者の苦情や相談等に、迅速かつ適切に対応し、医療の安 全と国民の医療に対する信頼を高めるとともに、医療機関に患者の苦情等の情報を提供 することを通じて、医療機関における患者サービスの向上を図ることを目的として、平 成15年度から都道府県、二次医療圏等に設置する中立的な医療安全相談センターについ ては、事故の発生予防・再発防止の観点から、下記のとおり機能の充実を図る、という ことを提言しています。  どういうことかというと、(1)(2)(3)とありますが、(1)センターは寄せられた事例を 基に、医療機関へ情報を提供するとともに、研修、普及啓発等を行う。(2)センターは 第三者機関と十分に連携を図るものとし、事故の発生予防・再発防止に有用な相談事例 について、同機関に情報提供する。(3)センターは当事者からの求めに応じて専門家を 派遣し、事故の原因究明や、改善方策等に関する助言等を行うことにより、当事者の問 題解決に向けた取組みを支援する。以上が医療安全相談センター(仮称)に関する部分 です。  続いて、国の取組みです。資料2の右の行政の部分です。まず、(1)医療安全に関 する情報の提供や普及開発。これに関しては、事故の発生予防・再発防止のための対策 や、事故の発生頻度の状況など、我が国における医療安全に関する情報をとりまとめ、 国民や関係団体等に広く提供する。そして、医療従事者に対しては、事故事例情報等に より得られた事故の発生予防・再発防止に関する方策について、教育・研修を実施す る。特に医師や歯科医師については、必修化される臨床研修においても、これら医療安 全に関する研修を実施する。3頁です。医療機関等において、事故事例等の発生原因等 の分析や、事故事例情報等を活用した改善方策が進むよう、医療機関のリスクマネー ジャー等に対する教育・研修をさらに充実する。  国の取組みに関する2番目のものとして、事故事例情報の活用に関する調査研究の実 施を求めています。これが2つに分かれます。(1)全国的な事故発生頻度の把握。これ は厚生科学研究費などにおいて、我が国における全国的な事故の発生頻度の把握に関す る具体的な方法や、技術的な事項に関する調査研究を行うということです。  この調査研究に当たっては、医療事故の特性から、事故か否かを同じ基準で判断でき る抱括的かつ厳密な基準を定義することが困難ですので、各々の医療機関で、個々の事 例について、事故か否かを判断する場合、全国的に得られるデータの信頼性に問題が生 じる恐れがあることを踏まえる必要がある。また、諸外国における診療録等の抽出・分 析する事故の発生率等の算出調査等や、世界保健機構における検討等も参考とすべきで ある。  次に、調査研究の2つ目として、国民の適切な医療機関の選択に資する指標の開発。 これは国民が医療機関を選択するために必要な、医療機関の安全性に関する適切な情報 の提供を促進する。このために厚生労働科学研究等において、国民の医療機関の選択に 資する、医療機関の安全性に関する指標の開発に取り組むということです。  国の取組みのその他として、(3)ですが、事故の発生予防・再発防止のため、国及 び地方自治体は、引き続き医療機関における安全管理体制の確保に係る指導監督を徹底 する。そして、別途検討されている診療情報に関する提供の在り方や、医師等に対する 行政処分の在り方に関する検討との調整を図りつつ、国が必要な施策を総合的に実施す る。  最後にその他です。医療機関、医療関係団体、患者支援団体等における、患者相談の 一層の充実が期待される。最後に、医療関係団体や、学会が、会員の資質向上のための 教育や、認定制度の充実等を図り、安全対策を進展することによって、自浄作用を発揮 することを期待する。以上が、現在検討部会において検討している内容です。今後、こ れまでの議論及び今日ここで頂戴いたしますご議論を基に、議論を深めてとりまとめを 図りたいと考えています。以上です。 ○森座長  以上が現在の段階についてのご説明ですが、ここには堺委員の他にも、部会のメンバ ーの方が何人もおられると思います。ご説明側に立って、追加的なご発言でもございま すか。  それではご説明はここで一区切りつけて、親委員の側から質問なり、意見を申し上げ ることにしましょう。いま非常に要領よく資料1について、あるいは2も加味しながら ご説明いただきました。資料1は大きく言って、「その他」を別にすれば、1、2、3 と3つに分かれています。1が第三者機関の設置、2が医療安全相談センター(仮称) の機能充実、3が国の取組みです。必ずしも項目別にせずとも、どの辺りについてでも 宜しいと思います。ご質問、ご意見等いかがでしょうか。 ○糸氏委員  非常に重要な問題だと認識しております。我々もこの医療安全という問題は、患者と その患者に対して医療を提供する側、医療機関あるいは医師、看護師ですが、その間の 問題について、最近非常にいろいろマスコミ等で問題になっています。我々にもこのこ との重大さについては、5年前からこの対策をいろいろと練って、それなりの方策を 取ってきたわけです。  問題は、今後将来とも、これをよりパーフェクトにやっていく場合に、医療機関と か、患者の協力なしにはできないだろうと思います。この文面でちょっと気になるの は、お上からの押し付けといった感じのものではなかなか協力は得られないのではない かと思います。そういった意味では、ある程度当事者である医療機関の自発的な行為、 自発的な改善策というものに、ある程度それを国として支援するというようなスタンス が必要であって、ダイレクトにああしなさい、こうしなさいということになると、かえ って医療機関のほうが反発を覚えることもあると思います。そういう点では慎重に今後 取り扱っていただきたいと思います。  要は、我々としては患者の立場に立ち、患者の安全を守るということが、医療行為の 基本ですので、そのことに悔やみのないようにということで、これは改めてここで指摘 されるまでもなく、自ら自律、自浄、活性化というものも、そういう委員会を立ち上げ て現在やっております。細かいことは別にして、基本的にはあくまでも国としては当事 者のいまやっている、ささやかではありますが、5年間いろいろやりながら努力してき たところです。それを支援するという形での対応を医師会としては基本的に望みたいと 思います。細かいことはそのケースケースで相談しますが、先ほど書いてありました が、全医療機関に報告を求めるということは書くのは簡単ですが、このようなことが実 際にできるのかどうかというのは、率直な疑問として持っています。  行政のほうも、いままで医療安全という問題には、たしかに立ち遅れがひどかった し、我々も決して早いとは言いませんが、今後はこれは一体となって協力してやらなけ ればならないので、そこに、ああしなさい、こうしなさいという高圧的な指示でやられ ると、医療機関も反発ということで障害が起きると考えたりもするので、その点のご配 慮をぜひお願いしたいと思います。 ○井上委員  基本的には糸氏委員がおっしゃられたことなのですが、私も部会に属していて、部会 でも同じようなことを言ったのですが、第三者機関というものの絵姿がはっきりしない ので、どういった形になるのかがいまひとつよくわからないのです。医療関係側から見 ると、どういった報告を具体的に出すのか、求められるのかということもあります。医 療を行う側としては萎縮するようなことも「義務的」という言葉が出てくるとしますの で、この第三者機関というのがもう少し議論を深めて絵姿がはっきりしたものであるべ きではないかと思います。  部会のときに長谷川委員からのご報告があったのですが、外国で実際に今回提出され たような形の、極めて中立的なとか、そういった第三者機関がなかなか具体的には見つ からないというお話もあったのですが、日本的なものを創るのであれば、外国を参考に しながら、世界に類のないものを日本で創っても、覚悟ができればいいのではないかと いう気もしています。 ○三宅委員  私もこの第三者機関についていまいちイメージが湧かないところがあります。ここに 書いている内容から、目的は再発防止と発生予防であると、これは結構だと思います。 そして、その情報はできるだけ幅広く集めるということになっているわけなのですが、 それが後のほうにいくと、「国の取組等」というところで、1番目の○で、「我が国の 医療安全に関する情報をとりまとめ、国民や関係団体等に広く提供する」とあります。 この一面はよくわかるのですが、その後の2番で「全国的な事故発生頻度の把握」とい うことになってくると、これは調査研究ということになっていますが、発生頻度という ことになると、義務化とか、そういうことにつながっていくのではないかという気がし ます。何かそこに、初めに意図していることと、求めているところに少し食い違いが あって、いまいちイメージがはっきりしないのではないかという感じを受けるのです。  ですから、これは長谷川委員にお伺いしたいと思っているのですが、諸外国で強制的 な報告システムというのはどうもうまくいっていないということなのですが、それがど ういうふうな背景でうまくいかないのか。どうもボランタリーの情報を集めたほうが、 いい情報がきちんと集まるということもお聞きもするし、読んだものにも書いてあるの です。そういうことを考えると、報告をしやすいような、報告をすることにあるインセ ンティブを付けて報告できるような仕組み、それが第三者機関にきちんと集まると。そ ういうことがきちんとできれば、望ましいシステムになるのかなという気がしているの です。私の意見ですが。 ○黒田委員  第三者機関という言葉で、我々は何かごまかされてしまっているのではないかという 気がするのです。いままでディスカッションをずっとしてきたということは、そういう 第三者機関というものをつくることは大変難しいのであって、なぜかというとその中に おける仕事の中の自己憧着がたくさんあるのだということを、どうやってカバーをする かというディスカッションをずっとやってきたような気がするのです。広くデータを集 めたいのはよくわかるのですが、集めていくときには免責の問題をどうするのか。行政 的な法律的な問題、刑法の問題、そういうものとどういうふうにセパレートしていくこ とができるのか、そういう権限を持つとすればどんな組織が必要なのかということで、 いろいろなディスカッションがあったと思います。  私も何かお話をしたときに、もし行政機関としてやるのであったら、三条機関があっ たり、八条機関があったり、いろいろな行政機関がありましょう。特殊法人としては、 医薬品機構であるとか、そういう形のものもありましょうし、まったく民間のものもあ りますし、学会的な問題もありましょう。各委員がおっしゃられましたが、何か第三者 機関というと何となくあるような気がするのですが、具体的に実際にどのようにするの でしょうか。それが動いていくときにいろいろな問題点があるのですが、それはどうや ってクリアしていくのかというようなことが、よく見えないのです。書いてあることは とてもいいことだと思うので、そういうことをやりたいのですが、やれないいろいろな 問題をいままでディスカッションしてきたような気がするのです。これはどういうふう に解決がついて、プロポーズがなされるのだろうかということを、もう少し具体的に話 をしていただけると大変ありがたいと思います。 ○森座長  いまの段階での範囲で結構ですが、何かお答えになりますか。 ○堺委員  検討部会内部の議論で、第三者機関については法的な基盤整備が必要であろうという ことは繰り返し述べられております。検討部会の中に何人も法律のご専門の方々もいら っしゃいますが、この第三者機関が有効に機能するためには財政的な基盤のみならず、 法的な基盤も必要であろうという議論が出ています。  その一方で、この事故事例情報の活用全体は、できるところからやるべきではないか という議論も強く出ています。つまり、初めから完璧なものをつくろうというのは大変 いいことなのですが、それを施行するとかなりの年月を要するということが懸念されま す。  現時点で可能なものからまず取り組もうという意見も出ています。可能なものから取 り組みつつ、法的な基盤整備を求めるという議論が行われています。ご報告になったか わかりませんが、そのような状況です。 ○森座長  他にいかがでしょうか。 ○長谷川委員  先ほど2つ質問があったと理解していますが、第三者機関と事故発生に関する調査研 究ですが、これは別の組織になるのではないでしょうか。私の知っている諸外国の例を 見ると、調査研究のほうは研究班をつくって、チームをつくって、例えばどこかの大学 などの研究所の研究者が、ほぼ1年から数年かかって執行しています。第三者機関で報 告されたデータは使えない、つまり報告する人間の報告の度合いが違うので正確なエイ カクができないということになっているので、別と理解しています。  2つ目のご質問では、強制ということでした。皆さんご懸念のように、事故事例を集 めるとすれば、報告者、それを使って訴えられるのではないかという心配があって、諸 外国もそういうことが大変大きな課題になっています。私が知っているアングロサクソ ン系の大概の国々では、民事法廷にはこれを証拠として使わないという免責制度が存在 していて、それが報告を促しているというか、この制度がうまくいくようになっている ということで、少なくともうまくいっている例ではそうなっています。  一説によると強制報告というのはうまくいかないと。特に間違いから学んで分析をす るというのは、この第三者機関の目的になっていますが、自ら学ぶというときに強制で 学ぶというのは、なかなか難しいという意見が、諸外国の例では出ています。私の意見 では、法的な免責制度というのが第三者機関と裏表で成立しないと、うまく機能しない のではないかと心配しております。 ○岸委員  私は起草委員会にも関与しておりますので、この間の一連の議論を一応聞いておりま すが、その中で、第三者機関が法的な位置づけを進めることができないまま今日に至っ ているのが、この議論の最大の弱点だろうと思っています。  それと絡むのは、先ほど糸氏委員の強制的な報告制度とするかどうかという点と密接 に絡むと思うのですが、今日このような議論が行われているのは、これまでのいくつか の取組みでは極めて不十分である。このヒヤリ・ハット報告などの事例を見てもわかり ますが、「依然として、こんな馬鹿なことをまだやってるのか」というのが医療現場の 実態だろうと思うのです。それを早急に改善する。個人の不注意としてではなくて、シ ステムとして排除していく。それを早急に行わない限り、いろいろな患者の事故が引き 続き起きるであろうというのは当然予測のつくことです。  第三者機関の議論というのは非常に難しい所が多々ありますので、もう少し詰めなけ ればいけないのはもちろんですが、それ以前に、報告を義務化するというのは、必ずし も罰則を伴うというような概念ではありません。基本理念として、医療機関というの は、少なくとも自助努力とおっしゃるならば、事故が起きたときに、他の医療機関に対 して「こういう事故が起きたんだよ。みんな、注意してくれよ」と言うのが当たり前で はないかというような精神を基本的に植え付けるために、基本理念として報告の義務化 というのはやるべきだろうと私は思います。  罰則がないから、単なる基本理念で、意味がないではないかというご指摘もあります が、基本理念としてそういうことが定着していけば、もし何か事故が起きたときに、罰 則はないけれども、法的には義務化されています。それにもかかわらず、報告されてい ませんと。そういう意味では、医療現場に対する1つのプレッシャーにもなり得るだろ うし、そういうことはするものなのだ、そして、みんなで医療事故を無くしていくのだ というような確認としても義務化していただきたいと私は考えています。 ○森座長  いまの事柄に関連したご質問なりご意見をまず伺います。 ○長谷川委員  日本にはまだ立ち上がってないというので、外国の例の話をして恐縮ですけれども、 現在アメリカで全国的な報告制度の設計と提案がなされております。その理由は、1つ は間違いから学ぶということ。もう1つは説明責任。つまり医療機関が、こういうこと が起こったということを世の中に発表するという2つの目的で設計されております。  その2つは、目的とかやり方は若干違えてやっておりますが、後者に関しては強制報 告であり、法的免責がない。前者に関しては、強制ではなくボランタリーで、法的に保 護しようという方向で進んでいます。何度も言って恐縮ですが、自ら勉強するというと きに、強制しても、ほとんど不可能です。むしろ説明責任をとるという意味合いにおい て、各施設に発表せよ、そういう精神で進んでいます。それも制度設計が出来ていて意 思決定がまだされてないという段階ではありますが、参考までに申し上げました。 ○井上委員  報告制度ということで、医薬品の副作用の報告制度が参考になるかと思います。それ はちゃんと義務化されているわけでもないのですが、患者の安全と被害の拡大を防ぐた めに、医師も薬剤師も自主的に報告をしているのです。企業もちゃんとその情報を公開 します。  私は薬の分野の人間ですが、報告制度としては成熟した制度として出来上がっている のではないかと思うのです。決して、何か副作用が起きたときに報告しなければ罰則が あるというわけでもないのですが、きちんと今機能しているのです。だから、そういう 制度を見ながら制度をつくり上げていって、ある程度行った所で義務化なり何なりをし ていく。まず報告する人がしやすい体制をつくらなければ、なかなか出てこないと思い ます。 ○川村委員  医療機関から事故報告をするということに対して、軌道に乗るまでは少し時間がかか るのではないかと思うのです。とりあえず安全相談センターに一般の方が疑問に思った ことを寄せる。第三者機関には様々な情報のルートがあるわけですが、いちばんアクセ スしやすいとすれば、地域に根ざした安全相談センター経由という第三者機関に情報が もたらされると思うのです。  患者は、悪い結果が起こりましたら、これは事故ではないかと思っておられます。例 えば亡くなられたケースでしたら、安全相談センターではなかなか分からない、重大な 事故かもしれないということで第三者機関に寄せられたときに、まず事実調査がなされ ると思うのです。  ここで「専門家により分析、そして提供」と書いておられます。いままででも、重大 な事故が発生したときに、各医療施設で内部調査を相当克明に時間をかけてやっておら れて、それが私たちにも提供されるような時代になっていますが、そういった事故を本 当に分析していくというのは、時間の流れとかその場の問題とか、非常に複雑なものが 絡んでいて、分析に大変時間がかかりますが、そういう分析であればこそ、医療機関に もたらされたときに役に立つわけです。  第三者機関に様々な情報が寄せられたときにどう処理が行き届くのか、本当に有効な 情報として分析されて返ってくるのだろうか。最初のトリアージ的な要素、簡単な作業 ではない情報の収集、分析ということをどれほどこの第三者機関でこなせるのか、そう いう現実的な問題をちょっと感じてしまうのですが、いかがでしょうか。 ○岸委員  これは少し違うかもしれませんが、これまでの議論からいくと、第三者機関というの は医療事故かどうかわからないような、いわゆる係争の類のものについてジャッジメン トする機関では明らかにないと思うのです。しかも、これは事故ですと医療機関が自認 したような事案が原則だろうと思うのです。そういった自認した事案であって、なおか つ、今後の対応としてこのようなことをすれば未然に防止できたかもしれないという、 自らの分析もセットにして上げてくださいと、そういうことが第三者機関の発想だろう と思うのです。  私はその以前の、医療安全相談センターのほうを懸念しております。言ってみれば、 これは患者や家族の方の駆け込み寺的な組織なのですが、かなりの能力のある人が対応 しない限り、いわゆる消費生活センターみたいなイメージで語られているのですが、た だ単に話を聞くだけでは、事案がより複雑化する恐れもあるのです。患者の言っている 主張と、それに対応した医療機関側の説明とをクリアに整理する。患者側に一定程度医 療機関側の説明責任を果たさせるという程度まではできても、それ以上のジャッジメン トなど、とてもできるわけがないのです。そういうことからいうと、医療安全相談セン ターはトラブルを抱え込む恐れが強いと私は思っています。  第三者機関については、先ほどから繰り返し言っておられるけれども、発生予防と再 発防止があくまでも目的ですので、紛争をそのまま第三者機関に持ち込んでくるという のは、本質的には間違っているだろうと私は考えます。 ○堺委員  私も同じように理解しております。発生予防・再発防止ということを主目的にしてお りますので、ジャッジメントをする場所ではない、委員の方々はそのように理解してお られます。  医療安全相談センターのことはこの後の議題になろうかと思いますが、そこの相談員 の方の教育研修というのは極めて大事だろうという議論も出ております。 ○全田委員  医療安全相談センターについてですが、いま岸委員が言われたように、駆け込み寺と いう意味も持つのだと思います。これは辻本委員の専門分野ですがが。これは極めて専 門的な云々と言うけれど、私は設立母体だと思います。大変に苦言を呈しますけれど も、全国47の都道府県の組織で、病院薬剤師会が関係する所でいろいろなことが起きて おります。ただ、それぞれの県における医療事故と、ここでずっと検討していただいて いることに対しての対応は極めて温度差があります。  ここで、都道府県及び二次医療圏云々と言うけれども、行政がもろに絡んだら動かな いと私は思います。正直に言いますと、国の伝達機関のようなセンスを持っていたら何 にも動かないと思うのです。ですから、どういう設立母体にしていくか。もう1つは岸 委員が言われた、どういう方々を組織の中に入れて、いかに快く相談に患者が来るか、 それが非常に重要なことになってくると思います。重ねて申し上げますが、県によって 医療に対する対応の仕方に差があります。これがこの安全性を確保する窓口です。設立 というアイディアは大変に素晴らしいと思いますので、いろいろと十分検討していただ きたいと思います。 ○森座長  岸委員は先ほどこのセンターの内容に言及されて、応対に当たる人はよほど能力のあ る人でないと難しかろうと言われましたが、私も全く同意見です。ただ、あえてもう一 言申せば、いい意味の権威がないと成り立たないと個人的には思うのです。その辺はど うなのでしょうか。 ○岸委員  この医療安全相談センターそのものは私たちの今回の議論の以前に決まっていた制度 ですので、今更蒸し返してもとは思うのですが、関連したシステムですので。森座長は 権威とおっしゃいましたが、基本的に医療現場の知識をかなり持っていないと、患者の 話している趣旨がわからないだろうと思います。ですから、おそらく必然的に、このセ ンターの窓口の方は医療に造詣の深い方でなければ務まらないだろうと思います。それ と、法律的知識とは言いませんが、できれば一般社会常識をきちんと身につけていない と、双方当事者からの様々な主張に対する意見整理がつかないだろうと思います。そう いう意味からいうと、極めて能力の高い方という言い方をせざるを得ない。そういう方 でないと、難しかろうと思います。あるいは、そのために、通常の窓口業務の背後でも う少ししっかりした組織がバックアップするようなことでなければ、難しかろうと思い ます。 ○梅田委員  私も部会の委員の1人ですので、今日はできるだけ発言を差し控えていたのですが、 いま岸委員が言われたとおりです。私ども歯科医師会におきましても「歯の110番」と いうのがありまして、ここでいろいろな苦情などを受け付けてまいりました。現在は相 談センターと言っております。医療安全相談センターということで今お話がありました が、すでにあって経験も持っている医師会や歯科医師会が、都道府県にはもちろんあり ますし、郡市区にある所もあります。そういった形の中で、できれば医療安全相談セン ターの方と緊密な連携をとっていただいて、それで事をはかっていただきたいのです。  いままで経験のある組織があります。医療の問題は医師会、歯科関係の問題は歯科医 師会もありますので、そういう所を活用しながら、医療安全相談センターの方々が連携 をとっていただければありがたいのです。そして、私どもに来た苦情については医療安 全相談センターのほうに申し送っていきます。そういう形をとりますと、非常にうまく コンビネーションができると思います。これはすでに糸氏委員から冒頭にお話がありま したが、私どもにもそういったものが、少し古い組織ですが、いま新しく名称を変えて 活動しておりますので、その辺もご理解いただきたいのです。 ○辻本委員  患者の立場からこの図式を見たときに、まず、期待にそわない結果になったときに不 信感を持って、患者がどう行動するか。このセンターが出来れば最初にそこに相談を 持っていく。本来的には、医療機関からそうした事例を自主的に義務という形で第三者 機関に報告してくれるならば、患者はセンターに駆け込まなくても済むわけです。しか し、もしそのことを自主的にやってくれないならば、私が受けた被害は一体事故なのか ミスなのか、どうなるものなのかということを誰かに相談してみたい。そこで駆け込む のが、おそらく、このセンターだと思います。  そのときに、先ほど「権威」とか「権限」という言葉が出ましたが、私どものささや かな13年の相談活動の経験から申しますと、決して相談してきた方の意思を専門の立場 から方向づけたり、答えたり、回答を出すものではないと私は思います。これからの患 者は成熟ということを求められ、医療の限界や不確実性も共有し、そして、事故に関し ても発生予防、発生防止に寄与する、そうした成熟度が求められる場合には一緒に考え てくれる人がいて、そして、自分がどうしたいかと。それで、そのときにどういう情報 が必要か、どういう冷静な判断が医学的見地から必要か。そういうものが必要だとは思 いますが、あなたはこうすべきです、とそこで権威や権限を持って方向づけられること はよしとしないと私は考えます。  患者としてセンターでいろいろと相談をしたときに、これは主治医である先生ともう 一度こういう観点で話し合いをする、義務化ということは是非実現してほしいと思うの ですが、いま報告が義務づけられているから、このことを共同作業ということで第三者 機関に報告しましょうと。これが、対立を深める要素が非常に多い今回のこの問題の解 決の一点ではないかと思っているのです。ですから依存しているだけでも駄目、対立し ているだけでも駄目、ではどうするか。共同作業で、患者も横並びにこの問題に参画す るためにはセンター機能が上から押しつけてはいけない。  今日こちらには専門家がたくさんおられるので、こういうことを申し上げていいかど うかわからないのですが、専門家の方というのは素人が質問をしたり相談をすると、 「ああ、これがいちばん正しい方法ですから、あなた、こうしなさい」と方向づけてく ださったり教えてくださったりする。もっと言えば、すぐに答えなければならないとい う脅迫観念に駆られているように見受けられるのです。しかし、それはいままでのパタ ーナリズムの医療で、これからは患者が主体的に医療参加をし、そして成熟ということ を求められるならば、このセンターは後ろに回った支援者でなければいけない、そんな ふうに思います。  先ほど井上委員から医薬品副作用の救済制度の話が出ましたが、実態としては、もっ と底辺の所では、患者はこの制度すら利用し切れていないということがあります。そも そも被害を受けたと感じても、そのことをドクターと相談できなければ、医療者が持っ ている機構の情報を患者が知る術がないのです。  幸いいま患者の利益につながる救済制度があるということで、気の毒と思うお医者さ んは、こういう制度がありますよと、そこで共同作業ができている。この第三者機関に しても、センター構想にしても、発生予防・再発防止という。医薬品の救済制度が患者 の利益につながるのと同じように、第三者機関や医療センターの役割を活用すること で、医療の安全や再発防止ということが今よりも進む、そこが両者の共有する大事なポ イントと考えられるような形で進んでいくべきだと考えます。 ○森座長  私が間違えて伺ったかもしれませんが、安全相談センターでは、特に判断したり方向 づけをする必要はないということなのですか。 ○辻本委員  はい。必要な情報、なおかつ専門的な、その問題を解決するに当たって必要な情報、 そういったものはセンターが持っていることは大事だと思います。しかし、あなたはこ うすべきですというふうな指示や方向づけはしてはならない、私はそう思っておりま す。 ○森座長  なお、誤解のないように申しておきますが、私は「いい意味の権威」という言葉を使 いました。私の意味するところ、「権威」と「権限」とは全く別のものだと考えており ます。 ○井上委員  少し誤解があったようです。先ほどお話したのは、例えば副作用報告制度の話をした わけです。副作用が起こったときの医療関係者からの報告や情報提供を上げていくとい う制度の話をしたわけです。それに基づいて副作用の救済制度が行われるわけですが、 救済制度の話をしたわけではありません。第三者機関なり報告する先に対しての医療関 係者からの事故報告という形で報告したわけで、救済基金との絡み等は一切話しており ません。 ○矢崎委員  原則として報告しなければいけないというのが基本だと思います。そのときに、どこ まで報告するのか。院内でのヒヤリ・ハット報告はすべてのものを網羅してまとめます が、第三者機関、これがどういう組織になるか分かりませんが、そこに報告する場合に は、どの程度のものをどういう仕組みで報告するかという議論が1つ必要かと思いま す。  それと、行政との関わりがありますが、この国の取組みの中に、国民が医療機関を選 択するために情報を提示すること、それから、医師などに対する行政処分のあり方とい うこともありますので、その辺の兼ね合いが難しいかなというところがあります。  先ほどのお話の相談センターですが、実は私ども「医療何でも相談窓口」というもの を設けたところ、極めて広い範囲の相談が、片方では人生相談みたいな相談もありま す。私どもが窓口の方に話しているのは、辻本委員の言われるように、オープンクエス チョンで、「どうしましたか」とか、どこがどうですかということではなくて、まず患 者からいろいろな話を受けるのが第一ということで、そういう教育をしています。  ただ、我々も試行錯誤でやっています。これは最初にある程度立ち上げて、経験を積 みながら、具体的にどういう所に問題があるかをディスカッションしていくので、ここ で完全な形の枠組みとか組織というのはまだ出来ないと思います。いろいろな所でこれ から医療安全相談窓口というのが出来ると思いますので、そういう施設からの情報を集 めていただく。あるいは患者側の立場のご意見も伺って我々がつくり上げていくという 感じで持っていけば、いろいろな問題がそこでおのずから解決されるかなということを 感じました。 ○山崎委員  まず医療安全相談センターのことから意見を申し上げたいと思います。先ほどから議 論されていた第三者機関とこの相談センターの役割、機能が少しオーバーラップして、 混乱している。私自身の理解が足りないのかと思って整理したいのですが、これを見ま すと、相談センターの機能は、第三者機関、医療機関への情報を提供するということが しきりに書いてあるのですが、患者がこのような機関に駆け込んでくるということは、 それが本当に事故につながっているのかどうかもわからずに、困惑して来られるという 立場だと思うのです。  したがって辻本委員が言われたように、そこで、あなたはこういうふうにすべきです ということで高度の専門家が話を聞いて判断するというよりも、相談センターというよ りは連絡センターのような機能で、その患者が困っていることを、どこに行ったらいい かと。基本的には、医療に対する相談はその患者がかかっている医療機関、主治医の先 生、そこの関係者の方に相談して解決するのが前提ではないかと思います。そして、そ うではなくて困ったときに、どうしたらいいかについて、患者の悩みを然るべき所に連 絡していく。それから、患者が訴えたことで、医療機関では収拾できなかったような情 報があれば、それを先ほどの第三者機関、あるいは実際にかかっている医療機関に提供 していく、それが(仮称)相談センターと書かれている所の機能として生活者側から求 められる機能ではないかと思ったのです。  遡りますが、第三者機関の情報提供は定点、つまり、かなり分析の体制を持った、特 定機能病院のような所からの情報、もう1つは、できるだけ広い範囲の情報を収集する ために全ての医療機関からの情報をと、2つの機能性が話されましたけれども、ここで 提供される情報も要するに、なぜ情報がそれだけ広い範囲から必要なのか。分析機能を 持った定点だけの情報ではどうして再発防止・再発予防につながらないのか、それが私 には理解できない所もあったのです。しかし、とりあえず関係する情報はすべて収集す るのが原則だと思いますので、ここの機能と相談センターに集まってくる情報とははっ きりと分けて機能するような形を考えていただきたい。これがかぶさってくるような形 ですと、うまく機能しないのではないかというのが私の伺っていた感想です。 ○森座長  相互に連絡は必要であろうが、ある程度分けて考えよというご主旨と理解しました。 ○桜井委員  第三者機関の機能ということについて、私なりの感想をちょっと述べさせていただき たいと思いますが、方針の所に書いてありますように事故の発生予防・再発防止を目的 として云々と書いてあります。リスクマネージというのは決してエラーが起こってから それに対策を立てるということだけではなくて、フィードフォアード、先行予測的な立 場で事故の発生を防止するということのほうがよりいいわけで、そういうことも非常に 大事だと思うのです。  いままで出てきていない言葉として、テクノロジーアセスメントという言葉があるわ けですが、私は第三者機関の機能というのはもしかするとテクノロジーアセスメント的 な機能をするのがいいのではないか。テクノロジーアセスメントの以前の日本語の訳し 方は、自立の事前評価で、ことの前に評価をするということだったわけですが、これは 別にヒヤリ・ハットの事例があって、それを評価して発生を防止するということでもか まわないと思うのです。別にそれにとらわれる必要はないわけです。  したがって、広く全般的に言えばヘルスケアテクノロジーのテクノロジーアセスメン トということで、実はHCTAヘルスケア・テクノロジーアセスメントを行っている国 際的な機構があって、これはたしか27カ国か何かがそこに参加しているのですが、残念 ながら我が国はそれに参加していないのです。そういうことからヘルスケア・テクノロ ジーアセスメントについては、日本は大変後進国であると言えるのですが、第三者機関 のいちばん望ましい形というのはたぶん何かいろいろなデータがくる、それを分析をす る、報告がこなくても事前に評価をすることも可能なわけですので、そういうことも含 めた、何かテクノロジーアセスメント的な機能を行うというのが、いちばんふさわしい のではないかという気がしていました。  実は財団法人の医療機器センターがありまして、そこでは厚生科学の研究費をもらっ て、何年間か医療機器のテクノロジーアセスメントに関する研究をしていまして、近々 医療機器、ハードウェアについてテクノロジーアセスメントをやりましょうということ で、たぶん具体化する運びになると思うのです。それと同じように医療機器だけではな くていろいろなプロセスであるとか、システムであるとか、マネージメントであるなど いろいろなことを材料にしたテクノロジーアセスメントというのも当然可能なわけです ので、第三者機関の機能としては、何かそんな形がいちばん望ましいのではないかと思 いながら伺っていました。 ○森座長  ありがとうございました。ことの大小にかかわらず・・・。 ○三宅委員  いまの皆さんのご意見を伺っていて、この第三者機関というものが国の事故情報セン ターの機能をもし発揮するのであれば、先ほど長谷川委員からもお話が出たと思います が、情報について民事には使わない、個人情報は保護する、ということがきちんとなさ れれば、少なくとも事故に関する情報は全部ここに報告をしなさい、とできるのではな いかという気がします。ですからそこがきちんと守られないと、いろいろな問題を起こ す危険があって、なかなか情報が出てこないのではないかという気がします。そこの点 をきちんとすれば事故情報センターとしての機能が果たせるかもしれない。  確かに岸委員もおっしゃったように、そういうものがあれば患者情報も活きると思い ますし、患者情報が入っているけれども、医療機関から情報が入っていないというとき には、それなりの処置もできるかもしれないですね。  ある意味では事故情報センターというものが、先ほど森委員がちょっとおっしゃった ようなある程度忠実的で権威のある存在であるということで、非常に信頼を受けるよう な機関であれば、そういう機能が果たせるのではないかという気はしますけれども。 ○岸委員  長谷川委員からご指摘のあったものは、私も前々から考えていたのですが、法制度上 明文規定として義務化をすると申し上げているのですが、その場合に確かに長谷川委員 がご指摘のように、義務化はする、免責規定はないということになると、俗な言葉でや らずぶったくりになってしまいます。そうなったらほとんど協力しないではないか。極 めてシリアスな事態というのはとてもじゃないけれども上げない、ということが当然予 測されるのです。  厚労省にお伺いしたいのですが、政府内でこういう一つの法制度をつくるときに、民 事免責をするなどというような、他の法制度と要するに抵触するような特例規定を設け るということは現実的なことなのか、それはどうなのでしょうか。 ○医療安全推進室長  ただいまの免責という言葉でいろいろご議論いただいていますが、免責という言葉に もいろいろなレベル、内容があるのではないかと思っています。  一つには例えば民事や刑事の訴訟法に直接反映しなければ達成できないような免責か ら、実質的に責任が問われない、もしくは出したことによって不利とならないというレ ベルまで、いろいろなレベルがあろうかと思います。そしてそのレベルによってはもち ろん他省庁と、その法律を所管している省庁と調整の上でなければ実施できない部分も ありますが、そうでない部分もあるのではないかと思っています。  今回のご議論についてどのレベルでの免責、もしくはそれに相当する対応が必要かと いうことにつきましては、これからの報告の内容、いわゆる制度化と申しますか義務化 の程度、その対象となる医療機関、そういうものを総合的に勘案した上で、どのレベル の免責なり提供の保護の措置を講じていく必要があるのか、事務的にも検討していく必 要があろうかと思っています。  したがいまして、現時点で最初から民事訴訟法なり何なりを改正するということを固 めていく必要が、ないというとちょっと変ですが、そういう話とはちょっと違うのかな という感じでお伺いしているところです。 ○糸氏委員  もう一つ釈然とわからないのですが、今度提案されている社会システムとしての第三 者機関、これも目的は事故発生予防と再発防止のための第三者機関。この機関と、2番 に出ている医療安全相談センター、これが医療安全相談センターというのは全国に展開 しているわけですね。全国に、二次医療圏ごとになどいろいろ言っていますね。そうい うものをセンターと言っていると。  第三者機関の設置、これは中央集権的に一箇所ですか、ここは。おそらくそうだろう と思うのですが、そうするとこの第三者機関の設置というのは、これは非常に大きい影 響をもたらすであろうと思うし、当然のことながら一つは機能的にやはり違うのではな いか、その最大の違いはどこですか。この相談センターと、第三者機関の違いです。 ○医療安全推進室長  ここで書いてあります第三者機関は予防のために活用するということで、そのケー ス、事例の解決という側面ではなく、ある事例を教訓としてみんなで共有していくため にここが情報を収集して、提供していくという所です。  一方安全相談センターのほうは、都道府県なり、二次医療圏にあって、一つ一つの 困っている事例、これについて先ほどからお話がありました解決に向けた支援をしてい くという所でして、事例に対応する相談センターと、そういうことではなく全体の教訓 として活用していくという、そこがいちばん大きな違いになるのではないかと思ってい ます。 ○全田委員  いや、いまの言葉尻を取るようですが、先ほどから辻本委員がおっしゃっている相談 センターが支援をするという言葉を使うということは、先ほども山崎委員が連絡という ことはいいですとそれから事例が明らかになってどの病院でも具体的には相談ができな かった、だから先ほどから出ている駆け込み寺と言うと言葉が悪いですが、来たと。こ ういう事例が明らかにされていなかったですが、この医療機関においてこういうことに なっているから、じゃあそこで、ということをそれ相当の担当の所で話し合うことはい いですが、それは解決、道の糸口を明らかにするのではなく解決云々まで求めるとなる と、先ほどから私が申し上げているように組織が非常に難しくなってきます。  それでは国では駄目だからといって地方自治体に下ろす。地方自治体が本当に例えば 他のいろいろな医療団体と協力してやったとしても、解決策までやれるかというので す。 ○医療安全推進室長  すみません。解決という言葉が妥当な言葉ではなかったかもしれません。  資料をご覧いただきたいのですが、過去の資料に綴じてあります黄色のタブが付いて いる第14回目の資料2−2に、相談窓口に関する資料を付けております。ここに相談窓 口の図を図示してあります。ここに書いてありますように、解決というのは大変妥当で ない言葉だったと反省しています。いちばんの目的は、医療に関します医療機関と、患 者の信頼を高めるということでして、それが結果的にそういう情報を共有することによ って患者サービスの向上を図るということです。  先ほどから何回かご指摘いただいております地域の関係団体、また民間のいろいろな 患者支援団体の方々、こういう方々の相談の体制、これは非常に重要なものだと考えて いますし、また医療機関においてもいま相談の体制がだんだん整ってきていると聞いて おります。こういうものと連絡、調整を取った上で、左端にあります医療安全相談セン ターですが、ここが相談を行っていくということでして、決してその事例を調査して何 とかという相談窓口ではありませんので、全田委員のご指摘の通り、ちょっと言葉が悪 かったので訂正します。 ○三宅委員  先ほど岸委員が民事に対する免責とおっしゃっていますが、私がイメージしているこ とは、この第三者機関に寄せられた情報を民事に転用するのはおかしいのではないかと いうことです。ですから、第三者機関に寄せられた情報のうち、民事が起こるものもあ るだろうし、起こらないものもあるだろうと思っています。それはそれでいいのではな いでしょうか。別の次元の話だと思っていますから。 ○岸委員  私が想定したのは、例えば民事訴訟になったときに、一般的な概念とすれば例えば第 三者機関に対して、これまでの経過報告を医療機関がしているではないか、現にしてい るではないか。つまり私達の前提は、医療機関側が第三者機関に報告した時点で、例え ばこれは事故であると自認して報告を上げていた場合、まさにそれを民事の訴訟の証拠 として請求された場合、それはそこで個人情報保護とも絡むかもしれませんが、その場 合に例えば公表する場合にはおそらく匿名制で公表されるのでしょうが、それが現に私 の事例であるから、その報告書を民事法定に出せと言われた場合に、それをシャットア ウトするなど、あるいはいろいろなケースがあり得るのかなと思うのです。  逆に長谷川委員にお聞きしたいのですが、ご指摘の民事免責というのは、どういう場 合のことをおっしゃっているのか。私は証拠採用の問題などを頭の中に描いたのです が、その他にどういう事例があるのでしょうか。 ○長谷川委員  チョウリしだいです。アメリカで自分たちがエラーを減らすために学んだようなヒヤ リ・ハットの報告例や、分析の過程については刑事では駄目ですが、民事のほうの法定 では証拠に採用されない。英語ではアンディスカバブルという状態になっている。ただ し正確には50何州のうちのすべての州ではないのですが、過半数に近い州でそういう法 規定ができていますのと、連邦政府の国立病院、退役軍人病院の法制度がそのように報 告されていると聞いています。 ○岸委員  そういうような認識で聞いておりましたが、三宅委員は違うのですか。 ○三宅委員  民事は民事で別に起きた場合は、これを直接使わないということなのです。 ○長谷川委員  アメリカの場合を聞きましたら、その他にもいろいろなチャンネルがありますので、 もともとあまりヒヤリ・ハット事例を捕まえて法定で争うということは少ないようで す。もともともちろんカルテは、法定に開示されますので、どうしましても、民事であ ろうが刑事であろうが。 ○森座長  アメリカの場合、刑事は非常に少ないですね。 ○長谷川委員  ないです。 ○森座長  いろいろなご意見を承りましたが、なお言い足りない方もおられるかと思います。 が、とにかく、各委員から少なくとも一言ずつはお話いただきました。私が受けた印象 としては、基本的に部会で討議なさったこと、あるいは目指しておられる事柄に対して これはよくないとか、反対である委員の方はどうもおられないように思います。  ただ第三者機関とは確かに素晴らしい言葉で、「第三者機関があったら」と多くの 方々がすでにいままでこの委員会で発言されました。しかし踏み込んで伺うと、委員の 方々がそれぞれに抱いておられる第三者機関なるもののイメージが、必ずしも同じでな いような場合もありました。ですから第三者機関というのはいい言葉であり、理想的な 考えではあろうけれども、姿がはっきりしない、目に見えない、そういう委員のご発言 が、今日いくつかあったように思います。  それから、一口に報告と言っても中身もいろいろあろうし、範囲もあろうし、一口に 報告と言ってもまだまだ詰める必要があるのではないか、といったご意見もあったと思 います。法的な整備、法律による裏付け、そういう面もある程度必要ではないか。全体 の方向としては反対ではないけれども、実際のものをつくる前にはまだまだ詰めなくて はならない点があるのではないか、というご意見は、ある程度の方々に共通したもので ありました。堺委員ご自身のご発言では、「まあできるところからやっていこう」とい う意味のお言葉がありました。  それらを総合しながら、いま、私はこの委員会とは全く関係のないことをフッと思い 出しました。妙なことを申し上げて恐縮ですが、私の師匠の一人が吉田富三先生という 方で、今年生誕百年を迎えますからもうずいぶん昔の方です。がんの研究で非常に立派 な仕事をなさっている。  あるとき吉田先生のお仕事に対して、当時の文部省が研究所を作ってあげようと申し 出られたそうですが、吉田先生はそれを断りました。研究所のような固まったものにす ると弾力性がなくなるし、初代はよくてもそのあと悪くなるかもしれないし、小回りは きかないし、がんの研究そのものがこれからどう変わっていくかわからないので、研究 所は遠慮するとおっしゃった。そしてその代わりに研究費を、と要望され、文部省もそ れを受け入れ、「がん特別研究」という当時としては破格の研究費が文部省の科学研究 費の中に創設されて、それがずいぶん長い間続いて多くの研究が生まれたということで あります。  その頃、吉田先生はよく私たちのような若い者に、「研究所という申し出を受けたけ れども、自分は見えざる研究所を作ってもらったんだ」、といわれ、外国人に説明する ときには、インビジブルという言葉を使っておられたと思います。当時の言葉からすれ ばインビジブルですが、いまで言うバーチャルでしょう、おそらく同じものだと思いま す。  ですから第三者機関を設置するにしても、おそらく多くの方々のお気持として、いま すぐ建物をつくり、人を張り付け、大きな物を固定するのはもしかしたらまだちょっと 早いかもしれない。そういうものをつくる前に研究的なこと、ことに再発防止というの は研究だ、とおっしゃった方がありますが、研究面でまだまだすることがあろう。少な くとも現在は研究段階として、あるいは場合によっては試行段階という意味で、医療の 安全を目指すバーチャルな機関、具体的に言えばあとで厚生科学研究費という言葉もど こかに出ていたかと思いますが、何らかの形で研究費を配慮していただいき、そういう 方向に向かっての半ば研究、半ば試行といったことではどうか。大体その辺のところが 多くの方の御意見の「最大公約数」かと個人的には理解しています。  もう一つの安全相談センター、これはちょっと事務局に伺いますが、平成15年度から できるともう決まっているわけですね。同じものとは思いませんが、やや似た性格を 持っているものがすでに病院単位など、別のレベルでは、例えば東京都などにも、でき て動いているようです。  先ほどから委員の方のご意見を伺っておりますと、ある程度の判断なり、ジャッジを すべきである、というお考えも一部の方にありますし、他の一部の方はむしろそういう 判断は避けたほうがいい、ただの連絡にしたほうがいいというお気持のようです。  それから、ある方は試行錯誤という言葉をお使いになったかもしれません。無責任で ない意味での試行錯誤もある程度は必要だと思いますね。ただ、もう実施が決まってい る問題のようですから、内容を良いものとするよう、できるだけ心掛けながら進めてい ただくということでしょうか。  国の役割という3番目の項目については、第1の項目、第2の項目がそれぞれ国の役 割に関連を持っておりますので、それぞれのところで何等かのご発言がありました。第 3の項目について、ということで特にご発言のあった方は、少なくともここではなかっ たように思いますが、ちょっと私から質問します。この「国の役割」の中であとのほう に「国民が医療機関を選択するために必要な医療機関の安全性に関する適切な情報」の 提供、とありますが、国民が医療機関を選択するための安全性に関する情報というのに は、具体的に例えばどういうことがありますでしょうか。 ○堺委員  ここのところはまだ検討部会の中で具体的に詰めてはおりませんが、やはりこれだけ の情報を収集して、分析して、もちろんいろいろな関係機関、あるいは法的な問題等あ りますが、やはり国民の皆様が求めていらっしゃるのは安全な医療機関にかかりたいと いうことだろうと思いますし、それに応えるにはどういう情報をどういうふうに出した らいいのか、そういうことを検討しましょうというようなニュアンスが、これには書い てあります。 ○森座長  はい、自主申告的な事柄に基づいての情報に頼り、横並びに考えて、本当に国民の一 人一人が安全な医療機関を選択できるかどうかという点についても、まだ将来、若干工 夫の余地があるかもしれませんね。 ○堺委員  最近病院の機能についていろいろな機構などもつくられておりますし、国民の皆様に そういう情報がだんだん行き渡る時代がきたと個人的には思っていますが、安全だけが 病院の機能ではないと思っておりまして、やはりその病院全体の機能のうちの一つとし て、安全というものがやはり必要で、ここの病院ではこのような安全が図られておりま す、という情報が伝われば、それは患者の参考にはなるのではないかと思っています。 ○医療安全推進室長  ただいま堺委員からご紹介いただきましたことは、資料3の4頁目(2)の所に、これ までの議論の整理として堺委員ご指摘の趣旨が整理されておりますので、ご参考までに ご紹介します。 ○山崎委員  簡単に一言だけ申し上げたいと思うのですが、第三者機関が今日テーマになっていま すが、第三者というのが非常に魅力的な言葉なために、私自身の反省も含めて混乱した 部分があると思うのです。  先ほどの三宅委員のご発言が非常に大きなヒントになると思いますが、例えばこれを 安全情報センターという仮の名前で第三者機関、ここではとにかくシステムを作ってい ただく。できるだけ広い範囲で事故に繋がるような情報を収集する。ここにも書いてあ りますが、専門家がそれを分析して、改善保護策等についての答えが出たときは、それ をすかさず公表していく。  ただ、ここに集めた事故に関する情報は、先ほどからご発言がありましたような裁判 資料等についてはこれは使用しないんだ、という関所は作れるのではないか。これは法 律等関係なくできるのではないか。  それから、相談センターのほうは各都道府県の窓口として、非常に重要な役割を果た すと思うのです。これは、医療機関からの情報に拾い上げられないような、患者からの 情報というのを連絡する窓口として機能していただく。その地元の医師会なり、歯科医 師会なり、薬剤師会なりに、しかるべく意見を求めることもできます。そういう意味で は自ら、非常に専門性の高い権威がおられなくても機能としては発揮できるのではない か。そういう意味で、名前も第三者機関という名前でずっと続けずに三宅先生、事故情 報と言うよりは安全情報のほうがいいのかなと思いますが、そういうような名前で(第 三者機関)として、集めた情報を蓄積していくのと、専門家によってそれを分析、解析 していく委員会がそこに所属するというように整理すると、少なくとも私がちょっと思 い迷った部分というのは私自身としては整理できるかとちょっと思いつきましたので、 最後に申し上げまして、なお混乱を招くと申わけないのですが、発言させていただきま した。 ○森座長  おそらくここに第三者機関とお書きになったのは、性格としての第三者機関であっ て、固有名詞的な意味の第三者機関ではないでしょう。 ○堺委員  あえて個人的な意見を含めて申し上げますと第三者機関その1、というものかと思っ ています。 ○山崎委員  だと私も思います。 ○川村委員  名称で私自身わからなくなってしまうものですから確認をしておきたいと思います が、この医療安全相談センターに安全とついておりますが、色に関する苦情というのは 単に安全の問題だと医療費の問題とか、あるいは医療実践等のコミュニケーション上の 問題もありますが、持ち込まれる苦情というのは、以外と後者の医療の診断や治療以外 の部分の苦情も大変多いと思うのです。都道府県のこれは、そういった安全に関わるこ とではない、医療全体の相談センターと思ってよろしいのでしょうか。  それからもう一つ医療事故情報ということを特定機能病院が報告を正当化すると書い てありますが、医療事故というのは別に過失のほうを問う言葉ではないのですが、予期 せぬ悪い事態が発生したときに、そういった事態が起きたと、それはこういう経過で起 きましたということをこの第三者機関に報告をしていくという整理でよろしいですか。 過失云々は関係ないということでよろしいのですね。 ○森座長  それは事務局からお願いします。 ○医療安全推進室長  安全相談センターの件ですが、川村委員ご指摘のとおり、安全に関することのみと限 る窓口ではない、いろいろなことにご相談をさせていただくという窓口で考えていま す。  2番目のご質問の収集する範囲の件ですが、この件に関しましては過失の有無も一つ の視点になろうかと思いますが、いまお話しのように予防する観点から、どんな事故を 集める必要があるのか、この部分は堺委員からご説明いただきましたように、まだこの 部分が詰めきっていなくて、これから考えていかなければいけない部分だと思っており ますが。 ○森座長  これは大事なことなので伺いますが、安全だけでなしに医療全般、何でもいいのです か。 ○医政局総務課長  それは医療安全相談センターのほうですか。 ○森座長  はい。 ○医政局総務課長  安全相談センターの医療に関する患者等の苦情や、相談等を全体として受け付けると いうことです。 ○森座長  個人的な意見を申せば、実際にはいろいろな相談がくるでしょうけれども、看板だけ は安全にしておかないと、医療全般に関して何でも苦情を、と言うと、それは大変では ないですか。 ○医政局総務課長  すいません。若干私の舌足らずでした。まさにいま座長がおっしゃるとおりですが、 結果として来られた者について、「あなた駄目ですよ」と言うわけにはいかないだろう ということでして、当然この主眼は医療安全の確立であるということです。 ○森座長  さて、大体予定した時間ですが、よろしいですか。 ○井上委員  課題として一つどうしても挙げておいていただきたいことがありまして、それは岸委 員が言われたポイントは非常に大事なことでして、民事訴訟法に基づく行政手続きとし て証拠保全命令が出た場合、私は弁護士ではないので詳しいことはわかりませんが、お そらくそれをブロックしてということはできないと思うのです。  例えば、情報がきて、ここで分析を学問的にやったり、予防対策を求めて次の手を打 つということは、それはそれで理想として大賛成なのですが、そのときに証拠保全命令 が出たときに、それが証拠保全命令に対してブロックできるのかと言ったら、いまの現 状の民事訴訟法ではできないと思うのです。だからこれは研究課題にしていただきた い。  もう一つは個人情報保護法がありますので、集めた内容をかなり詳細に分析していく 中で、医療機関、医師、看護士、薬剤師、患者は当然、そういった方の個人情報保護法 とのプライバシーの問題をどう解決するかということも、これからの第三者機関をもし 作っていくのであれば、検討課題になるのかという気がしました。 ○森座長  はい、ありがとうございました。他によろしゅうございますか。  それでは次回の日程なども含めて、最後に事務局から何かアナウンスメントはありま すか。 ○宮本専門官  次回の日程につきましては、委員の皆様の日程を確認の上、後日ご連絡させていただ きたいと思います。 ○森座長  まだ今のところは未定ですね、大体何月ぐらいですか。 ○医療安全推進室長  4月ないし5月ぐらいに時期を見て、またご相談をさせていただければと思っており ます。 ○森座長  それでは今日はこれで閉じたいと思いますが、よろしゅうございますか。  では、どうも長時間ありがとうございました。