水道水中のシアンイオンは、消毒により付加される塩素等により次式のように酸化され塩化シアンとなる。
- CN− + Cl2 → CNCl + Cl−
シアン1mgに対する塩素要求量は約2.73mg(理論値)である。
しかし、実際には必ずしも反応が進むわけではなく、シアンイオン0.1mg/L溶液100mL(シアン0.01mg)に塩素を添加したのち塩化シアン及びシアンイオンを測定した場合、塩素の添加量によりシアンイオンも存在する。(表1参照)
表1 シアンイオンに塩素を添加した場合の反応(値は吸光度) |
塩素添加量 |
塩化シアン |
シアンイオン |
合計量 |
0.65mg |
0.067 |
0.157 |
0.224 |
1.3 mg |
0.113 |
0.103 |
0.216 |
6.5 mg |
0.227 |
0.010 |
0.237 |
13 mg |
0.226 |
0.012 |
0.238 |
26 mg |
0.226 |
0.010 |
0.236 |
|
また、シアン濃度1.0mg/Lの溶液100mL(シアン0.1mg)に塩素を0.4~0.9mg添加し、塩化シアン濃度の経時的変化を測定したところ、表2の結果が得られた。
表2 塩素添加量の違いによる塩化シアン濃度の経時的変化(値は吸光度) |
塩素添加量 |
直後 |
1時間後 |
2時間後 |
4時間後 |
6時間後 |
0.4mg |
0.038 |
0.041 |
0.046 |
0.055 |
0.061 |
0.5mg |
0.047 |
0.061 |
0.061 |
0.062 |
0.060 |
0.6mg |
0.058 |
0.072 |
0.070 |
0.065 |
0.053 |
0.7mg |
0.070 |
0.084 |
− |
0.070 |
0.075 |
0.8mg |
0.076 |
0.095 |
− |
0.077 |
0.081 |
0.9mg |
0.102 |
0.104 |
− |
0.071 |
0.080 |
|
塩化シアンはアルカリ下で塩素により分解されることから、塩素の添加量が多いほど塩化シアンの生成が早く、また、分解も早いと考えられる。
以上より、シアンイオンと塩化シアンは塩素の添加量によって共存する可能性があることがわかる。 |