03/02/04 第12回これからの医業経営の在り方に関する検討会議事録         第12回 これからの医業経営の在り方に関する検討会 日時    平成15年2月4日(火)10時30分から12時30分 場所    厚生労働省専用第22会議室 出席委員  石井孝宜、内田裕丈、大石佳能子、川合弘毅、川原邦彦、小山秀夫、       田中 滋、谷川和生、津久江一郎、豊田 堯、西澤寛俊、西島英利、       南  砂                   (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただ今から第12回、「これからの医業経営の在り方に関する検討会」を開催いたしま す。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ、当研究会にご出席いただき、 誠にありがとうございます。本日は長谷川委員と遠藤委員がご欠席との連絡を受けてお ります。また、南委員が都合により、遅れるとの連絡を受けております。  それでは議事に入りたいと存じます。本日はご案内にもありましたように、最終取り まとめに向けての論点整理の第2回目です。「医療法人の永続性・公益性を高める方策 」、例えば社団形式の医療法人における持分の取扱いの問題とか、特別・特定医療法人 制度の普及策など、また、「医療法人の附帯業務規制の見直し」の2項目についてご議 論をお願いしたいと思います。さらに、その後時間が許せば事務局から、前回の我々の 検討会での議論に即して、集約のために整理していただいた資料が提出されていますの で、ご議論をお願いしたいと思います。初めに事務局から資料の確認をお願いいたしま す。 ○中野指導課長補佐  お手元の資料の確認をお願いいたします。議事次第、委員名簿、座席表に続きまし て、「これからの医業経営の在り方に関する検討会最終報告取りまとめに向けた論点整 理(その2)」、「株式会社をはじめとする民間経営方式の長所を取り入れた医療法人 制度の改善方策」、以上でございます。 ○田中座長  議論に入らせていただきます。最初の議題は「医療法人の永続性・公益性を高める方 策」です。先ほど申しましたように、社団形式の医療法人における持分の取扱いの話 と、特別医療法人・特定医療法人制度の普及策などであります。初めに事務局から資料 の説明をお願いし、その上で委員の皆様方からのご発言をお願いする予定です。ではお 願いします。 ○中野指導課長補佐  「これからの医業経営の在り方等に関する検討会最終報告取りまとめに向けた論点整 理(その2)」という資料をご覧ください。資料1、「医療法人の永続性・公益性を高 める方策」の部分ですが、これは前回の論点整理と同様、現状と議論の方向という形で まとめています。まず現状ですが、年次推移を含めた詳細データを後ろの5頁に別紙1 として付けています。直近の平成14年3月末現在のデータでは、通常の医療法人数3万 5,795法人、うち財団型が399法人、社団型が3万5,396法人、社団型のうち持分がある ものが3万5,088法人、社団型のうちの99%。通常の医療法人のうち、全体では98%を 占めているという状況です。  租税特別措置法に基づいて、法人税率が通常の30%から22%に軽減されています特定 医療法人が325法人。同じく公益性の高い法人類型として、経営の安定性を図るために 平成10年度の、いわゆる第三次医療法改正のときに創設された特別医療法人制度は、創 設後5年経過するものの、いまだに24法人にすぎないという現状です。この特別医療法 人は、税率は通常の医療法人と同様30%ですが、収益を医療経営に当てることを目的と した収益業務を実施することができるとされています。  具体的に実施できる業務については7頁、別紙3を参考までに付けてありますが、医 薬品、医療用具等の販売業以下(1)から(12)まで書いてあり、具体的に厚生労働大臣の 告示にポジティブリスト方式で列記しています。参考までに6頁に、別紙2として、特 定医療法人制度と特別医療法人制度の比較表を付けています。両者の主な違いとして は、上から2段目の「医療施設の規模要件」として、特別医療法人制度は、緩和ケア病 棟などの公益性の高い病床を持つことが要件となっています。一方、特定については、 このような要件はありません。  上から3段目の「収入要件」については、特別医療法人については差額ベッド規制は ありませんが、特定医療法人については差額ベッドの上限額、また比率について規制が あります。なお、平成15年度の政府予党の税制改革大綱において、この要件は上限規制 を撤廃した上で、現行20%の割合規制について30%に引き上げるという緩和措置が講じ られています。  下から2段目の「効果」についてですが、特別医療法人については、収益業務の実施 が可能である、一方、特定医療法人については、このような業務の実施は認められてい ないということです。また、特定医療法人については、22%の軽減税率が適用されてい る一方で、特別医療法人については通常の医療法人と同様、30%の税率が適用されてい るということです。現状については以上です。  (2)の「議論の方向について」、資料に沿って読み上げさせていただきます。  (1)社団形式における持分の取扱い。「医療法人制度は創設以来50余年を経て、世代 交代に際して医療法人の存続そのものが脅かされる事態を招いている。持分に含まれる 払戻請求権が、高齢化した社員や、死亡した社員の相続人により行使されるようになっ たためである」との指摘と、これに対処する方策としての出資額限度法人(社員の払戻 請求権を出資額のみに制限した定款を有する社団医療法人)の創設について、どのよう に考えるか。特定医療法人、特別医療法人(一般の)医療法人との相互関係(それぞれ の法人類型の公益性の評価)や「出資額のみに限定された払戻請求権の意味(投下資本 の回収を最低限確保しつつ、剰余金の配当禁止規定との整合性を図ることか)の整理。 定款のみの変更によるものとし、法制化は不要か。あるいは税制面での対応(定款変更 した後に、社員に相続譲渡等があった場合の取扱い、出資額を超える分の払戻しを免れ ることとなる法人の受贈益課税の取扱い等)の明確化のためにも、法制化を図るべき か。こうした税制面の措置に欠かせない高い公益性の確保のため、特別・特定医療法人 との対比から、どのような要件を設けるべきか。  (2)公益性の高い特別・特定医療法人の普及。医療の非営利性の趣旨を徹底する趣旨 からも、特別医療法人や特定医療法人(これらは既存の持分の定めのある社団医療法人 が、持分のない法人に移行するための機能を併せ有している)を普及していくことが必 要ではないか。そのため、次のような措置を講ずることとしてはどうか。  イ 特別医療法人制度について。公益性を損なわない範囲で、現在の厳しすぎる規制 (特定医療法人よりも厳しい部分あり)を緩和し、通常の医療法人が移行しやすくする べきではないか。そのため、例えば、次のような措置を講ずるべきと考えるがどうか。 医療施設(の緩和ケア病床など特定の病床を含まなければならないこと)、収入等に関 する規制の緩和。収益事業規制の大幅な緩和(例えば、収益事業規制をネガティブリス ト化し、一定の医療機関として不適切な業務を除き認めること)。  ロ 特定医療法人制度について。法人税について、軽減税率が適用されている税制上 の制度であることから、大幅な要件緩和は困難であるが、近年の療養環境改善のニーズ 等を踏まえ、差額ベッドに関しては、一定の要件緩和は必要と考えるがどうか。以上で す。 ○田中座長  医療法人の永続性・公益性を高める方策について、2頁、3頁に事務局が問いの形で 整理してくれました。この問いについて、皆さん方がどう考えるか、是非ご意見をお願 いします。 ○豊田委員  今日は出資額限度法人ということも議論される予定になっていますので、これについ ては10月15日の第8回のこの委員会で意見発表をしたところですが、改めてこれについ て述べさせていただきます。今日のテーマであります医療法人の永続性・公益性を高め る方策としては、もちろん制度の問題だけではなく、資金調達の問題、税制の問題、こ ういった多角的な問題が絡まるわけですが、今日は制度について述べさせていただきま す。  先ほど事務局から説明がありましたとおり、医療法人全体の中で持分のある医療法人 というのが、数字の上では98%を占めるという現状にあります。一方、制度ができて39 年になろうとする特定医療法人は、いまだに325、また、制度ができて5年が経つのに、 特別医療法人はまだ24ということで、制度上、ここはうまく機能していないのではない かという危惧を持っているわけです。  まず最初に、持分のある社団についての問題点を取り上げたいと思います。これは医 療法人の98%を占めているわけですが、実はこの持分のある社団が現在、社員の退社と いう問題に遭遇し、まさに医療法人そのものが崩壊しかねないといった問題が現実に生 じています。そのために裁判も起きているという現状です。医療法人制度そのものは、 医療法人の経営の安定と永続性を目的としてできているわけですが、制度のスタート段 階で、剰余金の配当を禁じながら退社社員に対する払戻請求権は認めたことから、払戻 請求権の行使が今になって医療法人の存続を脅しているのです。これに対しては早急に 改善する必要があると思います。  そのために私どもが提案しているのが出資額限度法人ですが、これに触れる前にまず 特定、特別医療法人と、持分のある社団との位置関係を明確にしておきたいと思いま す。特別医療法人、特定医療法人というのは、公益性を維持するために非常に高い要件 を課されております。同族性の排除、持分の放棄、特定の病床の設置など、先ほど説明 のありましたいろいろな条件がついて、非常に公益性の高い法人であるという位置づけ になっています。現在の公益性を計る尺度から言えば、社会福祉法人などとほぼ同じ公 益性が担保されていると考えてもよろしいかと思います。  これに対して、現在問題になっている持分の定めのある社団医療法人は、配当は禁止 されていますが、退社社員に対して払戻請求権を認めている。さらに、解散時には、持 分に応じて法人財産を分配できるというような、ある意味では、公益性がやや緩やかな 形でできているわけで、そのことが今、例えば株式会社参入の問題にも絡んでいろいろ 議論されているところですが、株式会社参入よりも、医療法人の継続性、存続が危うく なっているという状況が現実にあるわけです。  私ども医療法人協会としては、医療法人制度改革について、基本的には医療法人の公 益性を増進するという方向でいろいろ検討してきたわけですが、その中で出てきたの が、この出資額限度法人です。位置づけは、非常に公益性が高い特定・特別のグループ と、公益性が緩やかな持分のある社団、それよりは公益側に寄った、その中間に存在す るといいますか、そういった位置づけになると考えていただきたいと思います。  出資額限度というのは、払戻請求権を出資した金額だけに限る、それを限度とすると いうことで、これは払戻しだけではなく、解散したときには、現在社団で問題になって います持分に応じて分配するということは排除して、解散するときには出資額を超える 残余財産はすべて地方公共団体に寄付をする、社員には戻らないという形にするという ことです。また、恣意的に定款を改変するといった状況を排除するためにも、後戻り規 制をここに課すという形で、これを安定した形にする。そのためには、是非これは法制 化をする必要がある。医療法人の任意によって、定款を変えてそっちへいったりあっち へいったりという形ではなく、これは後戻り規制も含めて、法規制をしていただくこと が必要だと考えています。  そういう形でいくと、剰余金は、すべて医療施設あるいは設備、そこで働く人たちの ために、要するに医療の質を高めるために使われていくわけです。私どもは、病院は社 会資本と考えておりますので、出資額以外の剰余金は社会資本、社会資産といった形で 活用されていく。さらに、最終的に解散の場合には地方公共団体に寄付されるという形 で、公益性を担保できると私どもは考えています。  私個人の意見ですが、特別あるいは特定医療法人と比較した場合、公益性を見る場合 に、当然のことながら同族排除の規制ということも必要であろうかと考えています。出 資額限度法人は、特定・特別のグループ、持分のある社団との中間で、より公益に寄っ た形で位置づけるものとして是非創設していただきたい。そのように考えているわけで す。 ○田中座長  2頁の問いに答える形で、協会としてのご意見と、最後に個人的な見解を加えてお話 をしていただきました。この2頁の問いかけについて、それぞれのお立場から、是非取 りまとめに向けて意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○小山委員  2頁にある出資額限度法人の考え方は分かるのですが、◇の2つ目にある「定款のみ の変更によるものとし、法制化は不要か、あるいは税制面での対応の明確化のために も、法制化を図るべきか」というのはよく分からないのです。これを逆に読むと、法制 化がなくても出資額限度法人というのは可能だということですか。 ○豊田委員  法人の定款をそういうことに定めて、出資額限度といっている法人もあるわけです が、これはある意味では税制との問題も絡んできます。例えば、持分のある社団から出 資額限度になりますと、当然のことながら蓄積した剰余金の部分、本来ならその持分に 応じて払い戻されるという形になっているのが、出資額限度に限られます。その出資額 限度と、本来の持分に応じた数字との間に大きな差が出てきます。これは、今までの定 款ですと出資した人にいく形になっているわけですが、それを放棄するわけです。つま り、そこの部分が法人に寄付されたことになります。したがって、贈与をする、あるい は贈与を受けるといった問題が生じてきて、税制の問題も出てきます。  法制化しない場合には、定款を出資額限度に変えました、またこちらに変えました、 ということも理論的には不可能ではないわけです。例えばその時に相続問題が起きた、 あるいは退社する人が出たというのを回避するために出資額限度にしておいて、またそ の問題が回避されたから元に戻すというふうなことでは、非常に具合の悪い状況になり ます。ですから、こういうことは制度の上では排除しなければいけない。法律で規制す るということは、恣意的な定款の改変を防ぐということが1つ、また税制の問題に対し てきちんとした根拠を与えるということから、これは法制化がなされるべきだと考えま す。 ○小山委員  単純に考えたら、特別医療法人になりやすい規制緩和をしろといっているのと同じ部 分が、限度額法人にはまずあるわけですね。特別医療法人になりたくない所が出資額限 度法人になるのか、そこがどうもよく分からないのです。表現はあれですが、羊頭狗肉 というか、いろいろにとられてしまうのだと思うのです。筋としては、特別医療法人の 制度が始まって、24しかないということは、制度的にはあまり普及しなかったわけです よね。ずっとこの委員会で豊田委員がおっしゃっているように、特別医療法人に近いも のをお考えなら、特別医療法人を規制緩和をして、特別医療法人化を促進するという方 向がまず一番にある。出資額限度法人というのは、特別医療法人になれないし、なりた くない所が出資額限度法人を選ぶというふうにしか、私には聞こえないのですが、それ は間違いないですか。 ○豊田委員  そういうふうにとられることも、私どもは予想しています。出資額限度方式というの は、その中間的な位置づけであるわけですが、現在特定、あるいは特別という制度があ りながら、こういう状況であるというのは、そちらのほうに移行しづらい、移行を目指 してもできないいろいろな問題があります。すでにこの制度ができて50年経っているわ けですが、現在の持分の払戻請求権を全部認めた形での制度、この場合は私的財産とい うふうな意識が残ると思うのですが、そういった状況の中で長年経過し、また時間が 経ったためにスタート時の社員だけではなくなっている。そういう中で、法人としては そちらに移りたいが移れない理由というのがいくつかあります。  特別と特定の中で非常にやりづらい部分がある。制度上、非常にハードルが高いこと が1つです。もう1つは、持分のある所から全部放棄して、特定になるには意識改革が 必要で、長年の歴史の積み重ねがあるわけですから、この問題も非常に大きいと思いま す。先生に対する答えはこれからですが、出資額限度法人というのは、持分のある社団 が、最終的に特定・特別になりたいという人たちの1つのステップとしての位置づけに もなると思います。内部を調整して、だんだんに医療法人をそちらに持っていくため に、まずそこまでの意識改革ができたところで出資額限度になる。そして実績を重ね て、その先で特定・特別を志向する。そういった役割も果たせると思います。  逆に見れば、特定になりたい人がなれないからこちらになる、というのも事実だと思 います。本当は特定・特別になりたいが、病床要件であるとか、中の細々した問題がク リアできないという現実がありますので、その人たちはなりたくてもなれない、と言わ れればそれまでだと思います。そういうことなので、先生のおっしゃることも大体その とおりです。 ○小山委員  非常に今の医療法人に都合のいいようにしか考えていないのではないですか。今の持 分を請求されてしまうといっぱい払わなければならないから、限度までにして潰れない ようにしてくれと。それを永続性と言えるかどうかは、私は問題だと思っているので す。今回の議題にあります医療法人の永続性・公益性については、私はどうして永続性 なのかと思ったのですが、その時は税制の問題も入ると思ったのです。税制が入るので 「永続性」という言葉でいいと了解しているのですが、今の出資額限度に関しては、自 分たちが相続が起きたときに、限度で逃げたいというだけにしか聞こえませんから、こ れは何のこともないのではないか。  むしろ、これだけ病院経営が厳しい中で、豊田先生も西澤委員も何度も公益性が高い 事業なのだとおっしゃるならば、本筋は特別医療法人の今の要件を下げろということが まず最初にないとおかしいのではないかと思うのです。また、相続税に関して何もこの 委員会で発言もしない、法改正も求めないのならば、医療法人の永続性ではなくて、医 療法人の持続性ということではないか。永続性というと、ずっとあるということですか ら、ずっとあるということなら、特別医療法人みたいに持分を放棄しているから永続性 だし、永続性のあるものに関して、なぜ税制がきちんと対応しないかという議論は、十 分国民の議論になるわけです。しかし、持分の定めがあって、相続や何かで支払いが起 きたときだけ限度額でカバーしろというのは、私はちょっと違うのかなという印象を拭 いきれないのです。 ○豊田委員  相続が生じた場合、あるいは退社社員が出た場合にだけ、出資額限度にしてくれとい うのは、それは駄目であるということを私は言っているわけです。定款を変えれば、そ れは可能なわけです。医療法人の任意に任せたのでは、そういうことが起こる可能性 がある。小山委員が言われていることは、私もそのとおりだと思います。ですから、そ れを防ぐために後戻りの禁止を入れた法規制が必要だと言っているわけです。法人に都 合がいいと言われると非常に残念なのですが、要するに出資額以上の、自分が最初に出 した金額以上の剰余金は、すべて法人のもの、医療機関のものであるわけで、個人のも のではないわけです。その意味において、出資額限度にした場合と、持分の定めあると きとでは、すでにもうその部分が違います。そのもの自体は、すでに社会資本として、 あるいは社会資産として考えてもよろしいと思いますし、それがまた解散したときは、 出資額超過部分は個人には戻らずに、全部地方の公共団体に寄付されるということです から、医療法人の都合がいいという話とは、ちょっと違うと思います。その辺は、よく 理解をしていただきたいところです。 ○川原委員  いま、ご両者のご意見をお聞きしておりまして、それはそれなりにいろいろなご意見 がおありなのだと思いました。特別医療法人や特定医療法人の要件緩和をすればそれで すべてが済んでしまう問題ではないのかという小山委員のご発言がありましたが、私 は、実務に即してそういうことが本当にできるのかどうか疑問に思っています。私的所 有に帰属するものをすべて放棄させてしまうことが、可及的速やかにできるのかどう か、という疑念が出ます。また、医療法人は必ずしも病院だけの問題ではありません。 診療所や老人保健施設にも医療法人があるということを、ここで考えておかなければい けないと思います。診療所も特定医療法人になってしまうのですか、特別医療法人に なってしまうのですかという論理展開になっていくと思うのです。 したがって、私は特定・特別医療法人を別の枠組みで位置づけておき、それとは切り離 して通常の社団法人がより公益性を高めるためにはどのようにすべきかを考えたいと思 います。それがためには、公益性をより担保するための条件整備しなければなりませ ん。最終的には私有財産権の放棄がキーポイントになるものと考えております。出資限 度額までは解散時に払い戻す。しかし、出資限度額を超える、いわゆる医業経営から、 あるいは医療の提供から醸し出された留保利益が法人に帰属し、最終的に地方公共団体 に寄付をするという条件が付与されるということであれば、私は社団法人を現状のまま 存続させるよりも、むしろ中間的公益性と申しましょうか、公益性をより高める中で、 医療法人の実存性から考えて、運営のしやすい、あるいは中小病院や診療所も納得し得 る制度形態にしたほうが良いのではないか。この検討会は、あくまでも経営の視点か ら、医療法人をどのように安定した形態で組織継続させるか、経営持続化させるか、そ のための制度はどうあるべきかを論じるべきではないのかと考えています。 ○小山委員  残余財産を寄付するから公益性があるといっても、医療法人が解散するときは残余財 産などはほとんどなくなるから解散するのであって、その議論はすごくおかしい。私は 医療法人が解散するのをいくつか見ていますが、要するに経営に失敗したものが、残っ たカスを行政に寄付するから公益性があると言われても、そんなことで担保は法律的に できるのかどうかよく分かりません。要するに、出資限度額法人とかいっているのは、 私有財産を守りたいと言っているのでしょう、と言っているだけなのです。そういうふ うに見えるわけです。また、一人医療法人とかいろいろなものがあることも知っていま すが、例えば特別医療法人について、制度を作ってもこれだけ動かないのなら、200床 以上、20億円以上の売上げのある病院については、特別医療法人の規制緩和をするとい う方法もあるわけではないですか。  この前から議論になっていますが、診療所とか、歯科診療所とか、老人保健施設と か、医療法人はいっぱいあるので、病院だけを考えてはいけないのかもしれませんが、 300床以上の民間病院で持分の定めのある法人はありますが、大変なことになることは よく知っています。一人医療法人で、出資額限度だろうが、そうでなかろうが、税金を 払う人は先代がよくやったなというだけの話で、払えない人もいるわけですから、一人 医療法人にも出資限度額という話になれば、余計に議論は「そんなことは必要ないじゃ ないですか」ということになりませんか。病院なら話は分かりますが、一人医療法人も 出資限度額法人になるわけですね。 ○川原委員  いまの小山委員の発言ですが、一人医療法人も出資限度額法人になるのですかとい う、これはあくまでもなる人の選択肢の問題だと理解していいです。ただ、制度として 考えた場合に、診療所もなり得るような制度でないと、前提条件としてはいけないで しょう。診療所であるとか老健であるとかという、いわゆる視野を広くした中で、この 制度論のあるべき姿を論じていかないと、非常に難しいと思うのです。ただ病院とい う、1つの特定した施設に限定した中で論ずる場合には、当然いろいろなことが考えら れるでしょうが、それが診療所であるとか老健であるとかに援用されると、私はちょっ と難しくなるのではないかと考えます。先にベーシックなものを作り上げておいて、そ のベーシックなものの展開の中で、どのように援用、運用していくのかという、今度は 技術論に移っていくと思うのです。 ○豊田委員  いま川原委員が言われたとおり、この出資額限度法人というのは、あくまでも手挙げ 方式で、全部を変えてしまうという話ではない。簡単に言えば、なりたい人がなるとい うことです。持分のある社団は病院だけではなく、一人医師法人もあるわけで、一人医 師法人の中でも出資額限度を選択すればそれはそれでいいということで、医療法人とし てすべて同じに扱うということになるわけです。  先ほどの潰れた法人の、それを地方公共団体に寄付する云々という議論がありました が、実は前に株式会社参入のときの問題で、持分のある社団に対して、あなた方は営利 だという議論の中心はそこにありました。剰余金は配当しないと言いながら、解散をす るときは持分に応じて分配するという規則があるのは、配当を後送りしただけであっ て、まさにこれは営利ではないかという議論が、ここでもなされたと思うのですが、私 はそのことに対しては反論できない、まさにそのとおりだと。  したがって、今度は立場が逆になりますが、同じことなのです。制度上そういう不備 があって、いろいろ混乱を生じているわけですから、この際その辺はきちんと整理をし て、それが倒産なのか、もっと違う転身のための解散なのか、そういうことは考えなく ても、制度としてきちんと解散時には残余財産は公共団体に寄付すると、この整理は必 要だということを言っているわけです。 ○西澤委員  やはり、出資額限度法人に対しては、小山委員が言われているようないろいろな疑問 があると思います。豊田委員が言われたように、きちんとした縛りが必要で、同族要件 では、特別医療法人と同じに、たぶん3分の1以下とかという規定は設けると思いま す。また、剰余金に関しては、解散時でなくてもとる方法はあるならば、それも縛らな ければならないと思うのです。そうすると、それも特別利益の付与の禁止ということと 同じ条件が、出資額限度法人にもかかるのかなと思います。それであれば、かなり公益 性が高いからいいと思うのですが、それでは特別医療法人と出資額限度法人とはどこが 違うのかという議論を、きちんと煮詰めたほうがいいと思います。  特別医療法人にしたくても、全額寄付だと同意は得られないと言う事に関しては、出 資額だけ返却すれば、果たして同意が得られるのか。私個人としては、あまり差がない ように思える。この2つの違いを明確にして議論をしたほうが分かりやすいと思いま す。個人的には、やはり新しい制度を作るよりは、特別医療法人の規制を緩和して、な りやすくすれば、おそらく出資額限度法人を作る目的も果たせるので、それがいちばん 手っ取り早い方法ではないかと思っています。 ○田中座長  公益性を担保する方法として、西澤委員からは、同族性の問題と、特別な利益配分を 止める、配ってから解散というようなことは防がないと、公益性は担保できないとのご 指摘、小山委員からは、サステナビリティ、つまり持続の話と、公益性ゆえに永続する とは違う分野だろうという、大変貴重なご意見が出されました。どうぞそれぞれ、公益 的な立場の委員としてのこの点に関する意見でも結構ですので、2頁の整理された問題 について、ご意見をお願いします。 ○小山委員  要するに、非常に厚生労働省の検討会でつらいのは、税制にとってコンフィデンスの ある議論ができていないのです。どう考えても、事業継承の場合の相続税が問題なので す。それをどうにかするために、医療法人制度を動かそうとしているわけではないです か、そういう理解しか私にはできないのです。相続税のところが問題なのですが、では どういう条件が確保できたら、事業を持続するための相続税の軽減ができるかという、 別の意味で言えばそういうテーマであるように私には思えてしようがない。  しかし、例えば税制のほうが変わってしまうという危険もあるわけです。新聞では、 中間法人、民法法人については、課税する方向で検討すると言っているわけですね。よ く分からないのですが、みんな全部課税という方向に世の中は動いていくのに、いま課 税ではなく免税のほうに動く、いま規制緩和の時代に規制のほうに動くというのは、そ れで本当に議論はいいのか。私有財産を認めろというよりも、医療法人が一生懸命に やって、もっと自分たちはやりにくくしてもらってもいいですからとおっしゃってい る、そういうふうにしか私には聞こえないのです。そこまでいって、出資限度額だけで 税制のほうは何も付いてこないということになると、大損するのではないかという気が するのですが、そんなことはないのですか。 ○豊田委員  やりにくくしてくださいということは、決して言っていないのであって、税制の問題 も、私ども医療法人は伝統的に税制の問題は長くやってきました。税制というのは、最 初に税をどうしてくれ、ああしてくれという話からスタートしても駄目なのです。私ど もの医療法人協会ができて53年になりますが、この相続税の問題では旧大蔵省から、ま さに難攻不落の城に石を投げてきたような、全く振り向かれない状態で、よく辛抱して きたと思うのです。ですから、税制面では同じ間違いは繰り返したくないので、まず制 度をきちんと作って、その制度を正しく運用するという実績の下に、税制の問題に持っ ていかなければ、私は世の中は動かないという考えです。  最初から税金をまけろみたいな話は、これは不毛の論争です。ですから、きちんとし た制度を作る。そして、それをきちんと正しく運用する。したがって、こうだから税制 をこうしろと、私はそういう順番だと思います。出資額限度法人は、損をするために作 る話ではなく、そういう制度がきちんと出来さえすれば、そしてそれが正しく運用され れば、相続の問題に対しても非常に有力な、税制との絡みがそこに出てきます。決して 損をするためにやっている話ではなく、その点で言えば、我々の医療法人の永続であ れ、持続でもいいのですが、それが担保できるということまで私どもは考えています。 ○川原委員  いまのお二人のご意見に、私の意見も加えさせていただきたいと思います。所得課税 と資産(相続)課税をいま混濁してお話をされているような気がしました。先ほど小山 委員が指摘された公益法人、ならびに社会福祉法人も含めた民法法人、公益法人は、所 得課税のほうで非課税であるという話です。いま俎上にあがっている社団法人について は、これは残余財産に対する資産課税の問題なのです。これを一緒にしてしまったから 訳が分からなくなったと思うのです。  相続課税ということを考えた場合に、今までは残余財産すべてに対して課税執行がさ れていたわけです。しかし今後は、そのうちの過半になると思うのですが、地方公共団 体に寄付するということになれば、その部分は非課税として、いわゆる課税対象から外 されてしまうわけです。いわゆる租税面から見た法人の持続というものが、より安定性 の高いものに、租税面からも担保されていくのではないか、というふうに理解しないと いけないと思います。 ○西島委員  やはり、この医療法人制度ができたときに、税制のことはおそらく、あまり検討して こなかったのだろうと思うのです。そのツケがいま全部きているわけです。ですから、 いま豊田委員がおっしゃったように、まず制度をして認めてもらって、それから税とい うのは絶対あってはいけない話で、やはり、並行的にきちんと制度の中には税制も入れ てやっていかないと、また良いとこ取りをされてしまう可能性は大だと思うのです。そ れはなぜかというと、厚生労働省と財務省とは縦割ですから、いくら厚生労働省が認め ても、財務省が認めなければどうしようもないわけで、ですから私が「税の問題もここ できちんとやるのですね」と最初に言ったのは、そこなのです。私はそう思います。 ○田中座長  特別医療法人の規制緩和が先だと小山委員は言われましたが、規制緩和に関するご意 見がありましたらどうぞ。 ○豊田委員  最初に説明がありました特別・特定が制度ができてもなかなか普及しないというの は、私どもから見ると、ハードルが非常に高いということです。特定については、最近 ようやく差額ベッドについて20%が30%になり、また差額料金の上限なしということに なったわけですが、それ以外にも社会保険診療が8割を超えなければならないとか、特 別においては特定の病床がなければならないとか、非常に厳しく特定の病床を持つこと が義務づけられておりますし、両方とも非常に給与規制が厳しい。本来、同族に対する お手盛り的なことを防ぐために厳しかったのだろうということが推定できるわけです が、最近では同族外の職員にも比準方式が行われるなど、給与規制はまさにがんじがら めです。効率性とか近代化とかいろいろ言うならば、まさに逆行した法規制です。こう いったことも嫌われるところです。例えば、非常に技術力を持った医師を雇いたい、あ るいはそういった人を招聘したいという場合も、この給与規制が非常に邪魔をするとい う現実もあります。  今の時代、予防医学が非常に重要視され、そのほうの議論が進んでいるときに、検診 とか何かがたくさん入って、そのために社保診療が8割を割ってしまったというと、そ れはもう駄目なのです。そういう非常に不合理な規制まで入っている。こういうことは 是非、改善していただきたいと思います。また、こういったことが、なかなか数が増え ないことの要因になっていると私どもは考えています。検診事業が8割に入らない点と か、特別医療法人の特定の病床、こういうのはもう撤廃すべきだと思います。 ○田中座長  経営者に関する給与規制と、雇った医師に関する給与規制と一緒にする。 ○豊田委員  給与規制は経営者だけではない、全職員に対する細かい規制が入っています。 ○小山委員  特定と特別を並べて書いていますが、特定医療法人は租税特別措置法の範囲ですか ら、この委員会で言うならいいのですが、まず特別医療法人の話をしないと、特別医療 法人がこうするから特定もそれに準拠しろという議論にしたほうが分かりやすいと思う のです。特別医療法人なのですが、特定病床、「緩和ケア病床など、症例の9つの病床 を有すること」という、何か付けなければいけないから付けたものですから、やめてし まったらいいのではないかと思っています。緩和ケア病棟を持っている医療法人と持っ ていない医療法人とで、持っている医療法人のほうが経営がよかったりする場合もある ので、損をさせようという意味だったら、特定病床というのはあまり意味がない。た だ、地域全体の中でそういうことをやっているという意味だったら、ほかにもう少し言 い方があるだろう。例えば、医療審議会にかけて何とかとかいう話でもいい。  また、救急告示の要件ですが、救急外科系の病院以外は特別医療法人になれないとい うことになります。これがなくてもいいではないかと言われれば、本当はできるのにや らないという話で、これもまた救急告示も交通事故の話からいろいろあるので、これも とってもいいと思うのです。社会保険の80%も、実態に合わせて70がいいのだったら70 でもいいし、60でもいいし、それこそ医療法人協会のデータでも作って、このぐらいが いいところで、注意点がここだからこれ以上にしろとか、20%対のところをとれとか、 何か議論をしてもらえばいい。  ただ、給与規制に関しての話はちょっとまた別で、給与規制ぐらいはあってもいいの ではないかと私は思うのです。3,600万の理事長要件があるから特別医療法人にならな いというのであれば、それは一般の医療法人でいいのではないですか。だから、給与規 制の問題と厚生労働省が持っている規制、例えば救急告示があるとか、特定病床を何か つけろとかいっていることと、それはちょっと違うのではないかと私は思うのですが、 それは違わないのですか。 ○豊田委員  給与の件で申しますと、3,600万が嫌だからというふうに言われるとつらいところで して、そういう話ではない。これは、理事長の給与だけではないのです。全部厳しく比 準式で決めるようになっています。給与規制について言うならば、同族が、自分たちで その辺を適当にやることを防いだことなのだろうと思いますし、それはそれなりの意味 があったと思うのですが、この辺についてはもっと自由にして、むしろ情報を公開すれ ば、あるいは開示できるようにすることによって、もっと自由にやらせる形を選択すべ きだと思います。誰をいくらにしろという議論ではない。あまりにもがんじがらめな給 与規制は、いかにも民間を信用していない典型みたいに見えるのです。もっと自由にし て、情報を開示ということで、それを担保していけばよろしいのではないでしょうか。 ○石井委員  「役員等に対する給与支給額は年3,600万円以下であること」というのは、見方とし ては3,600万円まではとっていいと読めるかもしれませんが、現実はそうではない。先 ほどから豊田委員がお話をされているように、現実には同族性のない、同じ内容の仕事 をしている人と比準をした結果、計算した金額が基準になります。なおかつ最高額は 3,600万円ですから、現実にはほとんど3,600万円はとれない。実際に計算すると2,000 数百というところに落ち着くのが一般的です。これがまず1つ、事実として存在してい る。  私は現実的に特定・特別という医療法人と係わりをずっと持ってきているのですが、 基本的には小山先生がおっしゃった流れなのかなと思います。つまり、6頁にあるとこ ろで、どこを緩和するのかという議論がやはり基本なのだろう。法人の種類は変えよう がないと思うのです。医療施設の規模に関しては、多分、医療機関側からすれば、もと もと医療機関を運営している医療法人で財産権がないということは、自動的に公益の増 進に著しく寄与しているのだから、細かい要件は一切なしにしてくださいという話なの か。収入要件に関しては、これほど療養環境等の変化がいろいろある時代に、一律的に 数値で縛るのはおかしいのではないだろうかということで、なしにするのか。法令義務 違反の有無は、当然あってはいけないことですから、これは当然残るだろう。特別の利 益の供与は禁止されるのが当たり前のことでありますので、禁止される。もちろん、同 族要件に関しては、3分の1以下というのは守るべきだと思いますし、どちらかという とガバナンスを強化する。  例えば、その地域の医師会長であるとか、あるいはそういったきちんとした立場の第 三者を複数、役員、評議員等に入れることによって、いわゆる社外役員的なイメージで ガバナンスを強化する。あとは、そういった組織としてのガバナンスの強化をされたと ころで、基本的には特別利益の供与がないような自治を行わせる。セルフ・ガバナンス を強化するという形にする。どうも時代の流れとしては、確かに非営利法人に対する課 税強化というのは現実にありますので、あるいは民法上の公益法人すら、制度がなくな るだろうという議論もあるぐらいですから、22%というのはあまりこだわらずに、まさ に継続的に事業運営ができる財産権課税がなしというような整理でしてしまえば、すっ きりするのかという話かと理解をしております。 ○田中座長  わかりやすい整理をいただきました。続けてもう1つのテーマである「医療法人の業 務範囲」も含めて議論を進めたいと思います。ここで説明をお願いします。 ○中野指導課課長補佐  それではお手元の資料4頁、「附帯業務規定の緩和」の部分です。まず現状は、現在 は医療法の42条において、医療法人が行うことができる附帯業務について制限が付され ております。具体的には8頁の別紙4に掲げる各業務、これに限って附帯業務を行うこ とができることとされております。  続いて「議論の方向」について読み上げさせていただきます。  議論の方向。医療法人が本来業務の持つ人材、施設、設備やノウハウ等を活用した業 務のうち、一定のものを附帯業務として行えることとしてはどうか。具体的に、医療法 第42条第1項第6号の「保健衛生に関する業務」としてどのような業務を新たに認める べきか。(例)在宅医療や在宅介護の推進に資する事業。配食サービス、診療報酬請求 事務等の請負業。医療情報サービス事業。以上でございます。 ○田中座長  ありがとうございます。これは特別・特定あるいは出資限度額法人とは違う一般の医 療法人についても、規制緩和してはどうかという点です。取りまとめに向かって皆さま 方の意見を伺っておかなければ空気だけでは書けませんので、これについても意見をお 願いいたします。 ○小山委員  記憶が確かではございませんが、平成9年、10年、11年にまずホームヘルパーとか、 ケアハウスは、社会福祉法人でできるようにして、訪問看護ステーションとか、そうい う医療系のものは医療系みたいな議論があったのですが、精神保健などの中間施設の議 論もあり、医療法人に附帯事業として付加した場合には、社会福祉法人にも医療法人に しかできなかったものを付加するという襷掛けみたいなことが行われたと記憶している のですが、私は基本的に特別医療法人の収益事業、医療法人の業務範囲の拡大には賛成 です。その代わり、いま読むと結構何でもできそうなのですが、ここに例示されてある 第42条第1項第6号の保健衛生に関する業務として、在宅医療・在宅介護の推進に関す る事業とか配食サービスとか、診療報酬請求事務の請負とか、医療情報サービスとか、 こういうものをお望みならば、全部業務に附帯したらどうか。何も影響がない。国の制 度に何の影響もないものですから、附帯して、社会福祉法人も、「医療法人が附帯業務 を拡大したから、うちもして」というならば、したら別に構わない。この範囲であれば 全く構わないと思います。何を議論しなければいけないのかよくわかりません。私はそ う思います。 ○田中座長  特別・特定の業務規制の緩和、一般の医療法人の業務規制の緩和、これについて賛否 それぞれのご意見をお願いします。 ○川原委員  社会福祉法人については公益法人という位置付けは明確にされていますが、附帯業務 については、ほとんど実務的には制限がないといえるほどに緩和されています。という ことを考えれば、今般のこの4頁の附帯業務の規制の緩和は、ここに書いている以上に 大幅に緩和した中で、医療法人の経営がフレキシブルに行なわれ、経営の安定の継続化 を図っていけるような仕組みを作る必要があると思います。ですから敢えてネガティブ ・リスト方式を採用し、規制緩和を大幅に行なったほうがいいのではないかと思いま す。 ○豊田委員  私もそのように考えます。このように項目を挙げてやっているいまのポジティブ・リ ストのやり方は、特別医療法人というのは、それなりの審査を得て、きちんとした組織 でありますから、そういう立場に立てばポジティブ・リストのやり方ではなくて、ネガ ティブ・リストでいいと思うのです。ですからそういう形で業務を拡大したらいかがか と思います。 ○田中座長  規制緩和方向については皆さん賛成で、ポジティブ・リスト、ネガティブ・リストは テクニカルな方法論になりますが、緩和の方向について反対の方はいらっしゃいます か。警告を鳴らす意味で何かご意見はおありでしょうか。 ○西島委員  病院とかが倒産している原因というのは、医療以外に手を出している所が結構倒産し ているのです。ですからそういう意味で、規制を緩和するということに関しては、私は 反対ではないのですが、その辺りは慎重に対応していかないと、何でもありですよとい うことで、結果的に経営が駄目になってしまったというケースは、もうこれはデータと してあるわけです。その辺りは慎重に検討する必要性はあるかなと私自身は思います。 ○田中座長  そうですね。規制緩和は賛成だが、方法論については注意深く検討すべきであるとい うことですね。ほかの委員の方はよろしいですか。 ○小山委員  前回の議論でも大騒ぎをして株式会社に反対して、医療法というのは本来、基本法み たいなものがあり、人体に危害を与える恐れがある行為を医行為と言って、科学的な医 行為をする場所として医療施設を決めているわけです。ですから医療法人の附帯業務 で、ここに書いてある方向での規制緩和は、お望みならやったらいいのではないかとい うことですが、なぜそれではその附帯業務を制限したのか、立法の趣旨から見て、例え ば、無償のクリニックとホテルを合築して、経営しているとか、大型の賃貸住宅を造っ て、その下が住居者の診療所で、1床空くと、上から誰か呼んでくるとか。そういうこ となのでしょう。  ですから豊田先生は民間を信じてないとおっしゃいましたが、法律というのは人を信 じていないからできたのだと思います。要するに何をするかわからないから、ネガティ ブ・リスト、要するに医行為とまぎらわしいこととか、経営上の何とかという話なの で、今回ポジティブ・リストをネガティブ・リストに変えるだけの論拠はないと思うの です。それにポジティブ・リストでこれを列記していますが、これをなくして何でも やったほうがいいというのなら、それなら医療法人は株式会社でいいではないかという ことになってしまうから、それは議論として間違いです。やはり人体に危害を与える恐 れのある医行為と、やはり医療経営という特殊性というものをきちっと認識した議論で はないと、それは私は反対です。だからそうではなくて、もう少し附帯業務や何かで、 自分たちが実際にやりたい、やろうとしている、そして本体の経営に影響がないのに、 つまらないことが書いてあるからできないのだという事実がある所については、慎重に 検討してもらい、追加していけばいいのではないかという意味での、規制緩和の議論で いいのではないかと思うのです。 ○田中座長  気持の問題として、大いに規制緩和するべきだとの見解をそういう表現で言われたの だと思うのですが、実際にネガティブ・リストを作る作業は、制度設計上ほとんど不可 能に近い。何がネガティブで、ポジティブかに関する個別事例は1個1個審議していけ ば済みますが、事前のネガティブ・リスト整備は難しい。  それではさまざまなご意見を出していただきありがとうございました。いまの2つの 議題、医療法人の永続性・公益性、附帯業務規制の緩和については、皆さま方のご意見 を踏まえて、最終報告の取りまとめに向けた作業をさらに進めてまいりたいと思いま す。  もう1つは、前回の検討会で株式会社参入論をめぐってについて大変激しいご議論を いただきました。その中で本来この場で議論すべきテーマではなかったはずだというご 意見もありましたし、また実証研究を行って結論を出すべきというご意見もありまし た。株式会社参入の是非についても、全面的な参入から、少し実験したらどうかとか、 いろいろなご意見がありました。その際、何人かの委員のご意見を踏まえ、議論の整理 のために私が申し上げたのだと思いますが、医療の問題点のうち、株式会社が直せるも のは何か、株式会社だけが直せるものは何かという区別が必要です。単に株式会社は 「ノー」と拒絶するだけではなくて、そういう医療全体の中で、「株式会社だけが直せ る」ものは何か。あるいは株式会社も直せるけれども、医療法人の経営改革、あるいは 医療経営を近代化すれば直せるものは何か。何もこの哲学論争に入らなくてもいい部分 に関する整理が必要だと思い、事務局にお願いして一応の整理表を作りました。これを ご説明いただいた上で、また残りの時間で議論したいと思いますので、事務局よろしく お願いします。 ○中野指導課課長補佐  それでは、「株式会社をはじめとする民間経営方式の長所を取り入れた医療法人制度 の改善方策」という縦長の1枚紙です。表の左の欄、総合規制改革会議の答申、あるい は本検討会における議論を踏まえ、「株式会社の長所」と言われる事項をまとめまし た。一方でそれに対応する「医療法人制度における改善方策」、これは過去委員の先生 方や外部の有識者の方々がこの検討会等において提案された事項。資金調達の多様化か ら、特定医療法人の普及、企業会計原則の普及等々まで対応するものを書かせていただ いております。以上でございます。 ○田中座長  左側に株式会社が持っている利点が書かれていて、右側に同じことを医療法人制度に おける改善方策等で出来る項目を示した整理です。目をお通しの上、この問題について 改めてご意見をお願いいたします。 ○豊田委員  先ほど言いましたが、今日のテーマである永続性の問題については、制度の問題もあ りますが、税制の問題、資金調達の問題、こういったものが一体として関連しているわ けです。前回の資金調達の議論が、私としては足りなかったかなという感じがするので す。医業経営を考えるとすれば、例えばここに書かれている病院についての信用保証 や、病院債の研究・検討といったことも、もう少し議論を深める時間がほしいと考えま す。 ○田中座長  資金調達にかかわる技術的に大変専門性の深い分野について神学論争でなく、きちん と検討しなければ話が進まないということですね。 ○川原委員  私も豊田委員と全く同じ考え方です。民間企業がこのような状況にあることから、病 院に対して一時期から見ると経営の実務面で何にいちばん苦慮しているかと言うと、資 金調達です。銀行はある程度融資緩和はしているとは言うけれども、本音でお話を上層 部の方々としてみると、いろいろと難しい問題を抱えていることが分かります。病院経 営についてよくわからないといったことが異口同音に話されます。やはり恐ろしい、恐 ろしいというのは表現としては好ましい表現でないのかもわかりませんが、貸付けをし たとしても本当に回収されるといったことが、事業計画書や融資申込書から読み取れな いがために、不安感が今一つ拭い切れない。そのために、どうしても病院に対しては、 担保の差入れ条件を過重にしてしまう傾向にあると言うのです。経営内容より不動産担 保の差入れが重視され、過重になるということになると、いま不動産価値は目減りして いるので、病院の場合、建替資金も調達不能の状態に陥っているというのが、いまいち ばん憂慮すべき問題になっております。したがって病院経営の実態的な議論をする上に おいて、資金調達は避けて通れない大きな問題になっております。しっかりと議論をし た中で、将来の方向性を見い出して、それが実現できるような答申が出されればこれほ ど素晴らしいことはないのかなということで、むしろお願いということで発言させてい ただきました。 ○石井委員  できましたらひとつ小山先生に教えていただきたいのですが、PFIという事業方式 が公的な所であります。民間の医療法人で主に規模が大きくなっている病院が、資金の 問題を考えるときに、一般的に言うと、資金は2つあるのだろうと。運転資金と設備資 金と言われているものです。運転資金は、事業を行っていく上で必ず必要な資金なので す。資金として必要である。それがなければ事業そのものが回らない。給料が払えな い。売掛金は2カ月経たないと入ってこない。  それに対してもう1つの資金の設備資金は、医療法人と言うか、病院がほしいのは資 金なのではなくて、設備なのかなと思いまして、そうすると資金の調達をしたいという よりは、設備の調達をしたいのかなと考えました。従って、お金の借りやすさというこ とではなくて、設備の借りやすさみたいなものなのでしょうか。何となくPFIとはそ ういうこともあるのかということがあり、資金調達の多様化だけではなくて、きちんと した医療を行っていくための設備の調達というスタンスで少しものを考え直すことがで きないかと感じました。 ○小山委員  資金調達について、いつでも私は冷たいのですが、まず基本的に金融のプロである人 たちが、融資に踏ん切りがつかないものを、無理に踏ん切りをつけさせるというのは、 どういう手品があるのかということをまず考えなければいけない。この前言いましたよ うに、もしそれを公的にバックアップするというと、極めて公共性が高い病院があっ て、一生懸命やっているのだけれども建替えができないから、何かみんなで決めて、金 融のほうは踏ん切りできないけれども、あそこなら大丈夫だよと言ってあげるというだ けです。ほかのことは、格付け会社がどうのこうのとか、そんなことを言っても、格付 けできる人たちはほんの少しですし、病院の経営がわかっている人はほんの少しですか ら。私は金融のプロである人々が踏ん切りがつかないのなら、踏ん切りつけさせるとす れば、大丈夫と言ってあげると。もし大丈夫でなかった場合に、言った私の所に来て 「払って」と言われるだけですから、その担保がなければできないと単純に考えている わけです。  もう1つ、いま石井委員が言ったPFIというか、設備法人というのは、ここはすご く危ないのですが。危ない議論を少ししましょう。設備法人というのは、病院の建物が 全部リースでもいいということです。医療施設・設備法人みたいなMS法人とか、一時 流行り、いっぱいつくって、つくった人たちはほとんどが医療法人だったりするので す。これはいいわけです。土地に病院を建てて、それを病院に貸すというのはオーケー なのでしょう。そこは株式会社でもいいのです。MS法人は。だから石井先生、そのと おりです。だから株式会社にどんどん病院を建ててもらって、民間の医療法人に貸して もらえるような事業を促進すれば、この設備はいっぺんに話が終わります。それはもう PFIでも、そんなことを出さなくても。  やはりもう1つの資金調達としては、株式会社を組織して、設備法人を大々的に上場 などして、この地域に病院をつくります。建物も建ててさしあげます。あなたの所は、 もうへたへたになっているでしょうから、どうぞここに来て経営していいですよと。そ の代わり家賃はきちんと払ってくださいと。こういうことを促進するということもある かなと。ただあまり大きな声で言うと、また何でそれなら病院自身を株式会社にさせな いという議論になるのですが、形態としては、そういうことは実態としてあるわけで しょう。いまあるのですから、それはそれであまり大きな声で言わなくても、みんなが 知っていることだからいい。ただ問題は、ずっとやっていて、医療法人も可哀そうだと 私が思っているのは、何しろ自分たちの事業規模を大きくしていって、もう行くところ まで大きくしてしまうわけです。老朽化したそれを全部建て替えるというときに、建て 替えられないわけです。どうしてここまできてしまったのだろうと。先の見積りが間違 って大きくなりすぎてしまったわけです。ガリバーさんになってしまった。そこは多 分、大きくなってしまっているところに関しては、それなりに地域の医療ニーズがあっ たと考えるわけです。もしそうだとすると、何らかの、いまの話では金融のプロの人々 が、踏ん切りがつかないものに何らか大丈夫ですよと、厚生労働省が言うのでしょう か。それは誰も言えないと思うのですが。非常に難しいけれども、「そこを考えるな ら、そこを考えろ」という話にして、そこだけの委員会でもつくって、それこそ金融の プロと言うのですか、いろいろな人がいるようですから、そういう人たちだけ集めて、 可能性を考えてもらうという方向なのではないかと思います。 ○田中座長  数年前に比べると大変本音の議論だと思います。大石委員いかがですか。 ○大石委員  ある程度意見は出ているので、大して付け加えることはないのですが、多分金融のプ ロと言われる人たちが、踏ん切りがつかないというのを後押しする方法の中に、すごく 難しいこと、すごく簡単なことがあると思うのです。多分大変難しいこと、これからか なりいろいろ突っ込んで検討しなくてはいけない話を例えば、信用保証だとか、病院債 だとか、といういま新たな仕組みの話だと思うのです。ただその前にもっとやれること というのがあり、多分その2つ、両方やらないと最終的にこの問題は片付かないと思う ので、同時並行で進めるべきだと思うのですが、まずは少なくとも簡単なほうは明日か らでもできるので、やるべきだと思います。  これは何かと言うと、要は地域にとてもニーズがあって、地域的にとても必要なのだ けれども、どう考えても収益的に成り立たない。こういうような病院をどうするかとい う話を少し横に置いておいたとして、ある程度きちんとやれば収益的に何とかなって、 本当だったら貸せるのだけれども、貸せないような、要するに踏ん切りがつかない病院 に対してどう貸し付けるかという話で言うと、まずはとても簡単な話で言うと、先ほど 小山委員がおっしゃった少数しかいないのかもしれないのだが、何人かやはり病院の経 営がわかる人はいらっしゃるわけです。これは小山先生を含めて、病院側の人たち、も しくは病院とずっと一緒に仕事をしてきた人たちと、金融のプロの中にでも、その病院 をずっと見てきた少数の人たちというのはいるわけだと思うのです。その人たちがまず はいろいろな病院の情報、これは病カンケンだとか、医療事業団だとかにもたまってい ると思いますし、金融界でもそういう……情報というのはためていると思うのです。そ れをベンチマーキング的に使って、「ここは大丈夫ですよ」と保証することはできない です。それは確かにそれで倒れたら「あなたの所でお金払ってください」ということに なると思うのですが、でも比較的大丈夫な可能性はあるとか、それから大丈夫にするた めには、この3つをきちんとやってくれと。  例えばいま単純な話、紹介数が低くて、地域連携がきちんと取れていないから、そこ だけはきちんとやってくれと。病院に対してアクションを具体的に示せることというの をセットにして、金融業界に対してレコメンデーションを出すという、そういう方法を 是非できるだけ早くやるべきであると思います。  もう1つは、病院側から出た、お金を貸してくださいという事業計画をいろいろ見た ことがあるのですが、やはり事業計画の書き方が慣れていらっしゃらない。要するに20 年に一度しか発生しないから仕方がないのですが、とても慣れていないです。例えばこ ういう利益が出る、こういう収入になって、収入がこう増えますと。利益もきちんと出 ます。だから返済できますということは紙に書いてあるのですが、その根拠が全くない のです。よくあるのは、「ではこんなに患者さんは何で増えるのですかと」、「いや新 しい病院になって、きれいになるから」と。それだけで患者さんが来るのであれば、誰 も苦労はしないわけです。本当にきちんとした戦略を持って、ある種の事業、こういう 事業を新たにやるから、基本的には返せますという根拠を持った事業計画が書けるよう な、そういう教育と言ったら少し語弊があるかもしれませんが、そういう教育を病院の 方々にしていく方法というのが必要になってくると思います。以上この2つです。これ はもうすぐできるので、できるだけ早くやりはじめるのがいいのではないかと思いま す。 ○田中座長  ありがとうございます。 ○小山委員  この紙はよくまとまっていていいと思います。ただこのいちばん上の○1個以外は全 部やったらいいのではないですか。別にこれが全部であれば、資金調達の部分以外は ずっと議論したことだから、もうこれでいいわけです。いまの話ですが、融資を申し込 むときに、きちんとした資料ができないという医療法人が多いことは、事実なのです。 それは書いてくれるプロに頼まないから駄目なわけで、大体それでも正直言ってもう医 療法人の中にいる人たちだけがすべて意思決定しているとか、結局見よう見まねで事務 長さんが書いたもので通るような金融状況ではないわけです。ガチガチに組んだエビデ ンスのあるものを持っていかないかぎり駄目なのですから、もう医療コンサルタントと いうのが先生の所もいるのだから、こういう所を使って頑張りなさいと言えば、それで 後者のほうは終わりです。やはり緊張感が足りないと言うか、銀行に言えば金が出てく ると思っていたら、大間違いです。  資金調達面で何か公権力でマークを付けるというよりも、いま一部上場会社が何を やっているかと言うと、自分たちが本社ビルを持っているとすると、本社ビルの土地だ けとか、建物とか、建物も土地も一緒に債券化して売っているわけです。そこまでやっ ているときに、医療法人は持分の定めとか言って、私有財産を守って、次の建物を貸し てくれないと言っているわけでしょう。少し甘いのではないかという感じがするので す。ですからそこまで駄目になってしまって、もう下手くそに下手くそを重ねた人もい れば、成功に成功を重ねた人もいるのですが、資金調達について前半の話は賛成です。 ですから何らかの病院が、資金調達する場合に、何か特別に、こういう病院だったら、 みんなで助けてあげても大丈夫ですよみたいなマークを付けてくれる、何でもいいので すが、何か公権力がなければいけないかもしれませんが、それが1つです。  それからやはり、プロジェクトファイナンスとか、証券化とか小口化とかここに書い てありますが、証券化、小口化というのは、証券化できるものを持っている所です。な い所は証券化できないわけです。何もないわけですから。営業権を証券化するなど、そ んなことはなかなか難しいでしょうから。ですからある程度間接金融型調達手段につい ては、例示して、よくわかりませんが、総務課さんか、指導課さんがやるとすれば、社 会福祉医療事業団か何かに、もし駄目になったときにはこういうようにするとか、金融 のプロである人々が踏ん切りがつかない場合には、こういうように請求すると貸してく れるとかいうパンフレットを1万冊配るとか。そういう何も情報の手蔓がないというこ とがまずいので、ある程度病院経営が困ったときには、社会福祉医療事業団のネットか ら入っていくと、どこかに落ちていくとか、そういう何か話を、情報提供をしていく。 それから債券化、小口化についてもやりたいという人と病院との間を販路設計ができな い。少し特別な用語で言いましたが、要するに病院はお客さんだと思っている企業はた くさんいると思います。この間は全然販路がないわけです。つまりお見合いする機会が ないですから、そういうものを少し整備するとか、考えようによってはいくつかテーマ はあるように思うのです。そういうのは要らないのでしょうか。病院、医療法人を経営 している人から見て。 ○田中座長  逆の立場だと、気がついたら求めると思うのですが。 ○大石委員  私は基本的には小山委員の意見に賛成で、そのお見合い機関もあっていいと思いま す。言われたことに対して2つだけ。結構事業計画を書く人に、外注していること自体 が、実はとても問題で、多分ここにいらっしゃる方で、コンサルタントをやっている方 はそうではないと思いますが、世の中に結構事業計画を書くだけのコンサルタントとい うのはいるわけです。何が問題かと言うと、事業計画の中にいろいろなアクションが発 生します。要するにこういうことをやるから、きちんと収益事業になりますという、そ のアクションが病院の中で本当に実行されないと、結局そのお金は返ってこないわけで す。ですからそれは紙をどう書くかという話ではなくて、収益事業に結びつくようなア クティビティをどうやって病院の中で発生させるか。それがまとまったものが、事業計 画の紙なのです。ですから紙だけできても、裏にいろいろな改革だとか、いろいろな事 業がないと、それは結局本当に紙だけのものになってしまって、やはりそれは透けて見 えますので、病院の方々にお話を聞くと、それは単に書いたものだというのは透けて見 えるので、結局そこでポシャってしまうということはとてもたくさんあると思うので す。ですからそれは実態としての改革を病院の中で進め、事業というのを病院の中で進 め、それを紙に落として、かつある程度体裁の整った事業計画になるという、それを全 部病院の中でできるようなサポートをやるべきだと思います。  あとはおまけなのですが、この証券化、小口化に関してですが、確かに資産を持って いる病院のその資産を証券化するというのは1つの方法で、これはやるべきだと思うの ですが、もう1つあり得るのは、銀行にとっては、その病院の返ってくるかどうかわか らない貸付けという資産を自分の所でポートフォリオとして持っているのが結構危険で 嫌なのです。ですからそれをオフバランス化することが1つ大事で、これを小口化、要 するに銀行にたまっているいくつかの病院に対する貸付けというのを、これを小口化し て売る。これは結局ある種のマーケット……でできますので、小口でいろいろな人が買 えるという意味で言うと、株式会社と非常に近いメリットをもたらし、かつ銀行にとっ てはリスクが減る。そういう方法があると思うのです。これは別の、いままであまり出 てこなかった話だと思うのですが、少し別に研究してもいいかなとは思っています。 ○小山委員  いまの状況は、もう少し危機的な状況もあるわけで、債権回収機構に金融機関がボン ボン投げ込んでいるのですが、その中に医療法人がいくつかあるのは事実らしいので す。私はそれしかわかりません。しかし医療法人が債権回収機構に投げられた後、死な なくてもいい医療法人を助けるレスキュー隊がいない。ですからそれを厚生労働省につ くれということではないですが、本当にそれは大事だと。それから隣りに川原委員がい ますが、医療コンサルタント協会というのがあるわけでしょう。もう少し頑張って、何 か理念だけ書いて、やらない者がいると言うけれども、私はそんなことはないと思いま す。例えば、差し支えない程度に脚色をして、脚色していいから助けた事例報告とか、 何かそういうものを少しやってもらえたらいいのではないですか。 ○川原委員  いま大石委員と小山委員からコンサルタント協会についてご意見を賜りました。拝聴 させていただきました。明日、常務理事会がございますので、早速常務理事会の席で今 回いただきましたご意見を開陳し、より以上に貢献をするように精励、努力いたしま す。  と同時に先ほどお2人の意見を伺っておりました。それぞれのご意見はごもっともで ございます。ただ口で言うのは優しいけれども、実際にこれを実施に移すときに、どう なのかという私なりの疑念を感じながら聞いていた箇所があるのは事実です。いわゆる 理論的にはそれは成り立つかもわからないけれども、最終的には病院経営者の考え方、 スタンスの問題もあるでしょう。それから私どもコンサルタントとしての、コンサルの 質の向上ということも確かに求められていると思います。とは言っても相手である金融 機関、その他関連の方々から、実際に実行に移すだけのご理解とご協力を仰ぐことがで きるのかどうか。  端的な言い方をした場合、先ほどの債券の小口化というお話がございましたが、では 小口化の仕分けなり評価というものは、どこがするのか。金融機関がもしもそれができ るとすれば、最初から金融機関がかなりの程度医療界のことは理解した上で、病院に対 して融資支援の手を差し延べられていると思うのです。しかし金融機関が、医療業につ いてよくわからないという状態にあるので、金融機関等に、分析等々の評価も含めて、 できるようになっていただくためには、金融機関の側にもかなりの勉強をしてもらわな いといけないでしょう。いろいろなハードルを除去するためにも、大変な時間がかか り、大変なエネルギーも費やすかもわかりません。しかし最大限の努力を続けていかな ければなりません。本当の意味で21世紀の医療業というものが、安定した形で国民の付 託に応え得るサービスを提供していくということになると、この根っこの部分を解決し なければなりませんから。  資金調達問題について30分だとか1時間かけて、論議し尽すということは絶対無理だ と思うのです。したがってむしろ答申の中で、今後そういうような研究会を厚生労働省 なり然るべき所でつくって発足させ、その中で専門家も交えた形での議論を重ねなが ら、方向性を見い出し、また関連機関に対して協力を呼び掛けながら、医療界の健全発 展に資していくのがベストではないかと私は思っているのです。 ○津久江委員  関連ですが、石井先生が詳しいと思いますが、資金調達の多様化の真ん中ぐらいに、 「銀行が融資しやすい経営、情報開示のため」という、病院会計準則の見直しがいま行 われていますが、これが完成すれば非常に透明性が、わかりやすくなると思います。 我々にとって非常に厳しいものが出てくるのではないかと思うのですが、この辺の説明 をお願いしたいです。  それからもう1つ、病院債ということがありますので、これはやはり1つの病院とし て検討するのではなくて、グループとして、あるいは会としてとか、協会としてとか、 そういう意味での病院債というのは必要となり、いまから検討していかないといけない のではないかと私は思っております。 ○石井委員  病院会計準則の研究事業を昨年7月以降やっておりまして、会としてはもう10回以上 の開催を重ねております。最終的には、5月の連休明けぐらいに、現在研究事業として 主任研究者をやられている慶應の会田先生から論文が出るという形になっておりますの で、もう少しお待ちいただくということです。実は大変難しい議論がたくさん出ており ますので、なかなか主任研究者である会田先生の最終的な整理がつかないというのが、 現実でございます。特に公的医療機関との比較可能性の問題もございますし、こういう 形での活用ということも出てきますと、いままでほとんど経営の開示ということの意識 をしていなかった病院というものが、言ってみればかなりアレルギーを起こすかもしれ ないし、ショックを起こすかもしれないということもあり、縷々現在検討しております ので、もう少しお待ちいただきたい。  次に私の個人的見解ですが、事務局に作成していただきましたメモで私自身が申し上 げてきたことの1つが、織り込まれているような気がいたしますので、大変嬉しく思っ ております。3つ目の「「運営ガバナンス云々」という辺りで、行数としては、ここが 12行を使っておりいちばん多いのですが、「効率的、あるいは合理的経営の推進のため の経営管理機能の強化」ということのが書いてあります。是非ともその強化を具体的に 推進、普及するための方策というのを、具体的にきちっと出していただきたいと思いま す。抽象的にこれはみなそのとおりですが、それを民間の医療法人なり、あるいは病院 というものに普及する具体的なテクニックとか、実務的な手法も含めたところできちっ と提案をしていただきたいと思っております。以上です。 ○田中座長  ありがとうございます。ほかに最終報告に向けて、この点、「株式会社をはじめとす る民間経営方式の長所」、こんな項目は書いておいたほうがいいということがありまし たらどうぞ。 ○西島委員  第10回で、社会福祉医療事業団のご説明がありました。いま資料で確認しました。や はりもう一度この社会福祉医療事業団の融資の在り方というのを、ここできちんと議論 をしたほうがいいと思うのです。非常に借りにくい状況だとか、いろいろなことが言わ れます。ところが社会福祉医療事業団がいちばん政府系の金融融資をしている所では、 データ的にはいちばん優良なのです。ですからこれはほかの所はほとんどもう不良化し ているわけで、やはり先ほどから公益性云々という中で、やはりこの事業団の役割は非 常に大きいだろうと思うのです。その辺りはもう一度きちんと検討する必要性があると いう気がするのです。 ○田中座長  今度10月に社会福祉医療事業団の組織形態が変わるわけです。それに備えて在り方を きちんと議論する。 ○小山委員  それに関連するのですが、いま津久江先生がおっしゃったのですが、どちらかと言う といま民営化みたいなことで病院の資金調達について、厚生労働省の医政局の総務課さ んとか、指導課さんにまたものを頼むというのもあるのですが、4つの病院団体と日本 医師会の先生と代表でいらして、歯科医師会の先生もいらして、自分たちで少し何か やったらどうですかということを、私は強くお勧めいたします。アメリカの病院団体を 見ると、各病院団体が資金調達は命懸けでやっているわけです。ですから例えば考え方 としては、津久江先生の所属の日本精神病院協会は、ファイナンスの資金調達の委員会 を持っていて、例えばここは駄目だけれど、日本精神病院協会としては、推薦できるほ どの質がいいと、そういう添書は出しますとか、それを独立行政法人の社会福祉医療事 業団が見たら、ポイントを上げて融資してあげるとか、独立行政法人になるのだから、 何か別の、市中金融機関がオーケーですよというものだけきて、オーケーの判を押して いるから、絶対間違いないです。社会福祉医療事業団のいまの形態は。ですからそうい う意味では、病院団体から、医療法人協会でもいいですし、日本病院協会でもいいし、 全日病さんでもいいのですが、日本医師会でもいいのですが、ここはやはり地域医療と して助けてもらわなければ困るし、いいことをやっているのだという、きちんと何か出 せるだけの何でもいいですが、アセスメントでもいいですが、何かそういうものがやは り出していかないと、この話はおさまらないと思うのです。医師会でもいいし、何でも いいと思うのです。しかし大体どうにもならない案件というのは、何をしているかわか らない、誰が経営しているかわからない。何をやっているかわからないという病院を、 それが医療法人だとすれば助けるのは、もう至難の業。むしろそういうのは助けなくて もいいのではないか。ですからそういう意味では、みんなで相互に何か評価していくシ ステムとか、自ら評価を受けていくシステムとか、それを資金調達に活かされていくと いうことが、とても重要だと思うのです。  やはりアメリカなどの病院が、マルコム・ボルドリッジ国家賞に挑戦したりしている のですが、何のためにしているかと言うと、はっきり書いてあるのです。インターネッ トで見てもらうとわかりますが、「賞を受賞した。これで資金調達は有利だ」とか書い てあるのです。ですからやはりそういう感覚というのは、少し医療法人と言うか、病院 経営全体で持っていただけるようなことを推奨するのは、厚生労働省だと思います。す べて全部の債券小口化に関する手法を、厚生労働省で研究しろといっても、そんな人、 専門家がいないです。ですからそれはできることと、できないことを少し最終報告では 分けていただき、どこに何を頼むか。病院団体にもそういうことをするし、金融機関に もお願いするし、コンサルタント協会にもお願いするというような書き方、そういう考 え方のほうがいいと私は思います。 ○田中座長  どうもありがとうございました。要するに、自分でガバナンスの責任を取らず、経営 はあまり考えないでいながら、医療は公共性があるから工夫しないでも経営できるよう にしたいなどの希望はいまの世の中では通らない。ガバナンスをきちんとして経営して いるから、回りも助けてくれる。それが基礎にないといけないということですね。 ○大石委員  参考になるかわからないのですが、名前はどこか言えないのですが、ある地域の病院 のグループ、同一法人ではなくて、ある地域にたまたまある病院の群団から、私どもが お付き合いをしている銀行さんにお話があって、要は、そこがやりたいのは、その病院 群団として、やはりファイナンスを有利にするために、まず勉強会をやる。それから経 営情報の開示をする。経営情報は先ほど出た病院会計準則だけではなくて、例えばMR Iを入れたら、それは何回転しているかという、いろいろな生産性情報、そういう情報 の開示をする。それからファイナンスを有利にするためにいろいろ地域の金融機関を紹 介してもらい、お付き合いをする。すると最終的にはお互いに信用保証をしあおうでは ないか、というそういう話までしているのです。ですからこの話はもうしばらくしたら もう少しオープンに出ると思うのですが、そういうことを先進的に取り組んでいる地域 などもあります。そういう所を参考事例にしながら進めていかれてはどうかと思いま す。 ○田中座長  ありがとうございます。民間経営方式を医療界もこれだけ取り入れて頑張っている。 あるいは頑張らなくてはならないと報告書にはきちんと入れたほうがいいと思います。 それから一方で公益性をどのように担保するか。それによって新しい制度提案なり、既 存の制度改革を世の中に訴えることができるか。公益性の話と、先ほどの相続税的な意 味の一族の財産の話は別である。それらも整理できてきたのではないかと思います。ほ かに何かよろしいですか。期限が迫ってきて、大変事務局はご苦労なのですが、本日の 議論はこのくらいにいたしまして、今後の日程等について事務局から説明をお願いいた します。 ○渡延指導課長  次回は2月28日(金)、10時30分から開催することといたします。この2回の論点整 理でのご意見、ご議論等を踏まえ、事務局から最終報告案をご提示させていただく予定 しております。具体的な開催案内については、場所が決まり次第正式に文書で差し上げ るようにいたします。以上でございます。 ○田中座長  ただいま事務局から説明があったとおり、次回は最終報告案をご議論いただきたいと 思います。大変短い期間で事務局はご苦労ですが、私ももちろん関与いたしますが、よ ろしくお願いいたします。今日は大変いい議論をいただいたと私は思いますので、感謝 いたします。本日はこれにて閉会いたします。お忙しいところご出席いただきましてあ りがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 橋本 昌男(内線2560) 医療法人係長  手島 一嘉(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194