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平成15年2月10日


在宅のALS患者に対する「痰の吸引」の療養支援の検討に対する意見

社団法人 日本介護福祉士会
全国社会福祉協議会・全国ホームヘルパー協議会
日本ホームヘルパー協会


 ホームヘルプサービスの事業の中で、近年、ALS患者の方をはじめ医療機器や訪問看護など、医療的な支援を受けながら在宅で暮らす利用者にサービスを提供することが多くなっています。こうした利用者の方が、在宅で暮らすうえで欠かせない「痰の吸引」など医療的な処置は、利用者や家族の方の大きな負担となっており、こうした処置をホームヘルパーが行うことへのご要望がたいへん切実なものになっていることを、私たち自身も充分受け止めています。しかし、医療従事者ではない私たちがこうした業務ができないことをご説明し、訪問看護やかかりつけ医などと連携をしながら、できるだけ利用者や家族のニーズに応えるサービス提供に努めているところです。

 この度、全国のALS患者の方々の要望に応え、国として、家族にとって介護負担の高い「痰の吸引」の行為などへの支援について検討をすることに対しては、私たちとしても大きな期待と関心を払っているところです。

 私たちホームヘルパーは、こうしたALS患者の方が、住み慣れた地域の中で暮らし続けたいという願いを受け止め、できる限りの支援を行いたいと感じていますが、ひとりひとりのホームヘルパーの経験や介護技術のレベルは様々であり、一律に「痰の吸引」を担うことについては、ニーズや期待の高さを感じながらも大きな不安はぬぐえません。

 限定的であったとしてもホームヘルパーが医療行為を行うことは、大きなリスクがあります。このリスクは、ホームヘルパーだけでなく、当然利用者の生命にも関わるリスクです。こうしたリスクを十分に念頭におき、慎重な検討をお願いします。

 私たちホームヘルパーは、地域の医療機関や訪問看護に携わる医療従事者と協力し、ALS患者やご家族の方が安心してサービスが利用できる条件づくりが必要であると考え、下記のような意見を集約いたしました。ぜひとも、よい方向性が導かれることを期待いたします。

 在宅で医療的な支援をうけながら暮らす方々に対して、訪問看護をはじめとする地域での医療的な支援体制を確立することが大きな課題であり、早急に充実させてください。

 ALS患者の方の「痰の吸引」をホームヘルパーが担うにあたっては、利用者及びホームヘルパーのリスクを充分に踏まえ、法的整備や業務の範囲、担当するホームヘルパーの要件を明確にし、ホームヘルプサービス事業の一環としてサービス提供ができるよう、十分な条件整備を図ってください。

  (1) ALS患者の方への「痰の吸引」をホームヘルパーが業務として行うことについて法的な整備をしてください。

(2) 実施にあたっては訪問看護との業務の分担を明確にし、必ず訪問看護が定期的に利用されており、常に連携可能な中で提供することを条件づけてください。

(3) 担当するホームヘルパーは、一定の水準が必要です。介護福祉士の資格を有し、かつ介護職としての一定の経験を有することを要件とすることが必要です。また、ホームヘルプ事業に従事する看護師や准看護師の有資格者を活用することも考えられます。さらに、実際の業務にあたっては、専門的な研修及び利用者やご家族と一緒にかかりつけ医や看護師から具体的な実施方法を習得できる体制の整備を図ってください。

(4) 医師や訪問看護、あるいは利用者や家族からホームヘルパー個人が請け負って業務を行うような方法ではなく、ホームヘルプサービス事業所として業務を行う仕組みとしてください。

ホームヘルプサービス事業者と医師や訪問看護などの医療機関との連携体制を明確にし、それぞれの責任の所在を明らかにすること。

担当するヘルパーの管理・教育、事故対応、賠償保険への加入など事業者の責務を明確にし、ホームヘルプサービス事業者が必要な業務体制を整備することを義務づけること。

こうした仕組みづくりに対して国、自治体等が必要な支援を行うこと。


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