03/02/19 第14回社会保障審議会年金部会議事録              第14回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成15年2月19日 第14回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成15年2月19日(金) 13:00〜15:00 場所  :霞が関ビル35階 霞が関東京會館「ゴールドスタールーム」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員      岡本委員、翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、矢野委員、山崎委員 ○ 高橋総務課長  ただいまより、第14回社会保障審議会年金部会を開会いたします。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第 のほか、資料1、横長の資料でございますが、「給付と負担の在り方(1)」、参考資 料で、「第12回社会保障審議会年金部会議事録」をお配りをいたしてございます。  それから、委員の出欠の状況でございますが、本日は堀委員、山口委員、若杉委員、 渡辺委員がご欠席とのご連絡をいただいております。ご出席いただいております委員の 皆様方、三分の一を超えておりますので、会議は成立しておりますことをご報告申し上 げます。  それから、開会に先立ちまして、社会保障審議会委員の任期の終了日、再任の関係で ご報告申し上げます。この1月31日に社会保障審議会委員でこの年金部会委員を務めて いただいている宮島部会長、翁委員、堀委員、若杉委員、渡辺委員におかれましては、 年金部会の親審議会である社会保障審議会の方の任期が終了いたしまして、同日、再任 をされたところでございます。年金部会長につきましては、社会保障審議会で、第6条 第3項に「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する」と規定 されておりますので、本日の部会に先立ちまして社会保障審議会委員の皆様方5名の 方々からお話をちょうだいした結果、引き続き宮島委員に部会長をお願いするというこ とで、ほかの四人の方々から推挙いただいたところでございますので、宮島部会長に引 き続き部会長をお願いすることになりますことをご報告申し上げます。  それから、部会長代理につきましては、同じく社会保障審議会令に基づきまして、部 会長より、引き続き部会長代理として神代委員のご指名がありましたことも併せてご報 告申し上げます。  宮島部会長及び神代部会長代理におかれましては、今後ともよろしくお願い申し上げ ます。  では、以降の進行につきましては、宮島部会長よろしくお願いします。 ○ 宮島部会長  ただいま総務課長からご報告がございました。今回は、報告を受けて部会長の席に座 るという手続を省かせていただきました。大変失礼いたしました。  この16年の改正までは継続的に責任を負わざるを得ないだろうというのが、私の思い でございます。その趣旨から神代先生にも引き続き部会長代理をお願いいたします。今 後とも委員の方々にはよろしくお願いしたいと思います。  それでは、早速今日の議事を始めたいと思います。既にご了解いただきましたよう に、今回から各論の議論に入ってまいります。本日は「給付と負担の在り方」というこ とですが、これについては、極めて重要な論点でございますので、今回と3月の1回目 の合計2回にわたりまして、ご議論をいただくことといたします。  これから資料1につきまして、事務局からご説明いたしますが、率直に申しまして、 なかなか難しい。ですから本日のところはどちらかというと、この資料についての説明 を少しかみ砕いて説明していただきます。専門家の委員にとっては、それは二重の手間 だとおっしゃるかもしれませんが、私も含めまして、相当かみ砕いて説明をしていただ きたいと思っておりますので、事務局の説明だけで、恐らく1時間程度とることになる のではないかと思います。  本日は2時間の会議でございますので、従来のように休憩をとることをいたしませ ん。説明後、残された時間、閉会時間の5分ぐらい前までをその質疑に充てたいと、こ のように本日の議事は考えておりますので、よろしくご協力のほどお願いいたします。  それでは、早速ご説明をお願いしたいと思います。 ○ 高橋総務課長  その前に、先ほど1点、申し上げるのを忘れておりまして、年金局長は国会の方に呼 ばれておりまして、最初おりません。途中来るかもしれませんが、また、後で呼ばれて おりますので、そのときは中座するかもしれませんので、そのときはよろしくお願い申 し上げたいと思います。 ○ 木倉年金課長  それでは、資料の説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。  「給付と負担の在り方」の1回目の資料ということで、昨年お示しをしてきたような 資料、あるいは「方向性と論点」の中で見ていただいた資料の補足的なデータ等を挙げ させていただいております。ばらばらの資料でわかりにくいかもしれませんが、よろし くお願いいたします。  全体は目次にありますように、まず給付水準というものを考えていただく場合に、一 つは、「方向性と論点」で示しておりますように、給付水準を今後とも維持していくと いう考え方に伴った場合のデータ、保険料固定方式でやってみたときのデータ等につい て、補足的なデータを示させていただいております。それから、消費と年金との兼ね合 いをどういうふうに見るのかということで、過去のデータ等、あるいは現役世代のデー タ等を見ていただきたいと思っております。  それから、2番の方の負担の在り方としましては、入り口として、「方向性と論点」 を示しておりますが、前回からの課題で残されております保険料引上げの凍結というこ とにつきまして、ぜひご理解いただきたいということ、あるいは基礎年金の国庫負担1 /2の引上げの問題についてご理解いただきたいということ。それをもう一度示させて いただいた上で、その給付と負担の在り方の見直しについて考え方・方式をどのように 考えていくのか、あるいは最終的な保険料をどう考えていくのか。それから、その途上 での段階保険料の引上げの問題をどう考えていくのかといったことをもう一度見ていた だいた上で、論点の例を少し挙げてご議論の素材にしていただければということでお示 ししております。  それでは早速ですが、最初の給付水準の考え方といたしまして、1〜2ページに少し データを付けたものを3〜4ページに図で示しております。まず材料として「方向性と 論点」の中で、将来の給付水準は、一定の前提を置いたものでございますが、このよう に変動するのではないかということを見ていただいていますが、それを比較していただ くために主なものを並べて示しております。一番上に現行のもの、これは現役の平均賃 金に対しての所得代替率なのですが、59%という設計になっております。それをモデル 的に示しますと、夫婦二人の基礎年金は13.4万円であり、厚生年金もあわせると23.8万 円になります。 ここでは2050年という表示をしておりますけれども、後でまたご説明 申し上げますが、保険料を固定をして給付の伸びを調整をしていく場合に、調整をしな ければいけない期間が長かったり短かったりいたします。左から3番目の欄にあるよう に、2020年で終わるものもあれば2048年までかかるものもあるということでございまし て、所得代替率を少しずつ縮めていくということでございますので、すべてが終了した 段階でないと一定の率になっておりませんものですから、調整が終了した後の2050年時 点のものをとってみております。試算では毎年物価は1%の上昇があるという前提で計 算しておりますが、ここでは物価の分は今の購買力で見ていただくということで割り戻 しをしています。賃金の上昇につきましては、名目賃金2%の上昇を見ております。  それに対しまして、給付水準維持方式というものでございますけれども、これは現役 の平均賃金の59%をずっと維持していくということでございます。そうしますと、夫婦 単位の基礎年金額、これも「方向性と論点」で、2050年までの数字で伸ばしたもの、そ れを物価で割り戻している数字でございますが、お二人で20万円、それから厚生年金と 基礎年金お二人分でモデルで示しますと35.2万円。これは2050年時点の現役の平均賃金 に対しましての59%という数字でございます。  次の保険料固定方式の方でございますけれども、まず基準ケースというものを示して おります。方向性と論点で一番基準になるものとしてお示ししたものでございますが、 2032年までスライドの調整を続けさせていただいてバランスをするということでござい まして、その後は所得代替率が59%から52%まで縮まった後は52%の代替率でいける、 すなわち一人当たり手取り賃金の伸びで年金を改定していけるということでございまし て、52%が保たれるということでございます。そのときの2050年時点の年金額について 物価を割り戻したものが夫婦2人の基礎年金で17.6万円であり、モデル年金の方で31万 円であるということでございます。  以下、人口が高位、低位にぶれた場合、あるいはこれはこういうふうにしたくないと いうことでございますけれども、国庫負担が1/3の場合の数字、あるいは厚生年金保 険料率を18%でとどめる場合の数字等々を見ていただいているということでございま す。  いずれもこれは次のページにありますように、実績準拠、すなわち、また次回もう少 し詳しく見ていただこうと思っておりますけれども、被保険者数がだんだん減っていく ということに伴って調整をさせていただくという実績準拠法と、将来被保険者数がぐっ と減るのであれば、最初から早めに平均的な数字をとって調整をしていった方がいいの ではないかという平均化法と両方あるわけです。ここでは実績準拠法の数字を見ていた だいております。  それから、名目年金額下限型、すなわち新規裁定の場合に賃金の上昇率から被保険者 数の減少分をスライド調整させていただくわけですが、少子化がきつくなってくる時代 においても前の年に対して年金額をマイナスにはしないというやり方で試算をしてい る。これが名目年金額下限型でございますので、それで見ていただいているということ でございます。  これだけですとおわかりになりにくいと思いますので、次の3ページ、4ページに棒 グラフで比べてみたものをお示しをしております。  3ページの上でございますが、これは今までも時どきご覧いただいたものでございま す。まず上の方は、モデル年金の水準で、基礎年金お二人分満額で13万4,000 円、厚生 年金40年加入した方お一人分で平均賃金で加入されておれば10万4,000 円ということで ございまして、足して23万8,000 円が今のモデル的な年金額ということでございます。 その下に、夫65歳以上、妻60歳以上の世帯、これは有業者なしでございますので、そう いう世帯についての5年に一度の全国消費実態調査からの消費の平均値を出しておりま す。そうしますと、これが24万4,000 円ぐらいの消費であるということで、ほとんどの 部分をモデル年金であればカバーができているという状況であります。  そのうち、基礎年金の水準とよく対比されます基礎的な消費の部分、食料、住居、光 熱・水道、家事、家具用品、被服及び履物といったところまでをとって基礎的な消費と いうことでお示ししておりますが、これが今12万515円という状況にあるということで す。その他、基礎的な部分以外の消費を加えまして、その他の支出、使途不明の小遣い を全部含めて24万ぐらいの状況にあるということでございます。  4ページには、今の状況を上二つの棒グラフに書いてございます。平成11年の24.4万 円の消費支出のグラフ、その次に現在の23.8万円のモデル年金の棒グラフを書いてござ います。現時点の40.1万円(手取り年収)に対して23.8 万円というのはちょうど所得 代替率59%に当たるというふうな状況にあるということでございます。  その次に給付水準維持方式というのを付けておりますけれども、給付水準維持方式の 中の基準ケース、すなわち右側に書いてあります経済前提をBという中間的なもので見 ているということでございます。2008年足元までの経済状況は方向性と論点で示したよ うに余りよくは置いておりませんが、その後の状況として名目賃金の上昇が2%ある。 物価の上昇が1%あるというような前提を置いてのものでございます。これで2050年ま で賃金の上昇が実質的に1%あるということで見ていって、物価だけは現在の購買力で 比較するために割り戻して見てみますと、そのときの現役の方の平均賃金は59.8万円と いうことでございまして、給付水準維持方式により59%で維持されるということは、 59.8万円に対して59%で35.2万円の水準、基礎年金は20万ちょうどぐらい、報酬比例部 分は15.2万円ぐらいという水準にあるということです。  次に保険料固定方式の部分でございますけれども、こちらの方は経済前提Bでやって みたもの、以下、人口を変えてみたもの等々を付けておりますけれども、これにつきま しても59.8万円に対しましての比率として、52%なり、57%なりということで見ていた だいております。そうしますとこのような基礎年金及び報酬比例部分の変動の幅になる ということでございます。  一番下の方の経済前提Aというもので33万円と書いておりますが、これは右側の経済 前提Aの部分、現役の平均賃金が61.5万円となっておりますが、これはBと違いますの は、足元の2008年までの経済の伸びを少し大きめに見ておりますので、その分だけ差が ついておりますが、61.5万円に対しましての54%水準、これが33万円程度であるという ことで見ていただいております。  経済前提Cといいますのは、一番下でございますけれども、21.3万円(45%)、これ は経済前提C、すなわち足元も将来も少し小さめに見込んで、平均的な現役の賃金が 47.7万円の場合の45%は21.3万円であるということでお示しをさせていただいておりま す。  赤いゾーンで描いているもの、水色のゾーンで描いているものと分けておりますけれ ども、この赤い部分は基礎年金部分がこの幅で変動していることを見ていただいており ます。すなわち一番低い経済前提Cのところの12万円ぐらいから一番高い給付水準維持 の20万円ぐらいの幅で変動しております。青いところで見ていただきますと、これも経 済前提Cで考えて21.3万円ぐらいから一番上の給付水準の35.2万円ぐらいの幅で変動し ておることを見ていただいております。特に保険料固定方式で水準が変動する場合に、 経済の前提が変わると、どの程度まで変動が予測されるのか。さらに経済前提が悪くな る場合等いろいろ議論が必要でしょうが、それはまた経済前提の議論のときにさせてい ただく必要があるかと思いますが、一応方向性と論点で示したものの範囲内でご覧をい ただいています。  5ページ、6ページにはこの表の中からご議論いただきたい点について書き出してお ります。  5ページの最初の「○」で、今のモデル年金額23.8万円は高齢者夫婦世帯における消 費支出をほとんどカバーできるところまでは来ている状況であるということでありま す。あるいは基礎年金の13.4万円は、基礎的消費支出の12万円余を補ってプラスアル ファぐらいまできているということをお示ししております。  次の「○」ですが、将来の生計費、さらに消費がどのように伸びていくのか、これを なかなか見通すことは難しいと思いますが、現時点での購買力、今消費されているこの 水準を保てていけるかということを基準に置いてみることについて、将来、さらに実質 的な賃金が上がっていく中で、消費が伸びたとしてどう考えるか。一応物価の上昇分、 購買力の分は今に揃えて見ていただいたらいいのではないかということでこうさせてい ただいております。  次の「○」、給付水準維持ケースの場合には一番高い伸びですので、今の購買力の水 準を上回る年金の水準に伸びていっているということです。  4番目の「○」ですが、保険料固定方式では、その範囲内で少子化の状況、経済の状 況等に応じて幅を持って変動しておりますが、この中のものをどう見ているかというこ とです。次の6ページの最初の「○」ですが、基準のケースで見ていただきますと、基 礎年金部分が17.6万円あり、報酬比例部分を足して31万円になっているわけですが、こ れにつきましても、現在の24万円の消費水準よりも実質的に高い消費ができるという購 買力の水準には伸びていっています。  次の「○」ですが、人口や経済の前提について幅を持ったものを見ていただいており ますが、概ね大体今の水準よりも上に伸びているような状況にある。そこの「※」で書 いている経済前提Cの一番下の棒グラフのケースでございますけれども、これがぎりぎ り基礎年金部分が今の購買力で見て12万円、あるいは報酬比例を足しまして21.3万円と いうことでございますので、12万円で見れば、今の基礎的な消費部分と同等程度の数 字、21.3万円は24万円に達しませんが、24万円の中のその他の支出分、例えば交際費と かそういう部分をカバーできないぐらいの消費の部分にはきているというふうなことで はなかろうかということです。  それから、これは将来に向けて、一定の賃金、物価を前提に置いたものですので、な かなか比較しづらい面もあろうかと思いますが、過去においてどんな消費の動向であっ たかということを見ていただくために7、8、9、10と4ページにわたり資料を付けさ せていただいております。まず7ページの棒グラフ、こちらが先ほどの24.4万円に対応 するような基礎的消費、それ以外の消費も含んだ全部の消費についての変化の状況でご ざいます。次の8ページは、食料費等々の基礎的消費部分のみについての変化の状況を 見ていただくためのものです。  7ページの一番左の縞模様の棒グラフ、これは物価の伸びでございます。それから三 角の点々は賃金、平均標準報酬月額で見ていますけれども、賃金の月額の変化でござい ます。右、左とグラフがありますが、左の棒グラフは49年〜平成11年の5年毎の伸び率 を単年度で割ってみたもの。40年代は大きく伸びており、最近の平成6年〜11年にかけ ては伸びが非常に小さくなってきております。  右は5年毎ではなく49年〜11年の26年間になりますが、これ全体をならしてみたも の。いずれにしても昔からとった方が大きく伸びて今は伸びが小さいということです。  その前提の下で折れ線グラフですが、黒い破線が、サラリーマン世帯(勤労者)の世 帯一人当たりの消費の変化の状況、薄い実線が自営業の方の世帯一人当たりの消費の状 況でございます。5年毎のもので見ると少しぶれがありますが、右側のように大きくな らして見てみると一人当たりの消費の動向はほぼ同様の伸び率の推移ではなかろうかと 思われます。  物価と賃金との関係で見てみるとなかなか一概に言えませんけれども、この棒グラフ だけで単純に見てみますと、消費支出は物価よりやや高めにずっときていて、平成6年 以降は物価より下回っているような状況になるのではなかろかうか。また、一人当たり の賃金の伸びよりは少し低めに推移してきているのではないかという感じでございま す。  次の8ページの基礎的な消費の方ですが、こちらは同じようなグラフで表示しており ますが、下の四角に書いておりますように、サラリーマン世帯と自営業の世帯は大体、 同等の変化ではなかろうかということでございます。その次の「○」に書いております ように、基礎的な消費の動向はどうかというと、物価と同じぐらいか、近年は物価より も下回ってマイナスぐらいまでになっているという状況であります。上と下を比べてみ ますと、賃金が上昇してきた中での生活水準の向上部分はどっちの消費で伸びているの だろうかということになりますと、基礎的な消費部分が物価と同じ程度しか伸びてな い、あるいはそれ以下だという一方で、それ以外の部分、基礎的消費以外の部分で生活 水準、賃金向上分が支出に充てられて伸びてきているのではないかというふうに見られ るのではないかということを示しております。  それを数字で書き出したものが9ページ゛と10ページでございます。なお、先ほどの グラフに入れておりませんでした高齢者の夫婦の世帯(有業者なし)の数字も入れてお りますけれども、全体にはサラリーマン世帯や個人営業所帯よりも伸び率が同程度かや や大きめに出ております。これは年金の成熟化の過程の中で、無業者ですから年金の増 が一番収入に大きく反映されていると思いますけれども、あるいは世代の感覚もあると 思いますが、伸びてきています。近年ではだんだん伸び方が勤労世帯なり個人営業世帯 と同程度になってきている、まだ少し大きめではありますが、そういう動向にあろうか と見られます。  この辺が過去の動向ですが、近年大体小さくなってきておるということを踏まえて、 将来、この消費の伸び、基礎的消費あるいは全体消費の伸びをどう見るのか、それに対 する年金の所得代替率をどう見るのかということをまたご議論いただければということ でございます。  次に12ページからですが、こちらの方は、これは前に現役世代はどのぐらいの消費の 水準にあるのかということで世代別に比較をして見ていただいたことがありますが、そ れをもう一度見ていただいております。12ページはそのままの資料ですが、妻60歳、夫 65歳以上の夫婦世帯が一番上の棒グラフ、次の棒グラフが50代、次が40代、30代という ことで4段階示しております。一番左の方が税、社会保険料(非消費支出)でございま して、次が土地家屋のローン返済、次の欄が教育費、一番右が教育費を除いた消費支出 の、その他の部分でございまして、この部分を括弧内のように一人当たりで比べてみる ということをやってみますと、60代以上の一人当たりの消費(17万円)は40代(16万円 )、30代(15.4万円)よりも大きい状況になる。この辺を現役世代が賦課方式で負担を しながら年金の給付をしている。60代以上の消費がほとんどカバーをできるような状況 にあるということについてどのように考えるかということで、これまでもご覧をいただ いた資料でございます。  これをご覧いただきながら、次の13ページ以降でございますけれども、これを比較対 照に使うことはなかなか難しいと思いますが、先ほど最初に見ていただいたような現役 世代に対する所得代替率が59%とか、あるいはそれが52%、さらに45%になりますとい う代替率の試算結果を示しましたけれども、その消費との兼ね合いの感覚がなかなかつ かみがたいと思うのですが、ここで少し材料として、例えば13ページの方でございます が、今見ていただいた一人当たりの教育関係費以外の消費について、60代(17万)、50 代(19万)、40代(16万)、30代(14.5万)というのを比べてみると、その消費の全体 の額のレベルでございますが、そうすると、60代以上に比べて30代は−15%程度のよう な水準になるということでございます。  14ページの「○」の三つ目に書いていますように、仮に60代以上のこういう世代の消 費をモデル年金がほとんどカバーできるような状況にあるということになりますと、そ のことを前提にしながら、所得代替率が59%→50%になるというとき、購買力のレベル を15%ぐらい落としてみる。59%から15%落としたものが50%ぐらいでございまして、 50%の購買力レベルというのは、例えば感覚をつかんでいただくとすれば、30代ぐらい の14.5万円ぐらいの購買力のレベルぐらいではないか。世代が違いますし、消費の中身 が違いますから見づらいですが、比較対照として見ていただければということで示して おります。  また、教育費だけでなくて、どれをとってみてもいいのですが、次の15ページでは、 教育費以外に、先ほど申しました24.4万の中には、使途不明の小遣いという部分がござ います。これが60歳以上ですと7,000 円ぐらいとか、50代ですと3〜4万円ぐらいと か、40代は3万ぐらいとか、そのぐらいのものがあるのですけれども、それもバラツキ がありますが、使途不明ということであれば、差し引いて比べてみるかということで、 差し引いて比べてみたものが15ページでございますが、これで見まして、そんなに大き く差がつきませんが、30代が−17〜18%ということになっておるということでございま す。  これも同じような考え方で少し比べる材料にできるかどうか見てみますと、59%を18 %下げた49%ぐらいの消費レベルは、30代の教育費や小遣いを除いたような消費のレベ ル程度の総量と同じくらいになる。中身は全く違うことを前提にしたからでございます が、そういうようなところではなかろうか。この辺も少しご議論の材料にしていただけ ればということでお示しをしております。  次に18ページからでございますが、負担の方のご議論の材料として示しております。  まず入り口論で保険料負担の引上げ凍結の解除をぜひご理解願いたいということでご ざいます。段階的な保険料引上げ計画の途上にあり、引き上げていかなければいけない ということであったわけですが、12年の前回の改正のときに当時の経済状況にかんが み、引上げは凍結され、将来の保険料は全く示されておりません。当分の間17.35% 、 総報酬に換算しての13.58 %のままと。国民年金も1万3,300 円のままということであ ります。  しかしながら、少子・高齢化が急速に進行する中で、将来の保険料をさらに過度に上 昇させないためには計画的に引上げを行っていく必要があるということでございます。 欧米諸国でも成熟化の段階ではだんだんと引上げを行ってきて今に至っております。  前にも見ていただきましたが、仮に今のままずっと保険料が上がらないことになりま すと、1/2国庫負担をしたとしても、約束した将来の給付の3割を直ちに抑制しなけ ればいけない。あるいは国庫負担1/3のままですと、4割抑制しなければいけないと いうことも出てきてしまう。こういうことがあってはならないということでぜひお願い をしたいということでございます。  データとしましては、前にこれもご覧いだたいておりますが、19ページ、20ページで ございまして、19ページの方は厚生年金と国民年金の収入と支出の状況でございます。 12年度からずっと見ていただいていますけれども、保険料の収入、これは今の保険料の 負荷の率がとまっているということと、被保険者数もだんだんと減ってくる時代に入っ ている、あるいは賃金の伸びがない、減るような状況もあるということで、伸びが非常 に小さくなっているということでございます。さらに減少しているような状況にもござ います。  その上の国庫負担、これは給付に対する国庫負担。それから運用収入、これは実際の 運用収入でございますので、財投に預け入れしてまだそのままのものの利払いとして 戻ってきた分について自主運用したものを合わせております。これで見ていただきます と、13年度、これは実績でございますけれども、既に赤字状態になっている。その他の 臨時的な収入、例えば昨年の農林年金の統合に伴います移管金といったもの、その他の 収入がなければ赤字の状態になっているということでございます。これが14年、15年の 予算上もそのような状況が見込まれている。将来の保険料負担、将来世代のためにも今 の段階から計画的に引上げをお願いをしたいということでございます。  下の20ページの方ではその数字を見ていただいていますけれども、日本の場合には 1996年、前回の平成6年改正のときに2段階の引上げの内容でご了解いただきました が、その2段階目、17.35 %、総報酬ベースに換算して13.58 %の段階にとどまって ずっと来ているということでございます。それから国民年金は示しておりませんが、平 成10年のときから1万3,300 円のレベルでとまっているという状況にございます。  次の21ページからでございますが、基礎年金の国庫負担の割合の1/2への引上げに ついてぜひご理解いただきたいということで、これも前提としてご理解いただきたいこ とをお示しをしております。国庫負担、保険料を主な財源としつつも、公的年金につい ての国の責任をきちんと示し、安定性を確保する、給付を改善する、現役の保険料負担 を軽減する等々の観点から、1/3の国庫負担、これは当初の国民年金の時代から、基 礎年金になっても1/3の国庫負担ということでやってきております。  これにつきまして、12年の改正法の附則におきまして、16年までの間に安定した財源 を確保して1/2の引上げを図るものとすると、附則ではありますが、規定は置いてい ただいているということでございます。これを現実のものとすることが今回の大きな課 題、前提となっているわけでございます。次の「○」に書いておりますように、繰り返 すまでもないことでございますけれども、きちんと公的年金制度を安定したものとして お示しをするためには、保険料と税の組み合わせであっても保険料負担を無理のないも のとしていくために国庫負担の引上げはぜひとも必要である。1/2への引上げをする ことによって給付水準を大きく調整することが避けられる。あるいは最終的な保険料の 水準を過度に上げることが避けられる。特に国民年金につきまして、その効果を大きく もたらすものであるということでございます。この国庫負担分の上に自助努力としての 保険料の納付があって給付があるのだということのメリットをよくわかっていただくた めにもぜひ1/2の実現をしていただきたいということでございます。  具体的に数字で給付と保険料の関係を見ていただきますと、22ページの上の「○」で ございます。これもお示ししてきたものでございますが、給付水準維持の場合でまず見 ていただいていますけれども、今の給付水準のままですと、1/2に引上げましても、 23.1%なり、2万500 円まで上がってしまうというところが、1/2に仮に上がらない ということになりますと、26.2%とか、1/3の場合、2万9,300 円というような非常 に過度な負担になっていくのではないか。ぜひ1/2ということを前提のご議論をさせ ていただきたいということでございます。  あるいは次の保険料固定方式におきましても、1/2のケースに比べ、1/3です と、保険料を20%に固定したままですと、どうしても給付を大きく調整しなければいけ ない。代替率で示しますと、45%までの調整をしないとバランスをしない。これは59% の水準に対しますと、24%ダウン、約4分の1もダウンしたような状況であるというこ とで、大きな調整になってしまっているのではないか。あるいはその場合所得代替率は 大きく低下するにもかかわらず、国民年金の保険料に頼る部分が大きくなりまして、 5,000 円上昇して2万3,100 円にも至っているということを示しております。  そのようなことで、次のページでございますが、将来に向かっても増えていく財源を 伴うものでございますので、議論もしていただきながらでございますが、ぜひ1/2の 引上げを前提としたご議論でお願いしたいということをもう一度示しております。  次に25ページからでございます。ここからは、今のような、保険料の凍結解除をお願 いしたいということ、国庫負担1/2を前提にしたご議論を今回させていただきたいと いうことを入り口論とした上で、次に給付と負担の見直しについての議論をまた少しな ぞらせていただいております。  まず、給付水準を維持をしていく、あるいは給付をある程度抑制しながらも、負担と 両方で5年毎に見直しをする方式について、これはこれまでとらせてきていただいた方 式ですが、少子化が進んでいる、あるいは経済が悪化をしている中で見直しをするとい うことで、大きな制度改正を伴ってきた。これが不透明感・不安定感を呼んでいるので はないかということでどう考えるかということを示させていただいております。  それに対して保険料固定方式でございますけれども、将来にわたって保険料水準を一 定に保ち、固定をするということで、その中で自動的な調整の仕組みが考えられないの か。スウェーデンがとっているようなやり方にいろいろ関心が高まっておりますが、そ の中で、日本の場合には段階保険料はその引上げ途上でございますので、その最終的な 保険料水準を法律に明定することで、給付を自動的に調整する仕組みがとれないかとい うことでございます。次のページの2番目の「○」でございますが、段階保険料の途上 でございますので、直ちに今の水準で保険料を固定してしまっては将来の給付が保てな いわけでございますけれども、段階的に引き上げていく計画、あるいは最終的な保険料 の水準というものを予め制度として明定・固定をするということの下にやっていくこと になるのではないかということを示させていただいております。  一方、給付でございますけれども、少子化の動向、経済の動向、悪化、改善等が今後 あると思いますけれども、これに伴って調整が最初見ていただいたようにある程度なさ れていく。今はずっと悪くなっていくような前提のものだけが見えておりますけれど も、仮に悪化する仮定であっても、少子化の改善あるいは経済の改善ということがあり ましたらば、その調整の度合いが少ない段階でとどめられるということでございまし て、そういう社会経済全体の努力を反映できるものではないだろうか。あるいは幅を もって変動する中で、改善した数字に向けて好転をしていくことも期待できるのではな いかということを示させていただいております。  ただ、一番下の「○」にありますように、今の傾向として少子化もさらに進んでい る、あるいは経済もなかなか好転しないという状況の中で、単純に調整だけをしていき ますと、調整がずっと続けられて給付水準が下がり続けていくこともないわけではない ということでありまして、その場合の給付水準の下限ということはどのように考えるの か、またご議論いただきたいということでございます。  次のページの27、28ページ、29ページ、30ページにかけてでございますが、最終的な 保険料の水準というものをどのように考えていくのかということです。27ページでござ いますが、厚生年金につきまして、前回の改正におきましては、将来の最終的な保険料 率を年収の20%程度で前提でご議論をお願いしたいということでございました。国庫負 担1/2に引き上げて、20%の手前の19.8%にとどめられるというもとでの制度改正を お願いをしたということでございます。  その当時の5年に一度の改正のときにやらせていただいております有識者調査、今回 も今後やらせていただきたいと思っておりますが、この中では、年収の2割程度の負担 水準でとどめるべきではないかというものが一番の支持を受けているところでございま す。あるいはヨーロッパ諸国の中で、先ほどの料率にありましたように、保険料負担が 20%内外のところで努力が繰り返されているということもあるのではないかということ です。  他方で、年金の負担の水準だけではなくて税の負担、医療・介護の負担等も併せてご 議論をいただかなければいけない問題であろうと思います。これは年金部会にとどまら ず社会保障審議会の場でもまたご議論いただきたいことと思っておりますが、社会保障 の保険料率の見通しについて、新人口の対応試算ベースで昨年お示しをしたものをもう 一度載せておりますけれども、年金については、今の13.58 %が25年後の姿で22.4%、 これは方向性と論点で足元を少し悪い経済状況に置いて見直しておりまして、これが 23.1%でございます。給付水準を今のまま維持していくとここまで上昇してしまうこと が見込まれる。政管健保につきましては、7.5 %が10.3%、介護保険につきましては1 %程度のものが2%程度の割合というようなことでございまして、現在これを合計しま すと22%になるものが、25年ですと35%のような水準になっていくことをどう考えるか ということでございます。  次の棒グラフ、これはいろいろなご議論があろうかと思いますが、国民負担率を載せ させていただいております。日本の今の国民所得に対する負担の状況、税と社会保障の 負担で見て38.3%、赤字部分も含めますと46.9%というものが出ておりますが、これが アメリカで見られた状況と同等より高いくらい、これは赤字部分を含めるとヨーロッパ に近づいていく。この辺の今の状況、今後の伸びをどう見るのかという議論のものでご ざいます。  また、社会保険料だけを取り出したものは29ページにございますけれども、これも今 までもご覧いただいたものでございますが、左の方で、日本の社会保険の保険料率、こ れは医療、年金、介護、雇用保険も入れて2002年時点で見ておりますが、23.37 %。フ ランス、ドイツのように(42%)、スウェーデン(35%)、イギリス(20%)、アメリ カ(15.3%)。スウェーデン、イギリス等は医療の部分が税で行われておったりしま すから、単純に比較はできないと思いますけれども、アメリカやイギリスの水準よりや や高いぐらいのところ、あるいはドイツ、フランスよりも低いところにあるということ でございますが、今後の動向をどう見るのか。アメリカとの比較はいろんな見方がござ いますけれども、右のように企業の負担している私的な年金、医療保険の部分を入れて みると日本よりも高めになっているのではないかというご指摘もございます。そのこと も含めて見ていただいております。  今、厚生年金の将来の負担をどう見るのか、前回も厚生年金の方は乗率5%カットの 下でいろんな施策を組み合わせて20%手前にとどめるということでございました。その 中で国民年金はどうするのか。前回改正では、同等程度の伸びを確保していくという考 え方の下で、その当時の価格ででございますが、2万円の手前、 1万8,500 円でとめる ものということで改正をした。これも5年に一度やっております有識者調査では、2万 円程度までの負担ではないかという回答が、たしか40%ぐらいの数字であったかと思い ます。  次の「○」にありますように、仮に国民年金の方の被保険者、厚生年金の被保険者と もに同等程度の負担が可能であるといったことで考えて、厚生年金の方が今から20%ま で上昇していくことを考えると単純に考えれば1.47倍の上昇です。国民年金の方が同等 程度に負担が伸びていくことはやむを得ないと考えると、1万3,300 円を1.5 倍で伸ば すと2万円程度まではいくと。このような状況であるけれども、この保険料の負担の伸 び方をこの両グループについて同じように見れるのかどうかということでございます。  そのための材料として、保険料を負担するもとになる所得について、サラリーマング ループと自営業で見ていただいたのが次の31、32ページでございます。特に自営業の 方々の所得を比べた統計がないものですから、国民生活基礎調査、これに同じようなこ とでとっているものがありますので、これで見ていただいております。これでも自営業 の方は収入引く必要経費ということで、その所得でしかないわけですが、それを見てい ただいています。左が5年毎のものを1年単位で伸び率を見てみたもの。過去は大きか ったけれども、最近はマイナスぐらいになってきている。右の方はずっと長期のもので ならしてみたものです。  32ページの表は、世帯全体での所得の月額は大体21万から20万ぐらいから始まって、 61万円、58万ぐらいまで、大体同じぐらいのレベルでずっときているのではなかろうか というようなことでございます。有業人員一人当たりの所得で伸び率を見てみると、こ れも今の棒グラフがそういうことなのですが、大体同じぐらいの動きを示してきて、最 近はいずれもマイナスという傾向になってきている、そういうことではなかろうかとい うことでございます。そういうことで負担の力は、これだけの数字で必ずしも一概には 言えませんけれども、同程度の変化をしてきているのではないかということです。  次に33、34ページでございますが、厚生年金と国民年金の最終保険料の関係について 少し触れさせていただいています。最初の「○」でございますが、34ページに棒グラフ で書き出してみましたが、給付水準を維持するという場合における保険料の上昇の度合 い、これも経済の前提で変わってまいりますけれども、下に見ていただいておりますよ うに、例えば上の厚生年金ですが、人口高位のものが一番低くて21%、人口低位のもの が一番高くて26.6%、これぐらいの変動の可能性があるということです。  下は国民年金ですが、人口高位が一番低くて1万9,000 円ぐらいから、国庫負担1/ 3のままではだめだということの前提ではございますが、それで2万9,300 円、3万円 に手が届くまで伸びてしまうということでこの変動の幅を見ていただいております。こ のようにいずれにしても大きく上昇してしまう可能性があるわけでございますけれど も、その下でどう考えるのか。  2番目の「○」は、保険料固定の下でやってみたときに、報酬比例部分と基礎年金部 分をどのような前提で考えていくのか、あるいは将来に向けての抑制をどう考えていく のか。「方向性と論点」の中では、その点を特にまだご議論いただいておりませんでし たので、同じ抑制、59%が52%に代替率が落ちていくときには、1階、2階部分ともに 同じようなペースでの調整をされるものということを前提に計算をさせていただいてお ります。そういうふうに仮定をしますと、厚生年金の方を2022年以降は最終保険料20% とおいて、同じように調整をしていき、59%になるということですと、国民年金は1万 8,100 円という現在価格での水準でとどまるということでございます。  次の三つ目の「○」ですが、仮に厚生年金を20%に固定をしておいて、国民年金の保 険料は、例えばもう少し上げてもいい、すなわち基礎年金の方の調整割合はそんなに調 整しなくてもいいということになりますと、報酬比例部分の方で大きく調整をしなけれ ばいけないことになる。逆に国民年金の保険料を最終的なものをより低いものにしよう と、負担可能なより低いものにしようということになりますと、2階の方は少し余裕が 出てくるという関係にあります。厚生年金は基礎年金と報酬比例部分をもって所得再分 配が行われておりますので、この1階と2階の関係が出てくるということでございま す。このような関係を前提に置きながらのご議論をお願いをしたいということでござい ます。  次に35、36ページでございますけれども、保険料の引上げ計画について少し触れさせ ていただいております。「方向性と論点」の中では、保険料を少し前倒しして引き上げ る場合、後倒しせざるを得なくて引上げが少し遅れる場合、どう変わるかを少し示して 見ていただいているのですが、ここでも細かい部分を示しております。  前回の再計算では遅くとも2025年までに、最終的な保険料に到達するということで考 えていました。今回の保険料固定方式の場合でも、2025年頃以降20%でとどめるという ことで前提を置いております。これに対して、後世代の負担をできるだけ低くするとい う考え方からは、段階保険料の引上げ計画を少し早めると、到達時点を前倒しすること も考えられるわけでございます。そうすれば最終的な保険料水準をより今の計画よりも 低く抑えられる。  次のページですが、模式図で実線よりもaのようにより早く到達することによってよ り低く抑えて平準化できるということでございます。後世代の負担を少しでも軽減でき るというようなこと、同じ給付を前提にするにしても、こういうことが可能であるとい うことでございます。  しかし他方で、経済状況、足元が余りにも悪すぎるということで、早めの引上げ計画 は無理で、それよりも引上げ計画そのものを遅らせなければいけないことがあった場合 には、同じ給付を前提にする場合でも最終的な保険料のレベルが高くなってしまう。そ こまでいかないと平準化できないということになりますけれども、これを次の世代との 兼ね合いでどのように考えていくのかということでございます。  四つ目の「○」は、次の37、38ページをご覧いただきたいと思うのですが、特に38ペ ージの方がおわかりになりやすいでしょうが、保険料固定方式の階段でございますけれ ども、前回の再計算のときに、国庫負担を2004年までの間に1/2にするときに国庫負 担で振り替わった保険料負担の部分は一旦下げてもいいのではないか、あるいは厚生年 金の引上げ計画を一旦その分だけ抑制をしてトータルの収入が同じということで考えて もいいのではないかということでございました。国民年金の方ですと、一旦3,000 円そ の時点で下げる。あるいは厚生年金ですと1.77%引上げるところを1%最初の階段の上 げ方を小さくしている。これに対して、特に厚生年金の場合、5年に一度引上げてい く、あるいは最初に抑制をすることをどう考えるのか、仮に国民年金でも3,000 円下げ ないで階段を600 円ずつ上げていく、あるいは厚生年金でも5年に一度の階段を大きく 一遍に上げるのではなくて1/5ずつ上げていく、こういうこともあり得るのではない かということで、どちらの方が負担の受入れ可能性が高いか。あるいは最終的な水準 も、例えば国民年金の方ですと、一旦3,000 円下げるよりも下げないで刻んでいった方 が少し低めな1万8,100 円でとどめられることができるということでございますが、こ のような引上げ計画あるいは5年毎のものを1/5ずつやっていくようなことを現実的 なものとしてどのように考えるのか、ご議論いただければということでお示しをさせて いただいているところでございます。  最後でございますが、39ページからご議論いただきたい論点の例ということで少し書 き出しをさせていただいております。今までのことをなぞったことになりますけれど も、最初の「○」で、5年毎に給付と負担両方見直すというように、大きく制度の見直 しを繰り返してきたことについてどのように考えていくのか。また、給付水準維持方式 の場合には、大きく保険料が上がってしまうことについて、現実的な問題としてどのよ うに考えていくのか。給付と負担両方を見直すというやり方、これをどのように評価す るのか。  特に(2)で書いておりますように、具体的にとりうる手法としてどういうものがある のか。支給開始年齢も、今、65歳への引上げを既に決めていただいて、その途上にあ る。さらなる引上げは、現実的な高齢者の雇用との関係でなかなか困難な面があるので はないか。あるいは水準の見直しということについてどのように考えるか。乗率の給付 上昇なども、60年改正で一旦給付をカットさせていただき、それに前回もさらに5%の カットを加えての計画を置いていただいているわけでございますけれども、この辺のも のがどうなのか。あるいは今回のようにスライドをするのはどうなのか。この具体的な 手法としてどのようなものが考えられるのかというご議論をいただかなければいけない だろうと思います。  次の40ページは、保険料固定という方式を考えたときにどのように考えていかなけれ ばいけないかということで例を挙げさせていただいているのは、(1)で、最終的な保険 料の水準をどのように考えるか。20%固定ということでございますけれども、それでも 今の所得代替率の59%が52%まで下がることが見込まれる。経済が悪化するとさらに低 い代替率も見込まれるということで、その最終的な保険料水準をどう考えるのか。ある いは厚生年金だけで考えるのでなくて、先ほどご覧いただいたように、国民年金との所 得再分配の関係がございますので、その関係について両者の水準の程度、それはどっち をどの程度調整するかということも関係してきますが、同程度でいいのか、それともそ の調整度合いを違う考え方で考えるのかという点もあるということでございます。  (2)は、先ほど見ていただいた引上げ方についてどのように考えていくのか。  (3)は、経済や人口が悪化する段階において、ずっと調整だけを続けていくことにな りますと、どこまでも下がるのではないかということがございますが、この下限につい てどのように考えるのか。モデル年金、サラリーマン世帯でございますと、所得代替率 について従来6割程度ということできておりますけれども、これをどのように考えるの か。基礎年金だけの世帯でございますと、なかなか下限の議論がありませんけれども、 今いろいろカバーしている状況から見てどのように考えるのか、このようなところを挙 げさせていただいております。  最後でございますけれども、最終的に行き着く下限の問題とともに、毎年の調整のや り方について、毎年どの程度調整可能かということについて、毎年のスライド率、スラ イドを緩やかに調整させていただくことについての下限の問題を少し詰めさせていただ いています。すなわち新規裁定の方と既裁定の方とどのように調整を考えたらいいのか ということでございます。  41ページに書いておりますのは、名目年金額下限型というのと物価下限型という2通 りの考え方を「方向性と論点」で示しておりますが、これをどう見ていただくか。これ から賃金は一応名目で2.0 %伸び、物価は1.0 %伸びていく。これは長期ではそういう 前提で置かせていただいているのですが、それから被保険者数がだんだん減ってくるこ とで総賃金が小さくなっていく。これと一人当たり賃金の差の分だけ引かせていただ く。例えば毎年0.3 %スライドで小さくしてやらせていただくということをとっており ますが、将来的に人口がもっと減っていく時代においては大きく減らす時代も来る。名 目年金額下限型というのは、そういうときでも、前年の年金に対するスライド率がマイ ナスになること、すわなち年金額を下げてしまうことはしないという前提で差し引きを させていただくということでやらせていただいております。  それに対して物価下限型というのはどういうことかといいますと、物価上昇分は差し 引きをしない。物価上昇分はそのまま全部手をつけないでやっていくべきではないかと いうことでございます。これも「方向性と論点」では示させていただいておりますが、 物価までは調整を加えないということになりますと、結局既裁定の方は今でも毎年、物 価で改定をしていく仕組みでございます。前回改正で、既裁定の方は物価での調整とい う仕組みとさせていただきましたので調整がされない。新規裁定の方は賃金スライド分 が少し計算上小さくなるのだけれども、既裁定の方は物価スライドのままで伸びていく ということでございまして、調整が新規裁定の方に大きくしわ寄せをされていく。その 結果、調整の年限が延びてしまうことになるのですが、これをどう見るのかということ でございます。  わかりづらいのでそれをグラフで見ていただいたものが42ページでございまして、左 側が名目年金額下限型、右が物価下限型です。点線は今の給付水準維持方式をやってい くとこういうことです。給付水準維持方式の一番上の点線は、今のまま59%が保たれて いくと、これはグラフを2040年のところで物価を割り戻した数字で示しておりますが、 2040年までこのように59%のラインが伸びていく。それに対して既裁定の方のライン、 例えば2005年で、65歳を迎えて年金を受け始めた方のラインをたどると、物価だけで毎 年1%伸びていきますと、2番目の点線のように、新規裁定の方との差がついていきま すということですが、途中から上向いておるのは、2033年ぐらいですけれども、これは 前回のときに物価だけで改定していくにしても、その時代の新規裁定の方と余りにも大 きく差がつきすぎてはまずいのではないかということで、賃金の伸びを加味される新規 裁定の方との差が2割を超えないようにしていこうということでの再計算をさせていた だいております。それをやりますと、この計算上では、2033年がちょうど2割の差にな りますが、それ以降は2割の差のままで保っていくということで、点線が少し上向いた 線になっていると、こういうことでございます。  それと同じようなことで、左側の図で実線の部分というのは、名目年金額下限型、20 %を前提の保険料の下で調整をさせていただくとして、新規裁定の方も既裁定の方もこ の矢印のように同じ率だけ、例えば0.3 %小さめなスライドでずっとやらせていただく ということになると、破線と同じように平行移動でいって、2033年に2割ぐらい差がつ いて、あとは一定ということになるということでございます。基礎年金も同じことでご ざいます。  それに対して右の方で、物価下限型の場合どうなるかということでございますが、比 較上、給付水準維持方式を点線で同じように置いております。2005年で65歳になった方 は2番目の実線、これが既裁定の方の実線でございますが、既裁定の方は全く手がつか ないということで、給付水準維持と同じ点線とダブった線で実線が延びている。物価の ままで延びているということでございます。それに対して一番上の実線、新規裁定の方 は、左と同じように、0.3 %ずつスライド率が小さい状態で裁定をされていき、結局そ のままで財政がバランスするまで調整しようと思うと、もう少し長い調整期間を置かな くてはいけなくて、左よりも調整期間終了年度が延びまして、2036年まで延びておりま す。  結局、所得代替率は左の方の名目年金額下限型は59%が52%までいってバランスしま すと申し上げましたが、右の物価下限型ですと、長い調整期間をとることによりまし て、59%が52%ではなくて、50%まで低下をするところまでいきませんと、財政がバラ ンスをしておりません。そこまでやっていっているということでございます。  なお、この絵の中では、新規裁定の方と既裁定の方が2割差がつく時期はまだ迎えて おりません。既裁定の方は物価で伸び続けていることから、2割も差がついていません ので、この絵をはみ出して2051年ぐらいまでいって、やっと2割の差がつくという状況 を迎えるというようなことでございます。  それを指数化して示したものが43ページ、繰り返しになりますけれども、指数だけで 見ていただきますと、上の方が給付水準維持方式で、左側が基礎年金、右側がモデル年 金でございますけれども、13.4万円ということで、新規裁定の方はそのときの59%でい くと、14万、15.3万と伸びていく。あるいはモデル年金は23.8万円が24.8万円になる。 これは全部59%に維持された数字でございます。それに対して既裁定の方々、13.4万円 が13.7、14.4万円というのは、物価だけで伸びていった数字でございます。そうすると 新規裁定の方との差が、100 が5年たつと98、10年たつと94という指数で落ちていく。 モデル年金でも同じでございます。そういうことになることを示しております。  それに対して下の方の44ページでございますけれども、下の方の左側で、保険料を固 定した状態で新規裁定の方も既裁定の方も同じように少し調整をさせていただくという ことになりますと、新規裁定の方が13.4万円、13.9万円、15万円ということで、59%か らだんだん代替率が小さくなっていって52%まで至るということでございますけれど も、そのときに既裁定の方も物価の上昇率1.0 から同じく例えば0.3 を差し引かせてい ただいたスライド率でやらせていただくと、基礎年金もモデル年金も同じように変化を していく前提を置きますとこのようになる。その指数で見ますと、100 が98になり、94 になっていきます。  右の方の物価下限型は、新規裁定の方は左と同じでございます。基礎年金もモデル年 金も賃金の上昇から0.3 を差し引いたものでスライドをさせていただいていますけれど も、それに対して既裁定の方は物価で伸びておりますので、上の表、給付水準維持方式 のときと同じということでございます。物価で1%ずつ伸びているということでござい ます。その差のつき方が小さくなりますので、100 という指数は99、96というふうにし か落ちていかないということでございます。  名目年金額下限型のようなことをやってしまうと、現実の消費を抑制しすぎるような 年金の落ち方になるのかどうかということで消費の方を見ていただいたのが45、46ペー ジでございます。これで見ていただきますと、全国消費実態調査で、5年毎の調査のも のですが、元年のとき、次に6年のとき、11年のときの調査を付けておりますけれど も、これで見ていただきますと、太字で示した部分、世帯全体でかつ消費全体、元年で 申しますと、100 が86、74、6年で申しますと、100 が95、81、11年が100 が97、84。 5年刻みの年代を追っていくと、だんだんと消費は落ちている傾向にある。ただ、新し い平成11年の調査ぐらいになってきますと、これはいろいろ見方があると思いますが、 年金の成熟化や世代の問題もあり、小さくはなっておりますが、年代を追っていくと落 ちている状況にあります。  2番目の太字の部分は一人当たりで消費全体を見たもの、これも同じような落ち方を 示しています。  3番目の太字の部分は基礎的消費の部分だけを取り出して低下の傾向を見たものです が、同じような低下を示しています。11年のときは住居とかが大きく伸びているもので すから、101 とかという数字がありますけれども、次の世代では、75歳以上では93に落 ちておりますので、このような状況ということでございます。  この太字の部分をどう見るか。実際の消費がこのような傾向をたどっている中で、先 ほどの前のページの名目年金額下限型のような調整をしますと、100 が98になり、94に なるというふうな落ち方なのでございますが、一応実際の消費を上回る程度のところに はあるのではないか。年金が仮に物価から少し調整をさせていただいても消費を大きく 制約するということはないという見方もできるのではないかということで示させていた だいています。  データの羅列で申し訳ありません。とりあえず以上でございます。よろしくお願いい たします。 ○ 宮島部会長  大変ありがとうございました。今、給付水準の考え方、負担の在り方について、かな り細かい推計も含めてご報告いただき、最後に論点をまとめていただきました。私の感 じでは、一番最後の新規裁定、既裁定あたりの話でやや少しわかりにくい部分があるの ではないか。少しご質問があれば伺いたいと思っております。  これから50分ほど時間がございますので、ただいまの説明につきまして、内容といい ますか、基礎となった推計ですとか、それに基づく議論につきましての細かい質問、さ らに意見も含めてご自由に議論していただきたいと思います。初め私が一つだけお話し しておきたいことは、これは初めに課長から発言がございましたように、2050年時点の ところでの年金制度改革に伴う効果を見たいということでございます。これは調整期間 がこのケースですと40年にかかることもありますので、一応それが終わったというとこ ろまで含めて2050年時点でこれを見ているということであります。  したがいまして、かなり長期にわたるこれは見方であるということでございますし、 また、その基礎になっておりますのが、2ページの(注2)というところの基準ケース と申しますか、標準的なケース、これをもとに推計が行われているということでありま す。我々としては、つい足元の現在の経済状況なり、そういうものがどうしても頭に重 く入っているものですから、そちらの方で考える傾向がございますけれども、これはそ ういう意味で非常に長期にわたる見方であり、しかも(注2)の基準ケースの前提とい うものが全体の推計なり説明の前提になっているのだということでございます。そのこ とが今回の基本的な考え方のもとになっていることをまずご理解いただいた上で、もち ろんそれに対してまたご議論なりご注文がいろいろあると思いますけれども、この枠組 みはそうだということは一応ご了承いただきたいと思っております。 それでは、どう ぞ、中身につきまして。先ほど申しましたように、次回もう一度この議論をいたします ので、今日で終わりというわけではございませんから、またもう一度伺う機会があると 思いますが、今日はどなたからでも結構でございます。 ○ 岡本委員  質問でもいいですか。 ○ 宮島部会長  どうぞ。岡本委員、それから小島委員。 ○ 岡本委員  それでは、意見の前に質問で内容について理解を深めさせてほしいのですが、一番最 初の表の2ページの(注3)の、「給付総額の調整割合は、仮に、平成17年4月に、既 に年金を受給している者も含めて、直ちに給付水準の調整を一度に行うこととした場合 の給付水準調整割合を示す」。これが私は理解しにくかったのですが、もう一度、ご説 明をお願いできますか。 ○ 坂本数理課長  この給付総額の調整割合というのは、これから支払います給付すべてを今一気に調整 するとどれくらいの調整になるかということを示したものでございまして、例えばこの 基準ケースで9%とございますけれども、これは今既に受給している人も含めまして、 給付の水準を9%今切るとするとこの保険料計画でちょうど収支が均衡すると、そのよ うな内容のものでございます。  したがいまして、一気にここで給付を調整するといくらになるかを示した、(注3) はそういう意味でございます。 ○ 岡本委員  ということは、数字は仮定を置いた数字ということになりますが、現実的な意味の数 字なのか、計算上の数字なのか、そのあたりの数字についてはどういうふうに理解して おけばいいのですか。 ○ 坂本数理課長  既裁定年金につきまして、一気に給付を落とすと。来月からの年金を9%切りますと いうふうなことは現実問題としてできるのか、できないのかということはあるわけでご ざいましで、そこができるという仮定の下での数字であるということでございます。 ○ 高橋総務課長  (注3)は、わかりにくい記載ですけれども、既裁定者も含めて、17年4月に一気に 給付水準を抑制するということです。例えば保険料固定方式の基準ケースですと、保険 料は最終保険料20%に向けて毎年上げていく。その保険料の階段で収入が入ってくるこ とを前提にすると、給付の方は17年4月に一挙に例えば9%引き下げると、その時点で 将来的には収支がバランスします。それは現実にできるかどうかというのは全然関係な いのです。これは計算の話です。  それで、この数字と比較していただくために、右側の欄三ついきまして、「給付水準 調整割合」という数字がございます。これは、スライド調整を行った場合に最終的にど れぐらいの調整の割合になっているか。例えば保険料固定方式の基準ケースの場合、12 %という数字が載っておりますけれども、一気にやれば9%。これは現実問題できるの かといえば、一般的にはできるはずはないと思いますけれども、こういったスライド調 整をやっていくと12%ぐらいで、9%より少し調整は進みます。しかし、差はそれほど 開かないで、スライド調整というのは非常にマイルドな調整のやり方ですから、そうい ったマイルドな調整の方法をとる場合には多少調整に時間はかかるけれども、3%ぐら いの調整が進む程度で済みます。そういうことを意味しているわけでございます。  人口の低位推計や厚生年金の最終保険料率18%、経済前提C、これは経済環境の変化 あるいは人口の少子化が非常に進むといった年金制度にとっては余り好ましくない環境 ということになると、例えば一気に調整する割合も大きいですけれども、時間をかける ともっと最終的な給付の調整が進んでいく。給付総額の調整割合とスライド調整をやっ た場合の給付水準調整割合の差もかなり開いてくるということが見てとれるということ でございます。 ○ 宮島部会長  こういう年金の再計算ですとか中期推計の中ではいろいろな形で定式化しているの で、わかりにくいところはわかりにくい。特に先ほど申しましたように、50年後を直接 比較するのはできませんので、これは先ほど申しましたように、物価上昇率ですべて現 在の割引価値に直すというような手法になっていると、そういうことですね。だから、 そういう点では、手法ということではなかなか難しい点があるのではないか。 ○ 小島委員  今日は年金の給付の問題、負担の問題ということなので、とりあえず前段の方の給付 水準の問題について意見を述べたいと思います。先ほど年金課長から資料をもとに高齢 者の消費実態調査とモデル年金との対比の中でご説明をいただきました。このデータを そのまま見ていくと、今のモデル年金を15%ないし17%調整しても高齢者世帯の消費支 出の基本的な部分はカバーできるということに落ちついてしまう。しかし、私はそうい う立場ではないので、このデータの問題点について指摘をしたいと思います。  3、4ページのところです。ここでモデル年金の23万8,125 円、それと65歳、高齢世 帯の消費実態調査の消費支出の比較をしておりますが、宮島部会長がおっしゃったよう に、これから将来を考えると、高齢者の消費支出をこのまま固定はできないだろう。将 来的にどういった負担が増えていくかと考えれば、税なり社会保険料負担がまず抜けて いる。  後ろの資料には、税、社会保険料の負担が、これは家計調査の方で、高齢世帯で月額 2万5,000 円ぐらい負担しているという数字がありますが、それも含めて給付水準を考 えるべきだと思っております。特に介護保険・老人医療、そこでも保険料負担がかか り、それと医療なり介護保険の一部負担、老人医療であれば昨年の10月から原則1割な いし2割負担ということになりましたので、自己負担が増えてくる。介護保険も原則1 割負担となっておりますので、そういう負担もこれからは増えてくる。介護保険、医療 の方の保険料負担も増えてくる。さらに税金については、公的年金等控除をどうするか ということはありますけれども、その見直しによっても税負担が増えていくことを考え れば、この11年度の消費実態調査をもとにして議論するのはちょっとミスリードになる のではないかと思っています。将来的にまさに医療・介護を含めた負担がどうなってい くのかということを含めて年金の水準を見ていく必要がある。  そういう意味では、年金、医療、介護などトータルな意味で負担と給付のバランスを どう図るかという視点が必要である。そこは意見だけ述べておきます。  それと、4ページのグラフですが、これも今3ページのモデル年金と11年度の消費実 態調査をもとにして、これからの年金の給付水準が30年後、40年後どう伸びていくかと いうこととの比較で出しております。給付の方は給付水準維持方式あるいは保険料固定 方式においても、賃金の上昇を見込んで、その分、年金の金額自体は上がっていくとい うことを前提にしております。しかし高齢者世帯の消費支出は固定をしている。なぜ、 こうなってくるかといえば、物価上昇分で割り引いて現在価格にしているからだという ことですが、この考え方をもとにすると、賃金は伸びるが消費支出は伸びないというこ とになる。物価上昇分しか消費が伸びないということになれば、今後ともGNPの6割 を占める個人消費は物価上昇率分しか伸びないということで、GNPは実質的な伸びは ないということにはなってしまう。  そういうことを見ますと、年金は将来的に賃金上昇に伴って増えていく。高齢者の消 費支出の方は固定して考えるということでは理屈が合わないのではないか。やはり現役 の賃金が伸びれば現役の支出も伸びていき、同時に高齢世帯の消費支出も伸びていくと いうことを前提にしないとおかしな話になっている。高齢者世帯の消費支出は物価で割 り戻すと伸びない。しかし現役の方は賃金が伸びるから消費支出も伸びるという話にな ってしまう。そこの整合性をどう図るかという問題点がある。  そこのところを十分注意して見ないと、将来的に年金の額が増えるから、今の高齢者 の消費はカバーできるだろうというところに落ちついてしまう可能性がある。そこはよ ほど注意してこのデータを見ないと問題を起こしてしまうと思っております。  それと給付の方で、保険料固定方式でいった場合に、人口変動に伴って給付水準が52 %ないし45%まで下がる可能性があるということになった場合、年金の水準の下限をど こで抑えるかというところの論点がありました。たしか去年の第6回の年金部会で出さ れた資料の中ではILO条約の項目が入っていたと思います。そのILOの102 号条 約、社会保障の最低基準条約、これは日本も批准をしておりますけれども、そこのポイ ントは年金であれば、30年拠出で、従前所得の40%の給付という基準になっている。保 険料固定方式でいった場合に、それをクリアーできるのかどうかという点がある。  次は質問です。ILOの128 号条約があります。これは日本は批准をしてないのです けれども、これは30年拠出で従前所得の45%という水準になっている。なぜ日本は批准 していないのか。私は日本も128 号条約を批准すべきと思っております。なぜ日本がこ れまで128 号条約を批准しなかったのか、あるいはできないのかという質問でありま す。 ○ 宮島部会長  とりあえず一つ一つ、事務局の方から説明いただける点については説明いただきたい と思います。 ○ 木倉年金課長  最後のILO条約の関係でございますけれども、確かにおっしゃるように102 号条 約、去年も見ていただいておりますけれども、一定の前提を置いて30年拠出の場合に従 前所得の40%ということで書いております。現在は、4年に一度でしたか、ILOに報 告している数字としては、前提は各国の国内で定めた前提の計算式でいいということで すから、一定の前提を置いてでございますけれども、またご報告したいと思いますけれ ども、55〜56%の水準にあるということであろうと思います。これは今後の変動でどの ような下限を考えるかというときの一つの目安になると思いますけれども、単純にまだ 前提が置けませんものですから、報酬比例部分と基礎年金部分の考え方とか、そういう ご議論もいただいた中で、どういう前提を置いたらどのような数字になるか、見ていた だきたいと思っております。  また、128 号条約についての批准の問題でございますけれども、これは対象者のカバ ーの問題でございまして、給付内容について、今でも、45%の給付水準というものは満 たしているのでございますけれども、全被用者の90%をカバーする制度でこれを算定す ることになっているものですから、今はパートタイマー等が外れて適用されてないとい うことで、全被用者の90%を前提にした厚生年金の仕組みになっておりませんので、批 准されてないという状況にございます。 ○ 宮島部会長  最初の二つの実態調査について考え方はいかがでしょうか。 ○ 木倉年金課長  先ほどご指摘をいただきました将来に向けての高齢者の消費の伸びということをどう 見るのか。これはなかなか難しい。単純に賃金がどう伸びていくということが置けませ んので、現在のものを見ていただいたのはそういうことでございまして、過去も基礎的 消費は物価の伸び程度ではなかったでしょうかということ、あるいは近年は物価よりも 下回っての伸び、我慢されているという実態もあるのでしょうけれども、そういうこと でありました。  基礎的消費以外の消費の部分は、物価を上回って伸びてきているという過去の動きが 見られる。これも近年は物価よりも下回っているものですから、どう見るのか難しいの ですけれども、将来に向けて基礎的消費以外の部分が過去のような感じで当然に伸びて いくのかどうか。あるいはそれとも、近年のようにもうちょっと我慢されて伸びないの か、なかなか一定の前提が置き難かったものですから、これは今の消費水準、すなわち 今のものが買える、今の生活が満たせるぐらいのもの以上には、実質賃金上昇が1%以 上あれば、さらに上がっていくのではないでしょうか。それに対する年金の額、購買力 の水準でこのぐらいですよということを見ていただいていると。そういうことで限界が あったということでございます。  それから、負担を考えていくということでございますが、確かに保健医療費の負担 等、基礎年金の設定当時からいろいろご議論ございました。しかし一方で現役世代の負 担と高齢者世帯の負担の公平さを保つというようなご議論の中で、高齢者も医療の1 割、2割の負担、あるいは現役世代も3割の負担というご議論が出てきているのだろう と思っております。介護保険でも保険料の負担、段階的に所得に応じての負担はお願い をしておりますけれども、そういう議論が出てきているということです。  各制度の中でも、一応保険料負担はその負担能力に応じた負担ということでお願いを し、それから一部負担の方も可能な範囲での負担をお願いしてきているのだと思います けれども、それを基礎年金設定当時からもある議論ですけれども、当然に保健医療費の 部分までそれが伸びたら年金でカバーをしていく、基礎年金の部分を伸ばしていくのか どうかというのはご議論いただきたい部分だと思っております。 ○ 高橋総務課長  今、小島委員ご指摘の点で、特に第2点目に関わるわけですけれども、4ページのグ ラフで、保険料固定方式に関する試算結果、これは年金額が若干スライド調整がかか る。給付水準維持方式の場合には賃金の伸びでそのまま伸びていって、物価上昇率は 1%で賃金は2%ですが、それで戻してやっている。一方、比較対照である一番上の横 棒、消費支出24万4,000 円は現在のものだから、これから見ると、今後の経済成長、今 の水準と将来を比較してもしようがないではないか、こういうお話なのかもしれませ ん。昭和60年の年金改正のときに基礎年金をつくったわけですが、基礎年金のレベルが どういうふうに決まった。当時の高齢者の消費実態を見ながら、水準を60年にセットし たわけですが、それから現在18年たっているわけですけれども、年金の成熟化がこれだ け進んでくると、今現在高齢者の収入は平均的には6割は年金です。年金だけで暮らし ている世帯は6割あるわけですけれども、消費実態を見て水準を決めるというよりは、 逆に年金水準が消費実態を決めている部分があるわけであります。逆に今の話ですと、 現役の消費支出が上がれば高齢者のも賃金と同じように上がるのではないかということ になれば、逆に言うと、賃金と同じように年金水準を上げるべきだというご主張になる のだと思います。そうすると給付水準維持方式に実は該当するということでございまし て、そこは現役の支える力を見ながら水準を少し考えましょうということを私ども提案 していますので、ちょっと検討が必要な部分かと思います。 ○ 宮島部会長  一応給付と負担の1回目でございますので、質問事項でしたらできるだけ簡潔に、意 見に当たる部分はできれば、今後またペーパーを出していただいて、次回審議できるよ うにして、今日はなるべく多くの方からいろんなご質問をいただいておきたいと思いま す。神代委員。 ○ 神代部会長代理  どうもありがとうございます。岡本委員のご質問と同じことだと思うのですが、お答 えを聞いても、はっきりしなかったのでもう一度伺いたいのですが、最初の1ページの 表の用語で「給付総額」と言っている場合は何を指しているのか。例えば今で言うと、 厚生年金の40兆円のことを言っているのか、何なのかよくわからない感じがするんです よね。  それから「給付水準」と言っているのは、多分平均の所得代替率のところの59%が52 %に下がるとか、そういうことで言っているのだと思いますが、隣には「所得代替率」 という欄がありまして、「給付水準」という言葉をまた別に使っている。「給付総額」 と「給付水準」というのを具体的な数字でおっしゃっていただけますか。 ○ 坂本数理課長  ここで「給付総額」と申しておりますのは、ここの表の括弧書きにございますように 給付現価という意味でございます。したがいまして、平成11年の財政再計算のときの例 で申し上げますと、厚生年金の給付現価全体がどれぐらいになるかということを計算し ておりますが、これが2,160 兆円といった結果が出ております。これから支払う給付全 体を今の価格に直したものという意味で、それが2,160 兆円あるわけでございますが、 これに相当するものと考えていただいたらと思います。  それから、給付水準の調整割合といいますのは、現実に保険料固定方式を実施してい きまして、徐々に賃金に対する給付の水準を減らしていった場合に全体としては12%減 らすということでございます。これは給付水準維持方式の場合の所得代替率が59%とい うことでございましたので、この59%の水準のものを12%減じますと、所得代替率は52 %になると、そういう関係でございます。 ○ 神代部会長代理  わかりました。 ○ 宮島部会長  それでは矢野委員どうぞ。 ○ 矢野委員  ご説明伺った範囲でちょっと意見も少し入るかもしれませんが、簡単に申し上げま す。給付と負担の在り方は、今回抜本的に見直す必要があると思っています。そうでな いと国民の信頼を回復できない。保険料固定方式が示されているのですが、基本的には 評価できると思っています。しかし保険料率を小刻みに上げていくというのは、今の方 式と余り変わらないわけで、やはり国民の納得が得られないのではないか。また、給付 水準の調整も終了年度が2032年というのは遅すぎる。世代間の負担と給付のアンバラン スの是正にはほど遠いものがあると思います。これはたたき台に対する感想でありま す。  これから各論に入るわけでありますから、1階基礎年金と2階報酬比例部分との財政 分離を図るということを検討して、基礎年金では国庫負担の1/2への引上げを含め税 方式とすることについての検討を深める必要があると思います。  その上で、保険料固定方式を検討すること。やはり20%というのを既定の事実にしな いで、それを大幅に下回る水準で固定するという検討が必要なのではないかと思いま す。年金の水準については、新規裁定者だけではなくて既裁定者も含めて削減を行うこ とが必要であると思います。その場合に実績準拠法ではなく、将来見通し平均化法で調 整を先送りすることなく実施すべきではないか。またスライド率の下限について、名目 年金額下限型と物価下限型が示されておりますけれども、既裁定者に水準調整が及ばな い物価下限型は適切ではないし、また名目年金額もこれを聖域化しないで再検討すると いう論議が必要なのではないかと思います。  それから、データについての質問ですが、29ページに日米の比較、事業主負担の比較 表がありますけれども、日本の場合、税制適格年金以外にもいろいろな福祉制度がある わけです。厚生年金基金の加算部分も含めたものですとか、中小企業の退職金共済と か、そういう私的年金の事業主掛金がこの中に入っているのかどうか。また、日本の企 業年金は退職一時金と一体になっているわけでありますが、退職金一時金についての事 業主負担は入っているのかどうか。また、事業主が負担する法定外福利費、その中に医 療・健康関係の費用があるわけですが、そういったものが含まれているのかどうか、そ の辺についてお伺いしたいと思います。  以上です。 ○ 宮島部会長  それでは前半の意見の部分は、後ほど少しまとめてということで、最後の日米比較の ところはいかがでございましょうか。 ○ 木倉年金課長  最後の点についてご説明申し上げます。これは私どもの省で使ってきていた数字でご ざいますけれども、まず厚生年金基金の分、これは下に書いてありますように、社会保 険料はILO基準で整理し、これに基づいて社会保障給付費の調査を国立社会保障・人 口問題研究所で把握をして発表させていただいていますけれども、この基準に沿って出 させていただいております。厚生年金基金の部分はこの社会保険料の方で算定をすると いうことで入っておりましで、それ以外の税制適格年金の部分は外に書き出していると いうようなことでございます。  アメリカの方でございますが、これは欄外にありますように、EBRIという日本語 に訳しますと企業福祉研究所というところの調査データ、よく使われるものでございま すが、それを引っ張らせていただいております。この5.7 という国民所得比の私的年 金。私的医療保険というものは、そのデータの中にあります私的年金、プライベート・ エンプロイアー・ペンションとプロフィット・シェアリング、向こうでOASDIの私 的年金部分として統計でまとめられている部分の事業主負担部分を掲げさせていただい ております。  それから、医療の方につきましては、メディケアヘルスインシュアランスという項目 がございますけれども、その部分が含まれての数字ということで示させていただいてい ます。一概に法定福利以外のもの全部をこれで決めて比較をするというのも一面的かと 思いますけれども、一応こういうものを示させていただいたことがございましたので、 見ていただいたということでございます。 ○ 矢野委員  今の回答は不十分だと思います。 ○ 宮島部会長  逆に、多分こういう福利厚生の範囲のとらえ方はいろいろあると思いますので、もし よろしければ、矢野委員から少し次回にでもお考え、データをお出しいただくことは可 能でございましょうか。 ○ 矢野委員  後でもいいのですけれども、退職一時金とか法定外福利費が入っていないのであれ ば、比較する資料としては不十分ではないかということを指摘しておきます。 ○ 宮島部会長  わかりました。それでは大澤委員。 ○ 大澤委員  小島委員の真ん中あたりの論点に関連するのですけれども、12ページの高齢者世帯と 現役世帯の生活水準の比較は、(注)にありますように、家計調査に立脚をしているわ けなんですが、家計調査のデータとしてのリライアビリティーに関して議論があって、 近年リライアビリティーが落ちているという指摘はあると思います。前の方の図は、全 国消費実態調査が使われていますが、そういう意味で言えば、全国消費実態調査と家計 調査の乖離が広がっているということだと思うのですけど、簡単に言いますと、家計簿 をつけている人がつかんでいない収入と支出が現役世帯では増えているという問題でご ざいます。  高校生ともなれば、かなりの人がアルバイトをし、大学生ともなればほとんどアルバ イトをしているというようなことで、家計簿をつけている人がつかんでいない。そうい った世帯主と配偶者以外の世帯員の個人的な収入と個人的な消費支出はかなりの額にの ぼっておりまして、恐らく30代の人にはそれは余り関係ないけれども、40代のところで はかなりある。家計調査だけで比べて、40代よりも高齢者夫婦の消費水準の方が高いと 言ってしまうといささかミスリーディングなのではないか、余裕のある高齢者、全く余 裕のない現役というようなイメージを与えることは問題なのではないかというのが第1 点目です。  それと関連しますので、今度は後ろの45ページ、46ページの、これはまた全国消費実 態調査に基づいた前期高齢者と後期高齢者の生活実態といいますか、消費支出の比較で すけれども、三つの表を比べてみれば明らかなように格差は縮まってきております。平 成元年だったら、消費支出が60代後半で100 に対して、75歳以上は74というふうになっ ているわけですね。ところが、6年、11年の調査では格差ば縮まっておりましで、ここ にはコーホート効果のようなものもあるのだろう。恐らく平成元年時点の後期高齢者と いうのは、年金も充実していなかったことの結果としてかなりつつましい生活を送ると いうことだったとすれば、そういうことはだんだん縮まってきていて、今後、20年、30 年、50年と見通していくときに、このデータに立脚しすぎることは問題がありはしない か。  それにしましても、最後は意見なのですが、私は物価下限型よりは名目年金額下限型 の方が好ましいとは思っておりますが、ただ、後期高齢者になると相当支出はつつまし くなるので問題ありませんというようなイメージも、これまた過度に強調されると問題 ではないか。質問よりは意見のようになったのですが、そのあたりをどうお考えかとい うことですね。 ○ 木倉年金課長  最初の方の家計調査と全国消費実態調査の乖離の問題でございますが、全国消費実態 調査ですとローンとかその辺が見えませんので、家計調査にしてもらっていますけれど も、確かに調査の分母も、全国消費実態調査は今8,000 世帯ぐらいですし、全国消費実 態調査は5万を超える世帯の調査ということもございます。ただ、全国消費実態調査 で、消費支出の部分だけ、30代、40代、50代と拾ってはみたのですけれども、家計調査 とほぼ同程度の額であり、14万とか16万とか19万が同程度の率だったものですから、そ こは今の全国消費実態調査であらわれてないものもあるのかもしれませんが、両方の調 査でそんなに差がなかったということだけご報告させていただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  それでは、近藤委員どうぞ。 ○ 近藤委員  18ページの保険料負担のところの凍結解除の問題で、これは長期的、計画的な視点か らとなっているので、念頭においているかもしれませんけれども、保険料負担を5年間 凍結したわけですから、最終的な段階にいくのに、本来なら5年間早く到達できるよう な、少しでも早くいけるような形をとるべきではないかと思います。  それに関連して、次の19ページの表、14年は農林共済、15年は厚生年金基金の臨時収 入があって、神風が吹いた形でプラスになっているのですけれども、保険料を凍結した ことで収入が減った分が年度毎にいくらなのかということと、物価スライドをゼロにし たことで給付費に影響した分がいくらか、すぐわかればいいのですが、わからなかった ら後で結構ですけれども、出していただければ。 ○ 木倉年金課長  保険料の凍結部分というのは、凍結した保険料がかかるべき対象者、被保険者の変動 等ございますから、この辺をどう見るかという点はあろうかと思います。物価スライド 部分分について給付費のベースで見ていただきますと、過去12、13、14年の3年間の累 計で、厚生年金・国民年金で約9,800 億円、もしも全部下げていたならばということと の差でございますけれども、9,800 億円の給付費の差ということで影響しているという ことでございます。 ○ 近藤委員  単年度ではどうなのでしょうか。 ○ 木倉年金課長  12年度で厚生年金・国民年金で926 億、13年度で3,200 億、14年度で5,700 億という ことで、合わせまして9,800 億ぐらい。仮に全部0.3% 、0.7% 、0.7% という3年間 のものを全部物価スライドしていた場合の給付費のベースです。 ○ 近藤委員  保険料の方は後でお願いします。というのは、このままでいくと、16年度は収入と支 出の関係で言えば予算が組めなくなる。積立金取崩しというような形の特別の措置を考 えるわけですか。 ○ 木倉年金課長   今の数字そのものは給付費ですから、予算にあらわれてくるのは国庫負担だけですの で、9,800 億に対応する国庫負担だけの数字というのは約1,600 億円です。 ○ 近藤委員  16年度を考えたら、この4.兆円9 という収入が入ってこなくなるわけですね。解散と かそういうものが起こらないとしたら。 ○ 高橋総務課長  15年度で申し上げれば、その他収入4.9 兆円のうち、3兆数千億は、これは前回ご説 明しましたけれども、厚生年金基金からの代行返上分を考えているのですけれども、16 年度それがないということになって、しかもこの状態が続行すれば、おっしゃったよう な積立金の取崩しは絶対ないということは言えないということであります。 ○ 大山委員  今回の4ページで、これは保険料固定方式の最大の難点が資料で示されたと言わざる を得ないと思うんですね。結局自分の給付がどのくらいになるかということについて、 これだけ経済的ないろんな状況によって変動すると、新規裁定されるまでわからない と、そういう難点が出されているわけであります。  基礎年金については、基礎年金の財務をどうするかということについては決めておき ますけれども、基金年金については基礎年金についての考え方があると思うんです。こ の年金部会で議論するに当たりまして。前回の年金改正のときも、報酬比例部分と基礎 年金部分の扱いについての議論がありましたけれども、最終的には基礎年金については 手をつけないという形で最終的に決着がついたと思うんです。  そういう点では、今回の試算をしてもらう場合も、基礎年金については基礎年金の考 え方に基づいてきちんと一定の額を置いてもらって、それによって一体報酬比例部分が どうなるのかという試算をお願いをしたいと思います。ただ、その試算をしたとして も、保険料固定方式の最大の難点が克服できるのかどうかという問題があると思いま す。  もう一点は、18ページに、保険料負担の引上げ凍結の解除という問題に絡みまして、 「給付水準を3割程度抑制することが必要となる」とか「4割程度の給付水準の抑制が 必要となる」という記載があります。今申し上げました基礎年金と同じように、この年 金部会で議論するに当たりまして、何を前提にして議論をしたらいいのかという問題が あると思います。国庫負担1/2なら1/2ということについてはっきりさせていただ かないとなかなか議論ができないなということがあるのですが、ここで給付を3割程度 抑制する、4割程度の給付水準の抑制が必要である、という記載がされておりますの で、それとの関係でいきますと、一つ資料をお願いしたいと思うんです。例えば保険料 率について、現在の給付の関係でいくと、39ページに、給付水準維持方式でいくと保険 料率が21%〜26.6%の幅で変動すると。  私としましては、最終保険料率は20%程度が一番いいということで前に表明しており ますが、一番多く出されている数字としては23.6%というような数字もありますよね。 これは保険料率の話になっているのですが、3割の給付を削減しなくてはいけないと か、4割の給付を削減しなくてはいけないというようなことも出されている以上、保険 料率を20%にした場合に23.6%になりますといった場合と比べて、3.6 %保険料率を 担っている部分について一体どの程度給付を削減しなくてはいけないのか。その給付を 削減することについて、何らかの方式で解決する方法がないのかというようなことにつ いて資料を出していただきたいと思います。  具体的には39ページに現行方式が書いてありますね。支給開始年齢の見直しとか、基 礎年金水準の見直し、厚生年金給付乗率の見直し、年金改定率の変更等様々なものがあ ると思いますが、この中身について必ずしも賛成するものではありませんけれども、給 付の水準の切り下げというものの割合が一体どの程度になって、そういうものを克服す るためにはどういう方法があるのか。極端に言えば、前回年金改正のときに「五つの選 択肢」とあわせて示されたようなデータは一緒に出していただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  今、ご意見の部分ありましたが、あと、データの部分については、今日の資料の中で ある程度説明できるものもあると思います。ただ、時間の関係がありますので、次回も し必要があれば、少しその説明をしていただくということにしたいと思います。それで は翁委員。 ○ 翁委員  次回又は次回以降で結構なのですが、二つばかりお願いをしたいのですけれども、一 つは7ページで、賃金上昇率と物価上昇率、それと消費の動きについてのデータがある のですけれども、賃金上昇率は物価上昇率を上回っているというのが通常の状態で、こ の結果として消費支出が物価上昇率と賃金上昇率の間にきているということだと思うの ですが、ただ、本当に足元のところでは、賃金下落率が物価下落率を上回るというよう な状態になっていてる。賃金下落率、物価下落率との相対関係が時期によって極めて異 例な事態でありますけれども、変わってくる局面があると思います。ここは平成11年ま でしかデータがとれないのでそこまでとなっていますけれども、足元のところで、物価 や賃金の上昇と消費の動きがどういうふうになっているのかということを少し検証して おく必要があるかと思います。  90年代の不況が長かったので、今、労働分配率が少し上昇していまして、その結果と して、企業収益が低下しているので、少し賃金の下方硬直性が弱くなってきているとい うふうに見ることができると思います。もちろんデフレが予想以上に進めば物価よりも 賃金の調整の方が遅れる可能性もあると思うのですが、また後で議論することになると 思うのですけれども、こういった異例の事態になっているときに年金のスライドをどう するのかという議論をしておく必要があると思います。仮に賃金下落率が物価下落率を 大きく上回る局面が長く続いてしまうと、今のような物価スライドの在り方だと将来の 債務がかえって大きくなる方向に作用する可能性があるので、その意味でもこの辺のと ころをきちんと見ておく必要があるのではないかということが1点目です。  それから、もう一つは、この間も少しお話したことですけれども、給付水準の見直し をどういうふうにするのかというようなときには、世代間の給付と負担のバランスの関 係について何らかの試算をお示ししていただけないかというように思っています。この 間、私が日本総研の方で出したものは基礎年金とか国庫負担が入ったものでして、ミク ロ的に見るとこれは必ずしも適切でないという議論があり得るかもしれませんが、マク ロ的な世代間の給付と負担のバランスがどういうふうになっているのかということを議 論の素材として出していただければと思います。 ○ 宮島部会長  今の件は、最近の数年ということになりますけれども、参考としてに出していただけ ればと思います。できれば次回。あとの件はご検討ください。  一応これまで意思表示された方は、それぞれ時間が十分ございませんでしたが、ご意 見いいただきました。申し訳ございませんが、時間が参りましたので、これで一たん打 ち切りにさせていただきたいと思います。先ほど申しましたように、次回もう一度この 辺での議論をいたしますので、後ほど事務局の方からお願いがあると思いますが、ま た、皆さん方にはご意見なり、あるいはご質問でも結構でございますので、ご意見をお まとめいただくことをぜひお願いしておきたい。どうしても会議そのものは時間の制約 がございまして、全員の方にご議論いただくことが難しいケースもございますので、ど うぞよろしくお願いしたい。  それでは事務局から。 ○ 高橋総務課長  次回の日程につきましては、現在調整中でございますけれども、決まり次第、また改 めてご連絡申し上げます。次回のテーマは、部会長からもお話のとおり、給付と負担の 2回目ということでお願いを申し上げたいと思います。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  資料のもとになりますいろんなデータの扱い方、これは大変難しい問題でありまし て、今日、家計調査報告、全国消費実態調査とか、いろんなものが出されましたけど、 事務局の方には、日本の基礎的な統計を用いて、なるべくそれも個表まで踏み込んだよ うな形でできるだけ信頼性の高いデータを示していただきたいといろいろお願いしてご ざいます。ただ、先ほど大澤委員からも指摘がありましたし、翁委員からもありまし た。また、矢野委員からもありましたけれども、各種調査については、どういうカバレ ッジで、どういう特徴を持っていて、例えば調査対象が違うとか、いろんなことも含め て問題がある。このことは、経済学者の間では比較的よく知られております。しかし、 一切データなしでやりましょうというと、今度は非常にばらばらの議論になってしまっ て収拾がつかない。一応、現在日本でとられている基本的な統計を使いながら議論をし ていくことは、やむを得ざることだと思います。ただ、特徴ですとか、あるいは平均値 を用いるべきなのかどうなのか、バラツキがどうかというようなことも併せて見ておか ないといけない。  この辺につきましては、できれば研究者の委員の方に少しアドバイスをいただきたい と思います。それから、先ほどのように企業負担などをどう考えるか。これはまさに範 囲をどう定めるかという話になってくるわけでありまして、なかなか統一見解というの はあり得ないかと思いますが、できれば、意見と同時に、そういう推計なり調査なりを されている場合には、それぞれ今経済団体もいろんな団体もシンクタンクを持っておら れますから、そういうものをむしろ積極的に提示していただく方がいろいろな議論もし やすいという点がございます。その点は、委員の方々にぜひお願いしたい点でございま す。  いろいろと申してしまいましたかもしれませんが、そういうことをお願いいたしまし て、時間になりましたので、本日の年金部会は終了させていただきたいと思います。あ りがとうございました。   (照会先)  厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3316)