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多様な働き方に対応できる中立的な年金制度を目指して

― 雇用と年金に関する研究会報告案(概要) ―


 近年、就労形態の多様化等が進む中で、個人の働き方の選択に対して、より中立的な年金制度とすることが求められている。
 また、中立的な制度を目指すことが、被用者の年金保障の充実に結び付くとともに、年金制度の支え手を増やす取組みにも資するものである。


最近における雇用の動向と年金制度

 短時間労働など、厚生年金が適用されない形での多様な働き方が増加する中で、雇用者全体に占める厚生年金被保険者の割合も減少。

 また、厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられる中で、60歳台前半の雇用の確保が重要な課題。わが国経済社会を活力あるものとする上で、働く意欲のある高齢者等がその能力を発揮することが必要。

 このような動向を踏まえれば、短時間労働など多様な働き方に対応できる中立的な年金制度を目指すことが重要。また、60歳台前半の在職老齢年金について見直しの検討が必要。


短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大

 現行の厚生年金は、適用事業所に使用される70歳未満の者のうち、常用的な雇用関係にあって「1日又は週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が通常の就労者の4分の3以上である者」が適用の対象。

 就労形態の多様化等に対応し、被用者としての年金保障の充実等を図る観点から、短時間労働者に厚生年金の適用を拡大する方向が必要(例えば「週の所定労働時間が20時間以上の者」等を基本とした方向が考えられる)。

 今後、平成16年度の年金制度改正に向けて、制度運用上の課題等にも留意しつつ、具体的な制度設計の検討が進められることを期待。
 その際には、短時間労働者に対する年金給付と負担のバランス、第3号被保険者制度との関係、医療保険制度との均衡等にも留意が必要。


在職老齢年金制度の見直し等

 60歳台前半の在職老齢年金制度(年金や賃金に応じて、年金の一部を支給停止する仕組み)を前提として、賃金や労働時間を調整する企業も見られ、高齢者の就労に対する影響が指摘されているところ。

 就労に対する中立性を高める観点から、次の検討方向が考えられる。
(1)  在職老齢年金を、65歳以降に繰り下げて受給できる仕組を検討する方向
(2)  現行の在職老齢年金制度の仕組みの改善を検討する方向

 上記(1)の検討方向は、65歳以降に受給できる年金をどの程度増額するかなど、具体的な制度設計の検討を踏まえ、適否を見極めることが必要。
 また、上記(2)の検討方向は、支給開始年齢の段階的引上げや、短時間労働者への適用拡大による影響も踏まえ、制度を複雑にしない形での見直しを検討することが必要。


派遣労働者の取扱い及び失業への対応

 登録型派遣に係る「待機期間(次の就労までの期間)」が1か月を超える場合や、失業期間については、現行制度では国民年金が適用。また、失業期間中は申請による保険料免除も可能。

 これらの期間について、厚生年金に任意で継続加入できる仕組みを導入するという議論については、対象者の認定や保険料負担などの問題もあり、今後の検討課題。

 本研究会が目指した「多様な働き方に対応できる中立的な年金制度」は、近年の雇用労働施策の方向性とも合致し、その重要な条件整備の一つ。多様な働き方に応じた公正な処遇の実現に向けた取組や、高齢者雇用の推進など、雇用と年金が一体となった対応を進めることが重要。
 年金制度のあり方としても、個人の選択に中立的な制度とする必要性が各方面から指摘。平成16年の年金制度改正をはじめ、雇用と年金をめぐる各般の施策において、本研究会の議論が活かされることを期待。


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