03/02/27 第24回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録           第24回 厚生科学審議会生殖補助医療部会                       平成15年2月27日(木)13:00〜17:00                         厚生労働省17階専用第18会議室             宮本室長  定刻になりましたので、ただ今から、第24回厚生科学審議会生殖補助医療部会を開催 いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日の 出欠でございますが、町野委員が御欠席ということで御連絡をいただいております。ま た、高久委員については後ほどお見えになるということで連絡をいただいております。 それでは早速議事に入りたいと思います。矢崎部会長、お願いいたします。 矢崎部会長  定刻を過ぎておりますが、まだ何人かの委員の先生方がいらっしゃっておりませんが 、きょうは4時間という時間をいただいて、一番難しい課題を議論していただこうとい うことで、今回も大変熱心に御出席いただきまして、一番意見を述べておられた町野委 員がきょうおられないので、なかなか結論づけるのは難しいような気がいたしますが、 とりあえず議論を進めさせていただきたいと思います。本日も大変たくさんの資料がご ざいますので、事務局からチェックをお願いいたします。 宮本室長  資料でございますが、番号が1〜8番となっておりまして、この中では4〜8番まで は各委員から提出いただきました資料ということでございます。参考資料としましては 1〜5番ということでございまして、1つ目は御意見をお寄せいただいたものの紹介と いうことで、3件ほどいただいた御意見を資料として提出させていただいております。 内容はごらんいただくということで割愛させていただきますが、個人の方から1件、団 体から2件ということでございまして、団体からの御意見は日本受精着床学会からのも の、フィンレージの会からのものということになっております。参考資料の2〜5番に つきましては吉村委員に主任研究者を務めていただいております、配偶子・胚提供を含 む統合的生殖補助技術のシステム構築に関する研究の研究成果ということでございまし て、ほぼこれに近い形で研究報告書を完成されるものであると聞いております。このほ か机上配付資料としましては才村委員から提出いただきました、子供の権利を擁護する ために、成人里子の生活と意識、という資料。それから、資料一覧にはございませんけ れども、松尾委員より提出いただきました資料。それから、ヒト胚核移植胚といったも のについて説明する資料。以上を配付してございます。確認をお願いいたします。 矢崎部会長  よろしいでしょうか。それでは議事に入りたいと思います。前回、終日を知る権利及 び兄弟姉妹等の提供について議論したいということを申し上げました。出自を知る権利 に関しましては、先ほどの参考資料に吉村委員からの報告書がございますし、また、こ の委員の方々からも個別に御意見をいただいているところであります。それらにつきま しては後ほど議論させていただくということで、まず初めに今まで事務局に加筆・修正 していただいた資料1、検討事項と検討結果の案がございます。青色に記した部分が前 回の議論を踏まえて加筆・修正した部分です。それについて皆様方から御意見を伺いた いと思いますので、まず事務局から説明していただけますか。 宮本室長  資料1でございますが、前回の議論による変更、これまで事務局作成ということで空 欄のまま置かせていただきましたものについて、吉村委員から提出いただきました資料 などをもとに記入したもの、そういったものにつきまして青色で埋めてあるところでご ざいます。こちらにつきまして順次紹介してまいります。  まず3ページでございますが、マッチングをする際に提供を受ける優先順位を決める 具体的は基準は、ということで、提供数より提供を受けることを希望する数が多い場合 には、この有無や待機期間等をもとに評価を行い、提供を受けることができる優先順位 を設定することとする、ということで包括的な記述を行っております。なおこの部分の 提供数、数といった表現、それから希望する数といったような表現、そういったものに ついては若干見当すべきではないかというような御意見もあると伺っております。  続きまして4ページにかかる部分ですが、AIDの部分に関しまして専門委員会報告 では、精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦のみが提供精子による人工授精を受 けることができる、としていたところでございますが、検討結果としまして、これまで の記述、精子の提供を受けなければ妊娠できないことの具体的な判定基準は、国として 義務的な基準を示さず医師の裁量とする。ただし、実施に当たって医師が考慮すべき基 準を国が法律に基づく指針として示す。AIDを受けることができる夫婦の考慮すべき 基準の具体的な内容としては、夫に精子提供を受ける医学的適応があり、かつ妻に明ら かな不妊原因がないか、あるいは治療可能である場合であることとする。※印以下でご ざいますが、精子提供を受けることができる医学的適応としまして、(1)無精子症と診断 され、かつ精巣生検法による精子回収を行っても成熟精子が存在しない場合。(2)無精子 症と診断され、かつ精巣生検法による精子回収を行っても精巣内に成熟精子が存在しな いと泌尿器科医によって判断されている場合。(3)Globozoosperimia(奇形精子症の一つ で、すべての精子が巨大な円形の頭部を持ち、受精能力がないもの)と診断されている 場合。(4)死滅精子症と診断され、かつ精巣生検法による精子回収を行っても生存精子が 得られなかった場合。(5)夫婦間の卵細胞質内精子注入法を相当回数実施したが妊娠に至 らなかった場合。(6)夫婦間の卵細胞質内精子注入法を相当回数実施したが受精卵が得ら れなかった場合。ということで記述してございます。  続きまして4〜5ページにかけての提供精子による体外受精でありますが、専門委員 会報告では女性に体外受精を受ける医学上の理由があり、かつ精子の提供を受けなけれ ば妊娠できない夫婦に限って、提供精子による体外受精を受けることができる、という ふうにしてきたところでございますが、検討結果としまして、女性の体外受精を受ける 医学上の理由があること、及び精子の提供を受けなければ妊娠できないことの具体的な 判定基準は国として義務的な基準は示さず、医師の裁量とする。ただし、実施に当たっ て医師が考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示す、という部分に追加しまし て、提供精子による体外受精を受ける夫婦の考慮すべき基準の具体的な内容としては、 夫に精子提供を受ける医学的適応があり、かつ以下のいずれかの場合であることとする 。(1)妻に卵管性不妊症や免疫性不妊症など体外受精を受ける医学的適応がある場合 。(2)AIDを相当回数受けたが妊娠に至らなかった場合。ということでございます 。また、提供された精子による卵細胞質内精子注入法が行われるのは、提供された精子 による通常の体外受精・胚移植では妊娠できないと医師によって判断された場合に限る こととするということでございます。  続きまして、提供卵子による体外受精ですが、専門委員会報告では、卵子の提供を受 けなければ妊娠できない夫婦に限って、提供卵子による体外受精を受けることができる としてきたところですが、検討結果としまして、卵子の提供を受けなければ妊娠できな いことの具体的な判定基準は国として義務的な基準は示さず、医師の裁量とする。ただ し、実施に当たって医師が考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示す。提供卵 子による体外受精を受けることができる夫婦の考慮すべき基準の具体的な内容としては 、当分の間、妻に妊娠の継続が可能な子宮があり、かつ臨床的診断として自己の卵子が 存在しない場合か、存在しても事実上卵子として機能しない場合に限ることとする。疾 患や状態としては以下のようなものとする、ということで、(1)卵巣形成不全。(2)卵巣 性無月経。(3)両側卵巣摘出術後。(4)放射線、抗がん剤などの外因による卵巣機能の廃 絶。こういったものでございます。また、提供された卵子による卵細胞質内精子注入法 が行われるのは、夫にも不妊症の男性因子があり、提供された卵子による通常の体外受 精・胚移植では妊娠できないと医師によって判断された場合に限ることとする。また、 提供された卵子と提供を受ける人の卵子の間で細胞質置換や核置換が行われ、その結果 生じた卵子は遺伝子の改変につながる可能性があるので、当分の間、不妊治療に用いる ことはできないこととする。このようにまとめてございます。最後の部分につきまして は後ほど吉村委員から紹介があると思います。  続きまして提供胚の移植でありますが、専門委員会報告では、胚の提供を受けなけれ ば妊娠できない夫婦が、提供された胚の移植を受けることができる、としてきたところ ですが、検討結果としまして、胚の提供を受けなければ妊娠できないことの具体的な判 定基準は国として義務的な基準を示さず、医師の裁量とする。ただし、実施に当たって 医師が考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示す、という部分に加えまして、 提供胚の移植を受けることができる夫婦の考慮すべき医学的基準の具体的な内容として は、男性に精子の提供を受ける医学上の理由があり、かつ女性に卵子の提供を受ける医 学上の理由があることとする。このような修正を行っております。  続きまして少し飛びますが10ページをお開きください。(2)精子・卵子・胚の提供 に対する対価の条件ということで、検討結果としましては、前回御議論いただいた部分 を修正してございまして、実費相当分として認められるものの具体的な範囲は、個々の 事例について実際に提供者が負った負担に応じた額を実費相当分として認めることとす る、というようにまとめてございます。また、提供を受ける人と提供者の間の実費相当 分の金銭等の対価の授受についてはどのように行うかという事項につきましては、実施 医療施設または公的管理運営機関は提供受ける者と提供者の間の匿名性を担保できる方 法で、提供を受ける者から実費相当分の金銭を受け取り提供者に渡すこととする、とい うことでございます。なお、皆様に最初にお送りしました資料から若干変更した点がご ざいまして、実施医療施設または、という部分について加筆してございます。  続きまして、提供者が精子・卵子・胚を採取するためにかかった医療費については、 提供を受ける者が全額負担することとする。金銭の授受の方法としては、提供を受ける 者と提供者の間で匿名性を担保できる方法で行うこととする、という案を加えてござい ます。それから11ページでございますが、シェアリングにおける金銭の授受等について ですが、シェアリングは提供を受ける者の金額的負担や、提供する精子・卵子・胚の数 などの諸条件について、提供を受ける者と提供者の間で匿名性を担保できる方法で契約 を交わし、その契約のもとに行うこととする、というようにしてございます。  続きまして29ページをお開きください。検討課題3の中の、提供された精子・卵子・ 胚による生殖補助医療に係る公的管理運営機関の業務の具体的な内容で、情報の管理業 務についてという中での、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けた夫婦 の同意書の保存。この中で、3)精子・卵子・胚の提供を受ける人に関する個人情報の 保存ということで、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けたが妊娠して いないことを確認できた場合を除き、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を 行った医療施設は、提供を受ける夫婦の個人情報を公的管理運営機関に提出しなければ ならないこととする、という部分。4)精子・卵子・胚の提供者に関する個人情報の保 存ということで、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けた人が妊娠して いないことを確認できたときを除き、精子・卵子・胚の提供医療施設は提供者の個人情 報を公的管理運営機関に提出しなければならないこととする、という変更を行っており ます。  続きまして38ページに飛んでいただきまして、マッチング業務の内容でございますが 、提供された精子・卵子・胚を提供医療施設から実施医療施設に移管する場合には、実 施医療施設の職員が提供医療施設に赴き、移管する精子・卵子・胚を携行して実施医療 施設に運搬することによって移管することとする。これにつけ加えまして、移管する際 には、提供者に関する個人情報のうち、実施医療施設が必要となる医学情報等を匿名化 を行った上で携行することとする、ということで、情報の移管に関する部分を修正して ございます。 戻っていただきまして23ページをお開きください。提供された精子・卵 子・胚による生殖補助医療によって生まれた子及び提供者の子供に対するカウンセリン グ、それから、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施後における提供を 受ける夫婦並びに提供者及びその配偶者に対するカウンセリングをどのようにするかと いうことでございまして、案を事務局で作成してございます。精子・卵子・胚の提供に より子供が生まれた後、(1)提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療によって生ま れた子、(2)提供者の子供、(3)精子・卵子・胚の提供を受ける夫婦及びその家族、(4)精 子・卵子・胚の提供者及びその家族、は、当該生まれた子供に関して児童相談所等に相 談することができることとする。児童相談所等は必要に応じて公的管理運営機関等と連 携をとることができることとする、ということでカウンセリングに関する体制の案を記 載してございます。  以上が変更点です。 矢崎部会長  どうもありがとうございました。事務局でまとめた部分、大部分は専門的な事柄であ りまして、それは専門家の方々で検討していただくということで、幾つか念を押さなけ ればいけない部分があるかと思います。まず3ページの、提供数より提供を受けること を希望する数が多い場合、これは漠然と定性的に言っておりまして、定量的にはここで は述べておりません。実際の数とかそういうのを入れますと、それが一人歩きしてしま いますので、こういうガイドラインは定性的な表現でまとめさせていただいた方がよろ しいのではないかということで、こういうふうにまとめさせていただきました。 吉村委員  「提供数」といいますと卵子提供だと非常に難しいことが出てきますので、私は「提 供より」の方がよりいいと思います。胚の数はわかってていいんですけれども、卵子の 数は幾つとれるかわからないような状況でありますので、「提供より」の方がよりいい のではないかと思います。精子を提供してくれる方もわかってていいと思います。卵子 に関しては3つとれるかもわからないし10個とれるかもわからないし20個とれるかもわ からないという、提供してくれる人からですね。そうするとそれが多いのか少ないのか ということを言いにくいところがあるので、「提供より」の方が私はいいんじゃないか と思うんですけど。  それともう1点、ここでは問題になってないんですけれども、自然閉経の年齢を50歳 ということを言いましたけど、私たちの厚生科学研究でやった場合におきましては、ほ とんどの方が45歳ということをおっしゃっておりましたことだけ一応お伝えしておきま す。これは社会的な要因がありますので、ここで50歳まででいいということであるなら ば、実施する方にとっては48歳、49歳の方だって福音を受けるわけですから私はいいと 思いますけれども、私たち専門家のレベルでは45歳までとするということが一応結論と して出されたことだけお伝えしておきます。 矢崎部会長  後半の部分は、加齢により妊娠できないという部分ですね。 吉村委員  そうです。もし50歳ということで皆さんがよろしいということであるならば、私はそ れで全然構わないと思います。 矢崎部会長  これも時代とともに変わっていく可能性があるので、それはそのときの医師の考慮す べき基準ですので、50歳ぐらいということでここでは一応。前半の文言、「提供より」 ということでよろしいでしょうか。 石井委員  「提供より」というふうにするのは、卵子については1人の提供者が1人の提供を受 ける人ということで、精子の方は提供者1人の提供が何人にもいくということを考える ということですか。 吉村委員  そういうことではありません。例えば「提供数」と書きますと何個とれるかわからな いですよね。「数」といった場合には卵子の場合には提供する個数だと思うんです。そ うなりますと、1対1の対応でいくのか1対3の対応でいくのかそれはわからないと思 うんですよ。そうなってくると、「提供数」というのをいうと数にとらわれてしまう。 胚は胚の数でわかりやすいんですけど、精子も1人の射出精液から多分3人ぐらいとれ る、これは大体2cc出るということであればわかっていますよね。ですけど卵子に関し ては数が幾つとれるかわからない。周期によっても違うということもありますので、数 という言葉は厳密には正しくないと私は思うんですが。医学的に。ですから「提供より 」ということでいいんじゃないですかね。数を入れると卵子だけ非常に混乱してくるん じゃないかということです。 石井委員  「提供者よりも提供を受ける人の」というのではまずいわけですか。 吉村委員  それだったら全然問題ないですよ。そうなりますと1対1の対応になってしまいます よね。せっかく希望してくれる人が1対3の対応をできる場合だってあるかもしれない ですし、1対1かもしれないし、それは言及してないと思うんですけども。「提供者数 」というふうに書くんだったら私はいいと思いますけども。いろんな解釈をできるよう なことはやめておいて、「提供より」とすれば私は問題ないんじゃないかと思います。 矢崎部会長  私自身も十分に理解しているという自信はございませんが、もしそういうことであれ ば、でも今度「提供者数」というと、例えば精子の場合は違ってくる可能性ありますよ ね。 吉村委員  そうですね。石井先生がおっしゃるように1対1の対応で1人は1人にいくんですよ ということであるならば「提供者数」でも全然問題ない。精子の場合にはせっかくくれ た方が3人の方にいくということは十分あり得る。そうしますとまた難しくなるので、 あまり「提供数」とかいうことを言わない方が私はいいんじゃないかと思います。 矢崎部会長  でも、何かに比べて何が多いといった場合には、やはり数とか対象の人を入れないと 日本語としてはおかしくなりますよね。ですから、吉村委員の言われた、むしろ「提供 者数」の方が、なかなか理解が難しいところがあるので、「提供より」ではだめですか 。 吉村委員  「提供より」でいいです。 矢崎部会長  あ、「提供数」、「提供より」…だから「提供より」…(笑)、いかがですかね。 吉村委員  卵子の場合に非常に難しい点が実際やろうとすると出てくると思うんですね。それが 一般の方にはなかなか理解してもらえないんですけど、1対1の対応であれば全然問題 にならないと思うんですが。 矢崎部会長  それをお分けする場合でも優先順位というのを頭に入れてやるわけですから、「提供 数」が入っても… 吉村委員  僕は厳密には正しくないと思うので言ったんですが。私もこれでいいと思ってたんで すけど、ある委員から指摘を受けましてこれはおかしいと。確かにおかしいんですね。 矢崎部会長  一時吉村委員も納得されたぐらいだから、我々はあえて…じゃあこれにつきましては もう少し、十分理解してからディスカッション、今のケースがにわかに理解しにくいと いうことで申しわけございません。 才村委員  今、吉村委員から言われたので、今まで50歳になっているのを45歳とあえて言われま したので、それについて蒸し返すのも何ですけども、やっぱり50歳よりは私も45歳の方 が、女性だけというのはおかしいと思うんですけれども、例えば45歳で切って、二十歳 になったとき65歳になりますよね。そうすると65歳から高齢者ということになりますよ ね。いろんな適用が今65歳ということで。高齢者が子育てしてはいけないということは 全然ないんですけれども、人によって差があるとは思うんですけれども、子供にとって は18歳で63歳という年齢自身が、おばあちゃん、おじいちゃんの年齢になりますので、 できたら子育てするにはできるだけ45歳ぐらいの方がいいのではないかと思いました。 矢崎部会長  これについてはもう議論して50歳ぐらいということですので、これは時代とともに体 力とかそういうのが変わりますので、もし問題があったら後でまた議論していただくと いうことで、一応は50歳ぐらいということでまとまったので、これはこれで一応そこに とどめておかせていただきたいと思います。 石井委員  ちょっとよろしいでしょうか。今のマッチングのところにかかわるんですけれども、 私は何回か欠席したのでよくわからないのですけれども、この間の議論で吉村先生も多 少混乱があったことから私だけじゃないのかもしれないということで念のために伺うん ですが、提供数と提供者数との関係によって資料1の別紙4という図がつくられている んですが、これについては皆さん理解なされているんですよね。 矢崎部会長  石井委員から試験をされると通らないかもしれませんが、一応自分では納得したつも りですが、どういう問題でしょうか。 石井委員  公的管理運営機関でコーディネートが行われるということになっていて、実施施設と 提供施設が別になって、提供を受けた施設が必ずしも提供を受けた精子・卵子を自分の ところの患者に使えないんだということで合意がなされている、そこのところがはっき りしていればいいんだと思うんですが。 矢崎部会長  なるほど。吉村委員はいろんな医学上の問題で、提供施設と実施施設がほぼ同一の場 合が多いのではないかという御議論ですね。それは石井委員対して今どういうふうにお 答えされますか。 吉村委員  これは答えなくちゃいけないんでしょうか。 石井委員  それを前提に議論が進んでいるということですね。 矢崎部会長  よろしいでしょうか。 石井委員  はい。それともう一つよろしいですか。これは議論の蒸し返しだと言われるとこれ以 上申し上げることはできないんですけれども、繰り返し出てくる表現なんですが、例え ば2ページの一番下の枠、「加齢により妊娠できないことの具体的な判定基準について は、国として義務的な基準は示さず医師の裁量とする。ただし、実施に当たって医師が 考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示す」。とてもわかりにくい、何が言い たいのかよくわからないという気がするのです。私としては、「具体的な判定について は医師が考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示す」、間を抜いてしまうこと はできないだろうかということなんですけれども。それだと趣旨が全く違ってしまうと おっしゃられるとだめなんですが。すぐじゃなくてもいいです、検討していただけます でしょうか。 吉村委員  どういうふうに書き直せばよろしいんですか。 石井委員  「加齢により妊娠できないことの具体的な判定に当たって、医師が考慮すべき基準を 国が法律に基づく指針として示す」。具体的な判定基準については医師が考慮すべき基 準、では基準、基準となりますので、判定については。 吉村委員  具体的には同じことなんでしょうか。違うんでしょうか。 石井委員  私としては違わないつもりなんですが。違ってくる解釈もできる。医師の裁量とする という言葉を医師の側としては置いておきたいという希望が。 加藤委員  別の考え方もあると思うんですよ。医師の裁量とする、ただしその裁量の範囲につい ては国によって基準を定めるという解釈。裁量というのは無限に幅があるんじゃなくて 、大体この大枠の中だったら医師の裁量をしていいという、その枠は国が基準を決める という考え方もあると思います。実際審議の経過では医師の裁量とするといったけど、 じゃあ何をやってもいいのかといったらそんなことはないだろう、ということでこうい うふうになったんだろうと思います。 石井委員  そうだとすれば結果的には違わないと思います。 矢崎部会長  この表現が議論の積み重ねでこういうふうになったと思うんですよ。だから、石井委 員の言われたことにすると、ちょっとくどいようですがこれが議論の最終的な結論にな ったと私は理解しているんですが。ですから、同じことでもこれを一つにまとめますと 議論の過程が少しわからなくなるのでちょっとわかりにくいんですが、法律的にまずい ですか、この文章は。 石井委員  「義務的な基準は示さず」ということの意味がよくわからないということです。 矢崎部会長  そうしますと、「具体的な判定は医師の裁量とする、ただし」ということではだめで すかね。わざわざ「国として義務的な基準を示さず」というのもおかしいから、そこを 除きますかね。「具体的な判定については医師の裁量とする。ただし、実施に当たって 医師が考慮すべき基準を国が法律に基づく指針として示す」。よろしいでしょうか。じ ゃあそういうことにします。ありがとうございました。 吉村委員  石井先生、こうやって見ると結構これ、国が法律で示す指針の方が広いんですよね。 医師の裁量だと45歳までと我々切ってるわけですから。そうなると国の幅広い何でも受 け入れるという姿勢があっていいんじゃないですか。医師は45歳としてくださいと言っ てるわけです。ところが国としては社会的ないろんなことを考えて、部会長おっしゃっ たように社会も変わるだろうと。だから50歳まででいいんじゃないかというような基準 を決めたということで、特に問題はないように思うんですが。 石井委員  この場合の医師というのは個人の実施する医師ですよね。 吉村委員  そうですね。 矢崎部会長  議論では、医師の裁量権に関しては疑問のネガティブな御意見が多くて、それはケー スバイケースですね。52歳の方にやる、53歳の方にやると、むしろ。吉村委員とは逆に ですね。そういうことをやっぱりやめてくださいということではないかと思います。 相良委員  よろしいですか。4ページのところで確認させていただきたいんですけれども、精子 提供を受けることの医学的適応というところなんですが、私が考えていたよりも範囲が 広いかなという印象を受けたんですが、特に(5)と(6)なんですが、顕微授精を相当回数 実施しても妊娠に至らなかった場合というのが適応に入っているんですけれども、この 場合は必ずしも自己の精子を得ることができない人には限らないと思うんですね。顕微 授精の適応というのは日本産科婦人科学会の会告を見ますと、原因不明の受精障害が入 っておりますので、御自分の精子がたとえあっても妊娠できない方、顕微授精をやって も妊娠できない方がAIDの適応になるというふうに考えてよろしいのかどうか、ちょ っと確認させていただきたいんですが。 矢崎部会長  これはここできっちり議論しなくて、専門の先生方の御意見でこうなりましたよね。 吉村委員  これは具体的に、今まで厚生科学研究でやったんですが、このときには何回って書い てあるんですね。このときは一応9回と書いてあるんです。9回やりますと100%ICS Iは妊娠しているというデータに基づいて、9回やってもだめといった場合にはという ふうな決まりをつけてあるんですけど。 相良委員  そうすると、自己の精子を得ることができてもAIDを受けることはできるというふ うに考えていいわけですね。 吉村委員  AIDは今までのそういった基準で日本産科婦人科学会も、ICSIをやった後にで きなかった場合にはAIDを受けていいという決まりはつくっていると思いますけど。 矢崎部会長  要するに見かけとかそういうのは正常でも、機能的に妊娠できない場合ですね。です から、精子がないということではなくて、精子の提供を受けなければ妊娠できないとい う意味でこれが入っているのではないかというお話です。よろしいですか。 鈴木委員  私も医学的な質問を。例えば受精卵ができなかったというのは、全部精子の責任だと いうことになるんですか。卵子側の問題もあると思うんですけれども。 吉村委員  当然のことながらそれもあると思うんです。ただ、これを精子提供と卵子提供と分け て書かなくちゃいけないというところからこのように出てきただけでありまして、当然 卵子側の原因でICSIしても受精しないということはあり得ると思います。卵子側の 原因でできないという。加齢によって卵細胞質の機能が悪くなって受精できないという ことは十分考えられますので。 鈴木委員  だとすると、相良ドクターの御質問もごもっともだなと思って聞いているんですが、 卵提供の方にはなぜ受精卵が得られなかった場合は入らないんですかということ、矛盾 しませんか。 吉村委員  ということは、卵提供のところにも(1)〜(4)の後に5番目にということですか。 鈴木委員  そうです。もし精子提供の方にこれが入るのであれば、あるいはそれがどちらが原因 かわからないということが医学的な実態としてはあると思いますので、ICSIでだめ なときというのは当然卵の方にも入り得るんじゃないかと。これは前から疑問ではあっ たんですけれども、そこは入れるべきだと言っているわけではありませんが、確認はし たいと思います。 相良委員  そもそも専門委員会の報告書では、一応自己の精子・卵子を得ることができる場合に は、それぞれ精子・卵子の提供を受けることはできないというのが最初にあったので、 もしICSIをしても妊娠できない方がこれらの医療の対象になるのであれば、今のA RTの延長上にこの医療が位置づけられていくと考えられるので、その辺の考え方も確 認したかったんです。 矢崎部会長  そうしますと、先ほどの卵子提供の場合も実際こういうことあり得るんですかね、(5) 、(6)のような。そうしたらそれも入れる必要がございますね。 鈴木委員  そうすると最初の「加齢により妊娠できない」というところとまた矛盾してきたりす るんですよ。だから私はむしろ精子があるないという、複数回反復例で妊娠できないケ ースというのをどう考えるのかということをもう一回整理した方がいいような気がする んですけれども。 松尾委員  よろしいでしょうか。また議論を蒸し返すようですけれども、日本人は白人一般に比 べ早く成熟するため、卵の老化も多分早いと思います。ヨーロッパでは年齢の上限は45 歳が普通だと思いますので、50歳を目安というのは、上限を50歳というような書き方に 変えた方がいいんじゃないかと思います。 矢崎部会長  どうですかね。51歳の誕生日を過ぎたらだめだとかそういう…このぐらいで、医師が 裁量する基準で…。問題ないということであれば45歳ということでも別にいいんですが 、そのときにいろいろ議論があって50歳ぐらいでも出産する可能性があるので、暦年齢 と実際のその方のバイタリティと違う可能性もあるので、少し幅を持たせた方がいいん ではないかという議論だったと思うんですね。だからあまり暦年齢で50歳とか45歳と決 めるのはなじまないのではないかなと思います。 松尾委員  ですから「ぐらいを目安」というふうに非常にあいまいな表現がついていると思いま す。数値で示す一番の目的は当事者の健康や生まれてくる子どもの健康を保護するとい うことと、異常な出産を防止するということで、生殖補助医療を受けようとする人の利 益であるわけです。国としてのスタンスを明確にするという点では45歳ぐらいを目安に して、それで場合によっては50歳でやりたいという人は医師の裁量でやるということで 構わないと思いますけれども。 矢崎部会長  御意見もっともで、僕は強引にやるつもりはないんですが、今までずっと議論してき てまた一つ一つ議論し出すともうエンドレスになりますので、もし45歳にすべきという ことであれば50歳と決めたときの議事録を見て、また御発言いただければと思いますの で。 松尾委員  すみません、これ以上申し上げません。 矢崎部会長  すいません。あと先ほどの吉村委員、いかがですかね。要するに(4)、(5)を入れない ということになると、そういう不妊症の方はこういう治療を受けられないということに なりますね。 吉村委員  そうですね。今までAIDは産科婦人科学会の会告におきましてもこういった基準に よってやられてきたわけですね。ですから、それがだめだということであるならば、こ れはもう一度考え直さなきゃいけないということにもちろんなりますけど。通常はIC SIによって妊娠できない方というのはいっぱいおみえになるわけですから、そういっ た方に精子を提供していただいてはいけないのかと。またいけないと言い切ることも大 変難しいことだと思いますけど、提供する医療というものをすべて否定するということ であるならばそういった意見も出てきていいと思うんですけれども。 矢崎部会長  そうしますと(6)の、先ほど鈴木委員から言われた卵子の提供ですよね。そういう場合 に受精に耐えられない卵子が、そういう方法で明らかになるということもあるんではな いかというお話だと理解したんですが、その点についてはいかがでしょうか。 吉村委員  可能性としてはあると思います。なかなか卵子の場合には書き方が難しいところがあ りますよね。例えば(4)の後に(5)に、卵がだめだから受精しないということというのは 結構ケースとしては多いんですが、それを見るというのは非常に難しいんですね。例え ば精子であれば核ができないとか見られるわけですよね。卵子に関しては非常に難しい ところがあるわけです。例えば精子を打ち込んで前核ができないといった場合、卵がだ めなのか精子がだめなのかというのを見ることは非常に難しいところがあるので。精子 に関しては比較的見やすいんですが卵子に関しては非常に難しい。(5)の中にそういった ケースというのは当然あり得る、鈴木さんが言ったケースもあると思うんですね。です がそれを書くのは非常に難しい。もし書くとしたら精子側と同じように、ICSIを何 度もしても、あるいは体外受精を何度もしても、ということになりますけど。卵子の場 合にはICSIでなきゃいけないということはありませんので、体外受精、顕微授精が 両方とも含まれてしまうということになると思いますけれども。 矢崎部会長  そうしますと、専門家としてアカデミックに、あるいはエビデンスに基づいてこれは 提供を受けなければ判定しにくいということですね、卵子の場合。 吉村委員  そうです。 矢崎部会長  そのニュアンスはわかっていただけますでしょうか。 吉村委員  卵子のクオリティって非常にわかりにくいんですよね。なぜかといいますと、この卵 がいい卵なのか悪い卵なのかということはわからないんです。結局それが胚盤胞までい きます。5日目までいって胚盤胞までいった。これはいい卵だったんですねということ なんですよ、基本的には。 鈴木委員  例えば精子はOKですよといわれているケースで体外受精を何度繰り返しても妊娠し ないというケースがあるわけですよね。胚盤胞までやってみると受精卵がどうもうまく できないと。精子の方は見た目どう見てもOKであると。そういうときにあなたの卵の 質が悪いんですと、例えば32とかでも言われるわけですよね。現実にはそこで若い人か ら卵をもらおうかしらという話が起きてくるわけですよ。今後も多分そういう話という のはふえてくるんじゃないかと思うんですけれども。 吉村委員  そういうケースはありますよ。多いと思います。 鈴木委員  その場合は卵提供対象というふうにドクターもおっしゃるわけですよね。 吉村委員  僕はそれがいいかどうか… 鈴木委員  もちろんいいかどうかは別にしても。 吉村委員  ですからあえてこういったところには入れなかったんですね。男女差別だと言われる かもしれないけど。ですから、そうなると拡大がすごい起こってくるわけですよね。で すから入れなかったと。 鈴木委員  だとすると、当面はここまでにしておきましょうよという基準と考えた方がよさそう ということで、これから医学的な治験で卵のことがもっとわかってくれば、また適応が ふえてくるかもしれないという意味でここをとらえておけばいいんでしょうか。 吉村委員  おっしゃるとおりです。 相良委員  すいません、しつこいようですけど、この治療は精子・卵子の有無ではなくて、原因 不明の不妊症にも適応できるというふうに考えてよろしいわけですね。 吉村委員  原因不明というふうにとらえられても困りますね。原因はわかっているわけですね。 相良委員  原因がわかっていて精子・卵子を得ることができても適応になるというふうに考えて もよろしいわけですか。 吉村委員  それはそういうことになりますね、こういう結果になれば。機能がないわけですから これはしょうがないですね。例えばそうなりますと、AIDの会告も変えなくちゃいけ ないということです。 相良委員  専門委員会の報告書にのっとってないというか、もともとは精子・卵子を得ることが できない人のためにこの医療をしようというふうになってきたんだと思うんですが、そ このところをもう少し拡大していいということですよね。確認したいだけなんです、そ うしてほしくないという意味ではないんです。 吉村委員  先生のおっしゃる意味からいくとそうなりますね。 相良委員  わかりました。 石井委員  ほんとにいいんですか。 矢崎部会長  よろしいでしょうか。 石井委員  いや、さっきの年の押し方が相良先生のでいうと、卵子の提供も卵子がある場合も認 める方向を将来は見ているように聞こえる要素があったものですから、そういう意味で はないということを私は、もともとの考え方はそうではないというところは確認してお いていただきたいなと思います。 矢崎部会長  そうですね。根本的なところでもし違ってくると、これはまた大きな問題になります ので。 荒木委員  このことではないんですけど、この(2)のところをちょっとごらんいただきたいと思い ます。4ページです。これは泌尿器科医によって診断されるって、泌尿器科医に限定し た理由は何なんでしょうか。 吉村委員  これは一般的に産婦人科医が生検をするということはあまりないので、泌尿器科医が やるということで、そんなに深い意味はございません。 荒木委員  「医師」ぐらいにしておいたほうがよいと思います。これからサブスペシャリティの 問題がありますので婦人科医も入ってくるんじゃないかと思うんです。 吉村委員  そうですね。はい。 鈴木委員  (2)のところの確認だけなんですが、精巣生検はやってないけど、やっても多分いない だろうとドクターが判断しているという意味でよろしいんですよね。 吉村委員  精巣生検をやるということなんですが。 鈴木委員  そうすると(1)とどう違うんですか。精巣生検をやっても現実にほとんど存在しません でしたという、(1)はそういう意味ですよね。(2)とどう違うんですか。 平山委員  今、鈴木委員がおっしゃったとおりで、(2)を入れた理由というのは、全員精巣生検し なきゃいけないというのはちょっと無理があるから、(2)で例えばFSHが50とかあった り、ほとんど精巣内に精子はあり得ないだろうというふうに専門医が判断した場合、精 子がないと判断してよかろうという意味で(2)を入れたんだろうと解釈したんですけれど も。 矢崎部会長  存在しないと専門医によって判断をされている場合ということであればいいわけです ね。 吉村委員  ああ、そうです、そうです。 矢崎部会長  専門医の方につくっていただいた医学的適応が大分時間をとって議論されてしまった んですが、先ほどの吉村委員につくっていただいた(1)〜(6)で、これに関してはきょう 初めての議論ですよね。青いのは吉村委員につくっていただいたので、ここで議論する のは初めてなので、これについてはまた議論させていただくということで、とりあえず は皆さんから、特に重たい疑義が出されましたので、相良委員、石井委員、鈴木委員か らですね。卵子の場合の問題もありますので、ちょっと吉村先生、ほんとにだめなのか 、もう一回4ページの精子提供を受けることができる医学的適応と卵子提供が受ける場 合、この2つの点についてもう少しちょっと… 吉村委員  それは(5)、(6)をやめるということではなくて、そういうことも含めてということで すか。わかりました。 安藤委員  今のところなんですけど、(2)のところでちょっと文章を変えていただいた方が誤解が ないのかなと思ったんですね。「無精子症と診断され、かつ精巣生検法による精子回収 を行ったとしても」というふうにした方が、(1)と(2)の違いがわかるかなと思うんです けれども。 加藤委員  (1)の場合には「行った結果」とやってもいいですよね。仮定条件と確定条件、英語だ とここは仮定法になるところなので英語だったら区別がつくんですけど、日本語だと区 別がつかない。 矢崎部会長  それではそれも含めて、吉村委員に検討していただきたいと思います。どうもありが とうございました。そうすると青いところは結構議論が続くかもしれませんね。ちょっ と私が気づいたのは、いわゆる卵子の若返りですね。これは「当分の間、不妊治療に用 いることはできないこととする」ということでよろしいでしょうか。 鈴木委員  きょうこの時点での結論は差し控えた方がと思うんですが。 矢崎部会長  いえいえ、それもちょっと議論をいただいて。恐らくこれは、当分の間、要するに技 術的にも確立されていないので、当分の間は実際に不妊治療に行うことはやめてくださ いという趣旨で、前回はこういう議論が、文章はできてませんでしたけど、そういう議 論があったように思います。これについてはいかがでしょうか。 鈴木委員  これは臨床でおなかに戻すことはできませんというニュアンスですよね。ただし、研 究に関してはむしろやっていくべきだというような意味は入っている。研究でのことで はないですよね。 矢崎部会長  これはもう生殖補助医療だけのことを言ってますので。 石井委員  技術的に確立していない、安全性もわからないから当分の間はだめという趣旨という ふうに受けられると、私はここでは加齢により妊娠できないのは適応としないというこ とで、つまり若返りというのは加齢によって妊娠できないことを克服するためですよね 。そういう考えと反するから認めないのではなくて、技術的にまだだからだめというこ とですよね。 平山委員  若返りというのは多分便宜的な言い方であって、若くても質のよくない細胞質であっ たらこの方法は将来的にはあり得ると思うんですね。年齢にかかわらず卵子の悪いとい うのはあり得るわけですから。若返りというのはあくまでも俗っぽい言い方ですのでそ うなっちゃうと思うんですけど、今の石井委員の説はちょっと違うような気がします。 吉村委員  これはもともと若返りとしてこういった治療が新聞紙上をにぎわしただけでありまし て、もともとは核置換というのはミトコンドリア病の治療に用いたいという生殖医学の 研究なんですね。実際にこれは臨床応用されていません。ですから、当分の間不妊治療 に用いることはできないということは当然でいいんじゃないでしょうか。これに対して 研究をやってはいけないということをここで言うんだったら、それは研究をやってはい けないということを言ってもいいですが。だけど、ここで言うようなことではないんじ ゃないですか。総合科学技術会議がどうすれば言うとかそういう問題じゃないでしょう か。こういうのを治療に使ってはいけませんよということを言うことは必要かもしれま せんけど。 石井委員  当分の間の趣旨が、安全性が技術的に確立したらやっていいですよという趣旨ではな いということなのかどうかということ、若返り法という言葉があれだけどということだ ったんですけど、先ほどから50歳という年齢の問題もあって、実際問題卵が悪い、卵が 悪いというのは加齢によって悪くなる率というのは一番高いわけですね。そうすると、 卵を若い人からもらって治療する、先ほどの卵があっても認めようという話と結びつい てきて、だんだん拡大していく方向になるんじゃないでしょうか、ということの危惧を 当分の間ということが技術的に未確立だからというふうにおっしゃられると、私は危惧 を感じるということだけでございます。 古山委員  「細胞質置換(いわゆる卵子の若返り)」というのは新聞報道によるとというお話も ございましたけれども、この括弧の部分を取ってしまったらどうなんでしょうか。 矢崎部会長  いわゆるというのは私がそういうふうに申し上げたので、申しわけありません。ただ 、石井委員の言われる危惧は当然であって、これは技術的にいろんな問題があってとて も臨床応用にできないという状況があります。恐らく安全性とか結果で、実験的にも確 実な結果が得られるということであればそれを適応どうするかというのは、またその時 点で倫理的な面も含めて議論されるということで、これは技術的なバリアを越えたら即 いいですよということではありませんので、その点はまた改めて議論していただくとい うことで、一応よろしいでしょうか。 高久委員  ただ、細胞質置換と核置換とはかなり違いますね。 吉村委員  この場合、細胞質置換というのを核移植と言う場合もありますし、核を変えるという 場合もありますから。この場合に細胞質を移植といいますと細胞質の一部を入れるとい うことになります。細胞質置換となりますと核を変えないと細胞質置換にはなりません ですよね、先生。 高久委員  細胞質を全部変えるということはできないんですか。 吉村委員  核を変えることになりますので、核を変えないとちょっとできないですね。 高久委員  そうするとこの表現しかしょうがないのですね。 吉村委員  と思いますけど。 矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。あとは費用の問題と情報の問題で、それでもう一つ新た に加わったのが23ページの、子供が生まれた後のフォローアップの件でございますが、 そこに青字で(1)〜(4)とありまして、当該生まれた子供に関して児童相談所等に相談す ることができることとする。今までどこでケアしてくれるかということを議論して、公 的管理運営機関でケアするのはとても無理ではないかという話があって、経済的あるい は人的な制限があって、児童相談所というのはきょう初めてここに入ってまいりました 。これについて事務局から何かお話しいただけます。 母子保健課長  特に深い意味はございませんけれども、これは福祉の先生方で十分御理解いただけて いるものだと思いますが、児童福祉法の中で児童に関するよろず引き受け所というのは 理想であるというのが世の中の常識になっております。そういう意味では最初の窓口、 ファーストコンタクトの窓口が一番適切であろうということで私どもはこのように書か せていただいたということでございます。ただ、その後に「等」と書いてありますよう に、理想だけにするわけじゃないと。さまざまな保健、福祉、関係機関ございます。そ ういったところが窓口になっても全然差し支えないという趣旨もこの「等」に含まれて いるところでございます。 矢崎部会長  よろしいでしょうか。 才村委員  児童相談所というのは初めてここで出てきているんですけれども、もともと生まれた 子供だけではなく、提供者の子供、そして提供を受ける家族だとか提供者の家族、すべ て対象にはなると思うんですけれども、カウンセリングという言葉でカウンセリングだ けでいけるのかというのが一つですね。というのは、子供の権利を擁護する立場で動け る人が必要だということを私は前から申し上げていまして、そして人間関係の調整です ね、親子関係がどうなっているのか、それぞれの年齢、発達に応じて親子関係もさまざ まに変化していくわけですけれども、それを調整しながらサポートできる人。カウンセ リングがそこまでできるということであればカウンセリングでいいかもしれないんです けど、例えば家庭訪問しながらその辺の調整もしていくということも含めてカウンセリ ングでいいのかどうかが1点。それから、「当該生まれた子供に関して児童相談所等に 相談できることとする」ということが、今ここで生殖補助医療によって起きるさまざま な子供の問題、出自の問題、親子関係の問題とかというようなことについて、私は最初 から児童相談所に丸投げするのはどうなのかなというふうに思うわけです。  その理由は、今現在児童相談所では生殖補助医療に関する親子の問題とか、そういう ことは全然やっていませんし、養子縁組のあっせんというようなことはやっていますし 、養子へのサポートもやってはいるわけですけれども、例えば研修をしたとしても児童 相談所は児童虐待とか非行とか不登校ですごく手いっぱいな状態であるという現実問題 。もう一つの理由は、18歳未満でしか児童相談所は法的に相談を受けられないというこ とになってるんですけれども、ここで親子へのサポートということで、育児へのサポー ト、子供をどう育てていくか、待ちに待った子供が期待どおりになかなか育てられない とか、例えば育児不安になるとかいうことについては、そういう理由でなくてもよろず 相談、すべて子供の問題は児童相談所で引き受けていますので、その辺については児童 相談所へ行くということについては問題ないと思うんですけれども、ただ、出自を開示 することに関する子供の動揺だとかそれに対するサポートが私は必要だと思うんですけ れども、それをいきなり児童相談所へ持っていくとなるとちょっと無理があるのではな いかということと、それと18歳未満だけではなくて18歳以上、二十歳過ぎとかもっとも っと大きい大人の年齢ででも、出自を知ったときに動揺しますので、その辺でのサポー トについては児童相談所等という言葉があるので、ほかにもあるというふうなことなん ですけど、そういことが相談できるのかどうかと。  「児童相談所等は必要に応じて公的管理運営機関等と連携をとることができることと する」と書いてあるんですけれども、上の文章から、「当該生まれた子供に関して公的 管理運営機関に相談することができる」ということの方が、そこにカウンセラーとかソ ーシャルワーカーですね、人間関係が調整できるような人も、少なくてもいいですけど 、とにかくそこに行ったらそのことで相談に乗れると。そしてその下の文章ですね、「 児童相談所等は必要に応じて公的管理運営機関等と連携を」じゃなくて、「公的管理運 営機関は必要に応じて児童相談所等と連携をとることができる」という文章に、私は逆 ではないかなと思います。 母子保健課長  公的管理運営機関といいますのは全国津々浦々にできるわけでは決してございません 。こういう子供たちがたくさんできるという意味ではないんですけれども、全国ほんと に指で数えるくらいの公的管理運営機関しかできないわけです。悪ければ1カ所という ことにもなるわけですから、そういうことを考えますとファーストコンタクトというの は児童福祉法に書いてあるとおり、児相で見なくちゃいけないことには変わりないんで す。そういうふうに規定されていることと、今児相がそういう機能を果たしていないこ ととは別問題として考えなくちゃいけないと我々は考えております。こういうふうに書 いた場合、現状ですべて満足いくようなことになるかといわれると確かにそうなのかな と思うんですけども、それを満足いくようにこれからしていくということも含めてここ に書かせていただいているというように御理解をいただきたいと思うんです。 平山委員  ただ、治療中からカウンセリングなりケアをやっていこうというふうなシステムをつ くっていこうとしているわけですよね。ですから、私のイメージではその継続的に妊娠 中、出産後も公的管理運営機関にまずは何でもコンタクトはとれるという体制をつくろ うとしていたというふうに私は想像していたんですね。とりあえず公的管理運営機関に コンタクトをして、今まで継続していたカウンセラーとかソーシャルワーカーとかとこ うやっていって、じゃあちょっとこの問題に関しては地域の児童相談所のソーシャルワ ーカーの方に家庭訪問してもらいましょうねとか、こういうふうなことをやってきまし ょうねというふうな連携のとり方、先ほど才村先生がおっしゃったような方が自然なシ ステムなような気がするんですけれども。 母子保健課長  反論するようで申しわけないんですが、一応この整理はここに書いてございますよう に、生まれてからの話として切り分けて整理をしてここにパラグラフで載せているわけ なんです。生まれる前は実施医療機関、提供医療機関を含めてかもしれませんが、そち らの方でそもそもカウンセリング、その範囲がどこまでという議論もあったかもしれま せんけれども、一応医療機関の中でそういう対応がすべきものという議論があったよう に我々記憶しておりまして、その中での対応を前提にして生まれた後ここでという議論 があったものですから、このようにまとめたというふうに御理解していただかないと、 多分論旨がつながっていかないんじゃないかと思います。 鈴木委員  それは、生まれた後とその前を分離するという意味でおっしゃっているんですか。生 まれてからはこちらへどうぞという水先案内のおつもりなのか。それからもう一つ、今 子供子供と先ほどからおっしゃっているんですが、40になった人がこのことで相談する ことは当然あり得るわけですよ。そこで窓口児相ですよというのもちょっと感覚として は私はフィットしないという感じがするんですけれども。 母子保健課長  別に完全に分離して誘導しようとかそういう意味ではないんですが、基本的には生ま れる前は医療機関においてやるべきだという議論をさんざんやっていただきました。カ ウンセリングの問題等を含めて。それで一応ある程度の道がついた後、生まれてからど うするんだという問題が出てきたものですから、それについての対応としてここに書い たということなわけでございます。後段の方の話ですけれども、40になったらAIDの 子供さんがどうするかというお話、これは必ずしも児相に行かなくてもいいんですけど も、その意味も含めて「等」と書いてございまして、児相に行っていただいても悪くな いんですよ。悪くないんだけども、あまりにあまりだとおっしゃるのであれば「等」の ところで受けられる体制もつくっておきましょうということなわけでございます。 才村委員  40歳の人が児童相談所に行ってもいいんですか。相談できますか。 母子保健課長  来られるものを拒むことはできないと思います。 才村委員  年齢的に難しいということでは… 母子保健課長  難しいのはわかりますが、来たら帰りなさいとは言えないわけですよね。 才村委員  でも法律的に規定されているんじゃないんですか、相談はできないということで。 宮本室長  すいません、類似の点につきまして私どももいろいろと聞かせていただいたんですけ ども、養子縁組等でも理論上同じような状況というのが発生しているというふうに理解 しているんですが、そういったものも、それだけのための特別な相談体制というのがと られているわけではないというふうに聞いておりますし、そういうものから見てかけ離 れているわけではないということもちょっと申し伝えたいと思います。 才村委員  養子縁組の場合は児童相談所があっせん機関となっていますから、後のフォローとし て管理をしているわけですね、子供を養子縁組する場合にですね。だからその後のフォ ローとして子供さんが大きくなってきた場合でも、児童相談所に記録とかがあるわけで すよね。だから出自を知るというふうなことに絡んでのフォローができるわけですけど 、児童相談所はこの生殖補助医療を何も管理していない中で突然行かれるということに なりますので、そこでのフォロー体制としてはかなりギャップがあるかなと思います。 渡辺委員  児童相談所がこれから新しい時代に、今までとは質的に違う機能を果たさざるを得な くなるという方向は、生殖補助医療にかかわらずみんな考えているわけですね。今おっ しゃられたように、現実はまだ大変状況で、私どももどのように児童相談所の機能を応 援できるかと、現場からもエールを送っているわけですけれども、子供の福祉を担保す る一つの枠組みのもとできちんと児童相談所が権限を発揮できて、全国的な規模ででき ていくと、生殖補助医療という一つの新しい切り口によって児童相談所の機能がいよい よ本格的に児童を守るものにレベルアップする、バージョンアップするという可能性が あると思うんですね。  そういう意味では現状は私は無理だということは現実だと思いますけれども、子供た ちの問題が5年かあるいは10年後にはかなりたくさん本格的に出てくるというふうに私 は仮定するものですから、向こう10年ぐらいの計画で生殖補助医療によって生まれる子 供たちの育児の相談や、起き得るリスクに関してのマネージメントができる児童相談所 の機能、そういう専門性を持った児童相談所がもし生まれてくだされば、それは日本の 子供たちにとっていいと思いますし、予算の問題とかいろいろあると思うんですけれど も、今までいろんな意味で全部を受けとめようとしてきた児童相談所にそういった一つ の要求というんですか、新しい観点を与えていくということは私は賛成なんですけれど も、ただ、現実に児童福祉士の方たちの専門性とか、そういうものの現状をどうやって1 0年間で上げられるかということで、これは今のままだったらだめだと思いますけれども 、今から真剣に10年計画できちんとトレーニングしていくという、膨大なマンパワーと それなりの経済的な裏づけが必要ですけれども、そういう方向がもしほんとに今打ち出 されようとしているのであれば非常にいいと思いますけれども、いかがでしょうか。 矢崎部会長  今、渡辺委員が言われたことは私自身も申し上げようと思ったんですが、生殖補助医 療というのが医療としてしっかりしたシステムに乗って必ずしも行われていなかったと 。さらに、提供配偶子による生殖補助医療の上に、AIDはもう既に行われていたんで すが、さらに混沌としたシステムの中でやるのではなくて、しっかりしたシステムでや りましょうというのがこの専門委員会の報告の骨子だと思います。この検討部会では生 まれた子の視点からそれを考えるという、それをサポートするシステムも必要であると いう御意見が大勢だったと思います。しかし、そういうものが今全くないわけですよね 。公的管理運営機関そのものもこれからつくろうとしているわけですから、今この時点 ですべてを、こういうものをつくりなさいとか、そういうことはこの部会からはなかな か言えない。ですから、我々は付帯事項としてこれを行政側に持っていくときには、ぜ ひそういうシステムをつくってくださいということを言って、行政の方でしっかりやっ ていただくということになるんではないかと思います。この規定はさかのぼって行うと いうことではなくて、これからの医療だと思いますので、今、渡辺委員が言われたよう に、ほんとに出自を知る権利についても十数年後のことでありますし、これについては とりあえずのケアの部分とフォローする部分を少しずつ時間をかけてしっかりそういう システムをつくっていただきたい。先ほど児童相談所について、すべてそこにあるから ということではなくて、やはりこういう機能をできるだけ使いながら社会としてサポー トしていったらどうかという趣旨であって、これですべて終わりということではないの で、その点は御理解いただければと思います。 才村委員  私も、子供の権利擁護をしっかりできる機関は日本では児童相談所だと思っています し、そこにはソーシャルワーカーと心理職の人が連携しながら子供の家族調整ないしは 子供の権利擁護のことで日夜動き回っていただいているところだと思っております。そ ういう意味では、現在では18歳未満しか受けられないとかそういう枠がありますので、 もしこのことを児童相談所が受けるということになるのであれば、できるだけそういう 体制を整えてもらう。例えば先ほど言われた40歳の人でも自分の出自を知るときに悩む ということがありますので、そういったときに児童相談所で受けられるように法律改正 に努力していただけるのであればそういう形。もしそれが児童相談所で無理であれば、1 8歳以上であればここへ行けばその辺のこともちゃんとサポートしてもらえるんだという ところが、少し地域で見えるところへつくっていただくというところをぜひお願いした いと思います。 安藤委員  確かに、実際今運用していくというところでは児童相談所というところが現実的だと 思いますし、これからこの生殖補助医療に関するところで児童相談所の機能も改革して いかなければいけないというところはよくわかりますけれども、生殖補助医療をやって いく場合に出自を知る権利を保証していくためには、実際に受精をさせるところからの 管轄するところがあった方がいいと思うんですね。そうした場合やはり公的管理運営機 関が統括して、実施医療施設のところでカウンセリングとかそういうものを行うんです けれども、公的管理運営機関が統括するものであって、生まれた後は児童相談所等にも 連携をとりながらやるというふうにして、元締めは公的管理運営機関に負った方が私と してはいいかなと思っているところなんですけど。 矢崎部会長  イメージとしてはそういうことになるかもしれませんね。 安藤委員  そちらの方をぜひ進めていってほしいなと思うんですが。 矢崎部会長  ただ、ケースケースを公的管理運営機関が一々全部フォローできませんから、全体的 な… 安藤委員  統括するところとして置いていただきたい… 矢崎部会長  倫理的な問題とか、レアなケースで何か問題が起こったときは英知を絞って対応する という意味では、そういう機能があった方がよろしいですよね。 平山委員  私が疑問に思ったのは、後の資料で開示の業務については公的管理運営機関で行うと いうふうに事務局案であるわけですよね。「行うこととする」と書いてありました。開 示業務は公的管理運営機関ですると。それとふだんの相談は児童相談所でというところ がちょっとわからないこともあって、そこでも分断ということがあるのかなと思ったの で、そこら辺の絡みも疑問の一つだったんです。 鈴木委員  これは提案なんですが、並列ではまずいのでしょうか。「当該技術で生まれた子供に 関して公的管理運営機関及び児童相談所等に相談することができることとする」という のではまずいのでしょうか。多分、現在の文面ですと公的管理運営機関の責任がまるで あいまいというか、責任を児相の方にほうり投げたような印象があるんですね。そうい うふうに私は感じるんです。それで並列ではだめですかという提案ですけど。 矢崎部会長  安藤委員が言われたように、兄弟姉妹あるいは出自を知る権利の開示という非常に責 任ある部分は、公的管理運営機関で厳密に議論した結果そういう判定をするということ で、ここに書いてある個々の問題を比較的アクセスしやすいどこかでまず、先ほど課長 はファーストアクセスということを言われましたが、公的管理運営機関に皆さんがアク セスしたら、そこでとてもじゃないけど公的管理運営機関はあらゆる機能をあわせ持た ないといけないというところもありますよね。だから例えば児童相談所みたいなところ で最初にアクセスしてという、そういう文脈だと思うんですね。最初から公的管理運営 機関に行くというのはどうなんですかね。 鈴木委員  私は最初に公的管理運営機関にアクセスすべきだと考えているんです。まずそこに電 話、そしてあなたの身近にこの問題にとても詳しいカウンセラーがいますよと紹介され ていくのが筋じゃないかと。 矢崎部会長  それはそういう機能ですね。 鈴木委員  そういう感じです。公的管理運営機関で全部、そこに来ないとカウンセリングができ ないということじゃなくて、水先案内を担うのはまずそこであろうと。先の話かもしれ ませんけれども、カウンセラーの養成もしくはこの問題に関しての長期調査から、この 問題に対する継続的なサポートの中身とかを検討して、役目を公的管理運営機関が中心 になってコーディネートしていくものだろうと私は思っていますが。 才村委員  私も、公的管理運営機関に記録がありますよね。記録開示の問題とファーストアクセ ス、児童相談所に何をアクセスしに行くのか、内容ですね。子育てに関することなら何 もここに書かなくても児童相談所は子育てのあらゆる問題に相談を受ける機関ですから 、何も明示しなくてもいいわけなんですけども、出自を知る権利の記録を開示するとい うことに関して、提供者の家族の動揺だとかいろんなことが起こってくる、そこを調整 するということが私の中ではここのイメージにあるんですけど、開示に関するアクセス は公的管理運営機関でしかなくて、公的管理運営機関にファーストアクセス以外の、例 えば児童相談所に相談に行くというのはどういうことなのだろうかと。開示に関するこ とでないことで児童相談所に行くというのはすごく分断されているイメージがあるので 、公的管理運営機関は当面は何カ所もつくれないのであれば1カ所でもいいし、例えば FAXや書類や電話でまずアクセスして、この問題について開示してほしいのか、それ ともこのことで悩んでいるんですといったときに、その公的管理運営機関のカウンセラ ーとかソーシャルワーカーを置いてもらって、そこで少し判断をしてもらって地域のと ころへどんどん返すと。その地域の返し先は児童相談所とか保健所になるのかもしれな いし、福祉事務所とかになるかもしれないなと思うんですけれども。その辺が最初には 公的管理運営機関にファーストアクセスすべきではないかと思います。 福武委員  最初にこれを読んだとき、たらい回しになるなという印象があったんですね。もし悩 んだとしたらまずどこに行くかというと、自分が生まれた病院に問い合わせをしたいと 思うんだろうと思うんですよ。その後、例えば人権擁護委員会がありますし、家庭裁判 所もありますし、あるいは弁護士会にも人権相談窓口がありますね。あるいは福祉事務 所があるし。そうすると、いろんなところがあって、あちこちたらい回しになっちゃう ケースというのは随分あるんだろうと思います。中心になるのは皆さんおっしゃるよう に公的管理運営機関。それが統括的なものとしてあって、それであなたの場合にはどっ ちにいった方がいいですよということはやった方がいいんだろうと思うんですね。カウ ンセラー云々というのであったら児童相談所もあるでしょうが、生まれた医療機関の方 がそれなりにカウンセリング機能を持つべきだと思いますし、生まれた後でもフォロー すべきなんじゃないかという感じがするんです。ですから報告書が出ると思うんですが 、児童相談所が、突然出てきてこれ何だろうなと考えると思うんです。やはりここは公 的管理運営機関等と相談できるとして、あとは公的管理運営機関がいろんなところと連 携をとるという形にした方がいいんじゃないかと思います。 矢崎部会長  まだ全然システムできてませんからね。皆さんおっしゃっていただければ事務局でう まくそれを…はい。 高久委員  23ページのところですね、要検討事項の項目に非常にいろんなことが入っていて、混 乱しているのだと思います。この中には医療機関でやるべきこともありますし、特に「 提供を受ける夫婦や提供者及びその配偶者に対するカウンセリング」は児童相談所では 無理だと思います、この検討事項を少しブレークダウンした方が良いのではないかと思 うのですが。 矢崎部会長  この項目は、この間以来子供のフォローが重要だということで、あえてここに事務局 で、生まれた子供のフォローがどこが一番確実にできるかという方策を考えていただい たところ、いろんなところを調べると児童相談所等が該当する施設ではないかというこ とでこういう文言があったんですが、ここで議論していただくといろんな、この生殖補 助医療に関するいろいろな問題が、相談する場所としてどうかという話がだんだん広が っていってしまったので、そうしますと福武委員が言われたように児童相談所等という ことでここで出てくると、たらい回しになってしまうということもあり得ると思います ので、これについては事務局としては、もちろん公的管理運営機関が統括的な最終判断 とかそういうのをする位置づけとして考えておられるんでしょうが、生まれた子供のフ ォローについて、例えば児童相談所が機能の中に含まれていれば、そこを充実してやっ ていただくとかいろいろな方策が考えられると思いますが、今までの委員の方々の意見 を聞いて、行政側としていかがですか。 吉村委員  ちょっと先生、その前に。具体的に例えばAIDなんかを見てますと、これは案とし ては非常にいいことじゃないかと思うんですね。生まれた後の子供をどうやってフォロ ーしていくか。実施の病院が実際に見るということは極めて難しいことだと思います。 例えばその都度その都度児童相談所にこういったことがあったら相談しに行きなさいよ ということをサジェッションしてあげるということは決して悪いことではないし、ファ ーストアクセスとしてはこういったアクセスの仕方があるんですよと提示してあげて、 それに対して例えば児童相談所がそうであるなら公的管理運営機関と連携をとるという ことであるならば、現実の今の時点よりはかなり進んだ方向でいけるのではないかと思 いますし。実際に医療をやっていますと、3年ごとに統計をとってみますと、いっても 次のときにはもういないんですよね。そういうことがありますとやはり変わりますから 、地方地方にある児童相談所に初めにファーストアクセスするというのは決して悪いこ とではないと、実際にやっていて私はそう思いますけど。 矢崎部会長  今のシステムを考えてここにぽんとくると皆さん戸惑いを感じるので、もう少しシス テムとしてどういうふうに考えていくのかというのを、ちょっと行政側から説明してい ただかないと。 母子保健課長  あまりお時間とってもあれでしょうから、実はきょう初めて出したものですから委員 の先生方もなかなかすとんと落ちないところがあるかと存じます。今の議論を聞いてい まして、各委員の問題意識、御疑問等々、大体把握したつもりでございますので、次回 までにこの辺を整理しましてもう一度すっきりしたものとして御提供させていただけれ ばと思います。児童相談所が福祉の場での子供に対する一番の機関であることは違いご ざいませんので、将来的にそれをレベルアップしまして有効に使いたいという気持ちが ございますので、その辺は我々の中でしっかりまとめてもう一遍提供させていただけれ ばと思っています。 平山委員  そのとおりだと思います。先ほど才村委員がおっしゃった最初の質問で、要検討事項 のところのカウンセリングという用語が、やはりそれでは狭いと、これではいけないん じゃないかという話であって、私もそのとおりだと思うんです。つまり、この項目に関 しては「当該医療実施後のフォローアップについて」ということですので、この(3) を「生殖補助医療におけるカウンセリングの機会の保証及び当該医療実施後のフォロー アップについて」という項目にして、この項目もカウンセリングということじゃなくて 、総合的なフォローアップということで、カウンセリング、ソーシャルワーカー、小児 科医、児童精神科医など、そういうチームで当たっていけるような意味でとれるような 文言に、フォローアップでいいとは思うんですけれども、カウンセリングという言葉で はなくて、もうちょっとトータルなシステムの方がいいと思いますので、そういう書き 方にされた方が実際的じゃないかなと思います。なぜかというと、もともと専門委員会 でのカウンセリングという使い方は、ほとんどインフォームドコンセントの意味だった わけですよ。ですけれども、当部会においてより精神的な問題について、あるいは社会 福祉的な問題についての必要性というのを初めていわれたので、カウンセリングという 用語の使い方も変わってきて当然だと思うわけです。ですから、ここでは特にカウンセ リングという言葉よりもフォローアップという言葉の方が適切ではないかと思います。 才村委員  賛成なんですけど、フォローアップまたはアフターケアかなんか、そういう名前の方 がいいと思います。 平山委員  あるいは援助とか。なるべく片仮名を使いたくないと思いますので。 矢崎部会長  どこのことを言っておられるんですか。 平山委員  今の要検討事項のところに関してなんですけれども、フォローアップのことに関して 今まで言ってなかったので、フォローアップという言葉がどこかに要るだろうなと思っ たので。どこにあるかというと、これは21ページの下半分の(3)の項目なわけですか ら、そこにまず「カウンセリング機会の保証及び当該医療実施後のフォローアップ体制 について」とかそういうタイトルにしておいて、それでカウンセリングについてばーっ と書いた後に「当該医療実施後のフォローアップ体制及びアフターケア及び援助につい て」ということで、そういうふうな項目にしていただいたらすっきりするような気がい たします。 矢崎部会長  すごくすっきりするんですが、ほんとは事務局が言う立場なんですが、どこがどうい う責任を持ってシステムをつくるかというのは極めて難しい問題だと思うんですよ。フ ォローアップとかこういうシステムをつくるというのは簡単ですが、実際に現実にどう いうふうにシステムをつくるかということを頭に入れながらやっていかないといけない 。これは何回も申し上げましたが、例えば公的管理運営機関といっても一つの省庁がで きるわけではないですし、恐らくそこで判定する人は、有識者の人が集まってディスカ ッションして最終的に決めるということで、だれかがそこにいつも座っててということ ではない可能性もあるわけですよね。ですから、今課長が言われましたように、実際に どういうシステムができるかということを、できる範囲の中で考えていただいて、また この議論はさせていただきたいと思います。ですから、今全部この課題で結論づけたと いうことではなくて、先ほど申し上げました3ページの青い部分、これは吉村委員にも う少し、「提供数」と「提供より」、「数」を減らすのに私自身も十分わかりませんで した。それから4ページの(5)、(6)に関して、まだ委員の皆さんのコンセンサスが十分 に得られていないようですので、卵子の提供とともにもう一回次回お話しいただければ と。それから、今の23ページのフォローアップの項目、それを子供だけをここで取り上 げましたが、それだけではなくて連続的なものであるという御意見をいただいたので、 それをどういうふうに仕分けしていくか、行政的に考えられる手当というのはそちらで 考えていただかないと、ちょっと我々では、希望は出しますけどね。ですから一つの手 としては、この報告書を出すときに行政側にこういうことを絶対やってほしいという要 望書をつけて出すということもあると思うんですが、実際にどういうことが考えられる かということを検討していただいて、次回に議論を詰めていきたいと思います。  きょうは一番問題の出自を知る権利と兄弟姉妹の議論の前に随分エネルギーを費やし てしまいましたが、10分間休憩して、休憩の後出自を知る権利についてお話いただけれ ばと思います。 松尾委員  ちょっとよろしいでしょうか。青い部分で、10ページの(2)精子・卵子・胚の提供 に対する対価の条件というところに多分相当すると思います。卵子提供者はかなりのリ スクを負うわけです。ユーロの最近の統計によると、入院を必要とするほどのドナーの 合併症は1%程度で、場合によっては死亡することもあり得ることを考慮すると、健康 保険適用外の医療として、医師に明らかな過失がなかった場合に、卵提供を受けるカッ プルは提供者に対して責任を負うことになると思います。この議論を一回どこかでやっ ていただいた方がいいんじゃないかと。 矢崎部会長  そうですね。それは前回議論いたしまして、これは1対1で対応できない部分があり ますよね。高久先生がおられますが、骨髄移植の場合も、やっぱりドナーの方がいろい ろなアクシデントに見舞われることが多くて、それは1対1でできないですよね。 高久委員  保険に入ってますから、損害保険に入っていまして、ですから患者さんが負担する金 額の中に損害保険分が入っています。損害保険というか傷害保険というか名前はちょっ と覚えていませんが。ですからドナーの方が入院されて出血とかそういうので長くなる と、そちらの方から払うようになっていますから、もしもやるとすればそういうことは 考えられると思います。ですから全く無償というわけには卵子の場合にはいかないと思 うんですね。その分を含めた金額を想定する。それは保健会社がいろんなことを調べて 、どれぐらいの額まで払えるということから負担分が決まってくると思うんですね。ケ ースによりますけど。 矢崎部会長  したがって実施負担分というのは保険料も含めた負担の額で…。 高久委員  ただ精子の場合にはそれがあまりないと思うので、卵子の場合ですね。 矢崎部会長  ちょっと区分けしないといけないかもしれませんが。前回そういうリスクを分散する ために独自の保険がつくられないといけませんし、その負担はクライアント夫婦が負担 しなければいけないという、負担分というのはそれを含めた、1対1に限らず保険の負 担分も入っているというふうに理解していただければと思います。 石井委員  10ページはまだ全然検討していないで、先ほど読み上げていただいただけで議論して いなかったから、これで通ったということではないですね。 矢崎部会長  どの部分がですか。 石井委員  「案」というのはきょう初めて出てきてるものですね。 矢崎部会長  これについてはまたやりますので、ちょっととりあえずは休憩させてください。                  〔休憩〕                   矢崎部会長  それでは後半の議論で出自を知る権利について議論したいと思います。まず吉村委員 が厚生省の研究班で資料がございますが、研究結果について10分ぐらいで説明していた だければ大変ありがたいんですが。 吉村委員  参考資料2を見ていただきたいんですが、AIDで子供さんが生まれた方に対して、 御夫婦に対してアンケートをとりました。一番後ろの表1を見ていただきたい。アンケ ートの回収率ということで、アンケート総合292名の御夫婦にいたしました。これは平成 元年以降に当該の子供をお生みになった御夫婦に対して出しております。292組のうち平 成元年以降だけでも43通あて先が不明でありました。返信ありというのが159名で、これ はアンケートが二段階になっておりまして、別添のアンケートの前文というのは7ペー ジを見ていただきたいんですが、「アンケート調査に関するお願い」ということで、ま ず1回目にこのお手紙を出しました。その裏を見ていただきたいんですが、どういう方 法で同じ住所にアンケートを送付しても構わないとか、違うところに送ってほしいとか 、非常にプライバシーに対して配慮いたしました。慶應病院ということも一切明示して おりません。これを出しまして159組から御返事がありました。この中でアンケートに協 力するとおっしゃった方が114、71.7%。アンケートに協力できない、あまりかかわり合 いを私たちと持ちたくないという方が大体3割、28.3%。回答ありが夫が76で妻が90通 であります。78.9%。こういった結論をいただきました。  どういうことを聞いたかといいますと、それは9ページ以降にアンケートが書いてご ざいます。年齢とかさまざまなことを聞きました。20ページを見ていただきたいんです が、「AIDをした事実を子供に知らせるべきだと思うか」という質問に対しては、夫 が「絶対に話さない方がいい」が77.3%、「絶対話した方がいい」が75.0%、「考えた ことがない」「わからない」という方も恐らく知らせるべきじゃないと思っているんで すが、「話した方がいい」という方が男性で2名、妻の方が4名、お見えになりました 。  図2は27ページですが、「話さない方がよい」とする理由を聞きましたところ、下の 方が強い希望であります。「家族を守っている男性が本当の父親だと思う」とか、「話 さないことが親の義務だと思う」というのが続いております。「話すとかえって子供が かわいそうだと思う」という考え方もあります。「遺伝的な父親でないとわかると家族 関係が悪くなる」という方もお見えになります。こういった理由でありました。  次に3番目、「将来AIDの事実を伝えようと思っているか」、「伝えない」とする ものが81%、「考えていない」、「伝えるつもりである」という方は夫が2名、妻が4 名であります。4番目でありますが、「精子提供者を捜すことができるとしたら子供に AIDの事実を話すか」、要するに出自を知る権利が認められるとしたら子供にAID の事実を話すか、「話さない」という結果であります。図5は、「子供が将来AIDの 事実を偶然知って、精子提供者を捜したいと言ったらどうするか」、「捜してほしくな い」と思う方が50%ぐらいで、「会えるように協力する」という方もお見えになります 。「協力はしないが本人に任せる」という方もお見えになります。  それから図6ですが、「子供にAIDをしたことをいつか知らせなければならないと したらAIDを受けなかったか」という質問に対しまして、「それでも受けた」という 方が妻の方は52.9%です。「わからない」という方が29.3、妻で27.6です。ちょっと図 表が間違っていますけど。「AIDを受けてよかったと思っているか」、「よかった」 。「わからない」という方もお見えになります。少数でありますが。「AIDという医 療技術をどう思うか」、これは私たち必ず聞くんですが、「今後もある方がいい」とい った状況であります。こういった状況を考えますと、今のAIDというのは完全匿名の 出自を知る権利を認められないという形で行われるべきだといったこと。これはすなわ ちクライアント夫婦がこういうふうに考えておられるという現実ですね。AIDをしよ うと思っても子供に伝えないという現実があるということだけ御報告したいと思います 。以上です。 矢崎部会長  ありがとうございました。AIDに限ったケースですが、私が意外に思ったのは、夫 も妻もほとんど同じ意見ですよね。何か今の御意見に御質問ございますでしょうか。 鈴木委員  26ページの「AIDをどう思うか」ということで、「今後は禁止する方がよい」と答 えた方が1名どうやらいらっしゃる、これの理由がもしわかれば。それから、次のペー ジの「話さない方がよい」という理由の「その他」にもし何か特記するようなことがあ ればお伺いしたいんですけど。 吉村委員  調べればわかると思いますが、ほとんどの方が最後に意見を書いておられますので、 チェックすればわかりますので。 才村委員  この子供さんの年齢は大体どのくらいの幅があるんでしょうか。 吉村委員  0〜11歳ですけど、4.2歳が平均です。0歳というのは、大体が2例目を持った方に多 く出しておりますので、0歳ということが起こってくると思います。 矢崎部会長  よろしいでしょうか。それでは出自を知る権利について、事前に何人かの委員の方か ら御意見をいただいて資料に提出させていただきまして、本日は松尾委員からも御意見 をいただいて追加資料として配付させていただいております。各委員の方々の御意見は お読みいただけたのではないかと思いますが、念のために各委員から簡単に御自分の主 旨をお話しいただければと思います。そこから議論を始めたいと思いますので、加藤委 員から一言お願いいたします。 加藤委員  私は、吉村さんたちが今までやってきたことの中で重大な欠点があって、これはやめ させるべきだというところからスタートするのか、それともおおむね成功しているので 厳しく規制する必要はないのかという、出発点がそこではないかと思いました。ただ、 厳密な追跡調査がないというお話だったので、推測して大体はいい結果になっているん だろうと思ったわけです。それから、真実を知らせなければならないというのは、真実 を知らせた上で親子関係を築くべきであるということは、勧告できることではあっても 強制できることではない。法律で強制できることではなくて、あくまでもそうした方が 親子関係がずっとよくなりますよということを勧告すべきことなので、勧告と強制とい う区別をすると法律は強制の範囲ですから、法律としては緩やかな親の判断を受け入れ るような形で持っていくよりほかにしょうがないのではないのかと。その2つが私の言 いたかった点です。  細かく審査しますと、提供者の権利をどこで決めるか、それから子の知る権利をどこ まで認めるかという、この2つの因子が決定的で、決して公的何とか機関、私は最初「 いざこざセンター」と呼ぼうかと思ったんですけど、「わけ知りセンター」というふう に呼ぼうかと思ってるんですけど、わけ知りセンターの義務というのはそこから自動的 に決まってくると思うんですね。例えば15歳で知る権利があるとなったらば、わけ知り センターにメールを送れば自動的に返事が来て、「あなたは該当者ではありません」と か、「あなたの遺伝上の父親はだれだれです」とか自動的に返事が来ることになるし、 場合によってはそれは親の許可がなければ答えをもらえないということもあるし、場合 によってはお医者さんの助言がなければ返事をもらえないということにもなりますし、 提供者の権利と子供の知る権利が自動的にわけ知りセンターの義務というものが割り出 されてくるので、わけ知りセンターの方は独立因子ではないと思うんですけれども、こ の2つの組み合わせを考えるかなりたくさんの組み合わせができて議論がしにくいと思 ったので、3つのシナリオを考えました。そして私は一番現状に近い線を指示したわけ でありますけれども、だんだん将来の線としては知る権利を強めていくという方向性も 考えられるのではないかと思っています。以上です。 矢崎部会長  ありがとうございました。続いて石井委員ですね。 石井委員  私も、親に知らせなくてはいけない義務があるというふうには考えておりません。た だ、人にとって自分がなぜここにこうしているんだろうということは一番の本質的な疑 問だろうと思いますので、どのような形で生まれてきたかにかかわらず、それを知るこ とができるようにすべきではないかと考え、非配偶者間の生殖補助医療以外の子供が知 ることができるのにもかかわらず、その方法によって生まれた子供だけがそれを知るこ とができない、制度的にそういうものとしてつくってしまうということは子の福祉に反 するのではないか。私たちは子の福祉を優先するという考えに立ってこのシステムをつ くろうとしているのだから、それが知りたいと思った子供は知ることができる、そうい うことを保証できるようなシステムをつくるべきではないか。そして、提供者にももち ろん権利はあるけども、提供者は情報を知られることが嫌であったら提供しないという 選択ができるのだから、その権利は害されることはないだろうし、その結果提供者が減 るとしても、それはやむを得ないかもしれないし、スウェーデンの例ではまた提供する 人もふえてきているというふうにも聞いていますので、それは必ずしも問題がないんじ ゃないかということ。そして、何よりも言えることは、今個人の特定できる情報を知る ことができないということに決めてしまうと、15年後を規定してしまうことになる。時 期尚早というけれども、決めるのは今だけれども現実に問題になるのは15年後というこ とを考えると、今提供できないというシステムをつくるべきではないのではないか。何 か問題があることは考えられるけれども、なるべく問題が生じないようにどのような仕 組みにしたらいいかということは、15年かけて考えていくことができるのではないだろ うかということが私の意見です。 矢崎部会長  ありがとうございました。町野委員の御意見は、大筋では加藤委員と似ているのでは ないかと思いますので、加藤委員は町野委員の分も含めて御議論していただければと思 います。次にいただいたのは才村委員ですが、簡単に本意を述べていただけますか。 才村委員  今まで言っていたことを整理しているということなんですけども、知りたくない子供 には無理やり知らせる必要はない。ただ、知りたいとする子供には最終的には知ること ができるのだというふうな道を残しておくべきで、知りたい子供が知らない部分がある というのは人間を不安にさせるし、アイデンティティの確保ができません。そして、ど れだけ希望しても知ることができないという場合には絶望感にもなるのではないかと。 知ることができるということがはっきりしているだけでも生きる展望につながってくと 思いますし、知ることができるということがわかったということと、実際に知ることと 、提供者に会いに行くということには段階がありますので、その辺は一気にすべて会い に行くということではないと思います。ただ、出自を知る権利を確保するだけではなく て、その子供の最善の利益にかなうかどうかの判断をして、そして事務的に出自を開示 するだけではなくてアフターケアをしながら、子供にとって知らせても大丈夫なのかど うかという、その辺のサポートも引き受けていかなければいけないと思います。  それから、提供者には最初から出自を知る権利があるというインフォームドコンセン トをしていれば、提供者のプライバシーを守るということに違反しないとは思います。 4番目には、真実告知をするということが大前提としてあるんですけれども、夫婦が子 供に、あなたは生殖補助医療によって生まれた子供だよと、そしてほんとに欲しかった かけがえのない存在であるという愛情ある親子関係の中で真実告知はされるべきもので 、法律で義務として縛ることはできないと思います。そしてなるべく早いうちに、例え ば小学校の低学年ぐらいから繰り返し子供の発達段階に応じて真実の告知をしていくべ きものだと思います。あとは資料としてつけましたので、机上配付の方の資料も見てく ださい。 矢崎部会長  ありがとうございました。福武委員の資料もございます。 福武委員  これもまとめです。出自を知る権利というのは特定の人が自分の親であるということ を知ることだと思うんですね。だから目の色だ何だかんだというのは中途半端な話であ って、それは出自を知る権利を一部開示したということにはならないんじゃないかとい うことと、特別養子制度をつくったときには、菊田医師が言っていた実子特例法という のに対する案として出されたんだと思うんですが、今回は第三者提供の精子・卵子云々 というのは、もう医療の範囲を一たん飛び越えて社会的な制度をつくるという話だろう と思うんです。現実の戸籍実務にのっとった意味での実子特例法をつくるのと同じだろ うと思うんです。今はDNA鑑定その他で実親かどうかというのはすぐわかるような状 態なのに、戸籍上実親となっているのが違う人だということになったら、それをもう少 し明らかにさせたいという方がむしろ当然ではなかろうかということです。6番目はち ょっとおまけです。日本の戸籍制度を私はもっと個人主義に変えた方がいいんじゃない かというのをくっつけたということです。 矢崎部会長  ありがとうございました。松尾委員からきょう御意見をいただきました。 松尾委員  申し上げたいことはただ一つです。出自を知る権利という用語が全委員の共通の理解 で議論がなされることが必要だと思います。広辞苑の2)の意味で、一言で言えば自分 のBiological Parentsがだれだということを知る権利と思います。福武先生がおっしゃ ったこととかなりだぶりますけれども、それ以外の情報というのは出自を知る権利とい うこととは違うのではないかと思います。これはイエスかノーかという非連続性の情報 だと思います。 矢崎部会長  ありがとうございました。皆様の意見をお聞きしますと、出自を知る権利というのを どこまで認めるのか、提供者のプライバシーをどこまで守るかということで、最終的に は個人を同定する情報までお教えするのかしないのかという、その1点に絞られるので はないかと思います。専門委員会は最終的には提供者のプライバシーを保つ方向で結論 がつけられたわけですが、専門委員会の議論についてはどうなんでしょうか。 加藤委員  あまりにも複雑でもう忘れてしまった(笑)。 吉村委員  皆さんの意見、全員一致は認められませんでした。 矢崎部会長  そうですね。 加藤委員  提供者については、子供にとってだれだかわかるような開示を条件づけないと提供で きないというふうに厳しく制限するのか、それとも提供者が拒否すれば個人名やなにか は知らせなくてもいいという範囲にするのか、また両方の場合を認めるかというケース もあると思うんですね。どうも石井さんの意見と才村さんの意見だと、必ず全部開示す るという条件でなければ提供を認めないという考え方なのではないかなと思うんですけ れども、その2つ、両方認めるのか、必ず名前までわかるようにして提供しろとすべき かどうかという点が、一番基本的な論点ではないかと思います。 吉村委員  提供者というのはさまざまな方がお見えになると思います。それは大変いいことなん ですが、ということはどうしてかと申しますと、この医療は匿名の第三者からいただい た配偶子・胚によって成り立つと。それが大前提ですよね。そうすると、特定されると 恐らく提供者が減る、それは本末転倒だと、出自を知る権利とそれを考えるとそれは本 末転倒だという意見ももちろんあるんです。しかし、提供者を考えた場合に、例えば僕 は提供したいと、しかし自分の名前が出るのは嫌だという、この善意はそうなると全く 許されないことになってしまうわけです。そういった善意というのは、そういうのをボ ランティア精神と呼ばないということであるならばこれはまたしょうがないんですけれ ども、ただ、そういうことってあってもいいんではないかと。あげたいんだけど、自分 はわかるとまずいなと。これは別に何ら間違った考え方ではないような感じが私はしま す。そうしないと、第三者からいただくということはかなり難しいところが出てきて、 結局は兄弟姉妹、近親者に頼らなければならないと。かえって難しくなってしまうんじ ゃないか。  スウェーデンの例をよく挙げられるんですが、厚生科学研究で今年石原先生がスウェ ーデンをずっと歩いていったんですが、スウェーデンというのはかなりフィンランドに 逃げているんですね。それは匿名ということもありますし、要するに特定できるドナー となりますと、少ないということはもちろんあるんでしょうが、そういったことを望ま ないと。そしてフィンランドに逃げている。そうした現実を聞きます。  そらからもう一つの現実は、こういうことも聞きました。今度の研究でわかったんで すが、ドナーがAIDで形成された家族関係の中に積極的にかかわり合いを持ちたいと 、逆のケースが出てくるんですね。積極的にその家にかかわりたい。それはある意味で 、才村先生は大変いいことだとおっしゃるかもしれない。金城先生も大変いいことだと おっしゃるかもしれません。しかし、逆に子の福祉を脅かすことだって起こり得る可能 性はあるんじゃないかなと思うんですね。となりますと、どちらにもいい点、悪い点が あるんですね。そしてAIDの現実ですよね。現実を完全に無視して、例えばそういっ たクライアント夫婦は受けるなというのであれば結構だと思いますが、非常にその辺は 難しいところだと思う。出自を知る権利を認めてあげたいということは、全員がそう思 われていると私は思うんです。しかし現実としてできるかどうかということですね。こ れが私の意見です。 鈴木委員  今のお話で一つ質問なんですが、ドナーの方が子供を求めるというお話は、ドナーか らできた子の追跡可能なシステムがあるからという意味ですか。それとも、生まれた子 が、あなたが私のお父さんですねと訪ねた結果、関係を持ちたがるということでしょう か。 吉村委員  スウェーデンでは後者の方を心配していました。 鈴木委員  わかりました。 矢崎部会長  恐らく意見が2つあって、そこはなかなかまとまりそうにないと思いますので、あま り厳しい条件ですと海外でという、臓器移植みたいな海外へということで、そこは商業 主義のことが行われているところにいってしまうということと、しかし、やはり生まれ てくる子供の出自を知る権利を保護してあげないと医療の本質としては間違っているの ではないかという、2つの意見に分かれているように思います。これはどうしてもまと めようがないんですが、ちょっと怒られるかもしれませんが、一応委員の皆様の意見を お聞きして、資料2に一つの案というものを提示させていただきました。事務局からま ず説明をいただいて、皆さんからこれに対して御意見を伺えればと思っておりますので 、資料2について。 宮本室長  出自を知る権利について(案)という資料をお手元に配らせていただいております。 今御紹介いただきましたように部会長と相談いたしまして、これまでの議論の論点を一 度整理するということを主な目的としまして、また一つの方向性を示した場合、それに 対しての論理の組み立てがどのようになるかということを示したものでございます。ま ず出自の告知という部分でございますが、これまでの議論の中で、提供を受けることを 希望する夫婦に対しては、「提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療により生ま れた子が出自を知る権利を行使することができるためには、親が子に対して提供により 生まれた子であることを告知することが重要であること」についてインフォームドコン セントを行う、という内容が皆様にお含みいただけていると理解しています。すなわち 、出自について告知を親に強制するものではないという内容になっているということで ございます。  続きまして2番目の出自を知る権利についてですが、(1)開示請求できる者、につ いては、(1)非配偶者間の生殖補助医療により生まれた者。(2)自分が非配偶者間の生殖 補助医療により生まれたかもしれないと考えている者。こういった部分でございます。 これにつきましても皆様の御理解をいただいているものと思います。(2)開示請求が できる年齢、これは15歳からということで、こちらについても皆様に御議論いただいた ところでございます。(3)開示の内容(案)、ということで、こちらは現在皆様に御 検討いただいている内容が大きく含まれる部分でございますが、開示請求できる者が知 りたいと考えている情報ついては、氏名、住所等、提供者を特定できる内容を含む、と いうところで一たんまとめてございます。その考え方としましては、出自を知ることの 重要性としまして、生殖補助医療により生まれた子が、精子・卵子・胚を提供した人に 関する個人情報を知ることはアイデンティティの確立などのために重要なものである、 というような考え方がございました。それから権利の平等ということについては、子の 福祉の観点から考えた場合、このような重要な権利が提供者の意思によって左右され、 提供者を特定することができる子とできない子が生まれることは適当ではない、という 考え方がございました。子の意思の尊重ということについては、生まれた子が開示請求 できる年齢を超え、かつ開示に伴って起こり得るさまざまな問題点について十分な説明 を受けた上で、それでもなお提供者を特定できる個人情報を知りたいと望んだ場合、そ の意思を尊重する必要がある、という考え方がございました。提供者のプライバシーに ついてですが、提供は提供者の自由意思によって行われるものであり、提供者が特定さ れることを望まない者は提供者にならないことができる、という考え方がございました 。提供数の減少については、開示の内容に提供者を特定することができる情報を含める ことにより、精子・卵子・胚の提供数が減少するとの意見もあるが、減少するとしても 子の福祉の観点からやむを得ない。ただし、国民一般への意識調査の結果からは、提供 者を特定することができる情報を含めて生まれる子に開示するとしても、一定の提供者 があらわれることが期待される、という考え方がございました。  続きまして(4)開示に当たっての説明・カウンセリング、についてですが、公的管 理運営機関は開示に関する相談業務を行う。開示に関する相談があった場合、予想され る開示に伴う影響についての説明が行われ、カウンセリングの機会が保証される。特に 提供者を特定できる個人情報の開示まで希望した場合は、特段の配慮を行う。こういっ たことについては基本的に皆様の考え方が一致を見ているところと思います。(5)開 示の手続き、としましては、(1)開示請求、書面による開示請求と開示範囲の指定。(2) 開示、書面による開示ということでございます。  続きましてインフォームドコンセントですが、提供を受けることを希望する夫婦及び 提供を希望する者に対して、生まれた子の出自を知る権利及び予想される開示に伴う影 響についてインフォームドコンセントを行う。それから4番、子供が生まれた後の相談 業務、については、先ほども御議論いただきましたが、生まれた子供に関する相談につ いては児童相談所等が公的管理運営機関等と連携をとりながら対応する。こういった整 理をいたしますと、いろいろな論点について考え方の整理ができるというものでござい ます。以上です。 矢崎部会長  いかがでしょうか。子供の知る権利をできるだけ広い範囲に認めるということが基本 的な姿勢で、先ほど加藤委員がお話しになった御意見では、権利の平等といいますか、 提供者を特定することができる子とできない子が生まれるというのは適当ではないかと … 加藤委員  いや、やむを得ないということです。 矢崎部会長  やむを得ない。それが適当ではないのではないかという考え方になっているわけです が。 加藤委員  ちょっとこの件に関して質問ですが、子供が15歳を過ぎたときに親に内緒で出自を知 る手続きをすることができるのかどうか。 宮本室長  これまでの議論の中では、親の関与する部分というのは特に御議論いただいていない ところです。 加藤委員  もう一つは、提供を受けた人は提供した人の個人名を知る権利があるのかないのか。 宮本室長  それは匿名性の担保という部分でございますので、これまでそういったものはないと いう想定で… 加藤委員  これまではないという考え方だったんですよね。だから親には知る権利はないけれど 、子供にはその権利があるということになるわけですね。 矢崎部会長  これは子供が出自を知る権利ですから。先ほどちょっと議論のあった、提供者が子供 にアプローチするというプロセスはあり得ないと思うんですが。子供と面会した後、提 供者が出てくるということはあり得ますが。いかがでしょうか。 才村委員  出自の告知の1番のところですけど、これは告知することが重要であることを書かれ るのは非常に大事棚ことだ思うんですけれども、もしできたら、「安定した親子関係の 中で早期に告知することが重要である」というふうに入れてもらうことができないかな というのが1点です。それから、考え方の3つ目、子の意思の尊重のところですけど、 さっきの論議でも援助とかフォローアップとかいう言葉が出てきてたんですけれども、 「開示に伴って起こり得るさまざまな問題点について十分な説明・援助を受けた上で」 というふうに入れられないかなというのが2点目です。それから、2ページの(4)の 開示に当たっての説明・カウンセリングというところも、カウンセリングだけじゃなく てもう少し幅の広いサポート体制が要るかなと。いろんな判断もしながら子供の権利擁 護に立った判断をしながらのサポートが要ると思いますので、開示に関するカウンセリ ングのところを日本語であれば援助に直すか、フォローアップでもなんでもいいんです けど、カウンセリングという言葉ではない言葉に中身的にも変えてもらえないかなとい うことが3点目です。先ほどの論議の蒸し返しですけど、4番は児童相談所と公的管理 運営機関を順番をひっくり返してほしいというのが意見です。  それが意見ですけれども、開示に当たっての説明・カウンセリングの開示ということ の概念が、ここに「予想される開示に伴う影響についての説明が行われ」となっていた りするのですけれども、開示は単に事務的に開示するわけではなくて相談業務というふ うに出ていますので、ということはその後の開示にまつわる精神的・心理的な援助、社 会的なサポート、それらをどの程度までの範囲でとらえられているのかなというのが疑 問なんですけれども、もしいろんなことにまつわってかなり幅広いものであれば、下の 4番の子供が生まれた後の相談業務の開示に伴うことにも含まれてくるでしょうし、も し事務的なことであれば相談業務はここには要らないことになってしまいますし、開示 に伴うものは公的管理運営機関で、開示に伴わないものは児童相談所というふうに分け てあるのが、現実問題として開示に伴うことへの相談というのはすごく難しい問題とし て残ると思うんですけれども、その辺でそういうふうに分ける必要があるのかなと思い ました。 宮本室長  私の説明がちょっとよろしくなかった部分があるのかと存じますけれども、ここで御 紹介いたしました内容としましては、主に開示の内容としましてこういった開示請求で きる者が知りたいと考えている情報の中に、氏名、住所等、提供者を特定することがで きる内容を含むという考え方が、検討いただいたさまざまな条件の中で考えていくこと が適切であるかどうかというのがこのペーパーの主な趣旨でございます。したがいまし て御指摘いただきました部分といいますのは、それぞれの検討する内容におきまして変 更されるものと思いますので、そういった際にまた御議論いただければと思います。 矢崎部会長  才村委員の言われているのは、例えば説明だけでは不十分だから、「説明・支援」と いうことを入れてほしいということですね。それは必要かもしれませんね。カウンセリ ングという言葉が非常に曖昧模糊(あいまいもこ)としていることは事実ですが、ここ に書いてあるカウンセリングは当然相談だけではなくて、後のサポートを行うというこ とが含まれていると理解していますが、そういう面からカウンセリングでは不十分だと いうことであればまた考えさせていただきたいと思います。 鈴木委員  今いただいた案についての確認です。なるほどなと思ったのは、開示の内容案として 、知りたいと考えている情報というふうに書いてくださって、それから、(5)開示の 手続きで開示範囲の指定というふうにきてるわけですよね。例えば第一種開示というよ うな、私がそういうことで生まれた子供ですかというので、それだけについての回答、 例えば第二種であれば、いわゆる近親婚であるか否かというようなこととか、ここは知 りたいけどここは知りたくないということはあるわけですよね。全部を一遍にだだっと 出てくるのではなく、というニュアンスでここは書かれているわけですよね。 宮本室長  御指摘のとおりでございます。 鈴木委員  これは吉村ドクターに現状の確認なんですが、開示が可能なものという、現時点で残 しているデータというのは、まず提供者の医学的なデータというのはありますよね。い わゆるカルテのようなものが一つ。それから、いわゆる住所・氏名、結局大別するとこ の2つになるのでしょうか。例えばきょういただいた御意見募集でいただいた中には23 歳女性のがありますよね。だけど内面的な情報を公開してほしいというふうに書いてあ って、この人がどういう人だったのかということを知りたいわけですよ、この方にとっ ては。それもわかるんですが、でもこういうのは多分残さないですよね。趣味がどうで とか、なぜ私がドナーになったのかなんて作文を残してもらうような、外国の精子バン クではそのようなことをやっていますが、恐らく日本ではそういうことにはなりません よね。ちょっとそこだけ確認を。 吉村委員  現在は特定できるものは連結可能の匿名化になっているだけであって、台帳を見れば だれかということはわかります。ですから、例えば家裁がこの親はだれですかと、知る 必要があると、10年後にそういうことがあった場合にそういうものに対して対応はでき るようになっています。それはできるようにはなっていますが、現在はドナーに対して もクライアント夫婦に対しても知らせませんというフランスと同じようなタイプをとっ ておりますので、現在は何があっても知らせないということです。ただ、20年前、30年 前になりますとカルテがありませんので、その点については不可能かと思います。そう いったことがないように日本産科婦人科学会で会告ができるちょっと前からは、同定が できるような台帳だけはつくっています。ですから会おうと思えば、名前を開示しなさ いということがあればもちろんドナーにも言わなくちゃいけないでしょうけれども、そ ういったことがあれば会って何かするということはできるんじゃないでしょうか。それ が現実のところです。 鈴木委員  私が伺いたかったのは、多分15年後の開示であっても、子供に開示できるのは提供時 の医学的データと氏名・住所だけで、15年後には追跡不可能という人は当然いますよね 、ということだけなんですけれども。 吉村委員  現時点の方法では追跡不可能である場合もあるでしょうね。 矢崎部会長  今のデータは、これがもしこういう方向でやりますよといったときは、提供者のイン フォームドコンセントをとってないので提供者を同定する、さっきのメールで訴えられ た方にお知らせするということは、これが出たからできるということにはならないです よね。 吉村委員  私はそう考えていませんけど、町野委員はこの前そんなことはないでしょうとおっし ゃいましたけど、それは私としてはされるべきことではないともちろん思いますが。そ れから、やはりこういった案が出てきますと、特定できるとなりますと、提供者という 観点から考えると、例えば提供者は必ず出自を知る権利が特定されますよということを インフォームドしなくちゃ、それに賛成しないと提供していただけないと。クライアン ト夫婦は出自を知る権利があってドナーが知らされますよといったことを認識しないと この医療を受けられないということですね。 加藤委員  いや、ちょっと違うんじゃないですか。出自の告知について書いてあるのは、告知は 強制じゃなくて、なるべく若いときから告知して親子関係を維持しましょうという勧告 ですよね。このインフォームドコンセントは。必ずこの勧告を行うという条件でしょ、 ここに書いてあるのは。 吉村委員  ということは、「わかりました」と言っていてもそれはしなくてもいいということで すか。 加藤委員  そんなことはないけど、必ず生殖補助医療を受ける場合には親子関係の告知について 勧告を必ず聞いてからやらなければならない。もちろんそれを上の空で聞いている人も いるかもしれないけど。こういう場合もありますという深刻な事例についても教えるべ きじゃないかと思うんですよね。ただ、この文案だと、ドナーが自分の名前を知らせな いで提供することができるかどうかと書いてないように思うんですけども、書いてある んですか。 宮本室長  繰り返しますけど、それに対する考え方を並べておりますので、当然委員の中でそう ではないという御意見があれば、それぞれの考え方についての御意見をお知らせいただ ければと思っております。 石井委員  先ほど鈴木委員が言われた、専門委員会での議論では提供に当たっていろんな情報を 、趣味だとかそういうのをアンケートみたいな形でなされるというイメージだったので はないかと私は思っているんですが。 加藤委員  所属クラブだとかね、ラグビー部だとか柔道部だとか。 吉村委員  それはあまり関係ないような…本人が知りたいということとはあまり関係ないような 感じもしますけど。僕もこういう人に最近会ったんですが、知りたいのは2つあるよう な感じがするんですね。本質はドナーはだれかということを単に知りたいだけなんです 。ちょっと知ってみたいと。そういう感覚なんですね。それは本能ですからしょうがな いですね。だけども、ほんとに知りたいときに言ってくるのは、例えば出身地と学歴が 知りたいと言いますね。それから職歴、病気があるかどうか、これを知りたいというこ とは書いて見えましたね。学歴を知りたいという現代人は多いですね。 加藤委員  顔の写真見せろなんて言ってこないですか。 吉村委員  それはないですけど。会わせてくれとは言いますからそういうことかもしれませんけ ど。1人だけですけど私は経験ありました。 鈴木委員  つまり親が告知しなきゃいけませんよというインフォームドコンセントを受けて、な るべくそうしますといって受けますよね。やっぱりほんとはしたくない。ずっとしなく てきて、でも子供が疑った場合は子供は勝手に開示請求ができるということですよね、 このシステムは。 平山委員  僕はそこがちょっと引っかかっているところで、となると出自の告知と矛盾してしま うんですね。というのは、親が子に対して告知することは重要であるといわれているの に、第三者から告知されてしまうという事実が出てくるわけですよね。ですから開示の 仕方だと思うんですけど、開示のときには必ず親がとかそういうのをシステムとしてつ くるのであればまた違うのですが、もしかすると第三者から、公的管理運営機関のカウ ンセラーなりお医者さんなりから、あなたは実はこういう生まれでという告知をされる ことになる。そのことが果たして認められるべきかどうかというのをちょっと議論すべ きかなと思いますが。 相良委員  私も同じ意見なんですけれども、最終的には全面的に情報を開示する道を残しておい た方がいいとは思うんですが、ただそのプロセスとして非常にこれは重たいものなので 、複数回のカウンセリング等が必要になると思います。親御さんに対しては告知をする ことが重要であるということはもちろん言っておいた方がいいと思いますが、同時に告 知をする義務はないということも入れておいてあげていいんじゃないかと思うんですね 。実際に子供が開示請求をしてきた場合は、実際に開示をするまでのプロセスの中で親 御さんと一緒にカウンセリングを受けることとか、ドナーに対してどういう影響を与え るのかとか、その子自身がそれを受け入れるだけの自我の発達がちゃんとできているか どうかというところまで、完全には無理だと思いますけれども、ある程度判断できるく らいのカウンセリングのプロセスを経てからこういうことが行われるというシステムに しておいた方がいいんじゃないかと思います。 鈴木委員  いつもこの話を考えるとき、子供って私たちはつい15歳の子がいきなり相談に行くと いうイメージをしちゃうんですが、40になった私が開示請求するということも当然あり 得るわけですよ。そこで親の承諾云々といわれるのは大変おかしな話であると思うんで すね。あるいは育ての両親が既に亡くなっているということだってあるわけですから、 そういったことも含めて何かうまい文面を、必要な場合は親も含めてのカウンセリング や援助というのは非常に大事だと思いますし。 矢崎部会長  開示はいつ行われるかわからないので、80年一応データは置いておきましょうという ことになっているので、そういう御心配は要らないと思うんです。ただ、前回の議論が あったときに、ほんとに個人を同定するまでの情報が必要なのかどうかというのは、請 求されたお子さんだけではなくて、家庭環境とかいろんなものを総合的に判断して行わ れることになるかと思うんですよ。(4)のところにもう少し皆さんが御心配なさって いる第三者機関からデータがぱっとプリントアウトされて出てくるということではない ということを、もう少し安心感を持てるようなことをここにしっかり書き込んでおくと いうことが必要なのかもしれません。 加藤委員  臓器移植のときに、実際に起こったことかどうかは知らないんですけど、提供者の家 族がレシピエントに対して後で会いに行ってお金を請求するというケースがあり得ると 。あるいはゆするというようなケースですね。そこでレシピエントの安全性を確保する ためには、一応情報が遮断できるというゲートウエイが必要だという判断が導入された と思うんですよ。今回の場合も15歳の子供が親とけんかして、じゃあ調べてみろといっ てメールを送ったら返事が来たと。それで遺伝子の親に会ってみたと。そうしたら、提 供したときはいい子だったんだけども、今はぐれてたと。そうなると非常に危険な事態 が発生し得るわけですよね。そういう危険がないかどうかということをどこかでチェッ クする仕組みがないと危ないんじゃないかと思います。 矢崎部会長  生まれた子がドナーにアプローチすることもあり得るし、提供者が子供の家庭に介入 するということもあり得るので、非常に危ない、単に子供の福祉だけではない、それに 付随したもろもろのことが起こって、法務省では親子関係を法律的にきっぱり切ること ができるので、例えば財産の問題とかそういうことは法律上起こり得ないという状況を つくっていただくことになっていますが、そういうことではないいろんなストーカー的 なこととか、そういうのが子供の福祉のために重要な一方、ドナーの方とかあるいは育 てた、あるいは生んで育てた家庭にどういう影響を与えるかということもやっぱり見極 めないといけない。 吉村委員  私は専門委員会の案が一番いいと思っているのはどうしてかと申しますと、精子の提 供は得られるかもしれないと思うんです。ただし卵子の提供を考えてみるということは 大事なことだと思うんですね。匿名の第三者で、実費相当分で、ある程度のリスクがあ って、そしてだれか特定される、それで本当に提供していただける人がいるでしょうか 。これは実際にやる面において考えていただきたいのは、それが本当にある程度リスク があるわけですから、それが本当にやっていただける人がいるだろうか。そうすると姉 妹が非常に出てくると思うんですよ。近親者。実際のことを考えると、例えばこういっ た医療をどう考えていくか、そういうことでドナーが、特定できるということを納得し た人じゃないとだめですよというのは非常に子供の福祉の点から簡単なんですよね。実 際はわからないですよ、やってみないと。結構いるかもしれないし。しかし、現実面に おいて、例えば生体肝移植を見ても、生体肝移植を近親者以外にやれる人がいるだろう かということを考えると、卵子提供というものは姉妹からしかやるなというようなこと をいっていることにつながっていかないかと。かえって子供の福祉福祉ということを前 面に押し出すことによって姉妹を圧迫することにならないかと非常に危惧しますし、例 えば卵子提供に対してドナーがこういうことでやりたいという人がいて、それが特定さ れるの嫌だと言ったらば、この善意というのは全く無視していいのかということですね 。私は卵子提供の推進派でもなんでもありませんが、実際にやれるかやれないか、せっ かくここまで議論してきてです。出自を知る権利、子供の権利ということをいうだけで 。絶対に認めていないわけじゃなくて、例えばこれに関しては案1であれば、ドナーの 人がいいですと言ったらいいわけですから、決して子供が出自を知る権利が全くシャッ トアウトされたということではないと思うんですよね。実際にやる場合にどういうこと が一番プラクティカルかということを考えることも大事なことじゃないかと思う。やっ たけども全く行われないというようなガイドラインを決めても、子供の福祉は守られる かもしれないけれども、これはほんとにそれだけでいいのかと。そういうことを非常に 強く感じます。 高久委員  よろしいですか。この案の2ページ目に、公的管理運営機関がいろんな相談業務をや るということが書いてありますが、出自を知る権利は提供者がだれかということを知る ことですね。それについて公的管理運営機関があなたはだめですよ、家庭環境とかいろ んなことを見てあなたはだめですよと、知らせないということはできないのではないで すか。そうすると、カウンセリングの意味がよくわからない。その後にカウンセリング をする必要はあるかもしれませんが、育ての親の状況やドナーの状況を判断して内容を 小出しということはあり得ない。逆に言えば出すときには書面で出しても仕方がないの ではないかと思います。もし出自を知る権利を100%認めるならですね。 平山委員  知らせることを拒否することはできないけれども、何でじゃあカウンセリングをしな きゃいけないかというと、その子がどうしてそういう行動に出て、どういうことがほん とに知りたいのか。そして、こういうことを知ってどうしようとしているのかというこ とをきちんと理解しながら、ほんとにその子にとって、その子が納得してこういう影響 がある、今の家族、今の親たちにもこんな影響があるかもしれないということを理解し た上で、それでも私は知りたいんだということであれば、そういうふうなプロセスを経 て開示することがとても重要だと思うんですね。だから僕は意味はあると思います。 才村委員  私も、すぐ開示するのではなくて、そのプロセスを経ないと開示できないという仕組 みに最初からしてしまうということで、最終的にできないということはいえないですけ ど、だけどもプロセスの中でその子供さんがどういう背景なのか、そして親子関係がう まくいっていないんだったら、例えばその親御さんにも会い、親子関係のサポートもし ながら、なぜそのようなことを知るに至ったかというその人自身の最善の利益を確保で きるような形でのサポートをするという大前提のもとに開示すべきだと思うんです。そ してまたドナーの人にも事前に公的管理運営機関から連絡をとって、ドナーの方への事 前の準備性ですね、突然にぱっとあらわれるのではなくて、その辺のことも人間関係の 調整という意味はそういう意味で、そこまでを含めてやるべきだと思います。 高久委員  そうすると公的管理運営機関は大変ですね。 矢崎部会長  一番大変な開示と同時に、これから議論になるところですが、卵子・胚の場合の最終 的な判断を公的管理運営機関が倫理的な観点からやろうとしていますので、これは極め て難しい判断を迫られると思います。ただ最終的にはお知らせできませんよということ はできないので、一応は原則は開示せざるを得ないということを理解した上でやらない と、ただ機械的に開示するのではないけれども、最終的にはそういうこともあり得る。 逆に、いい環境のもとで開示ならいいんですが、親子関係がこじれて、それでほんとの 親を知りたいといったら、かえって提供者にも迷惑をかけますし、本人にとっても決し てプラスではないと思うんですよね。 高久委員  その場合でも最終的にはせざるを得ないということですね。 新家委員  今まで黙っておったんですけど、私どもの会の意見というのはこの中で一番反対の意 見なんです。吉村先生と私は連絡をとっておりませんことをお断りします。私どもの委 員会では、本人が特定できるまでの情報は記載しないという意見なんです。だから知れ るところまでは、つまり提供者が教えてもいいよというところまでは記載してもいいけ れども、自分が嫌なところは一切書かないで、何かイニシャルみたいなものにするとか 、そういう意見が我々の会の意見なんです。それが全面開示しなければ出自を知る権利 ではないんだということになると、私の会は反対だということになります。 鈴木委員  記載しないというのは、公的管理運営機関に提出する様式に、あるいは保存用の書式 には自分の残したい情報だけを記載するという意味ですか。 新家委員  そのとおりです。そうすれば、例えば子供が知りたいと言ってきても、どこか途中で とまってしまうはずで、公的管理運営機関というのはそれ以上は功けなくなるはずです 。 石井委員  子供に開示するかどうかと、情報が公的管理運営機関にいくかどうかということは別 問題。近親婚になるかならないかの判断のためにも、また、提供回数を制限するという 、生まれてくる子供の数を制限するということからも、きちんとだれが提供したかとい うことは公的管理運営機関は把握できなければ困るというシステムをここでは考えてい ると思いますけれども。 新家委員  その場合には同じ記号や番号であれば近親婚は防げるはずです。 加藤委員  背番号か何かつけておくわけですね。 石井委員  提供機関は1カ所と限っているわけではありませんから、背番号化というのは無理な んじゃないですか。 宮本室長  よろしいでしょうか。ただ今御議論いただきましたように、いろいろな目的がござい ますので、公的管理運営機関に個人の特定できる情報を、同意書を含めて、登録できる というところまではこれまでの御議論の中で確定しているものということで私どもは理 解しております。それ以降、お子さんからの出自を知りたいという場合の対応について 御検討いただきたいということでございます。 新家委員  それで私今まで黙ってたんですけども、そのことはもう理解してるんですね。ですけ れども、提供者と被提供者というのがお互いに匿名であって、それで子供だけ突然わか る権利があるというのもちょっとおかしな気がするんですけど。 矢崎部会長  それは図式ではおかしいんですが、成長過程でそれが不可欠な要件であるという御意 見が大きいので、それはそういう御意見に耳を傾ける必要があるんではないかと。 加藤委員  必ずしもそうではなくて、例えば子に遺伝上の父を開示するときには、同時に親にも 必ず開示すると、レシピエントにも必ず開示すると。だから子供だけ知ってて親は知ら ないという事態は発生しないと、そういうふうにしても別に差し支えないんじゃないで すか。 矢崎部会長  それは次の議論で、子供に開示するかどうかということですから。 鈴木委員  個人的には私は全面開示を指示したいと、いろいろ迷いはありますけれども、皆さん のおっしゃることもごもっともだと思いますし。ただ、親と子供で不公平じゃないかと おっしゃったのは違うと思うんですね。そもそもそれで親になろうとするカップルと、 ドナーになろうという人には、それを受けるか受けないか選択する方法というのはあっ たわけですけれども、子供にとっては全然選択のない状況で生まれてきているというこ とになりますので、これを同列には論じられないと考えます。あと最終的に、さっき松 尾委員からの資料でも思ったんですが、例えばこちらの資料では、デンマークだと卵提 供もそもそも禁止されているということですよね。いろいろうちの国がどうするかとい うのは国によっていろいろ違ってきても当然だし、私たちがそれを全面開示でやろうと いう社会を目指すのであれば、それはそれで一つの提案だろうというふうには思ってい ます。ドナーあるいは受ける人が減っても。 吉村委員  それは御意見ごもっともで、減ってもいいと。ただそのときに私が心配するのは、兄 弟姉妹ばかりになるんじゃないかと、これを一番心配しているんですよ。卵子提供は特 に姉妹の方に与える影響というのは大変大きなものになってくるんじゃないか。9割9 分まではそうなるんじゃないでしょうか。鈴木さん、例えばあなたドナーになってあげ たいといって、自分のことを考えると私やっぱり、皆さんもそうだと思うんですけれど も、この状況下でドナーになってあげたいと思われますでしょうか。それはほんとに素 朴な疑問なんですけど。 鈴木委員  そもそも開示するかしないかはともかくとしても、なかなか無償で卵を提供するとい う人は少ないと思います。それこそ50万、60万なりもらわない限り。先日卵バンクの話 なんかも新聞に載っていましたけれども、無償ではなかなかとは思います。逆に言えば 全面開示であればむしろ兄弟姉妹はノー、だったら余計ノーであるという立場ですので 、だったら兄弟姉妹しかいなくなるじゃないかという吉村ドクターの御質問とはまたそ こでずれてくるんです。私はもっと絞っていっちゃおう、あるいは現実に絞らざるを得 ない、受ける人がどんどん少なくなる方向をむしろ選んじゃってる、考えてるのかもし れませんけれども、逆にもしそれで卵提供あるいは精子提供が現実に減ったとしたら、 やはり精子をもらう、卵子をもらう、あるいはあげるということは、それだけ非常に厳 しい、あるいは難しいことだということを私たち自身が改めて認識すべきなんじゃない かというふうに私は思っていますけれども、そこからまたスタートすべきではないかと いうふうにも考えています。もちろんその時点で子供の意味、この技術を使ってつくる 子供の意味というのもみんなで検討し直すべきじゃないかというふうに思っていますが 。 岸本委員  兄弟姉妹は私はすごく賛成な方なので、鈴木委員と全く違って、この間の国民の意見 の中でも、兄弟姉妹からの方が、それをファーストチョイスとして選ぶ人もいる現実な んです。ここの部会で結構第三者の方が問題がないとか、第三者の方がうまくいくとか いう意見がすごく多いんですけど、実際はどちらもあると思うんです。兄弟姉妹の方が うまくいく場合もあるし、第三者の方がうまくいく場合も両方あると思うんですね。卵 子提供をされた方の話でも、その方も女兄弟はいらしたんですけど、やっぱり兄弟は嫌 だと、だから第三者からもらったという方もいらっしゃいます。逆にどうしても兄弟姉 妹の方が、兄弟愛であげるというのはできるけど、リスクをたくさん負って、お金も無 償で、名前もわかってしまうとかいうので、そういうのを自分に置きかえてみるとやっ ぱりドナーにはなりたくないというのは現実で、提供してもらった方の話でも、それだ け卵子を提供する方のことを思うと、ほんとは50万渡すだけの価値があるというぐらい すごく感謝で卵子をもらうと、それは日本じゃないですけども、提供される方も無償で リスクをたくさん負って仕事も休ませてというのは、ほんとに申しわけないという声を 直接お聞きしたことがあるんですけど、そういうことを考えると、第三者だからいいと か兄弟姉妹だからいいとかじゃなくて、兄弟姉妹というのも同じように並行して考えて いっていただきたいですし、決してそれがファーストチョイスではだめだということは いえないと思います。 福武委員  もともとの疑問なんですけど、実際に今まで何十年間このAIDで提供してきた人た ちの意見というのはどこにも出てこないんだろうと思うんですよ。それが例えば臓器移 植みたいな形で自分の臓器あげてもいいよ、あるいは皮膚移植やってもいいよというの と同じレベルで考えているのかな、それともほんとに別の人格が生まれることに関与し ているのにね、そこを考えながらもボランティアですよというふうにやってきたのかっ て、そこがものすごく疑問なんです。私は、提供する、つまり未来の子供に対して半分 は責任を負うような形の行為というのが、法的な整備も何もないままなされてきたとい うことに対してものすごく強い疑問を持っているんです。ですから新しくつくる、私は 実子特例法だっていいと思っておりますけど、そういったときに自分が提供して、それ が遺伝的な父親になる、あるいは母親になるというのだったら、それはそれなりの考え の上でしない限りはシステムとしてはおかしいじゃないかという感じはしているんです 。ですからそこまでいっちゃうと、そこまでやる人がいるかどうかという話になるんで しょうけど、やっぱりそれは臓器移植とは違うんじゃないかというのが根本的な疑問な んです。  子供から見れば血のつながりのある、先ほど日本の戸籍制度云々と言ったのは、日本 の戸籍ってものすごく精緻なんですね。ずっとたどっていける。たどっていけない理由 が2つあって、一つは東京大空襲などで戸籍が全く焼けてしまった場合と、あとは壬申 戸籍なんです。それ以外は全部たどれる。それが今の日本の血縁の重視だということに 対してすごい大きなサポートになってきてるんだと思っているんですね。そういった状 況の中で戸籍制度そのものを全部残したまま、実子特例法みたいな形でやって、自分の 遺伝的な親が戸籍と異なっているんだよ、遺伝的なつながりがですね、ということにな ったときに、それが全くわからないようなシステムをつくるということ自体が大きな問 題だろうと思うんです。ですからボランティアがなくなるんじゃないかというのは、私 はちょっと理解がしにくい。むしろAIDをやって実際に提供してきた人たちの意見を 知りたい。どういうつもりだったんだというのを聞いてみたいという感じはするんです が。 才村委員  私は、人間の生命をつくる、提供者は一部の責任を負うということでは、やっぱり子 供をそこで現に生命として誕生しているわけですし、その子供が知りたいと思ったとき に、提供者は自分の一部がそこで存在しているんだということで開示に耐え得る責任を 持つべきだと思うんですね。たくさんの養子の方々が自分の出自を知るということで実 の親に会いに行ったりということとか、私が児童相談所におりましたときに、自分の親 を知りたいということで訪ねてきたりしてる方がたくさんあるわけですね。そのときは すごく悩んでいるし、ほんとに育ててる親御さんとの関係がうまくいかないということ があるんですけれども、だからといって養子が実の親に会って何か事件を起こしたとか そういうふうなことは全然私の中には記憶がないし、例えば新聞紙上でもそんなことが 出てるわけではないんですね。だから開示に対してすごくみんな恐れすぎているんでは ないかと。私は人間として生まれてきて、その辺もひっかぶってやってる人の中ではそ んなことを恐れる必要はないと思います。もちろんサポート体制は必要だと言っていま す。だから間に入って調整する人は要りますけれども、それをした上でなら全然そうい うことは恐れることではなくて、むしろ開示に対しての協力を提供者もすべきではない かと思います。 矢崎部会長  実際に卵子その他採取は産婦人科の先生方がおやりになるわけで、学会としてのコメ ントはございませんか。 荒木委員  日本産科婦人科学会では出自を知る権利については深く討論したことはございません 。ただ、岸本委員がおっしゃるように、また吉村委員がおっしゃるように、十分医的侵 襲が加わります。採卵時に出血したり排卵誘発剤を使った場合には卵巣過剰症候群など 出てまいりますから、予想的には提供者から少なくなるということは予想されると思い ます。しかし私どもの学会は、近親者であれば多少無理をしても姉妹から求めた方がい いという意見には反対です。といいますのは、近親者への心理的圧迫を生んだり、ある いはさらには、私は法律はわからないんですが、基本的人権に反する結果まで出てくる ような事態が予想されるんじゃないかと思うんです。だから私はどちらかというと提供 者が減るということに対しては危惧はしますけれども、減るという理由、臨床に困難を 来すというだけでの開示に関しての議論はあまり深くふれない方がいいんじゃないかと 思います。子の福祉ということを前面に掲げれば全面開示と思っていましたけど、先生 方の意見を聞きますとまた揺らぐ指摘がいっぱいあるわけです。学会でも早いうちに倫 理委員長に申し上げて学会としての見解を出していただいた方がよろしいんじゃないか と思います。 岸本委員  質問なんですけど、この部会で兄弟姉妹が認められるとしますよね。産婦人科学会は 今兄弟姉妹を認めていないということですよね。近所の産婦人科の医師にこの間お聞き したんです。こちらで決まって産婦人科学会の実施する方は反対だといった場合に、産 婦人科学会は禁止しているから、この部会で決まったとしても実施はしないというふう に聞いたんですよ。ある産婦人科の先生から。ここで決まってもしないということにな るんですかね。 荒木委員  学会員であればしないと思います。といいますのは学会の会告に違反するから除名問 題まで波及してきますから。会員はしないと思います。会員以外の方はわかりませんが 。 吉村委員  当初出た案は匿名の第三者ということだったんですけど、兄弟姉妹についてももう一 回検討しようじゃないかということにはなっていますので。 岸本委員  最終結果としてここで決まって、そっちがまだ反対になってたら実施はしないという ことにはなり得る。 吉村委員  それは産婦人科学会がどう判断するかということですよね。 岸本委員  そうしたらここで決めてる意味がなくなってしまうような。 荒木委員  そんなことはありません。例えば長野のN医師がやることは我々学会は関与しないよ うになりますから。学会員は原則的に学会の会則を遵守していくというのが建前ですか らしないと思います。 吉村委員  ただ、国の機関でこうやって決まれば、またそれを学会がどう考えるかということは また考えなくちゃいけない問題ですから。それはもうちょっとたって、兄弟姉妹につい てもここが認めるという方向にいきましたので、兄弟姉妹に関する考え方もこの1〜2 年で随分変わってきてるんですよね。兄弟姉妹も必要なのではないかという考え方が学 会員の中にもあるんですよ。ですからその辺はもう一度お考えになるんじゃないでしょ うか。 荒木委員  姉妹からの卵子の提供はまだ解決されていないんですよね。今提出されているいろん な案の中で「当分の間」というのは学会では認めたいと思うんです。世の中が変わって くれば学会も頭がこちこちでいるわけではございませんから、検討していくということ です。 矢崎部会長  ちょっと兄弟姉妹まで話がいってしまうともうこれで終わりになってしまいますので 。 松尾委員  議論の中で一つ抜けている点は、今の日本のごく普通の家族とか子供の状況というの は非常に危機的です。こういう非配偶者間の生殖補助医療により出産した子供はさらに プラスのリスクファクターが加わるわけですから、そのことを考えて議論するべきだと 思うんですね。アメリカの大統領の医療最高顧問Surgeon Generalは、 アメリカ人の子供の20%は診断名のつく精神疾患に羅患しているという声明を出してい ますが、決してこれはオーバーではないと思いますし、日本の子供も似たような状況に あるということを日ごろ診療で感じているわけです。全ての親が子供の擁護のために最 善を尽くすというような状況ではないと思います。子どもの擁護のため、ある程度国と してこの問題に関与していくという姿勢は重要だと思いますし、福武先生がコメントさ れておりますように、医療の範囲を逸脱していて社会構造を変えるということですよね 。ですから、とりあえず最初は厳しい条件でスタートして、何年か後に見直すというこ とであれば決して国として横暴であるとか越権しているということにはならないと思う んですね。最初は非常に厳しい枠を加えてスタートすべきだと思います。 高久委員  私もそういう考えがあると思います。ただ、脳死移植の現状を見ますと非常に厳しい のに法案はほとんど見直されていない。ちゃんとギャランティしてもらわないと精子や 卵子の提供は非常に減ると思います。公的管理運営機関は非常に楽になるだろうと思い ますが。しかしほんとに減ったときに、これでは困るという声が強く出てくる可能性が 非常にあると思います。そのときにちゃんと見直すならばスタートしてもいいと思いま すが、早く見直さないと今の脳死移植のように外国に行って移植を受けるし、肝臓移植 はほとんどが生体肝移植になってしまう。生体肝移植はやはりかなり危険な手技で、家 族に対するプレッシャーもある。特に母親に対するプレッシャーがあります。倫理的な 問題もあるものですから、もしこの出自を知る権利を見直すなら早目にということを強 調したいと思います。 吉村委員  皆さんは出自を知る権利を認める、この点について私は別に出自を知る権利を認める ことについて全然反対ではないんですが、やはり実際にやる場合に、厳しいものをつく ると次直すのがものすごく大変なんですね。それは何年たっても直らないかもしれませ んし、そのときに子供の福祉を考えていないのかと。フランスみたいなリベラルな国は 全く認めてなくて子供が不幸になったという話は聞かないんですね。最近フランスが一 番子供がふえているんですよ。そういった現実、知らせることがほんとに幸せかどうか ということは皆さんだってわからないと思うんですよ。ですから、ドナーが知らせても いいと言ったときは知らせてもいいわけですから、その辺で納得していただかないと医 療をやるなと言っているようなものです。この辺を十分に理解していただきたいと思い ます。この問題は必ず兄弟姉妹とリンクします。ものがなければ外国に頼るか兄弟姉妹 に頼るしかないんですから。卵子提供に関しては。その辺は兄弟姉妹とは関係ないとか そういうことじゃなくて、この問題は兄弟姉妹とリンクしているんだということをよく 考えて、この辺の問題を特定できるかどうかということについて結論を出すのはほんと に慎重にしていただきたいと私は思います。 矢崎部会長  これは国会を通って法案になるんですよね、恐らく。そうしますと高久委員が言われ たように臓器移植法というのは3年をめどに見直すということですが、だれも見直そう としてないですよね。そう言われると確かに大きな問題ですよね。 澤委員  臓器移植を見直しは現在一生懸命行っています。そのために何回も会議を開催されて いる訳です。実際開示請求が行われる15年後というのは考えなきゃいけないと思います 。科学の進歩というのを見ると、遺伝子というのがいや応なく、怖いことかもしれませ んけれども、個人のアイデンティティの同定上重要なファクターになってくるというこ とは、父親でもない母親でもないということはどうしてもわかっちゃう世界もこれから くるだろうと。どうしても原則は開示しなければいけないんじゃないかという状況はあ るんじゃないかと思います。それから、吉村先生の実際の現場での大変だというのはよ くわかるんですけれども、逆に吉村先生の資料の図2で、話さない方がよいとする理由 に「家族を守っている男性が本当の父親だ」という、これが一番多いというのは逆に言 うと話しても大丈夫だという理由にもならないかなと僕は安心したような感じがあった んです。確かに話さない方がよいとする理由で、実際の父親が父親だからということな んですけど、実際開示になってほんとは違う父親がいることがわかっても、家族を守っ ているのが父親だというメンタリティが根本にあれば、これは開示してみてもそんなに 恐れることはないんじゃないかなと、逆にそう思ったんですけど。 相良委員  私も同じような意見なんですけれども、吉村先生は個人情報が開示されるとなかなか これは進まないのではないかとおっしゃっていますけど、15年後にこの医療が普及して いる時代というのを想像してみると、そこには親の名前を書く欄が3つぐらいあって、 遺伝子の親と生みの親と育ての親と書く欄があるぐらい、そういうことが一般に受け入 れられるような社会というのを想像しない限り、こういうことはできないんじゃないか なと思うんですね。ですから、今はとても厳しいような感じを受けますけれども、全面 開示ができる道を開いておいた方がいいのではないかと思います。  それからもう一つ、矛盾するようですけれども、開示する際にカウンセリングを十分 に行って、今の段階で開示した場合には提供者に危険が及ぶというようなことがある場 合には、その時点で開示を延期させるような権限も考えておいていいのではないかと思 いますが。 矢崎部会長  いかがでしょうか。 加藤委員  ちょっと皆さんに聞きたいんだけども、自分の名前などを知らせないで提供する、い わば制限つき提供といいましょうか、それは認めないというお考えなんでしょうか、皆 さん。それとも両方認めるというお考えなんでしょうか。名前を知らせてもいいという 人の場合には名前を知らせてもいいと。名前を知らせてもらいたくないという人の場合 には全面禁止ということを皆さん同意してらっしゃるのかどうか。 矢崎部会長  私はここにも書いてありますように、子供によって知れる人と知れない人の不公平が 出るのはいかがなものかということで、ある程度知らせるなら知らせる、最終的には知 らせる、あるいは知らせないのか、どこかで二者択一の決定をしないと難しいのではな いかと思います。確かに澤委員からのお話で、遺伝子のレベルからやるとたちどころに 全部わかってしまう時代がくるので、こんなところで話していいかどうかわかりません が、ハーバード大学のサイドマンという女性の先生が、遺伝性の心臓の病気の遺伝子を 解析するということで、非常に大きな家系で戒律の厳しいところというので、アメリカ の極めて戒律の厳しいところで、そこはもう絶対家系は家系で保たれていると思って遺 伝子解析したら、10数%違うらしいんですよね。ですから、意外とそういうことがこれ からはどんどんわかってきてしまうので、あまり今の段階で一生懸命オープンにしない ようにするということをやっても、すべてわかってしまう状況になり得るのではないか ということで。 加藤委員  ただね、15年先だといっても、今すぐ提供者はほとんどゼロに近くなっちゃうわけで すよね。ですから生殖補助医療の技術的な伝統だとかなんかはほとんどここで途絶えて しまうことになると思いますね。そういったことについて事実上途絶えることになって も構わないという決定を下すのはちょっとやり過ぎではないかと思うんですけどね。 渡辺委員  先ほど松尾先生がおっしゃったように、私どもは我が子を愛している親たちとつき合 いながら、その親御さんたちが不幸にしておかしな精神状態になる子供と苦しみながら 私どものところに来ているという事態に直面しているわけですね。普通の親子でもそれ ぐらい大変なわけですね。そういう普通の親子とか血のつながっている親子じゃないと いうことをバリアフリーにして明らかなことは、人間の子供、人間の脳、人間の感性と いうのは真実とかエビデンスに由来して非常に敏感にできているらしいんですね。これ からの時代というのは善意とかそんなものじゃなくて、エビデンスとして何が人間社会 にとって無理がなく自然であるかという、私どもがともに共有していかなきゃいけない 人間という現実のハーモニーとか、秩序とか、生き延びていくダイナミックなシステム とかというものをエビデンスとしてちゃんと共有する必要があると思うんですね。私は 生殖補助医療というのはやるなと言っているのではなくて、今までのいろいろなシステ ムを恣意的に変えるという事実が起きているわけだから、そのエビデンスというものが 必ず今すぐに結論が出なくても、必ずいろんないい点と悪い点とが両方出てくるから、 現在の時点で考えられる事実がどう変わっていくか、みんながビジョンとして結びつく ことだと思うんですね。  私は才村先生がおっしゃっていたことと全く同感なんですけれども、子供が血がつな がっているかいないかに対して反応するんじゃなくて、ほんとに真心を込めて真実偽り のない形で自分とともに生きてくれて、ともに自分の苦労をいやしてくれた相手を信頼 するという脳の発達の原理がどうもあるらしいんですね。それが最近わかってきまして 、この生殖補助医療の非常に残念な点は、非常にあいまいな中で、ある一部のお母さん たちはすごく不安な中で緊張しながら、うそ偽りだらけの関係の中で善意とかいい親子 とかを演じていくみたいなことを知らない間にやっていくようなプロセスで出会いを始 めるわけですね。そういうことが胎児から新生児期、乳幼児期、思春期の子供たちの脳 の発達に与えるかかわりに対しての研究というものは、恐らくこれから可能になってい くと思うんですね。私の気持ちとしてはできるだけそれぞれの御夫婦が、自分の思いが きちんと子供の福祉になっていくような努力の仕方を、そういう自己実現をしていただ きたいと思うんです。  ですけど今の生殖補助医療というのは、私は先ほどから変なことを考えていたんです けれども、子供のいない御夫婦がかぐや姫が授かるみたいに生殖補助医療でもって赤ち ゃんが生まれてきて、そして最大限の善意で子供をすばらしいかぐや姫にして、そして 世界じゅうから慕われる女性になって、なおかつかぐや姫は自分がこの地球に居場所が ないと感じて、そして結局は月に帰っていくわけですよね。かぐや姫はかわいそうです けど、私はそのおじいさん、おばあさんもかわいそうだと思うんですね。つまりこうい うことが私は予測できるので、できるだけそれは防ぎたい。としたら、血のつながりじ ゃない親子もあり得るんだという、現に今私もそういうふうにして親子をやっている人 たちから教えていただいてますけど、そういうものを積極的に、ただしほんとにエビデ ンスをきちんとしてやっていこうという方向でやったらいいんじゃないかと思うんです ね。  それからもう一つ、これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、命を預かる医 者というのはすごく責任があると思います。医者が善意じゃなくてエビデンスとして遺 伝子の生態系というものを変えたときに、そういうことがどれほどそれにかかわってく る御夫婦とか子供たちにとって未知の体験であり未知の喜びもあるかもしれないけども 、苦しみもあるんだということを医者はもっと責任を持つべきだと思うんですね。です から、少なくとも小児科では先天性心疾患の子供にかかわったら一生かかわっていきま すし、私も拒食症の子供にかかわったら一生かかわっていきますし、その拒食症の子供 がどういうお母さんになれるのかなれないのかということも追っていく義務があると思 うんですね。そういう意味で、それは真剣にやっていただいていると思いますけれども 、その表現が善意とかやれないとかじゃなくて、私たちはそういう産婦人科を応援しな がら国民の医療を担っていっていただきたいからがんばっていただいて、そこら辺はそ んなに恐れなくても、ほんとにいい医療だったら時代の状況に耐えて生き延びると思い ますので、そんなふうに数でおびえずに、もっと本質を一緒に共有していくということ をお互いにやれたらと思います。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども。 矢崎部会長  どうもありがとうございました。時間がもう参りました。私自身としては、医療とし て定着させたい。理想を言えばそれこそやってはいけないようなガイドラインというふ うになってしまう可能性もあります。しかし、ある程度の基準というのを示さないとい けないのではないか。特に私がこの部会を引き受けたときに、今までやっておられた生 殖補助医療の大きな問題がなおざりになっていたので、この機会にきっちりしたルール にのっとってやっていただけるような方法を展開するというのは非常に大きな意味があ るのではないか。特にAIDについてはよく考えていただく大きなインパクトになるの ではないかというふうに思います。もう24回目で随分議論して、結局はいろんな多種多 様な御意見ですが、最終的には提供者の個人を同定する内容を知らせるか知らせないか という点に限るわけですが、一応皆様の御意見をお聞きして、多数決をとるような問題 ではありませんが、一応きょう出させていただいた資料の出自を知る権利について、こ の方向でまとめさせていただいて、もう少し委員の方々に意見を聞きながら周囲を固め ていくという作業で、大筋はこのような方向でこの部会をまとめたいと思っております 。きょうは町野先生がおられないので後でまた大波乱が、きょうも検討課題の青字で大 波乱がありましたが、またあるかもしれませんが、無理してまとめるという意味ではあ りませんが、この方向で部会の大方の意見はこういう方向でまとめさせていただきたい と思います。  やはり時代とともに、特にこういう医療の技術は発達しますし、親子関係もどんどん 変わってきますので、やはり状況に合わせて迅速に法律で決まる部分になるかもしれま せんが、ぜひ柔軟にこの後も対応していただきたいということを付帯決議といいますか 、意見ということで強く申し述べて、とりあえず出自を知る権利はおおよそこの線に沿 ってまとめさせていただきたいと思います。大変恐縮ですが、よろしくお願いいたしま す。  次回ですが、次回はいよいよ兄弟姉妹にかかわる匿名性の保持の特例の是非というの があります。これについてまた次回御意見をいただきたいと思いますので、大変くたび れるスケジュールで申しわけありませんが、次は3月13日ですか。 宮本室長  次回ですけれども、3月13日の木曜日、午後1時からを予定してございます。 矢崎部会長  大変恐縮ですが、また4時間になって、これは根気比べみたいですが、最初の1時間 はきょう御議論いただいた青字の案のことを最終的に詰めていただいて、3時間かけて 、もう今まで24回ですから25回目です、提供における匿名性保持の特例について、御意 見をいただければ大変ありがたいと思います。ちょっと強引なまとめになったかもしれ ませんが、ぜひ御協力をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。き ょうは4時間にわたる大議論で、ほんとにありがとうございました。また次回もよろし くお願いいたします。                     照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                          03−5253−1111(代)                              宮本(内線:7933)                              天本(内線:7939)