戻る

資料3−2

化学物質に係る評価値の算出方法等について


(担当主査:江馬委員)

I.人の健康の保護に関する項目

1. 毒性評価
毒性評価に当たっては、定法に従い、以下の方法により評価を行った。

 (1)  WHO飲料水水質ガイドライン、IPCS環境保健クライテリア等の国際的な評価や検討時点において入手可能な文献情報等により、人の暴露データや動物を用いた各種毒性試験(短期毒性試験、長期毒性試験、生殖・発生毒性試験、変異原性試験、発がん性試験等)等の毒性情報を収集・整理し、毒性の評価を行った。なお、評価に当たっては、暴露源(暴露経路)を考慮した。

(閾値があると考えられる化学物質)
 (2)  毒性に関する閾値(それ以下の暴露量では当該化学物質による悪影響が発現しないと考えられる値)があると考えられる化学物質については、当該物質の毒性に関する各種の知見から動物又は人に対して影響を起こさない最大の量(最大無毒性量、NOAEL)を求め、これを不確実係数で除することにより、耐容1日摂取量(TDI)を求めた。ただし、NOAELが求められない場合には、これに代えて最小毒性量(LOAEL)を用いることとした。

 (3)  不確実係数については、種内差及び種間差に対して100を用いることとし、
(1) 短期の毒性試験を用いてNOAELを求めた場合、
(2) NOAELによらず最小毒性量(LOAEL)を用いた場合、
(3) NOAELの根拠となった毒性が重篤な場合、
(4) 毒性試験の質が不十分な場合
などの場合には、それぞれ最大10の不確実係数を追加することとした。また、非遺伝子障害性の発がん性の場合、発がん性を考慮し、不確実係数10を追加することを基本とした。

(閾値がないと考えられる化学物質)
 (4)  遺伝子障害性物質による発がん性を有する等毒性に関する閾値がないと考えられる化学物質については、当該物質の摂取による生涯を通じたリスク増分が10-5となるリスクレベルをもって上記のTDIに相当する値(ここでは仮に「VSD」という。)を求めた。また、外挿法としては、線形多段外挿法を基本として用いた。

 (5)  なお、閾値の有無の検討に当たっては、国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価を基本とし、米国環境保護庁(USEPA)等その他の発がん性評価の結果も参考とした。

 (6)  また、内分泌かく乱化学物質については、哺乳類、特に人への低用量域での健康影響に関しては現在のところ評価は確定しておらず、今後の研究に待たなければならない。従って、現時点においては、この観点からの評価は見送ることとした。

2. 評価値の設定
 (1)  評価値の設定に当たっては、WHO等が飲料水の水質基準設定に当たって広く採用している方法を基本とし、食物、空気等他の暴露源からの寄与を考慮しつつ、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基として設定した。

 (2)  具体的には、閾値があると考えられる物質については、
(1) 1日に飲用する水の量を2リットル、
(2) 人の平均体重を50kg(WHOでは60kg)、
(3) 水道水経由の暴露割合を10%(消毒副生成物については20%)
との条件のもとで、対象物質の1日暴露量が上記1で求めたTDIを超えない値として、評価値を設定した。
 なお、水質基準の設定に当たっては、水道水経由の暴露割合を的確に反映させたものとすることが必要であるが、これら暴露割合に関するデータを得ることは一般的に容易ではないことから、従来どおり、水道水経由の暴露割合としてTDIの10%(消毒副生成物については20%)を割り当てることを基本とした。

 (3)  閾値がないと考えられる物質については、VSDをもとに評価値を設定した。

 (4)  また、水質基準は、水道において維持されることが必要であることに鑑み、評価値の設定に当たっては、水処理技術及び検査技術についても考慮することとした。具体的には、
(1) 評価値が水道として実用可能な分析技術によって定量可能なレベルでない場合には、上記(2)で求めた評価値に代えて、必要な場合には、一定の技術的手法によりその確保を図る方法(定量下限を評価値とすることを含む)等について検討することとした。
(2) 現時点においては評価値を達成する水処理技術が存在しない場合には、BAT(Best Available Technology、利用可能な最善の技術)の考え方を取り入れ、既存の処理技術で得られる最小の値を評価値とすることを検討することとした。

II.性状に係る項目

 色、濁り、においなど生活利用上障害の生ずるおそれのある項目については、水道水の性状として基本的に必要とされる項目を選定し、障害を生ずる濃度レベルを元に評価を行い、評価値を設定した。


トップへ
戻る