給付と負担の在り方(2)
第14回社会保障審議会年金部会の資料1(「給付と負担の在り方(1)」)の中で採りあげられている給付と負担の見直しの方式のうち、保険料固定方式についての補足的な資料をとりまとめたものである。 |
目次
1 保険料負担の固定(保険料固定方式に関して)(1) | 財政再計算規定の改正 | |
(2) | 保険料負担について何を固定するか |
(1) | マクロ経済スライドの基本的な考え方 | |
(2) | 実績準拠法、将来見通し平均化法(新規裁定年金に関して) | |
(3) | スライド特例期間(給付水準調整期間)中の年金改定率(スライド率)の指標(新規裁定年金に関して) | |
(4) | 基礎年金と報酬比例年金 |
1 保険料負担の固定(保険料固定方式に関して)
(1) 財政再計算規定の改正
○ | 保険料固定方式を導入する場合には、財政再計算に伴い保険料(率)に所要の調整が加えられるべきものとされている現行年金法の規定を改正し、保険料(率)が将来にわたって固定されることとすることが必要。 |
○ | 給付については、一人当たり賃金や物価の上昇に応じて年金給付が自動的に改定されることを原則として規定するとともに、マクロ経済スライドを適用するスライド特例期間(給付水準調整期間)について規定することが必要。 |
○ | なお、保険料固定方式を導入し、給付水準が自動調整される仕組みとした場合にも、人口、経済等の社会経済情勢の変動を踏まえ、定期的に(少なくとも人口推計が見直される5年ごとに)年金財政の検証が必要と考えられる。 |
○ | 特に、スライド特例期間中は、財政見通しと比較して、給付水準調整の実際の進行度合いがどの程度であるか、最終的な給付水準が変更されるかどうか等について検証が必要と考えられる。 |
現行年金法における財政再計算規定
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(2) 保険料負担について何を固定するか
○ | 保険料固定方式を導入する場合には、厚生年金、国民年金ともに、1)最終的な保険料水準を固定することが必要。
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○ | また、2)最終的な保険料水準に到達するまでの引上げ階段についても固定することが必要。この場合、次の2つの方法が考えられる。 |
(@) | 引上げ1回ごとの引上げ幅を固定
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(A) | 各引上げ階段に対応する保険料(率)を引上げ年とともに固定
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○ | なお、最終的な保険料水準を固定するためには、その前提として、基礎年金国庫負担割合が定まっていることが必要。 |
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○ | 国民年金保険料については、1)次期年金制度改正時(平成16年)の価格表示での保険料の額を規定するとともに、2)これを将来の時点時点の名目保険料額に換算するための指標を規定する。
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○ | 国民年金と厚生年金の被保険者に対して同等の賦課ベースを適用する観点からは、被用者年金の被保険者の一人当たり賃金上昇率を指標として、固定した国民年金保険料を名目額に換算することが考えられる。(図表1)(平成11年財政再計算では、国民年金保険料は、被用者年金の被保険者の一人当たり手取り賃金上昇率で割り戻した平成11年度価格で表示している。) |
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○ | 保険料固定方式では、厚生年金と国民年金の最終保険料水準は、両者の水準の程度が基礎年金と報酬比例年金の水準調整度合いに関係してくる。保険料負担の固定に当たっては、このような厚生年金と国民年金の保険料水準の相互関係についても考慮することが必要である。 |
2 給付水準の調整方法(マクロ経済スライド)
(1) マクロ経済スライドの基本的な考え方(図表2)
○ | 現行の年金給付の改定方法は、
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○ | 賦課方式を基本とした社会保険方式を採る年金制度では、社会全体が生み出す所得や賃金の一部を保険料負担として求め、これを年金給付に充てている。マクロ経済スライドは、このような賦課方式の考え方を踏まえ、年金制度を支える力である社会全体の所得や賃金の変動率に応じて年金改定率(スライド率)が自動的に設定されることにより、給付水準を時間をかけて緩やかに調整する仕組みである。 |
○ | マクロ経済スライドでは、次世代育成支援策により少子化傾向に改善がみられるなど、社会経済情勢が将来好転した場合には、そのことが社会全体の総賃金や被保険者数等の指標の変化を通じて年金改定率(スライド率)を自動的に押し上げるので、給付水準は想定よりも改善されることになる。 |
○ | 固定した最終的な保険料水準による負担の範囲内で年金財政が安定する見通しが立つまでの間、年金改定率(スライド率)についてマクロ経済スライドを適用する。
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○ | 固定した最終的な保険料水準による負担の範囲内で年金財政が安定する見通しが立つ、その時点に実際に到達したとき(「方向性と論点」の基準ケースの試算では2032年)、スライド特例期間は終了する。その後は、一人当たり賃金や物価の上昇を反映している現行の年金給付の改定方法に復帰する。 |
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○ | 保険料固定方式を導入し、給付水準が自動調整される仕組みとした場合にも、人口、経済等の社会経済情勢の変動を踏まえ、定期的に(少なくとも人口推計が見直される5年ごとに)年金財政を検証していくこととなるが、特にスライド特例期間中は、財政見通しと比較して、給付水準調整の実際の進行度合いがどの程度であるか、最終的な給付水準が変更されるかどうか等について検証が必要である。 《検証の具体的内容》
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○ | この将来見通しにおいて、直ちにスライド特例期間を終了しても、将来の年金財政が安定化できる場合には、スライド特例期間を終了する。 |
○ | 「方向性と論点」の試算では、一人当たりの賃金や物価の上昇に加えて、少子化等の社会経済情勢の変動に伴う労働力人口や被保険者数の変動率を年金改定率(スライド率)に反映させるため、
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○ | 「方向性と論点」では、スライド調整率の設定に当たって、次の二つの方法について試算。(詳細は次の項を参照。)
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○ | 「方向性と論点」では、単年度当たりの年金改定率(スライド率)に下限を設けることとし、次の二つの方法について、試算。(図表3)
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(2) 実績準拠法、将来見通し平均化法(新規裁定年金に関して)
実績準拠法 | 将来見通し平均化法 | |||||||||||||
考え方 | 少子化による労働力人口(被保険者数)の減少等が、マクロの経済成長率や社会全体の賃金総額に現に反映し始めたときに、それに応じて自動的に給付水準の調整を行う方法。 | 少子化による労働力人口(被保険者数)の減少等の将来に向けての変動見通しについて、その傾向の平均をあらかじめ織り込んで自動的に給付水準の調整を行う方法。 | ||||||||||||
具体例 | マクロ経済スライドを適用する特例期間中、新規裁定年金の年金改定率(スライド率)、即ち厚生年金の賃金再評価及び基礎年金の政策改定を、被用者の総賃金(手取りベース)の伸びの実績により行う。 既裁定年金の改定率(スライド率)は、物価上昇率からスライド調整率を控除した率とする。 |
少子化等の社会経済情勢の変動の将来見通しに基づき設定する一定率(=スライド調整率)を、現行の年金改定率(スライド率)から控除する。 例えば、労働力人口や被保険者数の変動率の将来見通しに基づきスライド調整率を設定し、これを現行の年金改定率(スライド率)から控除する。 |
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論点 |
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○ | 保険料固定方式は、固定した最終的な保険料水準による負担の範囲内で、少子化等の社会経済情勢に応じて、給付水準が幅をもって自動的に変動するという考え方を基本としている。この考え方からは、将来見通しに応じた自動調整(将来見通し平均化法)よりも、実績に応じた自動調整(実績準拠法)の方が基本的に適合的である。 |
○ | 一方、実績準拠法では、将来見通し平均化法と比べ給付水準調整の本格化が遅くなるため、世代間の公平の観点から、将来見通し平均化法の方が適切との意見がある。 |
○ | また、将来見通し平均化法以外に、実績準拠法に修正を加える方法が考えられないか。(図表5)例えば、次のような方法について、どう考えるか。 |
1) 実績準拠法と将来見通し平均化法のスライド調整率の差を勘案
2) 寿命の伸びを勘案
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(3) スライド特例期間(給付水準調整期間)中の年金改定率(スライド率)の指標(新規裁定年金に関して)
○ | スライド特例期間終了後の年金改定率(スライド率)は、新規裁定年金については基礎年金、報酬比例年金ともに一人当たり手取り賃金上昇率を指標とすることが考えられるが(既裁定年金については物価上昇率)、スライド特例期間中のマクロ経済スライドの指標(新規裁定年金に関して)として、下記に掲げたものの中で、どれが適当と考えるか。 |
利点 | 論点 | |||||||||||||||||||||
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○ | 現在の可処分所得スライドとの連続性に鑑み、マクロ経済スライドにおいても、可処分所得割合を反映させることが適当。なお、「方向性と論点」における試算では、被用者年金の手取り総報酬を指標として用いている。 |
(4) 基礎年金と報酬比例年金
○ | 「方向性と論点」では、基礎年金と報酬比例年金を同じペースで給付水準が調整されることとして試算しているが、例えば、基礎年金と報酬比例年金に対して、1)異なるスライド調整率(実績準拠法、将来見通し平均化法)、2)異なるマクロ経済スライドの指標、3)異なる単年度当たりの年金改定率(スライド率)の下限(名目年金額下限型、物価下限型)を用いることが考えられるか。この場合、基礎年金と報酬比例年金では、マクロ経済スライドが適用されるスライド特例期間の長さや給付水準の調整度合いが、別々のものとなる。 |
近年の物価、賃金、消費支出の上昇率の推移
≪物価、賃金(名目)の推移≫
≪消費支出(名目)の推移≫
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