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「雇用と年金に関する研究会」におけるこれまでの主な議論等について


検討項目 論点 委員意見
1. 短時間労働者への適用拡大
就労形態の多様化や年金保障の充実、支え手を増やす等の観点から、短時間労働者への年金制度の適用を拡大することについて、どのように考えるか。
短時間労働者への年金適用の問題は、年金制度ができるだけ個人の就業行動や企業の雇用行動に中立的であるべきという意味で、是非進めるべき論点。

現在の短時間労働者を前提とすれば、(これらの者が増えれば)不安定就労者が増え、労働市場の2極化を生む。
今後は、ライフスタイルに合わせて労働時間や働き方が選べ、年金制度の支え手となり得る社会を目指すべきであり、そのための制度改革を考える必要がある。

短時間労働者の適用拡大については、女性や高齢者に限定せず若年層も視野に入れておくことが必要。
例えば「週所定労働時間20時間以上、又は年収65万円以上」という基準で適用対象とすることについて、どのように考えるか。
新しい適用基準は、2分の1といった分数による基準ではなく、20時間といった時間による基準ではっきりとさせた方が理解しやすいのではないか。

今後の新しい働き方として、短日数勤務(例:週3日、1日6時間)といった勤務形態が考えられる。
こうした勤務形態ならば、週所定労働時間を20時間未満に抑え、年収を100万円前後にすることは容易であることを考えれば、収入要件は必要ではないか。

収入要件の導入は賛成。65万円基準を設ける場合には、標準報酬月額の下限をそれにあわせることが必要ではないか。

現行の3/4基準は勤務日数と時間で判断するので、雇用した時点での労働条件(所定労働時間)で被保険者資格の有無を判断できる。収入要件を導入する場合、事後的に収入が超えた場合など技術的な取扱いが問題。

収入要件を設ける場合、第3号被保険者との関係をどうするかが問題。その取扱いによって、基準自体(65万円)が変わってくるのではないか。
短時間労働者に適用を拡大する場合の社会・経済的意義、企業・労働者側への影響をどのように評価するか。
経済状況が非常に厳しい中で、短時間労働者へ適用を拡大することについて、企業側に説明できる考え方が必要。

業種によって、短時間労働者の比率が大きく異なり、保険料負担に差が生じている。産業間のリソースアロケーション(人的資源の組み合わせ)という観点からも、現行のままでは問題が生じているのではないか。

企業にとって、(短時間労働者に)どのような就労形態で働いてもらうのかを考える際に、年金制度が中立的であることが必要ではないか。
短時間労働者に適用を拡大する場合、新たな就業調整(或いは適用回避)が生じる可能性について、どのように考えるか。
現在様々な就業形態があるが、どのような就業形態が厚生年金の適用となり、どのような場合が非適用になるのか整理が必要。その上で、適用回避が生じる可能性について幅広く検討するべきではないか。

適用を回避するため、反復継続しないで短期雇用する手法を採る企業もあり得る。適用拡大する場合には、実施状況を踏まえ短期雇用に係る適用除外規定自体を検討する必要があるのではないか。

短時間労働者に適用拡大すれば、業務の外部委託が増えるなど、エスケープする行動は必ず想定しなければならない。こうした適用回避に係る論点も検討すべき課題。

非常に経済が厳しい中、正社員から(適用除外となる)非正社員へ代替する企業はますます増える状況にあるので、短時間労 働者への適用基準は慎重に考えていく必要がある。
短時間労働者に適用を拡大する場合、年金制度に限った検討だけではなく医療保険制度も視野に入れて検討すべきではないか。
年金制度の適用基準を変える場合、医療保険制度もリンクさせていくことになるのではないか。
事業主が適用回避を行う場合、短時間労働者が夫の医療保険の被扶養配偶者となることが大きく影響しているので、この点も視野に入れておく必要がある。

厚生年金の適用基準と医療保険の適用基準を同じにする前提で考えるのかどうかで、本研究会における今後の議論はかなり異なってくるのではないか。

企業ヒアリング調査の結果は、年金制度における短時間労働者の適用拡大を想定して企業にアプローチしたもの。医療保険制度も踏まえたアプローチをしていれば、企業の回答も異なる結果となったのではないか。
2. 在職老齢年金制度の見直し
高齢者の就労に対して、可能な限り中立な仕組みとする観点から、60歳前半層に対する年金給付のあり方をどのように見直すべきか。

在職老齢年金制度の見直しにあたっては、就業促進的というよりも、個人の就業選択に対して中立的な年金制度にすることが基本ではないか。

経済学的には個人の就業行動は所得と余暇との選択となる。事務局の資料は、就業の選択を所得面だけで見ているので、誤解のないような説明の工夫が必要ではないか。

支給開始年齢が65歳に引き上がる2025年までに、65歳未満の者が年齢を理由に引退することが無いようなルールを創ることが、年金政策と雇用政策の整合性を保つための唯一の方法ではないか。
在職老齢年金の「繰下げ受給」という仕組みを導入することについて、どのように考えるか。
在職老齢年金の繰下げ受給案は、就業に中立的な制度が前面に出ており評価する。
繰下げ受給案は、合理的な仕組みであり支持したい。
現行の在職老齢年金制度を見直すより、繰下げ受給のアイディアの方がクリアでよい。
繰下げ受給案は非常に魅力的。制度としてシンプルであることが重要であり、繰下げ受給の年金額についてはその透明性・確実性が求められる。

繰下げ受給の制度を導入した場合、個人が自ら引退する年齢を自由に設定することが可能となる。その際、個人の選択した年齢まで企業サイドが雇い続けることができるかが問題。

企業のニーズと個人のニーズが合う場合には、企業が設定した引退年齢を超えて就業機会を提供することはあり得るが、希望者全員に対し就業機会を提供することにはならない。
基礎年金の例をとっても、「損をしてでも早く受給したい」という意識が働き、繰上げ支給の老齢基礎年金を選ぶ者が見受けられる。繰下げ受給を選択させるには、何らかの工夫が必要となるのではないか。

繰下げ受給の議論は、抽象(概念)論としては、これまでの議論のとおり支持すべきものと考えるが、具体的にどう制度を仕組むかによって大分議論が違ってくるのではないか。

最も重要なのは、繰下げに係る増額率をどう設定するかという点である。増額率の決定に際しては、そのときの金利や、本人の考えている期待インフレ率、個々人が65歳以上の生存確率をどのように考えるかが要因となる。

繰下げ支給額を65歳から均等に支給する方式、或いは65歳時に多く支給し段階的に減らす方式、或いは65歳時点で確定的に一括した金額を支給するような方式であれば、受給者本人もある程度納得して働くのではないか。
現行の在職老齢年金制度を改善することについて、どのように考えるか。

(例えば、(1)現在の一律2割カット方式の廃止、(2)2対1調整の緩和(例:3対1調整へ)、(3)2対1調整開始点(22万円ライン)の引上げ(例:25万円ラインへ)について、どのように考えるか)

(今後、支給開始年齢引上げにより、比較的低額の年金を受給する60歳台前半層が出てくることや、短時間労働者への適用拡大の影響等をどのように評価すべきか)。

現行の在職老齢年金制度を見直す場合には、どのような対応をしても問題が残るのではないか。

現行の在職老齢年金制度の見直しは、就業への影響を緩和するといった面では確かに効果はあると思うが、制度がより複雑になるという問題がある。

60歳台前半層の家計を考える場合、年金と賃金だけではなく、例えば所得税や住民 税、高年齢雇用継続給付を踏まえた、全体として議論されるべきではないか。
3. 派遣労働者の取扱い、増加する失業への対応
いわゆる登録型派遣労働にかかる「待機期間」の取扱いを、どのように考えるか。

(例えば「待機期間」であっても、任意で継続加入できる仕組みを導入することについて、どのように考えるか。)

派遣労働者への年金適用の問題は、年金制度ができるだけ個人の就業行動や企業の雇用行動に中立的であるべきという意味で、是非進めるべき論点。

次の派遣先事業所が決まっていない派遣労働者には任意加入を認め、求職中の失業者には任意加入を認めないのは、制度としての整合性がとれていないのではないか。
派遣労働者への対応と失業者への対応は、バランスを考慮して、同じ枠組みで検討すべきではないか。
失業者への対応が困難である以上、両者のバランスを考えれば、派遣労働者の取扱いは現行のままで十分ではないか。

派遣労働者や失業者に対する年金適用の問題を議論する理由として、「厚生年金から国民年金の移行に伴う手続が煩雑であり、加入漏れが生じている」ことを掲げるのは、必ずしも適当ではないのではないか。
増加する失業に対して、年金制度としての対応をどのように考えるか。

(例えば、(1)失業期間が年金算定上不利とならないような制度設計、(2)失業期間中の保険料免除、(3)失業給付への保険料賦課、(4)失業期間中の任意加入といった論点について、どのように考えるのか。)

任意加入の範囲は、あまり拡げるべきものではない。失業者のように対象者数が多い部分に、任意加入制度を導入することが次期改正の主要な論点とするのはおかしい。

失業者は一定の失業期間の後に再び職に就くという前提で議論がされているが、再就職せずに非労働化する者の扱いをどうするのかという問題が残されている。

厚生年金の被保険者であった者が離職失業した場合、任意加入できる制度とするのであれば、「失業給付を受けている者」を対象とする等、対象者を限定をしなければ失業者の認定が難しいのではないか。
また、上記のように離職失業者だけに任意加入を認め、非労働化した者は対象としないのであれば、それに対し何か理屈が必要ではないか。

仮に、失業期間中も強制加入する仕組みを導入するとすれば、失業と非労働力化との境界をどのように限定するのかが大きな問題。社会的な合意ができる形で条件を限定しないと、年金財政に与える影響も大きいのではないか。

失業期間中も任意加入が可能な制度とすれば、「早く就労したい」と考える者が希望するのではないか。むしろ、任意加入という手法を選択する理由をしっかりと考えることが必要。

短時間労働者や派遣労働者の問題と、失業への対応の問題とは、これまでの議論の経緯を見ても、同じようなウエイトで取り扱うべき問題なのか疑問。

失業者の保険料負担を考える場合、育児休業中の保険料免除とのバランスを政策的にどう考えるのか議論が必要。

失業期間中の任意加入については、事業主負担分を国が負担するアイディアも考えられるのではないか。

任意で加入する者に係る事業主負担分を、国庫が負担するという議論は、理論的に成り立つのかどうか疑問。
4. そのほか雇用と年金についての全般的な議論
 
雇用と年金の問題については、できるだけ関連する制度全体を視野に入れて議論しないと、政策判断を間違えることになりかねない。

社会全体として支え手を増やすという意味では、雇用者に限定せず、就業者全体を視野に入れて就業政策と年金制度との兼ね合いを考える必要があるのではないか。

支え手を増やす取組みを進める場合、時間のずれを伴い(増えた支え手に対する)給付も生じるため、給付面の影響も考慮した制度設計の議論が必要。

支え手を増やすということだけではなく、多様な形態で就労する労働者の年金権を確保すること、年金へのカバレッジという点を強調するべき。

現在の雇用法制や社会保険制度は、基本的に常用フルタイム労働者を前提として制度が創られている。
多様化した就労の形態に合わせて、年金制度を抜本的に変えるという視点もあって良いのではないか。
従来型の制度のカバレッジを拡げようとするのであれば、そうした考え方が正当化される十分な理由が必要。

非典型雇用が増大した大きな要因は、正社員と非正社員の人件費負担の差にあるが、そのような格差をいかになくせるかが「多様就労型」に移行できるかどうかの鍵である。

多様就労型ワークシェアリングは、短期的には調整コスト等の問題が生ずるが、制度が整えば、生産性を上げ労働時間が短くなるなど、良い転機となるのではないか。


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