戻る

参考資料3

事務連絡
平成14年12月11日

各厚生労働大臣認可

水道事業者
水道用水供給事業者


担当官 殿

厚生労働省健康局水道課


水道事業等における第三者への業務委託の対象業務の考え方について


 厚生労働省においては、本年度から3カ年の予定で、昨年の水道法改正によって新たに制度化された第三者への業務委託に関する運用ガイドラインを取りまとめることとし、検討を進めているところです。
 この度、これまでに水道事業者などから特に質問、問い合わせの多い、委託対象業務の考え方について検討結果を取りまとめましたので、ご参考までにお知らせいたします。
 本制度は、水道事業者の大半を中小事業者が占める現状にかんがみ、水道の適正な管理を維持していくための選択肢の充実を図ることを目的としています。貴職におかれましては、別添資料を参考にして、本制度採用の可否も含めて、所要の検討を行っていただきたいと存じます。
 なお、別添資料は暫定的に取りまとめたものであり、今後、運用実態等に応じて適宜見直しを行うこととしていますので、念のため申し添えます。


(別紙)

水道事業における第三者への業務委託の対象業務の考え方(暫定案)

1.目的と前提

 平成13年に改正された水道法において、新たに水道の管理業務の第三者委託制度が盛り込まれた。改正水道法においては、水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を他の水道事業者等に委託することができるとされている。また、業務委託を行う場合は、技術上の観点から一体として行わなければならない業務を単一の者に委託しなければならないとされている。
 このような規定を踏まえ、本案は、第三者委託制度の円滑な運用を図るために、委託を行う場合に一体として取り扱うべき業務の範囲について、基本的な考え方を示すものである。また、本案は、暫定的に取りまとめたものであり、今後の運用実態や一層の検討に伴って変更がありうる。

2.用語の定義

 用語の定義は、水道法の定義によるほか、以下のとおりとする。
(1)第三者委託
 水道法第24条の3(準用を含む。)に基づく業務の委託をいう。
(2)法定外委託
 水道事業者等が第三者委託以外で外部に対して行う業務の委託をいう。
(3)水道事業者等
 第三者委託の委託者となりうる水道事業者、水道用水供給事業者、専用水道の設置者をいう。

3.制度の概要

(1)水道法の関連規定
 水道法(以下、「法」という。)第24条の3(業務の委託)及び第31条、第34条(準用)に基づき、水道事業者等による他の市町村等の第三者への業務委託の制度を水道法上明確に位置付けたもの。これにより、水道事業者等と需要者以外の第三者を介在させた水道事業の形態を法律上位置付けたことになる。
 浄水場の運転管理や水質管理等、高い技術力を要する業務を、これに伴う刑事責任(罰則の適用)も含めて移管する制度を設定したもの。委託可能者は、水道事業者、水道用水供給事業者、専用水道の設置者としており、受託可能者は、水道事業者、水道用水供給事業者、政令第8条の条件に合致する者としている。
 水道事業者の大半が地方公共団体である現状を踏まえれば、当面、中小水道事業者の業務を近隣の大規模な水道事業者や水道用水供給を行っている水道用水供給事業者が受託するという形態が想定される。また、近隣の水道事業者等が受託者とならない場合等には、経理的、技術的能力を有する民間事業者等が技術的業務を担う場合もある。

(1)第三者委託の基準(政令第7条)
 水道事業者等の水道の管理に関する技術上の業務委託について、水道事業者等と受託者の責任関係が明確になるための要件として、
水道施設の管理業務については、技術上の観点から一体として行わなければならない業務の全部を一の者に委託すること。
給水装置の管理業務については、給水区域全体の業務を委託すること。
書面による委託契約を行うこと。
(2)第三者委託の受託者の要件(政令第8条)
 受託者の要件として、受託業務を行うに足りる経理的及び技術的基礎を有することとする。
(3)受託水道業務技術管理者の資格(政令第9条)
 水道事業者等に置かれる水道技術管理者の資格要件と同等とする。
(4)委託の届出(省令第17条の4)

(2)委託者と受託者の責任関係等
 業務を委託する場合においては、当該委託された業務の範囲内において、水道管理業務受託者を水道事業者等と、受託水道業務技術管理者を水道技術管理者とみなし適用する。また、この場合、委託された業務の範囲内において、水道事業者等及び水道技術管理者には、これらの規定は適用しない(法第24条の3第6項)。
 なお、受託者を選定する際に委託基準の遵守(法第24条の3第1項)が求められるほか、給水義務(法第15条、第31条(準用))等の需要者等に対する責任は、水道事業者等の固有の責任である。

(3)再委託について
 本制度は、認可等を受けた水道事業者等と受託者との関係を規定したものであり、受託者からの委託制度を設けていないことから、いわゆる丸投げの再委託はできない。ただし、水道事業者等の法定外委託が可能なように、受託者が同様の外部委託を行うことは可能であるが、この場合の水道法上の責務はあくまで水道事業者等からの受託者にある。

4.業務委託の範囲

(1)水道法の規定と業務委託の範囲の考え方
 第三者委託である『水道の全部又は一部の管理に関する技術上の業務の委託』については、”技術上の観点から一体として行わなければならない業務”については分割できない旨の制限がなされている。この『一部の管理に関する技術上の業務の委託』をどのように解するかが、業務委託の範囲を考える際に重要である。
 また、ここでいう『水道の管理に関する技術上の業務』とは、字義のとおりであるが、水道施設が所要の性能を発揮するための運転、維持管理をいう。この管理業務には、施設整備、施設更新等を含まず、消耗品交換や事故時の応急対応まで、いわゆる保守点検に関する業務を含むものと考えられる。

(2)「技術上の観点から一体として行わなければならない業務」の考え方

(1)「水道」、「水道施設」について
 「水道」は、水道法の定義のとおり、「人の飲用に適する水として供給する施設の総体」であり、水道事業者等の関連施設については、基本的に「水道施設」と「給水装置」に分類される。
 「水道施設」は、『取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設及び配水施設であって水道事業者等の管理に属するもの』とされている。
 給水装置については、「給水区域内に存する給水装置の管理に関する技術上の業務の全部」とされている。

(2)「技術上の観点から一体として行わなければならない業務」の判断基準
 『技術上の観点から一体として行わなければならない業務』については、政令第七条の委託基準から明らかなように、まずは、水道施設と給水装置を区分して委託することができる。給水装置については、その全部を委託しなければならず、水道施設の管理については、更に、『その全部又は一部』を委託可能とされている。
 ここでは、その判断について議論のある、『水道施設の管理に関する技術上の業務の一部』について、その考え方、判断基準を示すものとする。
 『技術上の観点から一体として行わなければならない業務』であるか否かについては、以下のアからウの3つの観点から判断されるべきものと考えられる。ただし、あくまで水道事業者等の管理に属する水道施設が対象であることから、アからウの要件以前に水道事業者等の管理に属することが優先する(後述する5.(3)(1)参照のこと。)。
 第三者委託の対象は、緊急時も含めた委託者・受託者間の責任関係が明確となる管理業務の独立性や職務従事者管理の独立性を確保するとの意味も含めて、対象施設等にも相応の独立性が求められる。
 なお、緊急時対応として受託者に求められる体制は、水道事業者等に通例求められる技術的業務の範囲であり、水道事業者が直接業務を実施する際において、他の水道事業者などに緊急支援を要請することなど、技術的業務の範囲を超える対応までを求めるものではない。

ア.管理業務としての一体性
 委託業務の対象範囲の検討に際して、対象管理業務での運転事故等の悪影響を遮断できる範囲までを対象とするなど、一体的に管理業務を行うことができる範囲とする必要がある。緊急時の対応においても、責任関係を明確にする上で、例えば遮断弁を業務範囲の境界にとるなど、緊急時も考慮して管理を一体的に行うべき範囲全体を委託業務の対象とする必要がある。
 また、対象管理業務について、明確な管理目標が設定できること。又は、管理業務の具体内容を明確にできることが必要である。管理目標としては、水質、水量、水位等の数値目標が管理目標の典型的な例であるが、これ以外にも操作マニュアルや簡易マニュアル的なもので管理業務を示すこと、また、具体的な作業を網羅的に示す形態もありうる。少なくとも書面契約において明示できるような管理目標を定め責務関係を明確化にする必要がある。

イ.職務従事者管理の独立性
 業務を実際に行う職務従事者の職務管理が独立して実施可能である必要がある。職務従事者が無用に混在せず業務の実施が可能なことが望ましく、少なくとも職務従事者の立ち入るエリアを特定するなど、職務従事者の業務管理ができる業務環境であることが必要である。

ウ.施設の独立性
 ア、イの要件とも一部重複するが、管理対象施設を明確にできることが必要である。

5.実際の適用について

(1)一部委託の基本的な考え方
 水道施設の分類である、取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設、配水施設の個々の管理業務を第三者委託対象業務の最小範囲とすることを原則とする。各施設とも複数存在する場合においては、4.(2)(2)で示した判断基準が満たされれば各々の施設の管理業務ごとの委託が可能である。以下の典型例を示す。

【第三者委託の対象範囲の概念図】
点線枠 :第三者委託の対象範囲(最小範囲)

 水道事業者の管理に属する施設のパターンごとの対象範囲の最小範囲を以下に模式的に示す。

(1)単一系列の場合
図

(2)独立の複数系列の場合
図

(3)系列が接続されている場合

 a)導水管接続
図

 b)配水管網接続
図

 c)導水・配水管網が接続されているが遮断が可能
図



(2) 第三者委託の対象業務とならない例

(1)夜間業務等の時間制の委託
 水道施設の管理業務は、その業務結果が時間のずれを持って発現することから、委託者と受託者の間の責任関係があいまいになる可能性が高く、時間制の委託は第三者委託制度になじまない。

(2)監視員等の人材派遣委託
 水道施設の管理業務は、その場の人材配置のみによりなされているものではない。第三者委託は、緊急時対応を含めて、その施設の管理業務を滞りなく遂行することが求められる。このため、警備、監視等の単なる人材派遣のような委託形態は第三者委託の対象とはならない。前述のとおり、当然のことながら、緊急時対応として受託者が求められる体制は、水道事業者が通例求められる範囲であり、第三者委託制度を採用しない水道事業者が、緊急応援を余儀なくされるような事態についてまでの対応を求めるものではない。

(3)管理業務対象施設の境界の考え方

(1)占有施設境界の優先
 水道用水供給事業からの受水事業者のように、必ずしも(1)で示した施設区分に従って施設を占有しない場合がある。このような場合については、その占有境界を優先して対象業務を規定するのも致し方ない。

(2)立地場所の不問
 遠隔管理等の発展、普及に伴い、浄水場等において、他の浄水場も含めた他施設の運転管理を行うなど、必ずしも施設と施設管理業務の実施場所が一致しているわけではない。こういった業務形態においては、浄水場で行われている法定外委託と浄水施設に関する第三者委託は必ずしも一致しない。
 このような場合においては、第三者委託と法定外委託を組み合わせて対応することも考えられる。

(3)一部委託が困難な場合
 実際の施設状況によっては、緊急遮断弁等も設置されておらず、施設区分の物理的境界や管理責任区分が明確にできない場合がありうる。また、送水施設、配水施設などで、複数の施設機能を同時に果たす施設構成である場合もある。このように4.(2)(2)の判断基準を満たしがたい場合においては、(1)で原則として示してきた最小範囲が適用できず最小範囲をいくつかまとめた範囲で行うべき場合や第三者委託の一部委託が適用できず、第三者委託制度を適用するのであれば全部委託を行うこととなる水道施設もありうる。

6.その他

(1)最小範囲の組み合わせ
 ここで示した範囲は、第三者委託制度の最小の範囲を示したものであることから、この最小範囲を組み合わせ、その総体を第三者委託とすることは当然可能である。技術業務の実情に合わせ適切な範囲を選択すべきことは、5.(3)(3)で既に述べたとおりであり、過度な細分化は制度の趣旨に添わない可能性があることを留意されたい。

(2)水質検査の取扱い
 水道法に基づく水質基準は、施設の総体である水道が満たすべき基準として規定されていることから、水質検査の義務は第三者委託のうち水道施設の全部委託の場合以上の範囲を委託する場合に限って受託者側の責務となる。
 浄水施設に関する第三者委託などにおいて、水質管理を求めたい場合、あくまで管理目標として委託契約の中に盛り込むべきものであり、法第20条に定められる水質検査とは異なるものとして整理する必要がある。なお、浄水施設に関する第三者委託の場合、鉛や消毒副生成物などについて定められている水質基準については、当該項目の基準値が管理目標に適さないものがあることに留意する必要がある。


【関係条文】
○水道法
(用語の定義 )
三条 この法律において「水道」とは、導管及びその他の工作物により、水を人の飲用に適する水として供給する施設の総体をいう。ただし、臨時に施設されたものを除く。
 この法律において「水道施設」とは、水道のための取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設及び配水施設(専用水道にあつては、給水の施設を含むものとし、建築物に設けられたものを除く。以下同じ。)であつて、当該水道事業者、水道用水供給事業者又は専用水道の設置者の管理に属するものをいう。
(水道技術管理者)
十九条 水道事業者は、水道の管理について技術上の業務を担当させるため、水道技術管理者一人を置かなければならない。ただし、自ら水道技術管理者となることを妨げない。
 水道技術管理者は、次に掲げる事項に関する事務に従事し、及びこれらの事務に従事する他の職員を監督しなければならない。
 水道施設が第五条の規定による施設基準に適合しているかどうかの検査
 第十三条第一項の規定による水質検査及び施設検査
 給水装置の構造及び材質が第十六条の規定に基く政令で定める基準に適合しているかどうかの検査
 次条第一項の規定による水質検査
 第二十一条第一項の規定による健康診断
 第二十二条の規定による衛生上の措置
 第二十三条第一項の規定による給水の緊急停止
 第三十七条前段の規定による給水停止
 水道技術管理者は、政令で定める資格を有する者でなければならない。
(業務の委託)
二十四条の三 水道事業者は、政令で定めるところにより、水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を他の水道事業者若しくは水道用水供給事業者又は当該業務を適正かつ確実に実施することができる者として政令で定める要件に該当する者に委託することができる。
 水道事業者は、前項の規定により業務を委託したときは、遅滞なく、厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。委託に係る契約が効力を失ったときも、同様とする。
 第一項の規定により業務の委託を受ける者(以下「水道管理業務受託者」という。)は、水道の管理について技術上の業務を担当させるため、受託水道業務技術管理者一人を置かなければならない。
 受託水道業務技術管理者は、第一項の規定により委託された業務の範囲内において第十九条第二項各号に掲げる事項に関する事務に従事し、及びこれらの事務に従事する他の職員を監督しなければならない。
 受託水道業務技術管理者は、政令で定める資格を有する者でなければならない。
 第一項の規定により水道の管理に関する技術上の業務を委託する場合においては、当該委託された業務の範囲内において、水道管理業務受託者を水道事業者と、受託水道業務技術管理者を水道技術者とみなして、第十三条第一項(水質検査及び施設検査の実施に係る部分に限る。)及び第二項、第十七条、第二十条から第二十二条まで、第二十三条第一項、第三十六条第二項並びに第三十九条の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。この場合において、当該委託された業務の範囲内において、水道事業者及び水道技術管理者については、これらの規定は、適用しない。
 第一項の規定により水道の管理に関する技術上の業務を委託する場合においては、当該委託された業務の範囲内において、水道技術管理者については第十九条第二項の規定は適用せず、受託水道業務技術管理者が同行各号に掲げる事項に関するすべての事務に従事し、及びこれらの事務に従事する他の職員を監督する場合においては、水道事業者については、同条第一項の規定は、適用しない。

○水道法施行令
(業務の委託)
七条 法第二十四条の三第一項 (法第三十一条 及び第三十四条第一項 において準用する場合を含む。)の規定による水道の管理に関する技術上の業務の委託は、次に定めるところにより行うものとする。
 水道施設の全部又は一部の管理に関する技術上の業務を委託する場合にあっては、技術上の観点から一体として行わなければならない業務の全部を一の者に委託するものであること。
 給水装置の管理に関する技術上の業務を委託する場合にあつては、当該水道事業者の給水区域内に存する給水装置の管理に関する技術上の業務の全部を委託するものであること。
 次に掲げる事項についての条項を含む委託契約書を作成すること。
 委託に係る業務の内容に関する事項
 委託契約の期間及びその解除に関する事項
 その他厚生労働省令で定める事項
八条 法第二十四条の三第一項 (法第三十一条 及び第三十四条第一項 において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める要件は、法第二十四条の三第一項 の規定により委託を受けて行う業務を適正かつ確実に遂行するに足りる経理的及び技術的な基礎を有するものであることとする。
(受託水道業務技術管理者の資格)
九条 法第二十四条の三第五項 (法第三十一条 及び第三十四条第一項 において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める資格は、第六条の規定により水道技術管理者たる資格を有する者とする。

○水道法施行規則
(委託契約書の記載事項)
十七条の三 令第七条第三号 ハに規定する厚生労働省令で定める事項は、委託に係る業務の実施体制に関する事項とする。
(業務の委託の届出)
十七条の四 法第二十四条の三第二項 の規定による業務の委託の届出に係る厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
 水道事業者の氏名又は名称
 水道管理業務受託者の住所及び氏名(法人又は組合にあつては、主たる事務所の所在地及び名称並びに代表者の氏名)
 受託水道業務技術管理者の氏名
 委託した業務の範囲
 契約期間
 法第二十四条の三第二項 の規定による委託に係る契約が効力を失つたときの届出に係る厚生労働省令で定める事項は、前項各号に掲げるもののほか、当該契約が効力を失つた理由とする。


トップへ
戻る