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資料5


生殖補助医療全体に係る課題について


 安全性や技術的事項に関する課題

(1)  生殖補助医療に係る質の担保について

1)  実態把握について

【国における議論等】
 実施医療施設、提供医療施設を指定した者は、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施について、必要に応じて当該医療施設から報告を徴収し、立入検査をすることができることとする。

 公的管理運営機関は、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行うすべての実施医療施設からの当該生殖補助医療に関する医療実績等の報告の徴収や徴収した報告の確認、当該報告に基づく統計の作成等の提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施に関する管理運営の業務を行う。

 公的管理運営機関が保存する精子・卵子・胚の提供により生まれた子に関する情報は、以下のようなものとする。
 生まれた子に関する医学的情報、具体的には、出生時体重や、遺伝性疾患の有無、出生直後の健康状態、その後の発育状況 など

(以上、生殖補助医療部会)

【その他】
 日本産科婦人科学会は、会告「「体外受精・胚移植の臨床実施」の「登録報告制」について」に基づく実施報告を年一回とりまとめ、体外受精及び顕微授精の患者数、治療周期数、採卵数、妊娠数、流産数、多胎妊娠数、出生児数などを「倫理委員会登録・調査小委員会報告」として公表している。

2)  多胎妊娠を防ぐための排卵誘発剤の使用量や、子宮に戻す胚の数等の具体的なあり方について

【国における議論等】
 体外受精、胚移植又は提供された胚の移植に当たって、1回に子宮に移植する胚の数は、原則として2個とし、医師の裁量で、移植する胚や子宮の状況によっては3個までとする。

(専門委員会報告別添「多胎、減数手術について」、生殖補助医療部会)

【その他】
 体外受精・胚移植においては移植胚数による妊娠率と多胎率とを勘案して移植胚数を原則として3個以内とし、また、排卵誘発に際してはゴナドトロピン製剤の周期あたりの使用量を可能な限り減量するよう強く求めることとした。

(日本産科婦人科学会会告「「多胎妊娠」に関する見解」)

 日本産科婦人科学会は、会告「「体外受精・胚移植の臨床実施」の「登録報告制」について」に基づく実施報告を年一回とりまとめ、多胎妊娠の結果を含めた体外受精や顕微授精の結果を、「倫理委員会登録・調査小委員会報告」として公表している。

(2)  新しい生殖医療技術・実験的医療技術の臨床応用について

【国における議論等】
 臨床研究に関する倫理指針(今春より告示予定)

【その他】
 本会は本法(体外受精・胚移植)の不妊治療以外への臨床応用について、国内外の基礎ならびに臨床研究成績をもとに慎重に検討した結果、本法の適用範囲を拡大する必要性が存在し、かつわが国の技術水準で十分可能であるとの結論に達した。
 しかし、適用範囲の歯止めのない拡大に繋げないため、その実施は生殖医療について十分な技術的背景と経験を持った施設で、適正な適用範囲のもとに行われるべきであり、そのため実施機関と適用範囲については本会において個別に審議し決定することとする。

(日本産科婦人科学会会告「「ヒトの体外受精・胚移植の臨床応用の範囲」についての見解」)

 上記の授精法の臨床応用については、さらに複数の研究機関で動物実験を含む基礎的研究を重ねた上で、その結果を再検討し、改めて臨床応用の適否を判定する必要がある

(日本不妊学会ガイドライン「ヒト円形精子細胞を培養する受精法について」)

 大学等の研究機関や各学会の倫理委員会等において実施されている個別事例に関する是非の検討

(3)  生殖補助医療における事故に対する対策について
 (精子・卵子・胚の取り違え等について)

【国における議論等】
 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療は、厚生労働大臣又は地方自治体の長が指定する施設でなければ実施できないこととする。

 これらの施設の指定に当たっては、実施医療施設・提供医療施設の施設・設備・機器の基準及び人的基準を踏まえて国が定めた基準に合致した施設とする。

(以上、生殖補助医療部会)

【その他】
 日本産科婦人科学会会告「ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する見解」、「「体外受精・胚移植の臨床実施」の「登録報告制」について」、「ART実施および施設管理に関しての留意点」、及び、会員へのお知らせ「生殖補助医療の実施施設の設備条件と実施医師の要件について」による規制

   本法(ヒト胚および卵の凍結保存と移植)の実施に当たっては、胚および卵の保存やその識別が、安全かつ確実に行われるよう十分な設備を整え、細心の注意を払わねばならない。
 凍結保存においては、胚や卵の個々の識別はその容器への記載以外には不可能である。そこで、凍結保存に当たっては、胚や卵の識別が確実となるように各医療機関で工夫を行い、保存用の専用容器を置かなければならない。

(日本産科婦人科学会会告「ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する見解」)

  1)  精子・卵子・胚の操作、培養、保存などにあたって個々の識別、確認を実行すること。
2)  実施施設、保管場所を厳重に管理すること。
3)  実施記録、凍結胚保存台帳を厳重に管理・保管すること。
4)  採卵、胚移植などの処置にあたって、個々の患者と卵子・移植胚を厳重に識別し、また各部所においてもこれを再確認すること。

(日本産科婦人科学会会告「ART実施および施設管理に関しての留意点」)

 倫理的課題

(1)  生殖補助医療の安易な実施について

【国における議論等】
 生命倫理の観点から、人為的に生命を新たに誕生させる技術である生殖補助医療の利用は不必要に拡大されるべきではなく、生殖補助医療を用いなくても妊娠・出産ができるような場合における生殖補助医療の便宜的な利用は認められるべきではない。

(専門委員会報告)

【その他】
 本法(体外受精・胚移植)は、これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがないと判断されるものを対象とする。

(日本産科婦人科学会会告「「体外受精・胚移植」に関する見解」)

 本法(顕微授精)は、難治性の受精障害で、これ以外の治療によっては妊娠の見込みがないか極めて少ないと判断される夫婦のみを対象とする。

(日本産科婦人科学会会告「顕微授精法の臨床実施に関する見解」)

(2)  生殖補助医療の対象について(法律婚、事実婚)

【国における議論等】
 子を欲しながら不妊症のために子を持つことができない法律上の夫婦に限ることとし、自己の精子・卵子を得ることができる場合には精子・卵子の提供を受けることはできない。

(生殖補助医療部会)

【その他】
 被実施者は婚姻しており、挙児を希望する夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐えうる状態にあり、成熟卵の採取、着床および妊娠維持が可能なものとする。

(日本産科婦人科学会会告「「体外受精・胚移植」に関する見解」)

(3)  生殖補助医療を受けることができる年齢について

【国における議論等】
 加齢により妊娠できない夫婦は対象とならない。
 「加齢により妊娠できない」ことの判定については、医師が専門的見地より行うべきものから、医師の裁量とする。
 ただし、実施に当たって医師が考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示すこととし、その具体的な内容としては、自然閉経の平均年齢である50歳ぐらいを目安とすることとし、それを超えて妊娠できない場合には、「加齢により妊娠できない」とみなすこととする。

(生殖補助医療部会)

【その他】
 被実施者は婚姻しており、挙児を希望する夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐えうる状態にあり、成熟卵の採取、着床および妊娠維持が可能なものとする。

(日本産科婦人科学会会告「「体外受精・胚移植」に関する見解」)

(4)  精子・卵子・胚の保存期間について

【国における議論等】
 提供された精子・卵子・胚の保存期間について、提供された精子・卵子の保存期間は2年間とする。提供された胚及び、提供を受ける夫婦の精子・卵子と提供された精子・卵子とを受精させて得られた胚は、保存期間を10年間とする。

(生殖補助医療部会)

【その他】
 胚の凍結保存期間は、被実施者夫婦の婚姻の継続期間であって且つ卵を採取した母体の生殖年齢を超えないこととする。卵の凍結保存期間も当該婦人の生殖年齢を超えないものとする

(日本産科婦人科学会会告「ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する見解」)

(5)  死亡した配偶者の精子・卵子及び死亡した配偶者の精子・卵子を用いて作成した胚を用いた生殖補助医療について

【国における議論等】
 精子・卵子・胚の提供者の死亡が確認されたときには、提供された精子・卵子・胚は廃棄することとする。

(生殖補助医療部会)

(6)  インフォームド・コンセントの実施について
 (特に、体外受精・顕微授精によって作成した胚の利用・廃棄についての十分な説明・同意を行っているか?)

【国における議論等】
 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行う実施医療施設は、当該生殖補助医療を受ける夫婦が、当該生殖補助医療を受けることを同意する前に、当該夫婦に対し、当該生殖補助医療に関する十分な説明を行わなければならない。

 精子・卵子・胚の提供を受ける実施医療施設は、当該精子・卵子・胚を提供する人及びその配偶者が、当該精子・卵子・胚の提供に同意する前に、当該精子・卵子・胚の提供者及びその配偶者に対し、当該精子・卵子・胚の提供に関する十分な説明を行わなければならない。

 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行う実施医療施設は、当該生殖補助医療の実施の度ごとに、当該生殖補助医療の実施について、夫婦それぞれの書面による同意を得なければならない。

 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施医療施設は、当該精子・卵子・胚の提供者及びその配偶者から、精子・卵子・胚の提供及び生殖補助医療への使用についての書面による同意を得なければならない。

(以上、生殖補助医療部会)

【その他】
 日本産科婦人科学会会告「「体外受精・胚移植」に関する見解」、「ヒト胚及び卵の凍結保存と移植に関する見解」、及び、「顕微授精法の臨床実施に関する見解」によるインフォームド・コンセントに関する規制。

(7)  非配偶者間生殖補助医療を配偶者間だと詐称して行われる危険性について

【国における議論等】
 生殖補助医療部会の検討結果としては、非配偶者間生殖補助医療は、匿名関係であることを条件とすることとなっていることより、非配偶者間生殖補助医療に関する具体的な制度整備を行うことによって、顕名関係の男女が配偶者間だと詐称することによって行われる非配偶者間生殖補助医療は規制され得るものと考える。

 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けることを同意をする夫婦に対しては、パスポート、運転免許証等の本人の顔写真のついてあるものによる確認等により確実な本人確認を行い、また、戸籍謄本による確認等により法的な夫婦であることの確認を行うこととする。

(以上、生殖補助医療部会)

【その他】
 体外受精を行う病院においては、患者夫婦の戸籍を確認しておくことが望ましい。

(日本産科婦人科学会会告「「体外受精・胚移植」に関する見解」)

 生殖補助医療技術に関する専門委員会報告には、以下の記述があるところ。

 本専門委員会においては、親子関係の確定や商業主義等の観点から、その実施に当たって特に問題が生じやすい精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療について検討を行い、その検討結果をとりまとめたところであるが、本報告書における結論の中には、(中略)、生殖補助医療一般に関しても適用できるものが存在することから、他の形態の生殖補助医療についても、その適用が可能な範囲内で本報告書における結論にそった適切な対応がなされることが望まれる


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