03/02/07 第2回厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会議事録          第2回厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会                    議事録 1.日時 :平成15年2月7日(金)14:00〜15:00 2.場所 :中央合同庁舎第5号館共用第7会議室 3.出席者(五十音順、敬称略)    板倉 ゆか子    小倉 正敏     黒川 雄二    首藤 紘一     寺尾 允男(部会長) 新村 眞人    松本 恒雄     百済 さち     吉岡 義正  行政関係出席者    安倍 道治(医薬局審査管理課長)    松田  勉 (医薬局審査管理課化学物質安全対策室長)他 4.議題  (1)今後の化学物質の審査及び規制の在り方について  (2)その他 5.議事 ○松田室長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第2回化学物質制度改正検討部会を 開催させていただきます。委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただき、誠にありが とうございます。  私、化学物質安全対策室長をしております松田でございます。冒頭進行役を務めさせ ていただきますので、よろしくお願い申し上げます。  本日は委員15名のうち9名の御出席をいただいております。厚生科学審議会令の規定 によりまして、定足数に達しております。会議が成立しておりますことを御報告申し上 げます。  それでは、早速ではございますが、お手元にお配りした資料を確認させていただきま す。 事前にお送りさせていただいた資料に加えまして、資料4といたしまして審議経 過等についてまとめたものを本日追加してお配りいたしております。したがいまして、 資料といたしましては、資料1の化学物質制度改正検討部会の名簿、資料2−1といた しまして、「今後の化学物質の審査及び規制の在り方について」という題名の専門委員 会報告書。資料2−2といたしまして、その概要。資料3といたしまして、報告書の参 考資料。そして、資料4として審議経過ということでございます。資料に過不足等ござ いましたら、事務局の方にお申し出いただければと思います。  それでは、以後の進行につきましては、寺尾部会長によろしくお願い申し上げたいと 思います。 ○寺尾部会長  寺尾でございます。よろしくお願いいたします。早速ではございますけれども、議事 に入りたいと思います。本日の議題の予定は1つということで、今後の化学物質の審査 及び規制の在り方についてという題でございます。  前回、第1回の部会におきまして、検討課題につきまして御説明いただきまして、そ の後、専門委員会の設置をいたしまして、調査審議をするということをお認めいただき ました。その後、専門委員会では5回ほど審議を重ねまして、専門委員会としての報告 書をおまとめいただき、本日お出しいただいております。本日の部会では、専門委員会 でおまとめいただきました報告書につきまして、御議論いただきまして、できればお認 めいただければと思っております。よろしくお願いいたします。  それでは、事務局の方からこの内容につきまして、御説明いただけますでしようか。 ○松田室長  それでは、私の方から専門委員会の報告書について御説明申し上げます。本日はこの 報告書について御審議いただき、御了解いただければ部会の報告書という形にさせてい ただければと思っております。  それでは、まず資料4をご覧ください。まず1ページに審議経過についてまとめさせ ていただきました。昨年の10月24日に開催されました前回の当部会におきましては、現 行の化学物質審査・規制制度の概要と今後の検討課題につきまして、説明させていただ きました。そして、今後の検討方法といたしまして、本部会に専門委員会を設置し、環 境省、経済産業省の関係審議会との合同審議を行って、報告書をまとめることにつきま して、御了解いただいたところでございます。  この結論を受けまして、昨年10月28日に第1回の専門委員会を開催し、その後、2回 目から5回目までは経済産業省の産業構造審議会、環境省の中央環境審議会の小委員会 と合同で開催をいたしまして、また、報告書につきましては、案の段階ですべての人を 対象に約1か月、意見募集を行い、いただいた意見に対する検討も行った上で、今年の 1月30日に三審議会の合同会合で報告書をおまとめいただいたところでございます。  2ページ目は意見募集の結果の概要でございます。延べ55件の意見がございました。 そして、その意見に対する委員会としての考え方というものをまとめたものを3ページ 以降に添付させていただいたところでございます。  それでは、資料2に沿いまして、報告書の概要につき、御説明いたします。  まず資料1ページでございますが、検討の背景でございます。ここには化学物質審査 規制法がPCBによる環境汚染問題を契機に昭和48年に制定されたこと、また、昭和61 年の一部改正の経緯、そして、現在の新規化学物質の届出や評価の現状、更に国が進め ております既存化学物質の点検の状況につきまして、記載されております。  2ページには、欧米の化学物質の審査・規制の状況、地球サミットで採択されました 行動計画での化学物質管理の考え方、また、OECDでの取り組みや、我が国への勧告 について紹介しております。  これらを踏まえて、我が国の化学物質の審査・規制においても、人の健康保護に並ん で、環境保全の観点を含めることや、既存の制度につきましても、リスク評価・管理に 基づくより効果的、効率的なものとするよう検討したということが書かれております。  3ページ目以降からが具体的な中身でございます。IIといたしまして、環境中の生物 への影響に着目した化学物質の審査・規制について記載されております。1として「基 本認識」でございますが、ここには化学物質の管理上での生態保全の考え方に関して、 国際的な動きや我が国の環境基本法、PRTR法等に基づく取り組みについて、紹介し ております。  4ページ目になりますが、太字のところは専門委員会としての意見です。こうした状 況を踏まえて、我が国の化学物質審査・規制制度においても環境中の生物に着目した対 応が必要であるという御意見をいただいたところでございます。  2の「審査・規制の基本的考え方及び枠組みについて」でございます。  (1)は「生態毒性の審査の基本的考え方」でございます。まず、化学物質による生 態毒性の影響の評価、把握手法の考え方を最初に整理した上で、太字のところになりま すけれども、個別の化学物質が生態系に及ぼす影響を客観的・定量的に評価することは 困難であるものの、新規化学物質等につき、生態毒性試験結果を用いて、環境中の生物 への影響につき、一定の評価を行うことは適当である、という御意見をいただいており ます。  5ページ、生態毒性の評価方法についてでございますが、欧米等やPRTR法を参考 にいたしまして、生態系の機能において重要な食物連鎖等の関係に着目して、生産者の 藻類、一次消費者のミジンコ類、二次消費者の魚類の急性毒性試験の結果を用いて評価 することが適当であると考えられる、との御意見をいただいております。  また、今後の科学的知見の充実等を踏まえての見直しや、(Q)SAR等の活用の検 討についても必要である、という御意見をいただいたところでございます。  (2)といたしまして「生態毒性がある化学物質に対する規制の基本的考え方及びそ の枠組み」でございます。生態毒性を有する化学物質の規制に関しましては、製造・輸 入数量の制限等、直接規制を講ずる場合には、定量的評価に基づくリスク管理に必要な 目標値等が合理的に設定されることが必要、という御意見でございます。一方で、適正 管理を促す措置を講ずる場合には、必ずしも定量的な目標値等の設定を前提とする必要 はないということでございます。  こうした考え方を踏まえまして、6ページのAの「適正管理を促す措置」にもあります ように、化学物質の生態系への影響につきましては、定量的に評価することは困難であ るものの、難分解で生態毒性を有する化学物質については、適正管理が行われるよう、 事業者が生態毒性等に関する情報を提供するための措置を導入することとして、また、 B の、「定量的な管理のための直接規制」につきましては、保護の対象を一定の範囲に 限定した場合、動植物への被害を定量的に評価することが可能となる場合もあることか ら、他制度の取り組み等も踏まえ、生活環境に係る動植物、つまり人の生活に密接に関 連のある動植物への被害を生ずる恐れのあるものにつきまして、定量的な目標値等に基 づく直接規制措置を導入することが適当という御意見でございます。  7ページ目でございます。具体的には、難分解性で生態毒性を有する化学物質につき まして、生活環境に係る動植物に対しても一定の毒性を有し、それなりに被害を生ずる 恐れが認められる状況に至った段階で、現在の第二種特定化学物質と同様に、製造・輸 入予定数量の把握や管理のための指針を作成し遵守させるとともに、必要な場合には製 造・輸入予定数量の制限等の措置を講ずるということでございます。  8ページでございますが、難分解性、高蓄積性の化学物質につきましては、鳥類や哺 乳類といった高次捕食動物に対して一定の毒性を持つものである場合には、現在の第一 種特定化学物質と同様に、可能な限り環境中に放出されないよう厳しい措置を講ずるこ とが必要という御意見をいただいております。  8ページ目から10ページまでは関連事項ということで、生態毒性試験を実施するため の試験研究機関の整備等の体制構築の必要性や、内分泌かく乱作用を含めた研究調査の 推進、良分解物質への対応につきまして、まとめていただいたところでございます。  続きまして、11ページ目からは「III リスクに応じた化学物質の審査・規制制度の 見直し等について」ということでおまとめいただいております。  まず、一番目の基本認識のところでございますが、これまでの我が国の化学物質審査 規制法に基づく審査・規制は、主として分解性、蓄積性、長期毒性といった化学物質の 性状に基づいて行われてきておりますけれども、欧米等におきましては、リスクに基づ く評価・管理が行われております。そういったことや、我が国での既存化学物質の点検 についての状況等について記載されております。  そして、太字のところですが、我が国の審査・規制制度におきましても、化学物質の 有害性といった点とともに、暴露も併せて考慮したリスク評価・管理の観点から更に効 果的、効率的な制度とすべき、との御意見をいただいております。  また、化学産業界の有害性評価の自主的な取り組み成果を国が最大限に活用する枠組 みを整備すべきである、との御意見もいただいております。  12ページ目からは具体的な項目になります。まず「2.難分解性及び高蓄積性の性状 を有する既存化学物質に関する対応」でございます。  既存化学物質のうち、難分解性、高蓄積性の性状を有するものを適正に管理すること につきましては、太字のところでございますが、こうした難分解性、高蓄積性の性状を 要する既存化学物質につきましては、人の健康及び高次捕食動物への長期毒性等が明ら かになるまでの間も法令に基づく一定の管理下に置くこととして、製造・輸入数量の届 出を義務づけ、実態を把握し、物質名、数量等を公表すべきである、との御意見をいた だいております。  また、これらの性状を有する既存化学物質につきましては、国が予備的な毒性評価を 行い、リスクが懸念される場合には、環境放出抑制のための指導・助言を行い、必要な 場合には、事業者に長期毒性試験等の指示を実施し、結果によっては第一種特定化学物 質に指定すべきである、という御意見でございます。  13ページ目からは、「3.暴露可能性を考慮した新規化学物質の事前審査制度の見直 しについて」ということでおまとめていただいております。ここでは、化学物質の事前 審査制度におきまして、暴露可能性も考慮し、環境汚染を通じた暴露可能性が低いこと について一定の条件を満たす新規化学物質については、その遵守が確実に担保されるこ とを前提として、届出対象から除外したり、有害項目に係る審査を段階的に行うといっ た柔軟な対応を可能とすべしという御意見をいただいております。具体的には、14ペー ジからありますように、「(1)暴露の管理による対応」として、暴露可能性がない、 または、極めて低くなるような方法で取り扱われるもの、例えば、具体的に全量が化学 反応を通じて他の化学物質となる中間物とか、閉鎖系等環境放出の可能性が極めて低い 用途、もしくは、輸出専用品につきましては、適切な事前の確認と事後の監視を前提 に、事前審査の対象外とできるようにすべきであるという御意見をいただいておりま す。  16ページには、「(2)製造・輸入数量の少ない化学物質に対する段階的な審査によ る対応」について記載されております。ここでは、事前審査につきましてはこれまでと 同様、国内の製造・輸入総量が年間1トンを超えるものを対象とするということでござ いますけれども、そのうち難分解性であるものの高蓄積性ではない化学物質につきまし ては、これまでの環境モニタリングの検出状況なども踏まえますと、製造・輸入総量が 年間10トン程度までであれば、環境経由の暴露可能性は極めて低いと考えられることか ら、事前審査の過程において難分解性であるものの高蓄積性ではないと判定されたもの につきまして、製造・輸入数量が年間10トン以下であることを事前の確認と事後の監視 により担保できる場合には、スクリーニング毒性試験等の提出を求めずに製造・輸入を 可能とすることが適当であるとおまとめいただいております。  18ページ目からは「4.事業者が入手した有害性情報の取扱いに関する対応」につい ておまとめいただいております。これは事業者が入手した有害性情報を国に報告させる ことにより、新規化学物質の判定の見直しや、既存化学物質の点検等に活用するという ことでございまして、太字で記載してありますように、製造・輸入事業者に対し、国へ の報告を義務づけることといたしまして、また、国も情報に応じて適切な対応をすべき という御意見でございます。  19ページ目からは、既存化学物質に係る取組について記載されております。既存化学 物質の点検につきまして、欧米やOECDにおける取組なども踏まえつつ、太字のとこ ろでございますけれども、事業者と国は相互に連携しつつ、既存化学物質の有害性評価 を計画的に実施していくべきだとされておりまして、また、その際には、事業者及び国 の役割に応じた取組を進めることが必要という御意見でございます。  20ページはIVとして「その他の関連事項」についておまとめいただいております。1 つ目は、関係制度間の連携ということで、化学物質に係る他の制度、特にPRTR法と の連携をしっかり図るということについて御意見をいただいております。  もう一つは、リスクコミュニケーション促進のための化学物質に関する情報の整備と いうことでございまして、リスクコミュニケーションの推進といいますのは、今後の化 学物質の安全対策の上では不可欠のものでございますので、そのために化学物質に関す る正確な情報をより容易に共有できるよう、国は情報の取扱いについて検討すべきであ るという御意見をいただいているところでございます。  また、別添として今回新たに設けます環境中の生物への影響に着目した審査・規制の 在り方と、先ほど申しました既存化学物質の難分解性、高蓄積性物質に関するもの、事 前審査制度のスキームといったものを図示したものを添付しております。  資料2−2は、この報告書の概要を2枚にまとめたものでございます。  そして、3枚目に、全体の制度のスキームを書かさせていただいております。見てい ただくとわかりますが、まず1つ目は、真ん中から右の上の方に新規化学物質という欄 がございます。新規化学物質の事前の届出につきましては、従来どおり年間1トンを超 えるものを対象とするというものでございます。ただし、右の方にありますように、中 間物等、環境放出の可能性が極めて低いものにつきましては、事前の確認と事後の監視 で担保される場合は、製造・輸入を認めるというスキームを新たに設けるということで ございます。  また、事前審査におきましても、今まで人の健康に関する毒性だけでございましたけ れども、動植物に対する毒性というものを入れるということでございます。  そして、その下の方でございますけれども、その場合にあっても、難分解性ではある ものの、高蓄積性でないようなものにつきましては、そういった性状を確認した上で、 かつ、年間の数量が10トン以下の場合には毒性試験の提出がなくとも製造・輸入を認め るというスキームになっております。  また、事前審査の結果、生態毒性試験で毒性が認められるというものにつきまして は、現在、人健康に対する毒性の疑いのあるものについては指定化学物質に指定してお りますけれども、これと同様の枠組みといたしまして、生態影響監視物質(仮称)とい う枠組みの中で規制していくということでございます。  また、この生態影響監視物質につきましても、フロー図の下の方にいきますけれど も、特に生活環境に係る動植物につきまして、慢性毒性の恐れがあるというデータや環 境残留の恐れがある場合につきましては、第二種特定化学物質への指定という流れにな ろうかと思います。  また、左の方にありますけれども、既存化学物質につきましては、従来から国が安全 性点検をやってきたわけでございます。その点検に基づきまして、例えば難分解性、高 蓄積性で、かつ長期毒性のあるものにつきましては、一番下の第一種特定化学物質に指 定し、難分解性で長期毒性の疑いのあるものにつきましては、横の矢印のとおり指定化 学物質に指定し、また、毒性が問題ない場合は規制なしという形で取り扱ってきたとこ ろでございます。これに対して、難分解性、高蓄積性の既存化学物質につきましては、 その長期毒性が明らかになる前でも新たな管理枠を設けて、環境の放出のコントロール を行い、そのコントロールがなかなかできない、そして、その毒性の可能性があるとい うものにつきましては、企業に対して有害性の調査の指示を行えるようなスキームを新 たに設けるということを今回させていただこうというものでございます。  一番下のところにありますけれども、企業が自ら取り扱う化学物質に関して把握した 有害性情報につきましては、国に報告を義務づけるという制度も設けるという形でまと めさせていただいたところでございます。  報告書で指摘いただいた、特に法律改正につながると思われるような事項につきまし ては、このチャートにこういう形でまとめさせていただいたところでございます。  簡単でございますけれども、以上がこの報告書の概要ということでございます。 ○寺尾部会長  どうもありがとうございました。本日は専門委員会の委員長をお務めいただきました 首藤委員においでいただいておりますので、何か首藤先生、追加、補足することござい ますか。 ○首藤委員  特に追加ではないのですけれども、今、御説明があったように、大きくこの委員会に は2つの検討課題がありまして、1つは環境中への生物への影響に着目した化学物質の 審査規制について、もう一つは、リスクに応じた化学物質の審査・規制制度の見直しに ついてでございます。  これは滅多にないことだったのでしょうけれども、この報告書のカバーに書いてある ように、厚生労働省、それから経済産業省と環境省という3省の対応する委員会が合同 で実際の議論をしていくという珍しい形態で運営されました。  具体的には、まず最初は環境中の生物への影響ということを討議いたしまして、その 次にリスクに応じた化学物質の審査・規制制度について議論いたしました。そこで多く の意見をいただきまして、それを取り入れたものをもう一度字句の修正も含めまして、 その大きな委員会で、大変活発な委員会だったと思うのですけれども、そこで細かいと ころまで検討いたしました。  その後、それをパプリック・コメントに付しまして、最終的にここにあります案を仕 上げたということでございます。全体として、大変多くの意見が出ました。決定的に対 立するようなこともなく、なかなか建設的な合同委員会の結果がこの案にまとめられて いるのだろうと思っております。  内容自体については、今、説明がありましたとおりで、特に補足することはございま せん。 ○寺尾部会長  どうもありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただきました部分、つ まり、この報告書案でございますけれども、全体の本文が20ページから成っておりまし て、4章に分かれておりますけれども、これは順次やるということではなくて、一気に どこでも結構でございますので、御意見、あるいは御質問がございましたらいただきた いと思います。よろしくお願いいたします。どこの部分でも結構でございます。 ○吉岡委員  私も専門委員会の方の委員もしておりましたので言いにくいのですけれども、1つ教 えていただきたいことがございます。それは人では長期毒性という言葉を用いて、環境 の方では慢性毒性という言葉を用いております。慢性毒性という言葉と長期毒性という 言葉は、単に人と他の生物という意味違いで、中身は同じように用いられているのか、 そもそも言葉に違いがあるのかということをお教えいただきたいと思います。 ○事務局  ここでは、人では長期毒性という言葉を用いさせていただいております。具体的には 報告書の1ページのところでございますが、7行目の終わりの方に「継続的に摂取され る場合には人の健康を損うおそれ(長期毒性)」と定義しております。「継続的に摂取 される場合には人の健康を損う恐れ」というのは、法律的に用いられている言葉でござ います。この長期毒性の中には、勿論、慢性毒性も入りますが、人に係る毒性試験の場 合には、一般的に慢性毒性のほかにもがん原性試験ですとか、繁殖毒性試験ですとか、 そういったものも行われておりますので、それらを含めて長期毒性という言葉を報告書 の中では使わせていただいております。  委員会の中でも、長期毒性という言葉が若干誤解を招く恐れもあるのではないかとい う御指摘もございましたが、「継続的に摂取される場合に人の健康を損う恐れ」を言い 表す短い言葉が見つからなかったため、ここでは定義した上で長期毒性という言葉を使 用しております。 ○吉岡委員  どうもありがとうございました。 ○寺尾部会長  どなたかほかにございますでしょう。 ○板倉委員  始めて出席して最後ということで、十分に内容を理解できているかどうかわかりませ んが、パブリック・コメントでいろいろな意見が出てきていまして、ざっと私も目を通 しておりますけれども、これがある程度報告書の方に反映されていると思いますけれど も、そういった部分で、特にパブリック・コメントとの関係のところでもう少し、どう いうような状況であったかとか、それがどういう形で反映されたということについて、 資料2の提示に沿って簡単に御説明いただけるとありがたいと思いますが、いかがでご ざいましょうか。 ○事務局  それでは、簡単に御説明させていただきます。  資料4の2枚目から、パブリック・コメントに対して寄せられた御意見が載っており ます。意見総数のべ332 件ということで、一口でこの意見を申し上げるのは難しいので すが、今回の措置は、前向きなと言いますか、前進したものでございますので、おおよ そ評価をしていただいた御意見をいただいたと考えております。  その中で、この報告書自体は骨格を示したものでございますので、その具体的な運用 に当たっては、さまざまな意見を取り入れながら、国際整合性も考慮して透明性を確保 してやっていっていただきたいという御意見が全体の、いろいろな分野を含めますと、 3分の1、ないし4分の1くらいあったかと思います。  それから、この報告書の中には動物試験に関する部分も随分触れられておりますの で、動物愛護の方からもなるべく動物愛護に着目して、動物試験を減らすべきではない かといった御指摘もございました。その辺りにつきまして、報告書の中で、具体的には 13ページの真中辺りのなお書きの部分でございますが、現在、認められている試験法の ほかにも、積極的に種々の試験法について活用を検討すべきというところで対応されて いると考えておりますので、特に修文は行いませんでした。  意見を踏まえて修正したところでございますけれども、報告書の1ページ目の2段落 目「我が国では、昭和40年代初期」にという記載がございますが、案を公表した時点で は、このPCBによる環境汚染問題によって、人の健康へのリスクや環境に対するリス クが顕在化した、という記述になっておりました。これに対して、、当時、環境へのリ スクが我が国ではなかなか認識されなかったために、その当時において環境に対する対 策というのが行われなかったのではないかという御指摘がございまして、実際そのとお りとも考えられますので、その御指摘を受けて、ここで顕在化したのは人の健康へのリ スクだという記述に修正を行いました。  それから、2点目としては17ページ、一番下のCでございます。ここは製造数量が1 トン以上で10トン以下の場合に、毒性試験を10トンを超えるまでは提出しなくてもいい こととするというくだりでございます。そういった保留の状態にある間に、後ろの方で も出てまいりますが、今後、有害性情報の報告を求めるという中で、有害性情報が報告 された場合に、どのような対応が取られるかということですが、原案では、報告があっ た場合にスクリーニング毒性試験のデータを求めたり、審査判定を提出されたデータに 基づいて審査・判定を行うとなっておりましたが、そこはデータの内容によっては、直 ちにそういう措置を取らずに、そのまま保留状態が継続されるということも考えられる のではないかということがございましたので、報告書にございますように、下から2行 目ですが、「必要であると判断される場合には」と、必要性が判断した上で措置が取ら れるというような実際の現状に即した記載に直しております。  それから、最後に20ページ「(2)リスクコミュニケーション促進のための化学物質 に間する情報の整備」という部分でございます。ここは報告書案を公表した時点では、 情報公開とリスクコミュニケーションという題名で内容が書かれておりましたが、もっ と焦点を絞って、この化学物質の審査・規制制度の中で何ができるのかということを考 えていった方がいいのでないかという委員会の中の御意見、それから、リスクコミュニ ケーションについては、もっといろんなとらえ方ができるので積極的に書いていただき たいという一般の方からの御意見などを踏まえまして、全面的に書き替えをいたしたと ころでございます。  報告書の修正点については、以上です。 ○寺尾部会長  ありがとうございました。そのほかどなたか御意見ございませんでしょうか。 ○板倉委員  よくわかりませんのに申し訳ないのですが、消費者サイドから見ましても、今回の報 告書の方向性というのは、国際的な整合性ですとか、透明性とか、リスクコミュニケー ションの必要性とかということで、消費者の望むべき方向がまとめられているというこ とで、非常に評価は高いと思われます。やはりこういう化学物質の安全性に関しては、 さまざまな面でまだ手法等も含めて十分ではない状況で、情報が出ていったときに瞬時 に対応できるのか、この報告書を基にどういう形で実施されるのかが見えてこない部分 で、中身は非常にいいと思いますけれども、具体的に反映していくにはどういうことが 起こるのだろうかという若干の不安はあると思います。  それと、もう一つ、今回、この内容につきまして、化学物質を我が国で製造するとか 輸入する場合に絞られておりますけれども、最近、いろんな商品が製品化されて国内に 入ってくる。例えば家電製品のようなものも価格破壊が進んでおりまして、そういった ものには例えば難燃剤だとか、私たちが心配するような環境汚染物質も入ってくる可能 性があるという状況にありまして、化学成分そのものということではなくて、製品化さ れたものについて規制が今後は特に重要になってくるので、これと同じように、どこま で要求するかということは、対費用ということもありますので、難しいと思いますけれ ども、それを考えていかないと、実際に問題が起きてから対応に追われてしまうという ことが起きるのではないかと非常に心配されます。  そういった意味で、法律の限界というのがありますので、今回の報告書については、 今後よりすばやく見直していけるという、よく法治国家という言葉が、放置するという 意味の「ホウチ国家」という、日本の場合に法律がなかなか変わらないという、そうい ったところで批判を浴びることがございますけれども、そういう意味では随時その時点 に合うように柔軟に変更される制度が必要でしょうし、実際にこのお答えのところで も、今後はそういうような制度になっていくというふうに書かれていますので、そう いったことで期待できるのだろうと思っておりますけれども、今、非常に心配される部 分について、法的な制度をどこかで考えていただくということが望ましいと思います。  国民生活センターでとりあげたやせ薬問題で、実際にニトロソフェンフルラミンみた いなものが入った場合、あれは食品衛生法上で規制がされましたけれども、ああいうよ うに人的な被害が出なくて、環境汚染というものは、実際に気がついたときには手遅れ という場合もありますので、そこら辺のところをどうするか。  ここに非常に前向きの企業の方からの御意見がありまして、ご自分たちの企業内の規 制の方がきっと厳しいのかなという感じも受けておりますけれども、1つは、私ども消 費者サイドの方も、企業のコンプライアンスというのが非常に言われておりますけれど も、こういう取組に、悪い業者といい業者という言葉を使ってはいけないのかもしれま せんが、悪い業者については、必要最低限でも法律を守らせないといけない。それだけ でなく、やはり国民は誠実な企業から商品を買いたいと思っているということが最近よ く言われますので、そういう意味で企業は自主的に自分の基準をつくって、今、化学物 質の含まれるものを製品として輸入される場合のトレースということも含めて、企業の 姿勢を透明化して、私たち国民に見せてほしいと思います。例えば環境報告書などの取 組の一つして、明らかにしていただく。日本の消費者がもっと賢くならなければいけな いのでしょうけれども、法律で決まっていないからいいんだというような企業ではなく て、より積極的に環境というものについてきちっと対応できる企業を見極められるよう に、企業の方針とかといったものをいろんな形で明らかにしていただく。消費者の方 も、例えばNPOの活動などで第三者認証的に企業の評価をするとか、そういったこと なども併せながら、環境にやさしい企業を選び取っていく。私たちも消費者の方に啓発 しなければいけないでしょう。この報告書以上のことについては、ここでとても触れら れないのはわかっておりますけれども、せっかくこういう議論が出ておりますので、こ こに御意見をいただいた企業の方も、そういったことで自社の基準を積極的にアピール していただく。消費者に確かに残るべき企業ということをわからせていただけるように していただければ、法律の合間であっても私たちの不安も少しなくなるのではないかと 思いましたので、感想めいたことを申し上げさせていただきました。 ○松田室長  今、先生からいただいた意見のうち、幾つかお答えさせていただける部分について は、お答えさせていただきたいと思います。  まず、今回の報告書のうち、どんなところが本当に実際の法改正というところにつな がるのかということでございますけれども、一番最後にチャートで御説明いたしました けれども、メッシュの部分が、これは制度の骨格に該当する部分でございますので、こ の部分について3省庁でどういう形で法律に書けるのかというのを、具体的に、検討さ せていただいております。  それ以外にリスクコミュニケーションのところとか、既存化学物質の点検とか、その 辺は法律事項にはならないと思いますが、そこはこの事務局、3省庁、もしくは産業界 との連携の中で今後進めていきたいと思っております。  輸入製品の問題でございますけれども、この化学物質審査規制法は、先生御指摘のと おり、化学物質の製造・輸入を規制するというのが一番の主眼ではございますけれど も、特にこのうち難分解、高蓄積性で長期毒性がある第一種特定化学物質につきまして は、それを含有する製品につきまして、政令で規定いたしまして、第一種特定化学物質 が使用されているものにつきましては、輸入を制限するというようなことができること になっております。  ただし、先生がおっしゃられた包括的な、もっと広い意味でのということになってき ますと、途上国における取組というのも、1つ大きな問題かなと思っております。ま た、それを実際輸入される企業の方の取組というのが大きな問題かと思います。  特に途上国における取組につきましては、報告書の中にも記載されているとおり、地 球サミットが92年にございまして、去年もヨハネスブルグで地球サミットがございまし たけれども、その中で化学物質の管理というのは大きなテーマになってございます。特 に途上国におけるキャパシティー・ビルディングということで、対応能力を向上させよ うということでの取組については、例えばIFCSと言っておりますけれども、政府間 の化学物質安全性フォーラムというのがございまして、日本が今、アジア太平洋地域の 議長国とともにIFCSの副議長国をさせていただいておりますけれども、そういった なかで、世界的に行動計画というものをつくりまして、それに向けて各国の能力を向上 させていこうということでいろんなプログラムが進んでございます。また、例えば中国 などでは、新規化学物質に関するいろんな規則についてまさしく草案ができているとい うようなことも聞いているところでございます。  また、企業の取組につきましては、先生の方が詳しいかと思いますが、グリーンコン シューマーの動きとか、環境報告書とか、企業でレスポンシブル・ケアの運動とか、い ろいろやられておりますので、そういったところに進むようにこちらとしても支援して いくことが大事だと思っております。  もう一点、法規制の見直しについて御指摘いただきました。パブリック・コメントの 資料4の総論の2ページ目でございますけれども、通し番号で8番にも、先生からいた だいたのと同じような御意見がございまして、化審法の定期的な見直しはやるべきじゃ ないかということでいただいております。これにつきましても、ここにありますとお り、規制の存続に係る閣議決定に基づきまして、原則として一定期間経過後に見直しを 行う旨の条項を設けることになっておりますので、今、その方向で、何年にするかはま だはっきりしておりませんが、法律の中に明確に書くということも検討しているとろで ございます。  以上でございます。 ○寺尾部会長  どうもありがとうございました。ほかにどうぞ。 ○小倉委員  企業の話が大分出ましたので、私、一応化学産業界の代表ということで、今日出席さ せていただいております。今のお話、特に製品の輸入も含めまして、製品中にいろいろ 入っている化学物質についてのリスク評価と言うか、問題点を挙げていただきまして、 これは非常に大きな問題、あるいは難しいところだと思っています。  おっしゃるように、企業の姿勢という意味でのトランスペアレンシーだとか、環境報 告をもっとやっていくとか、私ども化学物質をつくっている企業は勿論やらぬといけま せんし、ある意味ではレスポンシブル・ケアという格好で、例えば物流業者とかユーザ ーにも情報をいろいろ渡すという形での情報提供も含めた活動もできるだけ進めたい、 進めつつあると思っております。  一方で、例えば輸入品となりますと、例えば商社とか、化学物質にそれほど近くない 業種の方も輸入されるわけで、どういう視点からそういうところをコントロールしてい くのかというところが必要になるのかと思いますけれども、そういう意味では私どもの 考え方は、化学物質管理というのはあくまでもリスクベースで考えるべきで、ですか ら、暴露がどれくらい出てくるか、もう一つは、その物質を使わない場合の代替される 場合のリスクとどっちが大きくなるかという観点が多分必要だろうと思うのです。  今、難燃剤のお話が出ましたけれども、御存じのように、北欧で難燃剤を規制すべき であるという意見が非常に強まっておりますけれども、ある話を聞きましたのは、ス ウェーデン辺りでテレビからの火事が増えている。スウェーデンの消防庁がテレビ番組 で、その難燃剤を抜いたものと抜かないものと比較しまして発火テストをしたところ、 そのテレビをごらんになった方は、これは難燃剤は必要だという判断をされたというふ うな1つの事例でございますけれども、ただ、では、そこで難燃剤が入っていいんです かというだけでは収まらないところがあり、そこはうまくリサイクルで、あるいは捨て たときに問題を起こさないようなシステムを考えていくのというのがそこでは必要に なってくる。  ですから、単にある有害性を持つ物質がそこにあるからといって、それをだめという のではなく、私ども化学にタッチしているものとしては、そこはどれくらいそれが環境 に暴露するのかとか、そういう観点から見ていくべきだろうと思っています。  あと、そういう意味で製品にかかわる今の取組としまして、勿論、申し上げたよう に、私どももレスポンシブル・ケアという立場で努力しておりますけれとも、一方でO ECDでは、ケミカル・プロダクト・ポリシーという形で、いわゆる製品中の化学物質 の管理をどうしていくか。これを議論していきましょうという話が起こっております。  また、これは欧州の規制と絡んでまいりますけれども、やはり家電、電子電気、ある いは自動車の部品とか、こちらの方でもいわゆるこういうものが入っているかどうかと いう情報を川上の方から出していく、どういう格好でそういうことをうまく伝えていっ たらいいのとか、そういうふうな議論も既に起こっております。  ですから、必ずしも製品についてのところがノータッチということではないと思いま すけれとも、まだまだこれからやっていかなればいけないことが多いとは思っておりま す。 ○寺尾部会長  どうもありがとうございました。そのほかどなたか御意見ございませんでしょうか。  それでは、いろいろ今御意見をいただきましたけれども、この報告書案につきまして は、お認めいただいたということにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅ うございますでしょう。                (「はい」と声あり) ○寺尾部会長  ありがとうございました。それでは、今後の予定につきましてお願いします。 ○松田室長  今後の予定でございますが、先ほどもお話ししましたように、この報告書に御提言い ただいた中身については、今回の通常国会に上程すべく、作業を進めて参りたいと考え ておりますので、また、よろしくお願いしたいと思っております。  以上でございます。 ○寺尾部会長  それでは、議事の2の(1)というところは終了ということにさせていただきまし て、(2)のその他というところは何かございますか。 ○松田室長  特にございません。 ○寺尾部会長  それでは、最後に事務局からごあいさつがあるということでございますので、課長、 よろしくお願いします。 ○安倍審査管理課長  審査管理課の安倍でございます。本日は、本来であれば大臣官房審議官の鶴田がごあ いさつを申し上げるべきところでございますけれども、今日はお休みでございますの で、私の方で僣越でございますけれども、代わりに御礼の御挨拶をさせていただきたい と考えております。  本日は新たな化学物質の審査・規制制度に間する報告書をとりまとめていただきまし て、事務局として改めて感謝申し上げます。  今回の報告でございますけれども、これは我が国の化学物質の審査・規制制度に環境 中の生物に間する視点を新たに導入いたしますとともに、リスク管理の視点から制度の 枠組みを見直すものでございます。我が国の化学物質の安全対策を今後展開していく上 で重要な御提言と考えております。今後は人の健康と環境中の生物の両方を守ることを 目的といたしまして、我が国の化学物質対策が一層推進されますよう、本報告に基づき 早期に改正化学物質審査規制法が成立いたしますよう、私ども事務局としましては、全 力で取り組んでいく次第でございます。既存化学物質のリスク評価の推進、それから各 調査研究の推進など併せて御提言をいただきました事項につきまして、誠心誠意所管官 庁の経済産業省、環境省と協力をして、全力を尽くし取り組んでまいりたいと考えてい るところでございます。  今後とも委員の皆様方から御指導を賜りますようお願いを申し上げまして、私からの 御礼のごあいさつに代えさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。 ○寺尾部会長  どうもありがとうございました。それでは、この部会は閉会させていただきます。あ りがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室  担当:近藤  TEL :03−5253−1111(2910)