戻る

第14回 社会保障審議会年金資金運用分科会

議事録(案)



平成15年1月29日


第14回 社会保障審議会 年金資金運用分科会議事録(案)

日時: 平成15年1月29日(水)16:00〜18:00
場所: 厚生労働省 省議室(9階)
出席委員: 若杉分科会長、大和委員、小島委員、高梨委員、竹内委員、福井委員、吉冨委員、吉原委員、米澤委員
議事  
  (1)年金積立金の運用の在り方についての検討
(2)その他

○ 泉運用指導課長
 それでは、ただいまより、第14回社会保障審議会年金資金運用分科会を開会いたします。
 まず資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
 資料1といたしまして、山口様提出の資料、それから、追加資料を、お手元に別にもう一枚お配りさせていただいております。よろしいでしょうか。
 なお、前回の議事録につきましては、作成でき次第、分科会の方にお諮りさせていただきたいと思いますので、御了承いただければと思います。また、前回までの配布資料をファイルにまとめて机の上に置かせていただいておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
 委員の出欠の状況でございますが、本日は、内海委員及び杉田委員につきましては、ご都合によりご欠席とご連絡をいただいております。また、竹内委員からは、少し遅れるというご連絡をいただいております。ご出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立いたしておりますことをご報告申し上げます。
 では、以後の進行につきましては、若杉分科会長にお願いいたします。

○ 若杉分科会長
 皆さん、こんにちは。本日はお忙しい中、お集まりいただき大変ありがとうございます。
 本日は、「年金積立金の運用の在り方について」、第6回の検討を行います。「年金積立金の運用の在り方について」は、当分科会において、10月初めより5回にわたり、精力的な検討を行ってまいりました。
 先週開催しました第5回の分科会におきましては、ゲスト・スピーカーをお招きし、モデルを使用した株式市場の期待リターンの推計の説明を受けた後に、委員の皆様から活発なご議論をいただきました。
 本日の進め方としては、まず、お招きしましたゲスト・スピーカーよりご説明をいただき、その後、質疑を含め、論点についてさらに掘り下げた議論を行いたいと思います。
 まず、ゲスト・スピーカーについて、事務局より紹介をお願いいたします。

○ 泉運用指導課長
 では、山口勝業様をご紹介させていただきます。山口様はイボットソン・アソシエイツ・ジャパン代表取締役社長でございます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、早速、ただいま紹介していただきましたゲスト・スピーカーの山口様より、米国における株式リスク・プレミアムをめぐる論争など、株式のリスク・プレミアムに関する議論についてご紹介をお願いいたします。それでは山口様お願いします。

○ 山口氏
 ただいまご紹介にあずかりました山口でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、こちらの分科会から、最近のリスクプレミアム論争をめぐる論点を整理して欲しいというようなご依頼がございまして、私なりに整理を試みまして、日本市場において意味するところ、考えを述べたいと思います。
 まず、議論の焦点になっております株式リスク・プレミアムという概念でございますけれども、2ページ目をお開けいただきまして、恐らく現代ファイナンス理論の中で最も重要なコンセプトであろうかと思われます。これは何が重要かというと、実務的にもそれが使われることが多いようですし、あるいは理論的な論争にもなりやすい。そもそも株式リスク・プレミアムとは、ここにいらっしゃる先生方は皆さん釈迦に説法だと思いますけれども、議論を整理するために、コンセプトというか概念につきまして申し上げますと、安全資産を上回る追加的なリスクを負担する投資家が、そのリスクに対して見合うリターンを要求する。要するに安全資産をどのぐらい上回ったリターンをほしいかという要求収益率のことをリスク・プレミアムと言っております。
 これは何も株式に限ったことではなくて、一般にリスク・プレミアムといった場合に、例えば社債の利回りの方が国債より高い。イールドのスプレッド、利回りの格差の部分というのは社債の方がリスクが高い。デフォルトするリスクがあり得べしということで、投資家は高い利回りを要求するわけです。それは社債の場合ですけれども、それと同様に、株式の場合も安全な資産、例えば国債であるとか、現預金であるとか、これに比べればリスクが高い。したがって、高いリターンがないと投資家は満足しない、こういう仕組みでございます。
 それを定義しますと、ここに式が書いてありますが、ERP、これはエクイティ・リスク・プレミアムの略でございますが、Rmと書いてあるのは株式の市場収益率の期待値でございます。これから安全資産の利子率であるRfというものを引くと、この差し引きの部分だということでございます。
 よくリスク調整尺度として、シャープ・レシオというのが引き合いに出されますが、これを価格変動といいますか、ボラティリティーで割ってあげたものがいわゆるシャープ・レシオということになっています。
 何を意味しているかというと、理論的には投資家のリスク回避度が高いとエクイティ・リスク・プレミアムは高い。要するにリスクを嫌がる人はより多くの見合いのリターンを要求するというようなことが言われております。
 これはどういうふうに実務的には利用されるかということですが、当然株式の期待収益率、これから株式に投資した場合、どのぐらいリターンが得られるのだろうかというときに、安全資産の利子率にこのリスク・プレミアムを足して合計するということが一つありますが、同時に企業財務、いわゆるコーポレート・ファイナンスという方では、企業価値を算定するときに、この企業の株式を、例えば買収であったりM&Aみたいなケース、この企業価値を算定するときに、将来のキャッシュフローを何%で割引かなければいけないかというときに、この資本コストという概念で、あるいは割引率という概念でこれが使用されるということになっております。
 理論的な話はここまでなのですが、問題はリスク・プレミアムというのは直接には目に見えないところにあります。金利ですとか為替レートは新聞見れば出ていますが、リスク・プレミアムは残念ながら直接見えません。したがって推計するほかないわけです。先ほど申し上げましたように、投資家のリスク回避度が高いとプレミアムが高いと言いましたが、投資家といってもいろんな方がいらっしゃいます。リスクが嫌いな人もいるでしょうし、積極的にリスクとる人もいるかもしれません。一人一人についてはいちがいには言えませんが、マーケット全体で成立している市場リスク・プレミアムというのは、すべての投資家の総合的な姿を反映しているだろうということで、マーケット全体の、例えば日本で言えばTOPIX に代表されるような市場全体をあらわすようなもの、こういった市場収益率のデータを使いまして、過去のデータを調べてみるということから推計するほかはないわけです。
 推計方法については様々な方法がありますが、ざっくり言いますと、二つのアプローチがあります。一つは、先ほどの市場収益率−安全資産利子率という定義式がありますので、過去の実際のデータから、過去はどうだったのだろうかということを実測値で調べてやるという方法です。これが私が言うデマンド・サイドのアプローチ、要するに投資家が要求していて実現したリターンというのはどんなものなのだろうかというのを調べてあげるという方法です。
 イボットソン・アソシエイツというのは、もともと創業者のロジャー・イボットソンが、シカゴ大学の教授の時代から、このデータをアメリカについて調べてまいりまして、こういう市場の収益率データでもって様々な推計を試みるということを彼自身の研究及び私どものコンサルティング・ビジネスの一部としてやっております。これが一つのやり方です。
 もう一つのやり方は、私はサプライ・サイド・アプローチと言っているのですが、いわゆる企業財務のデータ等を駆使しまして、いわゆる株式のリターン、ファンダメンタルな株式のリターン、企業収益から株主に配分されたはずのリターンはどうだったのだろうかということをやる方法があります。これは最近ですと、シカゴ大学のファーマと共同研究者のフレンチ、あるいはイボットソン自身も同じような方法でやっておりますが、そういった企業収益データを使ってやる、こういった二つの方法があります。
 方法はこういう方法がありまして、ではその結果はどうなのだというと、あくまでも推計値でございますので、サンプル期間のとり方によってデータが様々結果が異なりますし、推計方法によっても異なるということです。
 若干、技術的な議論になりますけれども、過去の平均も算術平均で計算するか、幾何平均という複利の平均で計算するかといった細かいところによっても若干値が違ってまいります。ですから、これでなければいかんというものは実はないということです。
 ちなみにですけれども、例えばということで、次のページに計測事例1というのがございまして、ヒストリカル・リスク・プレミアムというのがあります。これはたまたま日米の同じようなデータが共通に入手できる、51年間になりますが、1952年から昨年の12月までの月次の収益率データを使って、過去はどうだったのだろうかということを調べた結果でございます。
 過去の値をそのまま出しますと、例えばアメリカの場合ですと、S&P500 のリターンからアメリカの長期債のリターンを引いてあげる。長期債のリターンの場合、ここではインカム・リターンでございまして、価格変動を含まない部分でございます。これを引いてやると、アメリカの場合、過去のリスク・プレミアムは5.27%でしたという結果になりますし、日本で同じように10年国債を相手にTOPIX 配当込みリターンでございますが、これから引いてやると6.9 %ということで若干高めになっていると、こういう計測結果です。 ここで注目したいのは、日米ともこうやって並べてみますと、傾き、シャープ・レシオに当たるところの傾きが大体似ておって、この傾きの角度が0.3 ぐらい、この辺が二大資本主義の先進国である米国と日本は比較的似たような感じなのかなという印象を与えます。これは戦後50年ほどの期間です。
 もう一つは、次のページにございますが、もっと長い期間を見てあげようということで、これは昨年出版されたロンドン・ビジネス・スクールのディムソン教授ほかのレポートからなのですが、100 年間を見てあげようと。正確には101 年間ですが、1900年から2000年までを見た姿。これで彼らは米国、日本だけではなくて世界の先進16カ国をいろいろな角度から計測しているわけです。その結果からお借りしてここに載せてありますが、同じように、リスクとリターンをプロットしてあります。ただ、ここで、前の図がリターンの数値、生の数字でございましたが、これはリスク・プレミアムにしてありますので、安全資産利子率である国債のリターンを差し引いた残りのプレミアムの部分だけを表示していますので、線を引いてみると原点を通る形になっていまして、図のところはプレミアムだけを見ているというふうにご理解ください。
 そうするとリスク・リターンの関係で、標準偏差と年率パーセントをはかってやると、こんな格好になりまして、ざっくり言えば、国によって違いはあるものの、先進国の英国、米国等はリスクが15から20%ぐらいの間に入っていまして、似たような水準にあると言えると思います。
 着目したいのは、日本、ドイツ、イタリア、戦争で負けた3カ国でございますけれども、これが非常に高くなっていると。どうしてこんなことが起こるかというと、これは100 年間とってありますので、途中で第二次世界大戦が起こって、この3カ国のマーケットが一時焼失したわけです。その後、戦後の復興で非常に高い経済成長を遂げたというのは、要するに一回だめになった国がもう一回復活を遂げたと、こういう特殊なデータが入っているがために、この100 年間とってみると高い数値が出るのかなということでございます。
 言いたいことは、期間のとり方、計り方によって、一概にこの数値が絶対正しいというのはなくて、いろんな数値が見えてきますということです。過去のデータは確かに1種類しかないのですけれども、どういう計り方をするかということによって違ってきます。ただ、前の図と比べて、傾きの線、斜めに線が引いてありますが、これは単にこのデータで回帰分析しただけなのですが、この線の傾きは0.3 ぐらいになっていまして、前の図と余り変わらない。期間を変えてみても、大体過去の姿は、いわゆるシャープ・レシオという概念に持っていけば、高さはともかく傾きは大体こんなものだろうというような推計ができたと思うのです。
 次のページに、今回ご質問がありましたリスク・プレミアムをめぐる最近のいろんな論点があって錯綜しているのでということで、どういうことだろうかというご質問があったので、それにお答えする形で少しまとめてみたのですが、リスク・プレミアムをめぐる議論というのは、結構錯綜しておりまして、うまく切りわけて論点を整理しないと何を言っているのかわけがわからなくなる、こういう性格を持っております。
 私なりの整理ですけれども、大きく分けて二つの論点がありまして、1番目は、過去の株式リスク・プレミアムは高すぎたのではないかという議論。もう一つは、今、足元ではかると、これから先へはリスク・プレミアムは低下していくぞ、あるいは低下しているぞという足元の議論、この二つがあります。
 1番目の議論は、先ほど過去の生データを見て調べた結果、例えば米国の場合ですと、過去50年間ぐらいとると、5.何%という数字が出るわけですが、これはどうも高すぎるぞと、理不尽に高いのではないかということを言い出した人がおりまして、メーラーとプレスコットという学者が85年に書いた論文でそういうことを言い出したわけですね。ただ、このときは、彼らは非常に理論的なモデルを想定しまして、リスク回避度が非常に高い投資家を想定しないとこんなリターンは出てこないはずだと。普通の経済学的に想定されるモデルを使うと、プレミアムというのは大体1%か2%か、せいぜいそんなものでいいはずなのだけれども、実測すると5%、6%で非常に高い数字が出てくると。このギャップは何なのだということで、いわゆるエクイティ・リスク・プレミアム・パズルと呼ばれる論争が起こったわけです。
 これ以降、様々な学者の先生が論戦を闘わせていまして、私もすべてを網羅しているわけでない、すべての論文を読んだわけではないのですが、今のところ、まだそのパズルは完全には解けてないと言われております。
 では、何でなんだという議論の整理の仕方として二つこのパズルを解く方法といいますか、論点がありまして、1番目は理論と現実のギャップがあるというときに、理論に問題があるのではないのという見方です。これは経済学者が想定した投資家の効用のモデルなんていうのは、これは現実には当てはまらないのだと。現実の投資家というのはそんな合理的でないし、違ったリスクに対する反応の仕方をするのだと、最近で言ういわゆる行動ファイナンスの領域の先生方が、そもそも想定されている効用が違うのだというような理論的な話をしております。
 もう一つは、データと理論にギャップがあるのだったら、データに問題があるのではないかということを言っている人がいます。これはアメリカのデータだけを見て、5%とか6%のプレミアムが過去計測されたとしても、アメリカというのは資本主義社会の勝ち組でしょうと。勝ち組だから高いリターンが出ても当然なのだというので、ほかの国を見てごらんと、アメリカほどいい国はないですよというふうなことを展開している人たちがいます。これはイエール大学のゲッツマンとかその辺がサバイバル・バイアスだということで論陣を張っております。
 こういった形で過去の実測値が理論と違うという議論が一つあります。これはあくまでも過去を見ている話です。
 2番目が最近出てきた議論で、現在から将来にわたり足元を見ると、過去ほど高いプレミアムは今後は期待できないのではないかということを言っている方々がいる。これは日本の証券アナリスト・ジャーナルの今月号から紹介されているアーノットとバーンスタインが書いた論文が一番新しいのですが、そのほかにも何人かの学者が同じようなことを言っていて、それに対してイボットソン、私の会社の会長でございますイボットソンはちょっと違う角度から議論していると。ここで議論が錯綜しているのですが、実はこの議論は、かみ合っているようでかみ合ってないところがありまして、観点がいくつか違うんですね。
 一つは、リスク・プレミアムは今低下しているぞと言っている人たちは、現在の株価水準から考えると中期的に、どのぐらい中期かわかりませんが、今後、将来はそれほど期待できない、と言っているわけでございまして、それに対してイボットソン等は、超長期の平均はこうなるのだということを言っていると。
 2番目は、リスク・プレミアムが低下していると論陣を張っている人たちは、これは時期によって変動するのだと。経済状態によっていろいろ変動するのだと。高いときもあるし低いときもある。今足元は低いと言っているわけですね。それに対してイボットソン等は、これは平均値であって、今現在がどうだという話ではないということですね。
 3番目が、理論的にはこれは議論があるところですが、プレミアムは変動するとか、今低いと言っている方々は、マーケットは合理的とは限らないと。要するにバブルが起こったりするじゃないかと言っている一方、イボットソン等は、市場は合理的なのだということを前提にすればこういうことが言えるということで、前提になっているところが結構違う状態でプレミアムが高いの低いの、下がったの上がったのと、こういう議論をしているものですから、議論がいろいろ錯綜してしまうということです。
 論点を整理するとこんな状態で、これを日本に当てはめて同じような論争ができるかどうかということなのですが、私の個人的な意見を申し上げますと、論点1)というのは非常に大事なポイントで、過去のリターンというのははかれるのですけれども、将来ともそれが続くとは限らないよと。特に先ほどの計測事例IとIIの両方をご覧になってわかったように、期間のとり方によっては日本の数値が非常に高く出る。例えば日本も戦後焼け跡から復興してきたときには非常に高い高度成長を遂げたわけです。そういうときのデータが入っていると当然高く出てくるということがあります。これはアメリカが勝ち組だったというのと同じような意味で、日本も戦争から復興して、世界第二の資本主義国にのし上がってきたという経歴がございますので、そこの部分のデータが入っているということは言えると思います。
 論点の2番目の、現在は高いか低いかというのは、これは国によって違いますし、時期によっても違う論点だと思います。次のページをちょっとおあけいただきたいと思うのですが、株式リスク・プレミアムの月次の計測値、月次で株式の投資収益率から国債のインカム・リターンを引いたプレミアムの部分だけを取り出して累積指数にしたものが次のページのグラフでございます。ここに矢印で書いてありますけれども、米国論点1)というのは、リスク・プレミアムは過去高すぎたのではないかというような理論的な議論が出てきたのが1985年頃からですので、その頃から始まって矢印が過去を向いていると。過去はどうだったのだということを議論して、高すぎたか、低すぎたか、こういう議論をしているわけですね。これは今日までまだ綿々と続いていると、こういう論点でございます。
 もう一つの2番目の論点である、今、足元のリスク・プレミアムは過去ほど高くないし、低くなっているのではないか、あるいは低下しているのではないかというような議論はいつから出てきたかというと、ちょうど2年ほど前、米国がITバブルのピークにある頃です。あの頃に出てきた議論なわけです。要するに足元の株価は非常に高くなってきたので、こんなにいいことはずっと続かないぞという問題意識があって、過去の数値だけではだめだと。これは将来は低くなる可能性があるぞと、こういう問題意識から出てきたのが2番目の論点だったわけです。
 したがって、特にアーノット、バーンスタインに代表される論点というのは、2000年頃の米国が非常に絶好調で株価も高かったときに始まった議論であって、米国という国と時期がそういう時期であったということです。
 日本にそれが当てはまるか、当てはまらないかということを考えると、これはちょっと議論が分かれると思うのですが、恐らく同じような議論をするのであったら、ちょうど12〜13年前のバブルのピークの頃にそういう議論があってもおかしくなかったかもしれないということですね。今現在、日本はどうかというと、残念ながらそういう絶好調の経済状態ではないので、恐らくプレミアムは変動しているのではないかという議論は一般的にはできるのでしょうけれども、過去は高すぎる、今は低くなっているのではないかというのは、ちょっと経済状態が違うので同じようには議論できないのではないかという気がします。この辺がアメリカの議論をそのまま日本に輸入していうと当てはまらないことがあるかもしれない。
 7ページ目は最近のアメリカ人の人たちがやった研究のまとめです。これも(論点1)と(論点2)に分けて考えなければいけないのですが、主に学者の先生方は(論点1)の方に興味がありまして、過去データをいろいろやると、実際には高すぎたのか、低すぎたのか、こういう議論で、人によって方法も違いがあるのですが、結構ばらけていると。一番弱気派というか、低い方を見積もっているアーノットとバーンスタインは、過去をはかると、これは結構、1810年から2001年までの190 年間ぐらいのデータですけれども、これを見て、過去は平均的には2.4 %だったと言っております。イボットソンとチェン、これは私どもの会長等ですけれども、過去をはかると5.24%だったと。これは過去75年ぐらいです。
 ただ、この過去のデータの中には、アメリカの株価が上昇してきて、P/Eレシオが上昇して、それで得してしまった部分があるということなので、イボットソン等も、これから将来を推計するときは、過去がそのままというよりも、P/Eの上昇部分、これが大体1.25%ぐらいありますので、これは差し引かないといけないということで、それをぽんと外して、今現在3.97%だろうという推計値を出しております。これに対して弱気派のアーノットとバーンスタインははっきりした数値、これだというのはないのですけれども、彼らは0に近いのではないかというようなことを言っております。
 したがって、論争の両極端といえば両極端なのかもしれませんけれども、0近辺なのか、あるいは4%かそこらなのかというところは幅といえば幅かもしれません。
 ちなみにウェルチという行動ファンナンスが専門の学者がいるのですが、彼がアメリカ人の金融経済学の先生方にアンケート調査、リスク・プレミアムは何%だと思いますかというアンケートを調査を行いました。この結果は平均すると4.7 %という結果が出ております。これは実は、私どもイボットソン・アソシエイツがつくっているデータというのは、かなり広くアメリカの実務界、学界で使われておりまして、過去データといえば、イボットソンのはよく使われるものですから、皆さんそれをご覧になっていて、それを研究とか教育で使われているので、その数値が結構すり込まれているという結果、大体似たような数字が出てくる可能性があります。という、いわゆるバイアスが入っているかもしれません。
 という状態でございまして、したがって、学者の先生方もこれだというコンセンサスがあるわけではありません。ウェルチの調査でも、平均値はこうですけれども、上下に結構ばらつきがあるという状態で調査が報告されております。
 次のページはちょっと細かい点になりますので、後でお時間のあるときご覧いただきたいのですけれども、両極端であるアーノット氏とイボットソンがどういう論点で、お互い何を言っているのかということを一覧表でまとめたものでございまして、簡単に言いますと、先ほど申し上げましたように、議論の前提になっているところがそもそも違う。リスク・プレミアムは変動するのだというのと、過去の平均値を当てにいくのだというスタンスの違い。あるいは市場は合理的だと仮定するのか、合理的でなくてしょっちゅうバブルが起こったりするのかという仮定を置くか、それによって結論が違ってきているということはあると思います。これは見方、立場の違いといえば、それまでなのかもしれませんけれども、それぞれ重要なポイントは突いているのではないかという気がします。
 ここまでがアメリカの議論の大体の中身でございまして、最後に参考までにということで、日本はどうなのだということですが、先ほど申しましたように、アメリカでの最近の議論、要するに(論点2)のリスク・プレミアムは低下しているのではないかという議論は、米国経済が絶好調で株価が高いときに起こってきた議論なので、それはそのまま多分日本には当てはまらなくて、我が国の条件を見ますと、ご案内のように、景気はよろしくなくて企業収益は低迷しているという状態でございまして、9ページ目のグラフにございますように、いわゆるサプライ・サイドのアプローチから株式のリターンを考えたときに、どうしても企業のROE(株主資本利益率)が問題になるわけですが、これがだんだん低下してきている。これが低下してきているので成長率もだんだん落ちてくるというような状態でございます。
 いわゆるサプライ・サイド、つまり企業がそのリターン、事業収益をどれぐらい株主に返していけるのかという観点から言うと、残念ながら返していけるリターンの水準がだんだん切り下がってきていると言わざるを得ない。
 一方、デマンド・サイド、投資家の方から見たときにリスク・プレミアムはどうなっているのかということを考えますと、投資家がリスク許容度が低くなればプレミアムは低くなることはあるのですけれども、残念ながらそういう状況証拠はなくて、むしろリスク許容度は非常に高くなっている。昨今の年金基金の情勢を見ても、代行返上問題であったり、確定拠出への移行であったり、機関投資家に限っていえば、株式のリスクをこれ以上負担するのはかなわんということで低下しているということも見えますし、個人投資家もなかなか株式投資に積極的になれないというようなことで、どちらかというとリスク許容度は低下しているのではなくて、上がっている可能性がある。上がっているとすれば、エクイティ・リスク・プレミアムはむしろ上昇している可能性があるということですね。
 サプライ・サイドから見るとリターンは下がり傾向にあって、デマンド・サイドから言うとどちらかというとプレミアムは上がり傾向にある。では、このギャップはどういうふうにして埋められるのかということが問題になりまして、サプライとデマンドが一致するためには、サプライ・サイドの改善といいますか、ROEが上昇して、企業がちゃんとリターンを返せるような状態になるか、あるいは投資家の方のリスク・プレミアムが上がっている、リスク回避度が上がっているとすれば、株価がさらに低下して調整されるかと、こんな状態になるのではないか。
 言ってみれば、2番目の株価の調整というのは実は既に起こってしまっている可能性があります。株価というのは先を見て動きますので、現在の例えば株価の純資産倍率(PBR)を見ますと1前後に低下しているわけでございまして、株主資本のリターンを余り期待できない状況にまで株価が下がってしまっているということも言えるかもしれません。 今の議論をグラフでご理解いただくために追加資料が1枚ございますが、この数値は、単に置き数字でございまして、別に実際にはかったわけでも予想の数値でもございませんのでご注意いただきたいのですが、例えば赤いグラフがいわゆるデマンド・サイドからの考え方、青いグラフがサプライ・サイドからの考え方でございまして、デマンド・サイドの方はベースにある安全資産利子率、薄い方の網かけのところですが、これにリスク・プレミアムがのっかっていると。サプライ・サイドの方は、配当、インカム・リターンと企業の成長、この二つで構成される。
 高い、低いはいろいろあるのでしょうけれども、経済局面の平均的な姿、超長期で平均的にサプライ・サイドとデマンド・サイドが釣り合っているとしましょう。そうするとちょうど真ん中の二つの棒グラフみたいな状態になっているはずなんですね。足元でリスク・プレミアムが高いか、低いか、期待リターンが上がったか、下がったかというのは、経済状態がどういうふうになったかということがございまして、例えば右の二つの棒みたいに、景気がいいとき、アメリカの2〜3年前みたいに絶好調のときはどういうことが起こっているかというと、景気がいいので、サプライ・サイドの方から企業の方はどんどん成長できるし配当も払える。左うちわで行けるという状態でございます。
 これに対して、一般的には景気がいいと金利が上がるということで、ベースになる安全資産利子率がベースが切り上がってくるので、プレミアムとして要求される部分は小さくなっている可能性があるということですね。ですから景気のいい局面でリスク・プレミアムが低下しているのではないかと言っているアーノットやバーンスタインの議論は、こういう状況の下ではそういう議論は成り立つだろうと。
 一方、左側の方は不景気の状況でございまして、不景気になると何が起こるかというと、前のページのグラフでご覧いただいたように、企業の体力が低下しますので、サプライ・サイドからはなかなか収益が上がらないし成長も落ちるという状態でございます。株価がかなり落ちていますので、配当利回りは逆に上がってくると、こんな状態になる。
 今度デマンド・サイドの方を見ると、昨今のゼロ金利みたいに、ここではゼロになっていませんけれども、安全資産の利子率がぐぐっと下の方に切り下がってきている。株式のリスクそのものの水準が余り変わらないとすると、その差し引きの部分である赤い部分、これがリスク・プレミアムに当たりますけれども、これが拡大している。
 常識的に考えても、先ほど申し上げましたように、リスク回避度が高くなっているとか、株に対する株式投資をどうしようかという議論が非常に起こってきて、今回のこの分科会でもそういう議論が起こっているから、こういう議論をしているわけなのですけれども、そういうときというのは、非常に株に対するリスクに敏感になっていて、こんな危ないものに手を出すのだったらもっと高いプレミアムがないとがまんできないというふうに投資家は普通思うはずでございます。
 議論としては、こういう議論があって、昨今の論争を整理しますと、例えばイボットソンであったり、ファーマ、フレンチあたりが言っているのは、経済局面の真ん中の平均の姿、過去の平均を見てどうだったのかということを議論しております。
 アーノット、バーンスタインも主に議論しているのは、どちらかというと右のグラフをもとにして議論が始まって、真ん中の過去の平均の姿についても、彼らは二つの論点を混ぜて言っているということでございます。
 ひるがえって日本はどうかというと、どちらかというと、このグラフでいうと、左のグラフみたいな状態に今あるのだろうなということでございます。
 私から、長くなって恐縮ですけれども、以上のような状況であります。

○ 若杉分科会長
 山口さん、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明に基づきまして、質疑を含めて、委員の皆様より活発なご議論を出していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。どなたからでも構いません。専門的な話ですので、どうぞ、ご質問等ありましたら遠慮なくお出しください。大和委員、いかがですか。

○ 大和委員
 私は専門家でありませんので誤解をしているかもしれませんけれども、観点が非常に違う論争なので、どれが正しいかというのはなかなか言えないと思いますので、このそもそもの考え方、株式のリターンを推定するときの考え方として最後の追加資料の図でお聞きしたいのですが、実績のデータというのは、需要と供給が一致した価格なり収益率でできて、それをサプライ・サイド、デマンド・サイドに分けるという考え方でこの図のように整理するのはどうかなという気がちょっとしております。
 実際のデータは、両方が一致した点が収益率の実績データとしてあらわれている。そういうものをどういうふうにとらえるかということでいった場合に、少なくとも株式の収益率は恒等式として配当利回りと配当ないしEPSの成長率とPERの変化率で分解できるわけですので、好況のとき、平均のとき、不況のときというのは、その合計が大きくなったり、小さくなったり、あるいはちょうど平均値になったりするようにとらえるべきだと思うのです。このグラフでいくと、成長だけではなくて、PER変化率というのも、もう一つ、分解要素として入るように思うのですが、そうやって考えていいのかということですね。
 2番目に、今申し上げましたように、需要と供給が不一致ということは、実際の実績データではないと思いますから、需要側も結局供給側で出てくるデータと同じ高さになるのではないか。たまたまRfとトータル・リターンの差額をリスク・プレミアムと呼んでいるわけですが、これはいわば非常に抽象的な差額の概念、残渣の概念であって、実際にそれが本当に需要側の要因として市場に影響を与えてい るのかどうか、そういうふうに言うのはおかしいのではないかという気がちょっとしております。
 合計は一致しているとした場合に、多分PERの変化率というのは、サプライ・サイドのデータにはありませんけれども、その変化率が非常に大きく変動すること、好況と不況と、それが変動することがちょうどリスク・プレミアムの数字を好況、不況と非常に大きく変動することで赤い色のところが大きく変化すると考える方がいいのかなという気がしているのですけれども、それが2点目です。
 結局そういう意味では株式のリターンを推定するときに、サプライ・サイドと呼ぶよりはファンダメンタルと呼んだ方がいいと思うのですけど、ファンダメンタルな推定の仕方としての配当利回り、EPS成長率ないしは配当成長率+PER変化率をそれぞれどう見るかというふうにリターンを推定する、ないしそこからRfを引いたリスク・プレミアムの数値を推定するという方が妥当なのかなと思いますが、以上、3点ですけれども、間違っておりますでしょうか。

○ 山口氏
 ご質問ありがとうございました。まずいくつかのご質問があったと思いますが、需要と供給はいつも一致しているはずなのでということなのですが、株式の市場では売買が常に成立しているわけでございますので、そういう意味では、株の売買の需要と供給はいつも売るやつがいれば買うやつがいるという状態で一致しているのですが、ここで言っております需給のギャップというのは、株式の売買が成立するかどうかということではなくて、期待リターンに対する需要と供給が一致しているかどうか。要するにリターンを返す側の企業の返す能力、返済能力と言った方がいいかもしれませんが、それがどのぐらいあるのかということと、投資家がどのぐらい要求しているのかという状態ですね。これを比較しているということでございます。ですからそういった意味では、いわゆる株式市場ではいつも需給が一致しているのだというのと違う議論ですね。それが1点目。
 2点目は、おっしゃったように、P/Eの変化率というのはあります。確かに過去のリターンを分解すると、例えばファンダメンタル・アプローチという、サプライ・サイドでもいいのですけれども、これでやりますと、企業の成長の部分、配当でインカム・リターンで返す+マーケットのバリエーションの変化といいますか、PERの変化あるいはPBRでも何でもいいのですが、そういったものの変化による、この三つに分解できることは確かです。過去リターンはそういうふうに分解できますし、ファーマ、フレンチもイボットソンもそういう分解の仕方をしております。
 ただ、期待値として、将来どういうふうに見積もるかといったときにPERなりPBRは一方的に高くなったり低くなったりしないわけです。変動しながら、結構ボラティリティーも高いので、ではその平均値は何かということでやると0と見ておくのがいいだろうと。要するに上がったり下がったりするけれども、平均的には0なのだという見方ですね。したがって、それは予想からは外してしまうということでございます。
 今、追加資料のグラフでお見せしているのは、過去のリターンを分解したという意味ではなくて、経済局面それぞれにおいて、株式の期待リターンがどういうふうに構成されるであろうかということを概念図としてお示ししています。
 以上でよろしかったのでしたか。

○ 若杉分科会長
 よろしいですか。

○ 大和委員
 議論の出発点のところで、期待形成のされ方か、実際のデータをどう解釈すべきかというところで違っておりますから、期待形成のされ方の考え方だということであれば結構です。

○ 寺田年金資金運用基金投資専門委員
 イボットソンの最初の論文では将来のPERの変化はゼロと見ています。彼のペーパーの中に明示的に書いてあって、PERの将来の変化というのは、市場で期待の変化が起こった段階で起こると。だから、今の市場での期待形成というのは、例えばROEがどうなるとか、例えばEPSの推移はどうなるとか、そういうものの、期待形成は現在すでに存在していて、それが今のPERの要素になっているわけです。それが将来、PERが上がるかどうかというのは、今の期待形成が変わる段階で起こってくる。それはだからどっちにも変わる可能性あるわけですね。上の方に上がるかもしれないし、下方修正されるかもしれない。彼は明示的にはっきりそう書いている。それでPERの変化というのは0と、たしかそういうことだったと思います。
 アーノットとイボットソンというのが、今のリスク・プレミアム論争の中では両極端というのでしょうか、最も悲観的なのと、楽観的と言っては何ですが、イボットソンないしそれに近い意見の人が   rational exuberance派と言われていまして、合理的な何ていいましょうか、exuberanceというのは豊富というのでしょうか、横溢といいましょうか、そういう言葉で呼ばれていているわけなんですけれども、もちろんその間にいっぱいあって、向こうの年金のコンサルタントとか、大きな年金のALMなんかやっている人たちの、あなたはいくつぐらいのリスク・プレミアムを見ていますかというと、大体3.5%前後という、イボットソンより若干低いけど、アーノットより高いということが言われているようです。イボットソン、チェンのペーパーと、アーノットの一つ大きな違う点は、比較の表の中にもちょっと触れられているけど、ここの言っている内部留保と将来の利益の成長に関するMMも理論の他に、もう一つのMM理論に立脚している点です。すなわち配当は株価の水準には影響しないというか、利益によって株価が決まるのであって、配当性向は影響しないということです。これがイボットソンのペーパーの中に明示的に取り入れられているんですね。
 彼は最初6つぐらいのモデルを使って過去のリターンの分析やっていますけど、予測はその中から利益モデルと配当モデルを使ってやっていますけど、配当モデルを単純に使うと低めのリスク・プレミアムが出るのですが、それはMM理論に照らして修正すると、利益モデルと同じリスク・プレミアム3.97%が得られています 。その辺がアーノットなどと違う点かなという感じを持っています。

○ 若杉分科会長
 何かご意見ありますか。

○ 山口氏
 ご指摘ありがとうございました。おっしゃるとおりで、その辺に大きな違いがあると思います。イボットソンはどちらかというと、今おっしゃったような、市場の合理性を前提に考えているということでございまして、議論が始まった当初、アメリカのPERが非常に高いのも、みんな投資家は将来まだ成長が続くのだということを期待しているから、そういうP/Eが実はついているのだと。本当にそうなるかどうかわからないけれども、今現在足元ではそういうのがついているのだから、投資家はみんなそういう成長を織り込んでいるのだという議論ですね。
 明示的には言っていませんけれども、アーノットたちに言わせれば、要するに高すぎるんじゃないのということを言っているという状態で、これはいつまでも続かないよということでございます。
 実際その後、何が起こったかというと、例の9月11日のテロ事件もあって、アメリカの株価が非常にシェーキーな状態が続いたわけでございますが、この過去2年ぐらい振り返ると結構そこそこ調整が進んできていて、足元が高すぎると言っていたアーノットたちの議論というのは、あながち的外れではもちろん短期的にはなかったということも言えると思いますね。ただ、言っていることが、アーノット、バーンスタインが言っているのとイボットソンの言っているのは、もともとの前提や観点がちょっと違うところがありますので、いちがいにどっちが正しかったというのはなかなか言いにくいと思うんですけれども、短期的にはアーノットたちが指摘したバブルに対する警鐘みたいなことであれば、それは的を射ていたと言える部分もあるかもしれません。

○ 若杉分科会長
 米澤委員、どうぞ。

○ 米澤委員
 きょうも興味深いいろんなデータを出していただいて参考になりました。きょうはうまくデマンド・サイドとサプライ・サイドと分けていただきまして、多分最近こういう分け方が比較的一般かと思いますが、理解としては、バブルがなければ多分両者は一致するのだと思います。すなわちどこからはかってもファンダメンタルをベースとしたプライシングがついて、その変化率がリターンになるということで、そこに関しては異論がないのではないかと思います。
 問題は、もうわかってきたのはバブルは避けられないと。日本が最初で、北欧がきて、最近はドイツがもっと日本と同じぐらい激しい動きをしていますし、今、アメリカも多分バブルだった。そうしますと、バブルが生じているときは、デマンド・サイドではかると当たり前ですけれども、高く出てくると思いますし、バブルも、我々は簡単にバブルがクラッシュしたらまた元に戻るのだと思っていたわけなんですが、戻らないと。戻った段階で人が本当にシリアスになってしまうというところが今の日本の状況の深刻なところで、クラッシュした後、どう位置づけるかは別として、今のことを整理すると、頼りにするべきはサプライ・サイドのファンダメンタル・データをよりどころにして、成長率をどういうふうに見込むかはいろいろ工夫の点がありますが、そちらの方で長期を見ておいて、少し楽観的な言い方しますと、バブルが起きればこれより上がりますよということで、多分今までいろんな国は、どの時期はかってもデマンド・サイドの方がサプライ・サイドよりも高いリターンを描いていたのではないかと思うんですね。深刻なバブルの後まで含めるといろんな問題あるかもしれませんが、ですので、まとめるとサプライ・サイドのところをうまく使って、これから計算して、それはよく理解すれば、むしろ下限なので、これ以上に上に行く可能性があるのではないかと私は理解したいと思います。
 ただ、サプライ・サイドといっても、プライシング・アーニング・レシオ、先ほどの配当などの成長率などもどう見込むかということで、結局アンカーがなくなってしまうのではないかと思いますが、そこはきょうも山口さん一番最後のところにROEのこれをつけていただきましたが、この辺で長期的にはリアルなところとマネタリーなリターンとは長期的の方が一致すると。私はROAとトータルなリターンないしは負債を抱えてないような企業の株式のリターンと一致させるという方が好きなんですが、ぜひともROAとかROEでそこで縛りをかけておくというもとでのサプライ・サイドでもってはかっていくというのがよろしいのではないか。
 今、足元をいろいろ状況ありますけれども、そういう視点からはかっていったやつですと、3%とかという数字が出てきているのではないだろうかと思います。日本に関して、この間、暫定的にいろいろお話しましたけど、まだ合意は得てないのでもう少し調べる必要があるかもしれませんが、一応外国ですと3%。振り返ってみると、それ以上は出てきていたということで、それはバブルがあったのでしょうと。ただ、埋めていったということは、まだバブルの深刻な後のところはデータがサンプルとして入ってないのではないでしょうかという理解が一つ切り口かなと思っています。

○ 若杉分科会長
 ほかにございますか。竹内委員どうぞ。

○ 竹内委員
 3点ほどありますが、先ほど不況のときと好況のときのリスク・プレミアムに対する考え方というお話があったのですけれども、短期的期待と長期的期待というもの、私の感じでは、不況期というのはどうしても期待が非常に目の前で落ちていくような、どちらかというと短期的に物を見てしまう傾向が強くなりすぎる。つまり長期的には、逆に本来は不安定なものが安定的に見えて、長期的リターンも高いように見えるというような意味で、逆に不況期にカーブが非常に急激に落ちていくというふうに見える場合に、どうしたらアップワードなというか、長期的な価値判断のシェアというものをどう組み合わせたらいいのかというようなことにちょっと興味があります。つまり極端に短期になるというか、年金の場合、特に長期の問題だということになりますと、長期の判断を不況期にしなければいけないことになりますので、この組み合わせのカーブといいますか、その辺の問題をどういうふうに取り上げたらいいか、これはやや思いつきなのですけれども。
 2番目は、今出ていますファンダメンタルズの問題で、米国といえども製造業全体が非常に強い状態ではなくて、むしろ住宅市場、中古とかそういうところの家計の中から出てくるパワーが比較的現在もまだ続いていると見えます。日本の場合には、製造業の基盤はかなり低下傾向が続き、これがもう一回復活するのは非常に考えにくいとした場合、特に日本のデータは製造業好きで、製造業ばかり見るのですけれども、それ以外に日本が長期的に収益率を上げていくような要因はあるのか。私は住宅に期待していますけれども、ご専門以外でも、長期的な収益率を10年ぐらいで見渡したときに、何か押し上げ傾向が出てくるようなものがあり得るかどうかということ。
 3番目はテクニカルな問題で、9ページに最後の期待リターンのところなのですが、1980年ぐらいから見ると、確かにずっと下降線なのですが、94年ぐらいからの流れは、3%ぐらいのところにROEが上がったり下がったりしていて、直近のところではやはりちょっと上がっているように見えるんですね。これは何かファンダメンタルなものなのか、それとも会計上の問題なのか、その辺のコメントをいただければありがたい。

○ 山口氏
 主に3点あったと思います。最初におっしゃった不況期に短期的になるとかということは、どちらかというと行動ファイナンス的な観点から非常に重要な問題、よく貧すれば鈍するとか言いますけれども、景気のいいときは、資産効果もあって、長期的にゆったり構えて、まあ、いいやと、こういうふうに人間は考えがちでございまして、いよいよ余裕がなくなってくると、にっちもさっちもいかなくなって首が回らなくなってくると。そこで長期的に物を考えよといってもなかなか難しいというのはご指摘のとおりだと思います。 であるからこそ、要するに長期間では何が起こるのだろうかということで、過去なるべく長いデータを見て、こういうときは、過去はどうだったのだろうかということを調べる意味で、ヒストリカル・データを分析するというのは非常に大事になってくると。要するにさめた目で長い期間をもう一回見てみるということが大事なのではないかと思います。 一般的に言って、さはさりながら、景気のいいときは大体人間は楽観的になって、長期的な視野で考えられるというのですが、いざ、局面が悪くなると、そんなこと言っていられないというのが実は我々だけでなくて、世界じゅうどこの人間も基本的にはそうなんだと思いますね。
 ここでは余りアカデミックな議論してもしようがないのですけれども、効用関数の形が経済局面によって変わってしまうということも十分にあり得ると思います。
 2番目の点につきましては、私もマクロ経済の専門家でもないのですが、実はここで見ているデータは、S&P500 とか日本のTOPIX で株式市場を見ていて、S&P500 はアメリカの企業なんだと。TOPIX は日本の企業なのだというふうに考えがちなのですけれども、かなり企業の国際化というのが進んでいて、必ずしもどこの市場のインデックスかということと、その中に含まれている企業がその国だけで商売しているのかというと実はそうでもないかもしれないと。
 アメリカの大企業の中でも、例えばマイクロソフトやコカ・コーラを例に挙げれば、大体世界じゅうでビジネスしているということがわかりますし、日本の場合でもトヨタ、ホンダに限らずソニーであったり、世界を相手にしている企業があって、必ずしもどこの市場インデックスかということ、市場インデックスを構成している企業が、その国だけに縛りつけられているのかというと実はそうでもなくて、今ご指摘の日本企業に何か明るいニュースはないのかということで言えば、これはどうなるかわかりませんが、そういった日本を代表するリーディングカンパニーが、日本以外のグローバルマーケットで市場を開拓し製品をつくっていくと。
 これは一つの例ですけれども、例えば最近は中国に進出する企業が多いですけれども、新しいマーケットをつかんでいくということで成功すれば、それはそれで日本国内だけでなくて、収益を上げていける企業というのが存在すると。たまたまその企業は日本に発祥の地がありますので、東京証券取引所で取引されていてTOPIX の一部を構成していますけれども、純粋に日本だけでやっているわけではないと、こういう状態かもしれません。
 3番目の点は、たまたま9ページのグラフは法人企業統計から持ってきたものでございまして、その時どきの、例えば企業会計ですと特別損失とかいろいろありますので、毎年毎年のデータそのものが上がった、下がったというのは、会計上のそういう処理も含まれております。したがって、余り短いところで、上がったの、下がったのと言ってもしようがないと思うのですが、どちらかというとトレンドとして、ずっと過去に比べると体力が落ちてきていますねというところをご覧いただければよろしいのかと思います。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。高梨委員、どうぞ。

○ 高梨委員
 素人なのでよく分からないのですが、3ページのグラフで、いわば発射台が6〜7%で、先ほど角度が0.3 ぐらいとこういうふうにご説明いただいているのですが、もしこの発射台がこれよりも低い位置、これは角度のデータなのですが、例えば3%とか4%、そういう位置にあるとすれば、角度は変わるのか。次の4ページでは、いろいろな国でのデータを見ると、0.3 とこういうふうになっている。こういうことからすれば、余り変わらないと、こういうふうに見ていいのかどうか、その点が一つです。
 もう一つは、同じ3ページなのですが、例えば日本の場合に、リスク・プレミアムが約7%となっているのですが、リスクが20%ぐらいということですね。それではリスクが20%ぐらいではなくて、  もっと落ちるという可能性があるのかどうなのか、その辺をどう見きわめたらいいのか、初歩的な疑問なのですが、その点について教えていただければありがたい。

○ 山口氏
 お答えいたします。3ページと4ページは同じようなグラフなのですが、ちょっとつくり方が違うので混乱されたかと思うのですが、3ページの方は、株式と債券のリターンを両方見せております。したがって、発射台に当たるところは債券のインカム・リターンです。6%近辺に三角の印がついていますが、これが債券のリターンだという状態ですね。 次の4ページ目は、その部分を除きまして、その上の部分、それを上回る部分だけを見せておりますので、発射台が0になっているのは債券のインカム・リターンのところをベースにして、そこから上をはかっているということでございます。3ページと4ページ同じような趣旨なのですけれども、見せ方がちょっと違っているということですね。
 今おっしゃったような、発射台が低い位置にあったらどうなのかということですが、残念ながら過去データの長期間の平均はこれしかありませんで、どうだったのかといっても実際にそういうデータがないので証明しようがないのですが、考え方としまして、実は3ページ目のグラフのように株式と債券両方ご覧いだたきますと、両方とも名目値なんですね。要するに債券の金利の中にはインフレ部分も含まれていますので、いわゆる実質ベースに考えていったらどうなるのかというふうにお考えいただければよろしいかと思うんですね。そうすると、またベースの部分の債券インカム・リターンにほぼ相当するような、例えば過去のインフレ率の分を差し引いてしまうと、そこから上の部分は似たような形状になってくるとお考えいただけれはよろしいかと思います。
 2点目のご質問で、リスクが20%前後だからこうなっているので、もし仮にリスクがもっと低かったらということですが、これも過去ずっと調べてみますと、リスクの水準は、日本のデータあるいはアメリカのデータでも、大体平均値をこのぐらいのところに持ちまして上下に動いております。暴落が起こった直後は、例えば過去5年間のリスクをはかると結構高めに出てきたりしますけれども、そうでなくて、比較的安定しているときもあると。ただ、波打ちながら大体平均値が年率換算でこのぐらいのところでもって上下しているというのがアメリカ、日本とも共通しております。
 アメリカの場合、超長期のデータをとりますと、例えば大恐慌の頃の1930年前後で、過去5年間とかいう数値をとると、年率換算で30%ぐらいはね上がっていることがあるという状態ですね。日本でそれをやったらどうかというと、実はバブルがクラッシュしていく90年代とっても、実はそこまでは激しくリスクは上昇してないということが計測できています。
 したがって、例えばですけれども、日本の株式が、仮にですけれども、もっとリスクが、米国並みかそれ以下になってきたとすると、このスロープを左下の方にずり落ちてきて、投資家がそのリスクに見合った、例えば15%ぐらいのリスクになったとすれば、日本株はそんなものなんだなと。米国並みかそれよりちょっと少なくてもいいかというぐらいの要求しかしなくなるということが、プレミアム自体は下がるかもしれません。ただ、余り起こりそうもないというか、そういうふうにリスクが少なく、株式のマーケットのボラティリティーそのものが低下しているとか、そういう証拠は残念ながら余りないですね。4ページ目をご覧いただくと、各国の先進国のデータをとりますと、長期間ですけれども、上がったり、下がったりしながら、株式市場というのは大体ここら辺のリスク水準にあるものなのだということでございますので、この辺が推計値として妥当なところではないかということだと思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。吉冨委員どうぞ。

○ 吉冨委員
 お話をお伺いして、思い切ってまとめると、もし0.3 というのが比較的安定しているとすれば、リスク・プレミアム決定要因は標準偏差になると。結局、標準偏差を動かしているものは何かという分析がかなり詳しくわかればこの問題は解きやすいのではないかと思ったのですが、標準偏差を決めている決定要因というのはどういうものが理論的にあって、実証的にはどうなっているのでしょうか。

○ 山口氏
 先ほど大和委員からもご指摘ありましたように、過去のデータをファンダメンタル側から分解すると、企業収益の成長と配当、いわゆる企業のファンダメンタルと株式のバリエーションの変化、PERであったりPBRに代表されるような、市場がどういう値段をつけるかという三つの要素に分かれます。
 今、吉冨委員からご質問がございました標準偏差はどれが動かしているのか。今の三つの要素はそれぞれが変動しますけれども、最初の二つ、すなわち企業収益の成長率であったり、配当の水準であったり、これは動くことは動くのですけれども、比較的小さくて、標準偏差のほとんどの部分、これは3番目の項目であるPERであったり、PBR、ああいった株価水準、バリエーションそのものの変化が激しいと。ただ、その平均値へ統計的に検証すると0と有意に違わないというようなことになります。
 ではそれが一体何で起こるのかというところですが、一つは、株式のバリエーションのモデルの話が、前回、小林さんからもあったかもしれませんけれども、ディスカウント・レートである金利水準、要するに金利が下がると債券の値段は上がりますけど、同様に株価にもプラスの影響があるという、金利要素が一つあります。
 ただ、それ以外に、それだけでは説明できなくて、債券の場合は全部説明できますけれども、株式の場合は、それ以外に将来の配当あるいはキャッシュフローに対する人々の期待が楽観的になるかどうかという要素、かなり先ほどからの出ている言葉では、バブル的な要素とか、人々の心理的な要素、あるいは竹内委員からご指摘があったような、余裕を持って長期的に考えられるかどうか、そういうことによって株式のバリエーション水準が激しく変動してしまいます。
 これが何でなのかということは、実は完全にファンダメンタルでは説明しきれない部分というのは残ります。ですから市場はいつも必ず合理的なのかというと、どうもそうでもないのではないかというのが最近の行動ファイナンスなどの議論でありますけれども、バブルみたいなことが起こると。ただ、ずっと起こり続けるわけでもないし、一方的に行くわけでもないしということですね。ですから、そこのところは株式のバリエーションの変化の原因を突きとめていこうとしても、あるところから先へはなかなか行けないというのが、残念ながら。

○ 吉冨委員
 我々エコノミストがやるときには、国によって差がはっきりあるとすれば、国ごとにそういう基本的にPERで説明できるのかどうか。それから時期によって違うらしいというところがわかると、時期によってその要因がどう動いたのだろうかというのはわかるのではないかと思うんですが、つまりPERが一般的に動くという話ではなくて、そのPERを動かした要因そのものですね。PERだけやっていきますと、何が外生で何が内生かわからなくなってくるんです。資本国というのは外生の話にも聞こえるし、内生的にも聞こえてくるんですね。バブルを強調すると外生的になってくるし、同時決定なのでしょうけれども、全体全然モデルが明らかになっていませんから、どこまでが説明変数で、どこまでが非説明変数かわからないのですけれども、だんだんPERだけにいきますと、外生か内生かわからないんですね。何が決めているのか。ずっとそういう感じがしているものですから、改めてお聞きします。

○ 山口氏
 過去データを分解して、リターンがPERの変化によってどれだけもたらされたか、それは計測することはできます。ただ、ご指摘のように、その変動要因は一体本当は何だったのだというのは、先ほどちょっと申し上げましたが、金利変動による部分も若干あるかもしれませんけれども、それで説明できる部分は比較的わずかで、理由もなくクラッシュが起こることもあるし、理由もなく株価が上昇することもあると。例えば経済のファンダメンタルに関するニュースが影響しているのではないかということで、そういうことを調べた学者もアメリカにはいます。サマーズたちが過去200 年ぐらいの経済ニュースと株式の変動を突き合わせて、ファンダメンタルに関するニュースのリリースによって株価がどのぐらい動くかということを調べた論文がありますが、ちょっと今手元にないのであれですが、ざっくり言って、株価変動の3分の1ぐらいしか説明できないというようなことを言っております。

○ 福井委員
 少し現実に即した質問になって恐縮なのですけれども、日本の現在の株式市場におけるリスク・プレミアムというのは非常に高い状況になっているのではないかと思っています。先ほど先生のご説明だと追加資料のこの絵で、一番左端、今の日本の状態はパターンとしては一番左の端ではないか。つまり特にデマンド・サイド・モデルで見ると真紅の部分が非常に大きくなっている。つまりリスク・プレミアムが物すごく大きくなっている。この状態だと、私もそう思いますが、本当はこの絵で見る印象よりももっと真紅部分が大きい、リスク・プレミアムが大きくなっている状況ではないかと思うのですが、ちょうだいしました、きょうの本文の資料の方の2ページの定義式でございますけれども、この定義式、少し左辺と右辺を移動させてRfつまり安全利子率を左辺に持っていって、リスク・プレミアムを右に持っていきますと、安全利子率=期待収益率−リスク・プレミアム。期待収益率−リスク・プレミアムというのはいわゆる益回りと言われておるものですね。
 これは定義式上はイコールですけれども、現実の市場ではイコールでは必ずしもなくて、通常は右辺、つまり益回りの方が左辺の安全利子率よりも高い、イールド・スプレッドがプラスの状況にある。日本でも過去の計測では普通の状況ではこのスプレッドが3%ぐらいの開きがずっとあるのが普通であって、そういうふうにイールド・スプレッドがプラスの状況である限り、金利政策によって資産価格がサポートされる、保証がしっかりしている。
 ところがこの右辺、つまり益回り、期待収益率−リスク・プレミアムというものが小さくなって、左の安全利子率・イールド・スプレッドが逆立ちしてマイナスになってまいりますと、金利が今のようにゼロになっても、資産価格に対するサポート力が弱まる、あるいは全くなくなる、こういう状況。
 私の観測しております限り、98年の末以降、最近までイールド・スプレッドというのはマイナスの世界に入っているケースが多い。したがって、それは98年の末以降というのは、日本で金融システムの問題がはっきり表に出て以降、その現象が非常にはっきりしている。したがって、最近こういう年金というふうな長期の問題を扱う議論の場においても、何か株式投資をするのが本当に安全か、しかし出てくる実績は、日本の株価、つまり資産価格に対して、金利面からのサポーティブパワーが失われているがゆえに、予想以上に結果がいつも悪い。だから株式投資をすると非常に悪くて、逆に安全資産である国債に投資している方が実際以上に安全なように見えるという、そういう今やや異常な局面になっているのではないか。
 その場合に、今置きました右辺の株式投資に対する期待収益率とリスク・プレミアム、そのどちらに大きな変動があるかといえば、期待収益率の下がり方よりもリスク・プレミアムの膨れ方の方が大きいということではないか。その非常に膨れたリスク・プレミアムというものは少しは要因分析、リスク・プレミアムですから本来要因分析には耐えないのだろうと思いますが、少しそういう理論的な、あるいは分析的なリスク・プレミアムに対する分析アプローチというのはできていないのかどうなのか。そこがあれば、それが一過性のものかどうかということまでは判定できないにしても、今、異常な状況にあるリスク・プレミアムというのは異常なものとして、どこまできちんと理解しながら、長期的な株価形成のメカニズムに対してリスク・プレミアムの問題は余りいいかげんに扱わないで、考え方を頭の中で整理しながら考える材料が少しは増えるのかどうか、こういうことなんです。
 つまり、ロングランに過去にさかのぼって、好況のとき、不況のとき、あるいはバブルがあったとき、なかったときということも非常に大事なのですが、今の日本の問題は、98年以降、イールド・スプレッドがマイナスになって、金利による資産価格の支えが全く失われているという異常な状況を形成している非常に大きな主役のリスク・プレミアムに対しての現実的な分析の話もちょっと聞かせていただきたいということであります。

○ 山口氏
 今、ご指摘のとおり、金利がここまで下がっているにも関わらずサポートできないと。金利では株価はもう動かないということだと思います。では何で動いているのかというと、前回、小林さんの方からいくつかのモデルがあったと思いますが、配当割引モデルに即していえば、分子の方にある企業収益、その一部である配当・キャッシュフロー、こういったものが足元で低下していて、これからも余りぱっとしないだろうという予想があるということが一つ。
 それから、分母の方の割引率、その割引率の一部を構成しているリスク・プレミアムが非常に膨れ上がっていて、今、ご指摘のとおり、非常にリスクを高く感じていて、プレミアムを高く要求すると。そうやって割引とどういうことが起こるかというと、そういう式に当てはめると分子が下がって分母が上がって株価が落ちると、現に落ちてきたということだと思うんですね。
 今、おっしゃったように要因分析、リスク・プレミアムの中身がどうなっているのだということなのですが、これは残念ながら、私の知る限りそこをちゃんと分析できている研究はないと思います。一般論で言いますと、先ほど高梨委員からご指摘があったように、例えばリスクが下がったらどうなるのだろうかということですね。リスク・プレミアムを形成するとすれば、投資対象のリスクがどのぐらい高いか、低いかというのは一つの要素です。
 もう一つの要素は、人々がどのぐらいリスクを回避したいと思うかどうかというのが二つ目の要素ですね。この二つのかけ合わせでもってリスク・プレミアムというのが出てくるはずなのですが、1番目の方はマーケット・データで観測できるのですが、2番目の方がなかなか数値化できないものですから、学者の間でもいろいろ議論があって、パズルになっているというのが正直なところではないかと思います。

○ 若杉分科会長
 ほかによろしいですか。それでは私から質問があります。先ほどの3ページ、4ページの図のご説明では、標準偏差1%当たり0.3 %ぐらいのリスク・プレミアムというのは世界的な水準ではないかということですね。そういうことでリスクがあれば、それだけのリスク・プレミアムが長い目で見ればありますということですね。
 6ページは、リスク・プレミアムだけをずっと掛けて累乗したということですか。そうであるとするとこの曲線が上昇ているところは、プラスのリスク・プレミアムがついているところで、下がっているところはリスク・プレミアムがマイナスだったということですね。結果的に過去においては、急激な予想の変化や何かが起こって株式のリターンがマイナスになり、リスク・プレミアムもマイナスに出てきているというわけですね。そういうことは日本を見てもアメリカを見ても、90年代までは何回もあるわけですね。
 ところが日本の場合には、90年代以降ずっとほとんど下がりっぱなし、ところどころでは上がってているのですが、10年以上にわたり平均的には下降トレンド、つまりリスク・プレミアムはマイナスだということがあらわれていますね。アメリカもリスク・プレミアムがほとんどゼロみたいなときもあるわけですが、曲線は80年以降ずっと上がって、2000年から下がっているわけで、この低下がどこまで続くか興味があるところです。それにしても、日本がこんなに長い間下がっているのは、異常な状況ではないでしょうか。どういうふうに山口さんはご理解なさいますか。
 それから、われわれ年金資産の運用を考える者としてこの先の行方が深刻な問題です。このまままだ下がっていくのだったら株はとても持てないという意見も当然あるわけです。この辺をどういうふうに、今ご紹介してくださった理論で説明できるかどうかということを教えていただきたいのですが。

○ 山口氏
 マーケットの予想というのは私は不得意でございますのでできませんが、一つは、このリスク・プレミアムの議論をするときにちょっと気をつけなければいけないのは、直接観測できないので、過去データから推測しようとするのですが、今、若杉先生がご指摘になったように、6ページのグラフのように、上がってきたときにはかると過去データは高めに出るということですね。それをもろに信じると何が起こるかというと、次は下がっていくというようなことが起こるわけです。
 実は期待しているリスク・プレミアムが高いと、要するに平均値よりも高い、ノーマルな水準より高い状態があったとしますと、それから後、数年間振り返ってはかると、それが実現すれば高い数値が出るということですね。逆にそういう足元でリスク・プレミアムが非常に高い状態は何かというと、売り込まれていて非常に高い状態が続いている。株の話だとわかりにくいかと思いますので、例えば社債を想像していただきたいんですね。社債も国債に比べてリスクが高いので、リスク・プレミアムがあって、イールドの、格付けの部分でイールド・スプレッドがのっかっているという状態になります。ある会社の社債が非常に危ないとみんなが認識した場合は何が起こるかというと、その社債が売り込まれて価格は下がり、イールドは上がるという状態ですね。
 そのときに過去データを見ると何が起こるかというと、価格は下がりましたので、過去データでは低めの数字が出てくると。ただ、足元、目に見える社債の格付けスプレッドはそこではね上がっているという状態ですね。ですから過去データと足元の推計といいますか、期待ベースの数値は逆に見えてしまうことがあるというのが非常にいやらしいところなんですが、ポイントでございます。
 同じことが株式にも言えまして、株価が下落してきていると、実はプレミアムは上がってきているということがあります。ですから逆に言えば、リスク・プレミアムが上がったから、株価が下落してきたということも言えると思います。それが一般論として、先ほどの話の中で言えなかったことなんですが、非常に大事なポイントだと思います。
 今、先生がおっしゃった、これから先どうなるのかということは、私がどうなるという予測をする立場にはございませんのであれなんですが、基本的には、90年代に日本の株価が急に下がってきたのは一つはリスク・プレミアムの上昇もあるかもしれませんが、もっと基本的には企業のファンダメンタルズの体力低下と、先ほどのROEがだんだん低下してきたというところにありますので、結局のところ、サプライ・サイドからの改革というか、企業収益がちゃんと出るような形に持っていかないとだめだということに尽きると思うんですね。
 ですから、その結果どうなるかということはなかなか言えませんが、少なくともそれが前提条件になると思います。

○ 吉冨委員
 リスクじゃないのか。

○ 若杉分科会長
 イボットソンさんの考え方は、長期的には株式投資にはリスクに見合ったリターンがあるということですね。逆に言えば、株価は、リスクに見合ったリターンが上がるように形成されるはずだと。そういう意味で言えば、株価は経済が成長していれば、ずっと上がり続けていくわけです。あるいは経済が成長しなければ、株価はほとんど平らで、下がっていくことはあり得ないわけですね。企業が平均的な利益を上げ続けていけば。
 日本は90年以降、株価がずっと下がっているわけです。今山口さんが言われたように、企業の環境が悪化しかつてほど利益の成長が期待できなくなったという大きな予想の変化があれば、株価は大きく下がります。しかし、その後は、その予想の下で一定のリターンが上がるように株価が付くわけです。合理的な市場であれば、企業の成長にともない、それに合わせて株価は上昇していきます。実際、90年以降も内部留保がなされてきたのですから潜在的な成長性はあったはずです。しかし、株価のほうは90年代に入って暴落した後、上がらないどころか、まだずるずると下がっている。ということは、行動ファイナンスが言うように日本の株式市場には合理的でない部分があるのか、それとも合理的な何らかの説明要因があるかのいずれかです。投資家は合理的だけど、日本の企業が投資家をずっと裏切り続けてきたという見方が一つあります。予想を下方へ下方へと繰り返し変更背ざるをえなかった。そのために株価が上昇に転ずる間がなく下がり続けた説明です。
 もし、そうだとすると、5年も10年も裏切られてきて、まだ裏切られているということは、投資家は合理的でないということを意味してます。そうだとすると、8,000 円という今の株価はまだ高いのであって、投資家はいいかげんに目を覚まして、3,000 円とか2,000 円という株価を付けるのが合理的かもしれない。
 イボットソン流には、どのように合理的に説明するのでしょうか。少々いじわるな質問で申し訳ありませんが。

○ 山口氏
 ビジネスとして発言すると、フィーをいただかないと……

○ 若杉分科会長
 一般的に。

○ 山口氏
 コンサルタントですからあれなんですが、ちょっと冗談を置いておいて。
 いろんな要素があると思うんですね。今、TOPIX をベースに議論していますので、日本企業全部を一緒くたに議論していますけれども、全部の会社が悪いわけではないと思うんですね。中でも頑張っている会社がある。それはマーケット全体を見ると、例えばその中の一部のセクター、最近よく取り沙汰される、いろいろ言われています業種等が足を引っ張っているということがある。マクロ的には全部一緒くたに議論していますのであれなんですが、裏切り続けている企業とか業種もあるでしょうけれども、日本企業全部が悪いわけでは多分ないでしょうということは言えると思います。
 ですから、本当の原因が何があったかというのは私はよくわかりませんが、日本企業全部が悪いのだというのは多分当たらないと思います。

○ 若杉分科会長
 ただ、9ページを見ると、ROEがずっと下がっているわけで、先ほどの竹内さんのように、つい最近を見れば上がっているように見えるというふうな、そういう見方もミクロではできるかもしれないけれども、ずっと下がっているわけで、80年代の景気がいいときで、最後はバブルになったけど、そのときでさえ低下傾向になっていますね。そういうことを考えると企業の収益力が悪い。

○ 吉冨委員
 成長率が落ちていますからね。

○ 米澤委員
 今、若杉さんがうまいまとめ方したのですが、企業の業績の悪いのと、それから、あと福井委員がおっしゃられたリスク・プレミアムの動き。今、説明すると今の企業の業績が悪いと、理由はともかくリスク・プレミアムが上がっているというのが正しい理解だと思っています。企業がどう回復するか、そちらの方は比較的予想しやすいのかなと。
 きょう出していただきました9ページの図は、これはかなり重要なことをやっていて、よくマクロの経済学者たちは言うのですけれども、1973〜1974年で大きく日本経済は低成長に入ったと。あといろいろバブルとかあるのですが、74年、石油ショックぐらいまでの高度成長とその後、石油ショックでなくて、石油ショックもありますが、レーバー等の関係で74年ぐらいから低成長に入ったという意味では、ROEが今は低すぎますけれども、回復したとしても、マクロで見る限りは、そう高いROEは期待できないのだと思います。これはあくまでも重要なことでマクロ全体で見た話で、かつ4ページで、ドイツ、イタリア、日本、100 年というのはどういうふうにデータとったか、私はよくわからないのですが、これが高かったというのは本当にゼロからスタートしたというのは事実で、要はTOPIX というオールド・エコノミーの集団と言っては怒られるのですけれども、そこで聞く限りはそうROEも高くないです、全部にいく限りは。だから、そうでないところのROEは高くなる可能性はあると思いますけれども、TOPIX ベースないしはもっとエスタブリッシュな企業というのはそう大きくならない。何しろ資本の装備が非常に大きくなるわけですから。そういう意味で、マクロではそんなに回復しないけれども、ミクロ的なところではいろいろいい企業が出てくるでしょうということだと思います。
 リスク・プレミアムの回復は、これは非理論的なのですが、一つは歴史を見たいと思うのですが、残念ながら大不況の後、回復したのは戦争だったわけですので、北欧あたりの最近のクラッシュがどの程度回復しているのか、多分これは不良債権などの回復の問題とも関わってくると思うのですけれども、何といっても人々は悪くなればなるほどリスク・プレミアムを高く要求します。
 もっと言いますと、さっき山口さんもおっしゃったクレジット・スプレッドのレーティング間の差も、悪いときに非常に開くんですね。1997年の秋頃からの金融ショックで非常に開いて、ジャパン・プレミアムが開きました。その後、比較的公的資金が注入されて減っていますけれども、また去年ぐらいから上がっています。A格あたりとB格あたりの差ですね。というので、それは非常に心理的な要因が大きいと思いますし、今非常に開いていると思います。ですからそれがどう縮むかは、答えにはならないのですけれども、景気がよくなれば縮むということです。
 まとめますと、前者の方はうまくROAが高くなるような企業を探すことは私はできると思います。それが東証一部なのかちょっとわかりませんけれども、多分そうでないところの企業を探すことによってそれは出てくるくと思います。プレミアムはよく答えはわからないけれども、景気がよくならない限り高いのは続くと思っています。

○ 寺田年資金運用基金投資専門委員
 一つは、この6ページのリスク・プレミアムの累積指数の計算の定義なのですけれども、これは51年からずっと計算していますけど、これは例えば第1年目のリスク・プレミアムをERPの1とすると、(1+ERP1)×(1+ERP2)×(1+ERP3)という具合に長期に(1+ERP)を掛け合わせて、最後に1を引いた、そういう数字でよろしいのですか。

○ 山口氏
 そうです。いわゆる複利コンパウンディング方式。

○ 寺田年資金運用基金投資専門委員
 そうすると、例えばアメリカの場合、90年ちょっと前から下がり始めました。これはこの時点の意味は経済的に意味があるのだろうと思いますけれども、それまでにかけて、51年からずっと上がっているのですが、これは毎年のリスク・プレミアムがプラスである限りは、傾向的に別にプレミアム自身がだんだん上がっていかなくても増えていくわけですね。そういうふうに解釈してよろしいのですか。何かこれで見ると、リスク・プレミアムそのものが、90年頃までにかけて非常に拡大してきたような印象を受けるのですが、例えば毎年コンスタントのリスク・プレミアムがあったとしても、図のようになってきますよね。それでよろしいんですね。

○ 山口氏
 このある期間をとって通期でやると、今おっしゃったようなのがその期間の、要するに複利の平均といいますか、幾何平均になります。これは過去の月次を累積していますので、過去の毎月毎月の株式市場インデックスと長期国債インカム・リターンの差ですね。これをとって毎月掛け合わせていったグラフになっています。

○ 寺田年資金運用基金投資専門委員
 必ずしもリスク・プレミアムそのものが年々を経るにつれて大きくどんどんなったと、必ずしもそういうことはこれは意味してないと。

○ 山口氏
 違います。これは累積して価値が増えているだけなので、リスク・プレミアムという意味では、この期間で計測したら平均的にはいくらだったのか、期中の幾何平均といいますか、複利平均になりますですね。

○ 寺田年資金運用基金投資専門委員
 要するにリスク・プレミアムと標準偏差の関係、経済的には仮説がいろいろ議論されたのですけれども、なかなかそれははっきり定式化して、ましてや実証分析により、確かめることはできないと思うのですけれども、一つ言えることは、標準偏差というのはオーバータイムに安定しているということは言えると思うんですね。このように50年間あるとすれば、例えばこれを5年ずつの単位期間、10年の単位期間ずつにして、例えば月リターンをサンプルとして、単位期間ごとにその標準偏差の年率化したものを比べてみますと非常に安定している。これはアメリカにおいても同様のことが言えるんですね。ですから、経済的な要因からのチェックは難しいのだけれども、標準偏差そのものかなりステーブルだということは言えると。これはいろんな証明がされていると思うんです。それから、もう一つ言えることは、アメリカと日本と比べると標準偏差がやはりアメリカの方が低いんですよね。アメリカは計測のやり方、期間のとり方によっても若干違いますけど、大体20前後の数字が出る場合が多いと思うんです。日本は25〜30前後が多いと思うんですよ。ここで35と出て、私、初めてこんな大きい数字が出たのに気がついたのですが、大体普通は30弱の数字が計算されるのですけど、そうすると日本の方が標準偏差がそれだけ10ぐらい違うということは、アメリカのリスク・プレミアム論争がいろいろなされていますけど、日本のリスク・プレミアムを議論する場合、標準偏差が大きいとすると、それが何か含意しているのでしょうか。

○ 山口氏
 実は日本もアメリカも戦後の、例えば1950年代以降とると、割と年率20%前後で上下しているという状態でございまして、それが我々がふだん見なれた姿でございます。4ページ目のグラフは、去年出ました超長期のデータを集めてきたディムソンたちの研究成果でございますので、これを見たとき、私も実はびっくりしたのですけれども、そういうデータを無理やりつなぎ合わせて見ると、こういうデータになってしまったということだと思います。
 実はここでディムソンたちの研究は、動機として世界各国を一律に100 年間比べようという強い動機で始めたものですから、必ずしもデータが同じ方法で集めたデータできっちり揃っているわけではないんですね。つぎはぎでやっています。日本でも戦争中とか戦前のデータなどはかなりどうかなと思われるのだけど、これしかないから仕方がないかというようなデータでやっていますので、信頼性の点ではいま一つというところはあると思うのですが、ただ、一般的に言えますのは、非常に激しい戦争とかそれからの復興を経験した時期が含まれているデータですと、こんなふうに見えてしまうということですね。
 今、寺田さんご指摘いただいたように、比較的戦争とかという状態を除けば、景気がいいとき、悪いときありますけれども、米国の方がちょっと日本よりリスクは低めという感じではあったと思いますね。

○ 吉冨委員。
 先ほど米澤委員がおっしゃった高成長から低成長になったというのは、73〜74年の石油ショック以降から90年のごく手前までは実質GDPの成長率見ても4.5 %あって、それ以前の10%よりは低いのですけれども、その後は潜在成長率みたいな、いろんなはかったものを見ても2%ぐらいですから、大ざっぱに言うと、10、5、2と下がってきたというのが現実ではないでしょうか。それがなぜ10かというと、ここでいつも議論になるように、このレート・オブ・リターンというのは、経済の潜在成長率に見合って賃金がどれだけ上昇するかという比較した上でのリターンが十分に高いかどうかという議論ですから、リターンのレベルそのものが低いということを議論しても余り意味がない、この会の基本的な認識だと思います。
 したがって、そういう潜在成長率の低下の度合いというのは非常に重要で、過渡期には、ちょうど石油ショックの後のように低迷するときがどうしても出てくるわけです。というのは設備投資が調整せざるを得ないし、ほかのも全部調整します。
 逆に今度は、上昇するときには反対になるわけですね。80年代、日本がそうでしたし、90年のアメリカがそうです。先ほどの議論のように、不況期にだけ短期的になるというのは私はちょっとおかしいと思いますね。長期のときに、好況のときに短期的になって、今の好況はもっと続くと思うわけですから、そういう意味ではshort sightness というのは不況のときであろうとバブルのときと非常に似ていると思った方がいいかと思います。
 そういう観点で、6ページの累積を見ても、これは上の方は日本という意味ですか。そうしますとアメリカも説明しやすくて、アメリカの場合は、70年代から80年代前半までは株価低迷の時代をみんなが知っている。85年以降上昇し始めて、95年以降アクセレライトしているのはITブームでまさにバブル。
 日本も全く同じで屈折していますけれども、これは高成長から中成長になって、80年代の後半は4.5 %の成長率というのは6%になったのではないかという説が当然あって上がっていって、今の調整というのは、80年代中頃のところに調整しつつあるというわけですから、そういうふうに大きくマクロ的に見ると、この数字は我々から見ると非常に整合的に動いているという気がします。

○ 若杉分科会長
 ほかにいかがですか。時間も大分たってきましたけれども、皆さんからご発言いただきましたが、よろしいですか。もし特にご議論なければ、山口さんにも随分長い間議論していただきましたので、そろそろ終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 これまで5回にわたってずっと議論してまいりましたが、これからも続けていくつもりですけれども、本日、山口さんにご説明いただいたことを参考にしながら、これから年金積立金の運用の在り方についてさらに検討を重ねていきたいと思います。できれば、3月には基本的な考え方について分科会としての意見を取りまとめたいと考えておりますので、委員の方々もそういうようなことを念頭に置いていただければと思います。
 それではお約束していた時間もほぼまいりました。いつもよりちょっと早めですけれども、たまには早いときもあっていいかと思いますので、きょうはこれでおしまいにしたいと思います。
 次回以降の日程について、事務局から確認をお願いします。

○ 泉運用指導課長
 次回でございますが、来週2月7日(金)午後3時から場所はこの同じ場所を予定いたしております。よろしくお願いします。

○ 若杉分科会長
 そういうことですので、毎週で大変恐縮ですけれども、よろしくお願いします。
 それでは、本日はこれで終了いたします。山口さんどうもありがとうございました。皆さんどうもありがとうございました。



トップへ
戻る