戻る

資料3−3

水質検査方法の概要について


(担当主査:安藤委員)

I.基本的考え方

1.  法令で検査を義務付ける場合、いわゆる公定検査法を定めることが通例である。これは、検査方法によっては、同一の試料を検査してもその結果が異なることがあること、また、許容値等を定める関係上少なくとも当該許容値等を測定し得るものでなければならないからである。水質基準に係る検査方法においても例外ではない。

2.  一方、水質検査技術の進歩は格段のものがあり、これらの技術革新を適切にとりいれていくことも必要である。また、水質試料については、地域や原水の種類・質、さらには浄水方法により、混在物質(検査妨害物質)の種類・量もさまざまである。このため、水質検査方法については、上記1の要件を満足しつつ、より柔軟な検査が可能となるよう配慮すべきである。

3.  以上の諸点に留意しつつ、公定検査法とされることを念頭におき、次のような原則に基づき水質検査法の検討を行った。
(1) 水質基準項目(物質)を確度よく測定できる方法であること
(2) 定量下限として基準値の1/10以下の値が得られる方法であること
(3) 精度の高い方法であること(基準値の1/10において変動係数が無機化合物で10%以内、有機化合物で20%以内であること)
(4) ベンゼンなどの有害物質を極力使用しない方法であること
(5) 上記の条件を満たす方法が複数ある場合には、可能な限り多くの方法を提示すること
(6) 自動検査法が採用できる場合にあっては、積極的にこれを採用すること
(7) 検査方法の記述に当たっては、上記(1)〜(4)の要件を確保するための必要最低限の要素(装置、操作、試料・試薬の種類・量など)を記述するに止め、(1)〜(4)の要件の確保には影響しないと考えられる要素については簡略化し、検査者の工夫の余地を残すこと

4.  具体的な水質検査方法の設定に当たっては、水質検査の合理的な実施を考慮して、複数の物質を同時に測定できる一斉分析法を採用することを基本とした。

5.  なお、水質検査技術の革新等に柔軟に対応できるようにするため、上記の方法以外であっても、これらと同等以上の方法と認められる検査方法については、これを積極的に公定検査法と認める柔軟なシステムを工夫することが必要である。


II.微生物に係る水質検査方法

1.一般細菌  標準寒天培地法による。

2.大腸菌

 次のいずれかの方法による。
 (1)  乳糖ブイヨン−ブリリアントグリーン乳糖胆汁ブイヨン培地法
 (2)  特定酵素基質培地法


III.化学物質に係る水質検査方法(農薬を除く。項目ごとの検査方法は別添参照、)

1. 無機化合物

 (1)  重金属類 対象となる重金属の種類に応じ、下表に示す方法による。
検査法 測定対象物質
(1) フレームレス−原子吸光光度法 カドミウム、セレン、鉛、ひ素、クロム、亜鉛、鉄、銅、ナトリウム、マンガン など
(2) 還元気化−原子吸光光度法 水銀
(3) 水素化物発生−原子吸光光度法 セレン、ひ素
(4) 誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法) カドミウム、鉛、クロム、亜鉛、鉄、銅、ナトリウム、マンガン など
(5) 水素化物発生−ICP法 セレン、ひ素
(3) 誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP-MS法) セレン、ひ素
(4) 吸光光度法

 (2)  その他の無機化合物 対象となる化合物の種類に応じ、下表に示す方法による。
検査法 測定対象物質
(1) イオンクロマトグラフ法 シアン、硝酸性窒素・亜硝酸性窒素、ふっ素、塩素イオン など
(2) 吸光光度法 シアン、硝酸性窒素・亜硝酸性窒素、ふっ素 など
(3) 滴定法 塩素イオン、硬度 など

2. 有機化合物
対象となる有機化合物の種類に応じ、下表に示す方法による。
検査法 測定対象物質
(1)   ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析法(HS-GC/MS法)
四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、シス-1,2-ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルム、1,3-ジクロロプロペン(シス、トランス)、1,1,1-トリクロロエタン など
(2)   パージ・トラップ−ガスクロマトグラフ−質量分析法(PT-GC/MS法)
四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、シス−1,2-ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルム、1,3-ジクロロプロペン(シス、トランス)、1,1,1-トリクロロエタン など
(3)   固相抽出−ガスクロマトグラフ−質量分析法(固相抽出-GC/MS法)
塩素イオン、硬度 など
(4)   固相抽出−高速液体クロマトグラフ法
チウラム など
(5)   吸光光度法
陰イオン界面活性剤、フェノール類 など

3. その他
対象となる項目の種類に応じ、下表に示す方法による。
測定項目 検査法
(1) 蒸発残留物 ・ 重量法
(2) 有機物等 ・ 滴定法(過マンガン酸カリウム消費量)
・ 燃焼酸化法、湿式酸化法(総有機炭素、TOC)
(3) pH ・ ガラス電極法
・ 比色法
(4) 味 ・ 官能法
(5) 臭気 ・ 官能法
(6) 色度 ・ 比色法
・ 透過光測定法
(7) 濁度 ・ 比濁法
・ 透過光測定法
・ 積分球式光電光度法
・ 散乱光測定法
・ 透過散乱法


IV.農薬に係る水質検査方法
  農薬に係る水質検査方法については、資料3−7を参照のこと。


別添 項目ごとの検査方法一覧 (PDF 23KB)




トップへ
戻る