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(別添1)


厚生年金の適用を短時間労働者に拡大する場合の対象者数の推計


1.推計の基礎となる統計

 公的年金の適用関係に関する基礎的統計としては、3年に1度実施されている公的年金加入状況等調査(社会保険庁)を用いることが適当と考えられるが、平成13年10月に実施された最新の調査は現在まだ集計中であるため、当面、平成10年10月に実施された前回調査の調査結果を基礎として、毎月勤労統計調査の結果を用いて平成10年から平成13年までの間のパートタイム労働者の増を反映する補正を行い、適用拡大の対象となる短時間労働者の母数の推計を行うこととする。

 短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大にあたっては、所定労働時間及び賃金の両面から基準を設けるという提案があることから、平成13年パートタイム労働者総合実態調査(厚生労働省)におけるパートの所定労働時間・賃金階級別分布(特別集計結果)に基づいて基準の設定に応じた適用割合を推計し、その割合を上記の母数に乗じることにより、適用拡大対象者数を推計することとする。

 なお、この推計は、「雇用と年金に関する研究会」における検討の参考とするために、現時点において利用可能な統計を用いて暫定的に行ったものであり、平成13年公的年金加入状況等調査の結果がまとまった時点において、当該調査結果を踏まえ所要の改定がなされるべきものである。


2.適用拡大対象者数の推計

 平成10年公的年金加入状況等調査によれば、就業形態がパートである者は、全年齢(20歳未満及び60歳以上を含む)で5,888千人となっている。
この調査における「パート」は、所定労働時間又は日数が一般社員の4分の3未満であること以外は厚生年金の適用要件を満たしている者という条件で区分されているが、厚生年金が適用されない規模5人未満の個人事業所等に勤務する者も含まれているため、これを除く必要がある。

 上記5,888千人から勤務先の経営規模不詳の886千人を除いた5,002千人のうち、規模5人未満個人事業所に勤務する者は858千人で17.2%、規模5人以上個人事業所に勤務する者は1,054千人で21.1%にあたる。一方、同調査における「パート」全体において適用外業種に勤務する者の割合は、上記5,888千人から勤務先の業種不詳の284千人を除いた5,604千人に対する「農林水産業」、「飲食店」、「旅館・理美容・娯楽等」、「その他サービス業」の4業種の合計2,236千人の比率として39.9%と推定されることから、適用対象事業所に勤務する者の割合は、
 100% - 17.2% - 21.1%×0.399 = 74.4%
と推定される。

 5,888千人に74.4%を乗じることにより、平成10年10月時点における適用拡大対象者の母数は、
 5,888千人 × 0.744 = 4,381千人
と推計される。

 近年、短時間労働者は急激に増大する傾向にあるため、適用拡大の検討にあたっては、その傾向を反映したより直近の数字を基礎とする必要がある。毎月勤労統計調査(厚生労働省)における、常用労働者規模5人以上事業所の常用雇用指数(平成12年=100)をみると、

  平成10年    平成13年
一般労働者 102.1    98.9
パートタイム労働者 93.7    103.6

となっており、当面、平成10年の公的年金加入状況等調査を基礎としつつ、最近の動向を反映するために、パートタイム労働者に係る指数の比を乗じて、平成13年ベースの適用拡大対象者の母数は、

 4,381千人 × 103.6 / 93.7 = 4,844千人
と推計される。

 平成13年パートタイム労働者総合実態調査において、常用労働者規模5人以上事業所に勤務するパートタイム労働者(定義は、「所定労働時間が正社員よりも短い労働者」)のうち、週所定労働時間が30時間未満の者について、週所定労働時間・前年年収階級別の分布をみると、次の表のとおりである。なお、前年の年収はパートタイム労働者としての税込み収入(複数の会社で働いた場合は合計)を調査したものである。


パートの週所定労働時間階級・年収階級別分布

(単位:%)
前年の年収 週所定労働時間
20時間未満 20時間以上
25時間未満
25時間以上
30時間未満
万円以上  万円未満        
      〜 65 18.3 8.6 4.1 31.0
   65 〜103 13.0 20.3 15.5 48.7
  103 〜130 1.7 3.1 3.7 8.5
  130 〜 4.2 4.0 3.7 11.8
37.1 36.0 27.0 100.0
(注)
 パートタイム労働者総合実態調査(平成13年10月、厚生労働省)におけるパートタイム労働者のうち週所定労働時間30時間未満の者(週所定労働時間または前年の年収が不詳の者を除く)に係る分布である。

 公的年金加入状況等調査では、パートの定義を「所定労働時間または日数が一般社員の4分の3未満である」こととしており、パートタイム労働者総合実態調査においては、週所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者が、ほぼこの定義に見合う集団であると考えられる。
 したがって、仮に、パートタイム労働者のうち、週所定労働時間20時間以上または年収65万円以上の者に厚生年金の適用を拡大するとした場合における、適用拡大対象者数の推計値は、公的年金加入状況等調査から推計された母数にパートタイム労働者総合実態調査から推計される適用対象割合を乗じることにより、
 
20時間以上分 4,844千人 × 62.9%  =  305万人
20時間未満かつ 4,844千人 × 18.8%  =  91万人
年収65万円以上分      
合計     396万人
と推計される。
 週所定労働時間と年収に基づく適用基準を変えた場合の適用対象者数についても、同様にして推計することが可能である。



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