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資料2


提供における匿名性の保持の特例について(案)


1.匿名性の保持の特例の是非

 
 精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例を認める。

 精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例として、匿名性が担保できる提供者が存在しない場合には、精子・卵子・胚の提供者及び提供を受ける人に対して、十分な説明・カウンセリングの機会が保障され、かつ、当該精子・卵子・胚の提供が生まれてくる子の福祉や当該精子・卵子・胚を提供する人に対する心理的な圧力の観点から問題がないこと及び金銭等の対価の供与が行われないことを条件として、匿名性を担保できない者からの精子・卵子・胚の提供を認めることとする。

【考え方】

(提供者の確保)
 精子・卵子・胚の提供の対価を受け取ることを禁止することから、提供者がリスクを負うこととなる卵子の提供をはじめとして、精子・卵子・胚を提供する人が兄弟姉妹等以外に存在しない事態が起こることも想定されるところである。(専門委員会報告書)

(匿名性が担保できない場合の弊害)
 しかしながら、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることとすれば、必然的に精子・卵子・胚を提供する人の匿名性が担保されなくなり、また、遺伝上の親である精子・卵子・胚を提供した人が、その提供を受けた人や当該提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療により生まれた子にとって身近な存在となることから、精子・卵子・胚を提供した人が兄弟姉妹等でない場合以上に人間関係が複雑になりやすく子の福祉の観点から適当ではない事態が数多く発生することが考えられる。(専門委員会報告書)

(一律禁止の妥当性)
 一方、上記のような兄弟姉妹等が精子・卵子・胚を提供した場合の弊害の発生の可能性を理由として、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を、精子・卵子・胚を提供する人及びその提供を受ける人に対して、そうした弊害についての十分な説明・カウンセリングが行われ、当該精子・卵子・胚を提供する人及びその提供を受ける人がそうした弊害について正しく認識し、それを許容して行う場合についてまで一律に禁止するのは適当でないと考えられる。(専門委員会報告書)

2.匿名性の保持の特例の範囲

 
 兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認める。
 (匿名性の保持の特例の範囲は特に限定しない。)

 公的管理運営機関は兄弟姉妹等からの提供の妥当性について事前審査を行い、その適否を個々の事案ごとに決定する。

【考え方】

(兄弟姉妹以外を一律に限定することは適当か)
 匿名性の保持の特例として、代表的には兄弟姉妹からの提供が考えられるところではあるが、提供者に十分な説明・カウンセリングの機会が保障され、かつ、実施医療施設の倫理委員会及び公的管理運営機関の審査会の事前の審査により、提供者に対する心理的な圧力の観点から問題がないこと及び金銭等の対価の供与が行われないことなどが確認される本制度において、当事者の個別具体の状況や考え方を勘案せず、提供を受ける者との血縁的な遠近のみによって一律に兄弟姉妹以外の者を対象外とすることは、特定の血縁関係を重視することともなり、提供者の範囲を過度に限定するものと考えられる。 このため、匿名性の保持の特例の範囲は「兄弟姉妹等」として、対象者の範囲を特に限定しないこととする。

(匿名性の保持の特例の範囲を姉妹等からの卵子の提供に限定する必要があるか)
 卵子については匿名の方からの提供を受けることが期待しがたいため、卵子の提供についてだけ匿名性の保持の特例として姉妹等からの提供を認めるべきという意見もあるが、出自を知る権利の内容等の制度整備の結果としては、今後、精子についても十分な提供数が確保されない可能性がある。
 このため、匿名性の保持の特例の範囲として、姉妹等からの卵子の提供に限定する必要はないものと考えられる。
 (精子・卵子・胚のいずれについても【提供数>希望数】となる場合は、そもそも匿名性の保持の特例の対象とならない。)

(個別事案に対する二重審査)
 兄弟姉妹からの提供に当たっては、実施医師が恣意的な判断により特例を濫用することを防止するため、個々の事例ごとに、事前に実施医療施設内の倫理委員会が、実施の適否、留意事項、改善事項等の審査を行い、さらに当該審査において実施の承認を得た事例については、公的管理運営機関の審査会が、個々の事例ごとに生殖補助医療の医学的妥当性、倫理的妥当性及び提供による生殖補助医療の結果生まれる子の福祉について等の観点から総合的に審査を行い、その適否を決定する。

3.匿名性の保持の特例を認める条件

(1)内容面の条件

 
(1)  匿名での提供者が存在しないことの確認
 公的管理運営機関に確認

(2)  自発的な提供の意思の確認
 実施医療施設の倫理委員会及び公的管理運営機関の審査会において、提供者に対する心理的な圧力の観点から問題がないことの確認を行う。

(3)  金銭等の対価の供与が行われないことの確認
 実施医療施設の倫理委員会及び公的管理運営機関の審査会において、金銭等の対価の供与が行われないことの確認を行う。(P)

(2)手続き面の条件

 
(1)  インフォームド・コンセントの実施
 兄弟姉妹等が精子・卵子・胚を提供した場合の弊害の発生の可能性について十分な説明の実施 等

(2)  カウンセリングの機会の保障

(3)  実施医療機関による倫理委員会の審査

(4)  公的管理運営機関による審査会の審査

4.子供が生まれた後の相談業務

   生まれた子どもに関する相談については児童相談所等が公的管理運営機関等と連携をとりながら対応する。


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