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資料1

第2回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会ヒアリング発言要旨(未定稿)

項目 発言要旨
患者・家族の現状
吸引されなければ死に直接かかわり、家族は常に患者のそばから離れられないのが実情。
介護者のレスパイトを確立させないと、患者のQOLを高めることは無理。そのためにも、ヘルパーの吸引は大変必要である。
ALSの場合には、全国的に長期の入院が困難であるという状況である。
人工呼吸器を必要とする患者のうち、家族の介護負担を心配して断念している割合は、約3割にのぼる。
たんの吸引を家族が行っていることについては、現行の体制下では家族が担わなければならない現実があるので、望むと望まざるとにかかわらずそれを行っている状況だと考えている。それよりも問題なのは、家族がいない患者も現実には居ることである。
訪問看護の現状及び評価
訪問看護サービスは、ステーションの規模やALS患者の医療依存度に照らせば、まだ不十分だと思う。
訪問看護師がフットワークよく動けるように、活動や判断の幅を持てるようにすべきである。
人工呼吸器を装着された方に、質の高い納得される看護ケアを提供できるよう、研修等で技術を強化したい。
訪問看護の回数に関しては、ほとんどが家族や本人の希望が第一で、訪問回数は非常にばらつきがある。
1日複数回の訪問や、長時間のケアの体制作りが望まれるが、そのような制度になっていない。
例えば、巡回型訪問のため30分の訪問を複数回しても、初回30分間の訪問で1回分の料金が算定でき、2回目では額が顕著に下がり、3回目以降は算定できない。
1日の累積回数は、同一のステーションについてカウントされることから、複数ステーションが共同して実施する誘引が働かない。
2か所以上のステーションの同日訪問が可能になれば、巡回型が組みやすくなる。
県単独事業の難病患者介護家族リフレッシュ事業の促進により、患者家族の夜間レスパイト目的での活用がなされるのではないか。
退院日の訪問が可能な算定ルールと、マンパワーの確保、自動吸引装置の開発ができればいいのではないか。
毎日の訪問に加え、介護者のレスパイトサービスの要請に応えるため、例えば遠距離の長時間(4時間滞在)訪問看護等も実施している。
利用者に安全なケアを提供するための提案として、(1)在宅ケアは複数のステーションが共同して関わること、(2)ステーションの質の均等化をさらに強化して、ALS患者等への訪問看護の積極的な取組、(3)ボランティア制度の制度化、(4)訪問看護ステーションの職員配置に、ALS患者専属ナース、難病経験豊富なナース、必要な時間帯だけ勤務できるナースを採用、(5)地域医療・保健・福祉の連携強化、(6)積極的な在宅看護教育が挙げられる。
地域での医療的な支援体制を確立することが大きな課題である。
医療職に対しては、何か起こったときのために、いつでも連絡をしたら飛んできてくれるというか、対応してほしいという希望がある。
在宅ALS患者に対する訪問看護師など、医療職の訪問制限があると聞いている。この枠を外していただきたい。
24時間体制でナースが入ってくれるというのは、もちろん望ましいことだと思うが、すぐには実現できまい。
平成12年9月にALS協会で実施した調査では、週7回以上の訪問看護の利用率は約3%、週1〜3回が約6割。なぜそういう状況になってしまうかというと、医療保険で2回、研究事業でさらに追加できるという形である。そもそも近隣の市町村に訪問看護がない地域がある。ステーションによっては、看護師のマンパワー不足によって、どうしても頻回に利用者のところには訪問できない。2回目で6割ほど点数が下がってしまう。交通費の自己負担が賄えない。
医療と福祉の連携・地域ネットワーク作り
在宅のALS患者の支援は、医療依存度が本当に高いため、介護保険のケアマネージャーより、むしろ保健師か看護師がケアのマネジメントを行う方が適しているのではないか。
地域の支援ネットワーク作りやチームケア体制を強化するために、もっと積極的に保健所の保健師が行政の立場から関わり、訪問看護等看護職の活用を図る必要がある。
訪問看護と介護の協働を強化して、それぞれの専門性を発揮し、ALS患者のQOLを高める必要がある。
ケアチームとの役割分担で、効果的に連係し、その人らしさを失うことなく生活ができるように支援することが、医療職・福祉職の役割と考える。
医療職と介護従事者の連携が十分になされた上で、それぞれの役割が十分果たせるだろうと考えている。
実施に当たっては、訪問看護との業務の分担を明確にし、必ず訪問看護が定期的に利用されており、常に連携可能な中で提供することを条件付けるべき。
医療関係者とヘルパーの役割分担を明確にすべき。
看護師が100%看護に当たってもらえたら、安心して介護ができる。役割分担を明確にすべき。
患者が病院から呼吸器を着て退院する際の指導内容も、病院によって指導の内容、質と量に差がある。指導内容・質を統一して、安心、安全に在宅療養していくことができるかという体制整備を図るべき。
たんの吸引
平成10年に訪問看護業務の難易度を調査したが、気管内吸引は、130項目中26番であり、非常に難易度の高いケアとして挙げられている。
ALS患者は様々な症状の変化があるし、一人一人の状態が異なるという特徴がある。吸引により引き起こされる合併症やリスクも多く、医学・看護学の知識・技術に基づいた個別の判断力が必要である。
たんの吸引については、単に吸引方法の指導を受けて行えるような行為ではない。それをすることによって予測される危険など、医学的な知識も同時に修得しなければできない。
現状のホームヘルパーの養成課程から考えて、命に関わる行為をホームヘルパー一般の業務として拡大することは難しいのではないか。
患者自身の要望や、その方に合った吸引の仕方があるので、家族のように特別のなじみの関係で、長く付き添える方が必要になる。ホームヘルパーが誰でも業として行うケアではない。
医療行為ということは、やはり看護職がきちんと守って、患者の生命、患者の負担なども軽減していかなければいけない。
介護職の医療的行為についてのアンケート調査の中で、261名の介護士のうち14名が日常的に吸引を行っている。その約23%の者が医療職あるいは看護職の指示によって行っている。
きちんとした教育が整備されていない中での、対患者との関係、対ドクター、対看護職の関係の中で、ヘルパーのたんの吸引が行われているということは大きな悩みである。
一人一人のホームヘルパーの経験や介護技術のレベルは様々であり、一律にたんの吸引を担うことについては、ニーズや期待の高さを感じながらも大きな不安は拭えない。
ALS患者のたんの吸引をホームヘルパーが業務として行うことについて法的な整備が必要。
担当するホームヘルパーは、介護福祉士の資格を有し、かつ、介護職としての一定の経験を有することを要件とすることが必要である。さらに、実施の業務に当たっては、専門的な研修及び利用者や家族と一緒にかかりつけ医や看護師から具体的な実施方法を修得できる体制の整備を図るべき。
ホームヘルプサービス事業所として業務を行う仕組みとしていただきたい。ホームヘルプサービス事業者と医師や訪問看護などの医療機関との連携体制を明確にし、それぞれの責任の所在を明らかにすること。担当するヘルパーの管理・教育、事故対応、賠償保険への加入など事業者の責務を明確にし、ホームヘルプサービス事業者が必要な業務体制を整備することを義務付けること。こうした仕組み作りに対して、国、自治体等が必要な支援を行うべき。
ヘルパーも経験年数が大変短い者が多く、パートや登録のヘルパーが主流を占めている。そういう中で、責任もって、ヘルパーが吸引をできるとは言えない。
吸引は、本来は、訪問看護の使いやすい体制で行われるのが筋である。
常時訪問看護師がいない限り、ヘルパーが訪問している間に痰の吸引を行う必要性が出てくるため、緊急時対応ができるように目指したい。
きちんと教えれば、ヘルパーはたんの吸引をきちんとできる。たんの吸引は難しくて大変だ、という視点から考えるべきではない。
(何か資格を持っているからすなわちできるという理解ではなく、特別な関係がそこにあって、周りにいる人が「この人なら大丈夫だ」ということで初めて成立する関係だと認識すればいいのか、との質問に対して)そうである。
実施者に関しては、医師、看護師の指導を受け、研修を修了したヘルパーと介護者を望んでいる。必要な知識と技術、吸引を安全に実施できるようにするための知識や技術を修得する教育体制が必要である。
ALS協会の平成12年9月調査では、ALS患者全体の約48%に対し、看護師以外の者がたんの吸引を実施している。
ヘルパーの医療面での教育
難病患者ヘルパー養成研修では、たんの吸引・人工呼吸器の装着等患者の医療ニーズ高まっていくこと、それに伴い、本人・家族の精神的不安や社会的問題が発生すること、したがって、患者の心理、家族の心理などの理解が必要である、といったことを学んでいる。
保健所主催のヘルパー講習では、栄養管理、呼吸管理、コミュニケーション方法の工夫、精神的ケア、患者への援助など重要な事項を学んでいる。
看護師・ヘルパーの指名制
指名制というのは非常に難しく、一人の看護師だけが知っていて、他の看護師が知らないというより、ローテーションを組みながら、同じレベルの看護が提供できるということが望ましい。
新しい看護師やヘルパーが来ると、一から説明しなければならないので、利用する側にとっては負担。同じ方に来てもらいたい。
訪問看護師の指名制については、望ましいと思う。
その他
排たんに関する呼吸リハを適切に行うことにより、吸引の間隔が長くなる。
呼吸リハ時の吸引についても、大事な問題である。
患者本人の精神的負担軽減のためにも、積極的に、たんの吸引に関する機器の開発を進めることが望まれる。
ALS患者とは関係ないが、小児難病患者を抱える家族は、24時間連続して介護を行っているが、実態が余り知られていないのではないか。
それぞれの立場からの主張は、正論だということは理解できるが、患者や家族は生命がかかっていることなので、どうか生命を守る立場で御議論いただきたい。
吸引を必要とするすべての人について、在宅に限らず全ての療養の場におかれている患者について、24時間の範囲で、対象としてほしい。


第2回
看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会
参考人メンバー


佐藤美穂子 財団法人日本訪問看護振興財団常務理事

上野桂子 社団法人全国訪問看護事業協会常務理事

石川セツ子 社団法人秋田県看護協会訪問看護ステーションあきた所長

田中雅子 社団法人日本介護福祉士会会長

村田みちる 全国ホームヘルパー協議会会長

因利恵 日本ホームヘルパー協会会長

中垣貞子 光明荘ヘルパーステーション主任

橋本操 日本ALS協会副会長兼吸引問題解決促進委員会委員長

長岡明美 日本ALS協会理事

海野孝太郎 日本ALS協会吸引問題解決促進委員会事務局長


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